JP5893275B2 - 二次代謝産物のスクリーニング方法,及びその製造方法 - Google Patents
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avermitilis)MA-4680 は32種類,ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces
coelicolor A3(2)) は25種類,ストレプトマイセス・グリセウス (Streptomyces
griseus) IFO13350は34種類, 及びストレプトマイセス・ビンチャンエンシス
(Streptomyces bingchengensis) BCW-1 は23種類の二次代謝生合成遺伝子クラスターが存在していることが報告されている。また,これらの二次代謝産物の内訳は, エス・エバーミチリスを例に取ると,ポリケチド化合物が12種類,ペプチド化合物が8種類,テルペン化合物が6種類,及び色素,シデロフォア等が6種類となっている。
しかしながら,宿主を替えてもクローニングした遺伝子が宿主内で発現しなかったり,生産量が少ないことが多々ある。そのため,異種宿主内で効率的に二次代謝生合成遺伝子を発現させる工夫が求められている。
次いで,作製した放線菌をミコール酸を細胞表層に含有する微生物であるツカムレラ・プルモニス,ロドコッカス・エリスロポリス,又はコリネバクテリウム・グルタミカムと共にそれぞれ複合培養を行い,それぞれの培養液からスタウロスポリン,レベッカマイシン,ゴードスポリンを抽出し,その生産量を実施例1に示すように測定した。
その結果を,図5,図6,及び図7に示す。これらの図において,図5,図6,及び図7において,+Tp,+Cg,+Reは,それぞれツカムレラ・プルモニス(Tp),コリネバクテリウム・グルタミカム(Cg),及びロドコッカス・エリスロポリス(Re)と複合培養した際の生産量を示す。なお,培養条件は本文中実施例に示す。
以上の結果から,異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ放線菌において,複合培養によって,その生産量が増大することが示されるに至った。
TP−A0274(Streptomyces sp. TP-A0274 )由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターをpTYMcos−Sta7を染色体上に組み込んだエス・リビダンスは,純粋培養時には検出できなかった10分,10.5分,13分に溶出されるピークが高速液体クロマトグラフィーにより検出できた。
以上の結果から,異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ放線菌において,複合培養によって,放線菌に新たな二次代謝産物を生産させる又はその二次代謝産物の生産量を増大させることが示されるに至った。
この発明による異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター,放線菌とミコール酸含有微生物の組み合わせ及び二次代謝産物のスクリーニング方法は,まず,異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ又はプラスミドで保持した放線菌を作製し,次いで,その作製した放線菌を用いて複合培養を行い,培養液中に二次代謝産物が含まれているかを確認することに特徴を有するものである。
二次代謝産物は,例えば,抗菌性抗生物質,制ガン性抗生物質,抗寄生虫物質,酵素阻害剤等になることができる。
異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターにおける,由来となる異種微生物は,組換え宿主内で発現可能な遺伝子を有する微生物であることが好ましい。特に,宿主が放線菌であるため,宿主内での遺伝子発現を考慮すると,放線菌であることが好ましい。 具体的には,二次代謝産物を生産する主な放線菌としては,アクチノマイセス
(Actinomyces ),ノカルディア(Nocardia),ロドコッカス(Rhodococcus ),ミクロモノスポラ(Micromonospora),アクチノプラネス(Actinoplanes),ダクチロスポランギウム(Dactylosporangium ),ノカルディオイデス(Nocardioides),シュードノカルディア(Pseudonocardia),アクチノビスポラ(Actinobispora ),アミコラトプシス
(Amycolatopsis ),サッカロモノスポラ(Saccharomonospora ),アクチノシネマ
(Actinosynnema ),アクチノキネオスポラ(Actinokineospora),ストレプトマイセス(Streptomyces),キタサトスポラ(Kitasatospora ),ストレプトスポランギウム
(Streptosporangium ),ミクロビスポラ(Microbispora),ミクロテトラスポラ
(Microtetraspora ),ノノムラエ(Nonomuraea),ノカルディオプシス(Nocardiopsis),アクチノマデュラ(Actinomadura),キネオコッカス(Kineococcus ),キネオスポリア(Kineosporia ),ルシバリエリア(Lechevarieria ),及びサーモビスポラ
(Thermobispora )由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターであることが好ましい(非特許文献3参照)。
また,対象となる二次代謝生合成遺伝子クラスターは,宿主放線菌で発現可能であれば,ゲノム解析により新たに推定される未知の二次代謝生合成遺伝子クラスター,及び既知の二次代謝生合成遺伝子クラスター等のような二次代謝生合成遺伝子クラスターを用いることができる。その中で,好ましくは,ポリケチド化合物,ペプチド化合物,テルペン化合物,シキミ酸経路由来化合物,アルカロイド化合物,フラボノイド化合物等の生合成遺伝子クラスターを挙げることができる。
異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ又はプラスミドで保持した放線菌において,染色体上に組み込む又はプラスミドで保持する方法は,異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター全長を組換え宿主で複製可能なコスミドベクター(例えば,非特許文献4に記載されているpTOYAMAcos)を用いて,定法に従ってクローニングし,定法(例えば,プロトプラスト法やプラスミド接合伝達法)に従って宿主放線菌に形質転換したものを用いることができる。
(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,ウィラムジア(Williamsia)属,マイコバクテリウム(Mycobacterium) 属,及びツカムレラ(Tsukamurella)属であるため,特に,これらのミコール酸を含有する微生物と複合培養することが好ましい。また,培養液中に二次代謝産物が含まれているかの確認は,二次代謝産物の種類に応じて,公知の方法を用いて行うことができる。例えば,公知の方法の一つとしては,培養液を有機溶媒抽出し,その抽出物をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって測定することにより確認する方法が考えられる。
この発明による二次代謝産物の製造方法は,異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ,又はプラスミドで保持した放線菌を作製し,次いで,その作製した放線菌とミコール酸含有微生物とを複合培養を行い,培養液中に産生される二次代謝産物を採取することを特徴とするものである。
ここで使用される異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ,又はプラスミドで保持した放線菌は,上記スクリーニング方法で二次代謝産物を生産することが確認された菌であることが適当である。
対象となる二次代謝生合成遺伝子クラスターも上記スクリーニング方法で宿主放線菌において遺伝子発現することが確認されたクラスターであることが適当である。
二次代謝産物の培養方法,及びその条件も,上記スクリーニング方法で説明したものと同様であるが,所望するターゲットの二次代謝産物の生産量が多くなるように最適化して行われることが好ましい。二次代謝産物の培養方法では,所定量の二次代謝産物が生産され,培養液に蓄積された時点で終了し,培養液から二次代謝産物を採取する。二次代謝産物の採取方法は,二次代謝産物の種類に応じて,公知の方法から適宜選択して行うことができる。
この培養物は,異種微生物由来二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体上に組み込んだ,又はプラスミドで保持した放線菌を作製した放線菌を用いて複合培養を行い,培養液中に産生される二次代謝産物も含有するものである。この培養物は,この発明の製造方法において,所定量の二次代謝産物が産生され,培養液に蓄積された時点で,培養を終了して得られる培養液であることができる。又は,この培養液を更に加工や処理を施して,二次代謝産物含有物として利用することができる。
( 参考例)
ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) への異種放線菌由来の抗生物質生合成遺伝子クラスターの導入
1.レベッカマイシン生合成遺伝子クラスターを含むシャトルベクターの作製
1−1:材料・試薬
pTOYAMAcos (大腸菌・放線菌シャトルコスミドベクター)
レチェバリエリア・アエロコロニジェン(Lechevalieria aerocolonigenes ATCC39243) の染色体DNA
1−2:プラスミドの作製
レベッカマイシン生産菌であるレチェバリエリア・アエロコロニジェン(Lechevalieriaaerocolonigenes ATCC39243)の染色体をSau3AIにて部分消化し,
pTOYAMAcosのマルチクローニングサイト内のBamHIへ挿入し,染色体コスミドライブラリーを作製した(図1) 。Ngt (N-glycosyltransferase)遺伝子をプローブとし定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行い,レベッカマイシン生合成遺伝子クラスターを取得し,pTYMcos−rebをクローニングした(図2,DDBJAccession Number AB071405)。
2.スタウロスポリン生合成遺伝子クラスターを含むシャトルベクターの作製
2−1:材料・試薬
pTOYAMAcos
ストレプトマイセス・エスピーTP−A0274(Streptomyces sp. TP-A0274) の染色体DNA
2−2:プラスミドの作製
スタウロスポリン生産菌である ストレプトマイセス・エスピーTP−A0274
(Streptomyces sp. TP-A0274) を前述のとおり部分消化し,コスミドライブラリーを作製した。rebD遺伝子をプローブとし,定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行い,スタウロスポリン生合成遺伝子クラスター全長(図3)を含むpTYMcos−
Sta10及び未知の二次代謝生合成遺伝子クラスターを含むpTYMcos−Sta7をクローニングした(図3,DDBJ Accession Number
AB071406)。
3.ゴードスポリン生合成遺伝子を含むシャトルベクターの作製
3−1:材料・試薬
pTOYAMAcos
ストレプトマイセス・エスピーTP−A0584(Streptomyces sp. TP-A0584) の染色体DNA
3−2:プラスミドの作製
ゴードスポリン生産菌であるストレプトマイセス・エスピーTP−A0584
(Streptomyces sp. TP-A0584) の染色体をSau3AIにて部分消化し,図1に示す
pTOYAMAcosのマルチクローニングサイト内のBamHIへ挿入し,染色体コスミドライブラリーを作製した。godA遺伝子をプローブとして,定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行い,ゴードスポリン生合成遺伝子クラスターをを含む
pGSBc1を構築した(図4,DDBJ Accession Number
AB025012,非特許文献4参照)。
4. 遺伝子導入
構築したプラスミドpTYMcos−reb,pTYMcos−Sta10,
pTYMcos−Sta7,pGSBclを,プラスミド接合伝達性大腸菌エッシェリキアコリS17−1を用いてストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) の染色体上に組み込ませ,形質転換体を取得した(大腸菌の形質転換,放線菌への接合伝達法については従来公知の方法でよい)。
異種放線菌由来の抗生物質生合成クラスター遺伝子を形質転換したストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) をV−22液体培地で30℃2日間振とう培養した。 ツカムレラ・プルモニス(Tsukamurella pulmonis ),ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)を培養した場合は,V−22液体培地(0.1%澱粉,0.5%グルコース,0.3%NZ−case,0.2%酵母抽出物,0.5%トリペプトン,0.3%K2 HPO4 ,0.5%MgSO4 ・7H2 O,0.3%CaCO3 ,pH7.0)で30℃,それぞれ2日間,一方,コリネバクテリウム・グルタミカム
(Corynebacterium glutamicum)を培養した場合は,V−22液体培地で30℃,1 日間振とう培養した。
A−3M培地(0.5%グルコース,2.0%グリセロール,2.0%澱粉,1.5%ファーマメディア,0.3%酵母抽出物,1.0%HP−20,pH7.0)に形質転換ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) を3%,ツカムレラ・プルモニス(Tsukamurella pulmonis ),ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus
erythropolis),又はコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)はそれぞれ1%植菌し,7日間30℃で振とう培養した。
培養液を等量のブタノールで抽出し,ブタノール層をロータリーエバポレータにて濃縮後,ジメチルスルホキシドにて溶解し,高速液体クロマトグラフィーにて解析を行った。その際,クロマトグラムのそれぞれの生産物ピーク面積を標品と比較して定量を行った。用いた評品はスタウロスポリン,レベッカマイシン,及び/又はゴードスポリンである。スタウロスポリン,レベッカマイシンは,ジメチルスルホキシドで10mg/mlの濃度に溶解し,HPLCにインジェクトした。スタウロスポリン,レベッカマイシンは市販品を使用した。
ゴードスポリンは,非特許文献4に示す方法で精製した評品を,25mg/mlの濃度にジメチルスルホキシドで溶解し,HPLCにインジェクトした。
(Rhodococcus erythropolis)もしくはコリネバクテリウム・グルタミカム
(Corynebacterium glutamicum)と複合培養した時はそれぞれ,14mg/L,
12mg/L,28mg/Lと最大28倍程度まで生産量が増大した。
pTYMcos−Sta10を組み込んだエスリビダンスは純粋培養時には19mg/Lの生産量であったのに対して,ツカムレラ・プルモニス(Tsukamurella pulmonis ),ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis),又はコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)と複合培養した時はそれぞれ,78mg/L,70mg/L,103mg/Lと最大5倍程度まで生産量が増大した。
(Rhodococcus erythropolis)と複合培養した時はそれぞれ,143mg/L,82mg/Lと最大3.5倍程度まで生産量が増大した。
異種放線菌由来の抗生物質生合成クラスター遺伝子pTYMcos−Sta7を形質転換したストレプトマイセス・リビダンスをV−22液体培地で30℃で2日間振とう培養した。
ツカムレラ・プルモニスは,V−22液体培地で30℃で,それぞれ2日間振とう培養した。
A−3M培地に形質転換ストレプトマイセス・リビダンスを3%,ツカムレラ・プルモニスを1%植菌し,7日間にわたって30℃で振とう培養した。
培養液を等量のブタノールで抽出し,ブタノール層をロータリーエバポレータにて濃縮後,ジメチルスルホキシドにて溶解し,高速液体クロマトグラフィーにて解析を行った。その際,クロマトグラムのそれぞれの生産物ピークを形質転換ストレプトマイセス・リビダンスの純粋培養時のピークと比較して定量を行った。
Sta7を組み込んだエス・リビダンスとツカムレラ・プルモニスと複合培養した時には10分,10.5分,13分にpTYMcos−Sta7を組み込んだエス・リビダンスのみの純粋培養時には検出できなかったピークが検出できた。また,10分,10.5分,13分のピークに該当するUVスペクトルは図9に示してある。以上の3つのピークはUV吸収スペクトルよりpTYMcos−Sta7を組み込んだエス・リビダンスとツカムレラ・プルモニスとを共培養した時にのみ新たに生産が確認できる二次代謝産物である。
Claims (8)
- 異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体DNA中に組み込み又はプラスミドで保持した放線菌を作製し,次いで,作製した前記放線菌とミコール酸含有微生物とを共培養し,前記放線菌に新たな二次代謝産物を生産させる又は前記二次代謝産物の生産量を増大させる異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター,放線菌とミコール酸含有微生物の組み合わせ及び二次代謝産物のスクリーニング方法。
- 前記放線菌がストレプトマイセス属(Streptomyces)であることを特徴とする請求項1に記載の異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター,放線菌とミコール酸含有微生物の組み合わせ及び二次代謝産物のスクリーニング方法。
- 前記ストレプトマイセス属の放線菌がストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)であることを特徴とする請求項2に記載の異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター,放線菌とミコール酸含有微生物の組み合わせ及び二次代謝産物のスクリーニング方法。
- 前記ミコール酸含有微生物は,ツカムレラ(Tsukamurella) ,コリネバクテリウム
(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,及びマイコバクテリウム
(Mycobacterium) 属のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスター,放線菌とミコール酸含有微生物の組み合わせ及び二次代謝産物のスクリーニング方法。 - 異種微生物由来の二次代謝生合成遺伝子クラスターを染色体DNA中に組み込み又はプラスミドで保持した放線菌を作製し,次いで,作製した前記放線菌とミコール酸含有微生物とを共培養することにより,前記放線菌に培養液中に新たな二次代謝産物を生産させる又は前記二次代謝産物の生産量を増大させることを特徴とする二次代謝産物の製造方法。
- 前記放線菌がストレプトマイセス属(Streptomyces)であることを特徴とする請求項5に記載の二次代謝産物の製造方法。
- 前記ストレプトマイセス属の放線菌がストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)であることを特徴とする請求項6に記載の二次代謝産物の製造方法。
- 前記ミコール酸含有微生物は,ツカムレラ(Tsukamurella) ,コリネバクテリウム
(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,及びマイコバクテリウム
(Mycobacterium) 属のいずれかに属する微生物であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の二次代謝産物の製造方法。
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