〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る制御システム2−1を示している。この制御システム2−1は、本開示の電子機器、その制御プログラムおよび制御方法の一例である。この制御システム2−1ではたとえば、PC(パーソナルコンピュータ)4の使用範囲を特定の範囲に制限する制御が行われる。PC4はたとえば、携行可能な携帯用PCである。このPC4の使用範囲は、起動可能な(つまり、PC4の使用可能な)地位的な位置または範囲である。この範囲は特定の位置でもよいし、広がりを持つ範囲のいずれであってもよい。この実施の形態では、PC4の使用範囲について例示するが、本開始の構成は使用範囲を使用制限範囲とし、この使用制限範囲での起動を制限する構成としてもよい。
PC4は、既述の使用範囲の制御対象である電子機器の一例である。このPC4には受信部6、メモリ8およびプロセッサ10が備えられている。
受信部6はたとえば、アンテナ12を備え、単一または複数の基地局からの基地局電波および位置情報を無線により受信する。位置情報は、基地局またはその位置を示すID(IDentification)でもよいし、基地局の位置を表す緯度、経度などの座標情報でもよい。この実施の形態では、受信部6が、単一または複数の基地局の一例として基地局14−A、14−B、14−Cから電波および位置情報を受信している。
メモリ8は、情報を記憶する記憶部の一例である。このメモリ8には、PC4の使用範囲の設定に用いる単一または複数の基地局が登録され、または前使用範囲の設定から除外する基地局が登録される。このメモリ8に登録される基地局を示す情報には、特定可能な基地局位置や識別情報が含まれる。
プロセッサ10は制御部の一例であり、このプロセッサ10が実行する制御には、受信部6の受信制御、メモリ8に対する登録制御、使用範囲の判定制御、起動制御などが含まれる。つまり、受信部6の受信制御では、受信部6が受信した基地局14−A、14−B、14−Cから電波強度および位置情報が取り込まれる。メモリ8に対する登録制御では、単一または複数の基地局からの電波強度および基地局位置がメモリ8に登録される。使用範囲の判定制御では、たとえば、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により使用範囲が定められ、複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、使用範囲が定められる。そして、起動制御では、起動指示に対し使用範囲に応じた起動制御が行われる。つまり、使用範囲では起動が可能であり、使用範囲外であれば起動が禁止される。この起動制御ではたとえば、受信部6に対して常時給電を行い、使用範囲外であれば給電を停止し、OS(Operating System)の起動を禁止ないし停止する制御とすればよい。
<起動制御の処理手順>
図2は、起動制御の処理手順の一例を示している。この処理手順は、本開示の電子機器の制御プログラムまたはその制御方法の一例である。
この処理手順は、メモリ8に格納されたプログラムによって実行される。既述の通り、常時給電状態にある受信部6が単一または複数の基地局から電波および位置情報を受信する(S101)。
プロセッサ10は、受信部6で受信した基地局をメモリ8に登録する(S102)。つまり、PC4を使用する使用範囲の設定に用いる単一または複数の基地局が登録される。この場合、メモリ8には使用範囲の設定から除外する基地局も登録する。
プロセッサ10は受信した単一または複数の基地局により使用範囲を特定する(S103)。つまり、起動時、単一または複数の基地局から電波強度および位置情報を受信し、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により使用範囲が定められる。複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、使用範囲が定められる。
起動時、プロセッサ10は受信した単一または複数の基地局を用いることにより、PC4が使用範囲であるか否かの判定を行う(S104)。
PC4が使用範囲であれば(S104のYES)、起動制御を行う(S105)。PC4が使用範囲でなければ(S104のNO)、起動を停止する制御を行い(S106)、その起動を停止する。つまり、起動指示に対し使用範囲に応じた起動制御が行われ、またはその範囲外であれば起動停止制御が行われる。
<第1の実施の形態の効果>
(a) 既述のように単一または複数の基地局14の位置および電波強度を利用し、PC4の地域的な使用範囲(または使用制限範囲)の設定が可能である。
(b) 単一または点在する複数の基地局14の電波を利用し、単一の基地局14の電波強度または複数の基地局14の電波強度の組み合わせにより使用範囲(または使用制限範囲)を決定でき、その範囲精度が高められる。
(c) 基地局14の位置情報および電波強度を利用し、特定の場所でPC4を起動でき、OSを動作させることができる。基地局14の設置密度や、基地局14からの電波強度の利用により、使用可(または使用不可)の範囲(つまり、使用範囲)を自動設定することができる。
〔第2の実施の形態〕
図3は、第2の実施の形態に係る制御システム2−2を示している。この制御システム2−2ではPC4のユーザ15が使用する携帯端末装置16が含まれている。この携帯端末装置16は、PC4との通信が可能な通信装置の一例である。
PC4は、既述の使用範囲が設定される電子機器の一例である。携行可能なPC4の使用範囲は、その起動および継続的使用が可能な特定の場所である。PC4は、電源をオフ状態にしても、既述の受信部6に常時通電され、常に基地局電波を受信できる状態に維持されている。
携帯端末装置16は、PC4との通信を行う通信機能を備えている。この通信機能は、公衆電話回線を媒介とした通信でもよいし、Wi−Fiなどの無線ネットワークを介した通信であってもよい。この携帯端末装置16からPC4に対して位置登録のコマンドを発行する(S201)。
PC4は、通信機能を備え、単一または複数の基地局としてたとえば、基地局14−A、14−B、14−Cの位置情報と、受信電波の電波強度を取得する(S202)。PC4の使用範囲の設定(または判定)には、単一または複数の基地局としてたとえば、基地局14−A、14−B、14−Cの位置情報と、受信電波の電波強度が用いられる。PC4では、使用位置と範囲を計算し(S203)、位置情報をPC4内に登録する(S204)。位置情報と電波強度を用いてPC4の使用範囲の判定を行い、設定された使用範囲であれば、PC4の起動が可能であり、継続的な使用が可能である(S205)。
<PC4のハードウェア>
図4は、PC4のハードウェアの一例を示している。このPC4には通信モジュール18、制御部20および電源部22が設置されている。
通信モジュール18はPC4の通信機能部であり、既述の受信部6の一例である。この通信モジュール18は、制御部20と独立したコンピュータで構成され、電源部22の通信モジュール用電源24により常時通電される。つまり、通信モジュール18は常時、基地局14−A、14−B、14−Cからの電波を受信している。
電源部22には、通信モジュール用電源24および制御部用電源26が含まれる。通信モジュール用電源24では常時通電状態に維持される。制御部用電源26は、一般回路用電源であり、PC4が使用範囲にあるとき、通電状態に制御される。つまり、PC4が使用範囲内にあるか否かに応じ、通信モジュール18にあるプロセッサ28により通電状態または遮断状態に制御される。
RF(Radio Frequency :無線)部30は、アンテナ12を備え、プロセッサ28により制御される。この実施の形態のRF部30は、既述の常時通電により、基地局電波を受信可能状態に維持されている。このRF部30では、基地局電波を受信し、受信した基地局から位置情報および電波強度を取得する。
プロセッサ28は、通信モジュール18を制御するコントローラを構成し、ROM(Read-Only Memory:読出し専用メモリ)32にあるOS(Operating System)やファームウェアプログラムなどの各種のプログラムを実行する。
ROM32は記憶手段の一例であり、たとえば、フラッシュメモリで構成される。このROM32にはOSなどのプログラムが格納されるとともに、データ格納領域の一例として基地局登録テーブル34、有効テーブル35および除外テーブル36が設定されている。基地局登録テーブル34には受信した基地局14が登録される。有効テーブル35および除外テーブル36には電波強度の異なる基地局14が登録される。有効テーブル35には電波強度の高い基地局14が登録され、該基地局14は、PC4の使用範囲の設定に用いられる。除外テーブル36に登録される基地局14は、除外情報として使用範囲の設定に用いられる。RAM(Random-Access Memory)38は、情報処理のワークメモリを構成する。
制御部20は、PC4の本体側機能部であり、通信モジュール18と独立したコンピュータで構成される。この制御部20は、電源部22から常時通電されておらず、PC4が使用範囲内にあるとき、起動指示に基づき通電される。つまり、使用範囲内での起動およびその起動継続が可能である。
プロセッサ40にはメモリコントローラ42を介して各種のメモリが接続されている。このプロセッサ40は、ROM44にある既述のBIOSやOSを実行する。
ROM44は記憶手段の一例であり、たとえば、フラッシュメモリで構成される。このROM44にはBIOSやOSなどのプログラムが格納される。つまり、PC4が使用範囲にあれば、プロセッサ40が制御部用電源26を通電状態に切り替える。これによりBIOSが起動可能である。
RAM46はプロセッサ40で実行される情報処理のワークエリアを構成する。表示部48には、視認可能なビデオ出力などの表示情報が出力される。
メモリコントローラ42には入出力(I/O:Input/Output)コントローラ50が接続されている。このI/Oコントローラ50には既述のプロセッサ28が接続されている。つまり、通信モジュール18はI/Oコントローラ50を介して制御部20と連携され、通信モジュール18と制御部20の情報の授受が行われる。
I/Oコントローラ50にはインターフェイス部52が接続されている。このインターフェイス部52には、キーボード(KB)、マウス、LAN(Local Area Network)などの各種の入出力(I/O)部が含まれており、このインターフェイス部52により各種の情報の入出力が行われる。
<PC4の処理機能>
図5は、PC4の処理機能の一例を示している。この処理機能54には、位置登録コマンドの受信機能56、位置情報および電波強度の取得機能58、基地局の登録機能60、使用範囲の計算機能62、起動制御機能64が含まれる。
位置登録コマンドの受信機能56では、ユーザ15の操作により携帯端末装置16から発行される位置登録のコマンドを受信する。
位置情報および電波強度の取得機能58では、基地局電波を受信し、受信した基地局の位置情報および電波強度を基地局から取得する。
基地局の登録機能60では、取得した位置情報および電波強度をROM32に登録する。つまり、電波強度の最も高い基地局を有効テーブル35に登録する。一定レベルを超える電波強度の高い基地局を除外テーブル36に登録する。
使用範囲の計算機能62では、有効テーブル35に登録された基地局14を基準に、除外テーブル36に基地局14の登録があれば、その基地局14の電波範囲を除外範囲に用いて使用範囲を計算する。除外テーブル36に基地局14の登録がなければ、有効テーブル35に登録された基地局14の電波範囲で使用範囲が設定される。
起動制御機能64では、起動時、単一または複数の基地局の電波を受信し、PC4の現在位置を特定し、その位置が使用範囲にあるか否かを判定する。この判定結果に基づき、PC4の起動が制御される。つまり、使用範囲にPC4があれば、起動を継続し、PC4のOSを起動する。使用範囲にPC4がなければ、起動停止(起動の解除)の制御が行われる。これにより、設定された使用範囲内にPC4の使用が制限される。
<位置情報の登録>
図6は、位置情報を登録する処理手順の一例を示している。この処理手順は、本開示の電子機器の制御方法または制御プログラムの一例である。
この処理手順では、基地局14の位置情報、電波強度の抽出をする(S211)。この基地局14の位置情報の抽出では、電子機器の一例であるPC4の使用位置で受信可能な複数の基地局および電波強度の値が抽出される。
抽出した電波強度の判定を行う(S212)。この電波強度の判定では、十分な電波強度の閾値としてたとえば、20〔%〕を超える電波強度があるかを判定する。つまり、基地局14の判定に用いられる電波強度の基地局14があれば(S212のYES)、この処理を続行する。基地局の判定に使用できない低い電波強度であれば(S212のNO)、その基地局14を判定対象から外し、登録失敗とし、処理を終了する。
閾値を超える電波強度の基地局14があれば(S212のYES)、最高レベルの電波強度の基地局14を抽出する(S213)。最高レベルの電波強度の基地局14および最高レベルに近いレベルの電波強度の基地局14を有効テーブル35に記録する(S214)。ここで、最高レベルに近いレベルの電波強度とは、最高レベルのたとえば、90〔%〕程度のレベルを想定する。このレベル値を低く設定すると、有効テーブル35に登録される基地局14が増加する。これに対し、レベル値を高く設定すると、有効テーブル35に登録される基地局14が減少するので、レベル値の加減によって基地局14の登録数を有効な範囲に絞ることができる。
この登録時点で抽出した基地局14について、有効テーブル35に登録されなかった基地局14は除外テーブル36に記録し(S215)、この処理を終了する。
<基地局14、有効テーブル35および除外テーブル36>
図7のAは、既述の基地局登録テーブル34を示している。基地局登録テーブル34は、PC4に設定された基地局テーブルを示している。
図7のAに示す基地局登録テーブル34は、基地局情報格納部66および電波強度格納部68を備えている。基地局情報格納部66には、受信した基地局14を表す基地局情報が登録される。「基地局14−A、基地局14−B・・・基地局14−G」は、基地局情報を示している。これら基地局情報は電波強度の判定対象となった基地局を特定する情報であり、緯度、経度などの位置特定が可能な情報が含まれる。
この場合、基地局14の電波強度は、電波強度が最低レベル「15」から最高レベル「70」まで分布している。電波強度の閾値を「20」とした場合には、基地局14−Fおよび基地局Gは判定対象外70として判定対象から除外される。
図7のBは、有効テーブル35を示している。これに対し、図7のCは、除外テーブル36を示している。これら有効テーブル35および除外テーブル36は同様に基地局情報格納部66および電波強度格納部68を備えている。
図7のBに示す有効テーブル35には、既述のとおり、最高レベルの電波強度の90〔%〕の基地局が登録される。この例では、最高レベルの電波強度が70〔%〕であるから、この70〔%〕の90〔%〕以上の電波強度(=63〔%〕)が登録対象となる。図7のAに示す基地局登録テーブル34には63〔%〕を超える基地局は基地局14−Dのみである。これにより、基地局14−Dが基地局情報格納部66に記録され、電波強度70〔%〕が電波強度格納部68に記録されている。
図7のCに示す除外テーブル36には、有効テーブル35に登録されない基地局14であって判定対象から除外されていない基地局14が登録される。この例では、基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Eが登録対象となる。これら基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Eが基地局情報格納部66に記録され、それぞれの電波強度が電波強度格納部68に記録されている。
<基地局の判定>
図8は、基地局を判定する処理手順の一例を示している。この処理手順は、本開示の電子機器の制御方法または制御プログラムの一例である。
この処理手順では、PC4が受信可能な複数の基地局14とその電波強度の値を抽出する(S221)。判定に必要な電波強度を持つ基地局14を選別する(S222)。この例では、判定に必要な電波強度のレベルの閾値としてたとえば、20〔%〕を設定している。電波強度が閾値20〔%〕を超えるかを判定し、閾値20〔%〕以下であれば(S222のNO)、判定対象外70となり、使用範囲外とする。
閾値である20〔%〕を超える電波強度の基地局14について、その基地局14が有効テーブル35に存在するかを判定する(S223)。受信した基地局14が有効テーブル35になければ(S223のNO)、使用範囲外とし、この判定処理を終了する。つまり、有効テーブル35に存在しない基地局であれば、PC4は使用許可の位置ではないと判定する。PC4が受信した基地局14が有効テーブル35に存在すれば(S223のYES)、判定処理を続行する。
有効テーブル35に登録されている基地局14について、電波強度の値を判定する(S224)。電波強度の値が一定値たとえば、閾値として40〔%〕以上であるかを判定している。電波強度が閾値の40〔%〕以上であれば、PC4の存在場所を高精度に判定可能な場所であると判断できる。
この例では、受信した基地局の電波強度が判定に必要なレベルであるかを判定する(S225)。図8に示す処理では、電波強度が最高レベルの90〔%〕に設定している。これに対し、この値を低くすれば、判定の有効範囲(つまりPC4の使用範囲)を広げることができる。そこで、閾値未満であれば(S225のNO)、使用可能な位置にいないと判断できるので、使用範囲外とし、この処理を終了する。
有効テーブル35に登録されている基地局14の電波強度が閾値以上であれば(S225のYES)、除外テーブル36を用いて判定する(S226)。除外テーブル36に登録されている基地局であって、電波強度の値が一定値たとえば、閾値として110〔%〕以上であるかを判定する。電波強度が閾値の110〔%〕以上でなければ(S226のNO)、使用範囲と判断する。これに対し、電波強度が閾値の110〔%〕以上であれば(S226のYES)、使用範囲外とする。つまり、除外テーブル36に登録された基地局14に対しては、電波強度の閾値を高くすることにより、使用範囲を広げることができる。また、除外テーブル36に登録された電波強度であれば、除外すべき位置の近傍であり、使用範囲外とし、この処理を終了する。
また、S224において、有効テーブル35に登録されている基地局14の電波強度が閾値の40〔%〕未満であれば(S224のNO)、電波強度が有効テーブル35に登録されている電波強度の一定値たとえば、80〔%〕以上であるかを判定する。電波強度が有効テーブル35にある電波強度の80〔%〕以上であれば、S225、S226をスキップして使用範囲(つまり有効範囲)と判断する。また、電波強度が有効テーブル35にある電波強度の80〔%〕未満であれば(S227のNO)、使用範囲外と判断する。つまり、有効テーブル35に登録されている基地局の電波強度が一定値以下の場合は、その近辺に基地局14がなく高精度な判断ができないため、使用可能な位置にいないと判断し、使用範囲外としてこの処理を終了する。
このように、PC4に基地局14の位置情報および電波強度の登録により、PC4の使用許可または使用禁止の地域的な範囲を自動設定できる。
<判定時の基地局登録テーブル34の一例>
図9は、判定時の基地局登録テーブル34の一例(判定時の基地局の電波強度の一覧)を示している。
判定時、受信した基地局14は基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−F、14−Gである。各電波強度は、基地局14−Aが43〔%〕、基地局14−Bが30〔%〕、基地局14−Cが55〔%〕、基地局14−Dが72〔%〕、基地局14−Eが50〔%〕、基地局14−Fが20〔%〕、基地局14−Gが15〔%〕である。この場合、基地局14−Dの電波強度が最も高く、基地局14−F、14−Gは判定対象外70となっている。
<基地局14によるPC4の使用範囲72の設定例>
(1) 電波強度の高い単一の基地局14が存在する場合
図10は、電波強度の高い単一の基地局が存在する場合を示している。つまり、PC4の使用範囲72内に電波強度の高い単一の基地局14−Dが存在し、この基地局14−Dを基準にして使用範囲72が設定される場合である。
PC4の使用範囲72よびその周囲には、基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−F、14−Gが存在する。この場合、PC4の使用範囲72に基地局14−Dが存在し、この基地局14−Dの周囲に基地局14−A、14−B、14−C、14−Eが存在している。基地局14−F、14−Gは基地局14−Dから離れた位置に存在する。各基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−Eの周囲には電波強度の高い高レベル範囲74−A、74−B、74−C、74−D、74−Eが存在する。
PC4の使用範囲72における各基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−F、14−Gの電波強度は図11のAに示すように、それぞれ異なる値となっている。この場合、PC4の使用範囲72に対する電波強度は、PC4から最も近い基地局14−Dの70〔%〕と最も高い値である。これに対し、各電波強度は、基地局14−Cが60〔%〕、基地局14−Eが55〔%〕、基地局14−Aが45〔%〕、基地局14−Bが30〔%〕、基地局14−Fが20〔%〕、基地局Gが15〔%〕である。
このような電波強度の大小関係により、図11のBに示すように、基地局14−Dおよびその電波強度70〔%〕が有効テーブル35に登録される。これに対し、図11のCに示すように、基地局14−Cおよびその電波強度60〔%〕、基地局14−Eおよびその電波強度55〔%〕、基地局14−Aおよびその電波強度45〔%〕、基地局14−Bおよびその電波強度30〔%〕が除外テーブル36に登録される。基地局14−F、14−Gは電波強度が低く、判定対象外70となる。
この場合、基地局14−Dから離れて基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cまたは基地局14−Eに近づくと、基地局14−Dの電波強度が低下するのに対し、基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cまたは基地局14−Eの電波強度が上昇する。各電波強度が基地局14−Dの電波強度より同等または高くなる点を境界にし、基地局14−Dの電波強度が基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cまたは基地局14−Eの電波強度より高い範囲をPC4の使用範囲72に設定する。つまり、この使用範囲72は、電波強度が最も高い基地局14−Dの高レベル範囲74−Dを基準に、この高レベル範囲74−Dから基地局14−A、基地局14−B、基地局14−Cまたは基地局14−Eの電波強度が高くなる高レベル範囲74−A、74−B、74−C、74−Eを除外して決定される。つまり、使用範囲72は基地局14−Dの電波強度が高い排他的な狭範囲となる。
斯かる構成では、電波強度の高い基地局14を基準に、この基地局14に準ずる複数の基地局の電波強度を利用することにより、除外テーブル36にある基地局14の高レベル範囲74で包囲された精度の高い範囲が設定される。そして、他の基地局の高レベル範囲で包囲されていない使用範囲72の箇所は、電波強度の高い基地局14の高レベル範囲74で境界を確定する。
(2) 電波強度の高い複数の基地局14(たとえば、2つの基地局)が存在する場合
図12は、電波強度の高い2つの基地局が存在する場合を示している。この場合、高レベル範囲74−C、74−Dが重なる2つの基地局14−C、14−Dが存在している。
PC4の使用範囲72およびその周囲には、基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−F、14−Gが存在する。この場合、PC4の使用範囲72に基地局14−Cおよび基地局14−Dが存在し、この基地局14−Cおよび基地局14−Dの周囲に基地局14−A、14−B、14−E、14−Fが存在している。基地局14−Gは基地局14−C、14−Dから離れた位置に存在する。各基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−Fの周囲には電波強度の高い高レベル範囲74−A、74−B、74−C、74−D、74−E、74−Fが存在する。
PC4の使用位置における各基地局14−A、14−B、14−C、14−D、14−E、14−F、14−Gの電波強度は図13のAに示すように、それぞれ異なる値となっている。この場合、PC4の使用位置72に対する電波強度は、PC4から最も近い基地局14−Dの70〔%〕が最も高い値である。これに対し、各電波強度は、基地局14−Cが65〔%〕、基地局14−Eが55〔%〕、基地局14−Aが45〔%〕、基地局14−Fが40〔%〕、基地局14−Bが30〔%〕、基地局14−Gが15〔%〕である。
このような電波強度の大小関係により、図13のBに示すように、基地局14−Dおよびその電波強度70〔%〕、基地局14−Cおよびその電波強度65〔%〕が有効テーブル35に登録される。これに対し、図13のCに示すように、基地局14−Eおよびその電波強度55〔%〕、基地局14−Aおよびその電波強度45〔%〕、基地局14−Fおよびその電波強度40〔%〕、基地局14−Bおよびその電波強度30〔%〕が除外テーブル36に登録される。基地局14−Gは電波強度が低く、判定対象外70となる。
この場合、基地局14−Cおよび基地局14−Dの電波強度はほぼ同等であり、両者のレベル差は小さい。この場合、基地局14−Cおよび基地局14−Dの高レベル範囲74−C、74−Dの重なり部分を使用範囲72とすればよい。このような使用範囲72を設定すると、この使用範囲72に重ならない基地局14−Aおよび基地局14−Eの高レベル範囲74−A、74−Eは除外対象から外れる。そこで、この使用範囲72から基地局14−Bおよび基地局14−Fの高レベル範囲74−B、74−Fを除外すれば、PC4の使用範囲72が確定する。つまり、この使用範囲72は、電波強度が最も高い基地局14−Dおよび基地局14−Cの高レベル範囲74−D、74−Cを基準に、この高レベル範囲74−D、74−Cから基地局14−Bおよび基地局14−Fの電波強度が高くなる高レベル範囲74−B、74−Fを除外して決定される。つまり、使用範囲72は基地局14−Dおよび基地局14−Cの電波強度が高い排他的な狭範囲となる。
斯かる構成では、電波強度の高い複数の基地局を基準に、この基地局に準ずる複数の基地局の電波強度を利用することにより、除外テーブル36にある基地局14の高レベル範囲74で包囲された精度の高い範囲が設定される。
(3) 電波強度の高い単一の基地局が存在し、その周辺に基地局が存在しない場合
図14は、電波強度が高い単一の基地局があり、その周辺には基地局がない場合を示している。この場合、電波強度が高い基地局14−Aがあり、この基地局14−Aの周辺には基地局が存在していない。
PC4の使用範囲72およびその周囲には、基地局14−A、14−B、14−C、14−Dが存在する。この場合、PC4の使用範囲72に基地局14−Aが存在し、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Dは基地局14−Aから離れた位置に存在している。基地局14−Aの周囲には電波強度の高い高レベル範囲74−Aが存在する。
PC4の使用位置における各基地局14−A、14−B、14−C、14−Dの電波強度は図15のAに示すような値となっている。この場合、PC4の使用位置に対する電波強度は、基地局14−Aの65〔%〕が最も高く、これに対し、基地局14−Bが20〔%〕、基地局14−Cおよび基地局14−Dが15〔%〕である。
このような電波強度の大小関係により、図15のBに示すように、基地局14−Aおよびその電波強度65〔%〕が有効テーブル35に登録される。これに対し、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Dは、判定対象外70である。また、基地局14−Aの高レベル範囲74−Aに重なる他の基地局14の高レベル範囲がないため、除外テーブル36に登録される基地局はない。除外テーブル36に登録される基地局14がないため、有効テーブル35に登録される基地局14−Aの高レベル範囲74−AがPC4の使用範囲72となる。
斯かる構成では、電波強度の高い基地局14−Aを基準にPC4の使用範囲72が設定される。
(4) 電波強度の低い単一の基地局14が存在し、その周辺に基地局14が存在しない場合
図16は、電波強度が低い単一の基地局があり、周辺には基地局がない場合である。この場合、電波強度が低い単一の基地局として基地局14−Aがあり、この基地局14−Aの周辺には基地局14が存在していない。
PC4の使用範囲72およびその周囲には、基地局14−A、14−B、14−C、14−Dが存在する。この場合、PC4の使用範囲72に基地局14−Aが存在し、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Dは基地局14−Aから離れた位置に存在している。基地局14−Aの周囲には電波強度の低レベル範囲75−Aが存在する。
PC4の使用位置72における各基地局14−A、14−B、14−C、14−Dの電波強度は図17のAに示すような値となっている。この場合、PC4の使用位置に対する電波強度は、基地局14−Aの35〔%〕が最も高く、これに対し、基地局14−Bが20〔%〕、基地局14−Cおよび基地局14−Dが15〔%〕である。
このような電波強度の大小関係により、図17のBに示すように、基地局14−Aおよびその電波強度35〔%〕が有効テーブル35に登録される。これに対し、基地局14−B、基地局14−Cおよび基地局14−Dは、判定対象外70である。また、基地局14−Aの低レベル範囲75−Aに重なる他の基地局14の低レベル範囲や高レベル範囲がないため、除外テーブル36に登録される基地局14はない。除外テーブル36に登録される基地局14がないため、有効テーブル35に登録される基地局14−Aの低レベル範囲75−AがPC4の使用範囲72となる。
斯かる構成では、電波強度の低い基地局14−Aを基準にPC4の使用範囲72が設定される。この場合、除外テーブル36に登録される基地局がないため、有効テーブル35に登録される基地局の電波強度の範囲内が使用範囲72に設定される。つまり、使用範囲72は、基地局14−Aの低レベル範囲75−Aに依存し、電波強度が高い場合より使用範囲72が広くなる。
(5) 電波強度の低い複数の基地局14(たとえば、2つの基地局)が隣接して存在し、これらの周辺に基地局14が存在しない場合
図18は、電波強度の低い複数の基地局が隣接して存在し、これらの周辺に基地局が存在しない場合を示している。この場合、2つの電波強度の低い基地局14−Aおよび基地局14−Bが存在し、これらの周辺には基地局14が存在しない場合である。
PC4の使用範囲72およびその周囲には、基地局14−A、14−B、14−C、14−Dが存在する。つまり、PC4の使用範囲72の近傍には基地局14−Aおよび基地局14−Bが存在し、基地局14−Cおよび基地局14−Dは基地局14−Aおよび基地局14−Bから離れた位置に存在している。基地局14−Aおよび基地局14−Bの周囲には電波強度の低い低レベル範囲75−A、75−Bが存在し、一部75−ABが重なっている。
PC4の使用範囲における各基地局14−A、14−B、14−C、14−Dの電波強度は図19のAに示すように、それぞれ異なる値となっている。この場合、PC4の使用範囲72に対する電波強度は、基地局14−Aの35〔%〕が最も高く、これに対し、基地局14−Bが30〔%〕、基地局14−Cが20〔%〕および基地局14−Dが15〔%〕である。
このような電波強度の大小関係により、この実施の形態では図19のBに示すように、基地局14−Aおよびその電波強度35〔%〕、基地局14−Bおよびその電波強度30〔%〕が有効テーブル35に登録されている。つまり、レベルの高い電波強度を持つ基地局14が存在していないため、低いレベルの電波強度の複数の基地局14を用いる。そこで、基地局14−A、14−Bを有効テーブル35に登録している。この場合、基地局14−Cおよび基地局14−Dは、判定対象外70である。
基地局14−Aの低レベル範囲75−Aには基地局14−Bの低レベル範囲75−Bが重なり、除外テーブル36に登録される基地局はない。つまり、除外テーブル36に登録される基地局14がないため、有効テーブル35に登録される基地局14−Aの低レベル範囲75−Aおよび基地局14−Bの低レベル範囲75−Bの重なっている部分75−ABがPC4の使用範囲72となる。
有効テーブル35の基地局14−Aおよび基地局14−Bの判定条件が低く、低レベル範囲75−A、75−Bは広くなるが、重なり合う範囲を使用範囲72に設定し、つまり、周辺の基地局情報も使用するため、単独の基地局で使用範囲を判定する場合より使用範囲が狭くなる。この場合、使用可能として設定された場所は、繰り返し使用することとなるので、その使用頻度により範囲の適正化を行う処理も考えられる。
<使用範囲の適正化>
図20は、使用範囲の適正化の処理手順を示している。この処理手順は、本開示の電子機器の制御方法または制御プログラムの一例である。
この処理手順は、既述の判定処理により使用範囲内と判断された後の処理である。この処理手順では、図20に示すように、判定に使用した基地局の位置情報および電波強度を抽出する(S231)。
受信した基地局14が有効テーブル35にある基地局14か否かを判定する(S232)。受信した基地局14が有効テーブル35にあれば(S232のYES)、有効テーブル35に存在する基地局14の電波強度と、同じ基地局14の現在の電波強度を平均化する(S233)。この平均化した電波強度で有効テーブル35を更新し(S234)、この処理を終了する。
受信した基地局14が有効テーブル35になければ(S232のNO)、受信した基地局14が除外テーブル36にある基地局14か否かを判定する(S235)。受信した基地局が除外テーブル36にある基地局14であれば(S235のYES)、除外テーブル36に存在する基地局14の電波強度と、同じ基地局14の現在の電波強度を平均化する(S236)。平均化した電波強度で除外テーブル36を更新し(S237)、この処理を終了する。
<電波強度の平均化処理>
有効テーブル35にある基地局14の電波強度の平均化および除外テーブル36にある基地局14の電波強度のいずれも、有効テーブル35または除外テーブル36に登録されている基地局数分だけ行う。基地局14の電波強度の平均化は、たとえば、基地局14の電波強度を受信回数で除す方法を用いてもよい。
PC4の使用時点の電波強度は、周囲の通信環境の影響を受け、電波強度の登録時と異なる場合がある。このような弊害をデータ更新によって解消することができる。また、実際の使用位置が登録時点と多少異なる状況も予想される。つまり、使用範囲が有効と判定した後、電波強度の平均化によって有効テーブル35や除外テーブル36を適正化すれば、使用位置の変移による判定誤差も小さくできる。これにより、PC4の使用範囲72の適正化が図られる。
なお、この位置情報の登録処理および判定処理の実行場所は位置情報を取得する装置内部に限定されるものではない。つまり、PC4であってもよいし、PC4を管理するサーバ(管理サーバ)であってもよい。PC4で取得した基地局と電波強度の情報をPC4から通信回線を経由して管理サーバに送信する。管理サーバ側では、PC4の使用範囲の登録処理および判定処理を実行し、その結果をPC4に通知する構成であってもよい。この場合、管理サーバでは、複数のPC4の使用時間や使用状況を整理し、その登録や判定を行い、その登録データの補正などの処理を行う。
<使用範囲72の判定処理>
図21は、使用範囲72の判定処理の処理手順を示している。
この処理手順では、PC4の通信モジュール18が常時通電され、PC4の現在位置を表す位置情報を常に把握している。
PC4に電源を投入し、PC4を起動させる(S241)。
PC4に搭載されたBIOS(Basic input/output system :基本入出力システム)が通信モジュール18の受信状態を読み出す(S242)。
通信圏内出あるかどうかを判定する(S243)。通信圏外であれば(S243のNO)、通信圏外であるため、起動できない旨を表示画面76に表示し(S244)、電源を遮断する(S245)。
通信圏内であれば(S243のYES)、BIOSが通信モジュール18から現在位置が使用範囲72であるか(使用可であるか不可であるか)を読み出す(S246)。
使用範囲72であるか否かを判定する(S247)。PC4が使用範囲72内にあれば(S247のYES)、BIOS処理後、OSを起動する(S248)。
使用範囲72外であれば(S247のNO)、使用範囲72外で起動できない旨を画面76に表示し(S249)、PC4の電源を遮断する(S245)。
このように、PC4の使用(起動)が使用範囲72内に制限され、通信圏内にPC4が存在していても、使用範囲72外での起動が禁止される。使用範囲72外でPC4を使用することができない。これにより、PC4の紛失や盗難などによる無断使用を防止でき、セキュリティ保護が図れる。
<表示画面の表示例>
図22のAおよびBは、PC4の表示画面の表示例を示している。
通信圏外でPC4が起動できない場合には、図22のAに示すように、PC4の表示画面76に既述の通信圏外で起動できないメッセージ78を表示する。このメッセージ78は既述の表示部48から表示画面76に出力される。メッセージ78はたとえば、「通信圏外のためPCを起動できません」と表示される。
PC4が通信圏内にあっても、使用範囲72にない場合には、図22のBに示すように、PC4の表示画面76に既述の使用範囲72外で起動できないメッセージ80を表示する。メッセージ80はたとえば、「使用範囲外のためPCを起動できません」と表示される。このような表示の相違により、ユーザ15が起動できない状況を迅速に視認することができる。
<使用範囲72の変更およびその登録>
ユーザ15がPC4の現在の使用範囲72から新たな使用範囲72に変更し、変更された使用範囲72でPC4を使用する場合である。この使用範囲の変更には、使用範囲72の登録処理が必要である。
図23は、使用範囲72の変更および登録の処理手順を示している。
携帯端末装置16からPC4に対して位置登録のコマンドを発行する(S251)。
PC4は周辺の基地局14の位置情報として、基地局14を表す座標と、その基地局14の電波強度を収集する(S252)。
PC4は収集した基地局14の座標と、電波強度から使用する位置および範囲を表す位置情報(つまり、使用範囲72)を計算する(S253)。
PC4は位置情報をPC4のROM32に登録する(S254)。この位置情報の登録が維持される限り、新たに登録を行う必要はない。これにより、PC4の使用範囲72が確定する。
位置情報の登録後、PC4は、使用範囲72内で手動または自動で起動させることができる(S255)。つまり、位置情報の登録により、同一の使用範囲72内において、登録処理を伴うことなく、PC4の使用が可能となり、使用範囲72外での使用が禁止される。
なお、設定によっては、使用範囲72を使用禁止範囲として設定すれば、その使用禁止範囲で使用を禁止し、使用禁止範囲外で使用が許可される構成としてもよい。
<PC4単体での位置情報登録>
図24は、PC4単体での位置情報登録のシーケンスを示している。つまり、管理サーバ(第3の実施の形態)を媒介としないPC4単体での位置登録の処理手順であり、PC4の使用範囲72の登録がPC4の単独処理によって実行される。
このシーケンスでは、携帯端末装置16からPC4に対し、位置登録の指示が発せられる(S261)。この指示を受けたPC4は、複数の基地局14に対し位置情報および電波強度の取得を行う(S262)。
PC4では位置情報および電波強度を用いて登録条件判定処理を実行する(S263)。この登録条件判定処理は、既述の通り、PC4の使用範囲(位置を含む)72を計算し、有効テーブル35および除外テーブル36に登録する(S264)。
<PC4による位置情報判定>
図25は、PC4による位置情報判定のシーケンスを示している。この処理では、PC4の使用範囲72の判定がPC4のみで実行され、その結果によりPC4のOS起動が制御される。
このシーケンスでは、PC4の起動を実行する(S271)。この起動に基づき、PC4は複数の基地局14から位置情報および電波強度の取得を行う(S272)。
PC4では、取得した位置情報や電波強度の取得結果を参照し、登録されている有効テーブル35や除外テーブル36を利用し、判定処理を行う(S273)。この判定処理は、PC4が使用範囲72にあるか否かの判定である。
判定結果により、PC4は、該PC4が使用範囲72に存在すれば、OS起動を行える(S274)。
<第2の実施の形態の効果>
(a) 基地局14からの電波強度を利用してPC4の使用範囲72を設定でき、基地局14の配置位置を利用してPC4の使用範囲72の設定を自動化できる。基地局14からの電波強度を利用するので、PC4の使用範囲72は一定距離に固定されない。
(b) PC4の使用範囲72に複数の基地局の電波強度を利用するので、基地局14の設置密度が高い地域では複数の電波強度を利用でき、使用範囲72の設定精度を向上させることができる。
(c) PC4の使用範囲72の設定には単一または複数の基地局14からの電波強度を利用するので、複数の基地局14が存在しない場合には、単一の基地局からの電波強度範囲を用いることができる。単一の基地局14からの電波強度を利用する場合には、その基地局14に応じて使用範囲の自動設定とともにその範囲を拡大することできる。
(d) 特定の場所で使用可能とする(または使用制限をする)システムを構成する際、一定値以上の電波強度を持つ単一または複数の基地局14に対し、一定値以上の電波強度がある周囲の基地局14を除外範囲として使用範囲72を設定できる。
(e) 一度設定した使用範囲を設定すれば、使用頻度に応じて使用範囲72を適正化することができる。
〔第3の実施の形態〕
図26は、第3の実施の形態に係る制御システム2−3の一例を示している。この制御システム2−3にはPC4の管理に用いられる管理サーバ82が含まれる。この管理サーバ82は登録条件の判定処理を実行する。この登録条件の判定処理では、PC4の使用する位置(つまり使用範囲72)を計算し、その計算結果をPC4に提供する。PC4は、使用範囲72が制御される電子機器の一例である。このPC4は管理サーバ82と有線または無線により接続され、ネットワークを構成している。使用範囲72には単一または複数の基地局の受信電波が利用されており、この実施の形態には一例として3組の基地局14−A、14−B、14Cが利用されている。
この実施の形態においても、ユーザによる位置登録には携帯端末装置16が使用されている。
この制御システム2−3では携帯端末装置16から管理サーバ82に対してPC4の位置登録のコマンドを発行する(S301)。これにより、管理サーバ82では、携帯端末装置16から発行されたコマンドに基づき、PC4の位置登録の処理を実行する。携帯端末装置16を用いるのは、管理サーバ82に登録されていないPC4からの位置登録の要請を管理サーバ82で受けることができない不都合を回避するためである。また、登録にユーザが携帯する携帯端末装置16を用いることにより、位置登録とPC4の使用とを分離でき、セキュリティを向上させることができる。
この位置登録の処理では、管理サーバ82からコマンドで指示されたPC4に対し、位置情報の取得指示を行う(S302)。この取得指示に基づき、PC4では単一または複数の基地局の一例として電波を受信可能な複数の基地局14−A、14−B、14Cから位置情報と電波強度を取得する(S303)。
PC4で取得した位置情報や電波強度は、PC4から管理サーバ82に送信される(S304)。管理サーバ82は、登録条件判定処理の実行により、PC4の使用位置を含む使用範囲72を計算する(S305)。その際、既述したように、受信できた基地局14を基地局登録テーブル34に格納する。そして、各基地局14を既述の条件により有効テーブル35および除外テーブル36に登録する。管理サーバ82は有効テーブル35および除外テーブル36を表す情報をPC4に送信する(S306)。
有効テーブル35および除外テーブル36の情報提供を受けたPC4は、これら有効テーブル35および除外テーブル36の登録を行う(S307)。
そして、PC4の使用に当たっては、起動時、有効テーブル35および除外テーブル36を参照し、使用範囲72であればPC4の起動が実行される(S308)。使用範囲72外であれば、PC4の起動が禁止される。
<管理サーバ82のハードウェア>
図27は、管理サーバ82のハードウェアの一例を示している。
この管理サーバ82は携帯端末装置16およびPC4と連携されている。プロセッサ84は、制御部の一例である。このプロセッサ84はROM86に格納されているOSや制御プログラムなどの各種プログラムを実行する。
ROM86には既述のOSや制御プログラムなどの各種プログラムの記録のほか、基地局登録テーブル34、有効テーブル35および除外テーブル36が設定されている。RAM88はプロセッサ84の情報処理のワークエリアとして用いられる。
有線通信部90には携帯端末装置16が基地局などを介して有線または無線により接続されている。この有線通信部90では、携帯端末装置16から発せられたコマンドを受信し、該コマンドをプロセッサ84に提供する。
無線通信部92は制御対象の一例であるPC4と無線通信たとえば、Wi−Fiによって無線接続され、使用範囲72の判定処理などに必要な情報の授受を行う。PC4から提供された情報はプロセッサ84に提供され、既述の位置情報や電波強度情報が有効テーブル35や除外テーブル36の登録に用いられる。
<プロセッサ84の処理機能>
図28は、プロセッサ84の処理機能94の一例を示している。
この処理機能94には、制御機能96、端末情報処理機能98、有線通信制御機能100、無線通信制御機能102、登録および判定機能104、位置情報処理機能106、補正情報処理機能108が含まれる。
制御機能96は、OSおよびファームウェアプログラムなどにより実行されるプロセッサ84による基本機能である。
端末情報処理機能98は、管理サーバ82で管理する複数のPC4など、端末装置の情報を処理する機能である。
有線通信制御機能100は有線通信部90を制御し、有線通信を媒介として携帯端末装置16から送信されるコマンドを基地局14を通じて受信する。
無線通信制御機能102は無線通信部92を制御し、Wi−Fiなどの無線通信を媒介とし、対象装置であるPC4との無線通信を処理する。
登録および判定機能104は、位置情報処理機能106に取得されたデータ(所謂生データ)、補正情報処理機能108からの補正情報を参照し、基地局14の登録や、使用範囲72の判定を行う。基地局14の登録には、基地局登録テーブル34への登録、判定処理に基づく有効テーブル35への基地局14の登録、除外テーブル36への登録が含まれる。
位置情報処理機能106は、受信できた基地局14、位置情報などの生データを制御機能96に基づき、登録および判定機能104に提供する。
補正情報処理機能108は、時刻情報、複数のPC4による基地局14の電波強度などの統計情報を含む情報を処理し、その補正情報を制御機能96に基づき、登録および判定機能104に提供する。
<管理サーバ82を介在させた位置情報登録>
図29は、管理サーバ82を介在させた位置情報登録のシーケンスを示している。つまり、管理サーバ82を媒介とするPC4の位置登録の処理手順であり、PC4の使用範囲72が管理サーバ82の処理によって実行される。
このシーケンスでは、携帯端末装置16から管理サーバ82に対し、位置登録の指示が発せられる(S311)。この指示を受けた管理サーバ82は、PC4に対し、位置情報の取得の指示を行う(S312)。この指示を受けたPC4は、複数の基地局14に対し位置情報および電波強度の取得を行う(S313)。取得したこれらの情報は、PC4から管理サーバ82に送信される(S314)。
管理サーバ82は提供された位置情報および電波強度を用いて登録条件の判定処理を実行する(S315)。この登録条件の判定処理は、既述の通り、PC4の使用範囲(位置を含む)72を計算し、その計算結果をPC4に提供する。管理サーバ82は、登録した有効テーブル35および除外テーブル36をPC4に送信する(S316)。
有効テーブル35および除外テーブル36の送信を受けたPC4は、有効テーブル35および除外テーブル36の登録を行う(S317)。
<管理サーバ82による位置情報判定>
図30は、管理サーバ82による位置情報判定のシーケンスを示している。この処理では、PC4の使用範囲72の判定が管理サーバ82側で実行され、その結果を受けてPC4のOS起動が制御される。
このシーケンスでは、PC4の起動を実行する(S321)。この起動に基づき、PC4は複数の基地局14から位置情報および電波強度の取得を行う(S322)。PC4は取得した位置情報や電波強度の取得結果を管理サーバ82に送信する(S323)。
管理サーバ82は提供された位置情報や電波強度の取得結果を参照し、登録されている有効テーブル35や除外テーブル36を利用し、判定処理を行う(S324)。この判定処理は、PC4が使用範囲72にあるか否かの判定である。この判定結果は管理サーバ82からPC4に送信される(S325)。
判定結果の送信を受けたPC4は、該PC4が使用範囲72に存在すれば、OS起動を行える(S326)。
<第3の実施の形態の効果>
(a) 既述のPC4など、単一または複数のPCの使用範囲72を管理サーバ82で管理することができる。
(b) PC4を使用範囲72外に持ち出した場合、管理サーバ82の登録を利用し、PC4の使用範囲72を更新し、または再設定することができ、PC4の使用範囲72外での無断使用を防止できる。高度なセキュリティ機能を維持できる。
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、PC4を例示し、その使用が許可される範囲を使用範囲72として例示した。これに対し、使用範囲72をPC4の使用を制限する使用制限範囲として設定してもよい。
(2) 上記実施の形態では、使用範囲72で使用されまたは使用が制限される電子機器の一例としてPC4を例示した。これに対し、使用が許可されまたは制限される電子機器は、PC4のほか、電子ゲーム機、電子スチールカメラ、ビデオカメラ、自動車などの車両、通信機能を備える家電製品などであってもよい。
(3) 第3の実施の形態では、管理サーバ82で管理される電子機器として単一のPC4を例示したが、複数のPC4であってもよいし、数種の電子機器であってもよい。
(4) 上記実施の形態では、電波強度を特定の数値レベルをパーセント〔%〕で示している。電波強度は受信レベルを表す電界強度を用いてもよく、管理すべき電子機器に対する基地局の電波強度レベルを特定できる数値であれば、どのような値でもよい。
(5) 上記実施の形態では、PC4または管理サーバ82との通信が可能な通信機器の一例として、携帯端末装置16を例示したが、これに限定されない。通信が可能な機器であればよく、スマートフォン、タブレット端末などの通信装置であってもよい。
次に、以上述べた実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
(付記1)単一または複数の基地局から電波および位置情報を受信する受信部と、
電子機器の使用を許可する使用範囲または前記電子機器の使用を制限する使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を登録し、または前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定から除外する基地局を登録する記憶手段と、
前記受信部で単一または複数の基地局から電波強度および位置情報を受信し、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、起動指示に対し前記使用範囲に応じた起動制御を行い、または前記使用制限範囲に応じた起動停止制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
(付記2)前記制御部は、前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を前記記憶手段に登録し、または該基地局の電波強度より低く前記使用範囲または前記使用制限範囲と重なる電波強度範囲の基地局があれば、前記使用範囲または前記使用制限範囲から除外する前記電波強度範囲の基地局を前記記憶手段に登録する
ことを特徴とする付記1に記載の電子機器。
(付記3)前記記憶手段は、
前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を登録する有効テーブルと、
前記有効テーブルに登録される基地局の電波強度より低く前記使用範囲または前記使用制限範囲に電波強度範囲が重なる基地局があれば、前記使用範囲または前記使用制限範囲から除外する電波強度範囲の基地局を登録する除外テーブルと、
を備えることを特徴とする付記1または2に記載の電子機器。
(付記4)前記制御部は、前記電子機器の外部の通信装置から受ける登録指示を契機に前記記憶手段に対する前記基地局の登録を行うことを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の電子機器。
(付記5)基地局電波を受信する電子機器に搭載されるコンピュータにより実行される制御プログラムであって、
単一または複数の基地局から電波および位置情報を受信し、
前記電子機器を使用する使用範囲または前記電子機器の使用を制限する使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を記憶手段に登録し、または前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定から除外する基地局を記憶手段に登録し、
前記電子機器の起動時、単一または複数の基地局から電波強度および位置情報を受信し、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、起動指示に対し前記使用範囲に応じた起動制御を行い、または前記使用制限範囲に応じた起動停止制御を行う
処理を前記コンピュータに実行させるための制御プログラム。
(付記6)基地局電波を受信する通信機能を備える電子機器の制御方法であって、
単一または複数の基地局から電波および位置情報を受信し、
前記電子機器を使用する使用範囲または前記電子機器の使用を制限する使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を記憶手段に登録し、または前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定から除外する基地局を記憶手段に登録し、
前記電子機器の起動時、単一または複数の基地局から電波強度および位置情報を受信し、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、起動指示に対し前記使用範囲に応じた起動制御を行い、または前記使用制限範囲に応じた起動停止制御を行う
ことを特徴とする電子機器の制御方法。
(付記7)単一または複数の基地局から電波および位置情報を受信する受信部を備える電子機器と、
前記電子機器と無線または有線により接続されたサーバに搭載され、前記電子機器の使用を許可する使用範囲または前記電子機器の使用を制限する使用制限範囲の設定に用いる単一または複数の基地局を登録し、または前記使用範囲または前記使用制限範囲の設定から除外する基地局を登録する記憶手段と、
前記サーバに搭載され、前記電子機器の起動時、単一または複数の基地局から電波強度および位置情報を受信し、単一の基地局であれば、該基地局の電波強度により前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、複数の基地局であれば、複数の電波強度の範囲により、前記使用範囲または前記使用制限範囲を定め、起動指示に対し前記使用範囲に応じた起動制御を行い、または前記使用制限範囲に応じた起動停止制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器の制御システム。
以上説明したように、本開示の構成の最も好ましい実施の形態等について説明した。本開示の構成は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。