以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、洗濯機1は、内槽8の回転軸10cが略鉛直方向の洗濯機1の外観斜視図である。この洗濯機1の筐体2の上部には上面カバー2aが設けられており、上面カバー2aには外蓋3が設けられている。外蓋3は、山型に折れ曲がりながら奥側に開くことにより、内槽8に衣類(洗濯物)が出し入れ可能になっている。
上面カバー2aの奥側には、外槽9内へ水を給水する給水ユニット12が設けられる。給水ユニット12には、水道栓からの給水ホース接続口4および風呂の残り湯の吸水ホース接続口5が設けられている。上面カバー2aの手前側には、電源スイッチ6が設けられ、外蓋3の手前側には、操作スイッチ7aおよび表示器7bからなる操作パネル7が設けられている。
図2に示すように、洗濯機1は、筐体2内に、内槽8、外槽9、駆動装置10、給水ユニット12などを備えている。
内槽8は、有底円筒形状を呈し、その開口縁には、中空内部に液体が封入されたリング形状をした合成樹脂製の流体バランサ8a、ステンレス鋼板などで形成された略円筒状の胴板8b、底部には、合成樹脂からなる底板(図示せず)を有しており、底板には、アルミニウム製のフランジがインサート成形により配置されている。胴板8bには、通水および通風のための多数の貫通孔8c(一部のみ図示)が形成されている。なお、内槽8は、上記の他に内槽8の回転バランスを調整するウエイト等を有して構成されても良い。
内槽8には、内側底面に回転翼8dを備えている。胴板8bの内周面側壁には回転翼8dが回転することによるポンプアップ作用により、外槽9に給水された洗濯水やすすぎ水を循環させるための循環シャワーケース(図示せず)、および糸くずを捕集するためのリントフィルターケース(図示せず)が複数個設けられている。
外槽9は、有底円筒形状を呈し、内槽8を同軸上に内包し、その上部に外槽カバー9aを備えて構成されている。外槽9は内周側底面に落込部9mが設けられ、落込部9mの外周側には、排水弁14が接続されている。
排水弁14を閉弁することにより、外槽9内に洗い水やすすぎ水を貯水可能となる。また、排水弁14を開弁することにより、外槽9内の水を、洗濯水排水路15を介して、洗濯機1の機外へ排水することができる。また 外槽9には、溜められた洗濯水の水位を検出するための水位センサ接続部(図示せず)が備えられている。
駆動装置10は、外槽9の底面の外側中央に配置されている。この駆動装置10は、モータ10aとクラッチ機構10bとを有し、駆動装置10の回転軸10cが外槽9を貫通し、内槽8および回転翼8dと結合するように構成されている。クラッチ機構10bは、モータ10aの回転動力を内槽8および/または回転翼8dに伝達する機能を有する。モータ10aは、その回転を検出するホール素子などで構成される回転検出装置28と、モータ10aに流れる電流を検出するモータ電流検出装置29を備える。
図3に示すように、外槽カバー9aは、略円形状の投入口9bを有し、外槽9の上端縁部に取り付けられる。内槽8は、胴板8bの上端縁部に取り付けられる合成樹脂などで形成された流体バランサ8aを有している。
図4に示すように、外槽カバー9aには、後記する槽洗浄用の給水口20が設けられる。
図5は、外槽カバー9aを裏面から見た図である。図5に示すように、外槽カバー9a裏面には有するシャワーカバー21が備えられている。このシャワーカバー21と外槽カバー9aの間には水封するためのパッキン21bが備えられており、給水口20より給水された水を無駄なくシャワーカバー21に流すことができる。
図6に示すように、シャワーカバー21には流体バランサ8aの径方向に複数の散水口21aが配列されている。流体バランサ8aの内周側に位置する散水口21aからは、後記する水溜め部30に給水され、流体バランサ8aの外周側に位置する散水口21aからは、内槽8外周壁に流れるように給水される。
図7は、流体バランサ8aの全体像を示す斜視図である。図7に示すように、流体バランサ8aは略円環形状をしている。流体バランサ8aは、内部に比重の大きな流体を封入して構成され、内槽8の回転時に洗濯物の偏り等によって偏心が生じたときに、流体バランサ8a内での流体の移動によって偏心をキャンセルし、回転のバランスを維持する働きを有する。流体バランサ8aは、内槽8の回転軸中心と略同心円となるように胴板8b上端部に取り付けられる。
図8は、流体バランサ8aを径方向に切断した断面図である。流体バランサ8aに封入される液体は、収容部8a1に収容されている。収容部8a1内部は、流体バランサ8a中心から径方向に複数の層に分かれている。また各層の内部は、多数の部屋に区切られ、各部屋は封入される液体が移動可能なように連通している。
図9に示すように内槽8(流体バランサ8a)上面には、水を溜めることができる水溜め部30が形成される。水溜め部30は、内槽8の円周上面を一周する凹部で構成される。後記するが、水溜め部から水を溢れさせたり飛散させたりすることにより槽を洗浄するので、水溜め部は高い位置に配置されるのが望ましく、内槽8の上端部に形成するのが良い。水溜め部30は、内槽8の回転軸に対して内周側と外周側にそれぞれ位置する内周側隆起部30aと外周側隆起部30bとで挟まれるように形成される。隆起部の間に形成される水溜め部30は、水が溜められる容積が大きいほど、より多くのまとまった水を外槽9へ飛散させることが可能となるため、外槽9洗浄の効果が向上する。
本実施例では、胴板8b上端部に流体バランサ8aが備えられているため、水溜め部30は流体バランサ8a上面に形成しているが、内槽8の流体バランサ8a以外の部材に水溜め部30を一体形成するか、別部材として設けても良い。
外周側隆起部30bの内周面30b1は略鉛直、または、外槽9方向に傾斜して形成される。外周側隆起部30bの内周面30b1が外槽9方向とは反対に傾斜して形成されると、水溜め部30に溜まった水は飛散できずに残留し、湿気や水垢の原因となる。そのため、外周側隆起部30bの内周面30b1は、水溜め部30に溜められる水の容積を考慮し略鉛直に形成することが望ましい。
外周側隆起部30bの外周面30b2は略鉛直、または、外槽9とは反対方向に傾斜して形成される。外周側隆起部30bの外周面30b2が外槽9方向へ傾斜して形成されると、水溜め部30から水を溢れさせたときに、水が内槽8外周壁を伝って流れずに外槽9と内槽8の間を落下してしまい易くなる。一方で、外槽9方向に傾斜させると、外周側隆起部30bの内周面30b1を外槽9側へ傾斜させて形成できるので、水溜め部30の容積を増やすことができる。その場合、外周面30b2は鉛直軸から外槽9方向へ20°以下の傾斜で形成されるのが良い。また、外槽9方向へ傾斜させる場合は、外周側隆起部30bの外周面30b2が傾斜する分だけ外槽9との間隔が狭まる点を考慮する必要がある。
水溜め部30を流体バランサ8aに形成する場合、流体バランサ8aの性能低下を防ぐため流体バランサ8aに封入される液体を収容する容積をできる限り減少させたくないという制約がある。そのため、水溜め部30の深さは、内周側より外周側が深く形成される。この理由は、内槽8を回転させた場合、水溜め部30に溜まった水の水面は遠心力により外周側が高くなり、内周側が低くなることにある。つまり、内槽8の回転数を上げていくと、水溜め部30の水が外槽9に飛散する回転数に達するまでの間に、水溜め部30の内周側の水が多く流出してしまう。そのため、水溜め部30の外周側を深く形成することで、内槽8回転時に水溜め部30の水が外槽9へ飛散し始めるまでに、水溜め部30により多くの水量を確保しておくことができる。また、流体バランサ8aに収容される液体の収容容積の減少も抑えられる。
また、水溜め部30に残る水量をより多く確保するため、外周側隆起部30bの高さは、内周側隆起部30aより高く形成される。上記と同様の理由により、内槽8回転時は水溜め部30の外周側の水面が高くなるため、外周側隆起部30bを高く形成することで、水溜め部30に水量を確保し易くなり、外槽9へより多くの水を飛散させることができる。
図10は、内槽8に設けられる水溜め部30の種々の形状を示した断面図である。形状Aを基本構造として順に説明していく。形状Aは、図9に示す水溜め部30の簡略図であり、内周側隆起部30aと外周側隆起部30bとで挟まれた水溜め部30の形状である。外周側隆起部30bの内周面30b1も外周面30b2も略鉛直方向に形成され、水溜め部30の深さは内槽8の回転軸に対して内周側から外周側へ徐々に深くなるように形成される。内周側隆起部30aには、水溜め部30の容積を増加させるために突起30a1が設けられているが、突起30a1の位置は、内槽8の内周端に設けることでより水溜め部30の容積が増加する。
形状Bは、外周側隆起部30bの上端に外槽9方向へ延びる突起30b3を設けることにより、給水口20に対向する面(突起30b3上面)を形成している。そのため、給水口20から給水された水が、この突起30b3の上面に当たって外槽9へはじき飛ばされることで外槽9内周壁を洗浄することができる。この突起30b3は、外槽9方向に長過ぎると、外槽9と内槽8の間の距離が狭まってしまい、内槽8外周壁へも水が流れ落ち難くなってしまうので、これを考慮して適宜長さを調整する。
形状Cは、水溜め部が流体バランサ8a上面に設けられる場合において、外周側隆起部30bの外周面30b2に段差を設けることで、水溜め部30の位置を流体バランサ8aの外周端から距離を遠ざけて形成している。流体バランサ8aに封入される液体は、流体バランサ8aの外周側に位置するものほど偏心を調整する効果が高いが、形状Cのようにすることで、液体の収容部を流体バランサ8aの外周側により広く設けることができる。そのため、流体バランサ8aの性能低下を抑えて水溜め部30を形成することができる。また、水溜め部30の位置を外槽9から遠ざけ過ぎると、水溜め部30の水を外槽9へ飛散させる洗浄を行うときに外槽9内周壁に水を当て難くなるため、水溜め部30の位置は外槽9との距離を考慮して調整する。
形状Dは、内周側隆起部30aに突起30a1を設けず滑らかに形成することで、内周側隆起部30aも洗浄し易くしている。内周側隆起部30aに突起30a1を設けると、その高さ分の水溜め部30の容積を増加できるが、突起30a1を超えて内周側へは水が流れ難い。水溜め部30の容積は減少するが、突起30a1を設けず内周側隆起部30aが略平坦に形成されているので、内周側にも水が行き渡り易く水溜め部30上面も満遍なく洗浄し易くなる。
形状Eは、内周側隆起部30aと外周側隆起部30bの間に中間隆起部30cを形成している。水溜め部30を二層に分けることで、外槽9へ水を飛散させたときに外槽9内周壁の水が当たる位置を変化させることができる。また、中間隆起部30cと外周側隆起部30bの内周面30b1の角度を変えることで、各層に溜められた水が外槽9へ飛散する方向を変化させることができる。なお、二層以上に分けても良いが、隆起部を複数形成すると水溜め部30全体の容積は減少するため、何層とするかは適宜調整される。
形状Fは、内槽8とは別体で水溜め部30を取り付けて構成している。別体で取り付けるため、既存の内槽8を構成する部材をそのまま使用することができ、新たな設備投資や特具投資等を抑えることができる。取り付ける水溜め部30の形状は、形状Fに限らず、形状A〜形状Eの特徴を持つ水溜め部30の形状をしたものでも良い。また、取り付ける水溜め部30は、内槽8の外周端から飛び出ない寸法で形成されるのが好ましい。
図11は、外槽カバー9aに設けられる給水口20と、流体バランサ8a上面に形成される水溜め部30の配置関係を示す図である。給水口20は水溜め部30と対抗するように配置され、給水口20から出る水が水溜め部30に給水されるように設けられる。
給水口20には、内槽8の径方向に並んだ複数の散水口20aを有するシャワーカバー21(給水口カバー)が備えられる。シャワーカバー21を備えた状態で給水口20から給水すると、外周側隆起部30bより内側に位置する散水口21aからは水溜め部30に給水され、外周側隆起部30bより外側に位置する散水口21aから出た水は内槽8外周壁に当たって流れ落ちる。すなわち、シャワーカバー21を備えることにより、水溜め部30と内槽8外周壁に給水することができる。
図12は、給水ユニットから外槽9内への経路を示す概略図である。給水ユニット12は、外槽(メイン)給水電磁弁12aと、仕上剤給水電磁弁12bと、槽洗浄給水電磁弁12cと、風呂水ポンプ12eと、給水経路12f〜12hと、を備えている。各給水電磁弁は、水道栓からホース等を介して連結され、弁の開閉によって水道水の流水を制御する。各給水電磁弁を開くと給水経路12f〜12hを通って外槽9へ給水される。
外槽給水電磁弁12aを開くと、給水口20に接続される給水経路12fを介してメイン注水口12iから外槽9へ給水される。外槽給水電磁弁12aは、開いた時に給水される給水量が各給水電磁弁の中で最も多く、洗い運転やすすぎ運転で主に使用される。
仕上剤給水電磁弁12bを開くと、給水経路12gを介して投入装置13に給水される。そして、投入装置12に給水された水は、投入された仕上剤とともに給水経路12gを介して投入口13aから外槽9へ注入される。
槽洗浄給水電磁弁12cを開くと、給水口20に接続される給水経路12hを介して外槽9へ給水される。このとき、外槽9へ給水される水は、内槽8上部に設けられた水溜め部30に供給される。
なお、風呂水ポンプ12eで汲み上げられた吸水ホース接続口5からの風呂水は、給水経路12fに合流してメイン注水口12iから外槽9内に給水する。
図13に示すように、洗濯機1は、制御装置100を備える。制御装置100は、マイコン110を中心に構成される。マイコン110は、運転パターンデータベース111、工程制御部112、回転速度算出部113、衣類重量算出部114などを備える。
マイコン110は、操作スイッチ7aから入力された運転コースにあった運転パターンを呼び出し、所定の全自動洗濯コースまたは洗濯、すすぎ、脱水を開始する機能を有する。
工程制御部112は、運転パターンデータベース111から呼び出された運転パターンに基づき、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、槽洗浄工程、の各工程を運転制御する機能を有する。各工程において、工程制御部100は、それぞれ駆動回路を介して、給水ユニット12、排水弁14、モータ10a、クラッチ機構10b等を駆動制御する機能を有する。
回転速度算出部113は、モータ10aの回転を検出する回転検出装置28からの検出値に基づき、モータ10aの回転速度を算出する機能を有する。
衣類重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された回転速度と、モータ電流検出装置29の検出値に基づいて、内槽8内の衣類の重量を算出する機能を有する。衣類の重量が増加することにより内槽8を回転させるための負荷が大きくなり、モータ10aに流れるモータ電流が多く必要になることから、モータ10aのモータ電流と回転速度により衣類の重量を算出することができる。
次に、本実施形態に係る洗濯機1の動作について図14〜図18を参照して説明する。図14は本発明の実施例に係る洗濯機の運転工程を説明する工程図、図15は本発明の実施例に係る洗濯機の槽洗浄運転の詳細な工程図、図16〜図18は本発明の実施例に係る洗濯機の槽洗浄時の水の流れを示す模式図である。なお、図14に示す洗濯運転は、洗い→すすぎ→槽洗浄→脱水の運転工程を説明する工程図である。
洗剤量センシング工程S1では、回転翼8dを回転させ、そのときの負荷量を測定結果から衣類重量算出部114が給水前の乾いた状態での布量を算出する。
回転給水工程S2では、内槽8および/または回転翼8dを回転させながら工程制御部112が外槽給水電磁弁12aを開弁し、給水経路12fを介して水道水をメイン注水口12iから外槽9内に注水する。また、工程制御部100は、外槽給水電磁弁12aが開弁されてから所定時間経過後に閉弁する。
洗剤溶かし工程S3では、内槽8に備えられた洗剤投入口より、回転翼8d下側へ投入された洗剤を回転翼8dが回転することにより、回転給水工程S2で給水された水に溶かし、高濃度な洗剤液を作る。
給水工程S4では、工程制御部100が外槽給水電磁弁12dを開弁し、水道水が給水経路12fを介してメイン注水口12iから外槽9内に注水される。また、工程制御部100は、外槽給水電磁弁12aが開弁されてから所定時間経過後に閉弁する。
浸透かくはん工程S5では、水位の低い状態で回転翼8dを回転させ、洗剤溶かし工程S3で作られた高濃度な洗剤液を衣類に浸透させる。
布量センシング工程S6では、回転翼8dを回転させ、衣類重量算出部114が、水を含んだ状態の衣類の重量を算出する。
給水工程S7では、工程制御部100が、洗剤量センシング工程S1で算出した衣類の重量と、布質センシング工程S6で判断した衣類の布質に合わせて外槽9の内部に給水する。
前洗い工程S8では、高濃度の洗剤溶液で衣類を洗う。
布質センシング工程S9では、洗剤量センシング工程S1で算出した衣類の重量と布量センシング工程S6で算出した水を含んだ状態の衣類の重量から、衣類の布質(吸水性)を判断する。判断された衣類の布質に従って以下の工程が制御される。
本洗い工程S10では、工程制御部100が、回転翼8dを回転して、衣類を洗う。なお、図示していないが、本洗い工程S10では、回転翼8dを正方向逆方向に交互に回転させ衣類をほぐす運転も行う。また、工程制御部100は、この本洗い工程とほぐし工程を数回繰り返す。本洗いが終了すると、衣類のアンバランス状態を監視し、脱水に移行するか否かを判断する。
排水工程S11では、工程制御部100が、排水弁14を開弁し、外槽9内の洗い水を排水する。
脱水工程S12では、排水終了後、工程制御部100が、内槽8を回転させて衣類に含まれる水(洗い水)を脱水する。
回転シャワー工程S13では、工程制御部100が、排水弁14を閉弁、外槽給水電磁弁12aを開弁して、外槽9にすすぎ水を供給する。そして、内槽8を回転させることにより衣類に満遍なくすすぎ水を散布する。
脱水工程S14では、工程制御部100が、内槽8を回転させ、衣類からすすぎ水を脱水する。
回転シャワー工程S15では、工程制御部100が、再び内槽8を回転させつつ、排水弁14を閉弁、外槽給水電磁弁12aを開弁して、外槽9にすすぎ水を供給し、すすぎ水を内槽8内の衣類に散布する。
排水工程S16では、工程制御部100が、回転翼8dおよび内槽8を停止させて、排水弁14を開弁し、外槽9内のすすぎ水を排水する。
脱水工程S17では、排水工程S16終了後、工程制御部100が、内槽8を回転させて衣類に含まれる水(すすぎ水)を脱水する。
給水工程S18では、工程制御部100が、排水弁14を閉弁、仕上剤給水電磁弁12dを所定時間開弁して、外槽9に仕上剤を含むすすぎ水を供給する。また、給水工程S18では、工程制御部100が、外槽給水電磁弁12aを開弁して、外槽9にすすぎ水を供給する。
かくはん工程S19では、工程制御部100が、外槽9にすすぎ水を溜めた状態で内槽8を回転させて衣類を攪拌しつつすすぐ。
次に図15のフローチャートに沿って、適宜、図16〜図18を参照しながら、槽洗浄運転について説明する。図15は、槽洗浄工程S20から脱水S23に至るまでの詳細な制御を示す工程図である。
槽洗浄工程S20では、すすぎ水を残した状態で回転翼8dを回転させ、回転翼8dに付着した汚れを洗浄する残水攪拌が所定時間(約70s)行われる。
残水攪拌を終えると脱水起動用の水位まですすぎ水を排出する排水工程S21(中間排水)が行われる。ここで、ほとんどの水を排出してしまうと脱水起動時に内槽8内で洗濯物が動きづらくアンバランスが発生し易くなり、振動の原因となるため、脱水起動用の水位として洗濯物の量に応じてすすぎ水を残す。
次に、槽洗浄シャワー工程S22について図16〜図18を参照しながら説明する。図16〜図18に記載の矢印は、槽洗浄シャワー工程S22における水の流れを示す。
排水工程S21(中間排水)を終えたあと、槽洗浄シャワー工程S22に移行し、内槽8を回転させながら槽洗浄電磁弁12cを開弁して給水口20から水溜め部30に給水する。
図16に示すように、水溜め部30の上部に位置するシャワーカバー21の散水口から出た水は、水溜め部30に貯水され、水溜め部30より外周側に位置するシャワーカバー21の散水口21aから出た水は、流体バランサ8aの外周壁や内槽8外周壁を伝って流れ落ちる。
図17に示すように、そのまま給水を続けていると、水溜め部30に給水された水量が水溜め部30の容積を上回って外周側隆起部30bから水が溢れ出る。水溜め部30から溢れ出た水は、流体バランサ8aの外周壁を通って内槽8外周壁に沿って流れ落ちる。このように内槽8外周壁に水が流れることで、内槽8外周壁に付着した汚れを洗い流すことができる。
このとき、内槽8を回転させながら給水しているので、外周側隆起部30bから満遍なく水を溢れさせることができる。また、この内槽8外周壁を流れ落ちる水は、初めに流れた経路をたどるように流れ易く、特に溢れ出る水量が少ない場合には水が流れる経路が固定化されやすい。そうすると、内槽8外周壁に満遍なく水が流れ落ちずに線状の洗いムラが発生してしまう。そのため、内槽8の回転を一方方向とせずに正逆回転させることで水が流れる経路を変化させられ、満遍なく水を行き渡らせることができる。なお、水量を増やすことでも線状の洗いムラを防ぐことができるが、正逆回転を行うと、より少ない水量で内槽8を満遍なく洗浄できる。
正逆回転は、正回転および逆回転を20sずつ6回繰り返し、計120s行われる。この運転時間は、予め設定しておいても良いが、汚れセンサや、臭いセンサ、洗濯濃度センサ等の各種センサの実行結果に基づいて決定するようにしても良い。本実施例では、約5L給水を行うが、正逆回転の時間に応じて給水量は適宜変更される。正逆回転ではなく一方向の回転の場合には給水量を増やすことが望ましい。正逆回転の回転数(回転速度)は、正逆ともに約30rpm(1分間あたりの回転回数)で行われる。この回転数は、水溜め部30から水が溢れ出るように適宜調整されるが、5rpm〜60rpmが良く、より望ましくは20rpm〜40rpmが良い。回転数が低過ぎると、外周側隆起部30bから水が満遍なく溢れ難く、回転数が高過ぎると、水溜め部30の水が内槽8外周壁に接触せずに内槽8と外槽9の間を落下してしまうか、もしくは外槽9側へ飛散してしまい内槽8外周壁の洗浄が行われない。
ここまでに、槽洗浄シャワー工程S22における、主に内槽8外周壁を洗浄する制御について説明したが、次に外槽9内周壁を洗浄する制御について説明する。
正逆回転を終えた後、槽洗浄給水電磁弁12cを閉弁し、水溜め部30への給水を停止する。排水弁14を開弁し、正逆回転中に給水された水量を排出して脱水起動用の水位に戻す。外槽9内の水位が脱水起動用の水位となった後、排水弁14を閉弁して排水を停止する。
再度、水溜め部30への給水を開始し、水溜め部30に水を溜めた状態で内槽8の回転数を加速させる。そうすると、図18に示すように、水溜め部30に溜まっている水が遠心力により外周側隆起部30bを乗り越えて外槽9へ向かって飛散し、外槽9内周壁に当たって流れ落ちる。これにより、給水されている水量だけでなく水溜め部30に溜められている水量がまとめて外槽9内周壁に掛かるため、洗いムラが発生し難く満遍なく外槽9内周壁を洗浄することができる。
このとき、内槽8を回転させる加速度が大きいほど、水溜め部30に溜められた水を一度により多く外槽9へ飛散させることができる。逆に、加速度が小さい場合は、内槽8の回転数が、水溜め部30の水が外槽9へ飛散するようになる回転数に達するまでに、水溜め部30の多くの水が外槽9内周壁に掛からず、外周側隆起部30bを乗り越えて内槽8外周壁や内槽8と外槽9の間を落下してしまう。よって、外槽9内周壁に当たる水量が減少してしまう。
上記の理由から、水溜め部30に溜められた水を一度により多く外槽9内周壁に掛けるためには、内槽8の回転数を急加速させるのが良い。そのため、水溜め部30に水を溜めた状態から内槽8を回転させる加速度は、20rpm/s(1秒間に20rpm上昇する加速度)以上が良く、望ましくは40rpm/s以上である。本実施例では50rpm/s以上としているが、加速度の上限値は、使用するモータの性能や振動を考慮した値となる。なお、水溜め部30に給水し始めるタイミングは、内槽8の回転数を加速させる前とすることで加速時に飛散する水量を増やすことができる。
本実施例では、脱水起動用の水位に戻すのに外槽9内の水位を計測するため、内槽8の回転を止めているが、回転を止めずに加速し回転数を上げていくことで運転時間を短縮することもできる。その場合、内槽8を回転させた状態から加速するので、水溜め部30に溜められた水が既に少し溢れた状態であるため、外槽9内周壁へ飛散する水量は、内槽8を停止した状態から加速させるより減ってしまう。
したがって、多くの水量を飛散させるには内槽8を停止させた状態から加速させるのが望ましいが、内槽8を停止させず回転している状態から加速させる場合には、30rpm以下で回転している状態から加速するのが良い。なお、水溜め部30の外周側隆起部30bを内周側隆起部30aより高く形成している場合には、内槽8回転時に水溜め部30から溢れる水量を抑えられるとともに、運転時間を短縮することができる。
内槽8の回転数を約130rpmまで加速させた後、一旦加速を停止する。そして、そのまま内槽8を回転させながら水溜め部30への給水を続ける。加速は停止しているが、内槽8の回転数は、水溜め部30の水が外槽9へ飛散する回転数に達しているため、水溜め部30に給水される水が外周側隆起部30bを乗り越えて外槽9へ飛散し、外槽9内周壁へ当たり続ける。これにより、外槽9内周壁に当たった水が流れ落ち、外槽9内周壁に付着している汚れを洗い流す。この運転は、所定時間(約80s)行われ、その間に合計約3Lが給水される。所定時間経過後、水溜め部30への給水を停止し、槽洗浄シャワー工程S22を終了する。
ここまで、槽洗浄シャワー工程S22について説明したが、水溜め部30から水を溢れさせて行う内槽洗浄運転は実行せずに省略することで、槽洗浄シャワー工程S22による運転時間全体の延長を抑制することができる。すなわち、水溜め部30に水を溜めた後に内槽8の回転数を加速させて水を飛散させる外槽洗浄運転だけを行う場合は、外槽洗浄運転で増加した内槽8の回転数をそのまま利用して脱水工程S23に移行できるため脱水運転時間の延長となり難い。外槽洗浄運転でも衣類の脱水が行われているので、外槽洗浄運転は、脱水工程S23の一部として同時に行うこともできる。
なお、水溜め部30に水を溜めた後に内槽8の回転数を加速させて水を飛散させる外槽洗浄運転は、複数回行っても良い。すなわち、水溜め部30の水を飛散させた後、内槽8の回転数を減速して水溜め部30に水を溜め直し、再度、内槽8の回転数を加速させる運転を行う。この場合、内槽8の回転数を一旦下げるため時間の延長となるが、内槽8を略一定速度で回転させながら水を飛散させ続ける外槽洗浄より、一度に多量の水を飛散させる外槽洗浄の方が効率的に洗浄できるため、給水量を抑えられ節水に繋がる。
また、本実施例では、外槽洗浄運転時に内槽8の回転数が約130rpmとなるまで加速させるが、振動が大きくなる一次共振点が70rpm〜90rpmに存在する。そのため、内槽8の回転数を何度も一次共振点を通過させると、振動発生のリスクを増大させてしまう。したがって、水溜め部30に水を溜めた状態で、内槽8の回転数を加速させる外槽洗浄運転を行うとき、内槽8の回転数を60rpm以下で行うことで振動を抑えて洗浄することができる。
同様に、二次共振点が250rpm付近に存在するため、内槽8を略定速回転させながら水溜め部30から水を飛散させる外槽洗浄運転を行うときは、内槽8の回転数は、一次共振点と二次共振点の間となるように100rpm〜240rpmとするのが良い。二次共振点を通過した後、内槽8の回転数が高くなった状態で水溜め部30に給水すると、外槽9だけでなく外槽カバー9aへ多量の水が飛散してしまうので、給水するタイミングはこれを考慮して設定される。
図14に戻って、次に脱水工程S23に移行する。脱水工程S23は、槽洗浄シャワー工程S22で内槽8を回転させているそのままの状態で移行し、内槽8の回転数を約200rpmまで加速させる。内槽8の回転数が上がることで、水溜め部30に残っている水が外槽9内周壁に飛散し、外槽9内周壁を洗浄する。
脱水工程S23では、内槽の回転数を段階的に加速し、約850rpmで回転させることで、衣類に含まれる水分を取り除く。なお、ユーザが設定することにより、約1000rpmで回転させることもある。槽洗浄シャワー工程22の後に、内槽8を高速回転させる脱水工程S23を行うことで、水溜め部30に溜まった水のほぼ全てが飛散するため、水溜め部30に水が残り難く、湿気や水垢の原因とならない。
以上説明したように、本発明の実施例に係る洗濯機1では、外槽カバー9aに、給水ユニット12から供給された水道水を内槽8の上部に設けた流体バランサ8a上面に形成される水溜め部30に給水する給水口20が設けられている。また、給水口20には、内槽8の径方向に複数の散水口21aを有するシャワーカバー21が設けられる。
水溜め部30は、内周側隆起部30aと外周側隆起部30bとで挟まれるように形成されている。外周側隆起部30bは、内周側隆起部30aより高くなるように形成され、外周側隆起部30bの内周面30b1と外周面30b2は、略鉛直に形成される。水溜め部30の深さは、内槽8回転軸に近い内周側より外周側が深くなるように形成される。
内槽8を正逆回転させながらシャワーカバー21から水を供給することで、一部の水が水溜め部30に貯水され、一部は内槽8外周壁を伝って流れ落ちる。そのまま給水し続けると、水溜め部30から溢れ出した水が内槽8外周壁に流れる。このとき、内槽8を回転させながら水を溢れさせるため、溢れ出す位置が偏り難く満遍なく内槽8外周壁を水が流れる。また、正逆回転させることにより、水が流れる経路が固定化されずに内槽8外周壁全体に水が行き渡り易くなる。これにより、内槽8外周壁に汚れやゴミが付着するのを抑制できるので、カビの繁殖や異臭の発生等が抑制され、内槽8を清潔に保つことができる。さらに、洗濯物へのゴミの付着も防止または抑制することができる。
水溜め部30に給水して水を溜めた状態で、内槽8の回転数を加速させることで、水溜め部30の水を一度にまとめて外槽9へ飛散させる。槽に水を流して洗浄する際、水量が少ないと水が流れる経路が固定化されてしまい、線状の洗いムラが発生してしまう虞があるが、水溜め部30に溜まった水がまとめて外槽9内周壁を流れるので、外槽9内周壁を満遍なく洗浄できる。したがって、外槽9内周壁に汚れやゴミが付着するのを抑制できるので、カビの繁殖や異臭の発生等が抑制され、外槽9を清潔に保つことができる。さらに、洗濯物へのゴミの付着も防止または抑制することができる。
槽洗浄シャワー運転S22から脱水に移行することで、内槽8を回転させた状態のままで脱水を開始できるので、槽洗浄シャワー運転による運転時間の延長を短縮することができる。また、槽洗浄シャワー運転S22は、各すすぎ工程の間または前後に行っても良いが、外槽9内の水がなるべくきれいな状態である最終脱水前に行うことが望ましい。なお、最終脱水後に槽洗浄シャワー運転S22を行うと水溜め部30に水が残ってしまう虞があり、湿気や水垢の原因となってしまう。
以上、本発明の実施形態に係る洗濯機1として、内槽8の回転軸10cが略鉛直方向の縦型式洗濯機を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、乾燥機能を有する縦型式洗濯乾燥機であってもよい。