以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈発明の実施形態1〉
図1〜図9に示すように、本実施形態1に係る切断装置(10)は、ガス発生剤の反応により発生した高圧ガスを用いてブレード(30)を進出させることによって、通電用部材であるハーネス(12)を切断するように構成されている。この切断装置(10)は、高圧ガスを発生させるためのガス発生剤として火薬を用いている。
上記切断装置(10)は、図1〜図5に示すように、樹脂ケース(20)を備えている。樹脂ケース(20)の内部には、ストッパ(23)と内筒(24)とブレード(30)とガス発生部(35)とが収容されている。
以下では説明の便宜上、図2における左右方向の左側を「前側」、右側を「後側」とし、図2における上下方向の上側を「上側」、下側を「下側」として説明する。また、図2における紙面に直交する方向の手前側を「左側」、奥側を「右側」として説明する。
上記樹脂ケース(20)は、例えばPC(ポリカーボネート)等の樹脂によって形成されている。樹脂ケース(20)を構成する樹脂材料は、これに限られず、プラスチック等を含む樹脂材料であればよい。また、樹脂ケース(20)は、略直方体形状に形成されて樹脂ケース(20)の略下半部を構成する土台部(13)と、該土台部(13)の下面および後面以外の面を一体的に覆い樹脂ケース(20)の略上半部を構成するカバー部(14)とを有している。つまり、カバー部(14)は、土台部(13)の上面、前面、左面および右面を覆うように構成されている。
そして、上記樹脂ケース(20)には、略円柱状の収納孔(21)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。収納孔(21)には、前方から後方へ向かって順に、ストッパ(23)、内筒(24)およびガス発生部(35)が収容されている。
また、上記樹脂ケース(20)には、ハーネス(12)を設置するための設置孔(22)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該設置孔(22)は、収納孔(21)の軸心を含む鉛直面に関して対称な形状に形成されている。具体的には、設置孔(22)は、収納孔(21)の前後方向の中央部から左右方向にそれぞれ延びた後、前方へ折れ曲がり、その後さらに下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面まで延びている。
上記設置孔(22)に設置されるハーネス(12)は長板状に形成されている。該ハーネス(12)は、中央のU字状部(12a)と、該U字状部(12a)の両端にそれぞれ連続する2つのL字状部(12b)とを有している。
また、図1に示すように、樹脂ケース(20)には、収納孔(21)から外部へ延びる排ガス路(28)が、土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該排ガス路(28)は、ガス発生部(35)によってブレード(30)を進出させるために生成された高圧ガスが排出される。
さらに、上記樹脂ケース(20)には、収納孔(21)の前方側から空気を排出するための排気孔(29)が形成されている。該排気孔(29)は、収納孔(21)の前方端の中央から前方へ向かって延びた後、下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面まで延びている。
上記ストッパ(23)は、進出したブレード(30)を受け止めて停止させるためのものである。上記ストッパ(23)は、樹脂材料によって有底円筒形状に形成されている。具体的に、ストッパ(23)は、円板状の底部(23a)と円筒状の筒部(23b)とを有し、底部(23a)が筒部(23b)よりも前方側に位置するように配置されている。底部(23a)の中央部には、樹脂ケース(20)の排気孔(29)と連通する孔(23c)が形成されている。
上記内筒(24)は、収納孔(21)においてストッパ(23)の後方に配置され、ハーネス(12)を支持している。内筒(24)は、第1筒状部材(25)と第2筒状部材(26)とで構成され、両部材(25,26)でハーネス(12)を挟持している。内筒(24)には、ブレード(30)が摺動自在に収納される。なお、内筒(24)は本発明に係る筒状部材を構成している。
上記第2筒状部材(26)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、ストッパ(23)の後方において、ストッパ(23)と同軸となるように配置されている。第2筒状部材(26)は、ブレード(30)が挿通可能な内径に構成されている。なお、第2筒状部材(26)はセラミックスによって形成されていてもよい。
上記第1筒状部材(25)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、第2筒状部材(26)の後方において、第2筒状部材(26)と同軸となるように配置されている。第1筒状部材(25)は、内径が第2筒状部材(26)の内径と概ね等しくなるように構成されている。図6に示すように、第1筒状部材(25)の前方側端面(25c)には、ハーネス(12)のU字状部(12a)が挿通する2つの切欠き溝(25a)が形成されている。2つの切欠き溝(25a)は、前方側端面(25c)の径方向に延びており、樹脂ケース(20)の設置孔(22)に対応する位置に形成されている。また、第1筒状部材(25)の側部には、樹脂ケース(20)の排ガス路(28)と連通する貫通孔(25b)が形成されている。つまり、ガス発生部(35)によって生成された高圧ガスは、貫通孔(25b)および排ガス路(28)を順に通って排出される。
このように、上記内筒(24)は、絶縁部材である第1筒状部材(25)および第2筒状部材(26)がハーネス(12)のU字状部(12a)を両側から挟み込むことでハーネス(12)を支持している。
上記ガス発生部(35)は、内筒(24)内のブレード(30)を進出させてハーネス(12)を切断させるための高圧ガスを発生させるものである。ガス発生部(35)は、火薬と、該火薬を起爆するための発火部(37)と、該発火部(37)を保持する保持具(38)と、第1筒状部材(25)の後方端を閉塞する蓋部材(39)とを備えている。
上記蓋部材(39)は、略円筒状に形成されて第1筒状部材(25)の後方端に内嵌されている。なお、蓋部材(39)と第1筒状部材(25)との間は、Oリング(39a)によってシールされている。蓋部材(39)は、金属材料によって形成されている。そして、蓋部材(39)に保持具(38)が挿通されている。
上記発火部(37)は、雷管によって構成され、起爆薬を有する前端部が第1筒状部材(25)の内部に露出するように保持具(38)に保持されている。そして、発火部(37)は、コネクタ(図示省略)に接続される接続ピン(37a)が設けられている。発火部(37)は、火薬の爆発によって高圧ガスが発生して第1筒状部材(25)の内部圧力が上昇することにより、ブレード(30)を前方へ進出(摺動)させる。
上記ブレード(30)は、高圧ガスを受けて内筒(24)内を前方へ進出してハーネス(12)を切断するためのものである。ブレード(30)は、樹脂材料によって形成された切断部(31)と、該切断部(31)を取り付けるプッシャー(32)とを備えている。なお、プッシャー(32)は、本発明に係る受圧部を構成している。また、切断部(31)は樹脂材料に限らず金属材料(例えば、鋼材)やセラミックスによって形成されてもよい。
上記切断部(31)は、段差で形成される前後2つの切断部分でもってハーネス(12)を切断する。具体的に、切断部(31)は、前方側に形成された第1刃部(31a)と、該第1刃部(31a)と段差を有して後方側に形成された第2刃部(31b)とを備えている。また、切断部(31)は、第1刃部(31a)よりも前方側へ突出するガイド部(31c)が設けられており、該ガイド部(31c)が内筒(24)の内面に接して摺動する。第1刃部(31a)および第2刃部(31b)は、先端が平坦に形成される刃部である。
上記切断部(31)では、第1刃部(31a)と第2刃部(31b)との段差が、ハーネス(12)のU字状部(12a)の厚みよりも大きくなるように形成されている。こうすることで、図10に示すように、第1刃部(31a)がハーネス(12)の1箇所を切断した後に、第2刃部(31b)がハーネス(12)の他の1箇所を切断することができる。つまり、ブレード(30)は、高圧ガスによって前方へ進出することによって、第1刃部(31a)および第2刃部(31b)がハーネス(12)を順番に切断するように構成されている。
上記プッシャー(32)は、切断部(31)の後方に配置され、高圧ガスの圧力を受けて切断部(31)を前方へ進出(摺動)させるものである。図8および図9に示すように、プッシャー(32)は、樹脂製で外形が略円柱状の本体(32a)を有する。
上記本体(32a)は、内筒(24)と同軸に配置される。本体(32a)は、後方側が開口する中空形状である。つまり、本体(32a)は有底円筒状に形成されている。本体(32a)の中空部(32b)は、ガス発生部(35)の高圧ガスの圧力が作用することで、ブレード(30)が前方へ進出(摺動)すると共に、側壁(32k)が外方へ拡がるように構成されている。側壁(32k)が外方へ拡がると、側壁(32k)と内筒(24)(第1筒状部材(25))との密着度が高まる。これにより、プッシャー(32)と内筒(24)との間のシール性が向上する。本実施形態において、本体(32a)の中空部(32b)は、ガス発生部(35)によって高圧ガスが発生するガス発生室としても構成されている。
さらに、上記本体(32a)は、中空部(32b)の内壁面(32c)にリブ(32f)が設けられている。具体的に、本体(32a)の中空部(32b)には、前方端の中央から延びる1つの支柱(32e)が形成され、該支柱(32e)の側部と内壁面(32c)との間に4つのリブ(32f)が接続されている。4つのリブ(32f)は、周方向に等間隔で配置されて十字状に形成されている。そして、図9に示すように、支柱(32e)および各リブ(32f)は、中空部(32b)の軸心方向全域ではなく略前方半部(図9における略左半部)に設けられている。リブ(32f)は、側壁(32k)の剛性を高めて、高圧ガスが中空部(32b)に作用した際に側壁(32k)が外方へ過剰に拡がらないように設けられている。これにより、側壁(32k)と内筒(24)との密着度が適切に調整される。特に、中空部(32b)の軸心方向全域ではなく、中空部(32b)の略前方半部にリブ(32f)を設けることで、側壁(32k)において後方側の部分は外方へ拡がりやすくなり前方側の部分は外方へ拡がりにくくなる。つまり、リブ(32f)を中空部(32b)の略前方半部に設けることで、側壁(32k)において外方へ拡がりやすい部分と拡がりにくい部分とに区別することができる。これにより、側壁(32k)と内筒(24)との密着度がより適切に調整される。
また、本体(32a)の前方端には、前方へ突出する突部(32j)が形成されている。この突部(32j)が切断部(31)の後方端に内嵌することで、切断部(31)がプッシャー(32)に保持される。本体(32a)の後方端(開口端)は、前方へいくに従って内径が小さくなるテーパ部(32d)が形成されている。また、本体(32a)の側壁(32k)には、後方側から順に、後方側テーパ部(32g)、ストレート部(32h)および前方側テーパ部(32i)が形成されている。後方側テーパ部(32g)および前方側テーパ部(32i)は、側壁(32k)の外径が後方から前方へ向かって漸次細くなっている。ストレート部(32h)は、側壁(32k)の外径が一定である。
−運転動作−
本実施形態1の切断装置(10)は、例えば、工場などの電気機器のハーネス(12)が第1筒状部材(25)と第2筒状部材(26)との間を通るように、設置孔(22)に挿通されて設置される。ハーネス(12)は、第1筒状部材(25)および第2筒状部材(26)に挟まれて支持される。
上記切断装置(10)は、発火部(37)が火災報知器や地震警報機などに接続された状態で設置される。発火部(37)には、火災報知器が火災を感知したときや、地震警報機が地震を感知したときに、警告信号が入力される。警告信号が入力されると、発火部(37)は火薬を爆発させる。
図10(A)〜(C)に示すように、火薬が爆発すると、爆発に伴って高圧ガスが発生することでプッシャー(32)の中空部(32b)の圧力が上昇し、プッシャー(32)に対し前方への推力が与えられる。これにより、ブレード(30)(プッシャー(32)および切断部(31))が前方へ進出(摺動)して、先ず切断部(31)の第1刃部(31a)がハーネス(12)の一箇所を瞬時に切断し(図10(A)および(B)参照)、次いで切断部(31)の第2刃部(31b)がハーネス(12)の他の一箇所を瞬時に切断する(図10(C)参照)。ブレード(30)は、ハーネス(12)を切断した後、さらに前方に進出してストッパ(23)の底部(23a)に当接して停止する(図10(C)参照)。このように、切断装置(10)は、必要時に作動し、一回限り作動して使用されるものである。
ここで、ブレード(30)が前方へ進出する際、内筒(24)およびストッパ(23)におけるブレード(30)の前方の空気は、ストッパ(23)の底部(23a)の孔(23c)および樹脂ケース(20)の排気孔(29)によって構成される排気路を通って切断装置(10)の外部へ排出される。これにより、ブレード(30)の進出によってブレード(30)前方の空気が圧縮されてブレード(30)の進出を阻害することはない。そのため、ブレード(30)が円滑に進出することができる。
また、プッシャー(32)が前方へ進出すると、第1筒状部材(25)の内部におけるプッシャー(32)の後方空間と貫通孔(25b)および排ガス路(28)とが連通する。これにより、第1筒状部材(25)内の高圧ガスは、貫通孔(25b)および排ガス路(28)を介して外部に排出される。
また、図11に示すように、プッシャー(32)の中空部(32b)に高圧ガスの圧力が作用すると、プッシャー(32)の側壁(32k)が外方へ拡がるので、側壁(32k)と第1筒状部材(25)との密着度が高まる。これにより、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性が向上する。その結果、高圧ガスがプッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間から前方へ洩れるのを防止することができるため、プッシャー(32)ひいてはブレード(30)に対して前方への推力を確実に与えることができる。よって、ハーネス(12)に対する切断効果を高めることができる。なお、火薬が爆発して発生した高圧ガスが前方へ洩れると、高圧ガスに含まれる導電性のススがハーネス(12)等に付着して絶縁性が保てなくなるという問題も生じる。また、図11は、支柱(32e)およびリブ(32f)を省略している。
ここで、上述したように側壁(32k)と第1筒状部材(25)との密着度が高くなると、プッシャー(32)の第1筒状部材(25)に対する摺動抵抗が高くなる。そして、側壁(32k)が過度に拡がって側壁(32k)と第1筒状部材(25)との密着度が過剰に高くなると、上記摺動抵抗が過剰となり、却ってプッシャー(32)の推力が低下するおそれがある。そこで、本実施形態のプッシャー(32)は、側壁(32k)の内壁面(32c)にリブ(32f)を設けてプッシャー(32)の剛性を適切に調節しているため、側壁(32k)が外方へ過度に拡がるのを防止することが可能である。その結果、プッシャー(32)の側壁(32k)と第1筒状部材(25)との密着度を適切にすることができる。これにより、プッシャー(32)の前方への推力をそれ程低下させることなく、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性を向上させることができる。
また、本実施形態のプッシャー(32)の中空部(32b)はガス発生室を兼ねているため、従来のようにプッシャー(32)の後方端とガス発生部(35)との間にガス発生室を設ける必要がない。そのため、切断装置(10)が小型化される。ここで、小型化を図るためにガス発生室を設けないようにした場合、即ち高圧ガスの発生空間が小さい場合、図12に破線で示すように、発生した高圧ガスのピーク圧が異常に高くなってしまう。本実施形態のプッシャー(32)ではガス発生室としての中空部(32b)の容積を十分にとることができるため、図12に実線で示すように、高圧ガスのピーク圧を低下させることができる。よって、本実施形態では、高圧ガスの圧力によってプッシャー(32)が破損するのを防止できる。
また、図13に示すように、プッシャー(32)を単に中空形状にしただけでは、プッシャー(32)の剛性が低下するので、プッシャー(32)が高圧ガスの圧力によって変形して傾くおそれがある。そうなると、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性が低下してしまう。特に、本実施形態のように切断部(31)が段差のある2つの刃部(31a,31b)を有するものの場合では、変形したプッシャー(32)が傾きやすくなる。本実施形態のプッシャー(32)は、リブ(32f)によって剛性が適切に確保されるため、高圧ガスの圧力によって変形し傾くおそれはない。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、プッシャー(32)を高圧ガスの圧力によって外方へ拡がる中空形状としたため、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との密着度を高めることができる。これにより、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性を向上させることができる。その結果、プッシャー(32)の前方への推力を十分に得ることができるので、切断効果の高い切断装置(10)を提供可能である。
また、上記実施形態1によれば、プッシャー(32)の中空部(32b)をガス発生室として利用することができるので、ガス発生室を別途設ける必要がない分、切断装置(10)を小型化することが可能となる。
さらには、上記実施形態1のプッシャー(32)ではガス発生室としての中空部(32b)の容積を十分にとることができるため、高圧ガスのピーク圧を低下させることができる。よって、高圧ガスの圧力によってプッシャー(32)が破損するのを防止できる。
また、上記実施形態1によれば、プッシャー(32)において側壁(32k)の内壁面(32c)にリブ(32f)を設けるようにしたため、プッシャー(32)の剛性を適切に確保することができる。そのため、プッシャー(32)の前方への推力をそれ程低下させることなく、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性を向上させることができる。さらには、プッシャー(32)が高圧ガスの圧力によって変形して傾くのを防止できる。これによって、上記シール性を一層向上させることができる。
特に、上記実施形態1のプッシャー(32)では、リブ(32f)を中空部(32b)の略前方半部に設けるようにしたため、プッシャー(32)の剛性をより適切に確保することが可能である。
また、上記実施形態1のプッシャー(32)では、リブ(32f)を十字状に設けているため、プッシャー(32)の剛性を全体において均等に確保することができる。
また、上記実施形態1のプッシャー(32)では、側壁(32k)において後方側テーパ部(32g)および前方側テーパ部(32i)が形成されている。つまり、プッシャー(32)の側壁(32k)は、外径が後方から前方へ向かって漸次細くなるテーパ部(32g,32i)が形成され、前方側端部が最も細く後方側端部が最も太くなっている。したがって、プッシャー(32)が内筒(24)を前方へ進出する際、プッシャー(32)の先端(前方側端部)が第1筒状部材(25)の内面と接触して該内面を削ってしまうのを抑制することができる。そのため、内筒(24)の内部において、プッシャー(32)ひいては切断部(31)の進出力を十分に確保することができる。また、プッシャー(32)において後方側端部が最も太くなっているので、プッシャーの全体が均一の太さになっている場合に比べて、プッシャー(32)の後方側端部と第1筒状部材(25)との密着力を高めることができる。これらによって、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)との間のシール性を高めつつ、ハーネス(12)を確実に切断することが可能となる。また、プッシャー(32)の先端で第1筒状部材(25)の内面が削られるのを抑制できることからも、プッシャー(32)と第1筒状部材(25)とのシール性を高めることができる。
〈実施形態1の変形例〉
本変形例は、図14に示すように、上記実施形態1におけるプッシャー(32)のリブ(32f)の構造を変更したものである。本変形例に係るプッシャー(32)は、3つのリブ(32f)がY字状に設けられている。つまり、3つのリブ(32f)が周方向に等間隔で配置されている。本変形例においても、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
〈発明の実施形態2〉
次に、本実施形態2について説明する。図15に示すように、本実施形態2は、本発明に係る切断装置(10)を備えたブレーカ(50)である。
上記ブレーカ(50)は、樹脂製のケーシング(図示省略)に設けられた負荷側端子(55)および電源側端子(54)と、負荷側端子(55)と電源側端子(54)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(51)とを備えている。
上記端子間部材(51)は、負荷側端子(55)に接続された固定接触子(52)と、電源側端子(54)に接続された可動接触子(53)とを備えている。可動接触子(53)は、固定接触子(52)に接触する接触位置と、固定接触子(52)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(53)が接触位置に移動すると、可動接触子(53)の可動接点(53a)が固定接触子(52)の固定接点(52a)に接触する。
さらに、ブレーカ(50)は、可動接触子(53)を手動で動かすためのリンク機構(58)と、異常電流時に可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すためのトリップ機構(56)と、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すように可動接触子(53)を付勢する付勢バネ(60)とを備えている。リンク機構(58)は、ケーシングに取り付けられ、手動レバー(57)の操作によって可動接触子(53)を接触位置と非接触位置との間で移動させることができるように構成されている。トリップ機構(56)は、バイメタルによって構成され、可動接触子(53)と電源側端子(54)とを接続している。トリップ機構(56)は、過電流時(異常電流時)に熱変形し、その熱変形によってリンク機構(58)を動かして、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離す。可動接触子(53)が固定接触子(52)から引き離されると、ブレーカ(50)は通電不能になる。
さらに、ブレーカ(50)は、上述の切断装置(10)と、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着したことを検出する溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、実施形態1および後述するその他の実施形態の何れの切断装置(10)を用いてもよい。
上記切断装置(10)は、端子間部材(51)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、上記切断装置(10)は、端子間部材(51)の裏側(図15における下側)に設けられている。
上記溶着検出部(65)は、例えば端子間部材(51)に接続され、端子間部材(51)の電流値に基づいて可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着しているか否かを検出するように構成されている。溶着検出部(65)には、切断装置(10)の発火部(37)が接続されている。溶着検出部(65)は、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)を作動させるように構成されている。
本実施形態2では、溶着検出部(65)が可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進出する。ブレード(30)は、端子間部材(51)を切断(破断)した後に、プッシャー(32)が端子間部材(51)の切断面に接触する状態で停止する。このため、端子間部材(51)の切断面の間が絶縁され、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間が通電不能になる。
−実施形態2の効果−
本実施形態2では、切断装置(10)によって、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着した場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。その他の構成、作用および効果は実施形態1と同様である。
〈発明の実施形態3〉
次に、本実施形態3について説明する。図16に示すように、本実施形態3は、本発明に係る切断装置(10)を備えた接触器である。この接触器(70)は、図16に示すように、樹脂製のケーシング(86)に設けられた負荷側端子(75)および電源側端子(74)と、負荷側端子(75)と電源側端子(74)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(71)とを備えている。
上記端子間部材(71)は、負荷側端子(75)に接続された第1固定接触子(68)と、電源側端子(74)に接続された第2固定接触子(69)と、後述する可動鉄心(81)に連結された可動接触子(73)とを備えている。上記可動接触子(73)は、一対の固定接触子(68,69)に接触する接触位置と、一対の固定接触子(68,69)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(73)が接触位置に移動すると、可動接触子(73)の一端の可動接点(73a)が第1固定接触子(68)の第1固定接点(68a)に接触すると共に、可動接触子(73)の他端の可動接点(73b)が第2固定接触子(69)の第2固定接点(69a)に接触する。
さらに、接触器(70)は、可動接触子(73)を接触位置と非接触位置の間で動かすための移動機構(76)を備えている。この移動機構(76)は、可動鉄心(81)と固定鉄心(82)と励磁コイル(83)と巻枠(84)とを備えている。固定鉄心(82)はケーシング(86)の底面に固定されている。可動鉄心(81)は、固定鉄心(82)の上側に対面するように設けられている。励磁コイル(83)は巻枠(84)に巻かれている。可動鉄心(81)と巻枠(84)との間には、非通電時に可動鉄心(81)と固定鉄心(82)とを離間させるための一対の復帰バネ(79)が設けられている。
上記移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)が通電されると、固定鉄心(82)が励磁されて可動鉄心(81)を引き寄せるように構成されている。上記可動鉄心(81)が固定鉄心(82)に引き寄せられると、接触器(70)は非通電状態になる。一方、上記移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)の通電が停止されると、復帰バネ(79)によって可動鉄心(81)が固定鉄心(82)から離れるように構成されている。上記固定鉄心(82)が可動鉄心(81)から離れると、接触器(70)は通電状態になる。
さらに、接触器(70)は、上述の切断装置(10)と、上記実施形態2と同様の構成の溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、上記実施形態1、および後述するその他の実施形態の何れの切断装置(10)を用いてもよい。
上記切断装置(10)は、端子間部材(71)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進出前のブレード(30)の切断部(31)が可動接触子(73)の前面に対面するように設けられている。
本実施形態3では、溶着検出部(65)が可動接点(73a,73b)と固定接点(68a,69a)とが溶着していると判断すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進出する。ブレード(30)は、可動接触子(73)を切断する。この状態では、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触するまで進出する。
−実施形態3の効果−
本実施形態3では、切断装置(10)によって、電源側端子(74)と負荷側端子(75)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着した場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(74)と負荷側端子(75)との間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。その他の構成、作用および効果は実施形態1と同様である。
〈発明の実施形態4〉
次に、本実施形態4について説明する。図17に示すように、本実施形態4は、本発明に係る切断装置(10)を備えた電気回路遮断器(90)である。この電気回路遮断器(90)は、ブレーカ(50)と接触器(70)と樹脂製のケーシング(91)とを備えている。なお、ブレーカ(50)と接触器(70)についての説明は省略する。
上記ケーシング(91)には、ブレーカ(50)が配置されたブレーカ配置室(88)と、接触器(70)が配置された接触器配置室(89)が障壁を挟んで形成されている。また、ケーシング(91)には、負荷側端子(95)および電源側端子(94)と、ブレーカ(50)と接触器(70)と接続する接続用部材(92)とが設けられている。接続用部材(92)は、ハーネス(12)により構成されている。
上記負荷側端子(95)は、接触器(70)の第1固定接触子(68)に接続されている。電源側端子(94)は、ブレーカ(50)の可動接触子(53)に接続されている。また、接続用部材(92)の一端は、接触器(70)の第2固定接触子(69)に接続されている。接続用部材(92)の他端は、ブレーカ(50)の固定接触子(52)に接続されている。
さらに、電気回路遮断器(90)は、上述の切断装置(10)と、上記実施形態2と同様の溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、上記実施形態1および後述するその他の実施形態の何れの切断装置を用いてもよい。
上記切断装置(10)は、接続用部材(92)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進出前のブレード(30)の切断部(31)が接続用部材(92)の前面に対面するよう設けられている。
本実施形態4では、上記ブレーカ(50)において可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着していると判定したり、接触器(70)において可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着していると判定した場合に、溶着検出部(65)が発火部(37)を作動させて、ブレード(30)が進出し、ブレード(30)は、接続用部材(92)を切断(破断)する。この状態では、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触するまで進出する。
−実施形態4の効果−
本実施形態4では、切断装置(10)によって接続用部材(92)を切断して、電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることが可能である。このため、例えばブレーカ(50)や接触器(70)で溶着が生じた場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。その他の構成、作用および効果は実施形態1と同様である。
〈その他の実施形態〉
上記各実施形態では、プッシャー(32)において、リブ(32f)は十字状やY字状以外の配置態様であってもよい。つまり、プッシャー(32)の側壁(32k)の内壁面(32c)において、I字状となるように2つのリブ(32f)が周方向に等間隔で配置されてもよいし、5つ以上のリブ(32f)が周方向に等間隔で配置されてもよい。
また、プッシャー(32)において、支柱(32e)を必ずしも設ける必要はない。
また、切断部(31)は、段差のある2つの刃部(31a,31b)を設けた形態に限らず、刃部を1つだけ有するものであってもよい。