JP5882978B2 - 測定装置及びデータ処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分光学全般に利用されるS/N向上可能なデータ処理方法及び当該データ処理方法に基づく分光装置及び測定装置に関する。
分光装置の一例として、核磁気共鳴(NMR)装置を取り上げて説明する。NMR装置は、静磁場中に置かれた被測定試料に測定対象核のNMR周波数を有する高周波をパルス的に照射し、その後、被測定試料が発生する微弱な高周波信号(NMR信号)を検出し、その中に含まれている分子構造情報を抽出することによって分子構造を解析する装置である。
図1はNMR装置の概略構成図である。高周波パルス発生器1は、観測核に関する核磁気共鳴周波数を有する高周波をパルス的に発生する。発生される高周波パルスは、高周波の位相φとパルス幅及び振幅値が指定値を持つように制御されており、高周波増幅器2及びデュプレクサ3を介してNMRプローブ4に送られて、NMRプローブ4内に置かれた図示しない照射・検出コイルから被測定試料に照射される。
高周波パルス照射後、被測定試料が発生する微弱なNMR信号(自由誘導減衰信号:FID信号)は、前記照射・検出コイルにより検出され、デュプレクサ3を介して前置増幅器(プリアンプ)5により増幅された後、受信器6へ送られる。
受信器6における復調により、オーディオ周波数領域のFID信号が得られ、得られたFID信号はアナログ−デジタル変換器(A/D変換器)7によってデジタル信号に変換され、制御コンピュータ8に送られる。
制御コンピュータ8は、前記高周波パルス発生器1へ、高周波の位相φとパルス幅及び振幅値を指定する制御信号を供給すると共に、時間領域で取り込まれたFID信号をフーリエ変換して周波数領域のNMRスペクトルデータを得てNMRスペクトルとして表示する。また、必要に応じてNMRスペクトルについて位相補正を施す。なお、実際にはNMRスペクトルとして、実部スペクトルと虚部スペクトルが得られるが、通常は実部スペクトルがNMRスペクトルとして表示される。
このようなNMR装置においては、NMR信号の感度は、信号とノイズの比で表わされる。今後、この感度をS/N比と呼ぶ。従来、S/N比を向上させるために、さまざまなアプローチが用いられてきた。それは、ノイズを抑える手法、信号強度を増大させる手法、ノイズと信号を区別する手法などに分類することができる。本発明に最も近い公知技術は、ノイズと信号を区別する手法である。
このノイズと信号を区別する手法に分類されるもののうち、もっとも広く用いられているのは、積算と呼ばれる手法である。積算とは、複数回NMR信号を観測し、測定された信号を足し合わせることにより、ノイズに対して信号の強度を相対的に強くする手法である。これにより信号が強調され、感度の高いNMRスペクトルとなる。
この技術の根幹にある事実は、複数回測定した信号を足し合わせると、信号は測定回数に比例して強くなるのに対して、ノイズは測定回数の1/2乗に比例することである。例えば、2回測定を行ない、その信号を足し合わせると、信号はそのまま2倍になるのに対して、ノイズは21/2=約1.4倍になる。このように、2回の測定を行なうと、信号がノイズに対して相対的に強くなり、NMRスペクトルの感度、すなわちS/N比は約1.4倍になる。
一般にn回の積算を行なうと、S/N比はn1/2倍となる。積算の操作は非常に簡単であり、古くからS/N比を改善する手法として使われてきた。また、ハードウェア的にも、単なる足し算であるため実装が容易で、測定結果を保持するメモリーを増やす必要がないなど、直感的かつ実行しやすい広範な技術である。現在でもNMRに限らず、FT−IR等の分光装置でも日常的に使われている技術であり、S/N比が不足している場合には、ほぼ間違いなく利用されるアプローチである。
藤原鎮男監修、竹内敬人・石塚英弘著『C13NMR 基礎と応用』、講談社サイエンティフィク編集、1976年11月1日、講談社刊、145〜148頁。
積算法は非常に容易に使うことができる技術であるが、測定にかかる時間に対してS/N比の改善があまり芳しくないことが問題として挙げられる。例えば、16回の積算を行なうと161/2=4倍のS/N比の改善が得られる。すなわち16倍も測定時間をかけたにもかかわらず、S/N比の改善は4倍にとどまる。感度の改善のために丸々1日(24時間)の積算を行なっても、感度の向上は1時間半(1.5時間)の積算に対して4倍にしかならない。
このように、積算の場合には、S/N比の改善に非常に長い測定時間を要し、しかもその改善率があまり良くないことが問題であった。本発明者は、この問題は、積算法では信号とノイズを区別するのに、「信号は積算のn倍で増えていく」のに対して、「ノイズは積算のn1/2倍で増えていく」という違いのみに着目していることに原因があると考えた。
すなわち、同じ測定を繰り返したときに、信号は常に同じ結果を返すのに対して、ノイズはランダムな値を返すという特徴に、十分には注目していないことに由来しており、積算した場合に信号とノイズで挙動が異なることを利用すれば、信号とノイズを差別化するための、更に有効な手法を開発することが可能と考えた。
本発明では、信号とノイズを区別するのに、積算による改善だけでなく、それ以外のパラメータにも注目することにより、より顕著に信号とノイズを区別しS/N比が大幅に改善されたスペクトルを得る。
この目的を達成するため、本発明の測定装置は、少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより得られた、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN) について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、を備えたことを特徴としている。
また、前記測定装置は、NMR装置、ESR装置、又はX線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波を対象とする電磁波分光装置、又は質量分析計及び電子顕微鏡を含む荷電粒子線応用装置、又はそれらを利用した画像装置であることを特徴としている。
また、前記測定装置はNMR装置であり、変化させるパラメータと相関を求めるデータの組み合わせが、(1)パラメータがNMR信号を観測する受信系の参照波位相又は観測核を励起する励起高周波の位相、相関を求める対象が実際に測定されたNMR信号の各データ点の位相、(2)パラメータが励起高周波の強度、相関の強さを求める対象が実際に測定されたNMR信号の各データ点の強度、(3)パラメータが励起高周波の中心周波数、相関を求める対象が実際に測定されたNMR信号が現れる周波数位置、の少なくとも1つについて、相関の強さを求めることを特徴としている。
また、前記相関の強さは、一次元NMR測定における直接観測軸に関して測定されたデータ、又は多次元NMR法の間接観測軸に関して得られたデータに対して求めることを特徴としている。
また、本発明のデータ処理方法は、少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)を得るステップと、前記M個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求めるステップと、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求めるステップと、を備えたことを特徴としている。
本発明の測定装置によれば、少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより得られた、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN) について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、を備えたので、ノイズを圧縮しS/N比を大幅に向上させることが可能になった。
本発明のデータ処理方法によれば、少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)を得るステップと、前記M個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求めるステップと、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求めるステップと、を備えたので、ノイズを圧縮しS/N比を大幅に向上させることが可能になった。
従来のNMR装置の概略構成図である。 本発明の各種実施例に共通して使用することのできるNMR装置の構成例を示す図である。 NMR信号を観測するスキームの一例を示す図である。 第1の実施例の動作の流れを説明するための図である。 第1の実施例の測定過程で得られるNMRスペクトル、積算NMRスペクトル、相関データ、相関データを説明するための図である。 実施例2においてNMR信号を観測するスキームの例を示す図である。 観測位相の変化に対応して観測されるNMR信号がどのように変化するかを概念的に示す図である。 実施例2における観測位相とNMR信号の位相の相関を示す図である。 実施例3においてNMR信号を観測するスキームの例を示す図である。 第3の実施例の測定処理過程で得られるNMRスペクトル、積算NMRスペクトル、相関プロット、相関データ、積算スペクトルと相関データの掛け算結果を説明する図である。 実施例3においてNMR信号を観測する2次元測定の一例を示す図である。
本発明は分光学全般に利用できるが、ここではNMRに絞って説明を行なう。従来は複数回の測定を行なって、その結果を足し合わせたもの(積算したもの)のみを測定結果として扱っていた。本発明では、積算結果のみならず、足し合わせる前のそれぞれの測定結果にも注目することにより、効率のよい感度上昇を実現する。
本発明の大きな利点として、通常の積算結果も同時に得られるので、結果が気に入らない場合であっても、従来法で得られる結果を採用すればいいだけで失うものが何もないという点があげられる。
NMR信号は、通常、時間領域の信号として観測されることがほとんどであるが、この時間領域の信号をそのまま解析することもあり、時間領域の信号をフーリエ変換にかけてスペクトルと呼ばれる周波数領域の信号として処理することもある。また、測定法によっては、周波数領域の信号を直接観測することもある。いずれの場合も、最終的には周波数領域の信号もしくは時間領域の信号を解析する。本手法は、時間領域と周波数領域、どちらの信号に対しても適用できるが、ここでは簡単のために周波数領域の信号を処理するとして実施例を記述する。
単純化するために、実施例1〜6では、最も単純な1次元NMR測定に対して記述したが、励起パルスを多次元NMR観測に置き換えることにより、多次元NMR法への拡張も容易である。本発明は、そのような多次元NMRにも適用可能である。
図2は、以下に説明する本発明の各種実施例に共通して使用することのできるNMR装置の構成例を示し、図1に示した従来の概略構成例を元に更に詳細に記述したものである。図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
図2において、高周波パルス発生器1は、高周波発生器11、中間周波発生器12及び混合器13から構成される。中間周波発生器12からは周波数fi の正弦波(中間周波)がパルス的に発生され、この中間周波パルスは高周波発生器11から発生される周波数foの高周波と混合器4によって混合され、測定対象核を励起するための周波数fo+fi(又はfo−fi) の励起用高周波パルスが作られる。この励起用高周波パルスは、高周波増幅器2及びデュプレクサ3を介してNMRプローブ4に送られ、NMRプローブ4内に置かれた図示しない照射・検出コイルから被測定試料に照射される。
励起用高周波パルス照射後、被測定試料が発生する微弱なNMR信号(自由誘導減衰信号:FID信号)は、前記照射・検出コイルにより検出され、デュプレクサ3及び前置増幅器5を介して受信器6に送られる。
受信器6は、前置増幅器5で増幅されたNMR信号を前記高周波発生器2から発生される周波数foの高周波と混合することにより中間周波に変換する混合器61と、混合器61の出力が供給される2つの復調用混合器62r、62iと、復調用混合器62r、62iに参照信号として供給される互いに位相が90°異なる周波数fi の中間周波を発生する 中間周波発生器63から構成される。
この復調用混合器62r、62iは、位相が90°異なる参照波により、90°位相の異なる2チャンネルの復調器として動作する。この2チャンネルの復調器により復調されて得られたオーディオ周波数領域の一対のFID信号FIDrとFIDiは、A/D変換器7によってそれぞれデジタル信号に変換され、制御コンピュータ8に送られて記憶部に記憶される。
制御コンピュータ8からは、測定対象核に応じた励起周波数を指定する信号が前記高周波発生器11に、照射位相φを指定する信号と励起用高周波パルスの照射振幅並びにパルス幅を指定する信号が前記中間周波発生器12に、観測位相ψを指定する信号が前記受信器6の中間周波発生器63に、それぞれ供給される。
制御コンピュータ8は、上記のように測定条件の制御を行うための制御部を備える他に、時間領域で取り込んだFID信号を複素フーリエ変換処理することにより周波数領域のNMRスペクトル信号を得るためのフーリエ変換処理部(FT部)、必要に応じてNMRスペクトル信号に対して位相補正を施すための位相補正処理部、NMRスペクトルや制御画面を表示する表示部、FID信号を積算する積算処理部、並びに本発明に密接に関連する相関演算部と重み付け演算部とを備える。
上記構成において、制御コンピュータ8は、観測核が例えば水素核と指定されると、周波数fo+fiが水素核の共鳴周波数になるようなfoを前記高周波発生器11が発生するように制御すると共に、励起用高周波パルスのパルス幅とパルス振幅を適宜指定し、更に、必要に応じて励起用高周波パルスに含まれる高周波の位相φを指定する。これにより、所望の観測核について、所望のパルス幅とパルス振幅及び所望の高周波位相を持つ励起用高周波パルスが、高周波パルス発生器1から発生され、デュプレクサ3を介してNMRプローブ4内の試料に照射される。
励起用高周波パルス照射後検出され前置増幅器5で増幅されたNMR信号は、混合器61において前記高周波発生器2から発生される周波数foの高周波と混合されて中間周波に変換された後、90°位相の異なる2チャンネルの復調器62r、62iに供給される。この90°位相の異なる2チャンネルの復調器を用いる復調法は、直角位相検波法(Quadrature Detection:QD)法と呼ばれ、それぞれのチャンネルで復調されて得られるFID信号の一方を実数成分、他方を虚数成分として扱い複素フーリエ変換を行うことにより、実スペクトルと虚スペクトルの一対のNMRスペクトルデータを得ることができる。
この実スペクトルデータをr、虚スペクトルデータをiとすると、arctan(i/r)としてスペクトルを構成する各点の位相を求めることができ、逆にこの関係を用いて任意のスペクトル位置における位相補正を行うこともできる。
制御コンピュータ8は、必要に応じて、前記照射位相φに対する前記復調器62r、62iの位相ψを観測位相として適宜設定指示することができる。
このような構成を持つNMR装置を用いて行う本発明の実施例について、以下に説明する。
図3に最も単純なNMR信号の観測シーケンスを示す。励起パルスにより観測核の磁化が励起され、時間領域のNMR信号(FID信号)として観測され、フーリエ変換することにより、周波数領域のNMR信号すなわちNMRスペクトルが得られる。
本実施例は、同じ測定を繰り返したときに、NMR信号の各点の強度(又は位相)の測定ごとの相関を計測する手法であり、本実施例の動作の流れを図4に示す。図4において、最初の工程1は繰り返し測定の工程であり、図3の観測シーケンスによりNMR信号を観測しフーリエ変換してNMRスペクトルを得、得られたNMRスペクトルを記憶部にストアする過程をM回繰り返す。
この同一条件のM回の測定を終了した時点で、制御コンピュータ8の記憶部には、各NMRスペクトルのデータポイント数をNとして、図5(a)に示すようにM個のスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)が記憶されることになる。
工程2は、積算工程であり、ストアされた前記M個のNMRスペクトルデータを単純に足し合わせることにより、図5(a)に示すように積算スペクトルデータSav(d1〜dN)が得られる。従来は、これでNMR測定が終了するところであるが、本発明では、更に次に述べるような工程3,4が付け加えられる。
すなわち、工程3は相関演算工程であり、各NMRスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)の同じ序数のデータの各同一序数集合(S1(d1)〜SM(d1)、(S1(d2)〜SM(d2)、(S1(d3)〜SM(d3)、・・・、(S1(dN)〜SM(dN))について、データのばらつき具合から、各データ間の相関の強さ(例えば、相関係数r値や、その絶対値など)を計算し、相関データC(c1〜cN)を得る。
図5(b)、(c)は、相関演算について説明するための図であり、図5(a)に示される各NMRスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)において、黒丸で示すNMR信号が存在する部位(序数)のM個のデータと、白丸で示すノイズしか存在しない部位(序数)のM個のデータを、横軸にスペクトル番号(1〜M)、縦軸にスペクトル強度(又は位相)をとり、各データを白丸と黒丸でプロットしたものである。図5(b) 、(c)から分かるように、白丸のノイズデータの集合は強度ゼロのレベルを中心として上下にばらつき、黒丸のNMR信号にノイズが重畳するデータの集合は、強度ゼロよりもNMR信号の分上のレベルを中心にしてばらつく。
すなわち、黒丸の部分での信号の強度や位相は、NMR信号が常に同じ値を示すので、ノイズが重畳していても常にある一定の値の近辺に分布する。それに対してノイズだけのポイントでは、信号の強度や位相はゼロのレベルを中心にランダムに分布する。このような差異に基づき、常にある一定の値の近辺に分布することについての相関を求める相関演算を行うことにより、NMRスペクトルの各位置についてNMR信号に関する相関性の高さを表す1組の相関データC(c1〜cN)を図5(d)に示すように求めることができる。
そして、最後の工程4は重み付け演算工程であり、積算スペクトルデータSav(d1〜dN)に相関データC(c1〜cN)を掛け合わせるデータ演算を行う。すなわち、工程2において求められた図5(a)に示される積算スペクトルデータSav(d1〜dN)に、図5(d)に示される相関データC(c1〜cN)を、位置を合わせて掛け合わせると、相関係数の小さなノイズ部分のデータは大幅に減衰圧縮され、相関係数が大きいNMR信号の存在する部分のデータはあまり減衰せず、その結果、図5(e)に示すように積算スペクトルにおけるノイズ部分が圧縮されたスペクトルが得られることになる。
なお、強度について相関を取る上記の例では、実スペクトルのデータのみを用いればよいが、位相について相関をとるためには、先に述べたように、実スペクトルのデータrに加えて虚スペクトルのデータiも用い、arctan(i/r)としてスペクトル各点の位相を求める。これにより、各スペクトルを構成するN個の各点の位相値をp1〜pNと表す時、M個のスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について、実データと虚データから位相データS1(p1〜pN)〜SM(p1〜pN)が求められる。
そして、求めた位相データS1(p1〜pN)〜SM(p1〜pN)に基づき、上述した強度の相関を取る時と同様に、同じ序数のデータの各同一序数集合(S1(p1)〜SM(p1)、(S1(p2)〜SM(p2)、(S1(p3)〜SM(p3)、・・・、(S1(pN)〜SM(pN))について、データのばらつき具合から、各データ間の相関の強さ(例えば、相関係数r値や、その絶対値など)を計算し、相関データC(c1〜cN)を得る。
このようにして位相について相関をとると、NMR信号が存在する部位のデータは、NMR信号が常に示す位相0°を中心に小さくばらつき、ノイズのみが存在する部位のデータは0°から360°の間にランダムに幅広くばらつく。このばらつきの差異に応じて相関係数が変わるように相関演算を施せば、位相に基づく相関データC(c1〜cN)を得ることができる。
なお、先に述べたように、NMR分光法の場合、励起された磁化から放出されるNMR信号は、通常、時間領域のFIDデータとして取得され、これをフーリエ変換することにより、NMRスペクトルデータを得ている。上述した説明では、フーリエ変換後のスペクトルデータと相関の強さを掛け合わせるとしたが、実際には、フーリエ変換前の時間領域データについて相関を求め、求めた相関の強さに時間領域データの積算データを掛け合わせ、掛け合わせたものにフーリエ変換処理を施せばS/N比が大幅に向上したスペクトルを得ることができる。なお、時間領域データの積算データをフーリエ変換することにより、従来通りの積算スペクトルを得ることができることは言うまでもない。
なお、本実施例は、NMR装置以外に、ESR装置、又はX線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波を対象とする電磁波分光装置、又は質量分析計及び電子顕微鏡を含む荷電粒子線応用装置、又はそれらを利用した画像装置にも適用可能である。
本発明の大きなポイントは、通常の積算法のNMRスペクトル(積算データ)も同時に得られることがあげられる。本発明の処理により得られるNMRスペクトルが気に入らなければ、通常の積算法のNMRスペクトルを採用すれば良いだけなので、測定者としては何ひとつ失うものはない。あえて言えば、通常は捨ててしまう観測途中のNMR信号を記憶するメモリー・スペースが必要になるが、現代の装置は容量の大きなメモリー装置を備えているので、これは実用上まったく問題にならない。
また、相関を求めるために記憶して行く各々の測定データは、必ずしも1回の測定の結果とは限らない。望んだ信号を得るためや、アーティファクトを消すために、一定回数の積算を行なった測定データを記憶して行き、記憶したものについて相関を求めて積算データとに掛け合わせる本発明の処理を行うことが望ましいことも多い。
本実施例は、NMR装置の観測位相と、測定されたNMR信号の各点の位相との相関を計測する手法である。
本実施例では、信号観測の位相ψのみを変化させた一連の測定を行なう。図5に最も単純な測定を示す。具体的には、図2のNMR装置を用いて図3の手順で測定を行う際、工程1において1回の測定毎に観測位相ψを変化させてM回の測定を順次行い、各観測位相ψに対するNMRスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)をストアしていく。
観測されるNMR信号の位相は、信号観測位相ψと同期して変化することが期待される。一方、ノイズの位相は信号観測位相ψと無関係である。観測位相の変化に対応して、実際に観測される信号がどのように変化するかを図7に概念的に示す。A点には真のNMR信号が存在するとする。真のNMR信号は、NMR装置の観測位相が0°の時は純粋な吸収波形となり、観測位相が90°の時は分散波形となり、その他の位相では吸収波形と分散波形の中間の波形となるように、観測位相に応じて変化する。図7は慣例にしたがって実部スペクトルrのみを示しているが、先に説明したように、実際には虚部スペクトルiも存在しており、arctan(i/r)によりNMRスペクトル各点の位相は定義される。
一方、真のNMR信号がない部分例えばB点では、ノイズのみが観測される。B点で測定されたデータについてarctan(i/r)により位相を求めても、ノイズはNMR装置の観測位相に対して相関がないので、ランダムな位相を示す。
本実施例では、測定毎に観測位相が変化させられるため、観測されるNMR信号の位相もそれに対応して変わっている。そのため、図3の手順の工程2における積算処理の際、測定により得られたNMRスペクトルをそのまま単純に積算したのでは、NMR信号も平均化されて減衰し、積算の恩恵を受けられない。そこで、図3の手順の工程2における積算処理の際、測定により得られたすべてのNMRスペクトルの位相が観測位相の変化に拘わらず常に0°になるように、位相補正を施し、その補正されたNMRスペクトルを足し合わせることにより、通常の積算法と同等の積算スペクトルデータSav(d1〜dN)を得ることができる。
観測位相とNMR信号の位相の相関図を図8に示す。Aの位置では、図8に示すように傾き1の相関が現れるのに対して、Bの位置では相関がない。そこで相関の強さはAの位置では強く、Bの位置では弱くなる。工程3において、このような相関関係の強さを求める相関演算処理を行うことにより、NMRスペクトルの各点に対して、相関の強さが得られる。
具体的には、実施例1で述べたように、観測位相ψをM種に変化させて測定したM個のスペクトルデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について、実データと虚データから位相データS1(p1〜pN)〜SM(p1〜pN)を求め、求めた位相データS1(p1〜pN)〜SM(p1〜pN)に基づき、同じ序数のデータの各同一序数集合(S1(p1)〜SM(p1)、(S1(p2)〜SM(p2)、(S1(p3)〜SM(p3)、・・・、(S1(pN)〜SM(pN))について、観測位相の変化と位相データの間に傾き1の相関が現れるか否か相関関係の強さを求める相関演算処理を行い、相関データC(c1〜cN)を得る。
これ以降の工程4の処理は実施例1と同様であり、工程2において観測位相の変化を補正した上で積算して得た積算NMRスペクトルデータSav(d1〜dN)に工程3で求めた相関データC(c1〜cN)を掛け合わせて重み付けすることにより、S/N比の良いNMRスペクトルを得ることができる。
これを一般的に記述すると、少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより得られた、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数のデータ点の各集合について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算データSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積又は別途測定されたデータSo(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、を備えたことになる。
なお、本実施例は、NMR装置以外に、パラメータ変化により測定結果に予測及び検出可能な変化が現れるような測定を行う装置であれば、例えばESR装置、又はX線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波を対象とする電磁波分光装置、又は質量分析計及び電子顕微鏡を含む荷電粒子線応用装置、又はそれらを利用した画像装置にも適用可能である。
本実施例は、NMR装置の励起位相と、測定されたNMR信号の各点の位相との相関を計測する手法である。
実施例2では観測位相ψを変化させたが、本実施例では、励起高周波パルスの位相のみを変化させた一連の測定を行なう。図9に最も単純な測定シーケンスを示す。具体的には、図2のNMR装置を用いて図3の手順で測定を行う際、工程1において1回の測定毎に中間周波発生器12へ指示する照射位相(励起位相)φを変化させ、各励起位相に対するNMR信号をストアしていく。
本実施例の動作は、実施例2と酷似している。測定されたNMR信号の位相は、励起位相φに応じて変化することが期待される。一方、ノイズは励起位相φと無関係である。そこで、励起位相φに対する測定されたNMR信号の位相の傾き1の直線に対する相関の強さを工程3において得ることにより、本実施例を実行できる。
実際に測定を行なった例を次に示す。図10(a)は積算する前の各測定で得られるNMR信号の一例である。ほとんどノイズに埋もれており、NMR信号を取り出すことは困難である。工程1において、この測定を1800回繰り返して(すなわち、NMR装置の励起位相360°を1800分割して、360°/1800ずつNMR装置の励起位相をずらしながら)測定し、得られたデータポイント数1024の1800個のNMRスペクトル(S1(d1〜d1024)〜S1800(d1〜d1024))を記憶する。
工程2において1800枚分積算して得た積算スペクトルを図10(e)に示す。この積算スペクトルは、実施例2において説明した位相補正及び積算の処理と全く同様に、励起位相が0.5°ずつずらされたことにより各NMRスペクトルが受けた変化を、各NMRスペクトルについて位相補正を行なって位相を0°に揃えてから積算したものであり、従来の積算法の積算NMRスペクトルと同じものが得られる。図10(a)のように1回の測定では全く確認できなかった信号が幾つか現れていることがわかる。
各測定で得られたNMRスペクトルの各点の位相と励起位相との相関関係について説明する。例えばNMRスペクトル中の代表される2点、c点とd点の位置の相関プロットを図10(c)、(d)に示す。この場合は、1800回の測定で得られた1800個のNMRスペクトルデータにおける、c点とd点に対応する序数の1800点のデータが1枚の図上に点としてプロットされている。
積算の結果から明らかにNMR信号があると考えられる図10(a)のc点の位置のデータの相関プロットである図10(c)では、きれいに傾き1の相関(相関係数がほぼ1)が見て取れる。それに対して、信号がなくノイズのみ存在すると考えられる図10(a)のd点の位置のデータの相関プロットである図10(d)では、測定で得られたスペクトルの位相と励起位相に相関がない(相関係数がほぼ0)ことがわかる。工程3において、傾き1の直線に対する相関性の強さを各ポイントに対して求めることにより、相関データC(c1〜c1024)が得られる。
実際の相関演算の例を以下に説明する。実施例2と同様に、励起位相を1800種に変えた測定により得られた1800個のスペクトルデータS1(d1〜d1024)〜S1800(d1〜d1024)について、実データと虚データから位相データS1(p1〜p1024)〜SM(p1〜p1024)を求め、求めた位相データS1(p1〜p1024)〜S1800(p1〜p1024)に基づき、同じ序数のデータの各同一序数集合(S1(p1)〜S1800(p1)、(S1(p2)〜S1800(p2)、(S1(p3)〜S1800(p3)、・・・、(S1(p1024)〜S1800(p1024))について、励起位相の変化と前記位相データの間に傾き1の相関が現れるか否か相関関係の強さを求める相関演算処理を行い、相関データC(c1〜c1024)を得る。
相関演算処理の一例を式1に示す。
式1において、pijは位相データS1(p1〜p1024)〜S1800(p1〜p1024)の中の任意の位相データを表し、ここでiは0から1024−1までの値をとる整数で、スペクトルの各ポイントを示すための序数(インデックス)であり、jは0から1800−1までの値を取る整数であり、何回目の測定なのかを表す序数である。φjはj回目の測定の時の励起位相を表し、ρiは、スペクトルのi番目のポイントについての相関(相関係数)を表す。なお、式中、<>で表される演算は、jに対する平均を表す。
このような相関演算により得られた1024点の相関データC(c1〜c1024)をプロットしたものが図10(b)である。縦軸は相関の強さを表わしている。信号があると想定される場所では相関の強さが非常に大きく、信号がないと想定される場所では相関の強さが極めて小さいことがわかる。
図10(b)の相関データをNMRスペクトルの重み係数(あるいは一種のウィンドウ関数)として利用し、励起位相の変化により各NMRスペクトルが受けた変化を、各NMRスペクトルについて位相補正を行なって位相を0°に揃えてから積算して得た図10(e)に示す積算NMRスペクトルに掛け合わせたものを図10(f)に示す。図10(e)の積算NMRスペクトルと比べて、図10(f)は明らかにノイズが圧縮されてNMRスペクトルのS/N比が向上しており、ノイズと信号とが明瞭に分離できていることがわかる。
なお、本実施例は、前記実施例2と同様に、NMR装置以外に、ESR装置、又はX線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波を対象とする電磁波分光装置、又は質量分析計及び電子顕微鏡を含む荷電粒子線応用装置、又はそれらを利用した画像装置にも適用可能である。
また、実施例1、2にも共通することであるが、NMRスペクトルの重み係数(あるいは一種のウィンドウ関数)を通常の積算スペクトルに掛け合わせる工程は、通常の積算スペクトル取得後に行なわれるため、通常の方法を好む人は、この機能を使わない選択をすることも可能である。従って本発明は、従来のスペクトルデータを破壊してしまうものではないという点で、極めて優れた長所がある。
本実施例は、NMR信号の励起強度と、測定されたNMR信号の各点の強度との相関を計測する手法である。具体的には、図2のNMR装置を用いて図3の手順で測定を行う際、工程1において1回の測定毎に中間周波発生器12へ指示する照射振幅(励起強度)を変化させることにより、励起パルスの強度を変化させながら、NMRスペクトルの測定を行なう。そして、各励起強度に対するNMRスペクトルを記憶部に記憶していく。
パルス幅を一定に保ちながら励起パルスの強度を変化させると、観測磁化を倒す角度いわゆるフリップアングルが変化する。通常の測定では、フリップアングルが90°となる90°パルスが用いられるが、このフリップアングルとNMR信号の強度は、90°までは正弦カーブに沿って増加して90°で最高となり、90°を過ぎると反対に正弦カーブに沿って減少するという対応関係を有する。
工程2において求める積算スペクトルは、実施例2、3において説明した位相補正及び積算の処理と同様に、フリップアングルが変化されたことにより各NMRスペクトルが受けた強度変化を、各NMRスペクトルについて前記対応関係に基づきすべてフリップアングルが90°で得られた強度への補正を行なって、フリップアングルをすべて90°に揃えてから積算したものであり、従来の積算法の積算NMRスペクトルと同じものが得られる。
工程3において、前記フリップアングルとNMR信号の強度の相関性を用いて相関の強さ(例えば、相関係数r値や、その絶対値など)を計算することにより、相関データC(c1〜cN)が得られる。それを前記工程2で求めた積算スペクトルと掛け合わせることにより、S/N比を向上させたNMRスペクトルが得られる。
なお、本実施例では、励起強度を変化させてフリップアングルを変化させるようにしたが、フリップアングルはパルス幅を変化させても変化させることができるので、励起強度に代えてパルス幅を変化させるようにしても良い。
本実施例は、NMR信号を観測する際の中心周波数と、測定されたNMR信号が実際に現れる位置との相関を計測する手法である。
具体的には、図2のNMR装置において、中間周波発生器63の発振周波数を制御コンピュータ8により制御可能にしておき、図3の手順で測定を行う際、工程1において1回の測定毎に制御コンピュータ8から中間周波発生器63へ指示する中間周波の周波数(観測周波数)を変化させることにより、NMR信号を観測する際の中心周波数を変化させながら、NMR測定を行なう。そして、各中心周波数に対するNMR信号を記憶部にストアしていく。このように観測する際の中心周波数を変化させると、NMR信号の現れる位置(周波数)は、設定された中心周波数と同期して変化する。
工程2において求める積算スペクトルは、実施例2、3、4と同様に、観測中心周波数が変化されたことにより各NMRスペクトルが受けた周波数変化を、各NMRスペクトルについて補正することにより、すべてのNMRスペクトルが同一の観測中心周波数のもとでで得られたものに揃えてから積算したものであり、従来の積算法の積算NMRスペクトルと同じものが得られる。
工程3において、NMR信号の現れる位置と中心周波数との対応関係に基づく相関の強さ(例えば、相関係数r値や、その絶対値など)を計算することにより、相関データC(c1〜cN)が得られる。それを前記工程2で求めた積算スペクトルと掛け合わせることにより、S/N比を向上させたNMRスペクトルが得られる。
本発明は、NMR信号を直接観測する場合だけでなく、間接的に観測する場合にも適用可能である。間接測定でも、上記の相関パラメータはそのまま利用できる。
実施例1〜5は、直接NMR信号を観測する手法について説明したが、本実施例では、間接的に測定を行なう手法に対して本発明が適用される。具体的には、二次元NMRをはじめとした多次元NMR法の間接観測軸に対する適用が考えられる。
多次元NMR法は複数の時間軸を持つ。すなわち、複数の時間変数に対する信号強度としてNMR信号が記述される。多くの場合、ひとつは直接リアルタイムにNMR信号が観測される時間変数であり、直接観測軸と呼ばれる。この時間変数(もしくはその信号をフーリエ変換した周波数変数)のNMR信号に対しては、実施例1〜5が適用できる。
一方、NMR信号の時間変化を直接リアルタイムに観測するのではなく、時間変数を変化させながら一連のNMR測定を行なうことによりNMR信号を得る、間接測定軸が存在する。本実施例は、この間接測定軸に適用され、実施例1〜5で説明した手法を間接測定軸にあわせて適用する。
具体的な例として、t1、t2の二つの時間変数を持つ2次元測定の一例を図11に示す。この場合は、直接観測軸はt2であり、t2が変化したときのNMR信号の変化は直接リアルタイムに観測される。この時間軸に対しては、上の実施例1〜5がそのまま直接適用できる。
一方、t1を変えた複数の一連の測定を行なうことにより、NMR信号のt1時間に対する変化を間接的に観測できる。このように複数の時間軸を持つ測定を多次元測定と呼ぶ。ここでは変数が二つ(直接観測軸がひとつ、間接観測軸がひとつ)なので、2次元測定であるが、ここで記述する方法はn次元測定に直接拡張できる。
間接観測軸に関する本発明の適用は、実施例1の場合には、同じt1で測定を繰り返し各測定の結果をストアすることにより実現できる。実施例2に対応する「観測位相を変化させる」場合には、readパルスと呼ばれるt1時間終了直後の観測パルス(図11参照)の位相を変化させることにより実現できる。実施例3に対応する「励起の位相を変化させる」場合には、t1時間開始直前の励起パルス(図11参照)の位相を変化させることにより実現できる。
実施例4の「励起強度を変化させる」場合には、t1時間開始直前の励起パルスの強度を変化させることにより実現できる。実施例5の測定周波数を変化させる場合には、t1時間の間の周波数を変化させることにより実現できる。また、これと同等のことは、t1時間の周波数を変化させずに、readパルスの位相をt1に対して比例して変化させることによっても実現できる。
なお、多次元NMRスペクトルをスライスして、スライススペクトル(予期されるスペクトル)を取り出し、本発明における相関の強さをデータポイントごとにプロットして並べたもの(例えば、図10の(b)など)をウィンドウ関数として掛け合わせると、取り出されたスライススペクトルのS/N比を飛躍的に向上させることができる。
したがって、本発明にかかる相関の強さをデータポイントごとにプロットして並べたもの(例えば、図10の(b)など)は、積算されたスペクトルデータもしくは時間領域データに対して適用できる他に、多次元NMRスペクトルから予期(予測)されるスライススペクトルを得る場合にも、同様に適用することができる。


これを一般的に記述すると、(1)同一測定をM回繰り返すことにより得られたデータポイント数NのM個のスペクトルデータもしくは時間領域データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN) を積算する積算手段と、前記M個のスペクトルデータもしくは時間領域データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数のデータ点の各集合について、相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、前記積算手段から得られるデータポイント数Nの予期されるスペクトルデータもしくは時間領域データSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、を備えたこと、あるいは、(2)少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより得られた、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数のデータ点の各集合について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの予期されるデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積又は別途測定されたデータSo(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、を備えたことになる。
本実施例は、実施例6に関する拡張である。直接観測軸では、観測可能な信号はsingle quantumと呼ばれるものである。そのため、実施例2および実施例3の場合と同様に、位相の変化に対するNMR信号の挙動は、傾き1の直線で表わされる。
一方、間接観測軸では、multi-quantumと呼ばれる信号も観測できる。一例として、n-quantumと呼ばれる信号は、励起(もしくは観測)位相に対する挙動がn倍されることが知られている。このような信号を観測する場合には、傾きnの直線に対する相関をとることにより、本発明を実施できる。
具体的動作は、実施例6と相関の傾きが異なるだけで、同様にして処理できる。
本実施例は、実施例1〜5と実施例6〜7の組み合わせである。直接観測軸の処理に実施例1〜5のいずれかを適用し、間接観測軸に実施例5もしくは7を適用する。組み合わせただけなので、処理は実施例1〜5、6〜7と同じである。
なお、上記実施例1〜8では、相関の強さを重みパラメータにして、複数回積算されたスペクトルに対して重み付けするという順番で説明したが、これは積算前の個々のオリジナルデータに重み付けした後で、スペクトルを積算させるという順番であっても良いことは言うまでもない。
本発明は、NMR分光法に加え、ESR分光法、X線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波などの各種電磁波分光法、質量分析計などのイオン分光法に適用できる他、データポイントを「画素」という言葉に置き換えれば、医用画像装置、電子顕微鏡、天体望遠鏡、レーダーなどのための画像処理技術としても有用である。
1:高周波パルス発生器、3:デュプレクサ、4:NMRプローブ(検出器)、6:受信器、7:A/D変換器、8:制御コンピュータ、11:高周波発生器、12,63:中間周波発生器、13,61,62r,62i:混合器

Claims (5)

  1. 少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより得られた、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる、同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求める相関演算手段と、
    前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN) について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求める演算手段と、
    を備えたことを特徴とする測定装置。
  2. 前記測定装置は、NMR装置、ESR装置、又はX線、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、ラジオ波を対象とする電磁波分光装置、又は質量分析計及び電子顕微鏡を含む荷電粒子線応用装置、又はそれらを利用した画像装置であることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
  3. 前記測定装置はNMR装置であり、変化させるパラメータと相関を求めるデータの組み合わせが、
    (1)パラメータがNMR信号を観測する受信系の参照波位相又は観測核を励起する励起高周波の位相、相関を求める対象が実際に測定されたNMR信号の各データ点の位相、
    (2)パラメータが励起高周波の強度、相関の強さを求める対象が実際に測定されたNMR信号の各データ点の強度、
    (3)パラメータが励起高周波の中心周波数、相関を求める対象が実際に測定されたNMR信号が現れる周波数位置、
    の少なくとも1つについて、相関の強さを求めることを特徴とする請求項2記載の測定装置。
  4. 前記相関の強さは、一次元NMR測定における直接観測軸に関して測定されたデータ、又は多次元NMR法の間接観測軸に関して得られたデータに対して求めることを特徴とする請求項3記載の測定装置。
  5. 少なくとも一つの測定パラメータをM種に変化させた測定を繰り返すことにより、データポイント数NのM個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)を得るステップと、
    前記M個のデータS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)に含まれる同じ序数dnのデータ点の各集合S1(dn)〜SM(dn)について、パラメータ変化に対して予測されるデータに対する相関を求めることにより、各序数のデータ点に関する相関の強さを表す相関データC(c1〜cN)を求めるステップと、
    前記データS1(d1〜dN)〜SM(d1〜dN)について前記パラメータ変化に基づく影響を補正した上で積算して得られるデータポイント数Nの積算されたデータSav(d1〜dN)と前記相関データC(c1〜cN)との積を求めるステップと、
    を備えたことを特徴とするデータ処理方法。
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