JP5881964B2 - 食品又は医薬品を標識化するための添加物の製造方法及び食品又は医薬品の識別方法 - Google Patents
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Description
このような問題に対する対策として、牛肉のトレーサビリティーにおけるDNA鑑定のように、食材そのものを識別する方法が有効である。一方、食品の賞味期限の改ざんについては、DNA鑑定では識別することができず、他の簡便な識別方法が望まれている。
この様に特定の地域に大量に発生し続ける貝殻の一部は、これまで土壌改良材や暗渠資材等として再生利用されてきた。
さらに、本発明者らは、ホタテガイ貝殻を用いた蛍光体の発光中心を明らかにし、貝殻に含まれている有機基質の存在が重要という報告を行っている(非特許文献3参照)。
1)ホタテガイの貝殻から得た炭酸カルシウムを主成分とする粉末に、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ナトリウム(NaCl)を添加して、発光スペクトルの発光帯の強度比を変化させるに際し、予め所定の濃度のNH4Cl、CaCl2及びNaCl水溶液を作製すると共に、大気中400°C〜600°Cの範囲で一次熱処理を施したホタテガイの貝殻粉の重量に対して、NH4Cl、CaCl2、NaClから選択した一種又は二種以上の濃度が0.3%〜3%となるように添加し、次に、CO2雰囲気中800°C〜900°Cで二次熱処理を行うことを特徴とする食品又は医薬品を標識化するための添加物の製造方法。
2)さらに、塩化銅(CuCl2)及び/又は塩化マンガン(MnCl2)を添加するに際して、予め所定濃度のCuCl2及び/又はMnCl2水溶液を作製すると共に、大気中400°C〜600°Cの範囲で一次熱処理を施したホタテガイの貝殻粉の重量に対して、CuCl2及び/又はMnCl2の濃度が1ppm〜100ppmとなるように添加することを特徴とする上記1)記載の食品又は医薬品を標識化するための添加物の製造方法。
3)ホタテガイの貝殻から得た炭酸カルシウムを主成分とする粉末状の添加物を食品又は医薬品に添加し、これを500℃〜600℃で灰化した後、灰化後の試料に励起エネルギーを加えることで発光させ、その発光スペクトルの発光帯の強度比により、識別することを特徴とする食品又は医薬品の識別方法。
また、本発明は、これまでに食経験のある貝殻を素材に用いていることから、上記食品添加物だけでなく、医薬品又は飼料の識別にも適用できるという優れた効果を有する。
二次熱処理後は、メノウ乳鉢を用いて試料を粉砕し、ふるい(開孔径約100μm)で分級し、標識化された食品添加物を完成させることができる。こうして得た貝殻粉の発光スペクトルを測定し、添加物を含まない貝殻から作られた、基準となる発光スペクトルとした。
ここで、第一添加物の濃度は、0.3%〜3%が適当である。第一添加物を0.3%未満添加したものは、発光スペクトルの発光帯の強度比変化が不十分であった。また、第一添加物を3%超えて添加したものは、発光スペクトルの強度が低下した。
次に、前記と同様に、CO2雰囲気中800℃〜900℃で二次熱処理を行う。こうして得た貝殻粉の発光スペクトルを測定する。これによって、貝殻単独の場合とは異なる発光スペクトルの発光帯の強度比を変化させることができる。
原料として貝殻のみを用い、上述した製造方法に従い、420±5nmと490±5nmと580±5nmにピークを持つ発光スペクトルの3つの発光帯の強度比が、表1の添加物Aの識別番号046に示す強度比となるような食品若しくは医薬品又は飼料用の添加物を作製した。
次に、3つの発光帯の強度の和をN=N1+N2+N3とし、各発光帯の強度を3つの発光帯の強度の和で除したn1=10×N1/N、n2=10×N2/N、n3=10×N3/Nを求め、小数点第一位の位を四捨五入することで整数とし、3つの和が10(=n1+n2+n3)となる3桁のn1n2n3で表示した数字を識別番号とした。尚、3つの発光帯の強度値N1、N2、N3から識別番号を求める方法は、数学上の計算方法によるものであり、ここに記載した求め方に制限されるものではない。
ここで、食品として米粉を選んだ理由は、色や形状が本発明品の標識化された食品添加物と似ており、添加の前後で、目視による区別がつき難いために選んだ。この米粉に添加物Aを混合し、水を加えてよく練ることで適当な軟らかさとし、団子の生地を作製した。この生地を沸騰した湯の中で数分間ゆで、その後冷水中に移し入れて冷まし、笊を用いてよく水切りを行った。
添加物Aを加えた食品を磁製るつぼに入れ、105°Cの乾燥機で可能な限り乾燥させた。その後、ホットプレートを用いて注意深く食品を炭化させた。このように処理した試料を、500〜600°Cで灰白色の灰が得られるまで、5〜6時間加熱を続けた。灰化終了後、加熱を止め、放冷し、灰化試料を得た。
食品に添加する前の添加物Aの発光スペクトルを図1に、灰化処理後の添加物Aの発光スペクトルを図2に示す。発光スペクトルは、420±5nmと490±5nmと580±5nmにピークを持つ3つの発光帯からなり、各発光帯の最適励起波長は250±5nmであった。
第一添加物として塩化アンモニウムを1%加えた貝殻粉を用い、上述した製造方法に従い、420±5nmと490±5nmと580±5nmにピークを持つ3つの発光帯の強度比が表1の添加物Bの識別番号316に示す強度比となるような食品添加物を作製し、上述した物性測定に従い、励起光を照射しながら蛍光強度比を測定した。各発光帯の最適励起波長は約250nmであった。
ここで、実施例1で述べた理由により、同様の灰化処理を行った。灰化後の試料の発光スペクトルを、本発明の物性測定に従い、励起光を照射しながら蛍光強度比を測定した。
第一添加物として塩化カルシウムを2%、第二添加物として塩化銅を10ppmと塩化マンガンを10ppm加えた貝殻粉を用い、上述した製造方法に従い、420±5nmと490±5nmと580±5nmにピークを持つ3つの発光帯の強度比が表1の添加物Cの識別番号523に示す強度比となるような食品添加物を作製し、上述した物性測定に従い、励起光を照射しながら蛍光強度比を測定した。各発光帯の最適励起波長は約250nmであった。
第一添加物として塩化ナトリウムを3%、第二添加物として塩化銅を10ppmと塩化マンガンを10ppm加えた貝殻粉を用い、上述した製造方法に従い、420±5nmと490±5nmと580±5nmにピークを持つ3つの発光帯の強度比が表1の添加物Dの識別番号163に示す強度比となるような食品添加物を作製し、上述した物性測定に従い、励起光を照射しながら蛍光強度比を測定した。各発光帯の最適励起波長は約250nmであった。
ここで、実施例1で述べた理由により、同様の灰化処理を行った。灰化後の試料の発光スペクトルを、本発明の物性測定に従い、励起光を照射しながら蛍光強度比を測定した。
上記の実施例では、NH4Cl、CaCl2、NaClの濃度が1%〜3%となるように添加したが、これらの添加量は0.3%以上から実施しており、それぞれ、効果が確認できた。したがって、本願発明は、これらを包含するものである。
Claims (3)
- ホタテガイの貝殻から得た炭酸カルシウムを主成分とする粉末に、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ナトリウム(NaCl)を添加して、発光スペクトルの発光帯の強度比を変化させるに際し、予め所定の濃度のNH4Cl、CaCl2及びNaCl水溶液を作製すると共に、大気中400°C〜600°Cの範囲で一次熱処理を施したホタテガイの貝殻粉の重量に対して、NH4Cl、CaCl2、NaClから選択した一種又は二種以上の濃度が0.3%〜3%となるように添加し、次に、CO2雰囲気中800°C〜900°Cで二次熱処理を行うことを特徴とする食品又は医薬品を標識化するための添加物の製造方法。
- さらに、塩化銅(CuCl2)及び/又は塩化マンガン(MnCl2)を添加するに際して、予め所定濃度のCuCl2及び/又はMnCl2水溶液を作製すると共に、大気中400°C〜600°Cの範囲で一次熱処理を施したホタテガイの貝殻粉の重量に対して、CuCl2及び/又はMnCl2の濃度が1ppm〜100ppmとなるように添加することを特徴とする請求項1記載の食品又は医薬品を標識化するための添加物の製造方法。
- ホタテガイの貝殻から得た炭酸カルシウムを主成分とする粉末状の添加物を食品又は医薬品に添加し、これを500℃〜600℃で灰化した後、灰化後の試料に励起エネルギーを加えることで発光させ、その発光スペクトルの発光帯の強度比により、識別することを特徴とする食品又は医薬品の識別方法。
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