JP5871247B2 - フコシル化糖鎖産生細胞用物質送達担体 - Google Patents
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Description
また、フコシル化はフコシルトランスフェラーゼ(FUT)という糖転移酵素によって触媒されていることから、フコシル化糖鎖産生細胞をフコシルトランスフェラーゼを標的分子として標的化することも考えられるが、同酵素は小胞体からゴルジ装置にかけて局在する膜結合型タンパクであり、細胞表面に存在しないため、これを直接的な標的分子とすることもできない。したがって、フコシル化糖鎖産生細胞特異的に薬剤などの物質を送達する技術はこれまで存在しなかった。
フコシル化糖鎖産生細胞にフコースを特異的に結合する機構が存在することはこれまで全く知られていなかった。また、フコースを含む担体は知られていたが(特許文献1、2、非特許文献3参照)、これがフコシル化糖鎖産生細胞への物質送達を特異的に促進するすることはこれまで知られていなかった。
(1)フコースを含む、フコシル化糖鎖産生細胞用物質送達担体。
(2)フコースがL−フコースである、上記(1)の担体。
(3)フコシル化糖鎖がI型糖鎖である、上記(1)または(2)の担体。
(4)フコシル化糖鎖産生細胞が、フコシルトランスフェラーゼを発現する、上記(1)〜(3)のいずれかの担体。
(5)フコシルトランスフェラーゼが、FUT1、FUT2、FUT3およびFUT4からなる群から選択される、上記(4)の担体。
(6)高分子ミセル、リポソーム、エマルジョン、微小球およびナノ小球から選択される形態を有する、上記(1)〜(5)のいずれかの担体。
(7)リポソームの形態を有し、フコースと、リポソームに含まれる脂質とのモル比が8:1〜1:8である、上記(6)の担体。
(9)疾患が、腫瘍性疾患および炎症性疾患からなる群から選択される、上記(8)の組成物。
(10)フコシル化糖鎖産生細胞に関連する疾患を処置するための薬物が抗炎症剤および抗腫瘍剤からなる群から選択される、上記(9)の組成物。
(11)薬物と、担体とを、医療の現場またはその近傍で混合してなる、上記(8)〜(10)のいずれかの組成物。
(12)フコシル化糖鎖産生細胞に関連する疾患を処置するための薬物、フコース、ならびに、必要に応じてフコース以外の担体構成物質を、単独でまたは組み合わせて含む1つまたはそれ以上の容器を含む、上記(8)〜(11)のいずれかの組成物の調製キット。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかの担体を利用した、in vitroでフコシル化糖鎖産生細胞へ物質を送達する方法。
また、本発明の担体は、フコシル化糖鎖産生細胞特異的に物質を送達することができるため、フコシル化糖鎖産生細胞特異的な標識や、遺伝子導入などに利用できる。
本発明の一態様において、フコシル化糖鎖産生細胞は、好ましくは正常細胞以外の細胞である。かかる細胞としては、例えば、上記の腫瘍細胞や炎症部位の細胞が挙げられる。
本発明において「フコシル化糖鎖産生細胞用」とは、フコシル化糖鎖産生細胞を標的として使用するのに適していることを意味し、これは例えば、フコシル化糖鎖産生細胞に、フコシル化糖鎖非産生細胞よりも迅速、高効率かつ/または大量に物質を送達できることを含む。例えば、本発明の担体は、フコシル化糖鎖産生細胞に、フコシル化糖鎖非産生細胞に比べ、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2倍以上、さらには3倍以上の速度および/または効率で物質を送達することができる。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、動脈内、門脈内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる組成物の性状や、上記のような対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎など)、1週間に数回(例えば、1週間に2、3、4回など)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎など)であってもよい。
また、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、フコシル化糖鎖産生細胞に関連する疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、当該疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
膵癌細胞株PK59、ASPC−1、MIAPaCaおよびPANC−1はATCCより、KP4およびPK45Hは理研バイオリソースセンターよりそれぞれ購入した。各種膵癌細胞株の細胞5×106個を25cm2フラスコに播種し、無血清培地Opti−MEM(R)3mlで48時間培養した。培養上清中のフコシル化糖鎖抗原腫瘍マーカー、CA19−9、Span−1およびDupan−2の濃度はELISA法で検討した。結果を図2に示す。これに基づいて、PK59、ASPC−1をフコシル化糖鎖高産生株、MIAPaCa、PANC−1をフコシル化糖鎖低産生株とした。
PK59、ASPC−1、MIAPaCaおよびPANC−1の各細胞株につき、1×106個の細胞から全RNAを抽出し、RT−PCRを行った。各FUTのプライマーは非特許文献2に基づいて作製した。
フコシル化糖鎖高産生株ASPC−1と、フコシル化糖鎖低産生株PANC−1におけるフコース(特に記載がない限りL−フコースを指す)の結合を放射性標識フコースを用いて検討した。
12ウェルのカルチャープレートに1×105個の細胞を播種後、1晩培養し、0〜200nMの濃度にBSA−PBSで希釈した14C−フコース(比活性:55mCi/mmol)を細胞に添加し4℃で1時間培養した。冷BSA−PBSで洗浄後、1%TritonX100/PBS−0.25%トリプシンで細胞を可溶化し、細胞膜に結合した14C−フコースの放射活性を測定した(図3および4)。
また、別な実験では、12ウェルのカルチャープレートに2×105個の細胞を播種後、1晩培養し、10nmolの14C−フコース(比活性:55mCi/mmol)を、単独で、または、1μmolのフコースとともに添加し、4℃で、1、3または24時間培養した。各条件の細胞を冷BSA−PBSで洗浄後、1%TritonX100/PBS−0.25%トリプシンで可溶化し、14C−フコースの放射活性を測定した(図5)。
これらの結果より、フコースが、受容体様の機構を介して、ASPC−1およびPANC−1に結合し、その親和性がフコシル化糖鎖高産生株であるASPC−1においてより高いことが判明した。また、14C−フコースの結合が、非標識フコースにより阻害されたことから、この機構がフコース特異的なものであることも明らかとなった。これは、フコシル化糖鎖産生細胞、特にフコシル化糖鎖高産生細胞において、フコース特異的な受容体様の結合機構が存在することを示すものである。
リポソーム(Lipotrust、10nmol)とL−フコース(0〜20nmol)(SIGMA, MO, USA)を懸濁し、5分間室温で放置した後、マイクロパーティションシステム(Sartorion VIVASPIN 5000MWCO PES)により遊離フコースを除去した。次にFAM標識siRNA(random)(センス鎖:5'-CGAUUCGCUAGACCGGCUUCAUUGCAG-3'(配列番号17)、アンチセンス鎖:5'-GCAAUGAAGCCGGUCUAGCGAAUCGAU-3'(配列番号18))を加えインキュベーション後、チャンバースライドに播種したASPC−1細胞に添加し、1時間培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄し4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBSで洗浄し、DAPIで対比染色して蛍光顕微鏡下に観察した。その結果、リポソーム:フコースのモル比は1:1が最も高い導入効率であることが判明した(図6および7)。
siRNAの導入が、フコシル化糖鎖産生細胞に存在するフコース特異的な受容体様の結合機構によるものであることを確認するため、過剰のフコース存在下におけるsiRNA導入効率を検討した。リポソーム(Lipotrust、10nmol)とフコース(10nmol)を懸濁し、5分間室温で放置した後、マイクロパーティションシステム(Sartorion VIVASPIN 5000MWCO PES)により遊離フコースを除去した。次に上記と同じFAM標識siRNA(random)を加えインキュベーション後、チャンバースライドに播種したASPC−1細胞に添加し、1時間培養した(Liposome+F)。また、リポソーム単独群(Liposome)、リポソーム添加前10分間、1μmol(×100)のフコースを加えプレインキュベーションした群(Liposome+F+CE)も同時に検討した。培養後、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBSで洗浄し、DAPIで対比染色して蛍光顕微鏡下に観察した。その結果、フコースの存在によりsiRNAの導入が顕著に抑制された(図8)。すなわち、過剰量のフコースによりsiRNAの導入が阻害されたことから、フコシル化リポソームによるsiRNAの導入は、フコース特異的な受容体様の結合機構を介していることが示唆された。
フコシル化糖鎖高産生株と低産生株におけるフコシル化リポソームによるsiRNA導入効率の検討を行った。前述の方法に従い、フコシル化リポソームを作製し、高産生株(PK59、ASPC−1)と低産生株(MIAPaCa、PANC−1)におけるFAM−siRNAの導入を蛍光顕微鏡下で観察した。この結果、高産生株においては細胞内に多量のFAMの緑色が認められたのに対し、低産生株における細胞内のFAMの緑色は顕著に少なかった(図9および10)。これは、フコシル化リポソームが、フコシル化糖鎖の産生量依存的に細胞に物質を送達することを示すものである。
Claims (10)
- フコースを含む担体と、腫瘍性疾患を処置するための薬物とを含む、ヒトのフコシル化糖鎖抗原腫瘍マーカー陽性腫瘍を処置するための組成物。
- フコースがL−フコースである、請求項1に記載の組成物。
- フコシル化糖鎖がI型糖鎖である、請求項1または2に記載の組成物。
- フコシル化糖鎖抗原腫瘍マーカーが、CA19−9、Span−1およびDupan−2からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 担体が、高分子ミセル、リポソーム、エマルジョン、微小球およびナノ小球から選択される形態を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 担体がリポソームの形態を有し、フコースと、リポソームに含まれる脂質とのモル比が8:1〜1:8である、請求項5に記載の組成物。
- 腫瘍性疾患を処置するための薬物が抗腫瘍剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
- 薬物と、担体とを、医療の現場またはその近傍で混合してなる、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
- 腫瘍性疾患を処置するための薬物、フコース、ならびに、必要に応じてフコース以外の担体構成物質を、単独でまたは組み合わせて含む1つまたはそれ以上の容器を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の調製キット。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を調製するための、フコースを含む担体。
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