JP5854977B2 - ワイヤ放電加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、放電ミリングを用いたワイヤ放電加工方法に関する。
金属材料等を除去加工するさまざまな加工方法において、高い加工精度を実現する上で問題になる要素の1つが、工具の消耗である。どのような加工方法においても、加工とともに工具が消耗し、加工精度の劣化につながる。この対策として、切削加工では、工具に対してコーティングを施したり、硬質材料を使用したりして、消耗を少なくする方策が取られている。
放電加工においても、形彫放電加工では、電極が消耗するため、例えば1つの金型を製作する場合に、電極を複数本使用して、加工精度を高める必要がある。
唯一、工作機械で工具の消耗が実質無視できる方法が、工具であるワイヤを送り出して加工する方法であり、一般的なワイヤ放電加工や特許文献1に示されるようなワイヤ放電加工技術がある。これらの加工方法では、工具である黄銅などのワイヤ電極を連続して送り出すことにより、電極の消耗を考えることなく、加工を行うことができる。
切削加工等の他の方法でも高精度は実現できるが、工具の消耗、摩耗を補うため、多くの高価な工具を必要とし、コストの高い加工方法になっている。ワイヤ放電加工では、実質工具の消耗を無視できる技術であるため、簡単にしかも低コストで、加工精度1μm以下という高精度も実現している。しかし、ワイヤ放電加工は、一般には加工できる形状が2次元あるいは2次元半の形状に限られているのが欠点である。
特許文献2には、ガイドにワイヤを沿わせて、ガイドを回動させて穴あけ加工を行う方法が開示されている。
特許文献3には、ガイドに複数のワイヤを沿わせて走行させ、放電加工を行う方法が開示されている。
特許文献4には、ガイドにワイヤを沿わせて、そのワイヤ電極により放電加工を行う方法が開示されている。
特許第1750294号(特公平4−28486号公報) 特開昭61−244413号公報 特開昭62−4516号公報 特開平3−287317号公報
特許文献1、特許文献2、特許文献3には、ガイドに沿ってワイヤ電極を走らせ、放電加工を行う放電ミリングに関する発明が開示されている。放電ミリングでは、工具の形状を決めるガイドに沿ってワイヤ電極を送りながら、工作物との間で放電を発生させる。その際、ガイドを往復回転運動させることで、ガイドの形状にワイヤが沿った形状が回転してできる包絡線形状の立体が見かけの電極の形状になる。放電ミリングでは、このような電極を使用して、工作物に対して加工を行う。
しかし、これらの特許文献には、具体的にどのように加工を行えば、高精度な加工ができるかという点についての考察はない。また、包絡線形状の電極とはいえ、やはり実際に放電する部分は線状のワイヤであり、そのために、筋などの発生で加工精度を悪化させる場合があることが発明者等の研究でわかってきた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い精度で、高い品質の放電ミリング加工をなし得るワイヤ放電加工方法を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ワイヤ電極をガイド部材で保持し、ワイヤ電極を走行させながらガイド部材を正逆方向に往復回転運動させ、走行されるワイヤ電極と工作物との間に電圧を印加してパルス状の放電を発生させ、工作物を除去加工する放電加工方法において、ガイド部材に保持されたワイヤの加工に寄与する半径をr(m)、平均加工速度をV(m/s)、前記往復回転運動の回動周波数をα(Hz)、前記往復回転運動の回転角度をA(ラジアン)、放電が発生する時間の集中度を表す係数をγとしたとき、
A>π、かつ
α>(2π/A)×γV/(6πr・(面粗さ(mRz)))
を満たす回動周波数αを決定して加工を行うことを特徴とする。
本発明によれば、工具である電極の消耗を事実上無視することができ、高い精度で、筋の少ない高い品質の放電加工を実現することができる。
図1は、ワイヤ放電加工装置のワイヤ電極近傍の構成を示す概念図である。 図2は、図1のワイヤおよびガイド部材の構成を示す三面図である。 図3は、放電ミリングにより加工した場合の加工面を各種示す図である。 図4は、放電ミリングにより加工した場合の加工面を各種示す図である。 図5は、加工液を油としたときに、現れやすい電圧波形の一例を示すタイムチャートである。 図6は、加工液を水としたときに、現れやすい電圧波形の一例を示すタイムチャートである。 図7は、極間距離を制御するための、サーボ送りの設定の例を示す説明図である。
以下に、本発明にかかるワイヤ放電加工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、放電ミリングを行うワイヤ放電加工装置の工具であるワイヤ電極部分の構成例を示している。このワイヤ放電加工装置は、ガイド部材1、ガイド先端部2、回動軸3、ワイヤ電極(以下、ワイヤと略す)4を備えている。ガイド部材1は、ガイド先端部2を折返し点としてワイヤ4を矢印K1、K2で示すように往復動させるようにワイヤ4を保持するための部材である。ガイド部材1は、ワイヤ4を沿わせてガイドすることで、工具形状を作るためのものである。矢印K1の基端側にはワイヤ送給部(図示せず)が配置され、矢印K2の先端側にはワイヤ巻取部(図示せず)が配置される。ガイド先端部2では、ワイヤ4はガイド先端部2に沿って一方方向に送られる。ガイド部材1は、半球状のガイド先端部2と、円柱状のガイド本体部1cとを備えている。ガイド本体部1cは、スリット部1a(図2(b)参照)と、空洞部1bとを備えている。ガイド先端部2は、半球状の形状を呈しており、中心部分にワイヤ4を沿わせるための溝2a(図2(b)参照)が加工されている。回動軸3は、ガイド部材1を往復回転運動させるための部材である。加工の際には、ガイド部材1、回動軸3は、一体の部品となる。
次に、加工中の動作について説明する。図2は、ガイド先端部2の拡大正面図である。図2(a)に示すように、ガイド先端部2は半球形状になっており、溝2aが加工してあり、その溝2aにそってワイヤ4が配置される。図2(b)は、図2(a)を90度横から見た側面図である。このガイド部材1では、図2(b)に示すように。半球部分のすぐ上の部分にスリット1aが加工されており、その空間がガイド本体の中央部の空洞部1bとつながっており、ワイヤ4を走行させる経路になっている。図2に示すように、球形のガイド先端部2の場合には、(ガイド半径+ワイヤ直径−溝2aによりワイヤ4が沈む量)の半径rを持つ工具が構成されることになる。ワイヤ4が配置されたガイド部材1は、回動軸3の回転によって、図2(c)に示すように、往復回転運動を行う。往復回転運動の回転角度θは、180度を超えればよいが、実際に加工実験を行ってみると360度往復回転くらいになると加工が安定した。
尚、図2では、ガイド先端部2の形状を球状で示しているが、ガイド先端部2の形状は任意である。加工したい形状に合わせてガイド先端部2の形状を正確に合わせることもできるし、球状の加工を行う場合であっても、放電ギャップを考慮して若干変形させることもできる。また、放電ミリングで走査加工をするような場合には、例えばガイド先端部2の底面部分にフラットな部分があったほうがよいなど、加工したい形状、用途により、ガイド形状を変更すると、本加工方法の利点をより引き出すことができる。
図3は、放電ミリングで加工した加工面の例である。上段は加工液が油の場合、下段は加工液が水の場合で、それぞれ左ほど加工速度が遅く、右に行くほど加工速度の速い条件である。また、図4は、放電ミリングで加工した加工面の例であり、回動軸3の回動周波数が左ほど速く、右に行くほど遅くなっている。この結果から以下のことがわかる。
・ガイド部材1の回動条件により、加工面に筋状の痕がつく場合や、加工面の形状が崩れる場合がある。
・加工速度が速い条件ほど、加工面に筋状の痕がつく場合がある。筋は、加工液が油の場合の方が強く発生し、加工液が水の場合には比較的目立ちにくい。
・回動速度(回動周波数)が、遅くなると筋が目立ち、速くなると目立ちにくくなる。1Hz以上であれば、筋の発生は目立ちにくい。
・ガイド部材1の回動条件により、加工面に筋状の痕がつく場合がある。
また、さらに装置の構成を変えて加工試験を行ったところ、装置のヘッド部分、すなわち、電極ガイドを動かす部分の重量が重いほど、筋が多くなる傾向があった。
以上の現象を詳細に調べて、筋状の痕の原因を調べた。以下にその内容と考察を示す。
加工液が油の場合と水の場合とを比較した結果、以下のことがわかった。加工液が油の場合には、電極と工作物との間の極間距離が狭く、加工中に短絡現象の発生が多かった。加工条件が、放電持続時間2μs、休止時間20μs、無負荷電圧250Vの条件で加工を行った場合、加工液が水の場合では極間距離は約100μm、加工液が油の場合では約30μmであった。
加工中の電圧波形を観察したところ、筋ができたと思える状態で頻繁に見られる特徴的な波形は、加工液が油の場合には図5のようであった。図5では、電圧の低い部分(放電や短絡の状態)と、電圧が高い部分(オープン状態)との周期的な電圧変化が発生している。このような状態が定常的に続く場合もあるし、時々発生するだけのこともある。放電パルスのエネルギーが小さく、加工面の仕上げの面粗さが小さい条件の場合には、定常的に続く場合が多く、放電パルスのエネルギーが大きくなるに従い、突発的な発生になる。このような周期的な電圧の変化は、極間距離が狭いために機械の応答が追従しなかったことが原因と考えられ、この周期が概略、機械(電極先端)の応答周波数に相当すると考えられる。これは、電極の駆動部分の重量を重くすると周期が延び、軽くすると周期が縮まったことからも確認できる。以下、このような周期的な電圧のうち、電圧の低い時間を「放電の発生しやすい時間」(すなわち放電中と短絡の時間)と電圧の高い時間を「放電の発生しにくい時間」(すなわちオープン状態の時間)と呼ぶことにする。
一方、加工液が水の場合には、一旦放電が発生すると、放電が連続して発生しやすい状態になり、平均電圧が低い場合に極間距離が広がるように制御するサーボ機構の働きにより、極間距離が比較的広くなる。水が加工液の場合の極間の電圧波形は、図6のようになっており、極間距離が広いため、短絡は少ないものの、放電の発生頻度が多い部分と少ない部分が周期的に現れた。これは、前述のように、加工液が水の場合には、放電が一旦発生すると、連続して放電が発生する特性があり、放電が頻度高く発生しながら極間距離が広がり、放電の発生限界になり放電が途切れると、極間距離が狭くなるように電極が近づき、また放電が発生するという現象を繰り返すためである。油の加工液でも、加工中の平均電圧の設定を高くすると、同じような電圧波形のパターンが現れる。加工液が水の場合には、図6のような放電頻度の高い放電と放電頻度の低い放電の繰り返しが、油の加工液の場合の図5のように筋が発生している原因と考え、繰り返し加工テストを行ったが、図6の波形のときには、筋が発生したり、筋が発生しなかったりし、その判断が困難であった。しかし、加工液が水の場合でも、極間距離が狭い仕上げ加工条件においては、加工液が油の場合と同様に、図5のような波形が現れることがあり、この場合には、筋が高い確率で発生していることがわかった。
以上のことが明らかとなったので、筋の発生の原因について詳細に検討した。筋の発生場所は、回動(往復回転運動)の切り替えし点等の明確にわかる場所ではなく、ランダムに発生している。さらに筋ができる回動速度、すなわち、遅い回動速度の範囲で、回動速度を変化させると、回動速度が遅いほど、深い筋ができた。
ここで、加工の進み方を解析するため、
工具(ガイド部材1にワイヤ4を沿わせた電極)の半径をr(m)、
使用する加工条件の単位加工時間当たりの平均加工量(除去量)、すなわち平均加工速度をV(m/s)、
往復回転運動の回動周波数(簡単のため360度の往復回転での回動周波数とする)をα(Hz)、
電極の位置を制御する機械の応答周波数をβ(Hz)、
とする。
半径rの円を加工する場合に近似すると、加工深さ方向の平均加工速度(m/s)は、
ワイヤ4が1回通過するときの平均加工深さ(m)(360度を往復するので4回通る)は、
ただし、極間が狭い等、加工状態がよくない場合に、機械の応答周波数の特性により放電の発生にむらが発生したとする。この場合にも簡単のため、平均加工速度はV(m/s)のままとする。
機械の応答周波数をβ(Hz)とすると、極間距離の狭い短絡が発生しやすい状況では、「放電の発生しやすい時間」と「放電の発生しにくい時間」とが、概略1/β(s)の周期で現れる。前述のように、定常的な場合もあるし、突発的な場合もある。Vが大きく、極間距離が広い場合には発生しにくい場合もある。
この場合、簡単のため「放電の発生しやすい時間」と「放電の発生しにくい時間」とが周期的に現れると考えると、上記条件で放電している時間の加工速度は、半分の時間はオープン状態で加工に寄与していないと考えるため、2V(m/s)となる。
このように周期的に放電が発生する現象が起きたときの1つの「放電の発生しやすい時間」の固まり(1/2βでの放電)で筋が発生すると考える。1/2βの間に回転するワイヤ(ガイド)の角度は、1/4αで2π(ラジアン)回転するので、
このときにワイヤ4と対向するワークの面積(すなわち加工される面積)は、
このときの加工深さは、(加工時間)×(加工速度)/(面積)として、
以上より、放電の発生頻度の高い時間に対応する1つの群で加工される面積は、式3、式4から、回動周波数α、応答周波数βで決まり、そのときの加工深さは、式5から回動周波数αで決まることになる。応答周波数βが大きくなるほど、加工される部分の角度すなわち面積が小さくなり、深さが深くなることになる。ただし、応答周波数βはある程度の値、例えば、50Hz以上になれば放電頻度の高い時間、低い時間の周期的な変動はほとんどなくなるので、ここでの議論はおおよそ、機械の応答周波数が50Hz以下の場合にあてはまると考えてよい。
以上の計算は、「放電の発生しやすい時間」(すなわち放電中と短絡の時間)と「放電の発生しにくい時間」(すなわちオープン状態の時間)とが交互に発生し、放電が発生しやすい時間の中では均等に放電が発生していると近似したときの筋の深さの計算値である。しかし、実際に加工中の極間の電圧、電流を観察すると、放電の発生しやすい時間の中でも均等に放電が発生しているわけではないことがわかる。極間距離が狭く、短絡が発生しやすい状況では、短絡、オープンの繰り返しの周波数は、前述のようにおおよそ1/β(s)の周期で現れ、1つの「放電が発生しやすい時間」の固まりの時間は1/2β(s)になるが、実際には、短絡中は放電が発生せず、また、短絡が解消した直後にも放電が発生しにくいことが多い。なお、短絡が解消した直後短時間は放電する。
これは、機械の応答の問題も大きいが、その他の理由として、放電加工の場合、短絡状態は直接の電極と工作物の接触以外に、加工屑を間に挟んだ状態での短絡が多く、その場合には極間が開いていっても加工屑が極間に嬌絡を作った状態を保つため、短絡が解消しにくいという状態になることも原因である。このような場合には、一旦短絡が解消した後は極間が開いているために、放電が発生するまでに極間距離が短くなるまでに時間を要するという状態になる。従って、オープン状態から電極が近づき放電が集中的に発生し、その後短絡し、短絡が解消し、放電が発生するという周期になりやすい。このような場合には、「放電が発生しやすい時間」の固まりの時間は1/2β(s)になるが、放電が発生している時間は、そのうちの1/3程度以下であることが多く、極端な場合には1/10以下ということもある。このような状況では、前述の筋がより発生しやすくなることは言うまでない。
以下、筋が極めて発生しやすい場合を想定し、「放電が発生しやすい時間」の1/γ程度に放電が集中している場合について、前述の計算を行う。すなわち、γは、放電が発生する時間の集中度を表す係数である。前述の考えと同じように、半分の時間はオープン状態で加工に寄与しておらず、その半分の中の1/γの時間だけに放電が発生していると考えるため、放電の発生している時間の加工速度は、2γV(m/s)となる。
このように周期的に放電が発生する現象が起きたときの1つの放電の固まり(1/2βγ(s)での放電)で筋が発生すると考える。1/2βγ(s)の間に回転するワイヤ(ガイド)の角度は、1/4αで2π(ラジアン)回転するので、
このときにワイヤ4と対向するワークの面積(すなわち加工される面積)は、
このときの加工深さは、(加工時間)×(加工速度)/(面積)として、
となる。
以上の議論より、加工速度が速い条件ほど、回動周波数が小さいほど、筋の深さは深くなる。この深さと加工条件による面粗さとの関係で筋ができる条件が決まる。この結果は、図3で説明した加工速度と筋の発生の条件の結果とも、図4で説明した回動周波数と筋の発生の条件の結果とも一致する。
ただし、実際には、加工速度Vが大きい条件では、極間距離が大きくなり、放電が周期的に発生する現象は起きにくくなり、一概に加工速度Vが大きいほど筋が出来やすくなるというわけではない。また、加工速度Vが大きい条件は面粗さも大きくなるので、筋は目立ちにくくなる。ただし、今回の加工が対象にしているような面粗さが細かい条件の加工では、加工速度Vが大きい条件ほど筋をつくる可能性は大きくなる。また、面粗さが細かい条件ほど、筋が目立ちやすくなる。これは、面が細かい条件ほど、極間距離が小さくなり、短絡現象が頻発するようになり、周期的に放電および短絡の時間、オープンの時間がはっきり出るようになり、実際に放電が発生している時間が短い時間に集中するためである。
多くの実験を繰り返した結果、おおよそ、
筋の深さ>面粗さ(mRz)×1.5
では筋が出来たと見える場合が多いことがわかった。
すなわち、
γV/(4πrα)<面粗さ(mRz)×1.5
α>γV/〔(4πr)×(面粗さ)×1.5 〕
α>γV/〔(6πr)×(面粗さ) 〕
(式9)
であれば、筋が問題にならないということができる。
今回の考察では、筋の深さから、応答周波数βが消えたが、実際にはそれほど単純ではなく、応答周波数βが大きい場合には加工が安定するため、周期的な放電になりにくく、筋は出来にくくなるし、応答周波数βが小さい場合には、加工が極めて不安定になる場合があり、図示したような全く周期的な放電の繰り返しではなく、もっとランダムに不安定な現象になり、極間に加工屑を挟み込んで不安定を引き起こす等、今回は詳細に議論しなかった現象も現れるので、応答周波数βは少なくとも10Hz以上は必要であった。
例として、面粗さが約3μmRzの加工条件で加工を行った。このときの加工速度V=約4×10−11(m/s)である。この場合、γ=10とし、(式9)に当てはめると、
α>0.3Hz
となる。
実際、回動周波数αは1Hz以上では筋が発生しなかったので、計算の結果と実際の実験の結果とは、概略合致しているということができる。
放電加工条件の休止時間を延ばし、平均加工速度Vを下げると、筋は目立ちにくくなることも確認でき、細かい数字に若干の誤差はあるが、考察に基づいた筋の発生と概略一致していることがわかる。計算値とずれがあるのは、放電の発生頻度が高い時間と低い時間とが完全に周期的に現れるわけではないこと、加工速度が厳密に一定ではないこと、短絡が発生すると短絡・オープンはほぼ周期的に現れるが厳密には一定でないこと等、実際の加工で発生する突発的な外乱要因が多々あるからである。実用上では、工具径がどれくらいの場合に、どれくらいの回動周波数αにするかを決めておくことが望ましいが、さまざまな加工実験を行った結果、面粗さが10μmRz以下の条件の場合、概略工具径(半径r)あるいは工作物を実際に加工する部分の工具径としての加工に寄与する工具径が、2mm乃至15mm程度の範囲であれば、回動周波数が1Hz以上であれば加工面の筋は問題ないレベルであった。
今回の実験では、工具径2mmまでで試験したが、これより小さい径であっても、今までの議論が成り立つのはいうまでない。現在では、ワイヤ放電加工用のワイヤはφ29μmまで市販されており、そのまま本実施形態の放電ミルにも使用することができる。近年、加工、特に日本国内で行われる加工では、微細精密加工の割合が増加しており、本実施形態の放電ミルも、微細加工に貢献できる技術となると考えている。
また、今までの議論では、簡単のため、回転動作を360度の往復回転に固定して議論したが、他の角度でもよいことは言うまでない。回転角度が180度以上であれば、全面加工することは可能である。しかし、実験からは、360度以上の角度にすると、より面の状態がよくなった。すなわち、目視ではわからない微小な形状の変化がなくなった。これは、180度よりも少し大きい程度の角度では、ラップする部分の放電頻度が若干上がるためであろうと考えている。回動周波数αが高くなれば、電極がその部分を通過する際の1回当たりの加工量は少なくなり、全体の放電頻度の差が小さくなりほとんど無視できるようになる。360度以上の回転角度になると、ラップする部分でも放電する可能性のある時間の差が小さくなるのに加えて、多く加工された部分は、次に電極が通過したときには、深く加工されているため、極間距離が大きくなるため、放電確率が下がり、ほとんど加工深さの差が見られなくなると考えている。回転角度が360度の場合に回動周波数が1Hz以上であればよい旨述べたが、本質は回動周波数αではなく、放電する際に電極が動く速度であるので、例えば回転角度が720度になれば周波数は0.5Hz以上であればよく、この値は回転角度に反比例するのは明確である。
すなわち、回転角度θをAラジアンとしたとき、
α>(2π/A)×(γV/(6πr・(面粗さ))
A>π、かつγ>1
のときには、筋が問題にならないということができる。γの値は加工の状態により異なり、比較的加工が安定していれば、すなわち、放電が比較的(時間的に)分散していればγは小さくなり、1程度になる。加工が不安定で、放電が発生する時間が短い時間に集中している場合には、γは10程度以上になる場合もある。γの値は加工状態により決まるが、最終的な加工面に筋ができるかどうかは、加工の最後の段階で決まることが多く、それまでの加工状態よりも突発的に加工が極めて不安定になって筋が発生するという場合もある。ある加工を行ったときにγをいくつと見積もるかは、加工状態によるが、大きめと想定しておき、そのγの値からαを決めたほうがより筋が発生しにくい安全な加工になる。経験的には加工状態が不安定な場合でもγを10程度以上と想定しておけば、筋のない加工ができた。
また、加工液が水の場合には、サーボ送りの方法を変化させることで、筋の発生を軽減できることもわかった。前述のように、加工液が水の場合には、一旦放電が発生すると放電が連続する傾向がある。一般的に放電加工の送りの制御は平均電圧が所定の値になるように制御を行うことが一般的であり、平均電圧がその値よりも高い場合には電極を送り込む動きを、低い場合には戻す動きをさせる。サーボの動きの例を図7に示す。図7は、電源の電圧が100Vで、極間の平均電圧を50Vにするように制御することを示している。
平均電圧が50Vのときには、電極を送り込む速度が0になり、短絡した場合には、毎分50mmの速度で電極を戻し、平均電圧が100Vのとき、すなわちオープン状態の場合には毎分50mmの速度で電極を送り込むことを示している。加工液が油の場合には、このような制御で安定に加工するが、水の場合には加工状態が不安定になることがわかった。これは、放電が発生するまでは、電極を送り込む動作を行うが、放電が一旦発生すると、放電が連続して発生し、平均電圧が低下し、設定の電圧よりも低い値になり、電極を引き戻す動作を行うことになる。加工液が油の場合には、極間距離が大きくなるに従い、放電の発生頻度が低下し、ある程度の極間距離になったところで安定して放電が継続するが、水の場合には、極間距離が大きくなっても放電の発生頻度が下がらず、極間距離が大きくなっていく現象がみられた。
極間距離が広がり、放電の発生限界になったところで放電が停止するが、一旦放電が停止すると、その距離では、放電が発生しない距離になっているため、極間距離が縮まるまで放電が発生しないオープン状態が続くことになる。このような動作を繰り返して放電加工を行っていることがわかった。前述のように、この現象が、直ちに筋の発生につながるというわけではないが、加工の均一性を阻害し、加工面にわずかなうねりを形成することにはつながっているようである。加工液が水の場合、図7のようなサーボの方式を改め、放電が発生するまでは軸を送り、放電が発生したら電圧が低下しても軸を止め、短絡が発生したら軸を戻すというサーボの方式にしたところ、加工面の性状が改善した。
以上の議論から明らかなように、放電ミリングにおいて、加工面に筋ができる現象は、加工液が水の場合よりも油の場合の方がより顕著である。放電パルスのエネルギーの大きい条件、すなわち、加工面粗さがあらく、また、極間距離の大きい条件では、加工液が水の場合には、加工面の筋はあまり目立たなくなる。しかし、加工液が水の場合でも、面粗さの小さい加工条件で加工した場合には、加工液が油の場合と同じ現象が発生し、放電が集中しているところで、加工面に筋をつくるので、今までの議論は、加工液が油でも水でも成り立つ。
尚、以上の議論は簡単のため、工具電極の半径、すなわち、ガイド部材1にワイヤ4を沿わせた形状の半径を放電加工に寄与する工具半径r(m)とし、工具電極に対応する半径rの円の領域を下方向(Zマイナス方向)に加工する場合を想定していた。Z方向は、図1では、回動軸3の軸に沿った方向である。加工深さが深くなり、r以上の深さをZマイナス方向に加工する場合には、今まで行った議論でのrをそのまま工具半径として考えればよいが、加工深さが浅い場合には、工具電極の半径全てが放電加工には寄与しないので、加工する部分の半径は、工具半径rよりも小さくなる。このような加工深さの浅い加工を行う場合には、工具電極のうちの実際に加工に寄与する部分をXY面に投影した円の半径をrとして考えればよい。
以上のように、この発明にかかるワイヤ放電加工方法は、放電ミリングを用いたワイヤ放電に有用である。
1 ガイド部材、2 ガイド先端部、3 回動軸、4 ワイヤ電極。

Claims (4)

  1. ワイヤ電極をガイド部材で保持し、ワイヤ電極を走行させながらガイド部材を正逆方向に往復回転運動させ、走行されるワイヤ電極と工作物との間に電圧を印加してパルス状の放電を発生させ、工作物を除去加工するワイヤ放電加工方法において、
    ガイド部材に保持されたワイヤの加工に寄与する半径をr(m)、平均加工速度をV(m/s)、前記往復回転運動の回動周波数をα(Hz)、前記往復回転運動の回転角度をA(ラジアン)、放電が発生する時間の集中度を表す係数をγとしたとき、
    A>π、かつ
    α>(2π/A)×γV/(6πr・(面粗さ(mRz)))
    γ>1
    を満たす回動周波数αを決定して加工を行うことを特徴とするワイヤ放電加工方法。
  2. 係数γは、γ>10
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工方法。
  3. 回転角度Aは、A>2πであることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ放電加工方法。
  4. ワイヤ電極をガイド部材で保持し、ワイヤ電極を走行させながらガイド部材を正逆方向に往復回転運動させ、走行されるワイヤ電極と工作物との間に電圧を印加してパルス状の放電を発生させ、工作物を除去加工する放電加工方法において、
    ガイド部材に保持されたワイヤの加工に寄与する半径を2mmから15mm程度の範囲とし、面粗さが100μmRz以下の加工条件を用い、前記往復回転運動の回動周波数が1Hz以上であることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
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