JP5848424B2 - 植物栽培用ハウスの冷暖房装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、寒冷地で冬季に例えば高級果実などの栽培を行う場合には、外気温が特に低いので、重油や軽油等の化石燃料を使用した暖房を行うことが必要であり、コストが大幅に上昇するとともに、地球温暖化や大気汚染をもたらす要因ともなっている。
そのようなビニールハウスの例を図11に示す。図11で明らかなように、外気との境は薄いビニールであるためほとんどの熱が放熱により失われ、暖房用の重油代が生産コストの40%以上を占めるという現状がある。
しかしながら、ヒートポンプを用いたとしても、空気を用いて温室の空調を行うことには、その効率の面で大きな問題があることが判明した。
<1.予備実験結果>
図8(a)および(b)は立方体の小型実験用チェンバーを示し、(a)は蓋を開いた状態、(b)は取付状態のそれぞれ概略斜視図、(c)は大型実験用チェンバーを示すそれぞれ概略斜視図である。
実験にはまず図8(a)に示す、50cm角の小型の地下水を通水可能な側壁パネル101を制作した。そして熱交換用の内壁をこの側壁パネル101を4枚連結して構築し、底板102にはウレタンゴムシートを貼付し、天井は2重構造のアクリル透明板103を被せて蓋をすることにより、ほぼ立方体の密封したチェンバー100を製作した。
これを通常のガラスハウス温室内に設置し、側壁パネル101内に14.0℃の地下水を流した。温度は、外気温、ハウス内温度、チェンバー内中央部温度を1時間ごとに計測した。
同様に、図8(c)に示すように90cm×180cmの大型の実験チェンバー200を制作し、小型チェンバー100と同じ条件で冬季の実験を行った。
この実験は、山梨県都留市で2013年10月27〜28日にかけて、小型チェンバーに地下水(温度13.4℃)を300ml/分の流量で流したものである。左側の数表は、1時間ごとの外気温・ハウス内温度・チェンバー内温度の計測値である。右側はその時系列変化を折れ線グラフにしたもので、無印が外気温、丸い点がハウス内温度、三角の点がチェンバー内温度である。
実験は27日10時丁度に側壁パネル内に地下水を流し始めた。このとき外気温は15.9℃、ハウス内は31.7℃であったが、小型チェンバー内は日照のため36.6℃に上昇していた。しかし1時間後には水流の影響で22.4℃に下がった。その後14時までは外気温が21.3℃まで上昇したが、日照の影響でハウス内は40.5℃まで上昇した。しかし、小型チェンバー内は日照を受けたとはいうものの、23.9℃が最高になった。注目すべきなのはチェンバー内温度が17時項から翌朝まで14.5℃±1℃位で安定し、横ばいになっていることである。この日は秋とはいえ冷え込んで、深夜には外気温の最低は5.5℃、ハウス内も8.5℃まで下がったが、チェンバー内は通水した地下水温の13.4℃より下がらないという結果が得られた。
図10は、大型チェンバーでの冬季の実験結果の一例を示すグラフである。計測は2014年3月11日11時から12日までの26時間の温度計測結果である。1時間ごとの外気温・ハウス内温度・チェンバー内温度、流水温度の計測値の時系列を折れ線グラフにしたもので、無印が外気温、丸い点がハウス内温度、三角の点がチェンバー内温度、四角の点がパネルに流した地下水温である。11日は昼間小春日和で昼間の気温は15℃まで上昇した。しかし午後は上空に厳しい寒気団が入り、急速に気温が下がり、12日の早朝にはマイナス8.6度まで冷え込んだ状況であった。本来の地下水温は14℃前後であるが、ハウスまでの送水経路で若干外気温に影響されているようだが、13.5〜14.5℃とほぼ一定であった。夜間の外気温は−8.6℃まで下がったが、チェンバー内は11.2℃以下にはならず、流水温に引きずられる感じで、2℃ほど低い状況で横ばいとなった。チェンバー内温度が流水によって一定に保たれることが証明されたと思う。14時ごろのハウス内は日照により30℃を越えている。チェンバー温度も若干している。チェンバーは上蓋が透明アクリル二重板になっているので、これも太陽光線照射によるものである。
実験結果により、地下水による温調技術が十分実用的であると証明された。
次に、どのくらいの流水量で温調効果があるかを検討した。
表1は、水と空気の物性値データと熱容量の計算方法を示すものである。
水1m3に蓄えられる熱量は4177MJ/(m3・K)で、空気1m3では1.126MJ/(m3・K)となり、計算すると3,710倍(約4千倍)もの差がある。つまり、1リットルの水は3,710リットルの空気と同じ量の熱量を持つことになる。言い換えると水1リットルで1℃分の熱量では空気3,710リットルを1℃上昇できる。
縦横5m×10mで高さが3mの標準的なビニールハウスの体積(空気量)は150,000リットルになるので、ハウス内の温度を1℃上昇させるには約40リットルの水がいることになる。もし仮に外気温が0℃の時、ハウス内温度を15℃まで上昇させるとすると、40×15=600となり、600リットルの地下水が必要となる。この量を1分間に流すと(仮に熱交換が効率よく行われるとする)、計算上は1分間で0℃から15℃まで上がることになる。
流す量を10分の1にすると10分間となり、100分の1にすると100分間でハウス内は15℃に達することになる。早い遅いはさておき、いずれにせよハウス内温度は最終的には15℃になる計算である。外気温の気温変動はゆっくり緩慢に変わっていくので、流水量は多くする必要はない。ちなみに一般家庭の水道を例に考える。バケツに水を入れる時のように大きめに蛇口をひねった場合は水量が30リットル/分位なので、ハウス内を20分間で0℃から15℃まで上昇させることになる。この計算で、地下水による温度調節での使用水量が大量なものではなく、極めて現実的で容易に実現できることものであることが解った。
以上のように、空気によってハウス内温度を制御するのではなく地下水の持つ大きな比熱を利用するものであり、ヒートポンプやエアの送風などを行うことなく、ハウス内の室内空気と地下水との直接的熱交換により室温を制御することが本発明の主眼とするところである。
これを図示すると図12に示すようになる。
すなわち、植物の生育に望ましい快適温度を約20℃とすると、従来方法では冬季の外気温からボイラを用いて温める必要があり、多大な重油代が発生する。同様に夏季の外気温から快適温度にするため、エアコンを用いて快適温度まで冷房する必要があり、やはり多大な電気代が発生する。
他方、地下水・湧水を利用した場合、快適温度を約20℃とすると、冬季の外気温から快適温度に近い15℃まで地下水・湧水で温めることができる。そこから快適温度までは補助加熱で温めればよい。夏季の外気温から快適温度にするためには、地下水・湧水で冷せばよい。
言い換えると、冷房コストは0であり、暖房コストは補助加熱分のみであって従来方法の1/4以下とすることができる。
以上のように本発明では、床・天井・側壁に地下水を流して地下水に取り囲まれたような空間を作り、周囲の地下水と室内空気の熱交換によりハウス内の温度調節を行う。
前記地下水の循環には、床・天井・側壁に地下水が流れるパネルを使用する。
またハウス内の温度調節は、地下水と室内空気の直接的熱交換のみで行う。
細かい温度調節は、地下水の流量のオンオフと、流水温調節(湯を使う)で行う。
基本的には、流量を一定にしながら求める室温の地下水をパネルに流し続けるものとする。
なお、冷房時の室温の下がり過ぎ、暖房時の上がり過ぎは、パネル内の地下水の流れのオンオフで行う。
しかも太陽熱温水装置等の補助加熱装置で加温された温水を貯蔵する貯水槽および断熱蓄湯槽とで蓄えるようにすれば、従来のような化石燃料を使用しなくとも冬季や寒冷地での植物の栽培が可能となり、また夏季においても湧水・地下水を利用して非常に効率的に温度管理することができるようになった。
この発明の植物栽培用ハウスの冷暖房装置は非常に安い価格で施工することができる。
また非常に構造が単純である。
しかも、従来施設にパネルを貼るだけで良く、施工の手間がかからない。
図1は、前記植物栽培用ハウス11の断熱壁11aの内側に地下水循環パネル12を配設した2重壁構造を示すものである。
すなわち、前記植物栽培用ハウス11の外周には内壁用の地下水循環パネル12aが取り囲むように上部まで配設され、また屋根部分もビニール天井11bと透明な地下水循環パネル12bとの2重構造となっている。
また、前記植物栽培用ハウス11の内部には複数列の培地21が配置されており、その間には湧水溝22が通されている。
図2(a)における地下水循環パネル12は、内部に地下水が循環するジグザグの循環路31が形成されたプラスチック製パネルで構成されている。もちろんその熱交換部位は、アルミその他の金属により形成され、熱交換効率の良い構造となっている。
そして、各地下水循環パネル12の間は該循環路31の端部に設けられた給水口32に取り付けた接続コネクタ33によって連結されている。34は水導入口コネクタ、35は水排出口コネクタである。
また図2(b)は複数連結した地下水循環パネル12を立設する状態を示すものであり、樋状の立設ガイド36に地下水循環パネル12をはめ込んで倒伏を防止するようになっている。
すなわち、湧水・地下水は我が国においては、夏でも冬でもほぼ一定の水温であることが知られている。たとえば出願人の住所地である都留市においては、富士山の伏流水が採取可能であり、年間を通して13℃〜17℃の範囲内にあることが知られている。
したがって、夏の外気温が35℃以上あっても、前記湧水・地下水を用いれば冷却することが可能である。
また、冬の外気温が氷点下であっても、前記湧水・地下水を用いて加温することが可能である。
図5を用いて前記湧水洞窟Cをより詳しく説明すると、前記植物栽培用ハウス41のほぼハウスを囲む壁面全体を地下水循環パネル42で囲み、地下水循環カーテン42aを前記植物栽培用ハウス41の出入り口に開閉自在に設置してある。なお、天井部分には透明な地下水循環パネル42bを設置してあり、日光で植物栽培を促進したり、ハウス内が昇温できるように日光を採光可能としてある。
また、植物栽培床43の各列間には湧水を通水する湧水溝44が配設してある。
ちなみに、前記植物栽培用ハウス11のハウスを囲む壁面および\またはその内部に地下水循環パネル12を配設してある。該地下水循環パネル12にはポンプPを介して、年間を通して13℃〜17℃の湧水や地下水が供給され、循環されるようになっている。
なお前記補助加熱装置として、太陽熱温水装置15に代えて植物栽培用ハウス11の外側にボイラまたは湯沸し器(図示せず)を設置し、該ボイラまたは湯沸し器に前記貯水槽14を連結してもよい。
前記地下水は単独の配管で前記地下水循環パネル12に循環させ、加熱して得た温水も地下水の配管とは別の系統で循環させてもよい。その場合には前記地下水循環パネル12の循環を遮断弁や制御弁などにより調整することが望ましい。
また別の手段として、地下水と温水とを混合して所定の温度に調整した水や温水を循環させることもできる。
したがって、前記太陽熱温水装置15で加温されて貯水槽14に蓄えられた温水は上部循環パイプ17aを通って前記断熱蓄湯槽13に給湯され、前記断熱蓄湯槽13において冷された冷水は下部循環パイプ17bを通って前記貯水槽14に給水されるようになっていて、いずれも温水あるいは冷水の温度差によって自然に循環するようになっている。
もちろん、夏季においては前記植物栽培用ハウス11内に設置した地下水循環パネル12に湧水・地下水を循環することにより、15℃から25℃前後に室温を冷却することができ、夏季においても果実、野菜、花等の各種の植物を良好に育てることができる。
フォームの始まり
フォームの始まり
11a 断熱壁
11b ビニール天井
12 地下水循環パネル
12a 内壁用の地下水循環パネル12a
12b 透明な地下水循環パネル
13 断熱蓄湯槽
14 貯水槽
15 太陽熱温水装置
17 循環パイプ
17a 上部循環パイプ
17b 下部循環パイプ
21 培地
22 湧水溝
31 循環路
32 給水口
33 接続コネクタ
34 水導入口コネクタ
35 水排出口コネクタ
36 立設ガイド
41 植物栽培用ハウス
42 地下水循環パネル
42a 地下水循環カーテン
42b 透明地下水循環パネル
43 植物栽培床
44 湧水溝
C 湧水洞窟
S 傾斜地
P ポンプ
Claims (2)
- ハウスを囲む壁面および\またはその内部に地下水が循環するジグザグの循環路を有する地下水循環パネルを配設した植物栽培用ハウスを備え、該植物栽培用ハウスの地盤内には断熱蓄湯槽を設置し、前記植物栽培用ハウスの地盤の外の前記断熱蓄湯槽よりも低い位置に貯水槽を設置するとともに、前記貯水槽に補助加熱装置を連結し、かつ前記地下水循環パネルと前記断熱蓄湯槽と前記貯水槽との間を循環パイプで連結して、温水および冷水を循環させるようにしたことを特徴とする植物栽培用ハウスの冷暖房装置。
- 前記断熱蓄湯槽と前記貯水槽との間を連結した循環パイプは、前記断熱蓄湯槽と前記貯水槽との間の上下に一対配設され、上部循環パイプにより温水を、また下部循環パイプにより冷水を循環させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用ハウスの冷暖房装置。
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