JP5847395B2 - 製品に付すべき香りの選択方法 - Google Patents

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本発明は、製品に付すべき香りの選択方法に関する。
従来より、製品の香りは消費者の製品に対する評価に影響を与えることが知られている。そのため、製品を提供する側にとって、製品に付すべき香りをいかに選び出すかは重要な問題である。製品に付すべき香りの選択方法の一態様として、嗜好性の高い香りを選択する選択方法や嗜好性の高い香りを評価する香りの評価方法が提案されている。
たとえば、香料成分又は香料成分が賦香された製品を複数回使用することによって嗜好性の高い香料成分を選択する方法が提案されている(特許文献1)。また、香りから受ける印象を評価する用語を、香りを感覚的な刺激に基づいて評定する感覚評定用語と、香りを嗅いだときに喚起される気分に基づいて評定する感情評定用語と、に分類して、香りの特性を正確に評価しようとする方法が提案されている(特許文献2)。さらに、被験者に1つ以上の香りを提示して、香りとともに視覚や聴覚を通じた刺激を与え、香りとこれらの刺激との組合せの記憶を評価する評価方法も報告されている(特許文献3)。
一方、非特許文献1には、匂いを快いと感じることに加えて、その匂いからポジティブな被験者自身の過去の記憶を強く喚起できる場合、その香りが賦香されている製品評価が向上するという効果が開示されている。
特開2007−63251号公報 特開2001−174450号公報 特表2001−501611号公報
日本心理学会第74回大会発表論文集、(2010)日本心理学会第74回大会準備委員会
製品に付すべき香りを選択する場合、嗜好性の高い香りを選択でき、また製品評価を向上させる香りを選択できる方法が問題となる。
しかしながら、特許文献1〜3記載の方法及び非特許文献1記載の予備実験の方法は、任意の香料の中から被験者に実際に香り嗅がせて、香りを選択したり、評価するものであった。そのため、選択、評価される香りがある程度限定されてしまい、より望ましい香りを見逃してしまう可能性があった。また、事前に現存する多種多様な香りの中から評価対象となる香りを選定する必要があり、選定するために所定の基準を設ける作業や、実際にその香りを用意する負担も生じた。また、評価対象となる香りが、実際に用意できるものに限定され、さらに、被験者に実際に香りを嗅がせるための設備環境が必要となった。そのため、被験者の数が制限される場合や、多大な時間と費用を要する場合もあった。
かかる問題に鑑み、本発明者が鋭意検討を行った結果、所定の手順で被験者から情報を取得することにより、実際に被験者に香りを嗅がせなくても、より嗜好性の高い香りが選択できることが見出された。
すなわち、本発明によれば、
被験者の属性に関する情報を取得するステップと、
前記被験者に香りを嗅がせずに、前記被験者自身の過去の記憶を想起する香りと前記過去の記憶との関連性に関する情報を取得するステップと、
前記過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を取得するステップと、
前記過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性を指標として、前記過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を基に前記過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性が高い香りを抽出し、抽出された香りを、前記属性を有する被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定するステップと、
を含む、製品に付すべき香りの選択方法が提供される。
本発明によれば、被験者に香りを嗅がせなくても、より嗜好性の高い香りが選択できる香りの選択方法が提供される。
本実施形態にかかるフローチャートを示す図である。 本実施形態における(1)時点、(2)時点、及び現時点の時系を示す模式図である。 年代ごとの、過去の記憶を強く喚起する香りと、主香調との関係を示すグラフ図である。 実際に香りを嗅いだ際の記憶の喚起度を示すグラフ図である。 実際に香りを嗅いだ際の記憶の喚起経験の快さを示すグラフ図である。 香りを嗅いだ際の分時呼吸数を示すグラフ図である。 香りを嗅いだ際の呼吸の一回換気量を示すグラフ図である。
図1、2を用いて、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態にかかるフローチャートを示す図、図2は本実施形態における(1)時点、(2)時点、及び現時点の時系を示す模式図である。
はじめに、本実施形態の香りの選択方法の概要について説明する。
本実施形態の製品に付すべき香りの選択方法は、
被験者の属性に関する情報を取得するステップ(S1)と、
被験者に香りを嗅がせずに、被験者自身の過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性に関する情報を取得するステップ(S3)と、
過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を取得するステップ(S4)と、
過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性を指標として、S3において得た情報を基に、過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性が高い香りを抽出し、抽出された香りを、S1で得た属性情報に該当する被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定するステップ(S5)と、
を含む。
さらに、本実施形態において、被験者が複数であって、特定の属性を有する被験者からなる集団を抽出するステップ(S2)を含み、S5において、抽出された香りを、特定の属性を有する被験者からなる集団に対する嗜好性の高い香りとして決定している(S6)。
本実施形態において、製品に付すべき香りとは、製品に付すことでその製品の需要増加、製品の評価向上などに影響する香りであって、嗜好性の高い香りである。また、嗜好性の高い香りとしては、例えば、製品性能評価が向上する香りが挙げられる。ここで、非特許文献1に記載されたように、製品性能評価とは、被験者が香りを嗅いだことで喚起される被験者自身の快い過去の記憶の喚起度が高いほど、向上するものである。
なお、本実施形態において、情報の取得方法は、特に限定されないが、たとえば、印刷物の配布・回収による調査、インターネットを利用した調査、一対一の聞き取り形式などが挙げられる。
以下、本実施形態の香りの選択方法の詳細について説明する。
(S1)
S1では、被験者の属性に関する情報を取得する。被験者の属性とは、特に限定されないが、例えば、被験者の年代、性別、性格、職業、出身地、血液型、家族構成等の他、趣味や関心のあるカテゴリーが共通する群、インターネット、香水、コロンなど特定のものをよく使用する群など生活習慣や嗜好の共通性に関するものであってもよい。たとえば、インターネットを利用してアンケートを行った場合、被験者の属性として、インターネットを利用するという属性情報が得られることになる。
また、被験者に心理測定尺度を用いて、属性情報の取得を行い、結果を複合的に判断し、複数の被験者をある一定の心理的傾向をもつグループに分類し、それを属性とすることもできる。ここで、心理測定尺度は、たとえば、「心理測定尺度集 I 人間の内面を探る〈自己・個人内過程〉」(サイエンス社(2001))に記載される自己・個人内過程に関するもの、「心理測定尺度集 II 人間と社会のつながりを捉える〈対人関係・価値観〉」(サイエンス社(2001))に記載される対人関係・価値観に関するもの、「心理測定尺度集 III 心の健康をはかる〈適応・臨床〉」(サイエンス社(2001))に記載される適応・臨床に関するもの、等の書籍に記載の心理測定尺度から選択される。
属性情報を得ることにより、特定の属性を有する被験者に選別でき、特定の属性の人の嗜好性の高い香りを選択できるようになる。この場合、被験者の属性は、対象物の主たる購買層の性質を反映していることが好ましい。また、選択された香りに対する過去の記憶の喚起度が高く、嗜好性の高い人の属性を知ることができる。
(S2)
S2では、特定の属性を有する被験者からなる集団を抽出する。特定の属性を有する被験者からなる集団を抽出する方法は、特に限定されない。
たとえば、インターネットを利用してアンケートを行った場合、インターネットを利用するという属性を有する集団が抽出されることになる。また、より製品性能評価を向上する香りを正確に選択する観点から、S2では記憶を想起する香りを持つ集団を抽出することが好ましく、更に香りを付す製品の購買層であって記憶を想起する香りを有する集団を抽出することが好ましい。
(S3)
S3では、被験者に香りを嗅がせずに、被験者自身の過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性に関する情報を取得する。S3は、後述するS5での香りの抽出処理の点から、さらに、香りから喚起される過去の記憶の喚起度に関する情報を取得するステップ(S3−1)、香りを嗅いで過去の記憶を喚起する経験の快さに関する情報を取得するステップ(S3−2)、香りを嗅いで喚起された過去の記憶そのものについての情報を取得するステップ(S3−3)のいずれか1以上のステップを含んでいる方が好ましく、S3−1からS3−3の全てのステップを含む方がより好ましい。
S3において、情報を取得する時点で被験者は香りを嗅がない。一方、被験者が回答する過去の記憶を想起する香りとは、被験者自身が過去に香りを嗅いで、何らかの被験者自身の過去にまつわる記憶を想い出した経験に関するものである。
ここで、一般に、特定の香りを嗅ぐことで、その香り自身、その香りと共に体験したこと、その場にいた人物、あるいは何らかの連想など、その人自身の過去にまつわる記憶をよみがえらせること、喚起させることが知られている。そこで、S3では、被験者に対し、これまでの人生において、香りを嗅いで自身の過去の記憶を想い出したことがあるか否かについて質問することで、香りを嗅がせなくても過去の記憶を喚起させ、被験者自身の過去の記憶と、過去の記憶を想起する香りとの関連性についての情報を得ることができる。
被験者自身の過去の記憶と過去の記憶を想起する香りとの関連性に関する情報は、被験者の自由な回答から得てもよく、複数の選択肢からの選択でもよく、また以下に説明する、喚起度に関する情報であってもよい。この中でも、製品性能を向上させる香りをより精度よく選択する観点から、喚起度に関する情報を得ることが好ましい。
被験者自身の過去の記憶とは、いわゆる自伝的記憶を含むものである。「被験者の過去」とは、香りの選択のために与えたものでなく、被験者各々の過去を意味する。被験者自身の過去の記憶は、本能においてリンクしており、香りを嗅ぐと、被験者の過去の被験者自身に関連した記憶を想い出す。そして、想い出す度合いの強さを記憶の喚起度(以下、「喚起度」という)として評価することができる。
本実施形態では、被験者に香りを嗅がせることがないため、事前に香りを準備する負担がなくなり、また準備する香りの設定、香りを嗅ぐための設備環境が不要となり、ヒアリングやアンケートによって、嗜好性の高い香りを選択することができる。
さらに本実施形態では、被験者に香りに関する情報は与えないようにしてもよい。香りに関する情報とは、香りそのものを嗅ぐ以外に、香りそのものに関連するまたは香りそのものを示唆する化粧品、食品、写真、カタログなどを見せて、香りを想定させる視覚的情報、等が挙げられる。香りを嗅がせないまたは香りに関する情報を与えないことによって、現存する多種多様な香りの中から、自由に香りが選択される。
ただし、被験者自身に関連した過去の記憶を喚起しやすいように、視覚または聴覚を通じて、記憶を喚起させるよう促してもよい。たとえば図2のように記憶を喚起した時を図示したものや、記憶を喚起しやすい写真や映像などを提示して問いかけをしてもよいし、記憶を喚起させるような音楽をかけた状態で問いかけをしてもよい。
(S3−1)
S3−1では、香りから喚起される過去の記憶の「喚起度」に関する情報を取得する。
香りから喚起される過去の記憶の「喚起度」とは、たとえば、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さ、過去に引き戻される感覚の強さ(香りを嗅ぐことで喚起される記憶が生じた当時に引き戻されるような感覚の程度)、記憶の鮮明さ、記憶の情景が目に浮かぶようであるか、記憶の内容を再び体験したような感覚を得たか、想い出した記憶が自身にとって特別なもの又は重要なものと感じられるか、記憶に関わる場所、物又は人物をさらに想い出すかどうか、或いは記憶の内容の詳細さ、の中から選択される、少なくとも1以上の項目を被験者が評価することで得られるものが好ましい。この中でも、より嗜好性の高い香りを選択する観点から、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さ、過去に引き戻される感覚の強さ、及び記憶の鮮明さを評価することがより好ましい。
「喚起度」は、被験者の自由な回答や複数の選択肢からの選択の他、一次元のビジュアルアナログスケールと呼ばれる尺度が好ましく、数値を用いた多段階評価がより好ましい。たとえば、数値を付帯した順序尺度、感覚尺度、比率尺度が挙げられる。
たとえば、「喚起度」は以下のようにして数値化することができる。
(i)「香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さ」は、感情の変化の強さが非常に弱いことを示すポイントと、感情の変化の強さが非常に強いことを示すポイントとの間で数値化することができる。
(ii)「過去に引き戻される感覚の強さ」は、引き戻されるような感覚が全くないことを示すポイントと、完全に当時に引き戻されるような感覚を示すポイントとの間で数値化することができる。
(iii)「記憶の鮮明さ」は、記憶の内容が全体としてあいまいなものであることを示すポイントと、非常に鮮明なものであることを示すポイントとの間で数値化することができる。
(S3−2)
S3−2では、香りを嗅いで過去の記憶を喚起する経験の快さ及び過去の記憶の快さに関する情報を取得する。すなわち、香りを嗅いで自身の過去の記憶を想い出す経験及び想い出した過去の記憶の気分や感情の良さの程度について問いかけを行い、回答を得る。
たとえば、香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気持ち、感情の変化の快さ、香りを嗅いで想い出した記憶の内容の快さ、香りを嗅いで想い出した記憶の中の被験者自身が感じていた気持ち、感情の変化の快さ等から選択される、少なくともいずれか1以上の質問項目に対して、被験者が評価することで得られる。
香りを嗅いで自身の過去の記憶を喚起する際の気分や感情の良さの程度を評価する項目としては、たとえば、快い、ポジティブ、楽しい、満足した、幸せな、等の気分や感情の良さを示す評価項目が挙げられる。
評価の尺度は、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験の快さについて、評価項目のような気分や感情がまったく感じられなかったことを示すポイントから、評価項目のような気分や感情を強く感じたことを示すポイントまでの間で、数値化する。
評価の尺度は、一次元のビジュアルアナログスケールと呼ばれる尺度が好ましく、さらには、数値を用いた多段階評価が好ましく、たとえば数値を付帯した順序尺度、感覚尺度、比率尺度が挙げられる。
高い気分や感情の良さは、たとえば「香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時、快い気持ち−不安な気持ちがどの程度あったか答えてください」という問いにより、香りを嗅いで自身の過去の記憶を想い出す経験をした時の気分や感情の良さの程度を、1:不快な気持ち〜5:快い気持ち、の5段階評価を行うことにより数値化することができる。
(S3−3)
S3−3では、香りを嗅いで喚起された過去の記憶そのものについての情報を取得する。たとえば、喚起された過去の記憶の内容、いつごろの記憶か、どんな状況の記憶か、などの問いかけをし、具体的かつ自由に回答させる。回答としては、たとえば、「10代のころに滞在したハワイの旅行」、「毎年夏休みに遊びにいっていた祖母の想い出」、「はじめてデオドラントスプレーを使用したときのこと」等が挙げられる。
ここで、図2を用いて、S3−1、S3−2、S3−3で得られる情報の時系列について説明する。図2は、ヒアリングの中で問いかけられる質問が、本実施形態におけるヒアリングを実施している「今のあなた」にとって、(1)時点の「香りをかいで過去の記憶を想い出す経験をした時」に関する情報を得ようとしているものか、(2)時点の「(1)時点で香りをかいだことにより想い出した過去の記憶」に関する情報を得ようとしているものか、を理解しやすくするための模式図である。
たとえば、S3−1の「喚起度」の質問に含まれる「香りをかいで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さ」は、(1)時点の被験者の心的状態を問うものである。また、たとえば、S3−1の「喚起度」の質問に含まれる「記憶の鮮明さ」は、(2)時点の経験、すなわち「(1)時点で香りをかいだことにより想い出した過去の記憶」の内容の特性を問うものである。
S3−2では、たとえば、「香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気持ち」は、図2の(1)時点に関する情報を得る質問である。これに対し、「香りを嗅いで想い出した記憶の中の被験者自身が感じていた気持ちの変化の快さ」は、(2)時点に関する情報を得る質問である。S3−3は、いずれも(2)時点に関する情報を得る質問である。
S3では、S3−1、S3−2、S3−3を同時に行ってもよく、また別々に行ってもよい。S3−1、S3−2、S3−3の順番で問いかけを行ってもよく、このとおりの順番でなくてもよい。
被験者が回答する際の時系列の混乱を避ける目的で、図2に示すような記憶の時系列を示すイラストを被験者に参照させてもよい。さらに時系列を考慮して、(1)時点の「香りをかいで過去の記憶を想い出した経験をした時」に関する情報を得る質問、(2)時点の経験、すなわち「(1)時点で香りをかいだことによって想い出した記憶」に関する情報を得る質問、という順番で行ってもよく、このとおりの順番でなくてもよい。
(S4)
S4では、過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を取得する。たとえば「過去の記憶を想い出すきっかけになった香りが何だったか、どんな特徴の香りだったか、等をできるだけ具体的に書いてください。製品などの名前がわかれば、それも書いてください。」というような問いかけをし、被験者の想起する内容や回答方法を指示したり制限したりすることなく、被験者の自由な記述により回答させる。被験者は、香りをいくつ回答しても構わないが、一つの香りごとに過去の記憶との関連性に関する情報を取得する。
ここで、例えば「田舎の祖母の家のにおい」といった回答のように、製品に付する目的で香りを再現することが難しい回答が得られるのを回避する観点から、S4は、被験者に対し、香りのカテゴリーを指定し、指定されたカテゴリーの中から過去の記憶を想起する香りを自由な記述により回答させるステップ(S4−1)を含む方が好ましい。
香りのカテゴリーとは、過去の記憶を想い出すきっかけになった香りの発生源であるところの物体、人物、場所等の実体物をグループ化したものであって、例として「香水・コロン」「化粧品」「洗剤・洗浄剤」「入浴剤」などの製品、「草木」「花」「動物」「食品」「薬品」「化学物質」「建物」「場所」などの物体、「家族」「男性」「女性」などの人物、などが挙げられる。
S4−1で行う質問としては、たとえば、「過去の記憶を想い出すきっかけになった香水やコロンの商品名、ブランド名を書いてください。」、「過去の記憶を想い出すきっかけになった花や植物の名前を書いてください。」といった質問が挙げられる。
また、過去の記憶を想起する香りについて、あらかじめ複数の香りのカテゴリーを選択肢として示して選択させた後、具体的な香り名を自由に記述させることもできる。これによって、被験者の回答を具体化させることを容易にし、再現することが難しい香りの回答を避けることができる。
なお、上記実施形態では、S1〜S4の順に行う場合について説明したが、これらの順番は特に限定されず、また複数のステップを同時に行ってもよい。また、いずれかのステップまたはすべてのステップを繰り返し行ったり、時間をおいて行ってもよい。
(S5(S6))
S5(S6)では、上記ステップで得られた過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性に関する情報に基づいて、関連性を指標として、S4で得た過去の記憶を想起する香りを特定する情報を基に関連性が高い香りを抽出し、抽出された香りを、S1で得た属性情報に該当する被験者又はS2で抽出した特定の属性を有する被験者からなる集団に対する嗜好性の高い香りとして決定する。本実施形態では、香りから喚起される過去の記憶の喚起度の数値に基づいて香りを抽出し、抽出された香りを、S1で得た属性情報に該当する被験者、すなわち特定の属性を有する被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定する場合について説明する。
まず、「喚起度」に基づいて香りを抽出する方法について説明する。
「喚起度」を測定する項目が一つであった場合、その評価項目の値に基づいて、香りと香りに関連づけられた被験者を選択する。例えば、インターネットを利用して多数の被験者に対してアンケートを行った場合、被験者を「喚起度」が基準値以上である群と基準値より低い群とに分類し、「喚起度」が基準値以上である群において特定されたそれぞれの香りを抽出することができる。
「喚起度」を測定する項目が複数であった場合、以下の(A)〜(C)のいずれかに該当するか確認する。いずれか一つに該当した場合、その「喚起度」が関連づけられた香りを、被験者自身の過去の記憶を強く喚起する香りとして抽出することができる。
(A)被験者を、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、いずれか1つの項目でも基準値より低い値を示す群とに分類し、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群に含まれる。
(B)被験者を、すべての評価の値から1つ以上の評価の値を利用して算出する代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、基準値より低い群とに分類し、代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群に含まれる。
(C)被験者を、「喚起度」を測定する項目のうち1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、基準値より低い群とに分類し、「喚起度」を測定する1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す被験者群に含まれる。
ここで、「喚起度」を測定する複数の項目の評価値が、(A)〜(C)のいずれか一つに該当すればよいが、(A)に該当することが最も好ましく、次いで(B)に該当することが好ましく、(C)であってもよい。
(B)に該当する「喚起度」の代表値は、特に限定されないが、例えば、複数の項目すべての平均値を算出する、複数の項目すべての中央値を算出する、複数の項目すべての最頻値を計算する、複数の項目すべての総和を算出する、複数の項目の中で最も高い得点を代表値とする、複数の項目の中で最低点と最高点を記録した項目を除外した残りの項目の得点を平均する、といった方法で得ることができる。
また「喚起度」の基準値の設定方法は、以下の通りである。
「喚起度」の基準値の設定は、測定の仕方、または、データの分布の広がりに応じて決定することができる。たとえば、多段階評価で評価として提示した値の中央の値を基準値とすることができる(5段階であれば3)。または、多段階評価において「喚起度」が最も強いことを示すトップボックス(5段階であれば5と評価)、トップ2ボックス(5段階であれば4または5と評価)という基準値を設定することもできる。または、調査に参加した被験者全体の平均値あるいは中央値、最頻値といった、集団データを代表する統計的な指標を算出し、これを基準値とすることもできる。
次に「喚起度」に基づいて抽出された香りに関連づけられた被験者を抽出する。抽出した被験者は「喚起度」の高い被験者群としてそのまま使用してもよいし、更に属性分類により複数の被験者群に分類してもよい。例えば、性別、年齢、性格などにより属性分類をすることができる。
属性分類を行った後、その群において特定されたそれぞれの香りを抽出し、抽出された1種または複数種の香りを特定の属性を有する被験者に対する嗜好性が高い香りとして決定する。
ここで表1に、被験者の属性、特定の香り、及び喚起度に関する情報の例示を示す。表1中の判定は、喚起度の基準値を3.0としたとき、基準値以上を○、基準値より低い場合を×で示している。表1に示されたように、判定が○である香り「フルーティフローラルの香水」、「メリット(登録商標)の香り」、「バブ(登録商標)のゆずの香り」が、特定の属性の集団に対する嗜好性が高い香りとなる。
Figure 0005847395
さらに、S5(S6)の後、更に嗜好性の高い香りを選択した被験者の属性に関する情報を分析し、被験者の属性のうち嗜好性の高い香りについて特に嗜好性の高い被験者の属性に関する情報を取得してもよい。たとえば、表1に示されたように、抽出された香り「フルーティフローラルの香水」、「メリット(登録商標)の香り」、「バブ(登録商標)のゆずの香り」に関連づけられた属性に関する情報を分析し、「メリット(登録商標)の香り」は、30代にとって嗜好性が高いという関連性があるといった情報を取得する。
さらに、「喚起度」に加え、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を指標としてもよい。「喚起度」の値と「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」の値に基づいて、いずれの数値も基準値と同等もしくは基準値より高い値を取った群と、基準値より低い群とに分類し、上記同様にして、その群において特定された香りを抽出し、抽出された香りを、特定の属性を有する被験者に対する嗜好性が高い香りとして決定することができる。これにより、ポジティブな過去の記憶を喚起する喚起度の高い香りを抽出することができ、製品性能評価を高めることができる香りを選択できるようになる。
「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目が一つであった場合、その評価の値が基準値と同等もしくは基準値より高い値をとった場合、この値が関連づけられた香りを、ポジティブな過去の記憶を喚起する香りとして抽出することができる。
なお、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」の基準値の設定については、「喚起度」の基準値の設定と同様である。
ただし、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目が複数であった場合、以下の(A)〜(C)のいずれかに該当するか確認する。いずれか一つに該当した場合、その値が関連づけられた香りを、ポジティブな過去の記憶を喚起する香りとして抽出することができる。
(A)被験者を、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、いずれか1つの項目でも基準値より低い値を示す群とに分類し、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群に含まれる。
(B)被験者を、すべての評価の値から1つ以上の評価の値を利用して算出する代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、基準値より低い群とに分類し、代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群に含まれる。
(C)被験者を、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目のうち1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す群と、基準値より低い群とに分類し、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す被験者群に含まれる。
ここで、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する複数の項目の評価値が、(A)〜(C)のいずれか一つに該当すればよいが、(A)に該当することが最も好ましく、次いで(B)に該当することが好ましく、(C)であってもよい。
(B)に該当する「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」の代表値は、特に限定されないが、例えば、複数の項目すべての平均値を算出する、複数の項目すべての中央値を算出する、複数の項目すべての最頻値を計算する、複数の項目すべての総和を算出する、複数の項目の中で最も高い得点を代表値とする、複数の項目の中で最低点と最高点を記録した項目を除外した残りの項目の得点を平均する、といった方法で得ることができる。
被験者の数は、複数であり、喚起度の正確性を確保する観点から、たとえば、8名以上、さらに好ましくは10名以上であることが好ましい。被験者数は多いほど好ましいが、70名以下でも、50名以下であってもよい。
なお、上記実施形態では、被験者が複数である場合について説明したが、被験者は一名であってもよい。この場合も、同様にして、過去の記憶の「喚起度」を指標として、被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定できる。
被験者の過去の記憶を想起する香り(いわゆる自伝的記憶を喚起する香り)の種類が多岐にわたっていた場合、それらの香りをグループ化して、過去の記憶を想起する香りの特性を決定してもよい。たとえば、選抜された属性の被験者において、過去の記憶を喚起する香りとして回答された香りを、たとえば、全体的な香調やトップノートなどの香りの質や、香りが想起する感情やイメージなど香りの特性ごとにグループ化してもよい。そこで、特性ごとに分類された香りを、それに関連づけられた属性の被験者が過去の記憶を想起する香りの特性として決定することができる。
また、被験者の過去の記憶に関連する香りの種類又はこれらの香りを特性ごとに分類した香りのグループが多岐にわたる場合、喚起度との相関が最も強いものを選択するのが好ましい。相関の強さは、たとえば、上記「喚起度の基準値の設定方法」と同様にして「喚起度」の基準値を設定し、基準値を上回る人数を指標とする他に、「喚起度」の平均値、中央値、最頻値、「喚起度」の総和、などを指標とすることができる。
特に、製品に付すべき香りを選ぶ場合、その製品の購買層が共通して過去の記憶を想起する香りを選ぶ事が好ましい。そこで、香りを付す製品の購買層と同一の属性を有する被験者を抽出し、抽出された被験者が過去の記憶を喚起する香りとして回答した香りを、香調やトップノートなどの香りの質や、香りが喚起する感情やイメージなどの香りの特性ごとにグループ化する。そして、最も回答の多かった香りの特性を有する香りを製品に付すべき香りとして選択することが好ましい。これにより、更に製品の購買層が共通して過去の記憶を想起する香りの特性を選択することが可能となる。
なお、上記実施形態では、過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性として喚起度の数値が高い香りを抽出し、抽出された香りを、S1で得た属性情報を有する被験者からなる集団に対する嗜好性の高い香りとして決定する場合について説明したが、この場合に限られない。たとえば、関連性を指標とするときに、喚起度の数値が低いものを関連性が高いものと設定することで、喚起度の数値が低い香りを抽出し、特定の被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定してもよい。
また、上記実施形態で説明した本発明の製品に付すべき香りの選択方法を用いて選択された香りを、特定した製品に付することによって芳香性製品を製造できる。芳香性製品に香りを付す方法は、特に限定されず、常法を用いることができる。芳香性製品としては、たとえば、香水、コロン、化粧品、洗剤、又は線香等が挙げられる。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、過去の記憶に関連する香りを回答させるに当たり、香りのカテゴリーを香水・コロンと指定している。
(実施例1)
被験者として、20代〜50代の男女446名が、インターネット調査形式によるヒアリングに回答した。
ヒアリングは、下記の表2に示すような構成で行った。
質問[1]では、「これまでに、何かのにおいや香りを嗅いで、ふと過去の体験や記憶、昔の想い出を想い出した、そんな経験をしたことがありますか?」という質問文を与え、「はい」と回答した場合のみ、以降の質問に進めることとした。これにより、349名が以降の質問に回答した。(処理S1〜S2)
以降の質問[2−1]〜[2−6]の前に、図2を示した上で、香りを嗅いで自身の過去の記憶を想い出した経験をした時のことについて尋ねることを明示した(図2中の(1)参照)。
次に、質問[2−1]では、自身の過去の記憶を想い出すきっかけとなった香りが、香水またはコロンか、あるいはそうではないかについて選択させた。「はい」と回答した場合、香水またはコロンの名前を具体的に記述するように求めた(質問[2−2])。「いいえ」の場合は、それが何の香りであるか具体的に記述するよう求めた(質問[2−3])。(処理S4)
質問[2−4]では、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さの程度について、「香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時、どのくらい強い気分や感情の変化を感じましたか?(どのくらい強く気持ちが揺さぶられるような、心を動かされるような感情の変化を感じましたか?)」という質問文により、1(まったく感じなかった)〜5(非常に強く感じた)、の5段階で回答を求めた(処理S3−1)。この質問は「喚起度」を測定するための項目である。
質問[2−5]では、香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時のきもちについて、「香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時、あなたはどんな気持ちを感じていたでしょうか?快い気持ち−不快な気持ちがどの程度あったか答えてください。」という質問文により、香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気持ちや感情の快さの程度を、1(不快な気持ち)〜5(快い気持ち)、の5段階で回答を求めた(処理S3−2)。この質問は、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目である。
質問[2−6]では、香りを嗅ぐことで喚起された記憶が生じた当時に引き戻されるような感覚の程度に関する喚起度について、「香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時、実際にその出来事が起こった時(図2中の(2)参照)に引き戻されたような感じを受けましたか?」という質問文により、1(まったく引き戻される感じはなかった)〜5(非常に引き戻されたように感じた)、の5段階で回答を求めた(処理S3−1)。この質問は、「喚起度」を測定する項目である。
ここで再び図2を提示し、香りを嗅いで想い出した記憶について尋ねることを明示した(図2中の(2)参照)。
質問[3−1]〜[3−3]では、香りを嗅いで喚起された過去の記憶の内容がどのようなものであったかを、いつ頃の記憶か、どこの記憶か、どんな状況の記憶かに分けて、具体的にかつ自由に記述するように求めた(処理S3−3)。
質問[3−4]では、香りを嗅いで想い出した記憶の内容の快さについて、1(非常に不快)〜5(非常に快い)、の5段階で回答を求めた(処理S3−2)。この質問は、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目である。
質問[3−5]では、香りを嗅いで想い出した記憶の鮮明さに関する喚起度について、「香りを嗅いで想い出した記憶はどのくらい鮮明なものでしたか?」という質問文により、1(非常にあいまい)〜5(非常に鮮明)、の5段階で回答を求めた(処理S3−1)。この質問は、被験者自身の過去の記憶の「喚起度」を測定する項目である。
質問[3−6]では、香りを嗅いで想い出した記憶の中の自分が、快い気持ちを感じていたか否かについて、1(不快な気持ち)〜5(快い気持ち)、の5段階で回答を求めた。(処理S3−2)。この質問は、「過去の記憶を喚起する経験の快さの程度」を測定する項目である。
最後に、質問[4]では、年齢、性別の回答を求めた(処理S1)。
Figure 0005847395
本実施例では、後の検証実験のために、自身の過去の記憶を想い出すきっかけとなった香りを、「香水・コロン」という香りカテゴリーを指定して、自由に記述するように求めた。質問[2−1]により、香りで自身の過去の記憶を想い出した経験があると回答した349名による回答349例のうち、きっかけとなった香りが香水またはコロンであると回答した92例を抽出した。
次に、香りを嗅いで想い出す自身の過去の記憶の喚起度の強さを指標として、過去の記憶に関連する香りを抽出した。本実施例において過去の記憶の「喚起度」を問う項目は、質問[2−4]の香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気分や感情の変化の強さ、質問[2−7]の香りを嗅いで、喚起された記憶が生じた当時に引き戻されるような感覚を感じた程度、質問[3−5]の香りを嗅いで想い出した記憶の内容の鮮明さの3項目である。3項目の「喚起度」の値を個人内で平均して、個人ごとの「喚起度」の代表値を算出した。その上で、基準値を評価の中央の値である3に設定し、3以上を示す「喚起度」の代表値が関連付けられた香りを抽出した(92例→66例)。
続いて、過去の記憶を想い出す経験の快さの程度を指標として、過去の記憶に関連する香りを抽出した。本実施例において「記憶を想起した経験の快さの程度」を測定する項目は、質問[2−5]の香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気持ちや感情の快さ、質問[3−4]の香りを嗅いで想い出した記憶内容がどの程度快いものであったか、質問[3−6]の香りを嗅いで想い出した記憶の中の自分が快い気持ちを感じていたか、の3項目の回答を個人内で平均して、「記憶を想起した経験の快さの程度」の代表値とした。その上で、基準値を評価の中央の値である3に設定し、3以上を示す「記憶を想起した経験の快さの程度」の代表値が関連付けられた香りを抽出した(66例→64例)。
抽出した64例のうち、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験をするきっかけとなった香り(香水・コロン)の製品名が正確に特定された47例の香調は、以下の表3に示すとおりである。そこで抽出数の最も多いフローラル調を嗜好性の高い香りとして選択した。
Figure 0005847395
(実施例2)
実施例1で抽出した64例のうち、快い過去の記憶を強く喚起させる香水・コロンとして正確に製品名が特定された47例について、関連付けられた被験者47名を、20代女性(21名)、30代女性(9名)、40代女性(7名)、その他(10名)の4つに年代ごとにグループ化した。さらに、20代女性、30代女性、40代女性の年代ごとに、快い過去の記憶を強く喚起させる香りとして選択された香りの主香調を解析し、その結果を図3に示した。図3では、年代ごとに選択された香りの主香調の割合を示している。
図3より、年代ごとに快い自身の過去の記憶を強く喚起させる香りの主香調に特徴があり、例えば、20代はフローラル(Floral)、シプレ(Chypre)により快い自身の過去の記憶を強く喚起させられ、30代はフローラルの割合が多い他にフゼア(Fougere)によっても快い記憶を強く喚起させられること等が分かった。
そこで、各年代ごとに最も抽出割合の高かったフローラルを過去の記憶を強く喚起させる香りとして選択した。
次に、実施例で選択された香りが、実際に被験者にとって快い自身の過去の記憶を強く喚起できることを確認するため、以下の検証実験を行った。
実施例1で、抽出された記憶の喚起度が高く正確に製品名が特定された47例のうち、関連付けられた被験者22名(男性6名、女性16名、平均年齢31.9歳)について、検証実験を行った。検証実験1では香りを実際にかぐことによって記憶が喚起されるか否かを、検証実験2では香りを実際にかいだ際の生理指標の変化の測定として、呼吸の変化を測定した。具体的には、選択した香りを提示している際の呼吸変動を様々な角度から測定し、他の香りを提示した場合と比較した。
(検証実験1)
実施例1で選択された香り以外に、比較のため、ローズ系香料とハーブ系香料を用いた。これらの香りをそれぞれ、ムエット(試香紙)に適量を滴下して被験者に提示した。その後、提示されたそれぞれの香りによって何か記憶が喚起されたか否かを尋ね、回答を得た。結果を以下の表4に示した。
Figure 0005847395
カイ2乗検定の結果、実施例1で選択された香りから、実際に快い自身の過去の記憶を喚起できた被験者の数が、他の条件に比べ、有意に多いことが示された(χ(2)=11.67,p<.01)。
また、何らかの記憶が喚起されたと回答した被験者に対し、記憶の「喚起度」の強さを調べるため、表2のヒアリングの質問項目から、質問[2−4]の香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気分や感情の変化の強さ、質問[2−7]の香りを嗅いで、喚起された記憶が生じた当時に引き戻されるような感覚を感じた程度、質問[3−5]の香りを嗅いで想い出した記憶の内容の鮮明さの3項目について、実施例1と同様にして1〜5の回答を求めた。得られた回答について、被験者ごとに3項目の平均値を計算した。提示した香りごとに、平均値が4以上(トップ2ボックスに相当)であった被験者の人数の割合を算出した。その結果を、図4に示した。図4より、実施例1で選択された香りは、比較のために用いたローズ系香料、ハーブ系香料に比べて、より強く関連付けられた被験者自身の過去の記憶を喚起できたことが分かった。
さらに表2に示されたヒアリングの質問項目から、質問[2−5]の香りを嗅いで過去の記憶を想い出した時の気持ちや感情の快さについて、実施例1と同様にして1〜5の回答を求めた。得られた回答について、提示した香りごとに、回答が4または5(トップ2ボックスに相当)であった被験者の人数の割合を算出した。その結果を、図5に示した。図5より、実施例1で選択された香りから自身の過去の記憶を喚起した場合に、最も快い気持ちや感情を感じていたことが分かった。
(検証実験2)
呼吸変化の測定のため、被験者は、コンフォートジェルマスクとヘッドギアが一体となった鼻用マスク(respironics社製)を装着した。コンフォートジェルマスクには、呼吸測定用トランスデューサーと二方向弁バルブが装着されていた。被験者には、前傾型のマッサージ用椅子に着席して楽な姿勢を取ってもらい、目を閉じてリラックスし、自然な呼吸をしながら香りを嗅ぐように説明した。
実施例1で選択された香り以外に、比較のため、ローズ系香料とハーブ系香料を用いた。これらの香りをそれぞれ、ムエット(試香紙)に適量を滴下し、被験者の二方向弁バルブの吸息側に提示した。提示時間は、1つの香りにつき30秒間×10回とし、30秒間の無臭空気(何も提示しない)を挟んで、3種類の香りがランダムな順番で繰り返し提示されるよう調整した。
続けて、ガス分析器(CPX)により、1回換気量(1回の呼吸の深さ)、呼吸数(1分間当たりの呼吸数)などの呼吸変動データを測定した。
検証実験2は、実施例1の表3に示されたフローラル調香水に関連付けられた16名のうち、9名について行い、その結果を図6、7に示した。図6に、呼吸変動データの分時呼吸数RR(1分間あたりの呼吸数:回/min)、図7に1回換気量V(呼吸1回あたりの換気量:ml)の平均値(+標準誤差)を香り条件別に示した。
図6、7より、過去の記憶を想い出す経験をするきっかけとなった香りとして、実施例1で選択されたフローラル調香水が、他の香り条件と比べて、1分間あたりの呼吸数が減少し、呼吸1回当たりの換気量が上昇する、すなわちゆっくりした大きな呼吸を導いたことが示された。ここで、先行技術文献(特開2006−325756号公報)には、良い香りは呼吸のリズムを無意識にゆっくりとさせることが開示されている。したがって、実施例1で選択された香りは、嗜好性が高くかつ被験者自身の過去の記憶を強く喚起させるものであることが確認されており、さらに呼吸のリズムをゆっくりとさせていることから、良い記憶に結びついた嗜好性の高い香りを選択できたと言える。

Claims (6)

  1. 被験者の属性に関する情報を取得するステップと、
    前記被験者が複数であって、特定の前記属性を有する被験者からなる集団を抽出するステップと、
    前記被験者に香りを嗅がせずに、前記被験者自身の過去の記憶を想起する香りと前記過去の記憶との関連性に関する情報を取得するステップと、
    前記過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を取得するステップと、
    前記過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性を指標として、前記過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を基に前記過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性が高い香りを抽出し、抽出された香りを、前記属性を有する被験者に対する嗜好性の高い香りとして決定するステップと、
    を含み、
    前記過去の記憶を想起する香りと過去の記憶との関連性に関する情報を取得するステップは
    記過去の記憶を想起する香りから喚起される過去の記憶の喚起度の数値を取得するステップと、
    前記香りを嗅いで過去の記憶を喚起する経験の快さの程度の数値を取得するステップと、
    を含み、
    前記過去の記憶を想起する香りを特定するための情報を取得するステップは、
    前記被験者に対し、香りのカテゴリーを指定し、指定された前記カテゴリーの中から前記過去の記憶を想起する香りを回答させるステップを含み、
    前記嗜好性の高い香りとして決定するステップにおいて、前記喚起度の前記数値および前記快さの程度の前記数値に基づいて香りを抽出し、前記抽出された香りを、前記特定の属性を有する被験者からなる集団に対する嗜好性の高い香りとして決定する、製品に付すべき香りの選択方法。
  2. 前記喚起度は、香りを嗅いで過去の記憶を想い出す経験により喚起される感情の変化の強さ、過去に引き戻される感覚の強さ、記憶の鮮明さ、記憶の情景が目に浮かぶようであるか、記憶の内容を再び体験したような感覚を得たか、想い出した記憶が自身にとって特別なもの又は重要なものと感じられるか、記憶に関わる場所、物又は人物をさらに想い出すかどうか、或いは記憶の内容の詳細さ、の中から選択される、少なくとも1以上の項目を評価することで得られるものである、請求項1に記載の製品に付すべき香りの選択方法。
  3. 前記嗜好性の高い香りとして決定するステップにおいて、
    前記喚起度を測定する項目が一つであった場合、前記被験者を前記喚起度が基準値以上である群と前記基準値より低い群とに分類し、前記喚起度が基準値以上である群において特定されたそれぞれの香りを抽出し、
    前記喚起度を測定する項目が複数であった場合、以下の(A)〜(C)のいずれかに該当するか確認し、いずれか一つに該当した場合、その前記喚起度が関連づけられた香りを抽出する、請求項1または2に記載の製品に付すべき香りの選択方法。
    (A)被験者を、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、いずれか1つの項目でも前記基準値より低い値を示す群とに分類し、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記群に含まれる
    (B)被験者を、すべての評価の値から1つ以上の評価の値を利用して算出する代表値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、前記基準値より低い群とに分類し、前記代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記群に含まれる
    (C)被験者を、前記喚起度を測定する項目のうち1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、前記基準値より低い群とに分類し、前記喚起度を測定する1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記被験者の前記群に含まれる
  4. 前記嗜好性の高い香りとして決定するステップの後、更に前記嗜好性の高い香りを選択した前記被験者の属性に関する情報を分析し、前記被験者の属性のうち前記嗜好性の高い香りについて特に嗜好性の高い前記被験者の属性に関する情報を取得する、請求項1乃至3いずれか一項に記載の製品に付すべき香りの選択方法。
  5. 前記嗜好性の高い香りとして決定するステップにおいて、
    前記快さの程度を測定する項目が一つであった場合、その評価の値が基準値と同等もしくは基準値より高い値をとった場合、この値が関連づけられた香りを、ポジティブな過去の記憶を喚起する香りとして抽出し、
    前記快さの程度を測定する項目が複数であった場合、以下の(A)〜(C)のいずれかに該当するか確認し、いずれか一つに該当した場合、その値が関連づけられた香りを、ポジティブな過去の記憶を喚起する香りとして抽出する、請求項1乃至4いずれか一項に記載の製品に付すべき香りの選択方法。
    (A)被験者を、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、いずれか1つの項目でも前記基準値より低い値を示す群とに分類し、すべての評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記群に含まれる
    (B)被験者を、すべての評価の値から1つ以上の評価の値を利用して算出する代表値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、前記基準値より低い群とに分類し、前記代表値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記群に含まれる
    (C)被験者を、前記過去の記憶を喚起する経験の快さの程度を測定する項目のうち1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは前記基準値より高い値を示す群と、前記基準値より低い群とに分類し、前記過去の記憶を喚起する経験の快さの程度を測定する1つ以上の評価の値が、基準値と同等もしくは基準値より高い値を示す前記被験者の前記群に含まれる
  6. 請求項1乃至いずれか一項に記載の製品に付すべき香りの選択方法を用いて選択された香りを、製品に付する芳香性製品の製造方法。
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