JP5843594B2 - セメント改良地盤の品質評価方法 - Google Patents

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Description

この発明は、深層混合処理工法等により造成するセメント改良地盤の強度確認のための品質管理調査の方法ないし品質評価方法の技術分野に属し、特に、重要な構造物の基礎として設計条件の一軸圧縮強度を満足しているか否かを、全量検査ないし全量検査に近い内容で把握でき、前記強度の平均値が指針等で定めた合格判定値よりも大きいか否かを確認する品質評価方法の技術分野に属する。
セメント改良地盤の品質及び強度確認のための品質管理の調査及び評価方法は、一般的には施工対象土層毎に、施工した改良地盤(現地施工の1本1本の改良杭の集合体)について、選択した所定数の改良杭(例えば100本に1本程度の割合)から所定材令時(例えば材令28日)にコアを採取し、同コアの状況をコア採取率で確認した上でコアを成形することにより供試体を作成し、その一軸圧縮試験を実施して得られた一軸圧縮強度の平均値が、例えば建築センターの「改訂版改良地盤の設計および品質管理指針」(平成14年度版、以下、これを「建築センター指針」という。)が定めた合格判定値よりも大きいことを確認する評価の内容で行っている。
一般的なセメント改良地盤の施工は、図1に例示したように、例えば深層混合処理工法により造成する改良体(改良杭)1を、個々に独立した配置(図1A)に、或いは格子状の配置(図1B)に、又はブロック状に集合させた配置(図1C)で、若しくは壁状の配置(図1D)等々に施工する。施工は単軸又は2軸、3軸、4軸などの複数軸を有する処理機によって行われる。従って、上記改良杭1は、単軸又は複数軸を有する処理機により1回の施工でできる一体化した改良土を指す。
このような改良地盤の品質評価試験は、それを構成する多数の改良杭の中から全量又は一定の割合で選定した改良杭についてボーリングを行って特定深度のコアを採取し、又は同改良杭の天端から一定深度まで連続的なコアの採取を行い、採取したコアを成形して供試体とし、この供試体について一軸圧縮試験を実施して強度指標である一軸圧縮強さを得ている。
上記セメント改良地盤の品質及び強度確認のための品質管理の調査及び評価方法に関する従来技術の問題点は、次のように説明できる。
(1)改良杭からコアを採取して一軸圧縮強度試験を行うために、地盤改良の施工現地へ品質管理試験の設備を持ち込むことは難しい。そこで通例は採取したコアを常設の室内試験場まで運搬して供試体に成形する処理を行い、しかる後に一軸圧縮試験機による強度試験を行う。そのため多くのプロセスを必要とし、所要時間が長く掛かる。しかも例えば材令28日の改良杭について一軸圧縮試験を行うことに限定すると、前記条件を満たす一両日中にコアの採取から強度試験までを一気に実施することになるから、改良地盤の施工現場と一軸圧縮試験の実施場所との距離の大きさによっては試験すること自体が不可能になる。
(2)改良地盤の品質及び強度保証のための品質管理試験の調査及び評価方法は、地盤を平面的に、及び深度的に、限られた改良土コアの強度試験に基づいて合否を判定する抜き取り検査法の実施が一般的である。そこで「建築センター指針」の合否判定の基準は、改良杭100本(100カラム)に対して1箇所(1本)以上の割合でボーリングを行ってコアを採取し合否判定を行うことを規定している。
しかし、製品に使用する材料の品質、性能がほぼ一定であることが事前に判明している工場などにおける工業製品の品質管理ならば、前記程度の抜き取り検査法でも一応信頼できると考えられる。
ところが改良地盤を施工する現地地盤の土質性状は、平面的に、及び深度的に種々に変化している。そのため上記のような内容で実施される既往の抜き取り検査法では、改良地盤に起こりがちな強度の著しい低下部分(合否判定値以下の部分)を見逃す危険性が多分にある。
そこで全ての改良杭について、深度方向に連続して全ての深度からコアを採取する全量検査を実施して合否判定を行えば、前記の危険性を回避ないし解決できる。しかし、全量検査するまでボーリング本数が増えると、所定材令(前記材令28日など)を厳守して品質管理試験の調査及び評価方法を実施することは、時間的に、及び経済的にとても困難である。
(3)セメント改良地盤の施工形態は、上記図1に示す独立した改良杭の配置(図1A)又は格子状の配置(図1B)やブロック状配置(図1C)若しくは壁状配置(図1D)等に施工される。現在はブロック状配置(図1C)の施工例が多いが、格子状配置や壁状配置の施工例も増加している。格子状配置や壁状配置の施工では、ブロック状の施工に比較して、改良土の局部的な強度低下(合否判定値以下の部分)が、改良地盤の全体に大きな悪影響を与え易い。そのため望ましくは全ての改良杭について、しかも深度方向に連続的な調査と試験を行うべきである。しかし、そのように実施することは、上記(2)で説明したように、所定の材令条件(材令28日など)を厳守して実施するには時間的に、及び経済的にとても困難という問題に帰着する。
上記の問題点を考慮して、既に提案されている既往の有力な調査・試験の方法を概観すると、下記(イ)、(ロ)の手法に大別することができる。
(イ)回転貫入式削孔機を使用する調査・試験方法
この調査・試験方法の代表例としては、下記の特許文献1及び非特許文献1に紹介された、建設省土木研究所提案による「ロータリーサウンディングによる深層混合処理地盤の品質評価手法」が良く知られている。この調査方法は、通常、回転貫入式削孔機による改良杭のボーリング削孔時の削孔速度と回転数を一定にした場合に生ずる削孔抵抗(ビット荷重やトルク)から、改良地盤の強度を深度方向に連続的、定量的に判定し、改良地盤の品質評価への適用性を図っている。この調査方法により改良地盤強度の換算を可能にしたと説明している。
因みに、上記回転貫入式削孔機の削孔速度は1日当たり100m〜350mと、通常のボーリングに比較して非常に速いのが特徴である。削孔速度が速いが故に、従来不可能であった多数本の改良杭の削孔調査の実施が可能と言われる。
その他、下記の特許文献2及び非特許文献2に開示された「地盤強度推定方法」、或いは特許文献3に記載された「貫入試験機」により地耐力を調査するための方法、更に特許文献4に開示された「地盤調査車」による地盤調査方法なども、およそ同様な調査・試験を目的として開発された技術と認められる。
そこで上記(イ)の方法を開示した非特許文献1提案の「ロータリーサウンディングによる深層混合処理地盤の品質評価手法」について更に検討、吟味を進める。
この品質評価手法は、改良粘性土と改良砂質土では地盤強度算出式が異なると説明している。しかし、深度方向に粘性土と砂質土の両方が分布する改良対象地盤であった場合、実際の回転貫入式削孔機による削孔時に、又はその後のデータ解析時に、改良粘性土と改良砂質土の地盤強度算出式を選別して適用することは甚だ困難である。よって当該(イ)の方法には実用上に下記の課題が残る。
第1の課題は、施工した改良杭の各深度で、改良杭の施工時に粘性土と砂質土の区別を判定するには、より詳細な事前の地盤調査が必要となる。
第2の課題は、砂質土と粘性土が、例えば地盤工学会の土質分類で、粗粒土と細粒土と読み変えた分類(粒度組成で決まる。)であると理解すれば、分類した両者の境界周辺の土(いわゆる中間土)の判定次第で調査結果が大きく左右され、推定する一軸圧縮強度の判定精度に影響する。
(ロ)せん断波速度を使用する評価方法
下記の特許文献5に提案された「地盤特性の評価方法」は、従来のコア抜きサンプルによる一軸圧縮強度試験を行う代わりに、現場土試料と、実際に地盤改良に使用する材料の種類、配合が同一仕様の地盤改良材とを用いて、評価対象の地盤特性と同等仕様の改良土供試体を作成する。この供試体について異なった改良後経過時間(材令)におけるせん断波速度と強度とを求める室内試験を行い、せん断波速度と強度の関係を定式化し、求めた回帰曲線に、地盤改良が進行する地盤に設置したベンダーエレメントを用いて求めたせん断波速度の測定結果を適用して、原位置での地盤強度を推定する方法(同文献5の請求項1記載の発明)と認められる。
また、下記特許文献6の「改良土地盤特性の推定方法」は、上記特許文献5と同様の推定方法において、前記室内試験の供試体について「乾燥密度」を測定し、乾燥密度毎にせん断波速度と強度の関係データを区分し、各区分のデータをもとに回帰曲線を求める。そして、実施工が進行する地盤で求めたせん断波速度を、原位置土の乾燥密度が属する区分の回帰曲線を適用して当該地盤の改良後の強度を推定する方法(請求項1記載の発明)と認められる。
以上要するに、当該(ロ)の各特許発明に係る評価方法ないし推定方法は、結局は時間と手数を要するコア抜きサンプリングによる一軸圧縮強度の試験を行うことなく、それに代わる手法として、評価対象の地盤特性と同等仕様の室内改良土供試体モデルを用いた室内試験を行い、同モデルの試験データを、実施工が進行する地盤で求めたせん断波速度の回帰曲線を用いて原位置での地盤強度を「推定する」方法であり、評価の精度、信頼性はあくまでも推定の域を出ないものである。
特開平9−324413号公報 特許第3660578号公報(特開2002−129545号) 特開2001−226949号公報 特許第2802728号公報 特許第4120809号公報 特許第4496480号公報
「III−6 ロータリーサウンディングによる深層混合処理地盤の品 質評価手法の検討」・・平成12年11月の第4回地盤改良シンポ ジウム(大阪)の115頁〜118頁 「回転貫入式サウンディング(エンパソル…(注)これは登録商標 )における空洞調査について」・・2003年7月の第38回地盤 工学研究発表会(秋田)の135頁〜136頁
上記したとおり、セメント改良地盤の強度保証のための品質管理試験の調査ないし品質評価方法に関する既往技術を大別すると、上記(イ)に説明した「回転貫入式削孔機による改良杭のボーリング削孔時の削孔速度と回転数を一定としたときに生ずる削孔抵抗(ビット荷重、トルク)から、改良地盤強度を深度方向に連続的、定量的に判定し、改良地盤の品質評価への適用性を図った調査・試験方法」と、
同上記(ロ)に説明した「評価対象の地盤特性と同等仕様の改良土供試体を作成し、この供試体について、異なった改良後経過時間(材令)におけるせん断速度と強度とを求める室内試験を行い、せん断速度と強度との関係を定式化して、求めた回帰曲線に、地盤改良が進行する地盤に設置したベンダーエレメントやプローブを用いたせん断波速度の測定結果を適用して、原位置での地盤強度を推定する方法」とに分けられる。
上記二大別の品質評価方法(イ)、(ロ)は、所定の材令(材令28日など)を厳守して調査及び評価を実施するためには時間的に、及び経済的にとても困難な問題があることを前提に、その代替手法として提案されたことは上述した。
即ち、上記(イ)の調査・試験方法は、回転貫入式削孔機の削孔速度が1日当たり100m〜350mと、通常のボーリングに比較して非常に速いので、削孔速度が速い分だけ従来不可能であった多数本の改良杭の調査・試験が可能と説明されている。
しかし、この調査・試験方法の場合は、改良粘性土と改良砂質土とは地盤強度算出式が異なっている。実際の回転貫入式削孔機による削孔時に、又はその後のデータ解析時に、改良土を二者択一的に改良粘性土と改良砂質土の地盤強度算出式に区別して適用することは甚だ困難であることは既に詳述したとおりである。
一方、上記(ロ)の「原位置での地盤強度を推定する方法」も、コア抜きサンプリングによる一軸圧縮強度の試験を行うことなく、評価対象の地盤特性と同等仕様の室内改良土供試体モデルを用いて室内試験を行うので、時間的制約の問題点はクリヤーできる。
しかし、同供試体モデルの試験データを、実施工が進行する地盤で求めたせん断波速度の回帰曲線を用いて原位置地盤の強度を「推定する」方法であるから、得られた評価(数値)の精度、信頼性はあくまでも「推定」の域を出ない、という問題点があり、十分信頼できる技術とはいえない。
したがって、本発明の目的は、現地で施工したセメント改良地盤を構成するセメント改良杭(以下、これを現地施工改良杭という。)、または前記現地施工改良地盤の施工条件(例えばセメント添加量)を決定するために前もって行う、現地で施工した試験用のセメント改良杭(以下、これを現地試験施工改良杭という。)が所定の材令(例えば材令28日)に至った時点で、同改良杭からコアを採取して一軸圧縮強度試験その他の測定・調査を行うと共に、通常のボーリングに比較して削孔速度が非常に速い回転貫入式削孔機による改良杭のボーリング削孔を行い、回転式貫入削孔機による「削孔時試験」ほかの調査を行い、あるいはそのボーリング削孔の際に「弾性波速度検層」及び「密度検層」の調査を行い、それらの各試験から得られた一軸圧縮強度と削孔時試験データ及び湿潤密度を用いた関係式を、又は一軸圧縮強度とせん断波速度、及び湿潤密度を用いた関係式をそれぞれ組み立てること、
その上で更に、現地施工改良杭において、全量検査、若しくは全量検査に匹敵する割合で選択した多くの改良杭に対して、回転貫入式削孔機によるボーリング削孔を行い、その削孔において「削孔時試験」と深度方向の「密度検層」の調査を行い、あるいは深度方向の「密度検層」及び「弾性波速度検層」の調査を行い、
先の調査で組み立てた「関係式」に、後の調査で得られた各データを代入して「換算一軸圧縮強度」を求め、その平均値が「指針等」で定める合格判定値よりも大きいか否かを確認して現地施工改良杭の一軸圧縮強度の合否を判定する、言わば全量検査と呼べる内容を伴ったセメント改良地盤の品質評価方法を提供することである。
上記した従来技術の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明に係るセメント改良地盤の品質評価方法は、
コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、削孔試験時データと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法であって、
(a1)施工したセメント改良地盤が特定の材令となった時点で、同セメント改良地盤を構成するセメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形してコア供試体を作成し、同コア供試体の一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して計測する削孔時試験を行うか、
(a2)又は前記コア供試体の一軸圧縮強度試験を行い、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して計測する削孔時試験、およびその削孔において深度方向の密度検層の調査 (以上のa1又はa2を「先の調査」という。)を行い、
(b)前記「先の調査」である一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度quと、湿潤密度の測定、又は密度検層で得られた湿潤密度ρt及び削孔時試験における削孔速度R、ロッド回転数n、ビット荷重W、トルクTを用い回帰分析して下記の回帰式(数1)を組み立て、
[数1]
qu= a・ρt ・R ・n ・W
(c)更に、回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭の全量、又は一定割合で選択した多数の改良杭を削孔して削孔時試験を行い、同削孔において深度方向の密度検層を行う調査(これを「後の調査」という。)を行い、
前記「先の調査」で組み立てた関係式に、前記「後の調査」で得られた削孔時試験のデータ及び密度検層のデータを代入して換算一軸圧縮強度qu’を求め、現地施工改良杭Bの一軸圧縮強度の合否を評価することを特徴とする。
請求項2に記載した発明に係るセメント改良地盤の品質評価方法は、
コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、せん断波速度Vsと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法であって、
(a1)施工したセメント改良地盤が特定の材令となった時点で、同セメント改良地盤を構成するセメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形してコア供試体を作成し、同コア供試体の一軸圧縮強度試験とせん断波速度及び湿潤密度の測定を行い、
(a2)又は前記コア供試体の一軸圧縮強度試験を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して弾性波速度検層及び密度検層を行い、
(a3)若しくは前記コア供試体の一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して弾性波速度検層の調査(以上のa1〜a3)のいずれか一つを「先の調査」という。)を行い、
(b)前記「先の調査」である一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度quと、せん断波速度の測定、又は弾性波速度検層で得られたせん断波速度Vs及び湿潤密度の測定、又は密度検層で得られた湿潤密度ρtを用いた下記の回帰式(数2)を組み立て、
[数2]
Vs =a・ρt ・qu
(c)更に、回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭の全量、又は一定割合で選択した多数の改良杭を削孔し、その削孔の深度方向の弾性波速度検層及び密度検層の調査(これを「後の調査」という。)を行い、
前記「先の調査」で得られた回帰式(数2)に、前記「後の調査」で得られたせん断波速度Vs及び湿潤密度ρtのデータを代入して換算一軸圧縮強度qu’を求め、現地施工改良杭の一軸圧縮強度の合否を評価することを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したセメント改良地盤の品質評価方法において、
施工したセメント改良地盤からコアを採取し成形してコア供試体を作成すること、及び回転式貫入削孔機により改良杭を削孔して削孔時試験を行う「先の調査」の対象は、現地試験施工改良杭B及び/又は現地施工改良杭Aから選択された改良杭であることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載したセメント改良地盤の品質評価方法において、
コア供試体の一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度と、コア供試体の湿潤密度測定で得られた湿潤密度、又は削孔での密度検層で得られた湿潤密度、及び削孔時試験で得られた削孔時データ(削孔速度、ロッド回転数、ビット荷重、トルク)を統計処理して得られた回帰式(数1)に、「後の調査」による深度方向の削孔時試験から得られた湿潤ビット荷重又はトルク、削孔速度、ロッド回転数並びに密度検層で得られた湿潤密度をそれぞれ代入して換算一軸圧縮強度qu’を求めることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項2に記載したセメント改良地盤の品質評価方法において、
コア供試体の一軸圧縮強度試験得られた一軸圧縮強度と、コア供試体の湿潤密度測定で得られた湿潤密度、又は削孔での密度検層で得られた湿潤密度、及びコア供試体のせん断波速度測定で得られたせん断波速度、又は削孔での弾性波速度検層で得られたせん断波速度の各データを統計処理して得られた回帰式(数2)に、「後の調査」の削孔での深度方向の密度検層で得られた湿潤密度、及び弾性波速度検層から得られたせん断波速度をそれぞれ代入して換算一軸圧縮強度qu’を求めることを特徴とする。
請求項1〜に記載した発明に係るセメント改良地盤の品質評価方法は、現地施工改良杭B、又は現地試験施工改良杭Aが特定の材令(例えば28日)に至った時点で、前記セメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形したコア供試体について一軸圧縮強度試験とせん断波速度及び/又は湿潤密度の測定を行うほか、更に回転式貫入削孔機を使用して同じセメント改良杭を削孔し、削孔時試験や弾性波速度検層及び/又は密度検層の調査を行う、所謂「先の調査」で得られた一軸圧縮強度quと削孔速度R、ロッド回転数n、ビット荷重W又はトルクT及び湿潤密度ρtを用いた「関係式」、又は一軸圧縮強度quとせん断波速度Vs、及び湿潤密度ρtを用いた「関係式」を組み立て、
別途に現地施工改良杭Bの全量検査又はそれに近い割合で選択した多数の改良杭について回転式貫入削孔機による削孔を行い、削孔時試験と当該削孔の深度方向の「密度検層」の調査、又は当該削孔の深度方向に「密度検層」及び「弾性波速度検層」を行う調査を含む所謂「後の調査」により得られた各データを前記の「関係式」へ代入して「換算一軸圧縮強度qu’」を求める方法である。
上記「後の調査」は、全数検査又はそれに近い多数の改良杭について実施するから、本発明の品質評価方法で得られる「換算一軸圧縮強度qu’」は、いわば「実データ」に近い内容、又は実データを反映した内容ということができる。
したがって、既往技術の所謂「推定値」とは異なって、信頼性と精度が極めて高い品質評価値である。
本発明の品質評価方法は、上記「後の調査」を、通常のボーリングに比較して削孔速度が1日当たり100m〜350mと非常に速い回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭Bを構成する杭状改良体について削孔調査を行うから、地盤改良施工機が1機あたり1日にせいぜい10本程度の改良杭施工能力でしかない現状と比較・考量すれば、改良杭の全数に近く削孔調査を行うことが容易に可能であり、その結果、精度及び信頼性が極めて高い品質評価値が得られる。
従って、本発明の評価方法で評定した換算一軸圧縮強度qu’の平均値を、指針などで定めた合格判定値と比較して品質評価を行った数値は、当然、精度及び信頼性がすこぶる高い内容といえる。
A〜Dはセメント改良地盤を施工する場合の改良杭の配列が異なる代表的な例を概念的に示した斜視図である。 AとBは例えば4軸施工機による現地試験施工改良杭Aと現地施工改良杭Bの施工例、およびその改良杭について削孔した位置及びコア採取の位置を例示した平面図である。 土層毎に行うコア採取における深さ方向のコア採取位置の例を示した垂直断面図である。 実施例1の現地試験施工改良杭A及び現地施工改良杭Bの深度方向における土層構成を示した断面図である。 実施例1に関する採取コアの一軸圧縮強度値と換算一軸圧縮強度値の比較図である。 実施例2の現地試験施工改良杭A及び現地施工改良杭Bの土層構成例を示した断面図である。 実施例2に関する採取コアの一軸圧縮強度値と換算一軸圧縮強度値の相関図である。 表−1は、実施例1の調査データと換算一軸圧縮強度qu’を併記したテーブルである。 表−2は、実施例1の後の調査データと換算一軸圧縮強度qu’を併記したテーブルである。 表−3は、実施例2の調査データと換算一軸圧縮強度qu’を併記したテーブルである。 表−4は、実施例2の後の調査データと換算一軸圧縮強度qu’を併記したテーブルである。
(請求項1に記載した発明の最良の実施形態)
本願発明は、施工した改良杭が特定の材令に至った時点で、同セメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形したコア供試体について一軸圧縮強度試験、湿潤密度の測定その他を行い、或いはコア抜き削孔について深度方向に削孔時試験その他の調査を行う「先の調査」と、回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭の全量又は一定割合について削孔する削孔時試験を行い、同削孔において深度方向の密度検層を行う「後の調査」とを組み合わせて、現地施工改良杭の一軸圧縮強度の合否を評価することに特徴を有する。以下に、その手順、内容を先ず「先の調査」から説明する。
(先の調査)
(a1)図2Bに例示した現地施工改良杭B及び同図2Aに例示した現地施工改良杭Aが特定の材令、例えば材令28日となった時点で、各々のセメント改良杭B又はAを構成するセメント改良杭(以下、単に改良杭という場合がある。)の黒丸で示す位置に、深度方向のコア抜きを行う。具体的には図3に示した如く、土層毎に深度方向に異なる位置から複数のコア23を採取し、それを成形してコア供試体No.1〜N0.3・・・を作成する。そして、各コア供試体No.1〜N0.3・・・について一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行う。
ここで更なる説明を行うと、図2Aに例示した現地試験施工改良杭A及び同図2Bに例示した現地施工改良杭Bは、公知の4軸地盤改良機により、施工単位B1〜B5・・を表示したように所謂ラップ施工を行っている。つまり上述した「先の調査」を行うべく上記黒丸で示す位置にコア抜き21を行ったコア抜き21と、白抜き丸で示す位置に行った削孔22とは、それぞれ同一の施工単位(図示例は4軸杭)に属するセメント改良地盤(改良杭)について実施したものと考えて良い。即ち、4軸形状の改良杭はそれぞれ、同一の施工条件で実施されるので、4軸形状改良杭の内部は同一に施工されたものとみなせる。
(a2)請求項1に係るセメント改良地盤の品質評価方法の異なる手順は、上記セメント改良杭A又はBを構成する改良杭について回転式貫入削孔機により削孔して計測する削孔時試験を行うほか、同じ削孔22において深度方向の密度検層の調査を行う。
以上のa1又はa2が「先の調査」である。
回転式貫入削孔機による削孔は、具体的に図示することを省略したが、例えばセンシングマシンを中心にセンシングロッド、及び地上計測装置とで構成される既知のロータリーサウンディング装置(専用ボーリングマシン)を使用し、ロータリサウンディング手法として実施される。
回転式貫入削孔機による削孔速度は、1日あたり100m〜350mに及ぶ。一方、上記段落番号[0019]で説明したとおり、4軸改良処理機で1日当たり施工できる改良杭の延べ長さは、深度10mの改良杭の場合は10コラム、深度20mの改良杭の場合は5コラムであるとき、100mと算定される。従って、前記回転式貫入削孔機による削孔22は、4軸改良処理機によるセメント改良地盤の施工の進捗にしたがい、一定の材令(例えば材令28日)毎に、順次全数の改良杭について削孔を進めて削孔時試験を実施できる。
削孔時試験の測定項目は、削孔速度R(cm/秒)、ロッド回転数n(rpm)、推力=貫入抵抗=ビット荷重W、掘削トルク(N・m)、水圧(kN/m)である。
上記黒丸で示す位置のコア採取(コア抜き)21は、ボーリング機械(ロータリボーリングマシン)により実施する。具体的にはロータリー式二重管サンプラーやロータリー式三重管サンプラー、ロータリー式スリーブ内蔵二重管サンプラーなどを使用し、例えばφ65〜φ85mm程度のコアを採取する。
採取したコアを成形したコア供試体No.1〜No.3・・についての一軸圧縮強度試験は、例えばひずみ制御式一軸圧縮試験機を使用して実施する。必要に応じてコア供試体の湿潤密度も測定する。
密度検層は、上記回転式貫入削孔機による削孔22の深さ方向に行い、γ線の散乱強度が物質の密度と関係があることを利用して、孔壁部地盤の密度を測定する方法として実施する。削孔22内に放射性物質(線源)、及び検出器を内蔵したゾンデを孔底まで降下させ、圧着装置により削孔22の一方の孔壁へ圧着させながらゾンデを上昇させ、γ線のカウント数を連続的に検出する方法として行う。密度値はγ線カウント数から較正曲線をもとに変換して得られる。
上記回転式貫入削孔機としては、先端ビットを回転させながら改良杭を削孔する油圧式を使用できる。因みに削孔時試験を行う場合のボーリングマシンは、自動制御機構を搭載して削孔する構成であり、削孔時の推力N(ビット荷重W)、削孔トルクTと、削孔速度R、及び回転速度nなどを計測できる専用のボーリングマシンが使用される。
(関係式の組み立て)
(b)次に、請求項1の発明に係るセメント改良地盤の品質評価方法の手順として、上記段落番号[0021]と[0023]で説明した(a1)又は(a2)いずれかの「先の調査」で得られた一軸圧縮強度quと湿潤密度ρt及び削孔時試験により得たデータである削孔速度R、ロッド回転数n、ビット荷重W、トルクTを用い回帰分析して回帰式(関係式)を組み立てる。
上記回帰式の基本的考え方は、求めたい目的変数をY、前記Yを説明するための説明変数をX、Xとするとき、Y=a・X+b・X・・・の線型回帰とする。これに本発明が採用する上記の一軸圧縮強度quと湿潤密度ρtを用いると、関係式は下記[数1]に示す回帰式となる。
[数1]
qu= a・ρt・R・n・W
但し、Rは削孔速度、nはロッド回転数、Wはビット荷重を示す。測定項目には トルクTもあるが、トルクTとビット荷重Wは相関が高いため、いずれか一方を 採用すれば足りる。
上記[数1]の回帰式で両辺の対数をとると線型回帰となる。
即ち、上記「先の調査」で得られた削孔時試験のデータである削孔速度R、回転数n、ビット荷重W、及び湿潤密度ρt、一軸圧縮強度quの具体的なデータ(数値)を、上記「数1」へ代入して重回帰分析を行うことにより、上記のパラメータa、b、c、d、eが求まる。
削孔時試験を、削孔速度R及び回転数nを一定にして行うと、上記[数1]は、下記した[数1’]のとおり簡単な式となる。
[数1’]
qu= a・ρt・W
(後の調査)
(c)次に、上記回転式貫入削孔機を使用して、図2の現地施工改良杭Bの全量、又は一定の割合で選択した多数の改良杭を削孔して削孔時試験を行う。更にその削孔22において深度方向の密度検層を行う「後の調査」を行う。
因みに、図2Bに示す現地施工改良地盤Bにおいては、「後の調査」を、4軸形状の施工単位B1〜B3〜B5・・で構成される全ての改良杭を選択した場合を示している。上記段落番号[0022]において説明したとおり、4軸形状をなす改良杭同一条件で造成されたとみなせるので、実質的に全量(全ての改良杭B)の調査が行われたとみなせることを理解されるであろう。
(現地施工改良地盤の一軸圧縮強度の合否判定)
上記「先の調査」で組み立てた上記[数1]又は[数1’]の関係式に、上記「後の調査」で得られた削孔時試験のデータ、及び密度検層のデータを代入することにより、目的とする換算一軸圧縮強度qu’を求めることができる。
通常の合否判定は、図2A、Bに黒丸で示すコア採取の位置21において採取した1本の改良杭について、図3に示した如く深度方向の複数箇所から取得したコア供試体No.1〜No.3・・の一軸圧縮強度qu’の平均値を求め、更にその平均値が指針等(例えば「建築センター指針」)で定めた合格判定値よりも大きいか否かを比較、確認することにより行われる。本発明ではそれらに加え、図2A、Bに白丸で示す削孔位置22(後の調査位置)において、同じ土層の換算一軸圧縮強度qu’を得ることが可能となり、図2Bに例示した現地施工改良杭Bの一軸圧縮強度の合否を評価することができる。
「後の調査」は、現地施工改良杭Bについて、実質全量調査に近い内容で行うから、本発明によるセメント改良地盤の一軸圧縮強度の合否判定は、実体に即して極めて的確に行われ、高い精度と信頼性が得られる。
(請求項2の発明の実施形態)
次に、請求項2の発明に係るセメント改良地盤の品質評価方法の実施形態も、上記請求項1に記載した発明とほぼ同様の考えと手法に基づいている。
(先の調査)
即ち、コア供試体の一軸圧縮強度試験の代替法として、せん断波速度Vsと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法で有り、図2Bに例示した現地施工改良杭B又は図2Aの現地試験施工改良杭Aが特定の材令に至った時点(例えば28日)で、下記a1’〜a3’のいずれか一の調査(先の調査)を行う。
(a1’)図2Bのように施工した現地施工改良杭B、及び同図2Aの現地試験施工改良杭Aが特定の材令(例えば28日)に至った時点で、それらを構成する改良杭について、
図2A、B中に黒丸で示す位置でコア抜き21を行い、採取したコアを成形してコア供試体No.1〜No.3・・を作成し、同コア供試体No.1〜No.3・・の一軸圧縮強度試験を行うほか、せん断波速度及び湿潤密度の測定を行う。
この場合の順序は、先ずせん断波速度及び湿潤密度の測定を行い、次いで一軸圧縮強度試験を行う。
(a2’)或いは同上のコア供試体No.1〜No.3・・について、一軸圧縮強度試験を行うほか、図2A、Bのセメント改良杭A、Bを構成する改良杭のうち、上記コア抜き21を行った改良杭に隣接する同列位置の改良杭について、図2中に白抜き丸で示す位置に回転式貫入削孔機による削孔22を行い、同削孔22において弾性波速度検層及び密度検層の調査を行う。なお、前記の削孔を行わず、コア抜きによるコアで弾性波速度検層及び密度検層の調査を兼ねることもある。
(a3’)或いは上記コア供試体No.1〜No.3・・の一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行うほか、上記セメント改良杭A,Bについて回転式貫入削孔機により行った削孔22において弾性波速度検層の調査を行う。なお、弾性波速度検層と密度検層の調査は、コア抜き21の位置で兼ねることもできる。
上記した(a1’)〜(a3’)のいずれか一つが「先の調査」である。
一軸圧縮強度試験におけるコア供試体のせん断波速度測定は、一軸圧縮強度試験の前に、つまりコア供試体が破壊される以前s4んだんはの工程で、超音波発生装置を用い、超音波パルス法による測定として行うことができる。超音波測定装置は、超音波発生装置とシンクロスコープとで構成されたものなどがある。
また、弾性波速度検層は、上記回転式貫入削孔機による削孔22の深さ方向に行う。具体的には、地表で起振し、孔内で受信するダウンホール法、又は孔内で起振し孔内で受信するサスペンション法の実施によるのが一般的である。後者のサスペンション法は、深度1m毎にせん断波速度Vs、粗密度波速度Vpを計測できるのでより好ましい。
因みに、上記コアの採取を行う手段と方法、及び作成したコア供試体の一軸圧縮強度試験の手段と方法、並びにコア供試体の湿潤密度測定の手段と方法、そして、その後に前記削孔22において深度方向の弾性波速度検層と密度検層の調査を行う手段と方法は、それぞれ上記段落番号[0025]と[0026]、及び後述する段落番号[0033]と[0034]において説明する内容であるから参照されたい。
(関係式の組み立て)
(b)上記(a1’)〜(a3’)に記載したいずれか一つが「先の調査」である。
「先の調査」により得られた一軸圧縮強度quとせん断波速度Vs及び湿潤密度ρtを用いて回帰式(関係式)を組み立てる。その一例を示すと、下記の[数2]に示す回帰式となる。
[数2]
Vs= a・ρt・qu
上記[数2]の回帰式で両辺の対数をとると、上記[数1]と同様に線型回帰となり、重回帰分析が容易になる。
「先の調査」で得られた湿潤密度ρt、せん断波速度Vs及び一軸圧縮強度quのデータ組を用いた重回帰分析から、上記[数2]の各パラメータa、b、cを決定することができる。
「先の調査」に基づく上記関係式[数2]へ、以下に説明する「後の調査」で得られた湿潤密度ρt及びせん断波速度Vsのデータ組を代入すると、換算一軸圧縮強度qu’を求めることができる。
(後の調査)
(c)更に、回転式貫入削孔機を使用して、図2Bの現地施工改良杭Bを構成する改良杭の全量、又は一定割合で選択した多数の改良杭、図2の例で言えば、各4軸改良杭B1〜B3〜B5・・それぞれの単位で、白抜き丸22で示した位置の改良杭を削孔し、同削孔22の深度方向の弾性波速度検層及び密度検層の調査を行う。
具体的には、回転式貫入削孔機を使用してセメント改良地盤(改良杭)について削孔を行い、弾性波速度検層は、地表で起振し、孔内で受信するダウンホール法、又は孔内で起振し孔内で受信するサスペンション法の実施によるのが一般的である。後者のサスペンション法は、深度1m毎にせん断波速度Vs、粗密度波速度Vpを計測できるのでより好ましい。また、密度検層は同削孔22の中へ線源(ガンマー線)と検出器を搭載したプローブ(ゾンデ)を挿入し、それを順次下降させながら密度検層を深度方向に行なう。弾性波速度検層は、せん断波(S波)の速度Vsのみの検層であっても良いが、粗密波(P波)の速度Vpも合わせて検層すると、動的弾性定数Edとポアソン比νdをも算定できて好ましい(この点は室内で行う超音波パルス試験でも同じことが言える。)。密度検層では、深度方向の湿潤密度ρtが得られる。
因みに、図2において、一定割合で選択した改良杭の「後の調査」により、実質的に全量(全ての改良杭)の調査に等しい結果が得られることは上記[0028]で説明したとおりである。
本発明による品質評価方法では、対象土について、砂分が多いものから少ないもの(細粒土)にランク分けできる物理定数を探すことにした。その物理定数として、含水比と密度(湿潤密度、乾燥密度)を挙げることができる。そこで本発明では、密度として「湿潤密度」を採用した。
その理由は、第一に密度検層で直接求められるデータは「湿潤密度ρt」であること、第二に、後の段落番号[0036]で説明するとおり、せん断波速度と剛性との間の関係については「湿潤密度ρt」を用いており、本発明はその関係式を採用したからである。
また、回転式貫入削孔機を使用して削孔したセメント改良杭の削孔中へプローブを挿入し、それを順次下降させながら深度方向へ連続的に湿潤密度を測定する密度検層を実施できるからでもある。
(現地施工改良杭Bの一軸圧縮強度の合否判定)
上記「先の調査」で得られた関係式[数2]へ、当該「後の調査」で得られたせん断波速度Vs及び湿潤密度ρtのデータを代入して換算一軸圧縮強度qu’を求め、図2Bの現地施工改良杭Bの一軸圧縮強度の合否を評価する。
現地施工改良杭Bについて、上記回転式貫入削孔機による削孔において「後の調査」を実施して得られたデータを用い、上記[数2]の両辺の対数をとり、qu、ρt、Vsに各データを入力する重回帰分析により、「数2」の各パラメータa、b、cを求めることができる。
本発明によれば、段落番号[0029]で説明したように通常行われる、1本の改良杭について、図3に示すように深度方向の複数箇所から採取したコア供試体No.1〜No.3・・の一軸圧縮強度quの平均値を求め、更にそれらの平均値が指針等(例えば「建築センタ−指針」)で定めた合格判定値よりも大きいか否かを確認する方法に加え、図2A、Bに白丸22で示す各削孔位置(後の調査位置)において、「先の調査」で得たコア供試体No.1〜No.3・・と同じ土層の換算一軸圧縮強度qu’を得ることが可能となり、現地施工改良杭Bの実体に即して、一軸圧縮強度の合否を評価することになるから、高い精度と信頼性を保証できる。
本発明によれば、上記したように、「先の調査」と「後の調査」で得られた湿潤密度のデータを用いることにより、改良砂質土と改良粘性土で異なる算定式は一つに纏まり、実用的な使用が可能になる。
上記弾性波速度検層及び密度検層により得られたせん断波速度Vsと湿潤密度ρtから換算一軸圧縮強度qu’を得る方法は、次のように行う。
等方弾性理論によると、せん断剛性Gdと、動的弾性定数Ed、及びポアソン比νdに関しては、下式(1)〜(3)が知られている。
Gd=ρt・Vs ・・・(1)
Ed=2・(1+νd)・Gd ・・・(2)
νd={(Vp/Vs)−2}/{2/((Vp/Vs)−1)}・・(3)
また、統計処理した改良杭の換算一軸圧縮強度qu’とせん断剛性Gdに関する研究成果によれば、下式(4)が知られている。
Gd=a・ρt・qu ・・・・(4)
従って、下式(5)が成立する。
Gd= ρt・Vs =a・ρt・qu ・・・(5)
上式のVs を目的変数として、ρt、quを説明変数とする下記の[数3]が得られる。
[数3]
Vs= a・ρt’・qu
但し、b’=b−1である。
そこで上記[数3]の各パラメータa、b’、cを重回帰分析にて決定すれば良いことがわかる。
上記[数3]の各パラメータa、b’、cを決定するためには、上記段落番号[0030]で説明したとおり、別途に行った「先の調査」で得られる換算一軸圧縮強度qu’の利用が行われる。
即ち、上記同様にして選定された図2Aの「現地試験施工改良杭A」の改良杭、又は図2Bの「現地施工改良杭B」の改良杭がそれぞれ特定の材令(たとえば材令28日)となった時点で、同改良杭についてコアボーリングによるコアの採取を行い、それを試験室へ運搬し成形してコア供試体を作り、同コア供試体の一軸圧縮強度試験を行い、一軸圧縮強度quのデータを集める。
上記[数3]のパラメータa、b’、cを決定した上で、上記[数3]式へせん断波速度Vsと湿潤密度ρtを与えると、換算一軸圧縮強度qu’を得ることができる。
こうして上記[数3]の重回帰分析で得られた各土層における換算一軸圧縮強度qu’の平均値を「建築センター指針」に定めた合格判定値と比較して、同判定値よりも大きいか小さいかの合否判定により品質評価を行う。
以下に、本発明の実施例1を説明する。
この実施例1は、上記請求項1に係る発明に関するもので、コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、削孔試験データと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法の実施例である。
この実施例1は、4軸改良処理機を使用して、図2Aの現地試験施工改良杭Aを図4Aに示した改良深度7mまで、図2Bの現地施工改良杭Bは、図4Bに示した改良深度11mまで施工した。材令28日に至った時点で、調査を次のように実施した。
図4A、Bは、改良地盤を施工した改良杭の土質構成を具体的に示している。
回転式貫入試験の測定項目は、削孔速度R(cm/sec)、回転数n(rpm)、推力=貫入抵抗=ビット荷重W(又はN)、トルクT(N・m)、水圧(kN/m)とした。
回転式貫入削孔機としてはロータリーサウンディング装置を使用した。先端ビットにはドラッグビットを採用し、削孔速度0.3cm/sec、回転数60rpmは一定値で調査を行った。
「先の調査」としては、図2Aの現地試験施工改良杭Aにおける改良杭の1本と、同図2Bの現地施工改良杭Bの中から選定した1本の改良杭に削孔(回転貫入試験)を行なった。また、同列の4軸改良杭に属する1本の改良杭についてコア抜きを行い、同コア供試体の一軸圧縮強度試験を行った。
コアの採取は、ボーリング機械(ロータリーボーリングマシン)によりφ65mmのコアを採取した。現地試験改良杭A及び現地施工改良杭Bにおける土層構成は、図4A、Bに示した通りである。
「後の調査」は、現地施工改良杭Bを構成する4軸形状の改良杭の中から選定して行った。
上記「先の調査」は、一軸圧縮強度試験と回転貫入試験を、深度1m毎に得たコア供試体の平均一軸圧縮強さ、平均湿潤密度、平均トルクとして纏めた結果を、図8に示す表−1に示した。
但し、同表−1では回転貫入試験の上記した測定項目のうち、トルクT(N・m)のみを示した。その理由は、既述したように削孔速度と回転数を一定にして試験したこと、及び推力WとトルクTは相関が高いためどちらかを選定できるところ、今回はトルクTの方が相関が高かったためである。
ロータリーサウンディング装置を使用した場合の換算一軸圧縮強度qu’値は、上記の段落番号[0026]で説明した[数1]のとおり、qu= a・ρt・R・n・W により表される。
或いは上記推力=ビット荷重WとトルクTとの相関性を考慮し、今回はトルクTの方が相関が高いとして選定したトルクTを用いて、下記の式
qu’= a・ρt・R・n・T でも表される。
よって本実施例1では、上記のトルクTを選択した。しかも上記したとおり、削孔速度Rは0.3cm/sec、回転数nは60rpmの一定値で調査を行ったので、上記した[数1]式は、更に下記のとおり簡略な式になった。
qu= a・ρt・T
更に、上記図8の表−1に示す調査データに基づく重回帰分析の結果、求める換算一軸圧縮強度qu’の式は、下記[数4]のとおりになった。
[数4]
qu= 26.9073・ρt6.5333・T0.26264
よって図8の表−1には、上記「数4」に基づいて演算した換算一軸圧縮強度qu’を併せて記載した。重回帰分析における決定係数R は0.90であり、現地から採取したコア供試体の一軸圧縮強度qu値の予測としては、良好であると判断できる。
因みに図5には、コア供試体の一軸圧縮強度qu値と換算一軸圧縮強度qu’値の比較表を示したが、両者は良く一致していることを理解できる。
図9に示す表−2は、「後の調査」における現地施工改良杭の測定データと換算一軸圧縮強度qu’の一例を示す。
この実施例2は、上記請求項2に係る発明の実施例に関するもので、コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、せん断波速度Vsと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法の実施例である。
この実施例2は、4軸改良処理機を使用した現地試験施工改良杭A(図2A参照)と現地施工改良杭B(図2B参照)が、材令28日に至った時点で、図6A、Bに示した如く改良深度8m、及び改良深度11mまで施工して調査を実施した。図6A、Bは、上記現地試験施工改良杭Aおよび現地施工改良杭Bにおける土層構成を示している。
先ず「先の調査」としては、現地試験施工改良杭A(図2A参照)について、回転式貫入削孔機による削孔と、コア採取を行った。
「後の調査」は、現地施工改良杭B(図2B参照)を構成する4軸形状改良杭の中から選定した改良杭について行った。
「先の調査」では、採取したコアの一軸圧縮強度試験と湿潤密度の測定を行い、更にコアを採取した孔で弾性波速度検層を行った。弾性波速度検層は、地表で起振し、孔内で受信するダウンホール法を実施した。
それぞれの調査結果を図10に示す表−3に、せん断波速度Vs、平均湿潤密度ρt、平均一軸圧縮強度quの各データにまとめて示した。
上記した各調査データから、換算一軸圧縮強度qu’値は、上記段落番号[0032]で説明した下記[数2]の式で表される。
[数2]
Vs= a・ρt・qu
そして、上記図10の表−3に示す各調査データに基づく重回帰分析の結果、換算一軸圧縮強度qu’は、下記[数5]式のとおりになった。
[数5]
Vs= 919.3・ρt5.76969・qu0.39308
そこで図11に示す表−4中に、上記の[数5]に基づいて演算した換算一軸圧縮強度qu’値も併せて記載した。
重回帰分析における決定係数Rは0.89であり、現地から採取したコア供試体の一軸圧縮強度qu値の予測としては良好であると判断できる。
次に、図7には、現地試験施工改良杭A(図2参照)の改良杭から採取したコア供試体の一軸圧縮強度qu値と、上記換算一軸圧縮強度qu’値との比較表を示した。それぞれにおけるコア供試体の一軸圧縮強度qu値と換算一軸圧縮強度qu’値が良く一致していることを理解できた。
次に、図11の表−4は、現地施工改良杭B(図2B参照)を構成する4軸形状改良杭について行った「後の調査」における、測定データと換算一軸圧縮強度qu’の一例を示している。
以上に本発明を実施形態と実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例1、2等の記載内容に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用、変形として種々な態様で実施され得ることを、念のため申し添える。
A 現地試験施工改良杭
B 現地施工改良杭
21 コア採取位置
22 削孔位置又は削孔

Claims (5)

  1. コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、削孔試験時データと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法であって、
    (a1)施工したセメント改良地盤が特定の材令となった時点で、同セメント改良地盤を構成するセメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形してコア供試体を作成し、同コア供試体の一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して計測する削孔時試験を行うか、
    (a2)又は前記コア供試体の一軸圧縮強度試験を行い、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して計測する削孔時試験、およびその削孔において深度方向の密度検層の調査 (以上のa1又はa2を「先の調査」という。)を行い、
    (b)前記「先の調査」である一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度quと、湿潤密度の測定、又は密度検層で得られた湿潤密度ρt及び削孔時試験における削孔速度R、ロッド回転数n、ビット荷重W、トルクTを用い回帰分析して下記の回帰式(数1)を組み立て、
    [数1]
    qu= a・ρt ・R ・n ・W
    (c)更に、回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭の全量、又は一定割合で選択した多数の改良杭を削孔して削孔時試験を行い、同削孔において深度方向の密度検層を行う調査(これを「後の調査」という。)を行い、
    前記「先の調査」で組み立てた関係式に、前記「後の調査」で得られた削孔時試験のデータ及び密度検層のデータを代入して換算一軸圧縮強度qu’を求め、現地施工改良杭の一軸圧縮強度の合否を評価することを特徴とする、セメント改良地盤の品質評価方法。
  2. コアの一軸圧縮強度試験の代替法として、せん断波速度Vsと密度検層データから換算一軸圧縮強度qu’を求める方法であって、
    (a1)施工したセメント改良地盤が特定の材令となった時点で、同セメント改良地盤を構成するセメント改良杭からコアを採取し、同コアを成形してコア供試体を作成し、同コア供試体の一軸圧縮強度試験とせん断波速度及び湿潤密度の測定を行い、
    (a2)又は前記コア供試体の一軸圧縮強度試験を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して弾性波速度検層及び密度検層を行い、
    (a3)若しくは前記コア供試体の一軸圧縮強度試験と湿潤密度測定を行うほか、前記セメント改良杭を回転式貫入削孔機により削孔して弾性波速度検層の調査(以上のa1〜a3)のいずれか一つを「先の調査」という。)を行い、
    (b)前記「先の調査」である一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度quと、せん断波速度の測定、又は弾性波速度検層で得られたせん断波速度Vs及び湿潤密度の測定、又は密度検層で得られた湿潤密度ρtを用いた下記の回帰式(数2)を組み立て、
    [数2]
    Vs =a・ρt ・qu
    (c)更に、回転式貫入削孔機を使用して、現地施工改良杭の全量、又は一定割合で選択した多数の改良杭を削孔し、その削孔の深度方向の弾性波速度検層及び密度検層の調査(これを「後の調査」という。)を行い、
    前記「先の調査」で得られた回帰(数2)に、前記「後の調査」で得られたせん断波速度Vs及び湿潤密度ρtのデータを代入して換算一軸圧縮強度qu’を求め、現地施工改良杭の一軸圧縮強度の合否を評価することを特徴とする、セメント改良地盤の品質評価方法。
  3. 施工したセメント改良杭からコアを採取し成形してコア供試体を作成すること、及び回転式貫入削孔機により改良杭を削孔して試験を行う「先の調査」の対象は、現地試験施工改良杭又は現地施工改良杭/又は現地試験施工改良杭の中から選択された改良杭であることを特徴とする、請求項1又は2に記載したセメント改良地盤の品質評価方法。
  4. コア供試体の一軸圧縮強度試験で得られた一軸圧縮強度と、コア供試体の湿潤密度測定で得られた湿潤密度、又は削孔での密度検層で得られた湿潤密度、及び削孔時試験で得られた削孔時データ(削孔速度、ロッド回転数、ビット荷重、トルク)を統計処理して得られた回帰式(数1)に、「後の調査」による深度方向の削孔時試験から得られたビット荷重又はトルク、削孔速度、ロッド回転数並びに密度検層で得られた湿潤密度をそれぞれ代入して換算一軸圧縮強度qu’を求めることを特徴とする、請求項1に記載したセメント改良地盤の品質評価方法。
  5. コア供試体の一軸圧縮強度試験得られた一軸圧縮強度と、コア供試体の湿潤密度測定で得られた湿潤密度、又は削孔での密度検層で得られた湿潤密度、及びコア供試体のせん断波速度測定で得られたせん断波速度、又は削孔での弾性波速度検層で得られたせん断波速度の各データを統計処理して得られた回帰式(数2)に、「後の調査」の削孔での深度方向の密度検層で得られた湿潤密度、及び弾性波速度検層から得られたせん断波速度をそれぞれ代入して換算一軸圧縮強度qu’を求めることを特徴とする、請求項に記載したセメント改良地盤の品質評価方法。
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