本発明者らは、その全ては少なくとも1つのシグナルペプチドドメインを含み、これらが分泌された又はケモカイン様のタンパク質であることを示している新規タンパク質を単離した。
このように、ポリペプチド配列分析は、新規の単離されたタンパク質がケモカインに似ている構造特性を有することを示し、これらがリガンド型又はケモカイン型のタンパク質であることを示した。
PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8と命名されたこれらの新規の単離されたタンパク質は、本発明の目的である。本明細書で言及される全てのポリペプチドは、無料のドメインソフトウェア(CBS、Center for Biological Sequence Analysis、Technical University of DenmarkからのSignalP)及び自己開発ソフトウェア(データは示さず)によってチェックされる、顕著なシグナルペプチド配列を提示する。
異なるタンパク質の発現パターンが、本明細書の下の実施例で提示される。簡潔には、PRT5は、特にすい臓及び精巣で、さらには脾臓、卵巣及び小腸でも見出された(例1)。PRT6は、特に精巣で見出された(例4)。PRT7は、特に胎児の脳で、さらに肝臓、骨格筋及び成人の脳で見出された(例6)。最後に、PRT8は、特にすい臓及び精巣で、さらに肝臓でも見出された(例8)。
配列比較は、新しく同定されたタンパク質及び現在まで記載されている他のいかなるタンパク質の間でも相同性を示さなかった。
したがって、第一の態様では、本発明は、ケモカイン様分泌タンパク質として特徴付けられている、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列、並びにその断片、類似体及び誘導体を含む単離されたポリペプチドを提供する。
本明細書で、用語「ポリペプチド」は、ポリペプチド又はタンパク質を表すために用いられる。ポリペプチドは、遺伝子工学的方法、宿主細胞での発現、又は他の任意の適する手段を通して、合成的に得ることができる。
文献では、用語「タンパク質」は、通常、安定した立体構造の完全な生体分子、並びにその改変形を称すために用いられる。ポリペプチドは、通常長さに関係なくアミノ酸の任意の単一の線状鎖を指すことができるが、規定の立体構造の欠如をしばしば暗示する。
したがって、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4によって表されるアミノ酸配列、並びにその断片、類似体及び誘導体を含むポリペプチド並びにタンパク質を指す。
別途示されない限り、ポリペプチドは、通常天然のLアミノ酸から構成される。
ポリペプチド分子に関して、用語「生物的特性」は、それらに限定されないが本明細書に記載される生物的活性を含む、完全なPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8ポリペプチドが発揮することができるin vitro又はin vivo効果の少なくとも1つを発揮するポリペプチドの能力を指す。例えば、生物的特性には、癌、免疫系関連疾患、ウイルス病及び炎症性疾患を治療する能力が含まれる。
用語「改変されていない分子と比較して改変された分子の生物的特性に有意に影響を及ぼすことなく」は、改変されていない分子の生物学的活性に質的に類似した生物学的活性を改変された分子が保持することを表すものとする。
本発明と関連して、改変されたポリペプチドに関しては、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質の生物学的特性の少なくとも1つをそれが保持すると理解されている。改変されていない分子の生物学的活性に質的に類似した生物学的活性をポリペプチドが保持するかどうか判定するために、例えば改変されたポリペプチドが、平行実験又は別々に行われる実験で分析される、対応する改変されていないもの(すなわち、PRT5、PRT6、PRT7若しくはPRT8ポリペプチド又はその断片)と比較される、in vitro、in vivo又は臨床実験などの1つ又は複数のアッセイを実施してもよい。
改変されたポリペプチドは、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8ポリペプチドに含まれる少なくとも8、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60又は少なくとも65アミノ酸残基の同一度を対応する配列に対して有する、少なくとも8、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60又は少なくとも65アミノ酸残基の連続した配列を含むポリペプチドであってよく、同一度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%である。
本発明は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8に由来するポリペプチド、例えば、1つ又は複数のアミノ酸が保存的置換によって別のアミノ酸で置換される改変ポリペプチドも提供する。本明細書で用いるように、「保存的置換」は、同じクラスのアミノ酸による1つのクラスのアミノ酸の置換を指し、そこでクラスは、自然界で見出される相同タンパク質における共通の物理化学的アミノ酸側鎖特性及び高い置換頻度によって定義される。アミノ酸側鎖の6つの一般的なクラスが分類され、以下のものが含まれる:クラスI(Cys);クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly);クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu);クラスIV(His、Arg、Lys);クラスV(Ile、Leu、Val、Met);及びクラスVI(Phe、Tyr、Trp)。例えば、AspによるAsn、Gln又はGluなどの別のクラスIII残基の置換は、保存的置換である。
一実施形態では、アミノ酸配列に1つの置換だけが加えられる。
別の実施形態では、2つの置換が加えられる。さらなる実施形態では、3つの置換が加えられる。置換の最大数は、未置換配列のアミノ酸の少なくとも70%、望ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を残すアミノ酸数を超えるべきでない。特定の一実施形態では、他のものによって置換されている最高3つ、時には最高6つのアミノ酸残基を含む置換が、保存的置換である。
さらなる実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸が、D−アミノ酸、好ましくは対応するD−アミノ酸で置換されてもよい。特定の実施形態では、アミノ酸の全てはD−アミノ酸である。
したがって、本明細書で開示される配列に相同である、実質的に等しいかより大きな活性を有する配列を含むタンパク質又はポリペプチドに本発明が関することを理解するべきである。相同配列とは、全アミノ酸数の25%以下、好ましくは10%以下までの欠失、付加又は置換を有する配列を指す。
好ましい置換は、タンパク質又はポリペプチドの二次構造を変更しないことが予想される変化、すなわち保存的変化である。以下のリストは、元のアミノ酸(左側)と交換されてもよいアミノ酸(右側)を示す。
元の残基 例示的な置換
Ala Gly;Ser
Arg Lys
Asn Gln;His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
Gly Ala;Pro
His Asn;Gln
Ile Leu;Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Tyr;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
アミノ酸は、それらの本質的な特徴、例えば電荷、側鎖のサイズなどによって分類されてもよい。以下のリストは、類似したアミノ酸の群を示す。好ましい置換は、以下の通り、1つの群に属すアミノ酸を同じ群のアミノ酸と交換するものであろう。
1.小さな脂肪族、非極性:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
2.極性の負に荷電した残基及びそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln;
3.極性の正に荷電した残基:His、Arg、Lys;
4.大きな脂肪族の無極性の残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys;
5.大きな芳香族の残基:Phe、Tyr、Trp。
アミノ酸置換及びタンパク質構造についてのさらなる解説は、Schulzら、Principles of ProteinStructure、Springer−Verlag、New York、NY、1979年及びCreighton,T.E.、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman & Co.、San Francisco、CA 1983年で見出すことができる。
上で詳述した好ましい保存的なアミノ酸置換は、本明細書で下に詳述される、本発明のタンパク質の機能又は活性を実質的に維持するか増加させることが予想される。当然ながら、生じるタンパク質又はポリペプチドがその元の機能を保持する場合、いかなるアミノ酸置換、付加又は欠失も、本発明の範囲内であると考えられる。例えば、保存的置換は、本発明のポリペプチドが、野生型ポリペプチドを認識する抗体によって今もなお認識されるものである。
本発明のタンパク質又はポリペプチドは、従来の化学的方法、例えば固相合成(例えばFMOC及びBOC技術を用いる)及び液相合成法によって生成することができる。これらのタンパク質又はポリペプチドは、下記のCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16に詳述される通りに、細菌若しくは昆虫細胞又は他の真核生物の転写のin vivo系で生成されてもよい。生成後、タンパク質又はポリペプチドは、それらが生成された細胞から精製される。ポリペプチドの精製及び単離法は当分野の技術者に公知であり、例えばAusubelら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Chapter 16、John Wiley and Sons、2006年及びColiganら(編)Current Protocols in Protein Science、Chapter 5及び6、John Wiley and Sons、2006年に詳述されている。有利には、タンパク質又はポリペプチドは、第二のタンパク質、例えばグルタチオン−S−転移酵素(GST)など、又はヒスチジンタグ(Hisタグ)配列などの配列タグとの融合体として生成されてもよい。融合又はタグ付きタンパク質の使用は、上記のCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16、及びHisタグタンパク質発現及び精製キット[例えばQiagen GmbH、Germanyから入手できる]の説明書に詳述される通り、精製手順を単純化する。
本発明のタンパク質又はポリペプチドは、例えば細胞抽出物又はリボソームを用いて無細胞系で合成されてもよい。
本発明のポリペプチド又はタンパク質は、それらの機能、親和性又は安定性を改善するために、さらに改変されてもよい。例えば、ポリペプチドにより大きな安定性及び/又は全体的に改善された性能を付与するために、環化が用いられてもよい。側鎖環化及び骨格環化を含む、いくつかの異なる環化方法が開発されている。これらの方法は、先行技術でよく実証されている[例えばYuら、Bioorg.Med.Chem.7巻、161〜75頁、1999年、Patelら、J.Pept.Res.53巻、68〜74頁、1999年、Valeroら、J.Pept.Res.53巻、56〜67頁、1999年、Romanovskisら、J.Pept.Res.52巻、356〜74頁、1998年、Crozetら、Mol.Divers.3巻、261〜76頁、1998年、Rivierら、J.Med.Chem.41巻、5012〜9頁、1998年、Panzoneら、J.Antibiot.(Tokyo)、51巻、872〜9頁、1998年、Giblinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA95巻、12814〜8頁、1998年、Limalら、J.Pept.Res.52巻、121〜9頁、1998年及び米国特許第5,444,150号]。
環化の特定の方法は、ベンゼン環のパラ置換アミノ酸誘導体を用いることによる、両親媒性のアルファヘリックスの安定化を含む[Yuら(1999)同書]。環化の別の特定の方法は、Reissmannら、Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids1巻:51〜6頁、1994〜95年及びその中の参考文献に開示されているように、骨格環化である。骨格と側鎖との連結を含む環化の別の方法を用いてもよい[Reissmannら(1994〜95年)同書]。
それにもかかわらず、本発明によると、本発明のタンパク質又はポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸又は合成アミノ酸でない様々な同一であるか異なる有機部分で、そのN末端及び/又はC末端が伸長されてもよい。そのような伸張の例として、タンパク質又はポリペプチドは、N−アセチル基でそのN末端及び/又はC末端が伸長されてもよい。
ポリペプチド構造を改善するために、本発明のタンパク質又はポリペプチドは、それらのN末端を通してラウリル−システイン(LC)残基に、並びに/又はそれらのC末端を通してシステイン(C)残基に、或いは免疫化のためにアジュバント(単数又は複数)にポリペプチドを結合するのに適する他の残基(単数又は複数)に結合されてもよい。
別の態様では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4のいずれか1つによって表されるポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子、並びにその任意の断片、誘導体及び類似体、又はその完全長補体を提供する。
さらに、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4のいずれか1つによって表されるポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子と、遺伝子コードの縮重によるコドン配列が異なるだけである単離された核酸分子を提供する。
本明細書で用いるように、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)、及びヌクレオチド類似体を用いて生成されたDNA又はRNAの類似体を含むものとする。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であってよいが、好ましくはそれは二本鎖DNAである。
用語「単離された核酸分子」は、他の核酸分子から分離され、組換え技術によって生成される場合は他の細胞物質若しくは培地を実質的に含まず、又は化学的に合成される場合には化学前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない核酸分子を含むものとする。
本発明の範囲内の誘導体には、ポリヌクレオチド誘導体も含まれる。ポリヌクレオチド又は核酸誘導体は、ヌクレオチド配列中で記載されるか既知の配列と異なる。例えば、ポリヌクレオチド誘導体は、1つ又は複数のヌクレオチド置換、挿入又は欠失を特徴とすることができる。
本発明の一態様は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質をコードする核酸分子(例えば、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8をコードするmRNA)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いるのに十分な核酸断片、及びPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8をコードする核酸分子の増幅又は突然変異のためのPCRプライマーとして用いるための断片に関する。
別の実施形態では、配列番号1によって表されるポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子は、配列番号5によって表される配列を含む。
さらなる実施形態では、配列番号2によって表されるポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子は、配列番号6によって表される配列を含む。
さらなる実施形態では、配列番号3によって表されるポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子は、配列番号7によって表される配列を含む。
さらなる実施形態では、配列番号4によって表されるポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸分子は、配列番号8によって表される配列を含む。
本発明の核酸分子、例えば配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のいずれか1つのヌクレオチド配列、又はその一部を有する核酸分子は、標準の分子生物学技術及び本明細書で提供される配列情報を用いて生成することができる。
具体的な実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
さらに別の具体的な実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列の全長と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%又はそれ以上相同であるヌクレオチド配列を含む。
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つの核酸配列の一部だけ、例えばプライマーとして用いることができる断片、例えば配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号16のいずれか1つによって表される配列、或いはPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つの一部、例えばPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つの生物学的活性部分をコードする断片を含むことができる。好ましい実施形態では、核酸分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のいずれか1つを含む核酸の少なくとも100個の連続するヌクレオチドを含む。
PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8ヌクレオチド配列のいずれか1つに基づくプローブは、それを又は相同タンパク質をコードする転写産物を検出するために用いられてもよい。そのようなプローブは、例えば対象からの細胞試料でPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8をコードする核酸のレベルを測定することにより、例えばPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8のmRNAレベルを検出することにより、本発明のPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つを発現する細胞又は組織を同定するための診断検査キットの一部として用いられてもよい。
PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つの「生物学的活性部分」をコードする核酸断片は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質生物学的活性を有するポリペプチドをコードする、それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つのヌクレオチド配列の一部を単離し、タンパク質のコードされる部分を発現させ(例えば、in vitroでの組換え発現によって)、並びにタンパク質のコードされる部分の活性を評価することによって調製することができる。具体的な実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも30個の連続したアミノ酸残基を含む断片をコードする。
本発明は、遺伝子コードの縮重によって、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と異なり、したがって、それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列によってコードされるものと同じPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質をコードする核酸分子をさらに包含する。
一実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つに示すアミノ酸配列、又はその断片を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。別の実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つ又はその断片と、少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%又はそれ以上の同一性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8に示されるPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8ヌクレオチド配列に加えて、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のポリペプチド成分のアミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が集団内に存在してもよいことは、当業者によって理解される。PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8遺伝子のポリペプチドでのそのような遺伝子多型は、天然の対立遺伝子変異のために集団内に存在することができる。
機能的対立遺伝子変異体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つの1つ又は複数のアミノ酸の保存的置換、或いはタンパク質の重要でない領域での重要でない残基の置換、欠失又は挿入を一般的に含む。
非機能的対立遺伝子変異体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つのアミノ酸配列の非保存的置換、欠失又は挿入、又は早発トランケーション、或いはタンパク質の重要な残基又は重要な領域での置換、挿入又は欠失を一般的に含む。
それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つのタンパク質に相同であるPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コードされたタンパク質に1つ又は複数のアミノ酸置換、付加又は欠失が導入されるように、それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のヌクレオチド配列に1つ又は複数のヌクレオチド置換、付加又は欠失を導入することによって形成することができる。突然変異は、標準技術、例えば部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発によって導入されてもよい。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1つ又は複数の予測される非必須アミノ酸残基に加えられる。
したがって、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つで予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。代わりに、別の実施形態では、突然変異は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8のDNAコード配列のいずれか1つの全部又は一部に沿って、例えば飽和突然変異誘発によってランダムに導入されてもよく、得られる突然変異体は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8活性を保持する突然変異体を同定するために、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質の生物学的活性についてスクリーニングされてもよい。配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つの突然変異誘発に続いて、コードされているタンパク質を組換えによって発現させ、タンパク質の活性を判定することができる。
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性百分率を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列させられる(例えば、最適な整列のために第一及び第二のアミノ酸又は核酸配列の1つ又は両方にギャップを導入することができ、非相同配列は比較目的のために無視されてもよい)。好ましい一実施形態では、比較目的のために整列させる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%又は95%である。対応しているアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが、次に比較される。第一の配列内の位置が第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められているならば、それらの分子はその位置で同一である(本明細書で用いるように、アミノ酸又は核酸の「同一性」はアミノ酸又は核酸の「相同性」に等しい)。2つの配列間の同一性百分率は、2つの配列の最適な整列のために導入する必要がある、ギャップ数及び各ギャップの長さを考慮した、両配列によって共有される同一位置の数の関数である。
2つの配列間の配列の比較及び同一性百分率の決定は、数値アルゴリズムを使用して達成することができる。一実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性百分率は、GCGソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc.ウェブサイト(旧名Genetics Computer Group)、San Diego、Calif.を通してオンラインで入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.(48巻):444〜453頁(1970年))アルゴリズムを用い、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、並びに16、14、12、10、8、6又は4のギャップウェイト(gap weight)及び1、2、3、4、5又は6のレンスウェイト(length weight)を用いて決定される。別の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性百分率は、GCGソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc.ウェブサイト(旧名Genetics Computer Group)、San Diego、Calif.を通してオンラインで入手可能)中のGAPプログラムを用いて、NWSgapdna.CMPマトリックス並びに40、50、60、70又は80のギャップウェイト及び1、2、3、4、5又は6のレンスウェイトを用いて決定される。さらに別の実施形態では、2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列の間の同一性百分率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4巻:11〜17頁(1988年))のアルゴリズムを用い、PAM120ウェイトレジデュ(weight residue)表、12のギャップレンスペナルティ及び4のギャップペナルティを用いて決定される。
核酸及びタンパク質配列は、例えば他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために公開データベースを検索するための、「照会配列」としてさらに用いることができる。そのような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215巻:403〜10頁のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行することができる。相同的ヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレンス=12で実行することができる。相同的アミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレンス=3で実行することができる。比較目的のためにギャップ整列を得るために、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25巻(17号):3389〜3402頁に記載のようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。(例えば、National Center for Biotechnology Informationオンラインデータベースを参照)。
さらに、配列を整列させ、類似性、同一性又は相同性を決定するために、「Clustal」法(Higgins及びSharp、Gene、73巻:237〜44頁、1988年)及び「Megalign」プログラム(Clewley及びArnold、Methods Mol.Biol.、70巻:119〜29頁、1997年)を用いることができる。
さらに別の態様では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つによって表されるポリペプチド、並びにその任意の断片、誘導体又は類似体をコードする単離された核酸分子を含むベクターを提供する。したがって、前記ベクターは、それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8によって表される単離された核酸配列、又は遺伝子コードの縮重によってそれと異なるだけであるその任意の変異体を含む。
前記ベクターの一実施形態では、前記核酸分子はプロモーターに作動可能に連結される。
別の実施形態では、前記ベクターは発現ベクターである。
本明細書で用いるように、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を運ぶことが可能な核酸分子を含むものとする。ベクターは、そのようなDNA配列をベクターの本質的な生物学的機能の損失なしで確定的に切断することができ、並びにその複製及びクローニングをもたらすためにDNA断片をスプライシングすることができる、1つ又は少数の制限酵素部位で特徴付けることができる。ベクターは、そのベクターで形質転換される細胞の同定における使用のために適するマーカーをさらに含んでもよい。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、それは、さらなるDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入後に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することが可能である。そのようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用である発現ベクターは、しばしばプラスミドの形である。本明細書では、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる形であるので、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に用いることができる。しかし、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製に欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの他の形の発現ベクターを含むものとする。
用語「作動可能的に連結される」又は「作動可能に連結される」は、1つの分子の活性又は状態の変化が他の分子の活性又は状態によって影響を受けるという点で、分子が互いに機能的に結合されることを意味するものとする。対象のポリペプチド又はタンパク質をコードするDNA配列と調節配列が機能的に関連する場合、ヌクレオチド配列は「作動可能に連結している」。例えば、プロモーターヌクレオチド配列が対象のタンパク質をコードするDNA配列の転写を制御する場合は、プロモーターヌクレオチド配列は対象のタンパク質又はポリペプチドをコードするDNA配列に作動可能に連結している。一般的に、作動可能的に連結される2つのポリペプチドは、ペプチド結合を通して共有結合している。
別のさらなる態様では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4のいずれか1つによって表されるポリペプチド、並びにその任意の断片、誘導体又は類似体をコードする単離された核酸分子を含み、それぞれ配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8によって表される単離された核酸配列、又は遺伝子コードの縮重によってそれと異なるだけであるその任意の変異体を含む上記のベクターを含む細胞を提供する。
一実施形態では、前記細胞は、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、細菌細胞又は哺乳動物細胞からなる群から選択される宿主細胞である。
本明細書では、用語「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」は互換的に用いられる。「宿主細胞」には、異種DNAの導入によって改変することができるあらゆる培養細胞が含まれる。好ましくは、宿主細胞は、転写制御タンパク質を安定して発現させ、翻訳後に改変し、適当な細胞下コンパートメントに局在化させ、適当な転写機構に関与させることができるものである。適当な宿主細胞の選択には、検出シグナルの選択が影響を及ぼしうる。例えば、上記のリポーター構築物は、転写調節タンパク質に応じる遺伝子転写の活性化又は阻害後に選択可能であるかスクリーニング可能な形質を提供することができる。最適な選択又はスクリーニングを達成するために、宿主細胞の表現型が考慮される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代又は潜在的な後代も指すことが理解される。突然変異又は環境の影響のために特定の改変が後継世代で起こることがあるので、そのような後代は、実際、親細胞に同一ではないかもしれないが、本明細書で用いる用語の範囲に依然として含まれる。
本発明の宿主細胞には、原核細胞及び真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性の生物体、例えば大腸菌(E.coli)又は桿菌が含まれる。形質転換のために適する原核宿主細胞には、例えば大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)並びにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)及びスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の他の各種が含まれる。真核細胞には、それらに限定されないが、酵母細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)、哺乳動物細胞及び寄生生物、例えばトリパノソーマの細胞が含まれる。
本明細書で用いるように、用語「酵母」には、厳密な分類上の意味での酵母、すなわち単細胞生物だけでなく、糸状菌の酵母様多細胞真菌類も含まれる。例示的な種には、クルイベレイ・ラクティス(Kluyverei lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びウスチラゴ・メイディス(Ustilago maydis)が含まれ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が好ましい。本発明の実施で用いることができる他の酵母は、アカパンカビ(Neurospora crassa)、クロカビ(Aspergillus niger)、偽巣性コウジ菌(Aspergillus nidulans)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)である。
哺乳動物の宿主細胞培養系には、HeLa細胞、COS細胞、L細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、胚幹細胞などの樹立細胞系が含まれる。
別のさらなる態様では、本発明は、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択される単離されたポリペプチド又はタンパク質を含む組成物を提供し、前記タンパク質又はポリペプチドは、それぞれ上記の配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4からなる群から選択される配列、又は任意のその断片、類似体若しくは誘導体を含む。
驚くべきことに、下記の例2及び8(それぞれ図1A〜1D及び5A〜5B)で、ポリペプチドPRT5及びPRT8がグルコースレベル及びグルコースのターンオーバーに対して有意な影響を及ぼすことを発明者らは示した。PRT5及びPRT8の両方は、絶食に続くグルコース注射の後に測定されたグルコースレベルの低下を誘導した。これらの結果は、PRT5注射の2、3及び4日後、並びにPRT8注射の2及び3日後に最も顕著であった。
これらの結果は、PRT5及びPRT8がグルコース代謝の調節因子であって、糖尿病又はグルコース代謝関連の障害の治療で重要な治療薬である可能性を示唆する。
例3(図2A〜2B)に示す結果は、グルコース代謝の調節因子、及び糖尿病状態の因子としてのPRT5の役割をさらに裏付ける。糖尿病患者でのPRT5レベルの低下は、糖尿病でのPRT5の重要な役割を強く指し示す。したがって、PRT5並びにPRT8は、グルコース代謝、グルコースターンオーバー、及びインスリン発現の誘導でさえも調節する治療薬として用いることができると推測できる。
驚くべきことに、PRT5処理したマウスの骨格筋で、PRT5はインスリン受容体のレベルを増加させることが可能であることを発明者らはさらに見出した(データ示さず)。
インスリンはその受容体に結合し、次にそれは多くのタンパク質活性化カスケードを開始する。インスリン受容体(CD220)は、インスリンによって活性化される、チロシンキナーゼ受容体の大きなクラスに属する膜貫通受容体である。それは2つのアルファサブユニットによって構成され、2つのベータサブユニットがインスリン受容体を構成する。ベータサブユニットは細胞膜を貫通し、ジスルフィド結合によって連結される。アルファ及びベータサブユニットは、単一遺伝子(INSR)によってコードされる。
その受容体へのインスリンの結合の結果、複雑なカスケード事象が開始され、それには以下のものが含まれる:原形質膜へのGlut−4輸送体の転位置及びグルコースの流入、グリコーゲン合成、解糖及び脂肪酸合成。これらの過程は、筋細胞及び脂肪組織を含むインスリン応答性組織の外膜の上で特に起こり、血液からこれらの組織へのグルコースの取り込みの増加をもたらす。
したがって、インスリン受容体の発現を誘導することによって、PRT5が同様に前記カスケード事象を誘導すると推測することができる。したがって、PRT5は、原形質膜へのGlut−4輸送体の転位置及びグルコースの流入、グリコーゲン合成、解糖及び脂肪酸合成を直接的又は間接的に誘導する。
グリコーゲン合成は、IRS−1を通してインスリン受容体によっても刺激される。この場合、IRS−1のP−Tyrに結合するのは、PI−3キナーゼ(PI−3K)のSH2ドメインである。活性化されると、PI−3Kは、膜脂質ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート(PIP2)をホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(PIP3)に変換することができる。これは、リン酸化を通して間接的にプロテインキナーゼPKB(Akt)を活性化する。PKBは、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK−3)を含むいくつかの標的タンパク質を次にリン酸化する。GSK−3は、グリコーゲン合成酵素をリン酸化する(したがって不活性化する)役割を担う。GSK−3がリン酸化されるとき、それは不活性化され、グリコーゲン合成酵素を不活性化することが阻止される。この遠回しの方法で、インスリンはグリコーゲン合成を増加させる。
したがって、1つの具体的な態様では、本発明は、インスリン受容体の発現を誘導するための、原形質膜へのGlut−4輸送体の転位置及びグルコース流入を誘導するための、グリコーゲン合成を誘導するための、並びに/又は解糖及び脂肪酸合成を誘導するための、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、特にPRT5、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
別の具体的な態様では、本発明は、グルコース代謝関連の障害の治療のための、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
インスリン抵抗性は、一般的で広く多発している代謝障害であり、それは糖尿病、メタボリックシンドローム及び肥満の病態生理に深く関与している。それは、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)、甲状腺及び副腎の疾患、並びにそれらの合併症を含む、様々な内分泌性疾患の徴候であることもある。
発明者らの予想外の結果は、PRT5がこれらの障害を克服するためのバイパス機構として用いることができることを示唆する。したがって、インスリン抵抗性に関連するあらゆる病的状態、例えば糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満及び内分泌性疾患、並びに筋肉障害の治療のための治療薬として、PRT5を用いることができる。
筋系の最も一般的な疾患及び障害のいくつかには、ミオパシー、慢性疲労症候群、線維筋痛、筋ジストロフィー及び筋区画症候群が含まれる。欠陥のある骨格筋グルコース及び/又はグリコーゲン代謝に関連する特定の疾患は、ミオホスホリラーゼ及びホスホフルクトキナーゼ欠乏であり、より簡単に述べると運動後の痛みを伴う筋痙攣である。
別の具体的な態様では、本発明は、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患及び筋肉障害からなる群から選択される障害の治療のための、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
さらなる具体的な態様では、本発明は、グルコース代謝を増強するための、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
さらに、下記の例5(及び図3A〜3B)では、発明者らは、驚くべきことに、ポリペプチドPRT6がテストステロンレベルを増加させる有意な影響を及ぼすことを示した。これらの結果は、PRT6がテストステロン生成の誘導及び/又は強化のための強力な剤であり、したがって、テストステロン欠乏関連の障害の療法で、又はテストステロン生成の誘導のために健康な状態でさえも用いることができることを強く示唆する。
テストステロンは、成熟精巣量の約5%を構成する精細管の間の、精巣の間質性コンパートメントに位置する500,000,000個のライディッヒ細胞内で、酵素の一続きの工程によってコレステロールから合成される。さらに、特定の組織中の循環性の弱い副腎性アンドロゲン前駆体DHEAからのテストステロン及びジヒドロテストステロンの多少の性腺外生合成が記載されているが、循環テストステロンへの副腎性アンドロゲンの純寄与は小さい。精巣のテストステロン分泌は、内部ミトコンドリア膜の上に位置するチトクロームP−450コレステロール側鎖切断酵素複合体による、ライディッヒ細胞ミトコンドリア内でのプレグネノロンへのコレステロールの律速的変換のその調節を通して、黄体形成ホルモン(LH)によって主に支配される。
テストステロンはアンドロゲン補充療法のために生理的用量で臨床的に用いられ、一般的により高い用量では、テストステロン又はその構造に基づく合成アンドロゲンは、薬理学的アンドロゲン療法のためにも用いられる。アンドロゲン補充療法の主な目標は、全ての体組織へのアンドロゲン曝露の生理的パターンを回復することである。そのような治療は、生理的循環テストステロンレベル及び組織に対する天然アンドロゲンの影響の全範囲(前受容体アンドロゲン活性化を含む)を複製することを目指す。薬理学的アンドロゲン療法は、他の治療薬のようにそれらの効力、安全性及び相対的な費用有効性に関して審査されるホルモン薬としての、筋肉、骨及び他の組織に対するテストステロン又は合成アンドロゲンの同化作用又は他の作用を活用する。
テストステロンの生理的作用は、前思春期の作用、思春期の作用及び成人の作用と分類することができる。前思春期の作用は、少年及び少女の両方に起こる児童期の終わりのアンドロゲンレベルの上昇の最初に観察可能な作用であり、一般に、成人型体臭;皮膚及び髪の油性の増加;にきび;陰毛の出現;腋毛;急成長、骨の成熟の加速;並びに上唇及びもみあげの毛として識別可能である。思春期の作用は、何カ月又は何年もの間、アンドロゲンが正常な成人女性のレベルよりも高いときに起こり始める。男性では、これらは通常の後期思春期の作用であって、女性では、長期の血液中の高い遊離テストステロンレベルの後に起こる。これらの作用は、以下の現象として観察することができる:
・にきびを引き起こすことがある皮脂腺の拡大;
・陰茎の拡大又は陰核巨大症;
・リビドー及び勃起又は陰核充血の頻度の増加;
・陰毛は腿へ、及び上へ臍の方に伸長する;
・顔の毛(もみあげ、あごひげ、口ひげ);
・頭髪の喪失(男性ホルモン性脱毛症);
・胸毛、乳輪周囲の毛、肛門周囲の毛;
・脚の毛;
・腋毛;
・顔の皮下脂肪の減少;
・筋肉の力及び量の増加;
・声が太くなる;
・のどぼとけの発達;
・精巣の精子形成組織の成長、男性の生殖能力;
・下顎、額、あご、鼻の成長及び顔面骨輪郭のリモデリング;
・肩幅が広くなり、胸郭が拡大する;
・骨の成熟の完了及び成長の終結。これは、エストラジオール代謝産物を通して間接的に起こり、したがって男性では女性よりも徐々に起こる。
成人のテストステロン作用は女性より男性で明らかに証明可能であるが、おそらく男女両方に重要である。これらの作用のいくつかは、テストステロンレベルが成人期の後半の数十年に低下するにしたがって低減する可能性がある。これらの作用は、一般に以下のものと認識される:
・リビドー及び陰核の充血/陰茎勃起頻度;
・ドミナンスチャレンジの下で急性HPA(視床下部−脳下垂体−副腎系)応答を調節する;
・精神的及び身体的エネルギー;
・筋肉栄養の維持。
高齢男性で正常なテストステロンレベルを維持することは、除脂肪体重の増加、内臓体脂肪量の減少、総コレステロールの低下及び血糖管理などの、心臓血管疾患リスクを低減すると考えられている多くのパラメータを改善することが分かっている。ドミナンスチャレンジの下で、テストステロンは戦闘又は逃亡応答の調節で役割を果たすことができる。
さらに、テストステロンは、ヒトにおいて巨核球及び血小板の上のトロンボキサンA2受容体の集団を調節し、したがって血小板凝集を調節する。
特に加齢男性での低いテストステロンレベルの症状のリストには、以下のものが含まれる:
・勃起不全(勃起の問題);
・リビドー喪失(低い性衝動);
・うつ病、短気及び疲労感を含む感情障害;
・筋肉のサイズ及び強さの低下;
・骨粗鬆症(骨の密度低下);
・体脂肪の増加;
・集中障害及び記憶喪失;及び
・睡眠障害。
したがって、別のさらなる具体的な態様では、本発明は、テストステロン生成を増強するための、単離されたポリペプチドPRT6、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
別のさらなる具体的な態様では、本発明は、テストステロン欠乏又は低テストステロン関連障害の治療のための、単離されたポリペプチドPRT6、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
発明者らは、驚くべきことに、PRT7が癌で上昇することをさらに示した。この現象の非限定例は、本明細書の例7で示され、そこでは、高レベルのPRT7が肺又はすい臓の癌患者の試料で見出された。さらに、PRT7がp53を誘導することが可能なことを発明者らは観察した(データ示さず)。
癌サプレッサータンパク質p53は、細胞増殖阻害及びアポトーシスにつながる熱ショック、低酸素症、浸透圧ショック及びDNA損傷などの多様な細胞ストレスによって安定化及び活性化されることが知られている(Ko及びPrives、Genes Dev.10巻:1054〜1072頁、1996年;Levine、Cell88巻:323〜331頁、1997年;Oren、Cancer Biol.5巻:221〜227頁、1994年)。アポトーシス及び細胞周期停止が、p53の主要な腫瘍抑制機能であることも知られている(Levine、Cell88巻:323〜331頁、1997年)。癌の他に、アポトーシス関連の障害の例には、動脈硬化、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、移植片対宿主病、自己免疫性リンパ球増加症候群及びウイルス性感染症が含まれる。
PRT7がp53を誘導することができるとの知見は、PRT7が癌療法で用いられてもよいことを強く示唆する。
したがって、別のさらなる具体的な態様では、本発明は、癌を治療するための、及び/又はp53発現を誘導するための、及び/又はアポトーシスを誘導するための、単離されたポリペプチドPRT7、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸を含む組成物を提供する。
一実施形態では、本発明で提供されるあらゆる組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。
組成物の調製は当技術分野で周知であり、多くの論文及び教科書に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro A.R.編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990年、特にその中の1521〜1712頁を参照されたい。
本発明の組成物は、薬学的に許容されるアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
用語「薬学的に許容される担体」は、有効成分と反応しない不活性の非毒性物質のいずれか1つを意味する。担体は、所望の剤形に基づいて時々選択される。薬剤の安定性を改善するために、クリアランス速度を遅くするために、緩放出特性を付与するために、好ましくない副作用を減少させるなどのために、担体はまた、標的組織への有効成分の送達又は浸透を改善する作用を時に有することができる。製剤に食品の風味などを提供するために、担体は製剤を安定させる物質(例えば防腐剤)であってもよい。担体は、従来用いられるもののいずれかであってよく、溶解性及び本発明の抗体との反応性の欠如などの化学物理的考慮、並びに投与経路だけによって制限される。担体は、添加剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、着香料及び薬理学的に適合する担体を含むことができる。さらに、担体は、定義によると予測可能な方法で有効成分の作用に影響を及ぼす物質である、アジュバントであってもよい。担体の代表的な例には、(a)活性物質の有効量が水、生理食塩水、天然果汁、アルコール、シロップなどの希釈剤に溶解される溶液;(b)各々固体又は顆粒として所定量の活性剤を含む、カプセル(例えば、界面活性剤、滑剤及び不活性充填剤などを含有する通常の硬質又は軟質シェルのゼラチンタイプ)、錠剤、ロゼンジ(活性物質がショ糖及びアカシア若しくはトラガカンタなどの着香料中にあるか、又は活性物質がゼラチン及びグリセリンなどの不活性の基剤中にある)、並びにトローチ;(c)粉末;(d)適当な液体中の懸濁液;(e)適する乳濁液;(f)リポソーム製剤;並びにその他が含まれる。
別の実施形態では、本発明の組成物は、それらに限定されないが抗生物質、サイトカイン、リンフォカイン、増殖因子、ホルモン、抗酸化剤、ビタミンなどのさらなる活性剤を任意選択でさらに含んでもよい。
別のさらなる態様では、本発明は、疾患又は障害の治療薬の調製のための、上で定義されるPRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるポリペプチド又はタンパク質の使用を提供し、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、並びに炭水化物代謝障害からなる群から選択される。
特定のさらなる一態様では、本発明は、グルコース代謝関連の障害の治療薬の調製における、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸の使用を提供する。
より具体的には、本発明は、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患及び筋肉障害からなる群から選択される障害の治療薬の調製における、単離されたポリペプチドPRT5又はPRT8のいずれか1つ、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸の使用を提供する。
別の特定のさらなる態様では、本発明は、テストステロン欠乏又はテストステロン欠乏関連の障害の治療薬の調製における、単離されたポリペプチドPRT6、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸の使用を提供する。
別の特定のさらなる態様では、本発明は、癌の治療薬の調製における、単離されたポリペプチドPRT7、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸の使用を提供する。
別のさらなる態様では、本発明は、必要とする対象での疾患又は障害の治療の方法であって、上で定義されるPRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるポリペプチド又はタンパク質、又はそれを含む組成物の治療的有効量を前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、炭水化物代謝障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患並びに筋肉障害からなる群から選択される。
別の特定のさらなる態様では、本発明は、グルコース代謝関連の障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患及び筋肉障害からなる群から選択される障害の治療のための方法であって、単離されたポリペプチドPRT5若しくはPRT8、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸、又はそれを含む組成物の治療的有効量を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
別の特定のさらなる態様では、本発明は、グルコース代謝を増強するための方法であって、単離されたポリペプチドPRT5若しくはPRT8、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸、又はそれを含む組成物の治療的有効量を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
別のさらなる特定の態様では、本発明は、インスリン受容体の発現を誘導するための方法であって、単離されたポリペプチドPRT5若しくはPRT8、特にPRT5、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸、又はそれを含む組成物の治療的有効量を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
同様に、本発明は、細胞中のインスリン受容体の発現を誘導するための方法であって、PRT5又は生物学的に活性なその断片若しくは誘導体、又はそれを含む組成物の有効量と細胞を接触させることを含む方法を提供する。前記方法は、in vitro又はex vivoの方法であってよい。前記細胞は、通常、筋細胞、脂肪細胞、それらの前駆体、又はインスリン受容体の発現が望ましいであろうあらゆる細胞である。
別の特定のさらなる態様では、本発明は、テストステロン欠乏関連の障害の治療のための、又はテストステロン生成を増強するための方法であって、単離されたポリペプチドPRT6、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸、又はそれを含む組成物の治療的有効量を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
別のさらなる態様では、本発明は、癌の治療のための方法であって、単離されたポリペプチドPRT7、又はそれを含むタンパク質、又はそれをコードする核酸、又はそれを含む組成物の治療的有効量を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞でp53、アポトーシス又は細胞死のいずれか1つを誘導するための方法であって、PRT7又は生物学的に活性なその断片若しくは誘導体、又はそれを含む組成物の有効量と細胞を接触させることを含む方法を提供する。前記方法は、in vitro又はex vivoの方法であってよい。前記細胞は、p53を誘導すること、又は癌細胞などアポトーシス若しくは細胞死を誘導することが望ましいであろういかなる細胞であってもよい。
本明細書で称されるように、用語「有効量」は、選択される結果を達成するのに必要な量を意味し、それは、今は障害を治療するために必要であるPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8、又は生物学的に活性なその誘導体の量を含む。
前記治療的有効量又は投薬は、治療される疾患状態の重症度及び応答性に依存し、治療クールは、1時間から数時間、1日から数日、又は治癒が達成されるか若しくは疾患状態の軽減が達成されるまで続く。当業者は、最適な投薬量、投薬方法及び繰返し速度を容易に決定することができる。最適な投薬量は、本発明の各ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれを含む組成物の相対的な効能によって異なることがあり、in vitro並びにin vivoの動物モデルで有効であることが分かっているEC50に一般に基づいて推定することができる。当業者は、測定された滞留時間、濃度及び使用されるポリペプチド又はタンパク質の調整に基づいて、投薬の繰返し速度を容易に推定することができる。
本明細書で用いる用語「治療する、治療すること又は治療」は、疾患又は障害を有する患者で、疾患活動性の1つ又は複数の臨床徴候を改善することを意味する。「治療」は、治療的処置を指す。
「患者」又は「必要とする対象」は、その障害又は疾患を克服するために障害又は疾患の治療が望まれるあらゆる哺乳動物、特にヒト対象を意味する。
通常、「治療的有効量」は、予防又は治療の目的、投与経路及び患者の一般状態(年齢、性別、体重及び主治医に公知である他の考慮事項)と合わせて、疾患の重症度によっても決定される。
本発明に記載されるポリペプチドPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8を必要とする対象に送達するために、様々な投与方法を用いることができる。前記ポリペプチド、又はそれを含む組成物は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、又は局所の注射を通して、又は当業者によって適することが見出されている他の任意の経路を通して送達することができる。治療的に有効であるために、本発明のポリペプチド又はタンパク質は、投与後の系でのそれらの安定性を可能にするであろう方法で調製されるべきである。
本明細書で用いるように、用語「障害」は、正常な機能の障害がある状態を指す。「疾患」とは、影響を受ける人又はその人と接触する者に、不快、機能障害又は苦痛を引き起こす体又は心のあらゆる異常状態である。時々、損傷、先天性奇形、障害、症候群、症状、常軌を逸した挙動並びに構造及び機能の非定型的な変異、疾患から生じる慢性又は恒久的な健康状態の欠陥を含むように、本用語は広義に用いられる。
用語「疾患」、「障害」、「状態」及び「病気」は、本明細書で同等に用いられる。
さらなる態様では、本発明は、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるポリペプチド、又は任意のその断片若しくは誘導体を特異的に認識する抗体を提供する。
具体的には、前記PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8ポリペプチドは、それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4によって表される。本発明の抗体によって認識される断片の非限定例は、前記抗体を生成するための抗原として用いられるペプチドである。したがって、具体例では、抗PRT5抗体は配列番号17によって表されるペプチドを認識し、抗PRT6抗体は配列番号18によって表されるペプチドを認識し、抗PRT7抗体は配列番号19によって表されるペプチドを認識し、抗PRT8抗体は配列番号20によって表されるペプチドを認識する。
本明細書で定義されるように、本発明の抗体は通常天然に誘導されるか、天然に生成される。したがって、抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である。代わりに、本発明の抗体は、例えば化学合成によって合成的に生成されるか、又はそれぞれの抗体産生細胞若しくは細胞系からの特定のmRNAの単離を通して組換えで生成されてもよい。組換えで生成された抗体を生成するために、前記特定のmRNAは、標準の分子生物学操作(cDNAを得て、前記cDNAを発現ベクターなどに導入する)を次に経る。前記技術は、当業者には周知である。
下の実施例に記載されるように、本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を生成する当業者に公知である標準技術を用いてウサギで生成された。
タンパク質に対するポリクローナル抗体の生成は当業者に周知である技術であり、それは、とりわけCurrent Protocols in Immunology、John E.Coliganら(編)、Wiley and Sons Inc.のチャプター2に記載されている。
本発明によると、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8抗原のいずれか1つを認識するポリクローナル抗体とは、ポリクローナル抗体の主要な認識部位がそれぞれPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8抗原に対応することを意味する。一般に、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8、又はその断片は、本発明に記載される抗体の1つを生成するために、ウサギ、モルモット、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、サルなどの動物を免疫化するための免疫原として用いられる。生じた抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7又は抗PRT8抗血清それぞれから、公知の方法によって抗体分画が精製される。生じた抗体は、ポリクローナル抗体として用いられる。ポリクローナル抗体の特異性に関しては、それぞれPRT5、PRT6、PRT7又はPRT8が認識されるはずである。ポリクローナル抗体の主要な認識部位は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のC末端領域に位置する。C末端領域の主要な認識部位を有するポリクローナル抗体は、例えば配列番号17によって表されるペプチド、又は配列番号18によって表されるペプチド、又は配列番号19によって表されるペプチド、又は配列番号20によって表されるペプチドをそれぞれ認識する抗体である。
一般に、ポリクローナル抗体は、免疫原で免疫化された動物血清から精製される免疫グロブリンから調製される。個々の動物に由来する個体差及び抗血清でのロットの差を避けるために、異なるロットからのポリクローナル抗体を混合してもよい。ポリクローナル抗体は抗体の集合であるので、ポリクローナル抗体は複数の認識部位を有する。
モノクローナル抗体は、雑種細胞の増殖に有利である条件下での不死化B細胞との融合によって、免疫化された動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節からとられるB細胞から調製されてもよい。モノクローナル抗体を生成する技術は、多くの論文及び教科書、例えば上記のCurrent Protocols in Immunologyのチャプター2に記載されている。その中のチャプター2に記載されているように、モノクローナル抗体の生成のために、これらの動物の脾臓又はリンパ節細胞は、タンパク質で免疫化された動物の脾臓又はリンパ節細胞と同じ方法で用いることができる。モノクローナル抗体の生成で用いられる技術は、Kohler及びMilstein[Kohler及びMilstein(1975)Nature256巻:495〜497頁]及び米国特許第4,376,110号にさらに記載されている。
用語「抗体」は、完全な分子に加えてその断片、例えば抗原に結合することが可能である抗体のscFv、Fv、Fab’、Fab、ダイアボディ、線状の抗体、F(ab’)2抗原結合断片の両方も含むものとする[Wahlら(1983)J.Nucl.Med.24巻、316〜325頁]。
抗体のFab及びF(ab’)2及び他の断片は、完全な抗体分子のための本明細書で開示される方法による、生体試料中の、本発明の抗体の生成のための抗原として用いられるタンパク質の検出、並びに本明細書で開示される抗体の他の用途のために有用である。そのような断片は、例えばパパイン(Fab断片を生成するため)又はペプシン(F(ab’)2断片を生成するため)などの酵素を用いて、タンパク分解性開裂によって生成することができる。したがって、本発明で有用な抗体のFab及びF(ab’)2及び他の断片は、意図する用途によって様々なタグで標識されてもよい。これらのタグは、検出を促進するための検出可能なタグであってもよく、又は腫瘍細胞を死滅させるであろう毒性のタグであってもよく、又は他の細胞若しくは物質が腫瘍細胞を死滅させるように誘導することができる「誘導」タグであってもよい。
抗体は、それが分子(抗原)と特異的に反応することができ、それによって抗体が前記分子に結合するならば、分子に「結合すること」又はそれを「認識すること」が可能であると言われる。用語「エピトープ」は、抗体が結合することが可能であり、その抗体又はその抗体を生成する細胞が認識することもできるいかなる分子の部分を指すものとする。エピトープ又は「抗原決定基」は、通常アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性である表面分子グループからなり、特異的な三次元構造特性並びに特異的な電荷特性を有する。
「抗原」は、抗体が認識し、結合することが可能な分子又は分子の一部である。抗原は、1つ又は複数のエピトープを有することができる。上で言及される特異反応は、抗原が、その対応する抗体と高度に選択的及び特異的に反応するが、他の抗原が呼び起こすことができる他の多くの抗体とは反応しないであろうことを示すものとする。
本発明では、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20によって表されるペプチドは、本発明のポリクローナル抗体を生成するための抗原として用いられ、したがって本発明の抗体によって認識される。同様に、本明細書に記載される完全長タンパク質は、各々それ自身の特異性(すなわち、抗PRT5に対してPRT5、抗PRT6に対してPRT6、抗PRT7に対してPRT7、抗PRT8に対してPRT8)によって本発明の抗体によって認識され、それが結合することができる抗原と称されてもよい。
本発明によって提供される抗体は、任意のアイソタイプ、IgG、IgM、IgE、IgA又はIgDのものでよい。
抗体に関して、「生物学的特性」又は「生物学的活性」は、エピトープを特異的に認識し、その結果それに結合する抗体の能力を通常指す。エピトープは完全長タンパク質の一部であってもよく、又はタンパク質の断片若しくはポリペプチドに包埋されてもよい。
さらなる態様では、本発明は、有効成分として本発明に記載の抗体を含む組成物を提供する。したがって、本発明の組成物を活性剤として含む前記抗体は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8からなる群から選択されるポリペプチド、又はその任意の断片、類似体若しくは誘導体を認識して結合する抗体又はその断片である。
前記組成物は、診断及び/又は治療の方法での使用のためであってもよい。
前記抗体又はそれを含む前記組成物は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8の発現及び/又は機能のいずれか1つに影響を及ぼす疾患又は障害の診断のために有用である。代わりに、前記抗体又はそれを含む組成物は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8の発現及び/又は機能のいずれか1つに影響を及ぼす疾患又は障害の治療のために用いられてもよい。
別の実施形態では、本発明に記載の抗体を含む前記組成物は、癌の治療で用いられてもよい。
下の例7では、発明者らは、すい臓癌又は肺癌の男性患者から得られた試料で、循環PRT7の上昇したレベルを意外にも示した。したがって、PRT7は、癌を検出するためのマーカーとして用いられてもよく、すい臓癌又は肺癌が具体的な非限定例である。したがって、抗PRT7特異抗体は、癌の診断手段として用いられてもよい。
したがって、特定の一実施形態では、前記組成物は、ポリペプチドPRT7又はその断片若しくは誘導体を認識する抗体を含む。
さらなる実施形態では、本発明に記載の抗体を含む組成物は、例えば癌の予後診断で用いられてもよい。治療効果の指標を有することが必須である癌治療を受けている患者で、予後診断の必要性が特に存在する。したがって、本発明に記載の少なくとも1つの抗体を含む組成物は、PRT5、PRT6、PRT7又はPRT8タンパク質のいずれか1つのレベルの検出又は測定を通して治療の結果を判定することが可能なはずである。
本発明では、本発明によって抗体を生成する抗体産生細胞系も提供される。したがって、本発明は、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるタンパク質に対するモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞系を提供する。
一実施形態では、本発明の目的でもある抗体産生細胞系を生成するために、抗体産生細胞はクローンとして単離され、不死化される。細胞不死化は当分野の技術者に公知である方法に従って達成することができ、例えば、Lanzavecchiaら、2007年[Lanzavecchia A、Corti D、Sallusto F.(2007)Human monoclonal antibodies by immortalization of B cells.Curr Opin Biotechnology;18巻(6号):523〜8頁]によって記載されている。
別のさらなる態様では、本発明は、診断用組成物の調製における、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるタンパク質を認識する本発明に記載の抗体の使用を提供する。詳細には、前記組成物は、疾患又は障害の診断用であり、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、並びに炭水化物代謝障害からなる群から選択される。
本明細書で称されるように、自己免疫疾患には、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性甲状線炎、橋本病、インスリン炎、シェーグレン症候群、自然流産、実験的な自己免疫性心筋炎、慢性関節リウマチ(RA)、ループス(SLE)、乾癬及び糖尿病、特にI型が含まれる。自己免疫疾患のさらなる例には、急性壊死出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、限局性脱毛症、アミロイド症、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、軸索及びニューロンの神経病、バル病(Bal’s disease)、ベーネット病(Behnet’s disease)、水泡性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、腹腔スプルー(非熱帯の)、シャガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎(CIDP)、チャーグ−ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天的な心臓ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト疾患、本態性混合クリオグロブリン血症、脱髄性神経病、皮膚筋炎、ドヴィック病、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エヴァン症候群、線維筋痛、線維化性肺胞隔炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、溶血性貧血、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、免疫調節性リポタンパク、封入体筋炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年型糖尿病、川崎病、ランバート−イートン症候群、白血球破砕性脈管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA疾患(LAD)、ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合型結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ミュシャ−ハーバーマン病、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、好中球減少症、目の瘢痕性類天疱瘡、骨関節炎、再発性リウマチ、腫瘍随伴小脳変性、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パーソニッジ−ターナー症候群、扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経疾患、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型及びIII型自己免疫性多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、黄体ホルモン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、レイノー現象、灼熱痛、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、不穏下肢症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、精子及び精巣の自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性甲状腺疾患、トロサ−ハント症候群、横断脊髄炎及び壊死性ミエロパシー、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、脈管炎、小水疱水疱症、白斑及びヴェーゲナー肉芽腫症が含まれる。
さらなる態様では、本発明は、治療組成物の調製における、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるポリペプチド、又はその断片若しくは誘導体を特異的に認識することができる、本発明に記載の抗体の使用を提供する。
本発明で提供される抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7及び抗PRT8抗体、又はその断片は、試料中の、本発明の抗体の生成のための抗原として用いられるタンパク質又はそれらの断片を定量的又は定性的に検出するために用いてもよい。これは、視覚的に検出可能なシグナルを与える技術によって達成することができ、それは、蛍光(免疫蛍光法)、酵素反応の発色性生成物、沈殿の生成、化学発光又は生物発光のいずれか1つであってよい。蛍光又は色標識抗体の利用が、下記のように光学顕微鏡、フローサイトメトリー又は蛍光定量的検出と合わさった。抗体を検出するために用いることができる他の技術及び標識には、それらに限定されないが、コロイド金、放射性タグ、GFP(緑色蛍光タンパク質)など、アビジン/ストレプトアビジン−ビオチン、磁気ビーズ、並びに実際の結合への感度が高い物理システム、例えばナノ技術システムが含まれる。
本発明で提供される抗体又はその断片は、免疫組織化学、免疫蛍光法又は免疫電子顕微鏡法の場合のように組織学染色で、並びにタンパク質のin situ検出のために使用されてもよい。in situ検出は、対象から組織学検体を取り出し、本発明の標識抗体をそのような検体と接触させることによって達成することができる。抗体(又は断片)は、標識抗体(又は断片)を生物試料(前記検体)に適用又は重層することによって接触させる。そのような手法の使用により、抗原の存在だけでなく、検査組織へのその分布も判定することが可能である。本発明を用いて、そのようなin situ検出を達成するために、染色手法などの多種多様な組織学的方法のいずれかを改変することができることに当業者は容易に気づく。
本発明に従う抗体を標識し、直接的に検出することができる方法の1つは、それを酵素に連結してエンザイムイムノアッセイ(EIA)で用いることによる。この酵素は、後に適当な基質に曝露させると、次に、例えば分光光度的、蛍光定量的又は視覚的手段によって検出することができる化学部分を生成するような方法で基質と反応する。検出可能に抗体を標識するために用いることができる酵素には、それらに限定されないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれる。検出は、酵素のために発色性基質を使用する比色法によって達成することができる。検出は、同じように調製された標準との基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成することもできる(この手法は、例えばニトロセルロース又はプラスチック支持体上の可溶性着色生成物及び非可溶性着色生成物の両方に適する)。
本発明において、適当な例では、抗原との抗体の反応を検出することは、異なるエピトープと特異的に、又は非特異的に、リガンド又は反応抗体と反応性である二次抗体又は他のリガンドの使用によってさらに助けることができる。
免疫蛍光測定法(IFA)、光度測定アッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ELISPOTアッセイ及びイムノブロッティングなどのエンザイムイムノアッセイは、特異抗体の検出を達成するために容易に適合させることができる。
用いてもよい他の検出システムには、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)カウアン株Iに由来するプロテインA、C群ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種(株26RP66)からのプロテインGの使用に基づくもの、又はビオチン−アビジン結合反応の使用を採用するシステムが含まれる。
本発明の抗体が使用されてもよい免疫酵素検出の他の方法は、ウエスタンブロット及びドットブロットである。試料は電気泳動によって分離され、ニトロセルロース膜又は他の適する支持体へ移される。試験する試料(例えば培養液上清、組織試料)を次に膜と接触させ、形成される免疫複合体の存在は、既に記載される方法によって検出される。この方法の変異形態では、精製された抗体を膜の上に線状又はスポット状に加えて結合させる。その後、試験する培養物の前後に膜を試料と接触させ、形成される免疫複合体は本明細書に記載される技術を用いて検出される。
抗体抗原複合体の存在は、凝集によって検出することもできる。本発明による抗体は、例えば均一な懸濁液を形成するラテックス粒子にコーティングするために用いてもよい。試料、例えば抗体によって認識される特異抗原を含む血清と混合されると、ラテックス粒子は凝集させられ、大きな凝集体の存在は視覚的に検出することができる。
イムノアッセイ技術による抗体の測定に適用できる免疫学的手法及びイムノアッセイ手法のレビューについては、Basic and Clinical Immunology[D.Stitesら(編)(1994)Basic and Clinical Immunology、8版]を参照。
抗原との抗体の反応を検出することは、当技術分野で公知である方法によって検出可能な部分で標識される抗体又はリガンドを用いて促進することができる。そのような検出可能な部分は、沈殿若しくは変色の視覚的検出、顕微鏡検査による視覚的検出、又は分光測定若しくは放射測定による自動検出などを可能にする。検出可能な部分の例には、フルオレセイン及びローダミン(蛍光顕微鏡検査法のため)、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼ(光学顕微鏡若しくは電子顕微鏡法及び生化学検出のため、並びに変色による生化学検出のため)、並びにビオチン−ストレプトアビジン(光学又は電子顕微鏡法のため)が含まれる。用いられる検出法及び部分は、例えば上のリストから、又はそのような選択に適用される標準基準による他の適する例から選択することができる[Harlow及びLane(1988):Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY]。
検出は、様々な他のイムノアッセイのいずれかを用いて達成することができる。例えば、抗体又は抗体断片を放射性標識することによって、放射免疫検定(RIA)を用いることにより抗原を検出することが可能である。RIAの優れた記載は、Work,T.S.らによるLaboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology、North Holland Publishing Company、NY(1978)に見出すことができ、特に、参照により本明細書に組み込まれる、Chard,T.による「放射免疫アッセイ及び関連技術の序論(An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques)」と題した章を参照されたい。放射性同位元素は、ガンマ/ベータカウンター若しくはシンチレーションカウンターの使用などの手段又はオートラジオグラフィーによって検出することができる。
本発明による抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識抗体が適当な波長の光に曝露されると、蛍光のために次にその存在を検出することができる。最も一般的に用いられる蛍光標識化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド及びフルオレサミンが含まれる。
抗体は、152E又はランタニド系列の他のものなどの蛍光発光金属を用いて検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(ETPA)などの金属キレート化基を用いて抗体に結合させることができる。
抗体は、それを化学発光化合物に結合することによって、検出可能に標識することもできる。化学発光標識した抗体の存在は、化学反応の過程で起こる発光の存在を検出することによって次に判定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルである。
同様に、本発明の抗体を標識するために、生物発光化合物を用いてもよい。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる生物系で見出される1種の化学発光である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって判定される。標識の目的に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
本発明の抗体分子は、「2部位」又は「サンドイッチ」アッセイとしても知られる免疫測定アッセイでの利用に適合させてもよい。代表的な免疫測定アッセイでは、非標識抗体(又は抗体断片)の一定量を固体の支持体又は担体に結合させ、固相抗体、抗原及び標識抗体の間で形成される三元複合体の検出及び/又は定量を可能にするために、検出可能に標識された可溶性抗体の一定量を加える。
本発明の抗体は、いくつかの異なる癌の画像化のために用いるために、放射性標識されてもよい。抗体の標識及び画像化技術による可視化のために、In111及びTc99のような放射性同位体が用いられる。放射免疫シンチグラフィー(RIS)は、腫瘍のin vivo画像化を可能にする機能的検査である。これは、放射性標識抗体及び標準のガンマシンチレーションカメラを用いて達成される。各患者は、全身の調査を受ける。体の調査は、完全長の前後全身収集として実施される。各場合において、病変部のサイズ及び場所の正確性を増加させるために、既知の又は疑われる疾患の部位の選択的な平面像(斜め及び側面の像を含む)が得られる。
本発明の抗体は、ヒト及びマウスの免疫系の異なる基本的な生理的状態及び疾患に関与する化合物のハイスループットスクリーニングのために、複合イムノアッセイで用いられてもよい。複合イムノアッセイは当業者に公知であり、とりわけ、Anderson及びDavison[Anderson及びDavison(1999)Am.J.Pathol.154巻:1017〜1022頁]によって記載されている。
したがって、上記のように、本発明は、対象での腫瘍又は癌の存在の検出又は表示のためのスクリーニングアッセイとして有用である。本明細書に記載される検出可能なマーカーに直接的にコンジュゲートした場合、抗体又はその断片は、癌細胞の存在を示すin vivoでの抗原(又はその断片)の検出で用いることができ、画像化技術の助けを借りると、診断対象への注射及び画像化による検出によって可視化することができる。
さらに、本発明によって提供される抗体は、例えば癌の治療においてそれ自体で又は組成物の一部として用いるために、細胞毒性薬にコンジュゲートしてもよい。
したがって、上記のように、本発明によって提供される抗体は、癌性又は前癌性の細胞を死滅させるために、毒性の薬剤のための送達系として適する。
別のさらなる態様では、本発明は、必要とする対象での疾患又は障害の治療のための方法であって、PRT5、PRT6、PRT7及びPRT8からなる群から選択されるタンパク質、又はその断片若しくは誘導体、又はそれを含む組成物を認識する抗体の治療的有効薬量を前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、炭水化物代謝障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患並びに筋肉障害からなる群から選択される。
さらに、本明細書で提示される抗体は、医薬の活性剤として用いられてもよく、又は細胞の治療を達成するために、毒性又は治療的な薬剤のための送達系であってもよい。
細胞毒性薬の一例は、増殖抑制薬剤分子であり、それは直接的に又はリンカーを通して、本発明の抗体のいずれか1つ、すなわち抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7又は抗PRT8に共有結合されてもよく、前記抗体は、例えば癌細胞中に豊富であるか、又はそれによって分泌されるプロテアーゼによって特異的に任意選択で切断可能でもよく、それによってプロテアーゼの作用によって前記癌細胞の中に、その近くに、又はそこに増殖抑制薬剤を優先的に放出する。
増殖抑制薬剤の例は、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、チオテパ、イホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メトトレキセート、5−フルオロウラシルシトシンアラビノシド、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イドルビシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、エピポドフィロトキシンビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンクレスチン、エトポシド、テニポシド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、副腎コルチコイド、エストロゲン、抗エストロゲン、プロゲスチン、アロマターゼ阻害薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、プロカルバジド、シスプラスチン、カルボプラチン、メルファラン、メトトレキセート及びクロラムブシルである。
代わりに、抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7又は抗PRT8抗体は、腫瘍に金属イオン(鉄又は亜鉛又はその他)などの特定の物質を運ぶことができ、したがって、腫瘍に毒性物質(放射性又は細胞傷害性化学物質、すなわち、前記のようにリシンのような毒素又は細胞傷害性アルキル化剤又は細胞傷害性プロドラッグ)を送達する手段又は担体の役目を果たす。抗体と毒素又は放射性同位体との結合は、化学的であってよい。直接連結された毒素の例は、ドキソルビシン、クロラムブシル、リシン、シュードモナス外毒素などである。抗原及び毒素への二重特異性を有するハイブリッド毒素を生成することができる。そのような二価の分子は、腫瘍に結合し、腫瘍に細胞毒性薬を送達するか、又はT3−Ti受容体複合体への結合など、細胞傷害性リンパ球に結合して活性化する役目を果たすことができる。
本発明は、既に診断されている癌の予後診断の評価で用いることができる方法も提供する。詳細には、治療の前、中及び後の経過観察が重要である。代わりに、特に試験される試料が、患者から得られる最も「患者フレンドリーな」種類の試料の1つである血液試料である場合、前記方法は癌検診にも適当である。
したがって、別のさらなる態様では、本発明は、対象の疾患又は障害の診断のための方法であって、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、炭水化物代謝障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、内分泌性疾患並びに筋肉障害からなる群から選択され、
a.前記対象からの試料を提供するステップと、
b.前記試料を、抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7及び抗PRT8抗体からなる群から選択される本発明による抗体、又はそれを含む組成物と接触させるステップと、
c.検出手段を通して前記少なくとも1つの抗体及びその特異抗原の間の複合体の形成を検出するステップとを含み、
それによって複合体の検出は前記対象が癌を起こしていることを示す方法を提供する。
したがって、本発明は、さらなる態様で、試料中の癌の診断のための方法であって、対象からの試料中のPRT7ポリペプチド又はそれを含むタンパク質の存在を検出することを含み、それによって、対照より高いPRT7レベルを提示する試料は、癌の存在を示す方法も提供する。
特定の一実施形態では、前記癌は、肺癌又はすい臓癌である。
本明細書で対象と称すとき、前記対象はヒト又はヒト以外の哺乳動物であってよい。ヒト以外の哺乳動物には、それらに限定されないが、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモットなどが含まれる。通常、対象はヒト、特に患者又は健康な個体である。
本発明の診断法の一実施形態では、前記試料は血液試料である。
本発明の診断法の別の実施形態では、前記試料は前記癌の生検材料である。
したがって、本発明は、癌治療法の効力を監視する方法も提供する。治療の効力を監視することは、癌治療法の予後診断を評価するために必須である。したがって、本明細書で提示される診断の方法は、癌治療法の前、間又は後に対象で実行してもよく、結果の分析は、正常集団での同じ複合体のパターンと比較して各時点で得られる(少なくとも2つの抗原抗体複合体の間の関係のパターン)。正常集団のものと最も近い対象のパターンが、治療成功を示す。
本明細書で称されるように、癌治療法は、放射線療法、化学療法などを含む、その疾患を根絶するためのあらゆる治療法に関連する。
本発明を記載するために本明細書で用いるように、「腫瘍」、「癌」、「悪性の増殖性障害」及び「悪性腫瘍」の全ては、組織又は器官の過形成に同等に関連する。その組織がリンパ系又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は循環細胞の非固形腫瘍を含むことができる。他の組織又は器官の悪性腫瘍は、固形腫瘍を生成することができる。一般に、非固形腫瘍及び固形腫瘍は、例えば、癌、黒色腫、白血病及びリンパ腫である。
癌及び腫瘍の種類の非限定例には、副腎皮質癌;膀胱癌;結腸癌;結直腸癌;直腸癌;神経外胚葉及び松果体の癌;小児期脳幹神経膠腫;小児期小脳系神経膠星状細胞腫;小児期脳神経膠星状細胞腫;小児期髄芽細胞腫;小児期視覚路神経膠腫;髄膜腫;混合性神経膠腫;乏突起神経膠腫;神経膠星状細胞腫;脳室上衣細胞腫;下垂体腺腫;聴神経腫;脊柱傍の悪性奇形腫;乳癌;男性乳癌;乳腺新生物;卵巣癌;カルチノイド腫瘍;子宮頸癌;子宮癌;子宮内膜癌;膣癌;陰門癌;妊娠期栄養膜の癌;卵管癌;白血病、例えば骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、成熟による急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、好塩基球増加を伴う急性非リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病;急性骨髄性白血病;急性単球性白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病、リンパ性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病;リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病);悪性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫;バーキットリンパ腫;骨髄増殖性の疾患;良性髄膜腫;唾液腺混合腫瘍;唇及び口腔の腫瘍;咽頭;喉頭、副鼻腔;結腸アデノーマ;腺管癌;まぶたの癌;結膜癌;涙腺癌;腎細胞癌;転移性腺癌;腺癌、例えば小細胞肺癌、腎臓、子宮、前立腺;扁平上皮癌;絨毛上皮腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;肉腫;横紋筋肉腫;軟部組織肉腫;カポジ肉腫;ユーイング肉腫;骨肉腫;外骨格の粘液様軟骨肉腫;子宮肉腫;眼窩の肉腫;脳、脊髄、脈管系;血管肉腫;ウィルムの腫瘍;ファンコニ貧血;ランゲルハンス細胞組織球増殖症;腎臓の悪性杆状腫瘍;肝癌;内分泌癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;胃癌;胃腸の癌;性尿器の癌;神経膠腫;婦人科癌;頭頚部癌;肝細胞癌;下咽頭癌;すい島細胞癌;腎臓癌;喉頭癌;肺癌;皮膚癌;非黒色腫皮膚癌;黒色腫;悪性黒色腫;結膜の悪性黒色腫;ブドウ膜の悪性黒色腫;中皮腫;骨髄腫、多発性;鼻咽頭癌;食道癌;すい臓癌;下垂体癌;前立腺癌;胃癌;精巣癌;胸腺癌;甲状腺癌;移行細胞癌;栄養膜の癌;精巣及び卵巣の未分化胚細胞腫が含まれる。
本明細書で定義されるように、「試料」は、対象、一般に哺乳動物の対象から得られる任意の試料を指す。生体試料の例には、体液及び組織検体が含まれる。試料の源泉は、生理的媒体、例えば血液、血清、血漿、母乳、膿、脳脊髄液、スワブ、組織削り屑、洗浄水、尿、糞便、体腔の洗浄から得られるリンス液、痰、人体の部位(のど、膣、耳、目、皮膚、痛む組織、例えばリンパ節など)からとられるスワブに由来してもよい。組織検体には、脾臓、リンパ節及びあらゆるリンパ球含有組織の生検材料が含まれる。
本明細書及び請求項中の用語「試料」は、本明細書でその最も広い意味で用いられる。
一般的に、先験的に液体でないスワブ及び試料は液体媒体と接触させ、それは次に検出剤と接触させる。
本発明の特定の一実施形態では、本発明の方法で用いられる前記試料は、体液又は培養由来試料のいずれか1つである。
培養由来の試料は、細胞抽出物、媒体試料、又は体液の培養、例えば血液試料の培養であってよい。
「全血」は、動物又はヒトから収集される血液を意味する。全血は、凝集及び凝固を予防するヘパリン、EDTA、クエン酸塩又は他の任意の物質で収集されてもよい。
生体試料は、ニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞、細胞粒子又は可溶タンパク質を固定化することが可能である他の固体支持体若しくは担体で処理されてもよい。支持体又は担体は、適する緩衝液で次に洗浄し、上記したように、本発明による検出可能に標識された抗体で処理してもよい。次に、未結合の抗体を除去するために、固相支持体又は担体をもう一度緩衝液で洗浄してもよい。前記固体支持体又は担体上に結合した抗原又は標識の量は、従来の手段によって次に検出することができる。
「固相支持体」、「固相担体」、「固体支持体」、「固体担体」、「支持体」又は「担体」は、抗原又は抗体を結合することが可能なあらゆる支持体又は担体を意図する。周知の支持体又は担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然及び改変されたセルロース、ポリアクリルアミド並びに磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本発明の目的のために、ある程度可溶性であるか又は不溶性であってよい。結合分子が抗原又は抗体に結合することが可能な限り、支持材は、実質的にあらゆる可能な構造的構成を有してもよい。したがって、支持体又は担体の構造は、ビーズの場合のように球状でも、試験管の内面又はロッドの外面の場合のように円筒形でもよい。同じ試験管内で異なる抗原のために異なる担体を用いてもよい。代わりに、表面はシート、検査片のように平らでよい。具体的な支持体又は担体には、ポリスチレンビーズが含まれる。当業者は、抗体又は抗原の結合に適する他の多くの担体を承知するか、又は通常の実験を用いてそれを確かめることができる。
特定の状況に慣例であるか必要であるように、洗浄、撹拌、振とう、ろ過などの他のステップをアッセイに加えてもよい。
本明細書で定義されるように、「培地」は、それらに限定されないが、好ましくは適当な抗生物質及びグルタミン、任意選択で他の添加剤、例えば抗かび剤、非必須アミノ酸、DTT、ピルビン酸ナトリウムなどが補われた、ウシ胎仔(ウシ)血清を含むか含まないRPMI1640を含め、本発明を実施するために試料を持続させるために用いることができる任意の培地を意味する。本発明の実施で用いられてもよい他の培地には、それらに限定されないが、イーグル、ダルベッコ、マッコイ、培地199、ウェイマウス培地、及び補助剤を含むか含まない無血清培地が含まれる。別の実施形態では、刺激剤は培地を含まない。
本発明は、それを必要とする対象での疾患又は障害の治療方法であって、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、並びに炭水化物代謝障害からなる群から選択され、前記対象に本発明のポリペプチド又は抗体の治療的有効投薬量を投与することを含む方法も提供する。詳細には、前記ポリペプチド又は抗体は、治療のために用いられる場合、細胞毒性薬にコンジュゲートされるか、又は標的細胞若しくは組織への毒性物質の送達のための担体としての役目を果たす。この関係において、標的細胞は前記疾患又は障害と関連する細胞である。
下記の実施例で、本発明者らは、PRT7が特定の種類の癌で上昇することを示した。詳細には、発明者らは、PRT7がすい臓癌又は肺癌の男性患者で有意に上昇することを証明した。
したがって、本発明は、試料中の癌の診断のための方法であって、対象からの試料中のPRT7ポリペプチド又はそれを含むタンパク質の存在を検出することを含み、それによって、対照より高いPRT7レベルを提示する試料は癌の存在を示す方法を提供する。
別のさらなる態様では、本発明は、疾患又は障害の診断及び/又は治療効果のモニタリング及び/又は予後診断の評価のための診断キットであって、前記疾患又は障害は、免疫学的コンポーネント又は病因を有する疾患、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植及び自己免疫疾患、生殖能力関連の疾患、並びに炭水化物代謝障害からなる群から選択され、次のコンポーネント:
a.本発明の明細書に記載される抗体又はそれを含む組成物、及び
b.試料中の抗原の存在の検出を実施するための説明書を含み、前記抗原は前記抗体によって特異的に認識されるキットを提供する。
前記キットは、次のコンポーネントの少なくとも1つをさらに含むことができる:
a.試験する試料を収集するための少なくとも1つの手段;
b.前記抗体による前記抗原の前記認識の検出のために必要な少なくとも1つの試薬;及び
c.少なくとも1つの対照試料。
本発明によって提供されるキットの1つの具体例は、PRT7ポリペプチド、その断片若しくは誘導体、又はそれを含むタンパク質を特異的に認識する抗体を含み、癌の診断のために有効であるキットである。
対象はヒト又はヒト以外の哺乳動物であってよい。通常、対象はヒト患者、又は健康な個体である。
一実施形態では、そのようないかなるキットも、例えば、固体支持体、本発明で定義される少なくとも1つの抗体、及び適宜任意選択で二次抗体を含むELISAキットのような、抗体(又は認識する剤)捕捉アッセイキットである。キットは、上記のような検出可能な部分、酵素基質及び呈色試薬などの、他のいかなる必要な試薬もさらに任意選択で含むことができる。代わりに、抗体捕捉診断キットは、本明細書に記載されるコンポーネント及び試薬を一般に含むイムノブロットキットである。本発明の診断キットに含まれる特定の試薬及び他のコンポーネントは、キットで実施される特定の診断法に従って当技術分野で利用できるものから選択されてもよい。そのようなキットは、対象から得られる、培養前及び/又は培養後の生体試料、例えば組織又は体液、特に全血、PBMC若しくは白血球中の抗体を検出するために用いることができる。
本発明の診断法で適する手段と指摘される場合、前記適する手段は、中でも免疫親和性手法、酵素アッセイ、又は構造的特徴を検出するための手段であってもよい。
前記適する手段が免疫親和性手法である場合、前記手法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降反応、FACS、又は本発明に記載の抗体を利用する他の任意の免疫親和性手法のいずれか1つである。
特定の一実施形態では、検出は捕捉ELISAで実行される。
捕捉ELISA(別名「サンドイッチ」ELISA)は、ピコグラムからマイクログラムの量の物質(ホルモン、細胞シグナル伝達化学物質、感染症抗原及びサイトカインなど)を定量化するための、高感度アッセイである。この種のELISAは、分析する物質が、濃度が低すぎてポリスチレンマイクロタイタープレートに結合しない(細胞培養上清中のタンパク質など)か、又はプラスチックにうまく結合しない(小有機分子など)場合に特に求められる。捕捉抗体、試料、対照、及び検出抗体のために最適な希釈、並びにインキュベーション時間は経験的に決定され、多大な滴定を必要とすることがある。理想的には、酵素標識検出抗体が用いられるであろう。しかし、検出抗体が非標識である場合、二次抗体はコーティング抗体とも、試料とも交差反応しないはずである。適当な陰性及び陽性対照も、含まれるべきである。
用いる捕捉又はコーティング抗体は、炭酸−重炭酸緩衝液又はPBSで希釈するべきである。捕捉抗体は、一般的に0.2〜10μg/mlでプレーティングされる。親和性精製抗体を用いるか、最低限でIgG分画を用いることが好ましい。一般に、試料は1ウェルにつき10ng〜10μgの範囲(アッセイの感度が高いほど、より少ない試料を必要とする)で、PBSに希釈される。
ここに明細書で用いるように、用語「検出可能な部分」は、その存在、不在又はレベルを直接的又は間接的に監視することができる、任意の原子、分子又はその一部を指す。1つの例は、放射性同位体を含む。他の例には、(i)発色又は光放射(発光)反応を触媒することができる酵素、及び(ii)蛍光団が含まれる。例えば蛍光団の場合のように、検出可能な部分がそれ自身検出可能であるならば、検出可能な部分の検出は直接的であってよい。代わりに、検出可能な部分の検出は、間接的であってもよい。後者の場合、検出可能な部分と反応する、それ自身が直接的に検出可能である第二の部分が好ましくは使用される。検出可能な部分は、抗体に固有であってもよい。例えば、抗体の定常領域は、直接検出可能な部分を有する二次抗体が特異的に結合することができる、間接的な検出可能な部分の役目を果たすことができる。
したがって、二次抗体は、本発明の方法での抗体の検出のための特に適する手段である。この二次抗体は、それ自体が検出可能な部分にコンジュゲートされてもよい。本発明に従う抗体を検出可能に標識することができる方法の1つは、それを酵素に連結することによる。この酵素は、後に適当な基質に曝露させると、次に、例えば分光光度的、蛍光定量的又は視覚的手段によって検出することができる化学部分を生成するような方法で基質と反応する。検出可能に抗体を標識するために用いることができる酵素には、それらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
検出は、酵素のために発色性基質を使用する比色法によって達成することができる。検出は、同じように調製された標準と比較した、基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成することもできる。
第一の抗体が結合する固体支持体は、任意の水不溶性、水非懸濁性の固体支持体であってよい。適する固体支持体の例には、例えばポリスチレンの大きなビーズ、ろ紙、試験管及びマイクロタイタープレートが含まれる。第一の抗体は、共有結合又は吸着によって固体支持体に結合してよい。固体支持体を使用することの利点は、固液相の分離のために遠心工程が必要とされないことである。
上で指摘される固体支持体には、ポリマー、例えばポリスチレン、アガロース、セファロース、セルロース、ガラスビーズ及びセルロース若しくは他のポリマーの磁化可能な粒子が含まれてもよい。固体支持体は、大きいか小さなビーズ若しくは粒子、チューブ、プレートの形、又は他の形であってよい。
固体支持体として、その内壁が第一の抗体、例えば本発明のために発明者らによって調製される抗PRT5、抗PRT6、抗PRT7若しくは抗PRT8抗体、又はその任意の断片若しくは誘導体でコーティングされる、マイクロタイタープレートの試験管が好ましくは利用される。
本発明の診断法によって用いられる「判定する」への言及は、特定の試料に存在するバイオマーカーの量を推定、定量化、計算すること、さもなければ導くことを含む。これは、例えば検出可能な生成物の出現、例えば基質レベルの任意の検出可能な変化、又は生成物の出現若しくは基質の消滅速度の任意の変化であってよいエンドポイント指標を測定することによって、或いは本発明によって記載されるバイオマーカーに結合する抗体の量を測定することによって達成されてもよい。
前記試験キットの全てにおいて、試験試料を収集するための前記手段は、スワブ、ピペット又は類似した収集手段であってよく、前記インキュベーション手段は、プレート、試験管、ガラス若しくはプラスチック表面、ウェル、又は吸収紙の細片の上に置かれる液体若しくは半固体の培地、或いは類似した手段であってよい。
試験がスキャナ上で実行され、結果がリアルタイムでコンピュータに送られることを可能にするためにも、キットの任意のバージョンが設計されていることを理解するべきである。これは、全情報を全関係者に直接送信することができること、及びいかなる将来の参照のためにもそれが完全に保存されることを保証する。
キットの別の実施形態では、前記試料は、体液及び培養由来の試料のいずれか1つである。
本発明の抗体と接触させる試料は、アレイに配列されてもよい。
本発明の方法及びキットで用いられる用語「アレイ」は、認識剤、すなわち本発明の抗体の少なくとも1つの「番地指定された」立体配置を指す。アレイの各「番地」は、認識剤を含む所定の特異的空間領域である。例えば、アレイは、各々異なる抗体を含む複数の容器(試験管)、プレート、マイクロプレート中のマイクロウェルであってよい。アレイは、互いに異なる領域(ドット、線、カラム)に異なる既知の認識剤、例えば抗体を保持する任意の固体支持体であってもよい。アレイは、好ましくは一体型の適当な対照、例えば試料を含まない領域、抗体を含まない領域、いずれも含まない領域、すなわち溶媒及び試薬だけを含むもの、並びに抗体によって認識される合成であるか単離されたタンパク質又はペプチドを含む領域(陽性対照)を含む。本発明のアレイのために用いられる固体支持体は、本発明によって提供されるキットに関連して、以下の本明細書でさらに詳細に記載される。
本発明のキット用に適する固体支持体は、一般的に実質的に液相に不溶性である。本発明の固体支持体は、特定の種類の支持体に限定されない。むしろ、多数の支持体が利用でき、それらは当業者に公知である。したがって、有用な固体支持体には、固体及び半固体のマトリックス、例えばエーロゲル及びヒドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜をコーティングしたバイオチップを含む)、微流動チップ、シリコンチップ、マルチウェルプレート(マイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも呼ばれる)、膜、フィルター、伝導性及び不伝導性金属、ガラス(顕微鏡スライドを含む)並びに磁性支持体が含まれる。有用な固体支持体のより具体的な例には、シリカゲル、高分子膜、粒子、誘導体化されたプラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲル、多糖、例えばセファロース、ナイロン、ラテックスビーズ、磁性ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、デンプンなどが含まれる。
本発明の方法及びキットのいずれかに含まれる試薬のいずれも、上記の固体支持材のいずれかに包埋、連結、接続、固着、設置又は融合される試薬として提供されてよいことをさらに記すべきである。
本発明の方法及びキットにより用いられるいずれの抗体も、本発明の抗体に由来するポリクローナル、モノクローナル、組換え体、例えばキメラ、又は一本鎖の抗体(ScFv)であってもよいことを記すべきである。
本発明は、その内容は本明細書の開示の中に含まれると解釈されるべき請求項によって定義される。
開示及び記載されているが、そのような工程段階及び材料はいくぶん変更されることがあるので、本発明は、本明細書に開示される特定の実施例、工程段階及び材料に限定されないことを理解するべきである。本発明の範囲は添付の請求項及びその同等物によってのみ限定されるので、本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を記載することだけのために用いられ、限定するものではないことも理解されたい。
本明細書と添付の請求項で用いられているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、明らかに別の指示がない限り複数形を含むことに注意しなければならない。
以下の本明細書及び請求項全体において、文脈上特に必要がない限り、語「含む(comprise)」、並びに例えば「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変異形は、表示される整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群が含まれることを意味するが、他のいかなる整数若しくは段階又は整数若しくは段階の群の除外も意味するものではないことが理解される。
以下の実施例は、本発明の態様の実施において発明者らによって使用される技術を代表するものである。これらの技術は本発明の実施のための好ましい実施形態の例であるが、本開示を考慮して、本発明の適用範囲から逸脱することなく多くの改変を加えることができることを当業者は認識することを理解するべきである。
特記されていない限り、本明細書で用いられる全ての専門用語及び科学用語は、本発明が関連する分野の技術者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
分子生物学の一般方法
分子生物学分野のいくつかの方法は当分野の技術者に周知であるので、本明細書で詳述されない。そのような方法には、PCR、cDNAの発現、ヒト細胞のトランスフェクションなどが含まれる。そのような方法を記載している教科書は、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ISBN:0879693096;F.M.Ausubel(1988)Current Protocols in Molecular Biology、ISBN:047150338X、John Wiley & Sons,Inc.である。さらに、例えばウエスタンブロットのようないくつかの免疫学的技術は当分野の技術者に周知であるので、それぞれの場合に本明細書で詳細に記載されていない。例えばHarlow及びLane(1988)Antibodies:a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratoryを参照。
ELISA一般プロトコル
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、容易に分析される酵素に結合させた抗体又は抗原を用いて、抗体の特異性を簡単な酵素アッセイの感度と組み合わせる。ELISAは、抗原又は抗体濃度の有用な測定を提供することができる。ELISAは、5段階手法である:1)PBSに希釈した抗原でマイクロタイタープレートウェルをコーティングし、4℃で一晩インキュベートし、洗浄する;2)偽陽性結果を防止するためにPBS中のBSA/FCSで全ての未結合部位をブロックし、1時間インキュベートし、洗浄する;3)抗体をウェルに加える、1時間インキュベートし、洗浄する;4)酵素にコンジュゲートさせた抗ヒトIgGを加え、1時間インキュベートし、洗浄する;5)基質を酵素と反応させて着色した生成物を生成する、したがって陽性反応を示す。
FACSプロトコル
1.収穫し、細胞を洗浄し、氷冷PBS、10%FCS、1%アジ化ナトリウムで1〜5×106細胞/mlの濃度に細胞懸濁液を調節する。
2.0.1〜10μg/mlの一次標識抗体を加える。必要に応じて、3%BSA/PBSで希釈溶液を作製するべきである
3.室温又は4℃で少なくとも30分間インキュベートする。
4.400gで5分間の遠心によって細胞を3回洗浄し、500μl〜1mlの氷冷PBS、10%FCS、1%アジ化ナトリウムでそれらを再懸濁する。
5.フローサイトメーターで細胞を分析する。
ELISA手順:
1.較正曲線:2000pg/ml〜31pg/mlのタンパク質の連続希釈液をPBS(Biological industries、カタログ番号02−023−5A)で調製する。
2.37℃の浴槽で試料を速やかに解凍する。
3.試料を加える:Maxisorp96ウェルプレート(NUNC、F96 Maxisorp、カタログ番号442404)に、各血液試料(希釈なし)の70μlの2反復及び標準試料の70μlの3反復を加える。振盪させながら4℃で一晩インキュベートする。
4.洗浄:液体を除去し、マルチピペットを用いて、PBS中の300μlの0.05%TW−20(Amresco、カタログ番号0777−1L)で4回プレートを洗浄する。
5.ブロックする:PBS中で5%BSA(MP biomedicals、カタログ番号160069)を希釈する。各ウェルに300μlのブロック緩衝液を加える。振盪させながら室温で1時間インキュベートする。
6.洗浄:段階4を繰り返す。
7.検出:希釈剤(PBS中の0.05%TW−20、0.1%BSA)で、特異抗体(親和性精製)を1:250に希釈する。各ウェルに100μlの検出抗体を加える。振盪させながら室温で2時間インキュベートする。
8.洗浄:上の段階4を繰り返す。
9.HRPコンジュゲート:希釈剤でヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート抗体(Cell signaling、カタログ番号7074)を1:200に希釈する。各ウェルに100μlのHRPコンジュゲートを加える。振盪させながら室温で30分間インキュベートする。
10.洗浄:上の段階4を繰り返す、4回の代わりに5回の洗浄だけ。
11.発色:各ウェルに100μlのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ基質、Millipore、カタログ番号ES001−500ML)を加え、青い発色を待ち、次に50μlの2N H2SO4(Frutarom、カタログ番号5552540)を加える。
12.マイクロプレートリーダーで、ウェルの吸光度を450nmで検査する。
ポリクローナル抗体の調製
ポリクローナル抗体の調製のための標準プロトコルを用いて、ウサギでポリクローナル抗体を生成した。
PRT5に対するポリクローナル抗体は、前記ポリペプチドの最後の14アミノ酸を含むPRT5のC末端断片を抗原として用いて、ウサギで生成された。この断片は、本明細書では配列番号17で表される。
PRT6に対するポリクローナル抗体は、前記ポリペプチドの最後の14アミノ酸を含むPRT6のC末端断片を抗原として用いて、ウサギで生成された。この断片は、本明細書では配列番号18で表される。
PRT7に対するポリクローナル抗体は、前記ポリペプチドの最後の14アミノ酸を含むPRT7のC末端断片を抗原として用いて、ウサギで生成された。この断片は、本明細書では配列番号19で表される。
PRT8に対するポリクローナル抗体は、前記ポリペプチドの最後の14アミノ酸を含むPRT8のC末端断片を抗原として用いて、ウサギで生成された。この断片は、本明細書では配列番号20で表される。
いくつかの免疫学的技術は当分野の技術者に周知であるので、それぞれの場合に本明細書で詳細に記載されておらず、これらは、例えばHarlow及びLane(1988)Antibodies:a laboratory manual、Cold Spring Harbour Laboratoryに詳述されている。
逆転写酵素PCR(RT−PCR)
単離された新規タンパク質の発現パターンを確立するために、RT−PCR分析を様々な組織で実施した。適用したPCR条件は、95℃で2分間、続いて1サイクルが95℃で45秒間、59℃で45秒間及び72℃で5分間のものを40サイクル、最終サイクルが72℃で5分間であった。
配列
本発明で言及される全ての配列を、下の表1に提示する。
(例1)PRT5の特徴付け
新規cDNAをヒトcDNAライブラリーから単離し、そのタンパク質生成物をPRT5と名付けた。
RT−PCR分析のために以下のプライマーを用いた:
PCRの生成物は、配列決定をされた。PCR生成物をアガロースゲルで分析し、Cyber Green(Invitrogene)で染色し、PCR生成物の強度はBioRad ChemiDocアナライザーを用いて評価した。結果を下の表2に提示するが、すい臓及び精巣で高度な発現を、さらには脾臓、卵巣及び小腸で識別可能な発現を実証している。
(例2)C57B1マウスのグルコースレベルに及ぼすPRT5投与の影響
上に示されるように、すい臓でのPRT5の高発現は、PRT5がグルコース代謝に関与するかもしれないことを示唆した。したがって、この実験の目標は、グルコースのレベル及びターンオーバーに及ぼすPRT5投与の影響を検証することであった。
手順:
7週齢雌C57B1マウス(Harlan Laboratories Ltd.、Jerusalem、Israelから購入)に以下のものを注射した:
・生理食塩水−3匹のマウス×4
・1μg/マウスのPRT5−3匹のマウス×4
・5μg/マウスのPRT5−3匹のマウス×4
マウスを4群に分けた。第一の群は絶食させて、注射の1日後に血糖レベルを検査した(Accu−Chek(登録商標)Performa装置、Roche Diagnosticsを用いて);第二群−注射の2日後、第三群−注射の3日後、及び第四群−注射の4日後。絶食は一晩(グルコース注射の前の晩)実行し、その翌日に2mg/kgのグルコースを各マウスに注射した。グルコースレベルの時間経過分析は、0、30、90、120、150及び240分経過後にグルコースレベルを検査して実施した。PRT5投与及びグルコース測定のためのプロトコルは、下の表3に提示される。
結果を、図1A〜1Dに提示する。全てのマウスで、グルコースレベルは、注射後の最初の30分でピークに達した。しかし、PRT5投与の2日後から意外な結果が観察され、そこでは、1μg/kg又は5μg/kgを投与されたマウスのグルコースレベルは、生理食塩水を投与されたマウスのグルコースレベルより有意に低かった。この影響は、グルコースレベルが測定された最終日、実験の5日目、PRT5の注射の4日後まで繰り返された。
PRT5処理したマウスの骨格筋で、PRT5はインスリン受容体のレベルを増加させることが可能であることも発明者らは観察した(データ示さず)。
(例3)健康人及びII型糖尿病患者のヒト血液でのPRT5レベル
この実験の狙いは、健康個体及びII型糖尿病患者個体でPRT5レベルを比較することであった。
試料:
以下の通り、50〜80歳の男性及び女性からの20個のヒト血液血清試料が、Bioreclamation,Inc.から得られた:
・健康個体(男性5人/女性5人)からの10個の試料
・II型糖尿病患者(男性6人/女性4人)からの10個の試料
試料は、−80℃未満に保たれた。試料の詳細は、下の表4a及び4bに示す。全ての試料は、白色人種の個体からのものであった。
PRT5レベルは、抗PRT5抗体を用いてELISAによって検出された。ELISA手法は、上記の通りであった。血液試料は希釈せず、抗PRT5抗体は、希釈剤(PBS中の0.05%Tween20、0.1%BSA)で1:250に希釈した。較正曲線のために、4000pg/ml〜62.5pg/mlのPRT5の連続希釈をPBSで調製した。
結果を図2A〜2Bに示す。特に図2Bに示されるように、PRT5のレベルはII型糖尿病試料で有意に低減されている。
ここに示す結果は、上の例2に記載される結果と一緒に、PRT5がグルコース代謝に、特にその調節に深く関与することを強く示唆する。最も重要なことに、二組の結果は、糖尿病の治療のための治療薬としてのPRT5の使用を支持する。
(例4)PRT6の特徴付け
第二の新規cDNAをヒトcDNAライブラリーから単離し、そのタンパク質生成物をPRT6と名付けた。
RT−PCR分析のために以下のプライマーを用いた:
上の例1の場合のように、組織発現分析はRT−PCRを用いて実施され、得られた結果は下の表5に要約した。基本的に、PRT6の発現は、精巣で排他的に見出された。
(例5)雄性Balb/Cテストステロンレベルに及ぼすPRT6投与の影響
表5に示す、精巣でのPRT6の高発現は、PRT6がテストステロン発現に関与するかもしれないことを示唆した。したがって、この実験の目標は、テストステロンレベルに及ぼすPRT6投与の影響を検証することであった。
手順:
2群のBalb/Cマウスを用いた:
・3〜4週齢雄性Balb/C−テストステロン陰性対照−18匹のマウス
・7〜8週齢雄性Balb/Cマウス−18匹のマウス
各群を、3亜群(各々6匹のマウス)に分けた。4日間の間毎日、以下の1つの200μlを各群に注射した:
・再蒸留水(DDW)中の4%DMSO
・0.5μg/kgのPRT6(DDWに希釈する)
・5μg/kgのPRT6(DDWに希釈する)
4日後に、血清をマウスから抽出し、テストステロンレベルを検査した。テストステロンの測定は、R&D Systems Testosterone Immunoassay(R&D Systemsカタログ番号KGE010)を用いて行った。このアッセイは、競合的結合技術に基づく。テストステロンに特異的なモノクローナル抗体は、マイクロプレートにコーティングされたヤギ抗マウス抗体に結合する。過剰なモノクローナル抗体を除去するために洗浄した後、試料に存在するテストステロンは、モノクローナル抗体上の部位をめぐって固定量の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識テストステロンと競合する。これの後に、過剰なコンジュゲート及び未結合の試料を除去するために、さらに洗浄する。基質溶液をウェルに加えて、結合した酵素活性を判定する。発色を停止させ、吸光度を450nmで読みとる。色の強度は、試料中のテストステロン濃度に反比例する。
結果を図3A〜3Bに提示する。興味深いことに、PRT6で処理されたマウスは、テストステロンレベルの有意な増加を示した。5μg/kgの投与の影響は、0.5μg/kgの投与後のものよりずっと顕著であったが、両治療ともテストステロンレベルの増加をもたらした。
(例6)PRT7の特徴付け
第三の新規cDNAをヒトcDNAライブラリーから単離し、そのタンパク質生成物をPRT7と名付けた。
RT−PCR分析のために以下のプライマーを用いた:
上の例1の場合のように、組織発現分析はRT−PCRを用いて実施し、得られた結果は下の表6に要約した。基本的に、PRT7の顕著な発現は、胎児の脳で、さらに骨格筋及び肝臓でも見出された。
(例7)健康な個体及びすい臓癌又は肺癌患者のヒト血液中のPRT7レベル
この実験は、健康な個体並びにすい臓癌又は肺癌患者からの血液中のPRT7のレベルを検証することを目指した。
試料:
−すい臓癌(I):
以下の通り、19個のヒト血液血清試料が、Bioreclamation,Inc.から得られた:
・健康:男性5人/女性4人
・すい臓癌:男性5人/女性5人
−すい臓癌(II):
以下の通り、10個のヒト男性血液血清試料が、Bioreclamation,Inc.から得られた:
・健康5人
・すい臓癌5人
−肺癌:
男性及び女性からの20個のヒト(男性及び女性)血液血清試料が、Bioreclamation,Inc.から得られた:
・健康10人(男性5人/女性5人)
・肺癌10人(男性5人/女性5人)
試料は、−80℃未満に保たれた。試料の詳細は、下の表7a〜7b、8a〜8b及び9a〜9bに示す。全ての試料は、白色人種の個体からのものであった。
PRT7レベルは、抗PRT7抗体を用いてELISAによって検出された。ELISA手法は、上記の通りであった。血液試料はPBSで1:3に希釈し、抗PRT7抗体は、希釈剤(PBS中の0.05%Tween20、0.1%BSA)で1:200に希釈した。較正曲線のために、4000pg/ml〜62.5pg/mlのPRT7の連続希釈をPBSで調製した。
結果を図4A〜4Fに示す。意外にも、PRT7レベルは、男性のすい臓癌患者からの試料で有意に高かった(図4B〜4D)が、女性からの試料ではそうでなかった(図4A〜4B)。同様に、PRT7レベルは、男性の肺癌患者からの試料で有意に上昇していたが、女性からの試料ではそうでなかった(図4E〜4F)。
これらの結果は、PRT7が男性ですい臓癌及び肺癌の両方のマーカーとなることができ、したがって、男性ですい臓癌及び肺癌の検出のための診断ツールとして用いられてもよいことを示す。
最も意外なことは、発明者らはPRT7がp53の発現を誘導することができることをさらに観察した[データ示さず]。
(例8)PRT8の特徴付け
第四の新規cDNAをヒトcDNAライブラリーから単離し、そのタンパク質生成物をPRT8と名付けた。
RT−PCR分析のために以下のプライマーを用いた:
上の例1の場合のように、組織発現分析はRT−PCRを用いて実施し、得られた結果は下の表10に要約した。基本的に、PRT8の発現は、精巣、肝臓及びすい臓で見出された。
(例9)C57B1マウスのグルコースレベルに及ぼすPRT8投与の影響
すい臓でのPRT8の発現は、PRT8がすい臓の機能、特にグルコース代謝に関与する可能性を示唆した。したがって、グルコースレベルに及ぼすPRT8投与の影響を調べた。
手順:
7週齢雌C57B1マウス(Harlan Laboratories Ltd.、Jerusalem、Israelから購入)に以下のものを注射した:
・生理食塩水−3匹のマウス×2群
・1μg/マウスのPRT8−3匹のマウス×2群
・10μg/マウスのPRT8−3匹のマウス×2群
1日目に全てのマウスにPRT8(又は生理食塩水)を注射した。2日目に第一の群を絶食させ、3日目に血糖レベルを検査した(Accu−Chek(登録商標)Performa装置、Roche Diagnosticsを用いて)。第二の群を絶食させ、注射の3日後に血糖レベルを検査した。絶食は一晩(グルコース注射の前の晩)実行し、その翌日に2mg/kgのグルコースを各マウスに注射した。グルコースレベルの時間経過分析は、グルコース注射から0、30、60及び120分経過後にグルコースレベルを検査して実施した。
結果は、図5A〜5Bに示す。全ての処理で、グルコースレベルは、注射後の最初の30分でピークに達した。しかし、PRT8投与の2日後から意外な結果が観察され、そこでは、1μg/kg又は10μg/kgのPRT8を投与されたマウスのグルコースレベルは、生理食塩水を投与されたマウスのグルコースレベルより有意に低かった。グルコースレベルの分析がPRT8注射から3日後に行われたとき、この影響はより明白であった。これらの結果は、PRT8がグルコース代謝に深く関与し、その調節に用いることができることを強く示唆する。