JP5830247B2 - ラビリンスシールパッキングリングの方法及び装置 - Google Patents

ラビリンスシールパッキングリングの方法及び装置 Download PDF

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Description

本明細書で開示される主題は、ターボ機械で使用されるシールの分野に関する。より詳細には、本明細書で開示される主題は、タービン又は圧縮機のロータとケーシング又はステータのような固定構成要素との境界面に適用するための漸進的クリアランスラビリンスシールに関する。
ロータクリアランスは、シールに対するロータの摩耗を防ぐことができるように十分大きく構成される場合があるので、ガスタービン、蒸気タービン、航空機エンジン、圧縮機、及び他のターボ機械システムで使用されるラビリンスシールは過剰な漏出を起こしやすい。ロータがシールに接触している場合、これはロータ摩耗とも呼ばれ、シールが損傷を受け、その後に更に大きなクリアランスを生成する可能性がある。具体的には、ロータ摩耗は、速度上昇に伴うジャーナル軸受における流体潤滑フィルムの進行に起因したロータ動力学的励起、ロータ及びステータの相対的な熱変形、又はロータ中心のシフトを含むことができる幾つかのロータ過渡応答の間にガスタービンで発生する可能性がある。ガスタービンが始動中のような臨界速度になったときに偏位が生じる可能性がある。ガスタービン内の異なる構成要素間の熱的相違によって歪みが生じる可能性がある。ラビリンスシールがステータに堅固に結合できるときにはロータの過渡応答中にシールとロータとの間のクリアランスを調節することができないので、このクリアランスが大きいことが必要となる。ガスタービンの回転構成要素と固定構成要素との間のクリアランスは、タービンの効率及び性能の両方に影響を及ぼす可能性がある。ガスタービンの設計において、構成部品間のクリアランスが狭いほどより高い効率をもたらすことができる。蒸気タービン、航空機エンジン、又は圧縮機などの他のターボ機械システムにおいて同様のロータ過渡応答が生じ、この過渡応答は予測が困難である場合が多い。
加えて、ラビリンスシールは、可変クリアランス正圧パッキング(Variable Clearance Positive Pressure Packing:VCPPP)リングで構成することができ、該リングは、バネを用いてラビリンスシールをロータから離れて大きなクリアランスにまで付勢する。これは、始動ロータ過渡応答中のロータ摩耗の予防を促進する。シールにわたる差圧が特定の値を超えて増大すると、VCPPPリングにかかる力によって、シールを小さなロータクリアランスにまで閉鎖させるようにする。VCPPPリング設計において、VCPPPリングがケーシング又はステータに接触する蒸気シール継手が存在する。この継手の機械的摩擦により、VCPPPリングの開閉のヒステリシスをもたらす場合がある。VCPPPリングが閉鎖した後のロータ過渡応答が存在する場合、ロータ摩耗及びラビリンス歯状部への損傷が存在することになる。
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
第1の実施形態では、ターボ機械は、固定ハウジングと軸線の周りを回転するロータとを含む。ターボ機械用のシール組立体は、固定ハウジングの内部表面に結合され且つ半径方向面に位置付けられた少なくとも1つの弓形プレートを含む。加えて、シール組立体は、ロータ及びプレートの中間に配置された円周方向にセグメント化されるパッキングリングを含む。パッキングリングは、プレートに沿って半径方向に移動するよう位置付けられる。シール組立体はまた、パッキングリング及びロータの中間に配置された複数の弓形歯状部を含む。歯状部の各々のクリアランスは、ターボ機械の上流側部から下流側部まで漸進的に減少する。歯状部のクリアランスの漸進的減少によって、シール組立体の圧力差により生じる静水力の受動的フィードバックがもたらされ、先端クリアランスが減少するにつれて半径方向外向きの力がパッキングリングをロータから離れて移動させ、先端クリアランスが増大するにつれて半径方向内向きの力がパッキングリングをロータに向けて移動させるようにする。最後に、シール組立体はまた、弓形プレート及びパッキングリングの中間に配置され且つこれら両方に結合された付勢部材を含む。
第2の実施形態では、ターボ機械の固定ハウジングと、該ターボ機械の軸線の周りに転回する回転要素との間のガス経路をシールする方法は、半径方向平面において固定ハウジングの内部表面上に少なくとも1つの弓形プレートを配置する段階を含む。本方法はまた、弓形プレートに隣接して円周方向にセグメント化されるパッキングリングを配置する段階を含む。加えて、本方法は、複数の弓形歯状部をパッキングリング及び回転要素の中間に配置する段階を含む。歯状部のクリアランスは、ターボ機械の上流側部から下流側部まで漸進的に減少する。本方法はまた、付勢部材をパッキングリング及び固定ハウジングの中間に配置する段階を含む。該付勢部材は、パッキングリング及び固定ハウジングに結合される。
第3の実施形態では、タービン又は圧縮機は、軸線の周りを回転するロータと、該ロータを囲む固定ハウジングと、ロータ及び固定ハウジングの中間に配置された円周方向にセグメント化されるシール組立体とを含む。シール組立体の各セグメントは更に、固定ハウジングの内部表面に結合され且つ半径方向平面に位置付けられる少なくとも1つの弓形プレートを含む。シール組立体の各セグメントはまた、ロータ及びプレートの中間に配置されたパッキングリングの弓形セグメントを含む。パッキングリングは、プレートに沿って半径方向に移動するよう位置付けられる。弓形セグメントは、蒸気シール継手を含まない。シール組立体の各セグメントはまた、パッキングリング及びロータの中間に配置された複数の弓形歯状部を含む。各歯状部のクリアランスは、タービン又は圧縮機の上流側から下流側まで漸進的に減少する。歯状部のクリアランスの漸進的減少によって、シール組立体の圧力差により生じる静水力の受動的フィードバックがもたらされ、その結果、先端クリアランスが減少するにつれて半径方向外向きの力がパッキングリングをロータから離れて移動させ、先端クリアランスが増大するにつれて半径方向内向きの力がパッキングリングをロータに向けて移動させるようにする。最後に、シール組立体の各セグメントは、弓形プレート及びパッキングリングの弓形セグメントの中間に配置された付勢部材を含む。該付勢部材は、弓形プレート及びパッキングリングに結合される。
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様並びに利点は、図面全体を通して同じ参照符号が同様の部分を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、より良好に理解されるであろう。
本開示の一実施形態によるタービンシステムの断面図。 本発明の一実施形態によるシール組立体を有する、図1に示すようなタービンシステムのシール区域の斜視図。 本発明の一実施形態によるパッキングリング上に歯状部を備えたシール組立体の断面図。 本発明の一実施形態による、パッキングリング上に歯状部と回転要素上に隆起ランドとを備えたシール組立体の断面図。 本発明の一実施形態による、回転要素上に歯状部を備えたシール組立体の断面図。 本発明の一実施形態による、パッキングリング上の歯状部と複数のプレートとを備えたシール組立体の断面図。 本発明の一実施形態による、パッキングリング及び回転要素の両方に歯状部を備えたシール組立体の断面図。 本発明の一実施形態による、最後の歯状部クリアランス又は先端クリアランスの関数としてパッキングリング歯状部による予期される圧力分布を示すグラフ。 本発明の一実施形態による、パッキングリングに作用する閉鎖及び開放力を示すグラフ。 本発明の一実施形態による、平衡クリアランスの概念を示すグラフ。 本発明の一実施形態による、平衡クリアランスが上流側及び下流側の圧力の圧力比にどのように依存するかを示すグラフ。
本発明の1つ又はそれ以上の特定の実施形態について以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を行うために、本明細書では、実際の実施態様の全ての特徴については説明しないことにする。何れかの技術又は設計プロジェクトと同様に、このような何らかの実際の実装の開発において、システム及びビジネスに関連した制約への準拠など、実装毎に異なる可能性のある開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装時固有の決定を行う必要がある点は理解されたい。更に、このような開発の取り組みは、複雑で時間を要する可能性があるが、本開示の利点を有する当業者にとっては、設計、製作、及び製造の日常的な業務である点を理解されたい。
本発明の種々の実施形態の要素を導入する際に、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素の1つ又はそれ以上が存在することを意味するものとする。用語「備える」、「含む」、及び「有する」は、包括的なものであり、記載した要素以外の付加的な要素が存在し得ることを意味する。
図1は、種々の構成要素を含むタービンシステム10の一実施形態の断面図であるが、簡潔にする目的でその一部は図示されていない。図示の実施形態では、ガスタービンシステム10は、圧縮機セクション12、燃焼器セクション14、及びタービンセクション16を含む。タービンセクション16は、固定ハウジング18と、軸線22の周りを回転する回転要素20とを含む。可動ブレード24は、回転要素20に取り付けられ、固定ブレード26は固定ハウジング18に取り付けられる。可動ブレード24及び固定ブレード26は、軸方向に交互して配列される。シュラウド可動ブレード24と固定ハウジング18との間の位置28、回転要素20と固定ブレード26との間の位置30、又は回転要素20と固定ハウジング18との間の端部パッキンシール位置32など、シール組立体を設置できる複数の実施可能な位置がある。
図2は、図1のタービンシステム10のシール組立体32の一実施形態の斜視図である。空気、燃料、又は他のガスは、上流側部34でタービンシステム10に流入し、下流側部36でシステムから流出する。図示の実施形態では、軸線40により軸方向が示され、軸線42により半径方向が示されている。弓形プレート44は、回転要素20に面する固定ハウジング18の弓形面に結合される。特定の実施形態では、プレート44は、鋼鉄又は合金鋼から作ることができる。更に、プレートの断面は図2に示すようにT形を示すことができる。プレート44は、ハウジング18に堅固に取り付けることができる。加えて、プレート44は、完全な360度リング、2つの180度リング、又は併せて完全なリングを形成するより小さな円弧として配置することができる。更に、特定の実施形態では、プレート44は、同様に構成された複数のプレートからなることができる。
弓形パッキングリング46は、プレート44及び回転要素20の中間に配置される。リング46は、併せて完全なリングを形成する複数のセグメントからなることができる。特定の実施形態では、リングは、鋼鉄又は合金鋼から作ることができる。更に、リングは、ギャップ47を設けた状態で、プレート44と嵌合するよう構成される。付勢部材52は、固定ハウジング18及びパッキングリング46の中間に配置される。付勢部材52は、軸受可撓部として働き、軸方向40に高い剛性をもたらし、半径方向42に低い剛性をもたらす。軸方向に高い剛性は軸方向の大きな動きを制約する。半径方向に低い剛性により、パッキングリング46が半径方向に移動できるようになる。加えて、付勢部材は、パッキングリング46の重量を支持し、流れのない条件下で該パッキングリング46が回転要素20に触れるのを防ぐ。特定の実施形態では、付勢部材52は、複数の可撓部からなることができる。各可撓部の一方端50は、パッキングリング46に機械的に結合され、各可撓部の他方端52は、固定ハウジング18に、或いはT形のときにはプレート44に機械的に結合することができる。特定の実施形態では、機械的結合の実施例は、ボルト締め、溶接処理、又は2つの構造体を機械的に付着させる他の好適な技術を含むことができる。他の実施形態では、可撓端部50は、パッキングリング46の一体部分であり、ハウジング18に機械的に付着させることができる。更に別の実施形態では、可撓端部52は、固定ハウジング18の、或いはT形のときにはプレート44の一体部分であり、パッキングリング46に機械的に付着させることができる。この実施形態では、各可撓部は、大きな幅厚縦横比を有するカンチレバーとして示されている。高い軸方向剛性及び低い半径方向剛性を達成する他の可撓部設計も実施可能である。
パッキングリング46は更に、回転要素20に面するリングの表面に結合された複数の弓形歯状部54を含む。リング46の各セグメント上に配置された各歯状部のセグメントは併せて回転要素20の周りに完全なリングを形成する。特定の実施形態では、歯状部54は、合金鋼から作ることができる。更に、歯状部と回転要素20間のクリアランスは、タービン又は圧縮機の上流側部34から下流側部36まで漸進的に小さくなる。これは、上流側部34から下流側部36までの歯状部高さを漸進的に増加させることによって達成することができる。クリアランスの減少は、線形、2次、放物線、又は本質的に任意とすることができる。加えて、隣接する歯状部間の空間は同じか又は変化してもよく、これは以下で検討される。
図3は、パッキングリング46上に歯状部を備えたシール組立体60の一実施形態の断面図である。図示の実施形態では、パッキングリング46は、可撓部の2つのセット、すなわち、可撓部の上流側セット66及び可撓部の下流側セット68によってプレート44に結合される。可撓部の上流側セット66及び下流側セット68の半径方向コンプライアンスがバネとして概略的に示されている。図示の特定の実施形態では、可撓部の上流側及び下流側配列は、パッキングリング46において、プレート44を囲むリングの上流側位置及び下流側位置と一致するよう使用される。前方ギャップ74は、パッキングリング46の上流側部分とプレート44との間に存在し、同様に後方ギャップ76は、パッキングリングの下流側部分とプレートとの間に存在する。これらのギャップは、漏出流に対する流れ抵抗を提供し、漏出流を低減するために最小限にされるべきである。特定の実施形態では、前方ギャップ74及び後方ギャップ76は、およそ50マイクロメートルから250マイクロメートルの間とすることができる。可撓部の高い軸方向剛性により、作動中に前方ギャップ及び後方ギャップがほぼ同じ値に維持される。パッキングリング46とプレート44との間にはポケット78が存在する。ポケット78の高さ79は、ロータ過渡応答中のロータ摩耗を回避するのに十分な半径方向の動きを許容するよう設計される。ガスは、前方ギャップ74、ポケット78、及び後方ギャップ76を通って存在する漏出経路80を介して漏出する。従って、前方ギャップ74及び後方ギャップ76は、経路80を通って漏出するガスの量を低減するよう構成される。更に、パッキングリング46は、摩擦を排除するための蒸気シール継手を含まず、以下で検討する受動的フィードバック力に応答してパッキングリングが半径方向に移動できるようにする。
パッキングリング46は更に、回転要素20に面する表面上に配置された、上流側歯状部70及び下流側歯状部72を含む複数の弓形歯状部を含む。下流側歯状部72の先端と回転要素20との間の距離は、下流側先端クリアランス84として定義される。特定の実施形態では、作動中の下流側先端クリアランス84は、およそ125マイクロメートルと380マイクロメートルとの間とすることができる。上流側歯状部70の先端と回転要素20との間の距離は、上流側先端クリアランス82として定義される。上流側先端クリアランス82と下流側先端クリアランス84との差は、クリアランス・プログレッション(漸進)として定義され、特定の実施形態では、これは、およそ400マイクロメートルと1400マイクロメートルの間とすることができる。上流側先端クリアランス82は、下流側先端クリアランス84よりも大きい。更に、各歯状部のクリアランスは、上流側部34から下流側部36まで漸進的に減少する。この歯状部クリアランスの漸進は、パッキングリング46に作用する受動的フィードバック力をもたらし、以下で検討される。図4を参照すると、隆起ランド102を有するシール組立体100の代替の実施形態の断面図が示されており、これはまた、歯状部のクリアランスが上流側部34から下流側部36まで漸進的に減少するのを例示している。このような「高低」特徴部は、漏出流に対してより蛇行した経路をもたらすのに有効とすることができる。図3及び4に示すように、隣接する歯状部間の空間86は、均一又は不均一の何れであってもよい。例えば、一実施形態では、空間86は、上流側部34から下流側部36まで増大することができる。更に、ラビリンスシールの幅は、該ラビリンスシールの圧力差によって決まる。最後に、ガスは、各歯状部の先端と回転要素20との間に存在し、最終的には下流側先端クリアランス84を通る漏出経路90を通って漏出する。従って、下流側先端クリアランス84は、経路90を通って漏出するガスの量を低減するよう構成される。
図3及び4に示す他の寸法は、パッキングリング46とプレート44との間の距離92を含む。距離92の最小値は、予期される過渡応答を許容する必要がある。距離92の最小値は、パッケージング上の制約によって決定付けられる。プレート44は圧力差に起因した撓みがあまり大きくてならないはずであるため、幅94は、シールの圧力差によって決まる。
図5は、回転要素20上に歯状部を備えたシール組立体110の代替の実施形態の断面図である。図示の実施形態では、高さ、空間、及び構成を含む歯状部の全ての態様は、図3のパッキングリング46上に配置された歯状部と同一とすることができる。パッキングリング46は、回転要素20に面する表面上に配置された歯状部を有し、リングにはアブレイダブルコーティング112が設けられている以外は、図3のリングと同一である。特定の実施形態では、アブレイダブルコーティング112は、ニッケル、クロム、アルミニウム、六方晶窒化ホウ素、鉄、又はこれらの組み合わせを含むことができる。他のアブレイダブル材料を使用することもできる。アブレイダブルコーティング112の組成は、歯状部の何れかの先端がコーティングと接触する場合には、歯状部に損傷を与えることなくコーティングが優先的に摩滅するようなものである。図示の特定の実施形態では、下流側先端クリアランス84及び上流側先端クリアランス82は、パッキングリングのアブレイダブルコーティング112と下流側歯状部72及び上流側歯状部70のそれぞれの先端との間の距離を表す。図3に示すものと同様の図5に示す他の要素は、上記で既に検討した。
図6は、複数のプレートを備えたシール組立体120の代替の実施形態の断面図である。図示の実施形態では、中間プレート44に加えて、上流側プレート122及び下流側プレート124がある。上流側及び下流側プレートを追加することにより、より堅牢な漏出経路80がもたらされる。具体的には、漏出経路80を通過するあらゆるガスは、上流側プレート122とパッキングリング46の上流側部分との間のギャップ#1 126、リングの上流側部分と中間プレート44との間のギャップ#2 128、プレート44とリングの下流側部分との間のギャップ#3 130、及びリングの下流側部分と下流側プレート124との間のギャップ#4 132を通ることができる。これらのギャップは、漏出流に対する流れ抵抗を提供し、漏出流を低減するために最小限にする必要がある。このような経路80は、図3及び5に示す経路と比べてガス漏出量を低減することができる。図3に示すものと同様の図6に示す他の要素は、上記で既に検討した。
図7は、パッキングリング46及び回転要素20の両方に配置された歯状部を備えるシール組立体140の代替の実施形態の断面図である。図示の実施形態では、パッキングリング46は、回転要素20に面する表面上に配置され、上流側歯状部142及び下流側歯状部144を含む複数の弓形歯状部を含むことができる。更に、回転要素20は、パッキングリング46に面する表面上に配置され、上流側歯状部146及び下流側歯状部148を含む複数の弓形歯状部を含むことができる。パッキングリング46上の隣接する歯状部間の空間86は、回転要素20上の隣接する歯状部間の空間87と比べて異なるものとすることができる。図3に示すシール組立体60と同様に、各歯状部間の空間86及び87は均一又は非均一の何れであってもよい。ラビリンスシール150の幅は、その圧力差によって決まり、クリアランスが小さいことにより他のラビリンスシールの幅よりも小さくすることができる。かみ合い型歯状部を用いると、歯状部の1つのセットのみを有する実施形態よりも更に蛇行しているので有利とすることができる。特定の実施形態では、図5に示すものと同様のアブレイダブルコーティングをパッキングリング46上に設けることができる。図3に示すものと同様の図7に示す他の要素は、上記で既に検討した。
図8は、パッキングリング歯状部による圧力分布のシミュレーション結果を最後の歯状部クリアランス又は先端クリアランスの関数として示したグラフである。グラフにおいて、横座標(x軸)162は、センチメートル単位の歯状部の軸方向位置を表し、縦座標(y軸)164は、12.8MPaの上流側圧力及び10.3MPaの下流側圧力におけるメガパスカル単位の歯状部圧力を表している。このグラフの曲線は、軸方向圧力プロファイルと呼ばれる。3つの事例が示されており、すなわち、第1の事例166は、最後の歯状部クリアランスが125マイクロメートルであるときの圧力分布を示し、第2の事例168は、380マイクロメートルのリンスを示し、最後の事例168は、635マイクロメートルのクリアランスによる結果を示している。これら3つの事例は、パッキングリングが半径方向内向き又は外向きに移動したときの圧力プロファイルの変化(及びパッキングリングへの結果として生じる力)を示すシミュレーションにおいて使用される。各事例において、軸方向に沿った同じ箇所に配置されたた5つの歯状部があり、シール幅は同じである。各歯状部間の空間は、横座標162に沿って左から右に増大し、該空間が不均一になる。加えて、各事例での歯状部のクリアランス漸進は同じであり、すなわちおよそ760マイクロメートルで且つ漸進が直線的に生じる。換言すると、事例166を実施例として用いると、クリアランスは、上流側歯状部から下流側歯状部までに890、699、318、及び125マイクロメートルになる。従って、事例168の上流側歯状部のクリアランスは1140マイクロメートルであり、事例169では1395マイクロメートルとなる。図示のグラフにおいて、事例166の各それぞれの歯状部での圧力は、事例168及び169よりも大きい。従って、最後の歯状部でのクリアランスは、先端クリアランスの変化に起因して変化し、圧力プロファイルは図8に示すように変化する。
図9は、パッキングリング46における半径方向の力平衡を示すグラフであり、パッキングリングに作用する閉鎖及び開放力は、それぞれ190及び192として表される。2つの異なる力がパッキングリングに作用する。第1に、流体力は、ロータの回転に起因してパッキングリング上に生成される揚力である。第2に、静水力は、シール組立体の圧力差又は何れかの結果として生じる漏出流に起因してパッキングリング上に生成される力である。流体力は静水力と比べて有意ではない。開示される実施形態の受動的フィードバックは、より堅牢な設計で結果として生じる静水力に影響を及ぼすように構成される。図9に戻ると、矢印が長い程より大きな圧力であることを示している。一実施形態では、上流側部34からプレートのギャップの始まりまでの距離182は、およそ2.5cmから5cmの間とすることができる。同様に、ギャップから下流側部36までの距離186はまた、およそ2.5cmから5cmの間とすることができる。ギャップ184の幅は、およそ1.2cmから4.0cmの間とすることができる。距離182、184、及び186は全て、閉鎖力190を変化するよう構成することができる。各歯状部間の空間188は、均一又は不均一の何れであってもよい。下向きに示されてパッキングリングの上部に作用している矢印は、閉鎖力190を表す。これに対応して、上向きで且つパッキングリングの下部に作用する矢印は、開放力192を表す。図示のグラフにおいて、3つの異なる圧力量は、閉鎖力190として加えられる。最初に、上流側距離182に対応して、パッキングリングの上流側部分に高い圧力194が加えられる。次に、ギャップ距離184に対応して、パッキングリングのギャップに中間の圧力196が加えられる。最後に、下流側距離186に対応して、パッキングリングの下流側部分に低い圧力196が加えられる。各セクションにおいて、圧力すなわち閉鎖力は、同じ高さを有する矢印で表されるように、パッキングリングの半径方向移動によって影響されない。
開放力192に注目すると、上流側部での圧力194は高圧閉鎖力に等しく、下流側部での圧力198は低圧閉鎖力に等しい。開放力192は、歯状部クリアランスの減少に伴って上流側部から下流側部まで漸進的に減少する。図8の圧力プロファイル下の区域は、パッキングリング46への開放力192に対応する。小さな先端クリアランスでは、事例166にあるような圧力プロファイル下の区域は、事例169にあるような大きな先端クリアランスにおける圧力プロファイル下の区域よりも大きい。従って、開放力は、小さな先端クリアランスではより大きく、大きな先端クリアランスではより小さい。大きな先端クリアランスは、負の方向、すなわち内向き正味半径方向の力をもたらし、小さな先端クリアランスは、正の方向、すなわち外向き正味半径方向の力をもたらす。閉鎖力と開放力が互いに等しいクリアランスは、平衡クリアランスを表す。平衡クリアランスは、クリアランス漸進プロファイル(例えば、線形、2次、放物線、及びその他)、歯状部間空間、パッキングリングセクションの幅182、184、及び186、並びに前方ギャップと後方ギャップとの比を含む、幾つかの変数により影響を受ける。これらの変数は、漏出が低減される所望の平衡クリアランスを得るように操作することができる。
図10は、平衡クリアランスの概念を示すシミュレーション結果のグラフである。グラフにおいて、横座標172はマイクロメートル単位の最終歯状部クリアランスを表し、縦座標174は、ニュートン単位の正味半径方向力を表す。ここで、正の半径方向の力は、パッキングリングを開放させる外向きの半径方向の力に相当し、負の半径方向の力は、パッキングリングを閉鎖させる内向きの半径方向の力に相当する。曲線176は、最終歯状部クリアランスの関数としての正味半径方向力の変化を示している。平衡クリアランス178は、正味半径方向力がゼロであり、パッキングリングの移動が無い結果となるときに起こる。このシミュレーションでは、平衡クリアランス178は、およそ340マイクロメートルで起こる。平衡クリアランスと圧力比べとの間の関係は、図11に関して以下で検討する。
図11は、平衡クリアランスが上流側及び下流側の圧力の圧力比にどのように依存するかを示すシミュレーション結果のグラフである。グラフでは、横座標202は、マイクロメートル単位の最終歯状部クリアランスを表し、縦座標204は、ニュートン単位の正味半径方向力を表す。これらの事例は以下のことを示している。第1の事例206は、上流側圧力が高いときの半径方向を示している。第2の事例208は、圧力が中間の値であるときの半径方向を表している。最後の事例209は、低い圧力による結果を示している。3つの事例全てにおいて、下流側圧力に対する上流側圧力の比が同じであり、唯一の相違点は、各事例の圧力差である。従って、これら3つの事例のシミュレーション結果は、上流側及び下流側圧力の比の特定の値において、圧力の値に関係なくシール組立体がほぼ同じ値の平衡クリアランスを有することを実証している。
従って、提案のシールの利点は、より大きなロータ過渡応答が存在する場合でも小さなクリアランスが維持され、漏出が少なく高効率をもたらす点である。これが起こる理由は、クリアランスが小さいときには受動的フィードバックが半径方向外向きの力をもたらし、クリアランスが大きいときには半径方向内向きの力をもたらすためである。このことは、上記の実施形態で説明された漸進クリアランスシール組立体が示した受動的フィードバック現象を実証している。このような受動的フィードバックは、タービン又は圧縮機の過酷な環境で故障するか又は信頼性が低くなる可能性があるどのような追加のセンサ又はアクチュエータも必要とすることなく機能する。圧力条件が変化すると、平衡クリアランスは、タービン又は圧縮機の損傷の可能性を低減し、漏出経路を小さくするようにして調整される。
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること並びにあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
10 タービンシステム
12 圧縮機セクション
14 燃焼器セクション
16 タービンセクション
18 固定ハウジング
20 回転要素
22 軸線
24 可動ブレード
26 固定ブレード
28 可動ブレードと固定ハウジングとの間のシール組立体位置
30 回転要素と固定ブレードとの間のシール組立体位置
32 回転要素と固定ハウジングとの間のシール組立体位置
34 上流側部
36 下流側部
40 軸方向軸線
42 半径方向軸線
44 弓形プレート
46 弓形パッキングリング
47 ギャップ
48 付勢部材
50 パッキングリングに結合された付勢部材の端部
52 固定ハウジング又は弓形プレートに結合された付勢部材の端部
54 弓形歯状部
60 パッキングリング上に歯状部を備えたシール組立体
66 上流側可撓部
68 下流側可撓部
70 上流側歯状部
72 下流側歯状部
74 前方ギャップ
76 後方ギャップ
78 ポケット
79 ポケット高さ
80 弓形プレートと弓形パッキングリングとの間の漏出経路
82 上流側先端クリアランス
83 クリアランス漸進
84 下流側先端クリアランス
86 隣接する歯状部間の空間
87 回転要素上の隣接する歯状部間の空間
88 ラビリンスシールの幅
90 歯状部と回転要素との間の漏出経路
92 弓形パッキングリングと弓形プレートとの間の距離
94 弓形プレートの垂直方向部材の幅
100 隆起ランドを備えたシール組立体
102 隆起ランド
110 回転要素上の歯状部を備えたシール組立体
112 アブレイダブルコーティング
120 複数の弓形プレートを備えたシール組立体
122 上流側弓形プレート
124 下流側弓形プレート
126 上流側弓形プレートと弓形パッキングリングの上流側部分との間のギャップ
128 弓形パッキングリングの上流側部分と中間弓形プレートとの間のギャップ
130 中間弓形プレートと弓形パッキングリングの下流側部分との間のギャップ
132 弓形パッキングリングの下流側部分と下流側弓形プレートとの間のギャップ
140 弓形パッキングリング及び回転要素上の歯状部を備えたシール組立体
142 上流側弓形パッキングリング歯状部
144 下流側弓形パッキングリング歯状部
146 上流側回転要素歯状部
148 下流側回転要素歯状部
150 ラビリンスシールの幅
160 最後の歯状部クリアランスの関数としてのパッキングリング下の圧力分布のグラフ
162 歯状部(横座標)の軸方向位置
164 歯状部(縦座標)下の圧力
166 最後の歯状部クリアランスが125マイクロメートルであるときの事例
168 最後の歯状部クリアランスが380マイクロメートルであるときの事例
169 最後の歯状部クリアランスが635マイクロメートルであるときの事例
170 平衡クリアランスを示すグラフ
172 最後の歯状部クリアランス(横座標)
174 正味半径方向の力(縦座標)
176 最後の歯状部クリアランスの関数としての正味半径方向の力の変化を示す曲線
178 平衡クリアランス
180 半径方向の力平衡を示すグラフ
182 上流側部からギャップの始まりまでの距離
184 ギャップの幅
186 ギャップから下流側までの距離
188 隣接する歯状部間の空間
190 閉鎖力
192 開放力
194 高い圧力
196 中間圧力
198 低い圧力
200 平衡クリアランスが圧力比にどのように依存するかを示すグラフ
202 最後の歯状部クリアランス(横座標)
204 正味半径方向の力(縦座標)
206 上流側圧力が高いときの事例
208 上流側圧力が中間であるときの事例
209 上流側圧力が低いときの事例

Claims (10)

  1. 固定ハウジング(18)と軸線(22)の周りを回転するロータ(20)とを備えターボ機械用のシール組立体であって、該シール組立体が、
    前記固定ハウジング(18)の内部表面に結合且つ半径方向面に位置付けられた少なくとも1つの弓形プレート(44)と、
    円周方向にセグメント化されたパッキングリング(46)であって、前記ロータ(20)前記プレート(44)の中間に配置され、前記プレート(44)に沿って半径方向(42)に移動するよう位置付けられたパッキングリング(46)と、
    前記パッキングリング(46)前記ロータ(20)の中間に配置された複数の弓形歯状部(54)であって、前記歯状部の各々のクリアランスが、前記ターボ機械の上流側部(34)から下流側部(36)まで漸進的に減少し、前記歯状部のクリアランスの漸進的減少によって、前記シール組立体の圧力差により生じる静水力の受動的フィードバックがもたらされ、先端クリアランスが減少するにつれて半径方向外向きの力が前記パッキングリング(46)を前記ロータ(20)から離れる方向に移動させ、前記先端クリアランスが増大するにつれて、半径方向内向きの力が前記パッキングリング(46)を前記ロータ(20)に向けて移動させる、複数の弓形歯状部(54)と、
    前記弓形プレート(44)前記パッキングリング(46)の中間に配置され且つこれら両方に結合た付勢部材(48)
    を備えている、シール組立体。
  2. 前記付勢部材(48)が軸受として機能し、前記パッキングリング(46)の軸方向(40)の移動を制限し、前記パッキングリング(46)の半径方向(42)の移動を許容する、請求項1記載のシール組立体。
  3. 前記静水力の受動的フィードバックが、前記複数の歯状部(54)と前記ロータ(20)との間で平衡クリアランスを維持して、ータ過渡応答中に前記複数の歯状部(54)が前記ロータ(20)に接触するのを阻止する、請求項1又は請求項2記載のシール組立体。
  4. 前記複数の弓形歯状部(54)が前記パッキングリング(46)に結合している、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシール組立体。
  5. 前記複数の弓形歯状部(54)が前記ロータ(20)に結合している、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシール組立体。
  6. 前記複数の弓形歯状部(54)の第1のサブセットが前記パッキングリング(46)に結合していて、前記複数の弓形歯状部(54)の第2のサブセットが前記ロータ(20)に結合しており、前記複数の弓形歯状部(54)の第1のサブセット及び第2のサブセット互いにかみ合うように配列される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシール組立体。
  7. 前記ロータ(20)に面する前記パッキングリング(46)の表面上にアブレイダブルコーティング(112)が配置される、請求項5又は請求項6記載のシール組立体。
  8. 前記付勢部材(48)が、前記弓形プレート(44)及び前記パッキングリング(46)に機械的に結合た複数の可撓部を含み、該複数の可撓部が、前記パッキングリング(46)を半径方向(42)に移動させるが、軸方向(40)の移動制限するよう構成される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のシール組立体。
  9. 前記プレート(44)前記パッキングリング(46)間の前方ギャップ(74)及び後方ギャップ(76)が、該前方ギャップ(74)及び後方ギャップ(76)を通過する漏出を低減するよう構成されている、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のシール組立体。
  10. ターボ機械の固定ハウジング(18)と、該ターボ機械の軸線の周りで回転する回転要素(20)との間のガス経路をシールする方法であって、
    記固定ハウジング(18)の内部表面上に少なくとも1つの弓形プレート(44)を半径方向平面に配置する段階と、
    周方向にセグメント化されパッキングリング(46)を前記弓形プレート(44)に隣接して配置する段階と、
    前記ターボ機械の上流側部(34)から下流側部(36)まで歯状部が漸進的に減少する複数の弓形歯状部(54)を前記パッキングリング(46)前記回転要素(20)の中間に配置する段階と、
    前記パッキングリング(46)及び前記固定ハウジング(18)に結合た付勢部材(48)を前記パッキングリング(46)前記固定ハウジング(18)の中間に配置する段階と
    を含む方法。
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