JP5826893B1 - 変化点予測装置、変化点予測方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】将来の変化点を予測することができる変化点予測装置、変化点予測方法、及びコンピュータプログラムを提供する。【解決手段】時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録し、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測する変化点予測装置であって、前記複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値との相関の強さに基づいて予測値を算出する処理を実行し、処理により得られた予測値を記録されている実績値に連続させた第1の時系列データを作成し、該第1の時系列データに対してトレンドを算出し、トレンドの勾配を算出し、算出された勾配のマハラノビスの汎距離を算出し、算出されたマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出する。【選択図】図17
Description
本発明は、時系列的に変化する事象を分析し将来の事象を予測する方法に関し、特に、時系列的な事象に対する値の過去の系列に基づき、該系列の将来の変化点を予測することを可能とする変化点予測装置、変化点予測方法、及びコンピュータを変化点予測装置として機能させるコンピュータプログラムに関する。
経時的に変化する事象について、該事象に係る任意の時点までの時系列データを用いて以後の変化を予測することは様々な分野で有用である。例えば為替、株価の過去の推移の観測に基づいて一日後、一週間後、半年後の為替又は株価の予測を行なったり、製品の販売実績に基づいて次期の需要予測を求めたりすることは、人間の経験及び判断力に基づいて行なわれている。上述の為替、株価、製品需要などの予測は非常に困難であるが、それらの予測が人間の主観を除去した上で高精度に実現することが可能であるとすれば、生産、販売及び在庫の管理、並びに物流、製品開発等の計画に非常に有用となる。
発明者はこれまでに、時系列的に変化する種々の事象に関する予測方法を提案してきた(特許文献1等)。既に提案した予測方法により、種々の事象の予測を実現できることが示されているが、更に予測精度を高めることが求められる。発明者が提案してきた予測方法の精度を高めるためには、過去の期間における時系列的な変化傾向(トレンド)を正確に捉えるべく、予測に用いる観測情報から適切に情報を選択することが有効である。情報を選択するための基準として、時系列的に変化する事象について変化点として定義される時点を特定することが有用である。変化点は言わば事象の潮目が変わる時点であり、観測される事象が実際に変化する時点、事象を発現させる状態が変化する時点のことである。変化点の検出は、データマイニング等の各種分野でも有用とされる。
変化点は、観測系によるノイズ、又は突発的な原因による偶然の変動(所謂外れ値)の影響を受ける。ノイズ、外れ値の除去、及び、外れ値の影響を受けない変化点の検出については、統計学、機械学習、データマイニング等の種々の分野にて多くの提案がなされている。特に時系列的な変化を考慮した変化点の検出については、時系列データの性質に対応する統計モデルを用いて外れ値及び変化点を統一的に検出する方法が特許文献2に開示されている。
既に観測された時系列データに対して変化点を検出することは、過去の事象における特性を把握するために重要である。しかしながら、経時的に変化する事象についての予測で必要とされることは、過去よりも将来に起こる変化点を精度よく予測することである。
特許文献2に開示されている方法を含め従来技術では、観測された時系列データにおける言わば過去の変化点の検出は可能であるが、将来の変化点の検出は困難であった。
本発明は斯かる事情に基づいてなされたものであり、将来の変化点を予測することができる変化点予測装置、変化点予測方法、及びコンピュータを変化点予測装置として機能させるコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
本発明に係る変化点予測装置は、時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段と、該記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行なう演算手段とを備え、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測する変化点予測装置であって、前記演算手段は、前記複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付け、各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出する予測値算出手段と、記録期間における前記事象に係る値と、前記予測値算出手段により算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成する手段と、作成された前記第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出するトレンド算出手段と、該トレンド算出手段が算出したトレンドの勾配を算出するトレンド勾配算出手段と、算出された勾配のマハラノビスの汎距離を算出するトレンド勾配距離算出手段と、算出されたマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出する変化点検出手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る変化点予測装置は、前記トレンド算出手段は、前記事象に係る値は該値を発現させる状態が前記値に与える影響を表現する関数と白色雑音との和で記述される状態空間モデルに、各時点における前記事象に係る値がトレンドと白色雑音との和で記述されるトレンドモデル、及び前後する時点におけるトレンドは略等しいとするモデルを適用して状態空間モデルの解法に基づきトレンドを算出することを特徴とする。
本発明に係る変化点予測装置は、前記勾配算出手段は、前後する時点の内、前の時点におけるトレンドから後の時点におけるトレンドへの変化率を算出するようにしてあることを特徴とする。
本発明に係る変化点予測装置は、前記演算手段は、記録期間の内、前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段と、特定された期間における前記事象に係る値に対応する前記複数の項目毎の項目値のマハラノビスの汎距離を時系列に算出して第2の時系列データを作成する手段と、作成された前記第2の時系列データに対し、該第2の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出する項目トレンド算出手段と、該項目トレンド算出手段が算出した項目トレンドの勾配を算出する項目トレンド勾配算出手段と、算出された勾配のマハラノビスの汎距離を算出する項目トレンド勾配距離算出手段と、算出されたマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における前記事象に係る値に対応する複数の項目の変化点を検出する項目変化点検出手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る変化点予測装置は、前記変化点検出手段は、前記トレンド勾配距離算出手段により算出されたマハラノビスの汎距離を、前記記録期間中におけるトレンド勾配のマハラノビスの汎距離の最大値で除算した第1の変化点スコアを求める手段を更に備え、前記項目変化点検出手段は、前記項目トレンド勾配距離算出手段により算出されたマハラノビスの汎距離を、前記特定された期間におけるトレンド勾配のマハラノビスの汎距離の最大値で除算した第2の変化点スコアを求める手段を更に備え、前記演算手段は、前記第1の変化点スコアと第2の変化点スコアとを加算して変化点スコアを算出するスコア算出手段を更に備えることを特徴とする。
本発明に係る変化点予測方法は、時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段を備えるプロセッサが、前記記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行ない、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測する変化点予測方法であって、前記プロセッサは、前記記録手段に記録されている複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付け、各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出し、記録期間における前記事象に係る値と、算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成し、作成した第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出し、算出したトレンドの勾配を算出し、算出した勾配のマハラノビスの汎距離を算出し、算出したマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出することを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段を備えるコンピュータに、前記記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行ない、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、前記記録手段に記録されている複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付けるステップと、各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出するステップと、記録期間における前記事象に係る値と、算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成するステップと、作成した第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出するステップと、算出したトレンドの勾配を算出するステップと、算出した勾配のマハラノビスの汎距離を算出するステップと、算出したマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出するステップとを実行させることを特徴とする。
本発明では、時系列に連続する事象に係る値について、関連項目の項目値と所定時間の時間差で対応付けられた時間差モデルにて算出される要因効果値に基づき予測値が算出され、算出された予測値が記録期間の値に連続するように第1の時系列データが作成される。作成された第1の時系列データに対し、予測期間を含む期間全体におけるトレンドが算出され、トレンドの勾配の周辺との相関強度(類似性)がマハラノビスの汎距離により算出される。変化点は類似性が低いためにマハラノビスの汎距離が大きく算出されることから、算出結果により未来を含む期間における変化点が予測可能となる。
本発明では、トレンド算出において、事象に係る値を観測系列とする状態空間モデルに、各観測系列は各時点のトレンドと白色雑音との和で記述されるというトレンドモデル、及び前後する時点のトレンドは略等しいというモデルを適用して、状態空間モデルの解法に基づきトレンドが推定算出される。これにより、トレンドの勾配はトレンド変化に敏感に反応する値として算出することが可能となり、トレンドが変化していない場合は、変化の度合いが抑えられるように算出される。
本発明では、トレンドの勾配として、前後する時点におけるトレンド間において後の時点のトレンドへの変化率が算出される。時間的に後の時点のトレンドへのトレンド増の変化が正値として算出される。
本発明では、時系列に連続する事象に係る値の関連項目のマハラノビスの汎距離が算出されて単一系列の時系列データ化され、トレンドが算出される。なお、算出対象は、予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間とし、これにより事象に係る値に相関が強い項目のトレンドが求められる。項目のマハラノビスの汎距離を算出することにより、関連項目の値が影響する事象の総合的なトレンドが算出される。算出された総合的なトレンドの勾配の類似性が算出され、算出結果により項目値に基づく変化点が予測可能となる。
本発明では、事象に係る値の予測値を含む第1の時系列データから導出される変化点スコアと、前記事象に係る値の複数の項目のマハラノビスの汎距離である第2の時系列データから導出される変化点スコアとが加算されて総合的な変化点スコアとして算出される。トレンドを考慮して変化点を予測して、一時的な変動による影響を低減させた上更に、信号値の背景となる“場”の変化点が加味された変化点スコアを得ることが可能となる。
本発明による場合、将来の変化点の予測が可能である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における予測装置1の構成を示すブロック図である。予測装置1は例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等のコンピュータを用いる。予測装置1は、制御部10、記録部11、一時記憶部12、入力部13及び出力部14を備える。
図1は、実施の形態1における予測装置1の構成を示すブロック図である。予測装置1は例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等のコンピュータを用いる。予測装置1は、制御部10、記録部11、一時記憶部12、入力部13及び出力部14を備える。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )を用いる。制御部10は、以下に説明する予測プログラム1Pに基づき、パーソナルコンピュータを制御し、本実施の形態における予測装置1としての機能を発揮させる。
記録部11は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリを用いる。なお記録部11は、外付けのハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、通信網を介して接続される他の記録装置であってもよい。すなわち、記録部11とは、制御部10からアクセス可能な1又は複数の情報記録媒体の総称である。
記録部11には、実施の形態1の変化点予測方法を実現するための各種手順を含む予測プログラム1Pが記録されている。また、記録部11の記録領域の一部は、信号値及び該値に対応する複数の項目のデータ(各項目の項目値)を記録するデータベース(DB)110として用いられる。制御部10は、データベース110に対し、信号値及び各項目の項目値の読み書きが可能である。データベース110は、信号値及び各項目の項目値を時系列に記録している。
一時記憶部12は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等の不揮発性メモリである。一時記憶部12は、制御部10の処理によって発生した情報を一時的に記憶する。
入力部13は、キーボード、マウス等を用い、ユーザの操作に基づき情報を入力する。
出力部14は、液晶モニタなどの表示部、又はプリンタ等の印刷部を用い、制御部10による情報の処理結果を出力する。
図2は、記録部11に記録される信号値及び項目毎の項目値の内容例を示す説明図である。図2において、メンバーとは、単位期間毎のデータであることを示すインデックスであり、1,2,…,l として示している。信号値自体は、信号値M1 ,M2 ,…,Ml として記録される。「項目1」,「項目2」,…,「項目k」は、信号値M1 ,M2 ,…,Ml に関連する項目であり、X11,X12,…,X1kは、メンバー1の信号値M1 に関連する各項目の項目値を示している。なお、信号値M及び各項目の項目値Xは、実際の値を用いてもよいが、入力後又は入力前に規準化しておいてから用いることが好ましい。規準化の方法は例えば、制御部10が信号値及び項目毎の項目値を入力した後に、各項目の項目値X(例えば月平均)から、当該項目の項目値の平均(用いる全メンバーの月平均の平均値)を減算しておくなどの方法がある。
このように構成される予測装置1の制御部10により実行される変化点予測処理について説明する。なお、以下に説明する手順には、T法に基づく予測値算出処理が含まれるが、予測値算出処理については、特許第5068382号公報、特許第5068383号公報、特許第5416809〜5416811号公報、特願2013−125933〜2013−125936等の先行文献に記載されているため、詳細な説明を一部省略する。
図3及び図4は、実施の形態1における予測装置1の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部10は、入力部13から、時系列の信号値及びこれに関連する各項目の時系列の項目値を入力し、入力した信号値及び項目毎の項目値を対応付けて記録部11のデータベース110に記録する(ステップS101)。
制御部10は、記録部11のデータベース110に記録した信号値及び項目毎の項目値に基づいて、時間差モデルを生成する(ステップS102)。
ステップS102において制御部10は、時系列に記録された信号値と、項目毎の項目値とを所定期間分ずらして対応付ける。時間差モデルとは、項目毎の項目値と該項目の所定期間後の信号値とを対応付けたモデルである。図5は、時間差モデルを概念的に説明する説明図である。図5では、図の左から右へ向かって時間の経過を示している。図4の下部の各矩形は、1年毎の各項目の項目値を示し、上部の各矩形は、各項目と同時期の1年毎の信号を示している。時間差モデルでは、同時期の信号と各項目の項目値とを対応付けるのではなく、図2で示した信号値Mi に対し、所定期間前のメンバー(i-t )の各項目の項目値Xi-t 1 ,Xi-t 2 ,…,Xi-t k を対応付ける。図5の例では、所定期間とは1年であり、2000年1月の信号値Mに対し、1年前の1999年1月の項目値X1 ,X2 ,…,Xk を対応付け、2007年12月の信号値Mに対しては1年前の2006年12月の項目値X1 ,X2 ,…,Xk を対応付けた時間差モデルを生成する。
制御部10は、生成した時間差モデルにおいて対応する信号値と項目毎の項目値との関係に基づき、信号値及び項目毎の項目値を変数変換する(ステップS103)。ステップS103における変数変換は、実施の形態1では、信号値について対数変換を行うと共に、対数変換した信号値に対して項目値を2次変数変換する。
制御部10は、変数変換後の信号値及び項目毎の項目値を用いて、予測に用いる信号期間を選択する処理を行なうべく、対数変換後の信号値を用いて信号トレンドを算出する(ステップS104)。信号トレンドについては、状態空間モデルによる2次のトレンド成分を用いた計算手法を採用して算出する。
制御部10は、算出した信号トレンドに基づき、予測対象期間の直近の信号トレンドと同じ信号区間を選択する(ステップS105)。ここで制御部10は、予測対象期間の直近の信号トレンドを参照し、予測対象期間の直近の信号トレンドが増加傾向(+)である場合、記録期間中において増加傾向(+)の区間を選択し、直近の信号トレンドが減少傾向(−)である場合、記録期間において減少傾向(−)の区間を選択する。
制御部10は、ステップS105で選択した信号区間を連続区間として用い、この期間における項目のマハラノビスの汎距離(以下、MD:Maharanobis’s Distance と言う)及びMDトレンドを算出する(ステップS106)。ステップS106においては、予測対象期間における信号値(未知信号)に対応付けるべき項目値をも含めて項目のMD(以下、項目MDと言う)を算出する。
制御部10は、ステップS106で算出した項目MDの正規確率及び該正規確率のトレンドを算出する(ステップS107)。制御部10は、算出した正規確率及び該正規確率のトレンドに基づき、予測対象区間の直近の項目MDを含む1循環分の信号区間を選択する(ステップS108)。
ステップS108において制御部10は、以下のように信号区間を選択する。ステップS107で算出した項目MDの正規確率は0〜1の間の数値であるから、制御部10は、閾値を0.5に設定して正規確率が0.5以上となる第1トレンド区間と、0.5未満の第2トレンド区間とを判別する。制御部10は、予測対象期間の最新の区間が第1トレンド区間であるか、第2トレンド区間であるかを判断し、第1トレンド区間である場合には直近の第1トレンド区間と1つ前の第2トレンド区間とを1循環分の信号区間として選択する。制御部10は、予測対象区間の最新の区間が第2トレンド区間である場合には、直近の第2トレンド区間と1つ前の第1トレンド区間とを1循環分の信号区間として選択する。
次に制御部10は、ステップS108で選択した信号区間での未知項目(予測対象期間に信号値に対応する項目値)を含む項目MD及び該項目MDのトレンドを再計算する(ステップS109)。制御部10は、未知項目MDと同一符号の区間を選択する(ステップS110)。ステップS110において制御部10は、予測対象期間の直近においてステップS109で再計算したトレンド曲線が示すMDと閾値(例えば1.0)とを比較し、直近のトレンド曲線が示すMDが閾値以上である場合、閾値以上の区間を選択し、直近のトレンド曲線が示すMDが閾値未満である場合、閾値未満の区間を選択する。ここで比較した閾値には全MDの平均である1.0の値が用いられる。
制御部10は、ステップS110で選択した区間における信号値と、時間差モデルにて対応する各項目の項目値との関係を特定する特定式をT法に基づいて算出する(ステップS111)。ステップS111において具体的には、制御部10は信号値に対して項目毎の要因効果の強さを示す比例定数β及びSN比η(2乗比)を下記の式(1)及び式(2)を適用して算出する。
制御部10は、ステップS111にて算出した項目毎の比例定数βを用い、ステップS110で選択した信号期間における各信号値について、以下に示す式(3)により出力の推定値を算出する(ステップS112)。
次に制御部10は、推定値についての推定精度であるSN比ηを重みづけ係数として用いた総合推定値を以下に示す式(4)に基づいて算出する(ステップS113)。
制御部10は、信号値及び総合推定値に基づいて、各項目の総合推定値のSN比(db)を以下に示す式(5)により算出する(ステップS114)。
制御部10は、各項目について要因効果値を算出する(ステップS115)。要因効果値は、各項目について当該項目を除いた各項目の項目値の総合推定値のSN比と、当該項目を含む各項目の項目値の総合推定値のSN比の差分を求めることによって算出される。より具体的には、制御部10は、各項目について当該項目を含む各項目の項目値の総合推定値のSN比から、当該項目を含まない各項目の項目値の総合推定値のSN比を減じた値を算出する。
制御部10は、算出した要因効果値が大きい順に項目を複数選択し、選択した複数の項目の項目値に対する総合推定値のSN比を、項目数毎に算出する(ステップS116)。制御部10は、項目数毎の総合推定値のSN比に基づき、当該SN比を最大にする項目数を決定する(ステップS117)。
制御部10は、ステップS117にて決定した項目数分、要因効果値が大きいものから項目を選択する(ステップS118)。制御部10は、時間差モデルにおいて予測対象期間に対応する項目の内、ステップS118で選択した項目の項目毎の項目値を式(4)に当てはめて予測値を算出する(ステップS119)。ここで制御部10は、式(4)における比例定数β及びSN比ηとして、ステップS111で算出したものを用いる。ステップS119において制御部10は、信号値が規準化されている場合には逆変換してもよい。
ステップS119で算出された予測対象期間における予測値を、記録期間における既知の信号値と合わせて時系列データを作成する(ステップS120)。
制御部10は、作成した時系列データに対し、隣り合う時点のトレンド成分は略等しいというトレンドモデルに基づいて予測対象期間を含む期間全体における信号トレンドを算出する(ステップS121)。ステップS121における信号トレンドの算出には、状態空間モデルによる1次のトレンド成分を適用する。具体的には制御部10は、トレンドtn について、以下に示す式(6)にて表現されるようにトレンドが時間軸において局所的に略一定の値をとり、前のタイミングにおけるトレンドtn-1 に対してtn ≒tn-1 であるというモデル(ランダムウォークモデル、参考:トレンド成分モデル−構造の確率的変化のモデル−、北川源四郎、1993、「FORTRAN77時系列解析プログラミング」、pp.252-263)を、ステップS120で作成した時系列データを観測値とする状態空間モデルに当てはめ、カルマンフィルタ及び平滑化処理等の処理を実行することによってトレンドを算出する。
制御部10は、ステップS121で算出したトレンドに対し、風上差分からのトレンド勾配を算出する(ステップS122)。ステップS122において詳細には、制御部10は、各時点について算出されたトレンドに対し、対象としている一の時点の次の時点におけるトレンドへの変化率を算出する。図6は、トレンド勾配の算出概念を示すグラフである。横軸は時間軸を示し、縦軸は算出されたトレンドを示す。ステップS122にて算出されるトレンド勾配は、図6中のGに対応する。
制御部10は、ステップS122で算出したトレンド勾配についてMDを算出する(ステップS123)。これにより、トレンド勾配の類似性が求められる。なお、算出されたMDが近いほどトレンドが類似し、遠いほどトレンドが非類似であることが示される。
制御部10は、ステップS123で算出したMDに基づき、変化点スコアを算出する(ステップS124)。ステップS124において制御部10は、ステップS120で作成した時系列データの予測対象期間を含む期間全体に亘って算出したMDの最大値で、算出されたMD全てを除算する。ステップS124の処理により、予測対象期間を含む全体で算出されたMDの内の最大値に対応する時点の変化点スコアが1.0となるように、各時点での変化点スコアが算出される。これにより、非類似性が高いトレンドの勾配に係る時点が変化点として検出される。
このようにして、予測された予測値を含む全期間でのトレンドに基づき、予測対象期間を含む期間における信号値の変化点を検出することができる。検出装置1により導出される変化点スコアは、予測対象期間を含む期間のトレンドが考慮されているから、トレンドに従って真に状態が変化することに応じて導出される。
なお、図3及び図4のフローチャートに示した処理手順における予測値算出処理(S102〜S119)の手順は一例であって本発明に係る発明者が提案する時間差モデルに基づく他の予測方法(先行技術文献特許第5068382号公報、特許第5068383号公報、特許第5416809〜5416811号公報、特願2013−125933〜2013−125936等)のいずれか及び他の公知の方法を含む方法を用いるようにしてもよい。
次に、実施の形態1の予測装置1による変化点予測方法を適用した具体的な実施例について説明する。
実施例として、実施の形態1の変化点予測方法を、為替レートに適用した例を説明する。実施例では、例えば15の各国通貨の対ドル為替レートの2000年1月〜2007年12月までの各月の平均を項目として用い、その内のポンドドル(GBP/USD)を信号値として変化点予測方法に適用する。実施例における時間差モデルは、図5に示したように所定時間を1年として生成される。
予測装置1の制御部10は、時間差モデルを生成し(S102)、変数変換を行なった後(S103)、変換後の信号値を用いて信号トレンドを算出する(S104)。
図7(A)は、実施例の信号値及び信号値に対して算出される信号トレンドを示すグラフである。図7(A)の横軸は年月を時系列に示し、縦軸は信号値の大きさを示している。なお、図7(A)中では、信号値を白丸で示し、信号値に対して算出される信号トレンドを実線で示している。また図7(A)には、信号トレンドの符号の信号区間を(+)と(−)とで区別して示している。制御部10は、直近の信号トレンドは増加傾向(+)であるから、制御部10は図7(A)中の(+)で示される増加傾向の信号区間を選択する(S105)。
次に予測装置1の制御部10は、選択した信号区間を連続区間のように扱い、当該区間の信号値に対応する項目毎の項目値のMD及びMDトレンドを算出する(S106)。
図7(B)は、実施例で算出される項目MD及びMDトレンドを示すグラフである。図7(B)の横軸は年月を時系列に示し、縦軸は項目MDの大きさを示している。図7(B)では項目MDは丸印で、MDトレンドは実線にて示されている。なおステップS106では、予測対象期間における信号値(未知信号)に対応付けるべき項目値をも含めて項目MDが算出されている。予測対象期間に対応する項目MDは、図7(B)中で白丸により示している。
制御部10は、項目MDの正規確率及び正規確率のトレンドを算出し(S107)、算出された正規確率のトレンドに基づいて、直近項目MDを含む1循環分の信号区間を選択する(S108)。
図8(A)は算出された項目MDの正規確率及び正規確率トレンドを示すグラフである。図8(A)の横軸は年月を時系列に示し、縦軸は正規確率を示している。図8(A)では、項目MDの正規確率を丸印で示し、正規確率のトレンドを細い実線で示し、太い実線にて正規確率のトレンドが閾値0.5以上である第1トレンド区間と閾値0.5未満である第2トレンド区間とを区別して示している。制御部10は、予想対象期間の最新の区間が第2トレンド区間であると判断し、直近の第2トレンド区間と1つ前の第1トレンド区間とを1循環分の信号区間として選択する。図8(A)中、選択された1循環分の信号区間を「MD1循環」として示している。
制御部10は、ステップS108で選択した信号区間での未知項目を含む項目MD及び該項目MDのトレンドを再計算し(S109)、未知項目MDと同一符合の既知信号を選択する(S110)。
図8(B)は、再計算された項目MD及び項目MDトレンドを示すグラフである。図8(B)の横軸は年月を時系列に示し、縦軸は項目MDの大きさを示している。図8(B)中、各項目MDを丸印で示し、MDトレンドを細い実線で示し、太い実線にてトレンドの符号が同一の区間を(+)と(−)とで区別して示している。予測対象期間に対応する項目MDは、図8(B)中で白丸により示している。制御部10は、未知項目MDの符号を(−)と判断し、(−)の符号を示すトレンドに対応する区間を選択する。図8(B)中、ステップS110で選択される区間を「未知MDトレンド選択」として示しており、具体的には2007年1月から2007年12月が選択されている。
制御部10は、ステップS110にて図8(B)で示したように選択した区間(2007年1月から2007年12月)における信号値及び該信号値と時間差モデルで対応する各項目の項目値との関係と特定する特定式、即ち比例定数β及びSN比ηを算出する(S111)。制御部10は、S110で選択した区間における各信号値について、算出された比例定数β及びSN比ηを用いて出力の推定値を算出し、要因効果値、総合推定値のSN比に基づいて予測値を算出する(S112〜S119)。
図9は、実施例で算出された予測値を示すグラフである。図8の横軸は、ステップS209で選択された区間(2007年1月から2007年12月)以後の予測対象期間(2008年1月〜12月)を含む時間軸を示している。図9の縦軸は、USD/GBPのレートを示している。図9中、二重線が予測値を結ぶ線である。なお図9中、実績値を丸印で示し、白丸にて予測対象期間を含む以後の実績値を比較のために示している。
次に制御部10は、予測値算出処理によって得られた予測対象期間における予測値(図9の二重線)を、記録期間における既知の信号値と合わせて時系列データを作成する(S120)。ステップS120において制御部10は、記録期間(2000年1月〜2007年12月)における信号値に、予測対象期間(2008年1月〜12月)の予測値を連続させて時系列データを作成する。
制御部10は、作成された時系列データに対し、予測対象期間を含む期間全体における信号トレンドを算出し(S121)、トレンド勾配を算出する(S122)。
図10は、実施例で算出された信号トレンド及びトレンド勾配を示すグラフである。図10の横軸は年月を時系列に示し、左側の縦軸は信号トレンドに対応するUSD/GBPのレートを示し、右側の縦軸はトレンド勾配(信号トレンドの差分)に対応する数値を示している。なお図10では、図示を明確とするために記録期間中、2000年1月から2004年12月までの期間の信号トレンド及びトレンド勾配を省略して示している。
図10では、変化点において値が増加する場合は勾配が正、値が減少する場合は勾配が負で示されていることがわかる。
次に制御部10は、トレンド勾配のMDを算出する(S123)。
図11は、実施例で算出されたトレンド勾配のMDを示すグラフである。図11の横軸は図10と対応する年月を時系列に示し、縦軸(左側)はMDを示す。なお図11には比較のために図10の信号トレンドの勾配を下部に示し、縦軸(右側)にトレンド勾配に対応する値を示している。図11から、2008年後半に、MDが大きい値を示すことが読み取れる。
制御部10は、トレンド勾配のMDを最大値で除算して変化点スコアを算出する(S124)。
図12は、実施例で算出された変化点スコアを示すグラフである。図12の横軸は図11と対応する年月を時系列に示し、縦軸(右側)は変化点スコアを示す。図12では、変化点スコアは白抜きの棒グラフにより示されている。図12には比較のために信号値及び予測値を上部に示し、縦軸(左側)に信号値即ちUSD/GBPのレートを示している。図12中、二重線は信号値及び予測値からなる時系列データに対して求められる信号値トレンド(S121)を示している。このようにして、予測対象期間を含む期間の時系列データに対してトレンドを考慮した変化点が検出され、2008年後半に、USD/GBPのレートの変化点が予測されている。
(実施の形態2)
実施の形態1では、信号値の変化点を信号値の単一系列に基づいて予測する構成とした。これに対し実施の形態2では、信号値の予測に用いた複数の項目の総合的な変化点を合わせて予測し、信号値単独及び複数の項目の両面から信号値の変化点を予測する。
実施の形態1では、信号値の変化点を信号値の単一系列に基づいて予測する構成とした。これに対し実施の形態2では、信号値の予測に用いた複数の項目の総合的な変化点を合わせて予測し、信号値単独及び複数の項目の両面から信号値の変化点を予測する。
実施の形態2における予測装置1のハードウェア構成は、実施の形態1における予測装置1と同一であるから、同一の符号を付して詳細な説明を省略し、以下に、実施の形態2における予測装置1の制御部10により実行される処理手順について詳細を説明する。
図13は、実施の形態2における予測装置1の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。なお図13のフローチャートに示す処理手順の内、実施の形態1における図3及び図4のフローチャートと共通する手順については、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態2では、ステップS103における変数変換は、以下のように行う。変数変換は、生成した時間差モデルにおいて対応する信号値と項目毎の項目値との関係に基づき、信号値及び項目毎の項目値を変数変換するものである。しかしながら、ステップS102で生成した時間差モデルにおいて、未知信号に対応する未知項目には、対応する信号値がない。実施の形態2におけるステップS103では、制御部10は既知信号と既知項目との関係から定められる係数を項目毎に保存しておき、未知項目の各項目に乗ずることで変数変換を行う。
制御部10は、ステップS105で選択された区間を連続区間として、項目MDを未知信号に対応する項目も含めて算出し(ステップS131)、ステップS105で選択された信号区間を連続区間とし、更に予測対象期間を接続させた期間における時系列のMDを時系列データとして作成し(ステップS132)、作成したMDの時系列データに対し、隣り合う時点のMDのトレンド成分は略等しいというトレンドモデルに基づいて前記期間全体におけるMDトレンドを算出する(ステップS133)。
ステップS133におけるMDトレンドの算出には、状態空間モデルによる1次のトレンド成分を適用する。具体的には制御部10は、MDトレンドMDTn について、式(7)にて表現されるようにMDトレンドが時間軸において局所的に略一定の値をとり、前のタイミングにおけるトレンドMDTn-1 に対してMDTn ≒MDTn-1 であるというモデル(ランダムウォークモデル)を、ステップS131で作成された時系列のMDを観測値とする状態空間モデルに当てはめ、カルマンフィルタ及び平滑化処理等の処理を実行することによってMDトレンドを算出する。
次に制御部10は、ステップS133で算出したMDトレンドに対して風上差分からのトレンドの勾配を算出する(ステップS134)。制御部10は、算出した勾配のMDを算出し(ステップS135)、算出したMDを、MDの最大値で除算して変化点スコアを算出し(ステップS136)、処理を終了する。
実施の形態2の予測装置1による変化点予測方法を適用した具体的な実施例について説明する。実施例として、実施の形態1同様に変化点予測方法を為替レートに適用した例を説明する。
予測装置1の制御部10は、項目MDを未知信号に対応する項目も含めて算出し(S131)、予測対象期間を含む期間における時系列のMDを時系列データとして作成し(S132)、MDトレンドを算出し(S133)、MDトレンドの勾配を算出する(S134)。
図14は、実施例の項目MD、MDトレンド及びトレンド勾配を示すグラフである。図14の横軸は年月を時系列に示し、縦軸(左側)は項目MDに対応する数値を示している。図14中では、項目MDを黒丸で示し、予測対象期間に対応する項目MDを白丸で示し、MDトレンドを二重線にて示している。また、図14には下部に、算出されたトレンド勾配を示し、右側の縦軸にトレンド勾配に対応する数値が示されている。なお、図14中の項目MD、MDトレンド及びトレンド勾配は、ステップS105で選択された信号区間(図7(A)参照)に対応する項目について算出されているため途切れて示されている。図14に示すように、未知信号に対応する未知項目についても連続区間として扱われてMDトレンドが算出されている。MDトレンドの勾配の算出により、直近の信号トレンドと類似する区間にて該区間の信号値を発現させる“場”のトレンドの局所的な変化が得られる。
予測装置1の制御部10は、算出したMDトレンドの勾配のMDを算出し(S135)、算出したMDに基づき変化点スコアを算出する(S136)。
図15は、実施例の項目MDトレンドの勾配のMD及び変化点スコアを示すグラフである。図15の横軸は年月を時系列に示し、縦軸(左側)はMDに対応する数値を示し、縦軸(右側)は変化点スコアに対応する数値を示している。MDトレンドの勾配のMDを算出することにより、“場”のトレンドの局所的な変化の類似性を示す指標(値が大きいほど遠く、非類似を示す)が得られる。そして変化点スコアはMDの最大値で除算されて算出されているから、変化点スコアの最大値は1.0である。
図16は、実施例の複数項目に基づいて算出された変化点スコアを示すグラフである。図16の横軸は年月を時系列に示し、縦軸(右側)に変化点スコアを示している。図16中、変化点スコアは黒塗りの棒グラフにより示されている。図16には比較のために図14の項目MD及びMDトレンドを上部に示し、縦軸(左側)に項目MDに対応する値を示している。図16に示すように、信号値に関連する複数の項目の項目値に基づいて予測される変化点も2008年後半に検出されている。
実施の形態1及び2に示した処理手順を組み合わせ、変化点を評価することが可能である。具体的には、図3及び図4のフローチャートに示した処理手順の内のステップS105までの処理を行なった時点で、図13のフローチャートに示したステップS131〜S136を実行し、その後又は同時並行的に、図3及び図4のステップS106以降の処理を別途行なう。これにより、信号値の単一系列に基づいて予測される変化点と、信号値に関連する複数の項目の項目値に基づいて総合的に予測される変化点とを合わせて取得することができる。
図17は、実施例にて得られる信号値に基づく変化点スコアと、項目値に基づく変化点スコアとを合わせて表示したグラフである。図17の横軸は年月を時系列に示し、縦軸(左側)に信号値即ちUSD/GBPのレートを示し、縦軸(右側)に変化点スコアに対応する数値を示している。図17では、白丸で予測対象期間(2008年1月〜12月)中の予測値を示している。予測対象期間中も含め、黒丸は実績値を示している。また図17では、予測装置1により、信号値に基づいて算出された変化点スコアと信号値に関連する複数の項目の項目値に基づいて算出された変化点スコアとの和を白塗りの棒グラフで示し、項目に基づく変化点スコアを黒塗りの棒グラフで示している。
図17に示すように、信号値に基づく変化点スコアと、項目に基づく変化点スコアとに基づいて、2008年後半において変化点スコアの和「2」が算出されており、過去最大の変化点が予測されている。2008年後半には、所謂リーマンショックによって実績値に示すようにUSD/GBPレートには大きな変化があったのであるが、本発明に係る予測装置1の処理により、対応する変化点が予測されていることがわかる。詳細に分析すれば、信号値に基づく変化点スコアは、2008年4月から僅かに大きく予測されているが、項目に基づく変化点スコアは、2007年7月付近から大きく検出されている。2008年5月からは信号値に基づく変化点スコア及び項目に基づく変化点スコアのいずれにおいても変化点スコアが増幅し、2008年9月に最大値を迎えることが予測されている。
このようにして、信号値のみならず、該信号値を発現させる関連項目の項目値から推測される“場”の変化点を、将来を含む期間全体のトレンドに基づいて予測することができる。トレンドを考慮して変化点を予測することができるから、一時的な変動による影響を低減することができ、更に、信号値の背景となる“場”の変化点を関連項目の項目値に基づいて予測することができる。これにより、信号値の将来の変化点を精度よく予測することが可能となる。
なお、上述のように開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 予測装置
10 制御部
11 記録部
13 入力部
1P 予測プログラム
10 制御部
11 記録部
13 入力部
1P 予測プログラム
Claims (7)
- 時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段と、該記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行なう演算手段とを備え、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測する変化点予測装置であって、
前記演算手段は、
前記複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付け、各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出する予測値算出手段と、
記録期間における前記事象に係る値と、前記予測値算出手段により算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成する手段と、
作成された前記第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出するトレンド算出手段と、
該トレンド算出手段が算出したトレンドの勾配を算出するトレンド勾配算出手段と、
算出された勾配のマハラノビスの汎距離を算出するトレンド勾配距離算出手段と、
算出されたマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出する変化点検出手段と
を備えることを特徴とする変化点予測装置。 - 前記トレンド算出手段は、
前記事象に係る値は該値を発現させる状態が前記値に与える影響を表現する関数と白色雑音との和で記述される状態空間モデルに、各時点における前記事象に係る値がトレンドと白色雑音との和で記述されるトレンドモデル、及び前後する時点におけるトレンドは略等しいとするモデルを適用して状態空間モデルの解法に基づきトレンドを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の変化点予測装置。 - 前記勾配算出手段は、
前後する時点の内、前の時点におけるトレンドから後の時点におけるトレンドへの変化率を算出するようにしてある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の変化点予測装置。 - 前記演算手段は、
記録期間の内、前記予測対象期間の直近の期間における前記事象に係る値の経時変化傾向と同一傾向である期間を前記記録手段に記録されている期間から特定する期間特定手段と、
特定された期間における前記事象に係る値に対応する前記複数の項目毎の項目値のマハラノビスの汎距離を時系列に算出して第2の時系列データを作成する手段と、
作成された前記第2の時系列データに対し、該第2の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出する項目トレンド算出手段と、
該項目トレンド算出手段が算出した項目トレンドの勾配を算出する項目トレンド勾配算出手段と、
算出された勾配のマハラノビスの汎距離を算出する項目トレンド勾配距離算出手段と、
算出されたマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における前記事象に係る値に対応する複数の項目の変化点を検出する項目変化点検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の変化点予測装置。 - 前記変化点検出手段は、前記トレンド勾配距離算出手段により算出されたマハラノビスの汎距離を、前記記録期間中におけるトレンド勾配のマハラノビスの汎距離の最大値で除算した第1の変化点スコアを求める手段を更に備え、
前記項目変化点検出手段は、前記項目トレンド勾配距離算出手段により算出されたマハラノビスの汎距離を、前記特定された期間におけるトレンド勾配のマハラノビスの汎距離の最大値で除算した第2の変化点スコアを求める手段を更に備え、
前記演算手段は、
前記第1の変化点スコアと第2の変化点スコアとを加算して変化点スコアを算出するスコア算出手段を更に備える
ことを特徴とする請求項4に記載の変化点予測装置。 - 時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段を備えるプロセッサが、前記記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行ない、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測する変化点予測方法であって、
前記プロセッサは、
前記記録手段に記録されている複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付け、
各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出し、
記録期間における前記事象に係る値と、算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成し、
作成した第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出し、
算出したトレンドの勾配を算出し、
算出した勾配のマハラノビスの汎距離を算出し、
算出したマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出する
ことを特徴とする変化点予測方法。 - 時系列的に連続する事象に係る値及び該値に関連する複数の関連事象に係る値を複数の項目毎の項目値として前記値に対応付けて時系列に記録する記録手段を備えるコンピュータに、前記記録手段から前記値又は該値に対応する前記複数の項目毎の項目値を読み出して演算を行ない、記録期間よりも後の予測対象期間における前記事象の変化点を予測させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記記録手段に記録されている複数の項目の項目値と、該項目値に対応する期間から所定期間後の前記事象に係る値とを対応付けるステップと、
各項目について対応付けられた前記項目値と前記値との間の相関の強さを示す要因効果値に基づき選択される複数の項目の項目値から、前記事象に係る値の前記予測対象期間における予測値を算出するステップと、
記録期間における前記事象に係る値と、算出された前記予測対象期間における予測値とを連続させた第1の時系列データを作成するステップと、
作成した第1の時系列データに対し、該第1の時系列データのトレンドをトレンドモデルに基づき算出するステップと、
算出したトレンドの勾配を算出するステップと、
算出した勾配のマハラノビスの汎距離を算出するステップと、
算出したマハラノビスの汎距離に基づき前記予測対象期間を含む期間における変化点を検出するステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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