JP5822856B2 - クリープ損傷評価方法 - Google Patents
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Description
前記耐熱鋼管の外表面から内表面(以下、内表面を裏面という)までの深さ方向の応力分布を解析して、最も大きい応力が作用する最大応力深さ位置を算出する最大応力位置解析工程と、
前記耐熱鋼管の外表面から裏面側へ向かって所定厚さずつ削成し、深度の異なる複数の深さ位置のクリープボイド個数を計測して、それぞれのクリープボイド個数密度を算出するクリープボイド算出工程と、
前記クリープボイド算出工程にて算出した結果に基づいて、前記耐熱鋼管の深さ位置とクリープボイド個数密度との関係式を算出する実測結果算出工程と、
前記実測結果算出工程にて算出された関係式より、前記最大応力深さ位置のクリープボイド個数密度を推定する推定工程と、
予め設定されたクリープ損傷率とクリープボイド個数密度との関係式より、前記推定工程にて推定されたクリープボイド個数密度に対応する前記最大応力深さ位置のクリープ損傷率を算出する第1クリープ損傷率算出工程と、を備えることを特徴とする。
また、実測結果算出工程、推定工程及び第1クリープ損傷率算出工程は、短時間で実施することができる。これにより、クリープボイド個数を実測した後に、短時間でクリープ損傷率を算出するとともに、当該クリープ損傷率から残余寿命を評価することができるため、耐熱鋼管の処置判断期間を短縮することができる。
前記最大応力位置解析と併せて、前記耐熱鋼管の深さ位置とクリープ損傷率の関係式を算出する損傷率解析工程と、
前記損傷率解析工程にて算出された関係式を、前記第2クリープ損傷率算出工程にて算出された各深さ位置のクリープ損傷率に合わせて補正する補正工程と、
前記補正工程にて補正された関係式と前記第2クリープ損傷率算出工程にて算出されたクリープ損傷率との偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差算出工程にて算出された偏差が、予め設定された所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程にて前記偏差が前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記補正工程にて補正された前記関係式より前記最大応力深さ位置のクリープ損傷率を算出する第3クリープ損傷率算出工程と、を更に備えていてもよい。
前記耐熱鋼管の外表面から裏面側へ向かって前記耐熱鋼管の表面部を前記所定厚さ削って内部を露出させ、露出した面のクリープボイド個数をレプリカ法により計測してもよい。
前記耐熱鋼管の外表面を削って露出した面のクリープボイド個数を計測する際に、前記耐熱鋼管の厚さが予め設定された最小肉厚値未満となった場合に、前記耐熱鋼管を肉盛溶接して前記耐熱鋼管の厚さを前記最小肉厚値以上としてもよい。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1に示すように、陸用ボイラー等のプラントの耐熱鋼管1は、周方向に溶接部2を有している。この耐熱鋼管1は溶接金属4で溶接されており、溶接金属4の両側には熱影響部6が存在する。耐熱鋼管1には、クロムを9〜12%(質量%)程度含有した高クロム鋼が用いられている。また、類似組織を有するクロムを2〜3%(質量%)程度含有した高強度低合金鋼が用いられることもある。
最大応力位置解析工程では、最大応力が作用する深さ位置をFEM解析にて算出する。このFEM解析は、溶接部2の開先形状、ビード形状及び扁平を考慮して実施する。
最大応力は、図2に示すように、耐熱鋼管1の表面1aよりも内側の内部に発生する。
クリープボイド算出工程では、まず、図3(A)に示すように、熱影響部6の表面1aにレプリカ8を付着させてクリープボイド個数を計測し、クリープボイド個数密度Cdを算出する。
そして、露出した面(以下、第1深さ位置という)のクリープボイド個数を計測し、クリープボイド個数密度Cdを算出する。
そして、露出した面(以下、第2深さ位置という)のクリープボイド個数を計測し、クリープボイド個数密度Cdを算出する。
露出した面(以下、第3深さ位置という)のクリープボイド個数を計測し、クリープボイド個数密度Cdを算出する。
なお、耐熱鋼管1の表面部を削っても最小肉厚値以上の厚さを確保できる場合には、削った部分を肉盛溶接しなくてもよい。
図4に示すように、クリープボイド算出工程にて算出した各深さ位置のクリープボイド個数密度Cd(図中の点部)に基づいて、カーブフィッティングを行う。例えば、回帰分析にて多項式曲線の関係式(図中の実線部分)を算出する。
推定工程では、実測結果算出工程にて算出された関係式を用いて、最大応力位置解析工程で算出した最大応力深さ位置に対応するクリープボイド個数密度Cdを推定する。
マスターカーブは、高クロム鋼の試験片を配管と同様の条件下において予め予備試験によって算出されたものを用いる。
図6に示すように、まず、耐熱鋼管1のFEM解析によって最大応力が作用する最大応力深さ位置を算出する最大応力位置解析工程を実施する(ステップS1)。
耐熱鋼管1の表面1aから裏面1bまでの深さ方向の応力分布を解析して(図2参照)、最大応力が作用する最大応力深さ位置を算出する。
まず、熱影響部6の表面1aのクリープボイド個数を計測し(図3(A)参照)、その後、表面部を所定の深さd(例えば、1mm)だけ削って第1深さ位置のクリープボイド個数を計測する(図3(B)参照)。このように、表面部を所定の深さdだけ削って露出した面のクリープボイド個数を計測する作業を複数回実施する(図3(B)〜(D)参照)。
続いて、計測した各深さ位置のクリープボイド個数に基づいて、クリープボイド個数密度Cdをそれぞれ算出する。
ステップS3で算出したクリープボイド個数密度Cdと耐熱鋼管1の各深さ位置との関係に基づいてカーブフィッティングを行って、多項式曲線の関係式を算出する(図4参照)。
推定工程では、最大応力深さ位置に対応するクリープボイド個数密度Cdを算出する。
マスターカーブ(図5参照)より、ステップS7で算出されたクリープボイド個数密度Cdに対応するクリープ損傷率Dcを算出する。そして、このクリープ損傷率Dcに基づいて残余寿命を評価する。
図7に示すように、本実施形態に係るクリープ損傷評価方法は、上述したクリープボイド算出工程にて算出された各深さ位置のクリープボイド個数密度Cdに対応するクリープ損傷率Dcを上記マスターカーブ(図5参照)から、それぞれ算出する(第2クリープ損傷率算出工程)。
図8に示すように、耐熱鋼管1の表面1aから裏面1bまでの深さ方向の応力分布を解析して、耐熱鋼管1の深さ位置とクリープ損傷率Dcの関係式を算出する(損傷率解析工程)。
多項式回帰曲線の表面1aから最大応力深さ位置まで(図8中の右上がり曲線部分)は、次の(1)式で示すことができる。
Dc=f(t)・・・(1)式
ここで、Dc:クリープ損傷率、t:耐熱鋼管1の深さである。
図9に示すように、損傷率解析工程にて算出された(1)式を、第2クリープ損傷率算出工程にて算出された各深さ位置におけるクリープ損傷率Dcに合わせて補正する(補正工程)。
補正工程では、例えば、(1)式に補正値αを加えて次の(2)式とする。
Dc=f(t)+α・・・(2)式
判定工程では、(2)式を中心に上側及び下側にそれぞれ標準偏差に基づく上限曲線及び下限曲線を設定する。上限曲線及び下限曲線は、それぞれ(2)式からのずれが+10%、−10%となる位置に設けられる。
そして、偏差算出工程にて算出された偏差が、±10%以内の範囲内であるか否かを判定する。
具体的には、新たな深さ位置(例えば、表面1aからの深さが4d、5d、6dの第4〜第6深さ位置)のクリープボイド個数を計測するために、更に耐熱鋼管1の表面部を削る。そして、クリープボイド個数を計測して、第4〜第6深さ位置のクリープボイド個数密度Cdを算出する。
具体的には、第2クリープ第4〜第6深さ位置のクリープボイド個数密度Cdに対応するクリープ損傷率Dcを上記マスターカーブ(図5参照)から、それぞれ算出する。続いて、表面1a、第1〜第6深さ位置までのクリープ損傷率Dcに基づいて、再び損傷率解析工程、補正工程(図11参照)及び判定工程を実施する。
図12に示すように、まず、第1実施形態と同様にステップS1(最大応力位置解析工程)を実施する。
損傷率解析工程では、設計図面等に基づいてFEM解析を行い、多項式回帰曲線を算出する(図8参照)。特に、多項式回帰曲線の表面1aから最大応力深さ位置までを上記(1)式で示す。
第2クリープ損傷率算出工程では、ステップS3にて算出された表面1a及び第1〜第3深さ位置のクリープボイド個数密度Cdに対応するクリープ損傷率Dcをそれぞれ算出する(図7参照)。
補正工程では、上記(1)式に、例えば補正値αを加えて上記(2)式とする(図9参照)。
なお、本実施形態においても、第1実施形態で示した効果を得ることができる。
1a 表面
1b 裏面
2 溶接部
4 溶接金属
6 熱影響部
8 レプリカ
Claims (4)
- 高温機器に使用される耐熱鋼管の溶接部のクリープ損傷程度を評価するクリープ損傷評価方法において、
前記耐熱鋼管の表面から裏面までの深さ方向の応力分布を解析して、最も大きい応力が作用する最大応力深さ位置を算出する最大応力位置解析工程と、
前記耐熱鋼管の表面から裏面側へ向かって所定厚さずつ削成し、深度の異なる複数の深さ位置のクリープボイド個数を計測して、それぞれのクリープボイド個数密度を算出するクリープボイド算出工程と、
前記クリープボイド算出工程にて算出した結果に基づいて、前記耐熱鋼管の深さ位置とクリープボイド個数密度との関係式を算出する実測結果算出工程と、
前記実測結果算出工程にて算出された関係式より、前記最大応力深さ位置のクリープボイド個数密度を推定する推定工程と、
予め設定されたクリープ損傷率とクリープボイド個数密度との関係式より、前記推定工程にて推定されたクリープボイド個数密度に対応する前記最大応力深さ位置のクリープ損傷率を算出する第1クリープ損傷率算出工程と、を備えることを特徴とするクリープ損傷評価方法。 - 予め設定されたクリープ損傷率とクリープボイド個数密度との前記関係式より、前記クリープボイド算出工程にて算出された各深さ位置のクリープボイド個数密度に対応するクリープ損傷率をそれぞれ算出する第2クリープ損傷率算出工程と、
前記最大応力位置解析と併せて、前記耐熱鋼管の深さ位置とクリープ損傷率の関係式を算出する損傷率解析工程と、
前記損傷率解析工程にて算出された関係式を、前記第2クリープ損傷率算出工程にて算出された各深さ位置のクリープ損傷率に合わせて補正する補正工程と、
前記補正工程にて補正された関係式と前記第2クリープ損傷率算出工程にて算出されたクリープ損傷率との偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差算出工程にて算出された偏差が、予め設定された所定の範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程にて前記偏差が前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記補正工程にて補正された前記関係式より前記最大応力深さ位置のクリープ損傷率を算出する第3クリープ損傷率算出工程と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のクリープ損傷評価方法。 - 前記クリープボイド算出工程において、
前記耐熱鋼管の表面から裏面側へ向かって前記耐熱鋼管の表面部を前記所定厚さ削って内部を露出させ、露出した面のクリープボイド個数をレプリカ法により計測することを特徴とする請求項1に記載のクリープ損傷評価方法。 - 前記クリープボイド算出工程において、
前記耐熱鋼管の表面を削って露出した面のクリープボイド個数を計測する際に、前記耐熱鋼管の厚さが予め設定された最小肉厚値未満となった場合に、前記耐熱鋼管を肉盛溶接して前記耐熱鋼管の厚さを前記最小肉厚値以上とすることを特徴とする請求項3に記載のクリープ損傷評価方法。
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