JP5822721B2 - プラズマ溶射の電極管理装置及びプラズマ溶射システム - Google Patents
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Description
本発明は、水素ガスを含む作動ガス中で、一対の電極間にアーク放電を発生させて高温高速のプラズマジェットを発生させ、該プラズマジェットに溶射材を投入して皮膜を形成するプラズマ溶射の電極管理装置であって、電極に所定値以上の電圧低下または電力低下が生じた場合に、水素ガス量および前記電極に流れる電流を調整することにより、プラズマ出力を回復させる制御手段と、前記水素ガス量および前記電流の上限値をそれぞれ記憶する記憶手段と、前記水素ガス量または前記電流が前記記憶手段に記憶されている前記上限値を超えた場合に作動する報知手段とを具備し、前記制御手段は、前記電極に所定値以上の電圧低下または電力低下が生じた場合に、まずは前記水素ガス量を調整することにより前記プラズマ出力を回復させ、前記水素ガス量が前記上限値に達した後は、前記水素ガス量を前記上限値で維持しながら、前記電流を増加させることにより、前記プラズマ出力を回復させるプラズマ溶射の電極管理装置を提供する。
このように、水素ガス量だけでなく、電極に流れる電流も増加させることにより、水素ガス量だけを制御する場合に比べて、より長い期間に渡ってプラズマ出力を略一定に保つことが可能となる。
事前に、前記電極の電圧低下または電力低下に応じて前記作動ガス中に含まれる水素ガス量を変化させて、それぞれ異なる水素ガス量で複数の試験片に皮膜を形成し、複数の前記試験片の各々に形成された皮膜の品質評価を行う。そして、予め設定されている全ての評価項目の基準値を満足する皮膜を形成したときの最大の水素ガス量を特定し、特定した前記最大の水素ガス量を上限値として決定する。
以下に、本発明の第1実施形態に係るプラズマ溶射の電極管理装置及びプラズマ溶射システムについて、図面を参照して説明する。
本実施形態では、本発明に係るプラズマ溶射の電極管理装置及びプラズマ溶射システムをガスタービンに用いられる静翼、動翼、燃焼器等の高温部材の遮熱コーティングの形成に適用する場合について説明する。なお、本発明はこの例に限定されず、他の目的で皮膜を形成するプラズマ溶射に広く適用することが可能である。
図1に示すように、プラズマ溶射システム1は、プラズマ溶射を行うプラズマ溶射装置10と、プラズマ溶射装置10が備える電極の交換時期を作業員に報知する電極管理装置20とを備えている。
プラズマ溶射部2は、アノード陽極5aとカソード陰極5bとからなる一対の電極5を備えている。電極5には、溶射用電源6から高電圧が印加される。電極5における電圧及び電流は計測部13によって計測され、電圧計測値及び電流計測値が電極管理装置20に出力される。
アルゴンガス供給路L1及び水素ガス供給路L2には、ガス圧力及び流量を調整するための調節弁8,9がそれぞれ設けられている。
制御部21には、計測部13から電圧計測値及び電流計測値が入力される。制御装置21は、電極5に所定値以上の電圧低下(または所定の電力(=電圧×電流)低下)が生じた場合に、電圧上昇に寄与するパラメータを調整することにより、プラズマ出力を回復させる。例えば、制御部21は、予め設定されている第1閾値以上の電圧低下が電極5に生じた場合に、調節弁9の開度を開く方向に調節し、作動ガス中に含まれる水素ガス量を増加させる。
また、制御装置21は、計測部13から通知された電圧計測値及び電流計測値を電極管理装置20が備える図示しない表示部に表示させる機能を有していてもよい。
報知部23は、作動ガス中に含まれる水素ガス量が記憶部22に格納されている上限値に達した場合に作動し、電極の交換を作業員に知らせる。報知部23は、例えば、ランプや表示器などであってもよく、また、通信媒体を介して上位の監視システム等にその旨を通知するような構成とされていてもよい。
また、このようにして電極の交換時期を通知しても、電極の交換が行われなかった場合には、報知部23が作動してから所定の期間後に、プラズマ溶射を停止させることとしてもよい。これにより、品質が低下した遮熱コーティングの形成を停止することができる。
このようにして決定された水素ガス量の上限値は、記憶部22に記憶され、以降の遮熱コーティングの形成において用いられることとなる。
また、上記評価に加えて、遮熱コーティング時における溶射フレームの安定度、歩留まり、電極の消耗度なども評価結果として考慮することとしてもよい。
更に、実際の成膜運転時と同じ条件で事前に試験を行って、水素ガス量が異なる状態における試験片の遮熱コーティングの状態を評価し、全ての評価項目の基準値を満たすときの水素ガス量の最大値を上限値として記憶部22に記憶するので、歩留まりや遮熱コーティングの品質が一定量以上低下する前に電極を交換することができる。これにより、電極の消耗による歩留まりの低下を抑制することができるとともに、皮膜の所望の品質を維持することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係るプラズマ溶射の電極管理装置及びプラズマ溶射システムについて、図面を参照して説明する。
上述した第1実施形態では、水素ガス量を増加させることで、電圧を回復させて、プラズマ出力を一定に制御していたが、本実施形態では、電極5に流す電流を増加させることで、電圧低下によって生じた電力(電圧×電流)の低下を回復させる。電力(電圧×電流)を一定に保つことで、プラズマ出力を一定に制御することが可能となる。
図2は、本発明の第2実施形態に係るプラズマ溶射システムの全体構成を概略的に示した図である。図2において、図1と同一の構成については同一の符号を付している。
図2において、記憶部22´には、電流の上限値が記憶されている。制御部21´は、計測部13によって計測される電極5の電圧計測値と電流計測値とから電力を算出し、電力が予め設定されている第1閾値以下となった場合に、電流を増加させる。電流の増加制御の一例としては、予め設定されている所定量増加させる方法や、電力が第1閾値よりも大きな値に設定されている第2閾値に達するまで増加させる方法が挙げられる。
記憶部22´に格納される上限値は、上述した第1実施形態と同様の手法により求められたものである。
なお、本実施形態では、電力が第1閾値以下となった場合に電流を増加させることとしたが、電極5の電圧が予め設定されている所定の閾値以下となった場合に、電流を増加させることとしてもよい。
この場合、記憶部には、水素ガス量の上限値と電流値の上限値との両方が記憶されていることとなる。また、この場合における電流の上限値については、水素ガス量を上限値に維持した状態で、電流値をそれぞれ異ならせたときの遮熱コーティングの試験片を得、これらの中から全ての評価項目において基準値を超える最大の電流値を上限値として設定することとすればよい。
このように、アルゴンガス流量を増加させることによっても、歩留まり低下や遮熱コーティングの品質劣化の抑制を期待することができる。
2 プラズマ溶射部
3 作動ガス供給装置
4 粉末供給装置
5 電極
5a アノード陽極
5b カソード陰極
6 溶射用電源
9 調節弁
10 プラズマ溶射装置
13 計測部
20,20´ 電極管理装置
21,21´ 制御部
22,22´ 記憶部
23 報知部
Claims (5)
- 水素ガスを含む作動ガス中で、一対の電極間にアーク放電を発生させて高温高速のプラズマジェットを発生させ、該プラズマジェットに溶射材を投入して皮膜を形成するプラズマ溶射の電極管理装置であって、
電極に所定値以上の電圧低下または電力低下が生じた場合に、水素ガス量および前記電極に流れる電流を調整することにより、プラズマ出力を回復させる制御手段と、
前記水素ガス量および前記電流の上限値をそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記水素ガス量または前記電流が前記記憶手段に記憶されている前記上限値を超えた場合に作動する報知手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記電極に所定値以上の電圧低下または電力低下が生じた場合に、まずは前記水素ガス量を調整することにより前記プラズマ出力を回復させ、前記水素ガス量が前記上限値に達した後は、前記水素ガス量を前記上限値で維持しながら、前記電流を増加させることにより、前記プラズマ出力を回復させるプラズマ溶射の電極管理装置。 - 事前に、前記電極の電圧低下または電力低下に応じて前記作動ガス中に含まれる水素ガス量を変化させて、それぞれ異なる水素ガス量で複数の試験片に皮膜を形成し、
複数の前記試験片の各々に形成された皮膜の品質評価を行い、
予め設定されている全ての評価項目の基準値を満足する皮膜を形成したときの最大の水素ガス量を特定し、
特定した前記最大の水素ガス量が前記上限値として前記記憶手段に記憶されている請求項1に記載のプラズマ溶射の電極管理装置。 - 前記皮膜の品質が全ての評価項目の基準値を満足し、かつ、該皮膜を形成したときの歩留まりが所定の値以上である最大の水素ガス量が前記上限値として前記記憶手段に記憶されている請求項2に記載のプラズマ溶射の電極管理装置。
- 事前に、前記水素ガス量を上限値に設定した状態で、前記電極の電圧低下または電力低下に応じて前記電極に流れる電流を変化させて、それぞれ異なる電流値で複数の試験片に皮膜を形成し、
複数の前記試験片の各々に形成された皮膜の品質評価を行い、
予め設定されている全ての評価項目の基準値を満足する皮膜を形成したときの最大の電流値を特定し、
特定した前記最大の電流値が前記上限値として前記記憶手段に記憶されている請求項1から請求項3のいずれかに記載のプラズマ溶射の電極管理装置。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラズマ溶射の電極管理装置を備えるプラズマ溶射システム。
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