以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は本発明の実施形態に係る露光装置の全体の構成を示す側面図、図1(b)はマスクを示す平面図、図1(c)は同じく遮光部材としてのアパーチャを示す平面図である。図1(a)に示すように、本実施形態に係る露光装置には、例えばロール状の供給リール41から露光対象のフィルム1が連続的に供給され、巻き取り側のリール44に巻き取られるまでの間に、例えば、配向膜材料の塗布、露光、乾燥処理等が施される。なお、図1(a)においては、フィルム1に対する露光工程のみを図示している。例えば供給リール41及び巻取リール44は、モータ等の駆動装置により回転駆動されることにより、露光装置内にフィルム1が連続的に供給され、フィルム1の表面側又は裏面側に設けられた搬送ローラ42,43等により、フィルム1は緊張状態で支持されている。そして、露光装置内においては、フィルム1は、供給リール41及び巻取リール44の回転駆動力により、1方向に移動される。本実施形態においては、2個の搬送ローラ42,43間におけるフィルム1の上方に、光源、マスク及びアパーチャが2組設けられている。そして、光源5A,5Bから、夫々、偏光方向が異なる露光光を出射させ、アパーチャ3A,3B及びマスク2A,2Bを透過した露光光をフィルム1の表面に形成された配向材料膜に照射することにより、露光光ごとに偏光方向が異なる配向膜(本発明における偏光部)を帯状に形成する。即ち、例えば、光源5Aから出射された露光光により、偏光方向が−45°の直線偏光又は偏光方向がCW(Clock Wise)の円偏光の表示光を透過させる配向膜aを形成し、光源5Bから出射された露光光により、偏光方向が+45°の直線偏光又は偏光方向がCCW(Counter Clock Wise)の円偏光の表示光を透過させる配向膜bを形成する。
フィルム1の移動方向の上流側には、フィルム1が露光時の加熱又は搬送時の冷却等により熱変形していない位置において、フィルムの両側部に線状のフィルムアライメントマーク1aを形成するアライメントマーカ6が設けられている。
図1(b)に示すように、マスク2は、遮光性の材料からなる基部2aに、フィルム1の移動方向(第1方向)に直交する方向(第2方向)に複数本のスリット2bが配列されたものであり、各スリット2bは、その幅が長手方向に関して線形的に変化するように設けられており、スリット間の間隔はフィルム移動方向に直交する方向に関してスリットの幅と同一である。即ち、図1(b)に示すマスクにおいて、各スリット2bの幅は、最上部が最も狭く、スリットの長手方向に沿って下方へ行くほど、広くなるように設けられている。そして、各スリット2bは、フィルム1の移動方向に傾斜して延びている。このスリット2bの傾斜は、フィルム移動方向に直交する方向に関して、マスク2の中央よりも側部側の方が大きく、例えばフィルム移動方向における各スリット2bの長さを300mmとしたときに、マスク2の最も側部側のスリットの縁部は、フィルム移動方向における端部間がフィルム移動方向に直交する方向に500μm程度偏倚して設けられている。
マスク2の側部には、例えばアライメントマーカ6によりフィルム1の側部に形成されたフィルムアライメントマーク1aを検出するための観察窓2dが、例えばフィルム移動方向におけるスリットの長さと同程度の長さで設けられており、観察窓2dには、フィルム移動方向に対して傾斜するようにマスクアライメントマーク2eが設けられている。このマスクアライメントマーク2eは、例えばフィルム移動方向に直交する方向における両端部に位置するスリット2bの側縁と平行な線状のマークである。図1(a)に示すように、マスク2の上方には、カメラ7(図1における符号7A,7B)が設けられており、カメラ7(7A,7B)により、マスクアライメントマーク2eと共に、観察窓2dを介してフィルムアライメントマーク1aを検出できるように構成されている。
アパーチャ3は、例えばSUS製の遮光性の板材であり、図1(c)に示すように、その基部3aの中央には、1方向に延びるように、幅が例えば20乃至30mmの開口3bが設けられている。そして、この開口3bの長手方向がフィルム1の移動方向に直交するように光源5とマスク2との間に配置されている。よって、光源5から出射された露光光は、アパーチャ3によりその一部が遮光され、アパーチャ3の開口3bを透過した露光光のみがマスク2に照射される。よって、制御部により、フィルム移動方向におけるマスク2と遮光部材3との相対的位置が制御されることにより、マスク2に対する露光光の照射位置がフィルム移動方向に移動し、マスク2のスリット2bを透過してフィルム1上に照射される露光光の照射位置がフィルム移動方向に移動すると共に、露光光照射領域の幅が変化する。
前記マスク2は、図2に示すように、例えばアクチュエータ等(図示せず)により、アパーチャ3に対して、相対的にフィルム移動方向に移動可能に構成されており、アパーチャ3とマスク2とのフィルム移動方向における相対的位置は、図示しない制御部により制御されている。そして、制御部により、マスクアライメントマーク2eとフィルムアライメントマーク1aとの位置関係が所定関係になるように、フィルム移動方向におけるマスク2と遮光部材3との相対的位置が例えば以下のように制御される。
上述の如く、本実施形態においては、マスク2に設けられた複数本のスリット2bは、フィルム1の移動方向に傾斜して延び、また、各スリット2bの幅は、フィルム1の移動方向に沿って線形的に変化するように設けられており、スリット間の間隔はフィルム移動方向に直交する方向からみたときにスリットの幅と同一である。よって、図2(a)及び図2(b)に示すように、アパーチャ3に対してマスク2が相対的にフィルム移動方向に移動されると、これに伴って、アパーチャ3の開口3bを透過してマスク2に照射される露光光の照射位置がフィルム移動方向に移動し、スリット2bに透過されてフィルム1上に照射される露光光の照射領域の幅が変化する。これにより、例えば露光時の高温等により、フィルム1が膨張した場合においても、変形後のフィルム1の幅に対応させて、フィルム1上に形成される帯状の露光領域の幅を調節することができる。本実施形態においては、制御部は、例えば、カメラにより検出されるマスクアライメントマーク2eとフィルムアライメントマーク1aとが、フィルム移動方向に直交する方向において、一定の距離(例えば10mm)離隔するように、マスク2をフィルム移動方向に移動させる。これにより、フィルム1がその幅方向に膨張した場合においても、フィルム1の幅方向の伸び量に基づいて、フィルム上の露光領域の幅を調節することができる。
この制御部による、露光領域幅の制御方法について、図3を参照して詳細に説明する。図3は、フィルムアライメントマーク及びマスクアライメントマークによるマスク位置の調節を一例として示す図であり、図3(a)は、フィルムが幅方向に変形していない状態を示す図、図3(b)は、フィルムが幅方向に膨張した状態を示す図である。この図3において、符号71は、カメラ7による検出領域を示し、例えばこの検出領域71のフィルム移動方向における幅は、アパーチャ3の開口3bと同一の幅であり、カメラ7は、フィルムアライメントマーク1a及びマスクアライメントマーク2eを、開口3bとフィルム移動方向に並ぶ位置にて検出する。図3(a)に示すように、フィルム1がその幅方向に変形していない場合において、検出領域7aにおけるフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの距離は、例えば10mmである。ここで、フィルム1が例えば露光時の加熱により、その幅方向に膨張した場合、図3(b)に示すように、フィルムアライメントマーク1aの位置は、観察窓2d内において、外側(図3における左側)に移動し、マスクアライメントマーク2eに対する距離が大きくなる。よって、アパーチャ3の位置を図3(a)に示す状態として露光を継続した場合、フィルム1は、その後の例えば搬送により冷却されて収縮し、膨張していない元の幅に戻ることにより、露光領域の幅が狭くなる。従って、フィルム1上に形成される配向膜a及び配向膜bの幅は、例えば表示装置の画素又は絵素の幅に対して小さくなり、配向膜a及び配向膜bと表示装置の画素又は絵素との間に幅のずれが生じ、表示不良の原因となる。
本実施形態においては、このフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間で一定の距離を維持するように、制御部は、例えばフィルム移動方向におけるマスク2の位置を制御する。即ち、図3(b)に示すように、制御部は、カメラ7による検出領域71内において、フィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの距離が10mmとなるように、マスク2をアパーチャ3に対してフィルム移動方向に相対的に移動させ、アパーチャ3の開口3bを、マスク2のスリット2bの幅広の領域に対応させる。よって、本実施形態においては、フィルム1の幅方向の伸び量に基づいて、フィルム上の露光領域の幅を広く調節することができる。これにより、本実施形態においては、フィルム1が、その後の例えば搬送により冷却されて収縮し、膨張していない元の幅に戻った場合においても、フィルム1上に形成される配向膜a及び配向膜bの幅を、例えば表示装置の画素又は絵素の幅に精度よく対応させることができ、表示不良を防止できる。
また、マスクのスリット2bとフィルムアライメントマーク1aとは、実際には、例えば30mm程度離隔しているが、本実施形態のように、マスクアライメントマーク2eをフィルム1の移動方向に直交する方向の両端部に位置するスリット2bの側縁と平行に構成することにより、マスクアライメントマーク2eをフィルム移動方向に直交する方向の端部に設けられたスリット2bの側縁に見立てることができ、例えば10mm程度と狭い範囲内でアライメントを行い、露光領域の幅を調節することができる。
なお、図3においては、図示の都合上、フィルム1及びマスク2一方の側部のみを図示しているが、上記マスク位置の制御は、フィルム1の両側部のフィルムアライメントマーク1aとマスク2の両側部のマスクアライメントマーク2eとの間で行われる。つまり、フィルム1の一方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離と、フィルム1の他方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離とは、いずれも例えば10mmである。
しかし、搬送ローラ42,43間を移動する間にフィルム1が蛇行すると、フィルム移動方向に直交する方向におけるマスク2の中央位置とフィルム1の中央位置がずれ、フィルムの一方の側部におけるフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離が他方の側部におけるフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離と異なってしまう。これを解消するために、本実施形態においては、制御部は、フィルム移動方向に直交する方向において、カメラ7が検出した1対のマスクアライメントマークの中央位置が、1対のフィルムアライメントマーク1aの中央位置と一致するように、マスク2のフィルム移動方向に直交する方向における位置を調節し、これにより、マスク2の中央位置とフィルム1の中央位置とを位置合わせできるように構成されている。つまり、蛇行が生じても、フィルム1の一方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離と、フィルム1の他方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離とは、いずれも例えば10mmであるように制御される。
次に、上述の如く構成された本実施形態の露光装置の動作について説明する。露光対象のフィルム1は、例えばロール状の供給リール41から連続的に供給され、巻き取り側のリール44に巻き取られるまでの間に、例えば、配向膜材料の塗布、露光、乾燥処理等が施される。即ち、露光装置内に供給されるフィルム1の表面には、配向材料が膜状に塗布されている。
図4に示すように、本実施形態においては、先ず、アライメントマーカ6により、露光装置内に供給されたフィルム1の側部に、線状のフィルムアライメントマーク1aを連続的又は断続的に形成する。このフィルムアライメントマーク1aを形成する時点においては、フィルム1は熱変形していない。フィルムアライメントマーク1aが形成されたフィルム1は、例えば供給リール41及びリール44等の回転駆動力により、露光装置内に連続的に供給され、露光装置内においては、搬送ローラ42,43等により支持されて、露光装置内を1方向に移動される。このとき、例えば、露光時の高温等により、フィルム1が膨張する。搬送ローラ42,43等によりフィルムが搬送されている間においては、特に、フィルム1はその移動方向に直交する幅方向に変形しやすく、加熱による膨張により、フィルム1の幅が大きくなる。
露光前に熱膨張したフィルム1は、搬送ローラ42,43等による搬送により、露光光の照射位置に搬送される。この膨張後のフィルム1において、フィルムアライメントマーク1aは、幅方向に伸びが生じていない場合から、図3(b)に示すように、観察窓2d内において、外側(図3における左側)に移動している。カメラ7は、マスクアライメントマーク2eと共に、観察窓2dを介してフィルムアライメントマーク1aを検出し、検出結果は、図示しない制御部に送信される。そして、制御部は、カメラ7による検出領域71内において、フィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの距離が10mmとなるように、例えばアクチュエータ等により、マスク2をアパーチャ3に対してフィルム移動方向に相対的に移動させ、アパーチャ3の開口3bを、マスク2のスリット2bの幅広の領域に対応させる。
本実施形態においては、マスク2に設けられたスリット2bは、フィルム移動方向における長さが300mmであり、マスク2の最も側部側におけるスリット2bの縁部は、フィルム移動方向における端部間がフィルム移動方向に直交する方向に500μm(マスク2の両側部で1000μm)程度変位するように設けられている。よって、例えば、フィルムの伸びに伴って、マスクアライメントマーク1aが側方に50μm移動した場合には、制御部は、マスク2の位置を、フィルム1が膨張していない状態に対応する位置からフィルム移動方向に30mm移動するように制御し、フィルム1に対する露光光の照射領域の幅を広げる。即ち、光源5A,5Bから出射された露光光は、アパーチャ3の開口3bを透過し、マスク2上に照射されるが、アパーチャ3に対するマスク2の相対的位置がフィルム移動方向に移動されることにより、アパーチャ3の開口3bを透過してマスク2に照射される露光光の照射位置がフィルム移動方向に移動する。本発明においては、マスク2に設けられた複数本のスリット2bは、フィルム移動方向に傾斜して延び、また、各スリット2bの幅は、フィルム1の移動方向に沿って線形的に変化するように設けられている。よって、マスク2の移動に伴って、マスク2に対する露光光の照射位置がフィルム移動方向に移動すると、スリット2bに透過されてフィルム1上に照射される露光光照射領域の幅が変化する。このように、本実施形態においては、フィルム1が膨張してその幅方向に伸びた場合においても、変形後のフィルム1の幅に対応させて、フィルム1上に形成される帯状の露光領域の幅を調節することができる。よって、本実施形態においては、フィルム1がその移動方向に直交する幅方向に変形した場合においても、マスク2を取り替えることなく露光できる。
露光光の照射により、フィルム1上に塗布された配向材料は、照射光の偏光方向に応じて光配向し、配向膜が形成される。例えば、光源5Aから出射された露光光により、偏光方向が―45°の直線偏光又は偏光方向がCW(Clock Wise)の円偏光の表示光を透過させる配向膜aが形成される。一方、マスク2のスリット2b間の領域には、露光光は透過されないため、配向膜a間には未露光の領域が残される。このマスク2のスリット2b間の間隔は、スリット2bの幅と同一であるため、配向膜a間の未露光の領域は、配向膜aと幅が等しい。本実施形態においては、フィルム移動方向の下流側に設けられた光源5B、マスク2B、及びアパーチャ3Bにより、この未露光の領域が露光される。
この場合においても、例えばカメラ7により、フィルムアライメントマーク1a及びマスクアライメントマーク2eの位置が検出され、検出結果は、図示しない制御部に送信される。そして、配向膜aの形成工程と同様に、制御部は、フィルムアライメントマーク1a及びマスクアライメントマーク2eとの位置関係が所定関係になるように、フィルム移動方向におけるマスク2と遮光部材3との相対的位置を制御する。例えばマスク2をアパーチャ3に対して相対的にフィルム移動方向に移動させるように制御する。よって、フィルム移動方向下流側においても、フィルム1の幅に対応させて、フィルム1上に形成される帯状の露光領域の幅を調節することができ、フィルム1がその移動方向に直交する幅方向に変形した場合においても、マスク2を取り替えることなく露光できる。
そして、光源5Bから出射された露光光の照射により、配向膜a間の未露光の領域に配向膜aと隣接するように、偏光方向が+45°の直線偏光又は偏光方向がCCW(Counter Clock Wise)の円偏光の表示光を透過させる配向膜bが形成される。
フィルム1は、搬送に伴い、その移動方向に直交する方向に蛇行する場合がある。しかし、本実施形態のように、光源5、マスク2及びアパーチャ3が2組設けられ、偏光方向が異なる2種類の露光光を照射する形式の露光装置においては、配向材料を光配向させる2種類の露光光は、その照射位置の相対的な位置合わせが重要となる。例えば、露光光の照射位置がフィルム1の幅方向にずれてしまうと、未露光の領域が残ったり、重ね露光される領域が生じて、露光不良となる。しかし、本実施形態においては、フィルムアライメントマーク1aは、フィルム1の両側部に形成され、制御部は、フィルム移動方向に直交する方向において、カメラ7が検出した1対のマスクアライメントマーク2eの中央位置が、1対のフィルムアライメントマーク1aの中央位置と一致するように、マスク2のフィルム移動方向に直交する方向における位置を制御する。つまり、蛇行が生じても、フィルム1の一方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離と、フィルム1の他方の側のフィルムアライメントマーク1aとマスクアライメントマーク2eとの間の距離とは、いずれも例えば10mmであるように制御される。よって、フィルム1が、移動に伴って蛇行した場合においても、フィルム移動方向に直交する方向におけるマスク2の位置が調節されることにより、上記露光不良を防止できる。
露光光の照射により、配向膜a,配向膜bが形成されたフィルムは、搬送により、冷却され、やがて、膨張前の幅に収縮する。よって、幅広に形成された配向膜a,配向膜bは、フィルム1の収縮に伴い、所定の幅となり、図5に示すような偏光フィルムが製造される。
以上のように、本実施形態においては、フィルム1が加熱によりその幅方向に膨張した場合においても、マスク2に設けられたスリット形状、アパーチャ3の構成及び制御部による制御により、マスクを取り替えることなく露光できる。
なお、本実施形態においては、フィルム1が加熱により膨張した場合について述べたが、フィルム1が露光前に例えば冷却されて収縮している場合においても、制御部により、マスクアライメントマーク2eとフィルムアライメントマーク1aとの位置関係が所定関係になるように、マスク2とアパーチャ3とのフィルム移動方向における相対的位置を制御することにより、マスクを取り替えることなく、偏光フィルムを精度よく製造することができる。
また、本実施形態においては、光源5、マスク2及びアパーチャ3がフィルムの移動方向に沿って2組配置され、光源5A,5Bが夫々、偏光方向が異なる露光光を出射し、配向膜a及び配向膜bを一連の工程で形成する場合について説明したが、配向膜a及び配向膜bを形成する露光装置は、夫々、別の露光装置を使用してもよい。又は、フィルムに対する露光光の照射方向を偏光することにより、1台の露光装置により、偏光方向が異なる配向膜を形成することもできる。
更に、本実施形態においては、アパーチャ3が光源5とマスク2との間に配置されている場合について説明したが、本発明においては、フィルム1に対する露光光の照射領域をマスク2のスリット2b及びアパーチャ3の開口3bにより規制できればよく、アパーチャ3は、例えばマスク2とフィルム1との間に配置されていてもよい。
更にまた、本実施形態においては、カメラ7がマスク2の上方に設けられ、マスク2の側部に、フィルムアライメントマーク1aを検出するための観察窓2dが設けられている場合について述べたが、本発明においては、例えばカメラ7等の検出部は、フィルム1の下方に設けられていてもよい。この場合においては、観察窓2dは設けられていなくてもよく、マスクアライメントマーク2eが例えばマスク2の下面に設けられ、カメラ7によりフィルムアライメントマーク1a及びマスクアライメントマーク2eをフィルム1の下方から検出できるように構成してもよい。
更にまた、マスク2としては、図5に示すようなスリット2bを有するマスク2Cを使用することができる。このマスク2Cにおいても、複数本のスリット2bは、その幅がフィルム移動方向に関して線形的に変化しており、スリット間の間隔は、フィルム移動方向に直交する方向からみたときに、スリット2bの幅と同一である。図5に示すマスク2Cにおいては、マスク2Cの両端部に設けられたスリットのうち、一端部に設けられたスリット2bは、その側縁がフィルム1の移動方向と平行に設けられており、その他の複数本のスリット2bは、フィルム1の移動方向に傾斜して延び、スリット2bの傾斜は、フィルム移動方向に直交する方向に関して、一端部側から他端部側へと、徐々に大きくなるように設けられている。このようなマスク2Cを使用した場合においては、フィルム移動方向に平行な側縁を有する一端部のスリット2bを基準として、マスク2の位置を制御することができる。例えばフィルム移動方向に対して傾斜が最も大きい他端部のスリット2bについて、フィルム移動方向における長さが300mmであり、その側縁がフィルム移動方向に直交する方向に1000μm程度偏倚するように設けられている場合において、フィルム1の伸びに伴って、フィルムアライメントマーク1a間の距離が100μm大きくなった場合には、制御部は、マスク2をフィルム移動方向に直交する方向に外方に100μm移動するように制御すると共に、フィルム移動方向に30mm移動するように制御する。これにより、マスクアライメントマーク2eとフィルムアライメントマーク1aとの位置関係は、フィルム1に伸びが生じていない場合と同一になり、第1実施形態と同様に、マスク2Cを取り替えることなく、フィルム1に対する露光光照射領域の幅を調節することができる。
更にまた、本実施形態においては、フィルム1上には、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜が形成されていても、露光光の照射により配向方向が一意的に定まり、更に露光光を照射しても配向方向が変化しない露光材料からなる配向材料膜が形成されていてもよい。
次に、本発明の第2実施形態に係る露光装置について説明する。図6は、第2実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。本実施形態においては、フィルム1には、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜が形成されている。また、第1実施形態におけるマスク2Aに代えて、マスク2Dが設けられている。このマスク2Dには、スリット2bではなく、フィルム移動方向に幅が変化する開口2fが設けられている。そして、アパーチャ3の開口3b及びマスク2Dの開口を介して、露光光をフィルム1の露光対象領域の全域に照射できるように構成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態においては、フィルム1には、その表面上に、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜が形成されている。本実施形態においては、先ず、図6(a)に示すように、光源5Aから出射された露光光により、フィルム1の表面に形成された配向材料膜の全域を所定の第1の硬化量となるまで露光する。そして、その後、図6(b)に示すように、光源5Bから出射された露光光により、アパーチャ3Bの開口及びマスク2Bのスリットに対応させて配向材料膜に照射して第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する。これにより、第1実施形態と同様の配向膜を形成する。例えば配向膜が所定の偏光方向で形成され、露光光を更に照射しても偏光方向が変化しないときの硬化量を100%とした場合に、光源5Aから出射された露光光による露光により、配向材料膜を硬化量が50%になるまで硬化させる。そして、その後、光源5Bから出射された露光光による露光により、配向材料膜をアパーチャ3Bの開口及びマスク2Bの所定幅のスリットに対応させて、硬化量が100%になるまで硬化させる。このとき、光源5Bからの露光光が照射されない領域は、硬化量が50%のままであるが、例えば露光後にポストベークを施す(材料塗布後の乾燥(プリベーク)温度よりも高い温度で熱硬化させる)ことにより、硬化量が100%となるまで硬化させて配向方向を固定する。
本実施形態においても、露光による加熱により、フィルム1が膨張してその幅方向に伸びた場合においても、制御部により、フィルム移動方向におけるマスク2とアパーチャ3との相対的な位置を制御することにより、フィルム1上に形成される帯状の露光領域の幅を調節することができ、マスク2を取り替えることなく露光できる。
なお、第1実施形態の露光装置において、フィルム移動方向における下流側のマスク2Bに代えて、本第2実施形態のようなマスク2Dを配置し、上流側の光源5Aから出射された露光光による露光により、配向材料膜をアパーチャ3Bの開口及びマスク2Bの所定幅のスリットに対応させて、硬化量が100%となるまで硬化させ、下流側の光源5Bから出射された露光光による露光により、露光対象領域の全面を露光するように構成した場合においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の配向膜を形成することができる。この場合においても、制御部により、フィルム移動方向におけるマスク2とアパーチャ3との相対的な位置を制御することにより、フィルム1上に形成される帯状の露光領域の幅を調節することができ、マスク2を取り替えることなく露光できる。
次に、本発明の第3実施形態について、図7乃至図13を参照して説明する。本実施形態は、フィルムの蛇行及びフィルムの熱膨張及び熱収縮による変形の双方に対応して、高精度の露光を行うものである。図7(a)は本実施形態のマスク20を示す平面図、図7(b)は本実施形態のアパーチャ30を示す平面図である。マスク20は、遮光性の材料からなる基部20aに、フィルム10の移動方向(第1方向:白抜き矢印にて示す)に直交する方向(第2方向)に複数本のスリット20bが配列されたものであり、各スリット20bは、その幅が長手方向に関して線形的に変化するように設けられており、スリット間の間隔はフィルム移動方向に直交する方向に関してスリット20bの幅と同一である。即ち、図7(a)に示すマスク20において、各スリット20bの幅は、最上部が最も狭く、スリットの長手方向に沿って下方へ行くほど、広くなるように設けられている。そして、各スリット20bのうち、フィルム10の幅方向の一端部に配置されたスリット20bは、フィルム10の移動方向に平行に延びており、その長さはyである。また、スリット20bのうち、フィルム10の幅方向の他端部に配置されたスリット20bは、フィルム10の移動方向に傾斜して延びており、フィルム10の移動方向にyの距離を、フィルム10の幅方向にxだけ偏倚するように傾斜している。このフィルム10の一端部の傾斜していないスリット20b(平行スリット)と傾斜している他端部のスリット20b(最大傾斜スリット)との間のスリット20bは、平行スリットから最大傾斜スリットに向けて、徐々に傾斜角度が大きくなるように、傾斜している。なお、例えば、yは300mm、xは1mmである。
図8はフィルム10にアライメントマークを形成するレーザマーカ50を示す図である。このレーザマーカ50は、フィルム巻き出しロール45から繰り出されたフィルム10に対し、このフィルム10の両側部にレーザ光を照射して、アライメントマーク10a、10bを形成する。なお、レーザマーカ50からレーザ光をフィルム10に照射するときは、ロール46によりフィルム10の下面を支持し、フィルム10の面を一定にする。
マスク20の両側部には、フィルムアライメントマーク10a、10bを検出するための観察窓20dが、例えばフィルム移動方向におけるスリット20bの長さと同程度の長さで設けられており、各観察窓20dには、マスクアライメントマーク20e、20fが設けられている。マスクアライメントマーク20fはフィルム10の移動方向に平行に延び、マスク20におけるフィルム10の移動方向に平行のスリット20b(平行スリット)が形成された一端部側の観察窓20dに設けられている。一方、マスクアライメントマーク20eは、フィルム幅方向の他端部側の観察窓20dに設けられており、この他端部側に設けられた最大傾斜スリット20bの側縁と平行に延びる。
アパーチャ30は、例えばSUS製の遮光性の板材であり、図7(b)に示すように、その基部30aの中央には、1方向に延びるように、幅が例えば20乃至30mmの開口30bが設けられている。開口30bは、マスク20のスリット20bの配設領域の全域に延びる長さを有している。そして、この開口30bの長手方向がフィルム10の移動方向に直交するようにして、マスク20の上方に配置される。即ち、図9(a)に示すように、フィルム10の移動域の途中に、マスク20が設置されており、このマスク20の上方にアパ−チャ30が配置されている。このアパ−チャ30の上方には、露光光源70が配置されており、露光光源70から照射された露光光がアパ−チャ30を照射し、その一部がアパーチャ30により遮光され、露光光における開口30bを透過した部分がマスク20に照射され、マスク20のスリット20bを透過した露光光が、フィルム10に照射される。
制御部は、フィルム移動方向におけるマスク20と遮光部材30との相対的位置を制御する。即ち、制御部は、図10乃至図13に示すように、例えば、アパーチャ30の位置を固定した状態で、マスク20のアパーチャ30に対する相対的位置を移動させ、平面視で開口30bとスリット20bが重なる領域を透過する露光光のフィルム上の照射位置を調節する。
図9(a)に示すように、マスク20における観察窓20dの上方には、2焦点ラインカメラ60が配置されており、この2焦点ラインカメラ60は観察窓20d内に見えるフィルムアライメントマーク10a、10bとマスクアライメントマーク20f、20eを、検出領域71で観察する。
次に、制御部の制御態様と共に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。図9(b)に示すように、フィルム移動方向(第1方向)に延びるマスクアライメントマーク20fを第1マスクアライメントマーク20fとし、この第1マスクアライメントマーク20fと共に観察窓20d内で観察されるフィルムアライメントマーク10bを第1フィルムアライメントマーク10bとする。また、フィルム移動方向(第1方向)に傾斜して延びるマスクアライメントマーク20eを第2マスクアライメントマーク20eとし、この第2マスクアライメントマーク20eと共に観察窓20d内で観察されるフィルムアライメントマーク10aを第2フィルムアライメントマーク10aとする。更に、以下の動作において、アパーチャ30は不動である。
露光開始時においては、図10に示すように、カメラ60により観察された検出領域71における第1フィルムアライメントマーク10bと、第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離がA、第2フィルムアライメントマーク10aと、第2マスクアライメントマーク20eとの間の距離がBであるとすると、制御部は、この距離Aを第1フィルムアライメントマーク10bと、第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離の基準値として設定し、距離Bを第2フィルムアライメントマーク10aと、第2マスクアライメントマーク20eとの間の距離の基準値として設定する。
そして、図11(a)に示すように、フィルム10が蛇行し、露光当初のマスク20の位置に対して、フィルム10が第2方向(フィルムの幅方向)に偏倚した場合、検出領域71において、第1フィルムアライメントマーク10bと第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離が基準値Aから変動する。そこで、制御部は、図11(b)に示すように、マスク20を第2方向(白抜き矢印にて示す)に調節移動させ、第1フィルムアライメントマーク10bと第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離を基準値Aに一致させる。フィルム10に熱膨張又は熱収縮が生じていない場合は、これにより、第2フィルムアライメントマーク10aと第2マスクアライメントマーク20eとの間の距離も基準値Bに一致する。これにより、図9(b)に示すように、アパーチャ30の開口30bと、マスク20のスリット20bとが重なる領域にて露光光が透過し、第1方向に移動するフィルム10に多数の平行線状の露光領域が形成される。この露光領域は、フィルムの蛇行に合わせてマスク20を第2方向に調節移動させているので、露光当初のフィルム上の位置(蛇行がない場合のフィルム上の位置)から変動しない。
次に、図12(a)に示すように、フィルム10が熱膨張した場合、カメラ60の検出領域71における観察結果により、例えば、第1フィルムアライメントマーク10bと第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離は基準値Aに一致しているが、第2フィルムアライメントマーク10aと第2マスクアライメントマーク20eとの間の距離が基準値Bからずれて小さくなっていることが検出される。そうすると、制御部は、アパーチャ30に対して、マスク20を相対的に、図12(b)に白抜き矢印にて示す方向(図9に示す態様ではフィルム10の移動方向)に調節移動させる。そうすると、アパーチャ30の開口30bとマスク20のスリット20bとの重なり部を透過する露光光は、アパーチャ30が移動せず、マスク20が図7(a)に示す白抜き矢印方向の反対方向に調節移動するので、スリット20bのより幅が広く間隔が広い部分を透過することになり、フィルム10における線状の露光領域は、より幅が広く、より間隔が大きくなる。これにより、フィルム10が熱膨張して、幅が大きくなっても、それに追随して、フィルム10上の露光領域はフィルム幅方向に広がる。このため、この図12における露光工程で露光された線状の露光領域は、フィルム10が降温して露光開始時の温度に戻ったときは、露光開始時の露光領域の幅及び間隔と一致した状態になり、フィルム10の熱膨張の影響を解消できる。
次に、図13はフィルム10に蛇行と熱膨張が生じた場合の例である。図13(a)に示すように、カメラ60により観察された検出領域71における第1フィルムアライメントマーク10bと第1マスクアライメントマーク20fとの間隔が基準値Aから変動し、更に、第2フィルムアライメントマーク10aと第2マスクアライメントマーク20eとの間隔が基準値Bから変動する。そうすると、制御部は、先ず、図13(b)に示すように、マスク20を第2方向に調節移動させて、第1フィルムアライメントマーク10bと第1マスクアライメントマーク20fとの間の距離を、基準値Aに一致させる。その後、カメラ60の検出領域71において、第2フィルムアライメントマーク10aと第2マスクアライメントマーク20eとの間の距離を検出し、これが基準値Bに一致していない場合は、制御部は、図13(c)に示すように、マスク20を第1方向に調節移動させる。この図13(c)に示す例の場合は、図12(b)の場合と同様に、開口30bとスリット20bとの重なり部を透過する露光光は、スリット20bにおけるより幅が広く、より間隔が広い部分を透過するので、フィルム10の熱膨張に合わせて、フィルム10上の露光領域は、露光当初に比して、より幅が広く、より間隔が広いものとなる。よって、フィルム10が降温して常温に戻ったときには、露光当初の露光領域の幅及び間隔と同一になる。このようにして、フィルム蛇行とフィルム熱膨張の双方が生じたときにも、フィルム10上の露光領域を露光開始時(又は、基準値として定めたもの)に一致させることができ、高精度の露光領域を形成することができる。
なお、上記各実施形態においては、マスクアライメントマークに最も近いスリットのこのマスクアライメントマーク側の側縁と、そのマスクアライメントマークとが平行になるように、マスクアライメントマークを形成しているが、本発明は、これに限らず、マスクアライメントマークに最も近いスリットのこのマスクアライメントマークの反対側の側縁と、そのマスクアライメントマークとが平行になるように、マスクアライメントマークを形成しても良く、また、マスクアライメントマークに最も近いスリットの幅方向の中心線と、このマスクアライメントマークとが平行になるように、マスクアライメントマークを形成しても良い。更に、本発明においては、マスクアライメントマークを、それに最も近いスリットのマスクアライメントマーク側の側縁、反対側の側縁、又はスリットの幅中心線を基準線として、形成する際に、前記マスクアライメントマークを、前記最も近いスリットの幅が前記第1方向に線形的に変化する変化量を加味して前記基準線からの距離を設定しても良い。つまり、マスクアライメントマークとそれに最も近いスリットとを、平行ではなく、両者間の間隔がフィルムの伸縮を加味して前記第1方向に線形的に変化するように、定めることができる。このマスクアライメントマークとそれに最も近いスリットとの間の間隔の線形的な変化量は、前記最も近いスリットの幅の第1方向における線形的な変化量を使用することができる。