JP5798659B1 - 障害検知装置および障害検知方法 - Google Patents
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静止人工衛星との通信には、通常、UHF帯やSHF帯といった高い周波数帯の電波が使用される。一般的に、高周波数帯の電波は直進性が高く、遮蔽物への回り込みが起きにくい。したがって、電波が進行する経路上に山や建物といった障害物があった場合、通信障害の発生原因となりうる。特に、対象の衛星が非静止衛星であった場合、障害物の存在が問題となる。
しかし、上空を航空機などの飛行体が通過した場合、予期しない通信障害が発生するおそれがある。このような航空機による遮蔽は、短時間であるものの、発生の予測が難しいため、事前に対応することが困難である。また、障害が発生した後に、当該障害の原因が航空機にあったのか、それ以外にあったのかを切り分けることができないという問題があった。
また、特許文献1に記載の発明をはじめとする従来技術においては、当該問題を解決することができなかった。
アンテナを用いて静止人工衛星との間で電波を送受信するシステムにおける障害検知装置であって、航空機の飛行位置に関する情報である航空機位置情報を取得する航空機情報取得手段と、前記航空機位置情報に基づいて、前記航空機による、前記アンテナと前記静止人工衛星との間の伝播経路の遮蔽を検知する遮蔽検知手段と、を有することを特徴とする。
また、遮蔽検知手段は、航空機位置情報に基づいて、当該航空機の通過に起因する、アンテナと静止人工衛星とを結ぶ経路(伝播経路)の遮蔽を検知する。かかる構成によると、航空機の通過に起因する通信障害の発生を事前または事後的に検知することができる。
実施形態の説明に入る前に、図1を参照しながら、本発明に係る障害検知システムの概要について説明する。
符号101は、赤道上に位置する静止軌道上を周回する静止人工衛星(以下、衛星)であり、符号102は、衛星101と通信を行う無線局(以下、地球局)である。地球局と衛星との間の通信は、UHF帯やSHF帯といった高い周波数の電波を用いて行われる。符号103は、電波の伝播経路である。当該伝播経路は、衛星101と地球局102とを直線で結ぶ経路となる。
本発明に係る障害検知システムは、航空機の通過に起因して通信障害が発生した場合、または、通信障害の発生が予測される場合に、その旨を利用者に通知するシステムである。
<システム構成>
第一の実施形態に係る障害検知システムは、航空機から、当該航空機の飛行位置についての情報を取得したうえで、衛星通信に障害が発生した場合に、当該障害の原因が飛行中の航空機にあるか否かを判定するシステムである。図2は、第一の実施形態に係る障害検知システムのシステム構成図である。第一の実施形態に係る障害検知システムは、アンテナ装置10と、受信装置20と、障害検知装置30と、からなるシステムである。
また、アンテナ制御部12は、衛星通信アンテナ11を制御する手段であり、アンテナを通して送受信された無線信号を通信装置に中継する機能と、衛星通信アンテナ11の方向(方位角および仰角)を調整する機能を有する。また、通信の状態を表す信号(以下、状態信号)を障害検知装置30に送信する機能を有する。
地球は完全な球体ではなく多少いびつな形をしており、場所によって引力が異なる。また、月や太陽の引力の影響を受けるため、衛星の移動速度は一日を通して若干変化する。また、軌道面も赤道面に対して傾きを持つように変化する。このため、地上から見ると、衛星は8の字や楕円を描いて移動するように見える。アンテナ制御部12は、これを補正するため、衛星から送信されたビーコン(テレメトリ)信号に基づいて、衛星通信アンテナ11の方位角および仰角を微調整する。特に、衛星通信に用いられる大型のアンテナは指向性が鋭いため、衛星に追従したアンテナ方向の微調整が必須となっている。
復号部22は、UHFアンテナ21で受信した無線信号を復調する手段である。これにより、信号を送信した航空機の識別番号と位置情報(緯度・経度・高度)などを取得することができる。当該航空機についての情報は、障害検知装置30へ随時送信される。
高度補正部32は、航空機から送信された高度情報を補正する手段である。航空機は、外部の気圧を測定することで高度を取得している。このようにして取得した高度は気圧高度と呼ばれ、地面や海面を基準とした高度(絶対高度)ではない。そこで、高度補正部32が、地上における気圧値を取得し、当該気圧値を用いて、航空機から送信された高度を補正する。具体的な方法については後述する。
また、入出力部35は、ユーザが行った操作を取得し、ユーザに対して情報を提示する手段である。入出力部35は、例えば入力装置とそのインタフェース、表示装置とそのインタフェースからなる。
次に、航空機の位置情報を取得する処理について説明する。
受信装置20が有する復号部22は、ADS−B信号が送信される周波数を常時受信し、信号を検知すると、当該信号を復号して情報を生成する。図3(A)は、ADS−Bによって送信される情報の例である。固有番号は無線装置の固有番号であり、機体番号は航空機の固有番号である。また、高度は気圧高度であり、生成時刻は、航空機において当該情報が生成された時刻である。
次に、高度補正部32が行う補正処理について説明する。
航空機位置情報に含まれる高度が14,000フィート以上である場合、当該高度は気圧高度であるため、これを絶対高度に補正する処理が必要となる。気圧高度は、ある基準となる大気状態において高度が0となるように調整された値である。すなわち、気圧高度から絶対高度を得るためには、地上における気圧値を取得し、基準値との気圧差を用いて高度を補正する必要がある。また、気圧は気温によっても変化するため、地上における気温を取得し、基準値との温度差を求めてさらに高度を補正する必要がある。
RJTT 041600Z 19019G31KT 310V290 1400 FEW020 18/12 Q1005 A2970 NOSIG
電文のうち、Q(またはA)で始まる4桁の数値が、当該飛行場における気圧値(hPaまたはinHg)である。また、スラッシュで区切られた数値のうち前半の2桁が、当該飛行場における気温(摂氏)である。
気圧高度の基準となる大気状態は、国際標準大気(以下、標準大気)として定義されており、その気圧は29.92[inHg](1013.25hPa)である。また、ここでは、METARによって取得した飛行場の気圧が29.70[inHg](1005.8hPa)であったとする。すなわち、気圧差は−0.22[inHg](−7.45[hPa])である。
一般的には、高度が10m異なると、気圧差が約1hPa生じるため、本例の場合、取得した気圧高度から75mを減じた値を補正後の値とする。
の気温が18℃であったとする。すなわち、気温差は+3℃である。一般的には、大気の温度が標準大気より高い場合、気圧高度は、気温が5.5℃高くなるにつき約2%高くなる。したがって、本例の場合、補正後の値をさらに1.011倍した値が絶対高度となる。
なお、ここでは簡易的な計算例を挙げたが、他の演算方法によって気圧高度を絶対高度に変換してもよい。
次に、通信障害が発生した場合に、航空機位置情報記憶部31に記憶された情報に基づいて、判定部34が、その原因を判定する処理について説明する。
通信状態監視部33は、アンテナ制御部12から送信される状態信号を監視しており、衛星との通信における信号レベルの低下や、通信の瞬間的な断絶を検出した場合に、判定部34へ通知を送信する。
まず、航空機位置情報記憶部31に記憶された航空機位置情報のうち、直近に生成されたレコードを抽出する。直近とは、例えば3秒以内とすることができる。抽出された複数のレコードは、高度補正部32に送信される。
次に、高度補正部32が、前述した方法によって、取得したレコードが有する高度を全て絶対高度に変換し、判定部34に送信する。
次に、取得した航空機位置情報の複数のレコードを一つずつチェックし、伝播経路を遮蔽した可能性がある航空機を特定する。図5は、電波の伝播経路を符号501で示し、航空機の位置を符号502A〜Cで示した例である。このように、航空機の位置は点によって表される。
内において、座標(NLE,ELE)から、方位角θAZ、仰角θAの方向を向いて引かれた
直線が伝播経路501となる。なお、地球局(アンテナ)の位置を表す値であるNLE,
ELEと、衛星の位置を表す値であるθAZ,θAは変化しない値であるため、判定部34によって、固定値として予め保持される。
尾する。当該角度を補正するための補正値は、アンテナ制御部12から判定部34に随時送信される。
なお、判定に用いる円柱の直径は任意の値とすることができる。例えば、衛星通信アンテナ11の直径が6mであった場合、その倍の値である12メートルを円柱503の直径としてもよい。当該直径は、航空機の形状を考慮し、若干大きめに設定するとよい。
判定部34が行った判定の結果は、入出力部35を通してユーザに提示される。
判定結果をユーザに提示する方向について例示する。本実施形態では、図6に示した情報を画面(不図示)に表示することで情報の提示を行う。当該画面には、通信障害が発生した日時、通信障害が復旧した日時、通信障害が発生した衛星(複数の衛星と通信を行う場合)、航空機が遮蔽を起こした位置に関する情報(緯度、経度、高度)と、当該航空機の便名といった情報が表示される。
次に、以上に説明した機能を実現するための処理フローチャートについて説明する。
図7は、本実施形態に係る障害検知装置が行う、航空機の位置情報を収集する処理のフローチャートである。当該処理は周期的に(例えば1秒周期で)実行される。
次に、ステップS12で、航空機位置情報記憶部31が、取得した位置情報を記憶する。ここでは、図3(B)に示したように、航空機を識別する符号、便名、情報生成時刻、および緯度・経度・高度を記憶するものとする。この際、過去に位置情報を取得した航空機があって、当該航空機の新しい位置情報が取得された場合、新しい位置情報によって古い位置情報を上書きする。
なお、ステップS12で、取得してから時間が経った情報がある場合、当該データを削除してもよい。ある程度古くなったデータを削除することで、記憶容量を確保すると共に、データの鮮度を確保することができる。もちろん、過去の情報と照合するために、古いデータを保存するようにしてもよい。
次に、ステップS22で、判定部34が、取得した航空機位置情報を高度補正部32に送信し、高度補正部32が、前述した方法によって高度の補正を行う。この結果、航空機位置情報に含まれる高度(気圧高度)が絶対高度に補正され、判定部34に返信される。
なお、高度の補正は、航空機位置情報に含まれる高度が14,000フィート以上である場合にのみ行われる。
この結果、航空機によって伝播経路が遮蔽されたと判定された場合、処理はステップS25へ遷移し、入出力部35によって、関連する情報が画面に出力される。この際、画面表示のみを行ってもよいし、音声などによる通知を行ってもよい。航空機による伝播経路の遮蔽が発生しなかったと判定された場合、処理は終了する。なお、この際、障害の原因が不明である旨の通知を行うようにしてもよい。
第一の実施形態では、通信障害が発生した後で、当該障害の原因が航空機にあったのか否かを判定した。これに対し第二の実施形態は、航空機の針路(進行方向)を取得し、通信障害の発生が予測される場合に、ユーザに事前に通知する実施形態である。
第二の実施形態に係る障害検知システムの構成は第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略し、処理の相違点のみを説明する。
また、判定部34は、図8に示した処理を周期的に実行する。この際、ステップS23では、伝播経路が航空機によって遮蔽されたかを判定するかわりに、今後遮蔽が発生する可能性があるか否かを予測する。
まず、取得した航空機位置情報のレコードを一つずつ抽出し、対象の航空機について、このままの針路および高度で飛行した場合に、伝播経路の遮蔽が発生するか否かを判定する。また、航空機の現在の位置と、伝播経路を遮蔽する位置との距離を算出し、速度で除算することで、遮蔽が発生するまでの予測時間を算出する。
また、ステップS24では、遮蔽の発生が予測されるか否かを判定し、予測される場合、ステップS25に遷移し、図6に示した情報に加え、発生予測時刻(または発生までの残り時間)を出力する。なお、ステップS24では、航空機が伝播経路を遮蔽するまでの
時間が所定の時間よりも長い場合、あるいは、航空機と伝播経路との距離が所定の距離よりも長い場合は、否定判定を行う。このようなケースでは予測精度が低く、無用な通知が発生するおそれがあるためである。
また、第二の実施形態では、航空機の高度は一定であるものとしたが、航空機の昇降率(上昇率または下降率)についての情報を取得可能である場合は、当該昇降率によって上昇または下降が継続した場合の高度を算出したうえで予測を行うようにしてもよい。
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、実施形態の説明では、障害検知装置とアンテナ装置が1対1である例を挙げたが、障害検知装置を複数のアンテナ装置と接続して監視を行うようにしてもよい。また、複数の地球局が異なる場所にある場合、それぞれ対応するアンテナ装置からネットワーク経由で情報を取得し、一台の障害検知装置で遠隔監視を行うようにしてもよい。
。また、これらの値は、変更可能としてもよい。
また、実施形態の説明では、アンテナを基準とした高度を絶対高度としたが、海面を基準とした高度を用いてもよい。このような高度は真高度と呼ばれている。高度の基準を海面とする場合、海面における気圧値と、アンテナが設置されている場所の標高を得ることで、同様の判定を行うことができる。
11 衛星通信アンテナ
12 アンテナ制御部
20 受信装置
21 UHFアンテナ
22 復号部
30 障害検知装置
31 航空機位置情報記憶部
32 高度補正部
33 通信状態監視部
34 判定部
35 入出力部
Claims (10)
- アンテナを用いて静止人工衛星との間で電波を送受信するシステムにおける障害検知装置であって、
航空機から無線によって送信される情報に基づいて、当該航空機の飛行位置に関する情報である航空機位置情報を取得する航空機情報取得手段と、
前記航空機位置情報に基づいて、前記航空機による、前記アンテナと前記静止人工衛星との間の伝播経路の遮蔽を検知する遮蔽検知手段と、
を有することを特徴とする、障害検知装置。 - 前記航空機情報取得手段は、航空機から無線によって送信される当該航空機の位置情報および気圧高度値を受信して、航空機位置情報を生成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の障害検知装置。 - 地上における気圧値を取得し、前記取得した気圧値を用いて、前記航空機から送信された気圧高度値を絶対高度値に補正する気圧補正手段をさらに有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の障害検知装置。 - 前記気圧補正手段は、地上における気温を取得し、前記取得した気温をさらに用いて、前記航空機から送信された気圧高度値を絶対高度値に補正する
ことを特徴とする、請求項3に記載の障害検知装置。 - 前記気圧補正手段は、定時航空実況気象通報式を取得することで、地上における気圧値を取得する
ことを特徴とする、請求項3または4に記載の障害検知装置。 - 前記航空機位置情報は、前記航空機の針路についての情報をさらに含み、
前記遮蔽検知手段は、前記取得した航空機位置情報に基づいて、前記アンテナと前記静止人工衛星との間の伝播経路が遮蔽されることを予測する
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の障害検知装置。 - 前記アンテナに対する前記静止人工衛星の相対的な位置情報である衛星位置情報と、地
上における前記アンテナの設置位置に関する情報である地球局位置情報を取得する位置情報取得手段をさらに有し、
前記遮蔽検知手段は、前記衛星位置情報および前記地球局位置情報を用いて前記伝播経路を特定する
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の障害検知装置。 - 前記位置情報取得手段は、前記アンテナの方位角または仰角を微調整するアンテナ調整手段から取得した情報に基づいて、前記衛星位置情報を補正する
ことを特徴とする、請求項7に記載の障害検知装置。 - 請求項1から8のいずれかに記載の障害検知装置と、
前記静止人工衛星との間で電波を送受信するアンテナと、
を含むことを特徴とする、衛星通信システム。 - アンテナを用いて静止人工衛星との間で電波を送受信するシステムにおける障害検知装置が行う障害検知方法であって、
航空機から無線によって送信される情報に基づいて、当該航空機の飛行位置に関する情報である航空機位置情報を取得する航空機情報取得ステップと、
前記航空機位置情報に基づいて、前記航空機による、前記アンテナと前記静止人工衛星との間の伝播経路の遮蔽を検知する遮蔽検知ステップと、
を含むことを特徴とする、障害検知方法。
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