JP5792051B2 - 避雷器の故障判定方法及び故障判定装置 - Google Patents

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本発明は、配電設備に用いられる避雷器(接地があるもの、ないものの双方を含む)、特に、内部に続流遮断機能を有する避雷素子(酸化亜鉛素子等)とギャップを直列に接続した避雷器(以下直列ギャップを内蔵する避雷器と記す)における点検・保守に関する。
直列ギャップを内蔵する避雷器の故障態様には、直列ギャップと避雷素子の両方が故障する場合(両故障)、直列ギャップのみが故障する場合(ギャップ故障)、及び避雷素子のみが故障する場合(素子故障)の三態様がある。
故障した避雷器は、導入当初の性能を有していないため、電力設備に対する信頼度の低下を招く。従って、配電設備に用いられる避雷器にあっては、故障態様に応じて実効性のある故障判定方法の確立が要請されている。
直列ギャップを内蔵する避雷器の故障を判定する方法には、絶縁抵抗測定、放電開始電圧測定、インパルス電圧印加時の端子間電圧測定、直流電圧印加時の過渡放電電流測定、及び漏れ電流測定(例えば下記特許文献参照)がある。
特開平5−159909号公報
絶縁抵抗測定及び放電開始電圧測定による故障判定は、前記両故障又はギャップ故障の場合における絶縁抵抗及び放電開始電圧の低下に基づいて可能となる。従って、前記素子故障の場合には、直列ギャップの良好な絶縁性能により、絶縁抵抗及び放電開始電圧の低下が生じないため、絶縁抵抗測定及び放電開始電圧測定による故障判定はできないという問題がある。
インパルス電圧印加時の端子間電圧測定による故障判定は、前記素子故障の場合でも故障判定が可能であるが、一般的に装置が大型であるために、現場作業への適用が困難であるという問題がある。
一方、直流電圧印加時の過渡放電電流測定による故障判定は、前記素子故障の場合でも故障判定が可能であり、小型の装置で現場作業への適用も可能である。しかし、インダクタンスやキャパシタンスが小さい避雷素子を内蔵する避雷器(直列ギャップを内蔵する避雷器)に対しては、故障判定の指標とし得る過渡放電電流波形が得られないという問題がある。
また、上記特許文献1に開示された避雷器において避雷素子の状態を判定するには、避雷素子の端子間に電源装置を設置するため、避雷器の解体が必要である。従って、仮に判定の結果が正常品であったとしてもその避雷器を再度使用する事は不可能であり、事実上は避雷器の交換作業となる。この様な作業を全ての避雷器に実施していたのでは、多大な費用と労力を要し保守・メンテナンスの実用性が問題となる。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、続流遮断機能を有する避雷素子とギャップを直列に接続した避雷器において、正常品を使用不能とすることなく前記素子故障等の故障判定を正確に行うことが出来る故障判定方法及び故障判定装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明による避雷器の故障判定方法は、試料避雷器にインダクタ等の共振補助手段を直列に接続し、当該試料避雷器と共振補助手段からなる直列回路の両端に直流電圧発生装置を接続するステップと、当該直流電圧発生装置で直列ギャップが放電を開始する電圧以上の直流電圧(例えば約20kV以上)を印加するステップと、試料避雷器の過渡放電電流を検出するステップと、検出した試料避雷器の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較するステップと、当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器を故障と判定するステップを経ることを特徴とする。
検出した試料避雷器の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較するステップは、印加後における各時点の瞬時値を比較し、振幅のピーク若しくはゼロクロスの時点を比較し、又は時間軸及び電流軸を同じくした過渡放電電流波形の形態的比較等を適宜用いればよい。
また、当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器を故障と判定するステップにあっても、印加後における各時点の瞬時値の較差、振幅のピーク又はゼロクロスの時点、又は印加後における各瞬間での振幅の積分値若しくはその平均値等について、正常品に対する比率等を以って規定値を設定しても良い。
また、上記本発明による避雷器の故障判定方法に用いる故障判定装置は、試料避雷器に直列に接続するインダクタ等の共振補助手段と、前記試料避雷器と共振補助手段からなる直列回路の両端に接続し試料避雷器の直列ギャップが放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加する直流電圧発生装置と、試料避雷器の過渡放電電流を検出する電流測定器と、検出した試料避雷器の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較する比較手段と、当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器を故障と判定する判定手段を備えることを特徴とする。
以上の如く、本発明による避雷器の故障判定方法によれば、固有のインダクタンスやキャパシタンスが小さい避雷素子を内蔵する避雷器(直列ギャップを内蔵する避雷器)を試料避雷器とした場合であっても、当該避雷器に対して共振補助手段を直列に挿入することによって、故障判定を可能とする過渡放電電流(波形)を検出することができる。
また、直列ギャップが放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加することによって能動的に直列ギャップを放電させ、その際に避雷器を通過する過渡放電電流を測定することによって、直列ギャップを内蔵する避雷器の故障を非破壊の下で判定することができる。
この様に事前に、共振補助手段を直列に挿入した同じ条件下で正常品の過渡放電電流を取得しておき、測定した試料避雷器の過渡放電電流と比較することにより故障判定を行う方法を採ることによって、当該試料避雷器についての特性を適宜監視することができ、前記素子故障等に至っている避雷器を早期に発見することができる。その結果、各避雷器において所望の品質を特性上においても確実に維持することができるので、電力設備の信頼度維持が図られ、電力設備に用いられる避雷器の保守・メンテナンスの技術向上及び効率化を図ることができる。
本発明による避雷器の故障判定方法が用いられる避雷器及び測定回路並びにそれらの等価回路である。 本発明による避雷器の故障判定方法に用いられる装置の構成図である。 本発明による避雷器の故障判定方法が用いられた避雷器(正常品)の放電電流の共振補助手段別減衰特性の一例を示すグラフである。 本発明による避雷器の故障判定方法が用いられた正常品と故障品の減衰特性の比較例を示すグラフである。 本発明による避雷器の故障判定方法の実績の一部を示す表である。
以下、本発明による直列ギャップを内蔵する避雷器の故障判定方法の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1(A)の破線内は、直列ギャップを内蔵する避雷器の一例を示す概略図である。図の通り避雷素子2と直列ギャップ3とが直列に接続された避雷器であって、これは、図1(B)の破線内に示す簡略化した等価回路で表現することができる。
本発明は、避雷器固有の時間対過渡放電電流特性を利用することにより、前記素子故障を含む避雷器の故障判定を可能とするものである。具体的には、直列ギャップが放電する電圧を印加した際の瞬時電圧に伴う放電電流の過渡現象であって、印加時間が制限された直流パルス電圧を印加した場合や、印加後も継続して印加され続ける所謂直流電圧を印加した場合の過渡現象を含む。
一般的に、この様な避雷器には、固有の抵抗R、インダクタンスL、又はキャパシタンスCの各成分が含まれている。直流電圧(パルス状のものを含む)を印加すると、当該インダクタンスLとキャパシタンスCに基づく周波数fの共振(下記数1参照)が生じているものと考えられ、上記避雷器固有の放電電流特性について、試料避雷器1と正常な避雷器とを比較する方法においては、この共振が、故障判定に有利な固有の振幅や周期等の減衰特性をもたらし正確な故障判定に寄与しているものと考えられるに至った。
Figure 0005792051
事実、今日供給されている種々の避雷器の中には固有のインダクタンスLやキャパシタンスCが小さい避雷器も少なからず存在し、共振が抑えられることによって故障判定に有利な固有の振幅や減衰特性が得られず、正確な故障判定の妨げとなっていると考えられる。
そこで、本発明による避雷器の故障判定方法は、試料避雷器1の一方の端子に、共振補助手段4としてインダクタを直列に接続することによって試料避雷器1と共振補助手段4からなる直列回路を形成し、当該直列回路の両端に直流電圧発生装置5を接続するステップを経る。
次に、当該直流電圧発生装置5で直列ギャップ3が放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加するステップを経て、上記の如く共振補助手段4を直列に挿入した回路に直流電圧を印加することによって、当該共振補助手段4のインダクタンスLoと避雷器の極めて小さいインダクタンスL、及びキャパシタンスCが相俟って故障判定に有利な周波数f2の共振(下記数2参照)を誘発させることができる。
Figure 0005792051
ところが、避雷器が故障すると、内部の避雷素子2の抵抗RやキャパシタンスCの値が変化し、過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期が減少する(前記数式2参照)。この様な事象を検出することによって故障判定が可能となるが、本発明による直列ギャップを内蔵する避雷器の故障判定方法は、その際、試料避雷器1の過渡放電電流を電流測定器6で検出するステップと、検出した試料避雷器1の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を計算機7(図2参照)の比較手段で比較するステップと、当該計算機7の判定手段で当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器1を故障と判定するステップを経るものである。
即ち、上記避雷器の故障判定方法を実施するには、試料避雷器1に直列に接続する共振補助手段4と、前記試料避雷器1と共振補助手段4からなる直列回路の両端に接続し試料避雷器1の直列ギャップ3が放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加する直流電圧発生装置5と、試料避雷器1の過渡放電電流を検出する電流測定器6と、検出した試料避雷器1の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較する比較手段と、当該比較の結果、振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器1を故障と判定する判定手段を備える避雷器の故障判定装置が必要となる。
尚、当該例における比較手段は、印加後における各時点の瞬時値を比較し、振幅のゼロクロスの時点を比較するものであって、当該例における判定手段は、振幅のピーク又はゼロクロスの時点における各瞬間での振幅の積分値について、正常品に対する比率等を以って規定値を設定したものである。
<共振補助手段の選定>
直列ギャップを内蔵する避雷器の故障判定に適した共振補助手段4を選定するために、
サンプル1:インダクタンス=2μH、
サンプル2:インダクタンス=6μH、
サンプル3:インダクタンス=24μH、
からなる三つのインダクタを共振補助手段4として前記直列回路に挿入し、20kVの直流電圧を印加した場合について過渡放電電流を測定した(図3参照)。
その結果、サンプル1は、共振時間が短く、サンプル3は、振幅が小さいので故障判定が困難である。よってサンプル2が共振補助手段4として望ましい。
<故障判定>
サンプル2を共振補助手段4として採用し、事前に商用周波大電流を注入して内部の避雷素子を故障させた配電設備に用いられる試料避雷器1の38個について故障判定を行った。
図4は、避雷素子の抵抗RとキャパシタンスCが低下したことによって、振幅の低下、振動数の減少、及び振動周期の減少がみられる。
<判定精度>
前記試料避雷器1の38個について、本発明による故障判定方法(本願方法)と、2通りの従来の方法とで判定精度を比較した(図5参照)。ここで、従来の方法として、第一の方法:直流放電開始電圧測定と、第二の方法:絶縁抵抗測定を用いた。結果、本発明による故障方法では、故障した試料避雷器の検出率が約68%、第一の方法では、44.7%、第二の方法では、5.3%であった。
以上の如く、従来の方法では不十分であった直列ギャップ3を内蔵する避雷器の故障判定が、避雷器を解体することなく実施可能となる他、インダクタンスLやキャパシタンスCが小さい避雷器に対しても、精度よく故障判定ができ、故障している避雷器を精度よく発見することにより、故障避雷器が原因となる停電を未然に防止できるという実用効果が検証できた。
また、装置にあっても、20kV前後の直流電圧を発生できる直流電圧発生装置5と、前記直列回路を通過する電流を検出する電流測定器6、並びにその測定器の出力を記録・演算する(保存し比較し評価する)計算機7のみからなる簡易な装置であることから(図2参照)、持ち運びに不便となるほどの大型になることはなく、現地において避雷器を取り外さずに故障判定できる。尚、比較は、数値、チャートのパターン等のいずれで比較しても良い。
1 試料避雷器,2 避雷素子,3 直列ギャップ,
4 共振補助手段,5 直流電圧発生装置,6 電流測定器,7 計算機,

Claims (2)

  1. 試料避雷器(1)に共振補助手段(4)を直列に接続し、当該試料避雷器(1)と共振補助手段(4)からなる直列回路の両端に直流電圧発生装置(5)を接続するステップと、
    当該直流電圧発生装置(5)で試料避雷器(1)の直列ギャップ(3)が放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加するステップと、
    試料避雷器(1)の過渡放電電流を検出するステップと、
    検出した試料避雷器(1)の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較するステップと、
    当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器(1)を故障と判定するステップを経ることを特徴とする避雷器の故障判定方法。
  2. 試料避雷器(1)に直列に接続する共振補助手段(4)と、
    前記試料避雷器(1)と共振補助手段(4)からなる直列回路の両端に接続し試料避雷器(1)の直列ギャップ(3)が放電を開始する電圧以上の直流電圧を印加する直流電圧発生装置(5)と、
    試料避雷器(1)の過渡放電電流を検出する電流測定器(6)と、
    検出した試料避雷器(1)の過渡放電電流と正常な避雷器の同じ条件下における過渡放電電流の振幅、振動数、又は振動周期を比較する比較手段と、
    当該比較の結果振幅、振動数、又は振動周期に規定値以上の較差がある場合にその試料避雷器(1)を故障と判定する判定手段を備える避雷器の故障判定装置。
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