以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本発明の一実施形態に係る投射装置は、例えば、バーチャルキーボード等を投射するプロジェクタに適用可能である。
図1は一実施形態に係る投射装置20の概略構成を示すブロック図である。図1の投射装置20は、光学素子50と、照射装置60と、空間光変調器30と、第1の投射光学系25と、光源71と、第2の投射光学系72と、検出部73と、制御部74と、を備えている。本明細書では、光学素子50と照射装置60とを合わせたものを照明装置40と呼ぶ。
まず、コヒーレント光からなる映像光を投射面15に投射する構成について説明し、次に、投射された映像光におけるユーザが指し示した位置を特定する構成について説明する。
照明装置40は、仮想面上に位置する被照明領域LZをコヒーレント光で照明する。このコヒーレント光は可視光である。空間光変調器30は、被照明領域LZと重なる位置に配置され照明装置40によってコヒーレント光で照明される。第1の投射光学系25は、空間光変調器30からのコヒーレント光を投射面15に投射する。
空間光変調器30としては、例えば、透過型の液晶マイクロディスプレイを用いることができる。この場合、照明装置40によって面状に照明される空間光変調器30が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器30をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。空間光変調器30は、制御部74から供給された画像信号に応じて変調画像を生成する。こうして得られた変調画像(映像光)は、第1の投射光学系25によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン等の投射面15へ投射される。これにより、変調画像が投射面15上に等倍で或いは変倍、通常、拡大されて表示され、ユーザは当該画像を観察することができる。この投射面15は、スクリーンに限らず、例えば、机の上面や室内の壁面等でもよい。
なお、空間光変調器30としては、反射型のマイクロディスプレイを用いることも可能である。この場合、空間光変調器30での反射光によって変調画像が形成され、空間光変調器30へ照明装置40からコヒーレント光が照射される面と、空間光変調器30から変調画像をなす映像光が進みでる面が同一の面となる。このような反射光を利用する場合、空間光変調器30としてDMD(Digital Micromirror Device)などのMEMS素子を用いることも可能である。上述した特許文献3に開示された装置では、DMDが空間光変調器として利用されている。
また、空間光変調器30の入射面は、照明装置40によってコヒーレント光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置40からのコヒーレント光を、投射面15への映像の表示に高い利用効率で利用することができるからである。
投射面15としてスクリーンを用いる場合、投射面15は、透過型スクリーンであってもよいし、反射型スクリーンであってもよい。投射面15が反射型スクリーンである場合には、ユーザは、投射面15に関して投射装置20と同じ側から、投射面15で反射されるコヒーレント光によって表示される映像を観察することになる。一方、投射面15が透過型スクリーンである場合、ユーザは、投射面15に関して投射装置20とは反対の側から、投射面15を透過したコヒーレント光によって表示される映像を観察することになる。
ところで、投射面15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、ユーザに映像として認識されるようになる。この際、投射面15上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。ただし、ここで説明する投射装置20では、以下に説明する照明装置40が、時間的に角度変化するコヒーレント光で、空間光変調器30が重ねられている被照明領域LZを照明するようになっている。より具体的には、以下に説明する照明装置40は、コヒーレント光からなる拡散光で被照明領域LZを照明するが、この拡散光の入射角度が経時的に変化していく。この結果、投射面15上でのコヒーレント光の拡散パターンも時間的に変化するようになり、コヒーレント光の拡散で生じるスペックルが時間的に重畳されて目立たなくなる。以下、このような照明装置40について、さらに詳細に説明する。
図1および図2に示された照明装置40は、コヒーレント光を拡散してコヒーレント光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50と、光学素子50へコヒーレント光を照射する照射装置60と、を有している。光学素子50は、散乱板6の像5を再生し得るホログラム記録媒体55を含んでいる。図示する例では、光学素子50はホログラム記録媒体55から形成されている。
図示する例で光学素子50をなしているホログラム記録媒体55は、照射装置60から照射されるコヒーレント光を再生照明光Laとして受けて、当該コヒーレント光を高効率で回折することができる。とりわけ、ホログラム記録媒体55は、その各位置、言い換えると、その各点とも呼ばれるべき各微小領域に入射するコヒーレント光を回折することによって、散乱板6の像5を再生することができるようになっている。
一方、照射装置60は、コヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。したがって、ある瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されているホログラム記録媒体55上の領域は、ホログラム記録媒体55の表面の一部分であって、とりわけ図示する例では、点と呼ばれるべき微小領域となっている。
そして、照射装置60から照射されてホログラム記録媒体55上を走査するコヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上の各位置(各点または各領域(以下、同じ))に、当該ホログラム記録媒体55の回折条件を満たすような入射角度で、入射するようになっている。とりわけ、図2に示すように、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5を再生するようになっている。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散されて、被照明領域LZに入射するようになる。
このようなコヒーレント光の回折作用を可能にするホログラム記録媒体55として、図示する例では、フォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラムが用いられている。このホログラム記録媒体55は、図3に示すように、実物の散乱板6からの散乱光を物体光Loとして用いて作製されている。図3には、ホログラム記録媒体55をなすようになる感光性を有したホログラム感光材料58に、互いに干渉性を有したコヒーレント光からなる参照光Lrと物体光Loとが露光されている状態が、示されている。
参照光Lrは、例えば、特定波長域のレーザ光を発振するレーザ光源からのレーザ光が用いられており、レンズからなる集光素子7を透過してホログラム感光材料58に入射する。図3に示す例では、参照光Lrをなすようになるレーザ光が、集光素子7の光軸と平行な平行光束として、集光素子7へ入射する。参照光Lrは、集光素子7を透過することによって、それまでの平行光束から収束光束に整形(変換)され、ホログラム感光材料58へ入射する。この際、収束光束Lrの焦点位置FPは、ホログラム感光材料58を越えた位置にある。すなわち、ホログラム感光材料58は、集光素子7と、集光素子7によって集光された収束光束Lrの焦点位置FPと、の間に配置されている。
次に、物体光Loは、たとえばオパールガラスからなる散乱板6からの散乱光として、ホログラム感光材料58に入射する。ここでは作製されるべきホログラム記録媒体55が反射型なので、物体光Loは、参照光Lrとは反対側の面からホログラム感光材料58へ入射する。物体光Loは、参照光Lrと干渉性を有している必要がある。したがって、例えば、同一のレーザ光源から発振されたレーザ光を分割して、分割された一方を上述の参照光Lrとして利用し、他方を物体光Loとして使用することができる。
図3に示す例では、散乱板6の板面への法線方向と平行な平行光束が、散乱板6へ入射して散乱され、そして、散乱板6を透過した散乱光が物体光Loとしてホログラム感光材料58へ入射している。この方法によれば、通常安価に入手可能な等方散乱板を散乱板6として用いた場合に、散乱板6からの物体光Loが、ホログラム感光材料58に概ね均一な光量分布で入射することが可能となる。またこの方法によれば、散乱板6による散乱の度合いにも依存するが、ホログラム感光材料58の各位置に、散乱板6の出射面6aの全域から概ね均一な光量で物体光Loが入射しやすくなる。このような場合には、得られたホログラム記録媒体55の各位置に入射した光が、それぞれ、散乱板6の像5を同様の明るさで再生すること、および、再生された散乱板6の像5が概ね均一な明るさで観察されることが実現され得る。
以上のようにして、参照光Lrおよび物体光Loがホログラム記録材料58に露光されると、参照光Lrおよび物体光Loが干渉してなる干渉縞が生成され、この光の干渉縞が、何らかのパターン、すなわち体積型ホログラムでは、一例として、屈折率変調パターンとして、ホログラム記録材料58に記録される。その後、ホログラム記録材料58の種類に対応した適切な後処理が施され、ホログラム記録材料55が得られる。
図4には、図3の露光工程を経て得られたホログラム記録媒体55の回折作用(再生作用)が示されている。図4に示すように、図3のホログラム感光材料58から形成されたホログラム記録媒体55は、露光工程で用いられたレーザ光と同一波長の光であって、露光工程における参照光Lrの光路を逆向きに進む光によって、その回折条件が満たされるようになる。すなわち、図4に示すように、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する焦点FPの相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようにしてホログラム記録媒体55に対して位置する基準点SPから発散し、露光工程時における参照光Lrと同一の波長を有する発散光束は、再生照明光Laとして、ホログラム記録媒体55に回折され、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する散乱板6の相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようになるホログラム記録媒体55に対する特定の位置に、散乱板6の再生像5を生成する。
この際、散乱板6の再生像5を生成する再生光Lb、すなわち再生照明光Laをホログラム記録媒体55で回折してなる光は、露光工程時に散乱板6からホログラム感光材料58へ向かって進んでいた物体光Loの光路を逆向きに進む光として散乱板6の像5の各点を再生する。そして、上述したように、また図3に示すように、露光工程時に散乱板6の出射面6aの各位置から出射する散乱光Loが、それぞれ、ホログラム感光材料58の概ね全領域に入射するように拡散している。すなわち、ホログラム感光材料58上の各位置には、散乱板6の出射面6aの全領域からの物体光Loが入射し、結果として、出射面6a全体の情報がホログラム記録媒体55の各位置にそれぞれ記録されている。このため、図4に示された、再生照明光Laとして機能する基準点SPからの発散光束をなす各光は、それぞれ単独で、ホログラム記録媒体55の各位置に入射して互いに同一の輪郭を有した散乱板6の像5を、互いに同一の位置(被照明領域LZ)に再生することができる。
一方、このようなホログラム記録媒体55からなる光学素子50にコヒーレント光を照射する照射装置60は、次のように構成され得る。図1および図2に示された例において、照射装置60は、特定波長域のコヒーレント光を生成するレーザ光源(第1の光源)61aと、レーザ光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させる走査デバイス65と、を有している。走査デバイス65は、制御部74からの走査信号に応じて、コヒーレント光の進行方向を経時的に変化させ、コヒーレント光の進行方向が一定とはならないよう種々の方向へ向ける。この結果、走査デバイス65で進行方向を変化させられるコヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55の入射面上を走査するようになる。
とりわけ、図1及び図2に示された例では、走査デバイス65は、第1回動軸線RA1および第2回動軸線RA2の両方を中心として回動可能な反射面66aを有した反射デバイス66を含んでいる。より具体的に説明すると、反射デバイス66は、第1回動軸線RA1および第2回動軸線RA2の両方を中心として回動可能な反射面66aとしてのミラーを有したミラーデバイスとして、構成されている。そして、図2に示すように、このミラーデバイス66は、反射面66aの配向を変化させることによって、レーザ光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させるようになっている。この際、図2に示すように、ミラーデバイス66は、概ね、基準点SPにおいてレーザ光源61aからコヒーレント光を受けるようになっている。このため、ミラーデバイス66で進行方向を最終調整されたコヒーレント光は、基準点SPからの発散光束の一光線をなし得る再生照明光La(図4参照)として、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射し得る。結果として、照射装置60からのコヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するようになり、且つ、ホログラム記録媒体55上の各位置に入射したコヒーレント光が同一の輪郭を有した散乱板6の像5を同一の位置(被照明領域LZ)に再生するようになる。
図5は、照明装置40と、光源71と、第2の投射光学系72の構成を斜視図として示している。光源71及び第2の投射光学系72については後述する。図5に示された例では、反射面66aの第1回動軸線RA1は、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系、つまりXY平面がホログラム記録媒体55の板面と平行となるXY座標系のY軸と、平行に延びている。反射面66aの第2回動軸線RA2は、第1回動軸線RA1と直交している。そして、反射面66aが、第1回動軸線RA1および第2回動軸線RA2の両方を中心として回動可能なため、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPは、ホログラム記録媒体55の板面上で二次元方向に移動可能となる。このため、一例として図5に示されているように、照射装置60は、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上の平行な複数の直線経路を順に走査するように、光学素子50にコヒーレント光を照射する。図示する例では、コヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上をジグザグに走査することで、X軸に平行な複数の直線経路を順に走査している。コヒーレント光は、この走査経路を繰り返し走査する。ただし、コヒーレント光は、曲線経路等、どのような経路を走査してもよい。
なお、実際上の問題として、ホログラム記録媒体55を作成する際、ホログラム記録材料58が収縮する場合がある。このような場合、ホログラム記録材料58の収縮を考慮して、照射装置60から光学素子50に照射されるコヒーレント光の入出射角度が調整されることが好ましい。したがって、コヒーレント光源61aで生成するコヒーレント光の波長は、図3の露光工程(記録工程)で用いた光の波長と厳密に一致させる必要はなく、ほぼ同一となっていてもよい。
また、同様の理由から、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射する光の進行方向も、基準点SPからの発散光束に含まれる一光線と厳密に同一の経路を取っていなくとも、被照明領域LZに像5を再生することができる。実際に、図2および図5に示す例では、走査デバイス65をなすミラーデバイス66の反射面66aは、必然的に、その第1回動軸線RA1および第2回動軸線RA2からずれる。したがって、基準点SPを通過しない第1回動軸線RA1および第2回動軸線RA2を中心として反射面66aを回動させた場合、ホログラム記録媒体55へ入射する光は、基準点SPからの発散光束をなす一光線とはならないことがある。しかしながら、実際には、図示された構成の照射装置60からのコヒーレント光によって、被照明領域LZに重ねて像5を実質的に再生することができる。
次に、図1及び図5を参照して、投射面15に投射された映像光におけるユーザが指し示した位置を特定する構成について説明する。
光源(第2の光源)71は、非可視光を生成して、照射装置60におけるミラーデバイス66の基準点SPに照射する。非可視光は、例えば、赤外光やミリ波等である。光源71は、非可視光としてのコヒーレント光を生成するレーザ光源でも良い。
前述の様に、照射装置60において、ミラーデバイス66は、制御部74からの走査信号に応じて反射面66aの配向を変化させることによって、レーザ光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させるように構成されている。従って、このようなミラーデバイス66の反射面66aの配向の変化によって、ミラーデバイス66の基準点SPに照射された光源71からの非可視光も進行方向を変化させられる。具体的には、ミラーデバイス66は、光源71からの非可視光を第2の投射光学系72の入射面上で走査させる。図5に示すように、非可視光の第2の投射光学系72への入射点IPaは、第2の投射光学系72の入射面上で二次元方向に移動可能となる。第2の投射光学系72は、ミラーデバイス66で進行方向を変化させられた非可視光を、投射面15上に投射する。例えば、第2の投射光学系72は凹レンズ等である。
このように、ミラーデバイス66は、制御部74からの走査信号に応じて、光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させて、当該コヒーレント光をホログラム記録媒体55上で走査させると共に、光源71からの非可視光の進行方向を変化させて、当該非可視光を、投射面15上に投射された変調画像に重なるように投射面15上で走査させる。
前述した様に、ミラーデバイス66で反射された光源61aからのコヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上をジグザグに走査することで平行な複数の直線経路を順に走査する。従って、図5に示すように、同じミラーデバイス66で反射された非可視光も、第2の投射光学系72の入射面上をジグザグに走査することで平行な複数の直線経路を順に走査する。これにより、第2の投射光学系72により投射面15に投射された非可視光は、投射面15上をジグザグに走査することで平行な複数の直線経路を順に走査する。
ユーザは、投射面15上に投射された変調画像(映像光)の所望の位置を指示体80により指し示す。指示体80は、例えば、ユーザの指である。例えば、変調画像としてキーボードの画像が投射されている場合、ユーザは、キーボードの画像の所望のキーを指で指し示す。投射された変調画像に重なるように投射面15上を走査している非可視光は、ユーザの指の位置に到達した時、指の爪等で反射される。そのため、非可視光は、ユーザが指し示した位置を特定する必要がある映像光の範囲を繰り返し走査する必要がある。
検出部73は、指示体80により反射された非可視光を検出する。検出部73は、特定の波長のみを検出することにより、上記非可視光のみを検出できるように構成されている。つまり、検出部73は、レーザ光源61aからのコヒーレント光等の可視光を検出できないように構成されている。検出部73は、指示体80が投射面15のどの位置を指し示した場合であっても、指示体80で反射された非可視光を検出できるように配置されている。
制御部74は、検出部73によって非可視光が検出されたタイミングにおける走査信号と画像信号とに基づいて、指示体80が指し示した変調画像上の位置を特定する。より詳細には、ある瞬間に非可視光が入射する投射面15上の位置は、ミラーデバイス66の配向に対応している。ミラーデバイス66の配向は走査信号によって決定されるので、走査信号によって、非可視光が投射されている投射面15上の位置が特定できる。これにより、上記タイミングにおける画像信号によって得られる変調画像上において、指示体80が指し示した位置を特定できる。例えば、上記タイミングにおける変調画像としてキーボードの画像が投射されている場合、指示体80が指し示した変調画像上の位置が特定できるので、制御部74は、その位置におけるキーが選択されたことを表す信号を出力できる。例えば、図示しない電子機器は、制御部74からのこの信号に基づいて、選択されたキーに応じた処理を行うことができる。従って、例えば、バーチャルキーボードが実現できる。なお、変調画像は、キーボードの画像に限らず、インターネット上のホームページの画像等でも良い。
〔本実施形態の作用効果〕
次に、以上の構成からなる投射装置20の作用および効果について説明する。
まず、照射装置60は、コヒーレント光が光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。具体的には、レーザ光源61aで一定方向に沿って進む特定波長のコヒーレント光が生成され、このコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変えられる。走査デバイス65は、ホログラム記録媒体55上の各位置に、当該位置でのブラッグ条件を満たす入射角度で特定波長のコヒーレント光を入射させる。この結果、各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、ホログラム記録媒体55での回折により、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5を再生する。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散されて、被照明領域LZの全域に入射するようになる。このようにして、照射装置60は、被照明領域LZをコヒーレント光で照明するようになる。
図1に示すように、投射装置20においては、照明装置40の被照明領域LZと重なる位置に空間光変調器30が配置されている。このため、空間光変調器30は、照明装置40によって面状に照明され、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、映像を形成するようになる。この映像は、第1の投射光学系25によって投射面15に投射される。投射面15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、ユーザに映像として認識されるようになる。第1の投射光学系25によって投射面15上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。
しかしながら、ここで説明してきた本実施形態における照明装置40によれば、次に説明するように、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
前掲の非特許文献1によれば、スペックルを目立たなくさせるには、偏光・位相・角度・時間といったパラメータを多重化し、モードを増やすことが有効であるとされている。ここでいうモードとは、互いに無相関なスペックルパターンのことである。例えば、複数のレーザ光源から同一の投射面に異なる方向からコヒーレント光を投射した場合、レーザ光源の数だけ、モードが存在することになる。また、同一のレーザ光源からのコヒーレント光を、時間を区切って異なる方向から、投射面に投射した場合、人間の目で分解不可能な時間の間にコヒーレント光の入射方向が変化した回数だけ、モードが存在することになる。そして、このモードが多数存在する場合には、光の干渉パターンが無相関に重ねられ平均化され、結果として、ユーザの目によって観察されるスペックルが目立たなくなるものと考えられている。
上述した照射装置60では、コヒーレント光が、ホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50に照射される。また、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、同一の被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明するが、当該被照明領域LZを照明するコヒーレント光の照明方向は互いに異なる。そして、コヒーレント光が入射するホログラム記録媒体55上の位置が経時的に変化するため、被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も経時的に変化する。
被照明領域LZを基準にして考えると、被照明領域LZ内の各位置には絶えずコヒーレント光が入射してくるが、その入射方向は、図1に矢印A1で示すように、常に変化し続けることになる。結果として、空間光変調器30の透過光によって形成された映像の各画素をなす光が、図1に矢印A2で示すように経時的に光路を変化させながら、投射面15の特定の位置に投射されるようになる。
なお、コヒーレント光はホログラム記録媒体55上を連続的に走査する。これにともなって、照射装置60から被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も連続的に変化するとともに、投射装置20から投射面15へのコヒーレント光の入射方向も連続的に変化する。ここで、投射装置20から投射面15へのコヒーレント光の入射方向が僅か(例えば0.数°)だけ変化すれば、投射面15上に生じるスペックルのパターンも大きく変化し、無相関なスペックルパターンが十分に重畳されることになる。加えて、実際に市販されているMEMSミラーやポリゴンミラー等の走査デバイス65の周波数は通常数百Hz以上であり、数万Hzにも達する走査デバイス65も珍しくない。
以上のことから、本実施形態によれば、映像を表示している投射面15上の各位置において時間的にコヒーレント光の入射方向が変化していき、且つ、この変化は、人間の目で分解不可能な速さであり、結果として、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察されることになる。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられ平均化されて、ユーザに観察されることになる。これにより、投射面15に表示されている映像を観察するユーザに対して、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
なお、人間によって観察される従来のスペックルには、投射面15上でのコヒーレント光の散乱を原因とする投射面側でのスペックルだけでなく、投射面に投射される前におけるコヒーレント光の散乱を原因とする投射装置側でのスペックルも発生し得る。この投射装置側で発生したスペックルパターンは、空間光変調器30を介して投射面15上に投射されることによって、ユーザに認識され得るようにもなる。しかしながら、上述してきた本実施形態によれば、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を連続的に走査し、そしてホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、空間光変調器30が重ねられた被照明領域LZの全域を照明するようになる。すなわち、ホログラム記録媒体55が、スペックルパターンを形成していたそれまでの波面とは別途の新たな波面を形成し、複雑且つ均一に、被照明領域LZ、さらには、空間光変調器30を介して投射面15を照明するようになる。このようなホログラム記録媒体55での新たな波面の形成により、投射装置側で発生するスペックルパターンは不可視化されることになる。
ところで、前掲の非特許文献1には、投射面上に生じたスペックルの程度を示すパラメータとして、スペックルコントラスト(単位%)という数値を用いる方法が提案されている。このスペックルコントラストは、本来は均一の輝度分布をとるべきテストパターン映像を表示した際に、投射面上に実際に生じる輝度のばらつきの標準偏差を、輝度の平均値で除した値として定義される量である。このスペックルコントラストの値が大きければ大きいほど、投射面上のスペックル発生程度が大きいことを意味し、ユーザに対して、斑点状の輝度ムラ模様がより顕著に提示されていることを示す。
図1〜図5を参照しながら説明してきた本実施形態の投射装置20について、スペックルコントラストを測定したところ、3.0%となった(条件1)。また、上述の光学素子50として、反射型の体積型ホログラムに代えて、特定の再生照明光を受けた場合に散乱板6の像5を再生し得るように計算機を用いて設計された凹凸形状を有する計算機合成ホログラム(CGH)としてのレリーフ型ホログラムを用いた場合についてのスペックルコントラストは3.7%となった(条件2)。HDTV(高精細テレビ)の映像表示用途にて、ユーザが肉眼観察した場合に輝度ムラ模様がほとんど認識できないレベルとして、スペックルコントラスト6.0%以下という基準(たとえば、WO/2001/081996号公報参照)が示されているが、上述してきた本実施形態はこの基準を十分に満たしている。また、実際に肉眼観察したところ、視認され得る程度の輝度ムラ(明るさのムラ)は発生していなかった。
一方、レーザ光源からのレーザ光を平行光束に整形して空間光変調器30に入射させた場合、すなわち、図1に示された投射装置20の空間光変調器30に、走査デバイス65や光学素子50を介さず、レーザ光源61aからのコヒーレント光を平行光束として入射させた場合、スペックルコントラストは20.7%となった(条件3)。この条件下では、肉眼観察により、斑点状の輝度ムラ模様がかなり顕著に観察された。
また、光源61aを緑色のLED(非コヒーレント光源)に交換し、このLED光源からの光を空間光変調器30に入射させた場合、すなわち、図1に示された投射装置20の空間光変調器30に、走査デバイス65や光学素子50を介さず、LED光源からの非コヒーレント光を平行光束として入射させた場合、スペックルコントラストは4.0%となった(条件4)。この条件下では、肉眼観察で視認され得る程度の輝度ムラ(明るさのムラ)は発生していなかった。
条件1および条件2の結果が、条件3の結果よりも極めて良好であり、さらに、条件4の測定結果と比較しても良好となった。既に述べたとおり、スペックルの発生という問題は、実用上、レーザ光などのコヒーレント光源を用いた場合に生じる固有の問題であり、LEDなどの非コヒーレント光源を用いた装置では、考慮する必要のない問題である。加えて、条件1および条件2では、条件4と比較して、スペックル発生の原因となり得る光学素子50が追加されている。これらの点から、条件1および条件2によれば、スペックル不良に十分に対処することができたと言える。
加えて、上述してきた本実施形態によれば、次の利点を享受することもできる。
本実施形態によれば、走査デバイス65が、制御部74からの走査信号に応じて、光源71からの非可視光の進行方向を変化させて、当該非可視光を、投射面15上に投射された変調画像に重なるように投射面15上で走査させるようにしている。その上で、検出部73が、投射面15上に投射された変調画像を指し示す指示体80によって反射された非可視光を検出するようにしている。そして、制御部74は、検出部73によって非可視光が検出されたタイミングにおける走査信号と画像信号とに基づいて、指示体80が指し示した変調画像上の位置を特定するようにしている。これにより、投射面15に投射された、スペックルが目立たなくなっている変調画像において、ユーザが指し示した位置を特定できる。
また、スペックルを目立たなくさせるためにレーザ光源61aからのコヒーレント光を走査させるミラーデバイス66が、光源71からの非可視光を走査させるようにも機能する。即ち、ミラーデバイス66を共用できる。これにより、光学系を小型化且つ低コスト化することができるので、投射装置20を小型化且つ低コスト化できる。
また、上述してきた本実施形態によれば、スペックルを目立たなくさせるための光学素子50が、照射装置60から照射されるコヒーレント光のビーム形態を整形および調整するための光学部材としても機能し得る。したがって、光学系を小型且つ簡易化することができる。
また、上述してきた本実施形態によれば、ホログラム記録媒体55の各位置に入射するコヒーレント光が、互いに同一の位置に、散乱板6の像5を生成するとともに、当該像5に重ねて空間光変調器30が配置されている。このため、ホログラム記録媒体55で回折された光を、高効率で、映像形成のために利用することが可能となり、光源61aからの光の利用効率の面においても優れる。
〔本実施形態への変形〕
図1〜5に例示された一具体例に基づいて説明してきた実施形態に対して、種々の変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
(投射装置)
基本形態では、空間光変調器30が被照明領域LZと重なる位置に配置される一例について説明したが、空間光変調器30は被照明領域LZと厳密に重なる位置に配置されていなくてもよい。例えば、図1の構成において、空間光変調器30は、被照明領域LZより光学素子50側に配置されてもよく、被照明領域LZより投射光学系25側に配置されてもよい。つまり、光学素子50の各位置に入射して拡散されたコヒーレント光が、空間光変調器30を重ねて照明するように、光学素子50と空間光変調器30が配置されていればよい。
(空間光変調器、投射光学系、投射面)
上述した形態によれば、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。ただし、この作用効果は、主として照明装置40に起因したものである。そして、この照明装置40を、種々の既知な空間光変調器、投射光学系、投射面等と組み合わせても、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。この点から、空間光変調器、投射光学系、投射面は、例示したものに限られず、種々の既知な部材、部品、装置等を用いることができる。
(0次光の回避)
照射装置60からのコヒーレント光の一部は、ホログラム記録媒体55で回折されることなく当該ホログラム記録媒体55を透過する。このような光は0次光と呼ばれる。0次光が被照明領域LZに入射してしまうと、周囲と比較して明るさ(輝度)が急激に上昇する点状領域、線状領域、面状領域等の異常領域が被照明領域LZ内に発生してしまう。
反射型のホログラム記録媒体55(以下、反射型ホロ)を用いる場合は、0次光が進行する方向には被照明領域LZは配置されないため、0次光を比較的容易に回避できるが、透過型のホログラム記録媒体55(以下、透過型ホロ)を用いる場合は、0次光を回避する構成は取りづらい。したがって、透過型ホロの場合は、回折効率を極力高くし、0次光の影響をできるだけ抑えるようにするのが望まれる。
(反射型と透過型のホログラム記録媒体55)
反射型ホロは、透過型ホロに比べて、波長選択性が高い。すなわち、反射型ホロは、異なる波長に対応した干渉縞を積層させても、所望の層のみで所望の波長のコヒーレント光を回折させることができる。また、0次光の影響を除去しやすい点でも、反射型ホロは優れている。
一方、透過型ホロは、回折可能なスペクトルが広く、光源61aの許容度が広いが、異なる波長に対応した干渉縞を積層させると、所望の層以外の層でも所望の波長のコヒーレント光が回折されてしまう。よって、一般には、透過型ホロは、積層構造にするのが困難である。
(照射装置)
上述した形態では、照射装置60が、レーザ光源61aと、走査デバイス65と、を有する例を示した。走査デバイス65は、コヒーレント光の進行方向を反射によって変化させる二軸回動型のミラーデバイス66からなる例を示したが、これに限られない。走査デバイス65は、図6に示すように、ミラーデバイス66の反射面66aが、第1の回動軸線RA1のみを中心として回動可能となっていてもよい。この構成では、反射面66aが、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のY軸と平行な軸線RA1を中心として回動するため、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPは、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のX軸と平行な方向に往復動するようになる。すなわち、図6に示された例では、照射装置60は、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を1つの直線経路に沿って走査するように、光学素子50にコヒーレント光を照射する。
この構成では、ミラーデバイス66で反射された非可視光の第2の投射光学系72への入射点IPaも、1つの直線経路を往復動するようになる。従って、第2の投射光学系72によって投射面15上に投射された非可視光は、投射面15上に投射された変調画像に重なるように、投射面15上を1つの直線経路に沿って繰り返し走査する。これにより、投射面15上を非可視光が走査している直線経路上に指示体80が位置する場合、上述した実施形態と同様に、指示体80で反射された非可視光を検出することで、投射された変調画像における指示体80の位置を特定できる。
また、走査デバイス65が、二以上のミラーデバイス66を含んでいてもよい。この場合、ミラーデバイス66の反射面66aが、単一の軸線を中心としてのみ回動可能であっても、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPを、ホログラム記録媒体55の板面上で二次元方向に移動させることができる。また、ミラーデバイス66で反射された非可視光の第2の投射光学系72への入射点IPaも、第2の投射光学系72の入射面上で二次元方向に移動させることができる。
なお、走査デバイス65に含まれるミラーデバイス66aの具体例としては、MEMSミラー、ポリゴンミラー等を挙げることができる。
また、走査デバイス65は、反射によってコヒーレント光の進行方向を変化させる反射デバイス、一例として、上述してきたミラーデバイス66以外のデバイスを含んで構成されていてもよい。例えば、走査デバイス65が、屈折プリズムやレンズ等を含んでいていてもよい。
さらに、照射装置60の光源61aが、線状光線として整形されたレーザ光を発振する前提で説明してきたが、これに限られない。とりわけ、上述した形態では、光学素子50の各位置に照射されたコヒーレント光は、光学素子50によって、被照明領域LZの全域に入射するようになる光束に整形される。したがって、照射装置60の光源61aから光学素子50に照射されるコヒーレント光は精確に整形されていなくとも不都合は生じない。このため、光源61aから発生されるコヒーレント光は、発散光であってもよい。また、光源61aから発生されるコヒーレント光の断面形状は、円でなく、楕円等であってもよい。さらには、光源61aから発生されるコヒーレント光の横モードがマルチモードであってもよい。
なお、光源61aが発散光束を発生させる場合、コヒーレント光は、光学素子50のホログラム記録媒体55に入射する際に、点ではなくある程度の面積を持った領域に入射することになる。この場合、ホログラム記録媒体55で回折されて被照明領域LZの各位置に入射する光は、角度を多重化されることになる。言い換えると、各瞬間において、被照明領域LZの各位置には、或る程度の角度範囲の方向からコヒーレント光が入射する。このような角度の多重化によって、スペックルをさらに効果的に目立たなくさせることができる。
さらに、図1では、走査デバイス65で反射されたコヒーレント光を直接に光学素子50に入射させる例を示したが、走査デバイス65と光学素子50の間に集光レンズを設けて、この集光レンズでコヒーレント光を平行光束にして光学素子50に入射するようにしてもよい。このような例では、ホログラム記録媒体55を作製する際の露光工程において、参照光Lrとして、上述した収束光束に代えて、平行光束を用いることになる。このようなホログラム記録媒体55は、より簡単に作製および複製することができる。
上述した形態では、照射装置60が単一のレーザ光源61aのみを有する例を示したが、これに限られない。例えば、照射装置60が、同一波長域の光を発振する複数の光源を含んでいても良い。この場合、照明装置40は、被照明領域LZをより明るく照明することが可能となる。また、異なる固体のレーザ光源からのコヒーレント光は、互いに干渉性を有しない。したがって、散乱パターンの多重化がさらに進み、スペックルをさらに目立たなくさせることができる。
また、照射装置60が、異なる波長域のコヒーレント光を発生させる複数の光源を含んでいてもよい。この例によれば、単一レーザ光では表示することが困難な色を加法混色によって生成し、当該色で被照明領域LZを照明することができる。また、この場合、投射装置20または透過型映像表示装置10において、空間光変調器30が、例えばカラーフィルタを含んでおり、各波長域のコヒーレント光毎に変調画像の形成が可能である場合には、複数色で映像を表示することが可能となる。あるいは、空間光変調器30がカラーフィルタを含んでいなくとも、照射装置60が各波長域のコヒーレント光を時分割的に照射し、且つ、空間光変調器30が、照射されている波長域のコヒーレント光に対応した変調画像を形成するように時分割的に作動する場合にも、複数色で映像を表示することが可能となる。とりわけ、投射装置20または透過型映像表示装置10において、照射装置60が、赤色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、緑色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、青色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、を含んでいる場合には、フルカラーで映像を表示することが可能となる。
なお、光学素子50に含まれるホログラム記録媒体55は、波長選択性を有している。したがって、照射装置60が異なる波長域の光源を含んでいる場合には、ホログラム記録媒体55が、各光源で発生されるコヒーレント光の波長域にそれぞれ対応したホログラム要素を、積層した状態で、含むようにしてもよい。各波長域のコヒーレント光用のホログラム要素は、例えば、図3および図4を参照しながら既に説明した方法において、露光用の光(参照光Lrおよび物体光Lo)として、対応する波長域のコヒーレント光を用いることにより、作製され得る。また、各波長域のホログラム要素を積層してホログラム記録媒体55を作製することに代え、各波長域のコヒーレント光からなる物体光Loおよび参照光Lrを、それぞれ同時にホログラム感光材料58に露光して、単一のホログラム記録媒体55によって、複数の波長域の光をそれぞれ回折するようにしてもよい。
(光学素子)
上述した形態において、光学素子50が、フォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラム55からなる例を示したが、これに限られない。既に説明したように、光学素子50は複数のホログラム記録媒体55を含んでいてもよい。また、光学素子50は、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラムを含んでもよい。さらに、光学素子50は、透過型の体積型ホログラム記録媒体を含んでいてもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体を含んでいてもよい。
ただし、レリーフ(エンボス)型ホログラムは、表面の凹凸構造によってホログラム干渉縞の記録が行われる。しかしながら、このレリーフ型ホログラムの場合、表面の凹凸構造による散乱が、新たなスペックル生成要因となる可能性があり、この点において体積型ホログラムの方が好ましい。体積型ホログラムでは、媒体内部の屈折率変調パターン(屈折率分布)としてホログラム干渉縞の記録が行われるため、表面の凹凸構造による散乱による影響を受けることはない。
もっとも、体積型ホログラムでも、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプのものは、銀塩粒子による散乱が新たなスペックル生成要因となる可能性がある。この点において、ホログラム記録媒体55としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラムの方が好ましい。
また、図3に示す露光工程では、いわゆるフレネルタイプのホログラム記録媒体が作成されることになるが、レンズを用いた記録を行うことにより得られるフーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を作成してもかまわない。ただ、フーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を用いる場合には、像再生時にもレンズを使用してもよい。
また、ホログラム記録媒体55に形成されるべき屈折率変調パターンや凹凸パターン等の縞状パターンは、現実の物体光Loおよび参照光Lrを用いることなく、予定した再生照明光Laの波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計されてもよい。このようにして得られたホログラム記録媒体55は、計算機合成ホログラムとも呼ばれる。また上述した変形例のように波長域の互いに異なる複数のコヒーレント光が照射装置60から照射される場合には、計算機合成ホログラムとしてのホログラム記録媒体55は、各波長域のコヒーレント光にそれぞれ対応して設けられた複数の領域に平面的に区分けされ、各波長域のコヒーレント光は対応する領域で回折されて像を再生するようにしてもよい。
さらに、上述した形態において、光学素子50が、各位置に照射されたコヒーレント光を拡げて、当該拡げたコヒーレント光を用いて被照明領域LZの全域を照明するホログラム記録媒体55を、有している例を示したが、これに限られない。光学素子50は、ホログラム記録媒体55に代えて或いはホログラム記録媒体55に加えて、各位置に照射されたコヒーレント光の進行方向を変化させるとともに拡散させて、被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明する光学要素としてのレンズアレイを有するようにしてもよい。このような具体例として、拡散機能を付与された全反射型または屈折型のフレネルレンズやフライアイレンズ等を挙げることができる。このような照明装置40においても、照射装置60が、レンズアレイ上をコヒーレント光が走査するようにして、光学素子50にコヒーレント光を照射するようにし、且つ、照射装置60から光学素子50の各位置に入射したコヒーレント光が、レンズアレイによって進行方向を変化させられて被照明領域LZを照明するよう、照射装置60および光学素子50を構成しておくことにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。なお、本発明における光学素子における「拡散」とは、入射光を所定の方向に角度的に拡げて出射することを指し、回折光学素子やレンズアレイ等による拡散角が十分に制御された場合のみならず、オパールガラス等の散乱粒子により出射角を拡げる場合も含まれるものとする。
(変形例の組み合わせ)
なお、以上においていくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。