以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置10の機能構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置10は、合成帯域レーダ11及び目標トラッキング部12を具備する。
合成帯域レーダ11は、アンテナ111及びレーダ処理部112を備える。図2は、第1の実施形態に係るレーダ装置10のレーダ処理部112の機能構成を示すブロック図である。なお、図2では、送信部は図示していない。
レーダ処理部112は、図示しない送信部からアンテナ111へ送信パルスを出力する。アンテナ111は、レーダ処理部112から供給される送信パルスを放射する。このとき、アンテナ111から放射される送信パルスは、例えば、図3に示す構成をとる。
図3に示すパルス構成例によれば、全帯域幅はfstp間隔の複数の周波数ステップに分割される。1つの周波数ステップでは、Np個の送信パルスがパルス繰り返し間隔(PRI:Pulse Repetition Rate)T2で放射される。隣の周波数ステップに移ると、さらにNp個の送信パルスが放射される。この動作を全ての周波数ステップについてスイープする。このようなパルス構成の送信パルスを放射することで、Nf個の周波数ステップで構成される全帯域幅に相当する解像度を、個々の送信パルスの帯域幅のベースバンド帯域幅で得ることが可能となる。
図3に示す構成で放射される送信パルス列は、目標等で反射され、アンテナ111により受信される。アンテナ111は、受信信号をレーダ処理部112へ出力する。
図2に示すレーダ処理部112は、受信RF部1121、パルス復調部1122、ドップラ周波数検出部1123、代表値抽出部1124、移動速度計算部1125、補正部1126、レンジ計算部1127及びパラメータ抽出部1128を備える。
受信RF部1121は、同一の周波数ステップの受信パルスを、この周波数ステップのキャリア周波数でベースバンドにダウンコンバージョンする。受信RF部1121は、ベースバンド信号をアナログ−デジタル変換し、デジタル信号とする。
パルス復調部1122は、受信RF部1121から供給されるデジタル信号を復調し、1パルス1点のパルス代表値を抽出する。例えば、短パルスであれば、1ゲートに付き1パルス1点、チャープパルスであれば、1レンジビンにつき1パルス1点といった具合に復調する。
ドップラ周波数検出部1123は、同一の周波数ステップのパルス代表値を並べてフーリエ変換し、周波数スペクトルとする。ドップラ周波数検出部1123は、全ての周波数ステップにおける周波数スペクトルを利用し、目標のドップラ周波数を検出する。ドップラ周波数検出部1123は、検出したドップラ周波数を代表値抽出部1124及び移動速度計算部1125へ出力する。
移動速度計算部1125は、ドップラ周波数検出部1123から供給されるドップラ周波数を移動速度に変換する。移動速度計算部1125は、取得した移動速度を、速度測定値として目標トラッキング部12へ出力すると共に、代表値抽出部1124及び補正部1126へ通知する。
代表値抽出部1124は、移動速度計算部1125から通知される移動速度に対応するドップラ周波数スペクトルの成分を、周波数ステップ毎に周波数ステップ代表値として抽出する。代表値抽出部1124は、抽出した周波数ステップ代表値及び移動速度を補正部1126へ出力する。
補正部1126は、代表値抽出部1124から供給される周波数ステップ代表値に対して、移動速度に基づいた位相の補正を行う。
移動速度の補正について式を用いて説明する。周波数ステップ代表値は次式のように表される。
iは周波数ステップ番号、A
iは各周波数ステップ代表値の振幅、φ
iは各周波数ステップ代表値の位相であって、詳細には次式のようである。
ただし、Δω
iは周波数ステップiのドップラ周波数であり、ω
0iは周波数ステップiのキャリア周波数f
0iの角周波数であり、Rはレンジであり、cは光速である。(2)式の右辺第2項が、最終的にレンジを検出するために利用する項であり、右辺第1項が検出した移動速度を利用して補正すべき項である。iN
pT
2はその周波数ステップまでの経過時間であり、それに、各周波数ステップでのドップラ周波数が乗算されている。Δvだけ誤差のある移動速度で補正した周波数ステップ代表値は次式のようになる。
図2のレンジ計算部1127は、(3)式に示す補正後の周波数ステップ代表値に、逆フーリエ変換等によって合成帯域処理を行い、レンジを計算する。その結果、(3)式の最後のeの肩の括弧の中身が合成帯域処理後に検出されるピークのレンジとなる。従って、正しいレンジRに対して、(f
00/f
stp)N
pT
2Δvだけの誤差が生じている。すなわち、速度誤差Δvが
倍されてレンジ誤差となる。
このレンジ誤差の特徴は、速度誤差がない場合に熱雑音から生じるレンジ誤差と比較して、殆どの場合1桁以上大きく、レンジ誤差の支配要因であること、また、速度誤差が同一であるピーク、すなわち、同一目標物体の中の異なる部位からのピークは全て同じレンジ誤差を受けることである。
代表値抽出部1124では、移動速度に対応する周波数ステップ代表値を抽出している。すなわち、特定の移動速度の成分のみを抽出している。速度差が小さい複数の異なる物体からの受信波が混在しているような状況もある可能性はあるが、目標が移動物体である場合、多くの場合は、1つの目標物体とそのマルチパス程度しか含まれない。マルチパスとは、目標物体で反射したレーダ波が他の物体でさらに反射して受信された波である。なお、ドップラ周波数検出の段階で複数ピークがあった場合、レンジ計算部1127は、異なる速度の複数の物体があるものとして、それぞれの速度毎に合成帯域処理を行う。また、ドップラ周波数検出の段階で複数のピークがあり、かつ、検出したい目標の概算速度が既知である場合、レンジ計算部1127は、検出したい目標の概算速度に近い成分のみを抽出し、抽出した速度について合成帯域処理を行う。
したがって、1回の合成帯域処理に掛けられる成分の殆どは同じ物体からの反射波で構成されていることが多く、その結果、上述したような速度誤差に起因するレンジ誤差は、合成帯域後の波形全体が前後にシフトするような形で現れる。図4は、目標物体内に3点の部位がある場合のレンジ誤差を示す模式図である。図4(a)は、速度誤差がない場合の熱雑音のみに起因するレンジ誤差の現れ方である。図4(a)によれば、各部位に対応する合成帯域後波形のピークの位置は、予測するピークからそれぞれ独立してずれるように現れる。図4(b)は、速度誤差に起因するレンジ誤差の現れ方である。図4(b)によれば、(3)式による速度誤差に起因するレンジ誤差は、波形全体がそのまま前後にシフトする形で現れる。
レンジ計算部1127は、合成帯域処理後の波形に基づいて、複数のピークのそれぞれのレンジを抽出する。
パラメータ抽出部1128は、各ピークのレンジと合成帯域処理後の波形から、必要に応じて、そのピークのパワーと角度とを検出する。パラメータ抽出部1128は、レンジ計算部1127で抽出したレンジと、検出したパワー及び角度とをセットにした測定情報を目標トラッキング部12へ出力する。なお、角度を検出するためには、レーダ装置10は、2系統以上のアンテナを有している必要がある。2系統以上のアンテナを有している場合、レーダ装置は、2系統以上のアンテナと接続する系統、又は、これらを合成した幾つかの系統について、上記と同様に合成帯域処理を行う。
図1の目標トラッキング部12は、速度トラッキング部121、誤差算出部122、変換部123、レンジ修正部124及び複数部位トラッキング部125を備える。
速度トラッキング部121には、合成帯域レーダ11から速度測定値が供給される。速度トラッキング部121は、合成帯域レーダ11から供給された過去からの速度測定値を用いて、目標の速度の推定値である速度推定値を算出する。速度推定値の計算は、予測フィルタを用いた高度な予測トラッキングにより行っても良い。このとき、速度トラッキング部121は、過去からの測定で得られた速度測定値を予測フィルタに掛けることにより速度予測値を算出する。そして、速度トラッキング部121は、算出した速度予測値を速度推定値とする。また、速度トラッキング部121は、予測トラッキングの代わりに、処理の単純な方法として、過去の数回から数10回程度の速度測定値の平均化により行っても良いし、簡単な時不変のフィルタによる平滑化により行っても良い。なお、カルマンフィルタ等でトラッキングすればより確度の高い速度推定値を得ることが可能である。また、速度測定値は前述のように、多くの場合、1回の測定回又は1回の合成帯域処理に付き1つの値しか出てこないため、レンジのような複数目標トラッキングは必要無く、通常のトラッキングでよい。速度トラッキング部121は、速度測定値と速度推定値とを誤差算出部122へ出力する。
誤差算出部122は、速度測定値と速度推定値との差から、速度誤差を算出する。すなわち、速度推定値をveとすると、速度測定値vmとの差によって得られる速度誤差Δvは、Δv=vm−veとなる。誤差算出部122は、算出した速度誤差を誤差変換部123へ出力する。
誤差変換部123は、誤差算出部122から供給される速度誤差に対して、(4)式に示す速度誤差−レンジ誤差変換係数を乗算することで、レンジ誤差を算出する。誤差変換部123は、算出したレンジ誤差をレンジ修正部124へ出力する。
レンジ修正部124には、誤差変換部123で算出されたレンジ誤差と、合成帯域レーダ11で検出された測定情報が供給される。レンジ修正部124は、測定情報に含まれるレンジから、レンジ誤差を減算することで、速度誤差に起因するレンジ誤差を修正する。レンジ修正部124は、修正後のレンジ(以下、修正レンジ、と称する)と、供給された測定情報とを複数部位トラッキング部125へ出力する。
MTTには種々の方法があるが、多く方法では、複数の測定値を複数のトラックのうちいずれかへ割り当て、割当ての結果に基づいて目標のトラッキングを行うようにしている。また、明確な割当てを行わず、複数の測定値を同時に入力して、複数のトラックを同時に更新する方法もある。このような方法でも、本実施形態のように速度誤差に起因するレンジ誤差の修正を行ってからトラッキングを行えば、修正したレンジは誤差が小さいため、より正確なトラッキングが可能である。
本実施形態に係る手法では、特に割当ての改善効果が高いため、以下、割当てを行う場合について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る複数部位トラッキング部125の機能構成を示すブロック図である。図5に示す複数部位トラッキング部125は、割当て部1251及びトラッキング部1252を備える。
割当て部1251は、レンジ修正部124から供給される複数の修正レンジを、トラッキング部1252から通知される予測値を利用して、複数のトラックのいずれかに割り当てる。ここで、トラックとは、目標物体内の複数の部位それぞれの移動の軌跡の推定値の系列である。
トラッキング部1252は、割当て部1251での割当て結果に基づいて、目標物体内の複数の部位のレンジトラッキングを行う。また、トラッキング部1252は、次のスキャンでの複数の部位のレンジを予測し、予測したレンジを予測値として割当て部1251へ通知する。
MTTの中の割当てを行う方法にも非常に沢山の方法があるが、背景技術で述べたように、殆どの方法は非常に計算量が多い。本実施形態では、その中で最も計算量が少ない方法の一つである2−D NNKFを採用した例を説明する。MTTの多くの方法では、予めフォールスアラーム確率及び/又はミスディテクション確率を定義することで、これらの確率による割当て間違いをある程度減らすことが可能である。しかし、2−D NNKFでは、こういった確率を導入せずに割当てを行う。そのため、割当て部1251は、割当て時に、各トラックで定義されるゲート内に割り当て可能な修正レンジがあれば、その修正レンジが実際にはフォールスアラームであったとしても、その修正レンジをいずれかのトラックに割り当ててしまう。つまり、比較的ゲートを広めにとり、かつ、ミスディテクション及びフォールスアラームが同時に発生した場合、割当て部1251は、フォールスアラームもいずれかのトラックに割り当ててしまう。これを防ぐためにはゲートを狭く取れば良いが、ゲートを狭く取ると、合成帯域レーダ11で検出した速度誤差が大きい場合、レンジ誤差も大きくなるため、ゲート内に割り当ての対象となる修正レンジが存在しないことがあり、又は、前述のように隣のトラックに割り当てるべき修正レンジを割り当ててしまうことがある。
2−D NNKFを採用する場合、まず、トラッキング部1252は、トラッキングにより、目標物体内の部位に対応するトラック毎の予測値を生成する。図6は、目標物体内に3つの部位が存在する場合のトラック毎の予測値と、合成帯域処理後の波形とを示す模式図である。図6において、太い矢印は、各トラックの予測値のレンジを示す。太い矢印を中心として、修正レンジの割当てを制限するためのゲートが設けられる。なお、ゲートの幅は一定値としてもよいし、トラッキングによって得られた誤差分散を利用して1σ、2σといった幅で定義しても良い。
修正レンジをいずれのトラックへ割り当てるのかを判断する基準が、修正レンジの値のみである場合、割当て部1251は、各予測値と各修正レンジとの二乗誤差を計算する。このとき、割当て部1251は、ゲートの中に入る修正レンジのみについて二乗誤差を計算し、それ以外の測定値については計算しない。図7は、ゲート内の修正レンジについて二乗誤差を算出したマトリクスを示す。なお、図7における×印は、ゲート外に位置するため、二乗誤差を計算しない修正レンジを示す。
また、修正レンジをいずれのトラックへ割り当てるのかを判断する基準が、例えば、修正レンジの値に加えて角度のように複数ある場合、割当て部1251は、非特許文献2に記載されているように、誤差行列の共分散で正規化した誤差合計値を二乗誤差の替わりに用いると良い。ただし、角度測定方法が複数反射波の干渉に弱いモノパルス測角のような方法である場合、各部位内の複数反射点の干渉によって、熱雑音から推定される範囲を遙かに超えた誤差を出すグリント雑音が発生することがある。グリント雑音は分布が正規分布ではなく、雑音が正規分布であることを前提として動作するカルマンフィルタとはなじまない。このような場合、角度に対するゲートを広めに設定し、また、トラッキングに利用する角度の分散値は予測される分散値よりやや大きめに設定して、割当て基準とする誤差合計値における角度誤差の寄与を小さく抑えておくと良い。
割当て部1251は、上述のように作成したマトリクスから、トラックと修正レンジが必ず1:1で対応付けられ、かつ、全割当ての誤差の合計値が最小、又は、できるだけ最小に近い割当ての組合せを選択する。具体的な割当ての組合せの選択方法は、非特許文献2に記載されている。
割当てアルゴリズムによって若干性能は変化するものの、ゲートにより割当て範囲を制限するため、ゲートの外に出てしまうと割当て不能となり、ゲートの中にいれば間違った測定値でも割当てられる可能性がある点は共通である。
トラッキング部1252は、割当て部1251で割り当てられた修正レンジをそのトラックの新規な値として、通常のカルマンフィルタによるトラッキングを行う。なお、複数の部位に対して同時にトラッキングを行う場合、トラックの開始、終了、分岐、結合などのアルゴリズムが必要であり、様々なアルゴリズムが提案されているが、本実施形態ではその説明を省略する。
ここで、割当て部1251でトラックに割当てる際に利用する測定値の種類と、トラッキング部1252でトラッキングする際に利用する測定値の種類とは異なっていても構わない。例えば、割当て部1251でレンジの値を基準に測定値をトラックに割り当て、トラッキング部1252でレンジに加え、合成帯域レーダ11から供給される速度測定値を利用して目標物体内の複数の部位をトラッキングしても構わない。このように、目標物体内の各部位のレンジをトラッキングする際に、レンジの値に加え速度測定値も利用すると、レンジのトラッキング精度が向上する。なお、前述のように速度は部位に依存しない値であるため、トラックに測定されたレンジを割り当てる際の基準として速度を用いても意味はない。
なお、速度誤差に起因するレンジ誤差を修正しないレンジと、速度測定値とを測定値入力として利用してレンジトラッキングを行う場合、トラッキングに利用する測定誤差の共分散行列におけるレンジ誤差と速度誤差との相関に相当する行列値に、(4)式に基づいたレンジ誤差と速度誤差との相関の大きさに関する項を入れておくと良い。
ただし、トラッキング部1252がレンジトラッキングの際に行う速度トラッキングの結果の精度は、割当て部1251で割当て間違いが生じた場合、割当て間違いが生じない場合よりも下がる傾向がある。そのため、レンジ修正を行うために用いる速度トラッキングは、トラッキング部1252で行われるレンジトラッキングとは分け、速度トラッキング部121で独立して行うようにする。
次に、以上のように構成されたレーダ装置10の処理手順をシミュレーション結果を用いて説明する。
図8は、第1の実施形態に係るレーダ装置10の目標トラッキング部12による目標追従処理の手順を示すフローチャートである。
まず、目標トラッキング部12は、合成帯域レーダ11から、速度測定値及び測定情報を取得する(ステップS81)。速度トラッキング部121は、合成帯域レーダ11から供給される速度測定値に基づいて速度推定値を算出する(ステップS82)。誤差算出部122は、速度測定値と速度推定値とから速度誤差を算出する(ステップS83)。誤差変換部123は、速度誤差に変換係数を乗じることで、速度誤差をレンジ誤差へ変換する(ステップS84)。レンジ修正部124は、合成帯域レーダ11から供給される測定情報に含まれるレンジを、誤差変換部123から供給されるレンジ誤差に基づいて修正する(ステップS85)。
図9は、3つから4つの主要な反射部位を持つ物体について、先頭と各部位とのレンジ差のシミュレーション結果の例を示す図である。横軸はレンジを示す。縦軸は、物体の先頭の正解値からの各部位のレンジ差を示す。各測定回で得られた各部位のレンジを、物体の先頭の正解値とのレンジ差としてプロットした。なお、目標物体はレンジ2000mから徐々に近づいており、また、マルチパスが、目標物体で直接反射された反射波と同程度のパワーで受信されるように設定した。図9(a)は、合成帯域レーダ11で検出された各部位のレンジを修正せずにプロットしたものである。一方、図9(b)は、その測定回の前後の測定回で得られた速度測定値を平均化して速度推定値を算出し、この速度推定値に基づいて修正されたレンジをプロットしたものである。
目標物体の主要な反射部位は3,4個程度であるが、マルチパスがあるため、最大8個程度の測定値が得られる。しかし、遠方では、マルチパスと直接反射波とのレンジ差が小さいため、測定値の位相関係によっては、マルチパスと直接反射波とを分離することができない。そのため、合成されて1測定点となっていることがある。
図9(a)によれば、特に遠方でレンジ誤差が非常に大きくなっている。これは、遠方では、受信パワーが小さく、SNR(Single to Noise Ratio:信号対雑音比)が低いため、速度誤差が大きいからである。このような場合、レンジ誤差が解像度を超えることが考えられるため、隣接トラックへ間違えて測定値を割り当てることが予想される。一方、図9(b)では、遠方であっても、速度誤差に起因するレンジ誤差が修正されているため、完全ではないが、直接反射波とマルチパスとの区別が付き易くなっている。このため、割当て時に、トラックへの測定値の割当てが容易になるであろうことが予想できる。
割当て部1251は、修正したレンジを、目標物体内の複数の部位毎に対応するトラックのいずれかに割り当てる(ステップS86)。トラッキング部1252は、割当て結果に基づいて、複数の部位それぞれについてトラッキングを行う(ステップS87)。
図10は、図9で示す測定値を割当て部1251により各トラックへ割り当て、割当て結果に基づいてトラッキング部1252で各部位のトラッキングをした場合のシミュレーション結果を示す図である。本シミュレーションでは、レンジの値のみに基づいて測定値を各トラックへ割り当て、レンジをトラッキングする際には、レンジの値と速度とを利用するようにしている。図10では、異なるトラックに割り当てられた測定値を異なるマークで表す。マークの種類が少ないため、若干離れたトラックでは同じマークを使用していることがある。横軸は測定回番号であり、図9に対して左右が反転している。図10(a)は、修正を行っていないレンジの値に基づいて測定値を各トラックへ割り当て、割当て結果に従い、修正を行っていないレンジの値をプロットした場合のシミュレーション結果を示す。また、図10(b)は、修正を行っていないレンジの値に基づいて測定値を各トラックへ割り当て、割当て結果に従い、修正を行ったレンジの値をプロットした場合のシミュレーション結果を示す。また、図10(c)は、修正を行ったレンジの値に基づいて測定値を各トラックへ割り当て、割当て結果に従い、修正を行っていないレンジの値をプロットした場合のシミュレーション結果を示す。また、図10(d)は、修正を行ったレンジの値に基づいて測定値を各トラックへ割り当て、割当て結果に従い、修正を行ったレンジの値をプロットした場合のシミュレーション結果を示す。
図9(a)において、測定値の縦方向のばらつきの主原因は速度誤差に起因するレンジ誤差である。このレンジ誤差がレーダの解像度を超える場合、隣接トラックへ間違えて測定値を割り当てることが有る。図10(b)には、レンジ誤差のために割当て処理に失敗した例が示される。つまり、図10(b)は、修正を行っていないレンジの値に基づいて測定値を各トラックへ割り当て、割当て結果に従い、修正を行ったレンジの値をプロットした場合のシミュレーション結果であるため、測定回番号の増加方向へおよそ一様に連なる同一のマークの中に、他のマークが含まれる場合、その他のマークに対応する測定値は割当てに失敗したものであると判断することができる。
図11から図14は、図10(b),(d)のうち4つのトラックの、レンジ、パワー及び角度のトラッキング結果を示す図である。図11(a)〜図14(a)は図10(b)から選択した各トラックについてのレンジ差の推移を示し、図11(b)〜図14(b)は図10(b)から選択した各トラックについてのパワーの推移を示し、図11(c)〜図14(c)は図10(b)から選択した各トラックについての角度の推移を示す。また、図11(d)〜図14(d)は図10(d)から選択した各トラックについてのレンジ差の推移を示し、図11(e)〜図14(e)は図10(d)から選択した各トラックについてのパワーの推移を示し、図11(f)〜図14(f)は図10(d)から選択した各トラックについての角度の推移を示す。なお、パワーは、レンジの4乗を乗算してレンジの変化によるパワー変化を除去した値である。
図11によれば、修正を行ったレンジをトラックに割り当てるか否かにより、レンジ差に大きな違いは見られない。しかし、横軸のCPI番号、すなわち測定回が若い方で、レンジ修正しなかった場合の角度変動が若干大きく、また、測定点が不連続なことが多い。つまり、レンジ修正しなかった場合には、割当てに失敗していることが分かる。一方、レンジ修正した場合では、測定点の連続性が高く、また、角度変動もあまり大きくない。
図12によれば、レンジ修正しなかった場合での角度変動がより明確に現れている。図11のトラックと図12のトラックとは隣接トラックである。図12のトラックでは、本来図11のトラックに含まれるべき測定値が図12のトラックに割り当てられてしまったために角度変動が大きくなっている。一方、レンジ修正した場合では、このようなことは少ない。
図13及び図14は、パワーに緩やかな変動があるトラックであるが、割当て時にレンジ修正した場合では、緩やかな変動が綺麗に見えている一方、レンジ修正しなかった場合では、他のトラックと混ざり合って、スパイク状のパワー変動が多数発生している。また、スパイク状のパワー変動に伴い、角度も変動が大きくなっている。パワー変動は、トラックに対応する目標部位に含まれる複数の反射点の干渉状態が変化していることに起因している。パワーが減少する時には、グリント雑音が発生し、角度も変動する。本来は、緩やかなパワー変動でパワーが0に近づいた測定回でグリント雑音が発生するはずである。割当て時にレンジ修正した場合には、明確にそういった傾向が現れているが、レンジ修正しなかった場合は、それとは関係無く、角度変動が発生している。
以上のシミュレーションの結果、割当て時に速度誤差に起因するレンジ誤差を修正してから割り当てることによって、より正しい割当てが可能になっていることが分かる。
以上のように、第1の実施形態では、目標トラッキング部12は、速度トラッキング部121で速度推定値を算出し、誤差算出部122で速度誤差を算出し、誤差変換部123で速度誤差をレンジ誤差へ変換する。目標トラッキング部12は、合成帯域レーダ11で検出されたレンジを、レンジ修正部124でレンジ誤差を用いて修正し、複数部位トラッキング部125で修正後のレンジに基づいて目標物体内の複数部位をトラッキングする。これにより、合成帯域レーダ特有の速度誤差に起因する大きなレンジ誤差がある場合であっても、トラックにおける次の測定回の測定値がゲートの中に入らず、トラックに測定値をうまく割り当てられないという事態を抑圧することが可能となる。
速度誤差の影響が比較的大きくでる構成の送信パルスを放射する場合、又は、解像度が非常に高い場合等には、速度誤差に起因するレンジ誤差の大きさが、この部位の目標トラックのゲートを超えてしまうことがある。第1の実施形態に係るレーダ装置によれば、このような場合であっても、速度誤差に基づいて算出されるレンジ誤差を用いてレンジを修正しているため、測定値を割り当てるべきトラックを隣のトラックと間違えることを回避することが可能となる。
また、2−D NNKFの割当てのアルゴリズムが比較的高度であり、全てのトラックに対応する測定値が観測されており、かつ、フォールスアラーム及びミスディテクションが無い場合、この測定値が隣のトラックに間違えて割り当てられる確率は高くない。しかし、フォールスアラーム及びミスディテクションは普通に発生するものであるため、観測された測定値が隣のトラックに間違えて割り当てられることは発生し得ることである。
実際に、高解像度レーダで、目標物体内の複数の部位を同時に観測する場合、各部位がさらに複数の反射点を含んでいる。これらの反射点からの反射波は、目標物体の角度により干渉し、強めあったり弱めあったりする。そのため、目標物体内の複数の部位からの反射波のパワーは変動し、時には検出出来ない程度にパワーが減少することがある。また、複数のトラックが解像度の限界近くまで近づいている場合、レーダ装置は、測定値の位相関係によっては、これらを分離して検出することができず、1つの測定点して観測してしまうことがある。このように合成帯域レーダ11で物体を高分解する場合、ミスディテクションは頻繁に発生するものである。
第1の実施形態に係るレーダ装置によれば、フォールスアラーム及び/又はミスディテクションが発生する場合であっても、速度誤差に基づいて算出されるレンジ誤差を用いてレンジを修正しているため、観測された測定値が隣のトラックに間違えて割り当てられることを回避することが可能となる。
また、カルマンフィルタは、通常、加わる雑音は白色ガウス雑音であるとの仮定で設計されることが多い。しかし、カルマンフィルタに入力される前の段階で、目標トラックへ測定値を割り当て損ねた場合、間違った割当てによる測定値は雑音の統計的性質から外れたものとなる。そのため、トラッキングが正しく行われなくなる可能性がある。このように、測定値の割当て間違いを抑圧し、より良いトラッキング動作を得るためにも、予めレンジを修正しておくことは有効である。
また、割当てを間違う可能性を加味して雑音の共分散及びトラックを決定していく手法もあるが、その際には、割当てを間違う確率が予め既知である必要がある。しかし、大きな物体内部を高分解して観測しようとする場合、その内部の構造が予め既知であることは殆ど無く、割当て間違い確率やミスディテクション確率、フォールスアラーム確率等を予め知ることは難しい。第1の実施形態に係るレーダ装置によれば、このような手法を用いずとも、測定値を割り当てるべきトラックを隣のトラックと間違えることを回避することが可能となる。
したがって、第1の実施形態に係るレーダ装置によれば、検出した移動速度に速度誤差が含まれている場合であっても、合成帯域レーダで高分解して検出した複数の測定値をMTTで正確にトラッキングすることができる。
なお、第1の実施形態では、複数部位トラッキング部125が2−D NNKFを利用し、目標物体内の複数の部位のトラッキングを行う場合を例に説明したが、これに限定される訳ではない。例えば、複数部位トラッキング部125は、2−D NNKF以外の方法、例えば、JPDA(Joint Probability Data Association)及びMHT(Multiple Hypothesis Tracking)等の方法を利用して、目標物体内の複数の部位のトラッキングを行うようにしても構わない。これらの方法を利用する場合であっても、レンジ修正によりレンジ測定値の変動幅が小さくなるため、割当ての改善効果がある。
また、第1の実施形態では、速度をいずれかの方法で平滑化した速度推定値を計算し、それに対する速度測定値の差を速度誤差としている。ただし、速度推定値が正しい速度と一致しない場合も当然有り得る。速度推定値が正しい値でない場合であっても、毎回の速度測定において、雑音等測定側の問題による速度変動が吸収されて平滑化された値が求められていればよい。
すなわち、毎回の速度測定値をv(k)とし、v(k)=vc(k)+vn(k)とし、vc(k)はその回の正しい速度測定値、vn(k)は測定側の問題によって発生した測定誤差とした場合、速度推定値は正しくvc(k)である必要は無く、例えば、vc(k)+vdといった値であっても、vdのkに対する変動が小さければよい。この場合には、レンジ修正の際に正しいレンジまで修正は出来ないが、毎回同じ量だけずれたレンジに修正するため、レンジトラック全体がずれることになる。しかし、レンジ予測値と修正した測定レンジが共にほぼ同じ量だけずれるため、正しく修正した場合と同じ対応関係を作れるような割当てが可能となる。
また、第1の実施形態では、トラッキング部1252は、修正レンジを用いてトラッキングをする場合を例に説明したが、これに限定される訳ではない。トラッキング部1252は、速度トラッキングによる速度推定値の確度が高い場合には、修正レンジを用いてトラッキングをし、速度推定値の確度が高くない場合には、合成帯域レーダ11から供給されるレンジを用いてトラッキングをするようにしても構わない。ここで、速度推定値の確度が高い場合とは、SNR(Sound to Noise Ratio)が高い場合をいう。
トラッキング部1252は、SNRの状態を監視し、SNRの値が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する。SNRが閾値を超えると判断する場合、トラッキング部1252は、修正レンジを用いてトラッキングをする。一方、SNRが閾値を超えないと判断する場合、合成帯域レーダ11から供給されるレンジを用いてトラッキングをする。速度推定値が多少ずれていても平滑化されていれば、レンジ修正によって割当て間違いを抑圧することは出来るが、その場合、修正レンジは真の値から大きくずれている可能性が高いためである。
(第2の実施形態)
図15は、本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置20の機能構成を示すブロック図である。図15に示すレーダ装置20は、合成帯域レーダ11及び目標トラッキング部21を具備する。
目標トラッキング部21は、速度トラッキング部121、誤差算出部122、変換部123及び複数部位トラッキング部211を備える。複数部位トラッキング部211は、誤差変換部123で変換されたレンジ誤差と、合成帯域レーダ11で検出された速度測定値及び測定情報とを受信する。
複数部位トラッキング部211は、割当て部2111、トラッキング部2112及び予測値修正部2113を備える。
割当て部2111は、後述する予測値修正部2113から供給される予測値に基づいてゲートを決定する。割当て部2111は、合成帯域レーダ11から供給される測定情報に含まれるレンジのうちゲート内に位置するレンジと、このゲートの中心に位置する予測値との距離を算出する。割当て部2111は、算出した距離と、目標物体内の複数の部位に対応するトラックとの関係を示すマトリクスを図7と同様に作成する。割当て部2111は、作成したマトリクスに基づいて、レンジを複数のトラックのいずれかに割り当てる。
トラッキング部2112は、割当て部2111での割当て結果に基づいて、目標物体内の部位毎のトラッキングを行う。またトラッキング部2112は、次のスキャンでの複数の部位のレンジを予測し、予測したレンジを予測値として予測値修正部2113へ通知する。
予測値修正部2113は、トラッキング部2112から供給される予測値に、誤差変換部123から供給されるレンジ誤差を付加することで、予測値を修正する。予測値修正部2113は、修正した予測値を割当て部2111へ出力する。
図16は、第2の実施形態に係るレーダ装置20の目標トラッキング部21による目標追従処理の手順を示すフローチャートである。
目標トラッキング部21のステップS81〜S84の動作は、図8に示す目標トラッキング部12のステップS81〜S84と同様である。
ステップS161において、予測値修正部2113は、トラッキング部2112から供給される予測値を、誤差変換部123から供給されるレンジ誤差に基づいて修正する(ステップS161)。
割当て部2111は、修正された予測値に基づいて、合成帯域レーダ11から供給されるレンジを、目標物体内の複数の部位毎に対応するトラックのいずれかに割り当てる(ステップS162)。トラッキング部2112は、割当て結果に基づいて、複数の部位それぞれについてトラッキングを行う。また、トラッキング部2112は、予測値を算出し、予測値修正部2113へ出力する(ステップS163)。
以上のように、第2の実施形態では、予測値修正部2113は、トラッキング部2112で算出された予測値を、レンジ誤差に基づいて修正する。すなわち、ゲート中央値を修正する。そして、割当て部2111は、修正後の予測値に基づいて、測定されたレンジを複数のトラックのいずれかへ割り当てるようにしている。これにより、割当て間違いを抑圧することが可能となる。
第1の実施形態では、測定値を速度誤差に起因するレンジ誤差分だけ修正したが、第2の実施形態では、割当てに使用する予測値とそのゲートに、速度誤差に起因するレンジ誤差分だけ誤差を与え、測定値との対応関係が高まるように修正している。これによって、第1の実施形態と同様の割当て間違いの抑圧が可能となる。
したがって、第2の実施形態に係るレーダ装置によれば、検出した移動速度に速度誤差が含まれている場合であっても、合成帯域レーダで高分解して検出した複数の測定値をMTTで正確にトラッキングすることができる。
(第3の実施形態)
図17は、本発明の第3の実施形態に係るレーダ装置30の機能構成を示すブロック図である。図17に示すレーダ装置30は、合成帯域レーダ31及び目標トラッキング部32を具備する。
合成帯域レーダ31は、アンテナ111及びレーダ処理部311を備える。図18は、第3の実施形態に係るレーダ装置30のレーダ処理部311の機能構成を示すブロック図である。なお、図18では、送信部は図示していない。
図18に示すレーダ処理部311は、受信RF部1121、パルス復調部1122、ドップラ周波数検出部1123、代表値抽出部1124、移動速度計算部1125、補正部3111、レンジ計算部1127及びパラメータ抽出部1128を備える。
補正部3111は、代表値抽出部1124から供給される周波数ステップ代表値と、後述する速度トラッキング部321から供給される速度推定値とを受信する。補正部3111は、周波数ステップ代表値に対して、速度推定値に基づいた位相の補正を行う。補正部3111は、補正後の周波数ステップ代表値をレンジ計算部1127へ出力する。
合成帯域レーダ31は、速度測定値及び測定情報を目標トラッキング部32へ出力する。
目標トラッキング部32は、速度トラッキング部321及び複数部位トラッキング部322を備える。
速度トラッキング部321には、合成帯域レーダ31から速度測定値が供給される。速度トラッキング部321は、合成帯域レーダ31から供給される過去の速度測定値を用いて、目標の速度の推定値である速度推定値を算出する。速度トラッキング部321は、速度推定値を合成帯域レーダ31へ出力する。
複数部位トラッキング部322は、合成帯域レーダ31から供給される測定情報に基づいて、目標物体内の複数の部位のトラッキングを行う。このとき、複数部位トラッキング部322は、合成帯域レーダ31から供給されるレンジを複数のトラックのうちいずれかへ割り当て、割り当ての結果に基づいて目標のトラッキングを行うようにしても良い。また、明確な割当てを行わず、複数の測定値を同時に入力して、複数のトラックを同時に更新するようにしても良い。
以上のように、第3の実施形態では、補正部3111は、移動速度計算部1125から通知される移動速度ではなく、速度トラッキング部321から通知される速度推定値に基づいて周波数ステップ代表値を補正するようにしている。これにより、合成帯域レーダ31で取得されるレンジは、速度誤差に起因するレンジ誤差がすでに修正されたレンジであるため、目標トラッキング部12での速度誤差検出及びレンジ修正は必要無く、そのまま複数部位トラッキング部322により、目標物体内の複数の部位についてのトラッキングを行うことが可能となる。また、(3)式のΔvが小さくなるか、小さくならなくても、測定回毎の速度誤差に起因するレンジ誤差による変動幅が小さくなるため、トラッキング前の割当てを間違う可能性が抑圧されることとなる。
したがって、第3の実施形態に係るレーダ装置によれば、検出した移動速度に速度誤差が含まれている場合であっても、合成帯域レーダで高分解して検出した測定値をMTTで正確にトラッキングすることができる。
ただし、図17に示すレーダ装置30では、速度推定値が正しい速度から著しく異なってしまうような速度トラッキングの異常があった場合、合成帯域後に検出するレンジの値が、正しいレンジの値と大きく異なってしまう可能性がある。このため、もし、速度トラッキングが正しくできない程度に速度誤差が大きくなることが予想される場合には、補正部3111での速度推定値に基づく補正と並列して、移動速度計算部1125からの移動速度に基づいた補正を行い、レンジ計算部1127において両方の場合についてレンジ計算を行うとよい。または、図1に示す誤差算出部122からレンジ修正部124までの処理の逆の処理を行って、移動速度で補正した場合のレンジ測定値を計算し直し、トラッキングに利用するレンジは移動速度で補正した場合の値としてもよい。
図19は、第1乃至第3の実施形態に係るレーダ装置10,20又は30を備える誘導装置100の機能構成を示す図である。図19に示される誘導装置100は、レーダ装置10,20又は30と、誘導信号生成部40とを備える。
レーダ装置10,20又は30は、トラッキング結果を誘導信号生成部40へ出力する。
誘導信号生成部40は、無変動部位選択部41及び信号生成部42を備える。無変動部位選択部41は、トラッキング結果の複数のトラックの内、パワー変動幅が小さく、かつ、安定して連続的に測定値が割り当てられているトラックを選択する。例えば、図10(d)では、下の2つのトラックが選択されることとなる。無変動部位選択部41は、選択したトラックのうち、角度が目標の方向に近い角度となっているトラックを選択する。例えば、図11(f)と図12(f)とを比較すると、図11(f)に示される角度の方が目標の方向に近い角度となっている。つまり、図10(d)における最も下のトラックが選択されることとなる。無変動部位選択部41は、このようにして選択したトラックの、角度測定値及びレンジ測定値を信号生成部42へ出力する。
信号生成部42は、無変動部位選択部41から供給される角度測定値及びレンジ測定値から、飛翔体を誘導するための誘導信号を生成する。信号生成部42は、生成した誘導信号に基づき、図示しない飛翔体の駆動部を制御する。
パワー変動幅が少ない部位は、角度変動が少ない。そのため、そのような部位を選択して、そこに向かって飛翔体を駆動することで、安定した目標追随性能を得ることが可能となる。
なお、図19では、レーダ装置10,20又は30が、誘導信号生成部40へトラッキング結果を出力する場合を例に説明したが、これに限定される訳ではない。例えば、レーダ装置10,20又は30は、割当て結果を誘導信号生成部40へ出力するようにしても構わない。このとき、誘導信号生成部40は、レーダ装置10,20又は30からの割当て結果に基づいてトラッキングを行った後、このトラッキング結果に基づいて上述の処理を行う。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。