以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
本発明の実施の形態によるタッチ式の入力システム1は、図1に示すように、マトリクス状に配置された複数の電極(線状導体)11X,11Yを有するタブレット10(位置検出装置)と、信号を送信可能に構成された電子ペン20(位置指示器)と、タブレット10に接続されるコンピュータ30(処理装置)とを備えて構成される。
入力システム1は上述した自己容量方式によるものであり、タブレット10は、電子ペン20が送信する信号によって電極11X,11Yに発生する電圧に基づき、電子ペン20の位置を検出するように構成される。以下、まず初めにタブレット10及び電子ペン20の構成について説明し、次いで電子ペン20の動作について説明し、最後にタブレット10の動作について説明する。
タブレット10は、図1に示すように、タブレットセンサ11、選択回路12、増幅回路13、バンドパスフィルタ14、検波回路15、サンプルホールド回路16、アナログデジタル変換回路17、マイクロプロセッサ18(位置検出回路)を有して構成される。これらのうち、タブレットセンサ11、選択回路12、増幅回路13、バンドパスフィルタ14、検波回路15、サンプルホールド回路16、及びアナログデジタル変換回路17は、電子ペン20からの信号を受信するための受信手段として機能する。
タブレットセンサ11は、図示していないが、透明なガラスである基体を有して構成される。複数の電極11Xは、この基体のおもて面(電子ペン20に近い側の表面)に、それぞれX方向に延在し、かつX方向と直角なY方向に等間隔となるよう配置される。また、複数の電極11Yは、この基体のうら面(電子ペン20から遠い側の表面)に、それぞれY方向に延在し、かつX方向に等間隔となるよう配置される。各電極11X,11Yは透明な導電体であり、具体的には、例えばITO(Indium Tin Oxide)により構成される。電極11X,11Yの具体的な本数は、それぞれ30本及び40本とすることが好適である。
なお、タブレットセンサ11は、図示しない表示装置の上に配置される。タブレットセンサ11が上述したように透明な部材によって構成されていることから、表示装置に表示された映像は、タブレットセンサ11を透過し、入力システム1のユーザによって視認可能とされている。これにより入力システム1は、ユーザに対して、表示装置に表示された映像への電子ペン20による書き込み体験を提供可能とされている。
逆に言えば、タブレットセンサ11を透明な部材によって構成しているのは、タブレットセンサ11を表示装置の上に配置しているからである。本発明は、表示部分を有しないタブレットにも適用できる。この場合、タブレットセンサ11を透明な部材によって構成する必要はなく、したがって、ITO材料でなく銅線によってタブレットセンサ11を構成することも可能になる。
選択回路12は、複数の電極11X,11Yの中から1本を選択し、選択したものを増幅回路13に接続する回路である。増幅回路13には、選択回路12によって選択された電極の電圧が供給される。詳しくは後述するが、電子ペン20は、所定周波数の正弦波信号を送信情報によって振幅変調したうえで送出するように構成されており、各電極11X,11Yには、こうして送信された正弦波信号の振幅を反映した電圧信号が現れる。
増幅回路13は、選択回路12から供給された電圧信号を増幅し、バンドパスフィルタ14に出力する。バンドパスフィルタ14は、増幅回路13が出力した電圧信号から上記所定周波数の成分のみを抽出し、検波回路15に出力する。検波回路15は、バンドパスフィルタ14から出力される電圧信号に対して包絡線検波を行うことによって包絡線信号S1を生成し、サンプルホールド回路16に出力する回路である。サンプルホールド回路16は、検波回路15から出力される包絡線信号S1のサンプル動作及びホールド動作を、所定時間間隔で行うよう構成される。アナログデジタル変換回路17は、サンプルホールド回路16によりホールドされている信号にアナログデジタル変換を施すことによってデジタル信号S2を生成し、マイクロプロセッサ18に出力する。
なお、後述するように電子ペン20は2値ASKによって信号の送信を行うが、アナログデジタル変換回路17は、多値ASKによって変調されたものとみなして、入力される信号のデジタル信号S2への変換を行う。これは、マイクロプロセッサ18が、デジタル信号S2に基づき、選択回路12が出力した電圧信号の電圧値のおおよその値を取得できるようにするための処理である。
マイクロプロセッサ18は、記憶装置19を内蔵するプロセッサであり、記憶装置19に格納されたプログラムによって動作する。記憶装置19には、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)が含まれる。マイクロプロセッサ18が行う動作には、選択回路12、サンプルホールド回路16、及びアナログデジタル変換回路17の制御の他、アナログデジタル変換回路17から供給されるデジタル信号S2によって示される情報を記憶装置19に一時的に記憶させ、所定のタイミングでコンピュータ30に向けて出力する動作が含まれる。
次に、電子ペン20は、図2(a)に示すように、コントローラ40、電圧変換回路41、ダイオード42、コンデンサ43〜46、抵抗素子47、スイッチ48,49、発振子50、導体芯51(芯体)、先端部導体52、及び充電用端子53を有して構成される。
コントローラ40は、ROM及びRAMを含むプロセッサであり、発振子50が生成するクロック信号に同期し、かつROM内に記憶されるプログラムの記述に従って動作するよう構成される。クロック信号の周期は、例えば60μ秒である。コントローラ40には、発振子50に接続される端子の他に、電源端子Vcc、接地端子GND、及び制御端子P1〜P6が設けられる。
電源端子Vccには、電圧変換回路41を介してコンデンサ43が接続される。コンデンサ43は、電子ペン20の電源としての役割を担う電気二重層コンデンサであり、陽極が電圧変換回路41の入力端に接続され、陰極が接地された構成を有している。電圧変換回路41はDCDCコンバータであり、コンデンサ43の両端電圧をコントローラ40の定格電圧に変換する役割を果たす。
なお、本実施の形態では電源として電気二重層コンデンサを用いているが、これに限ることなく、例えば、リチウム電池・乾電池などの一次電池や、ニッケル水素蓄電池などの二次電池を電源として用いてもよい。
コンデンサ43の陽極は、ダイオード42を介して、充電用端子53にも接続される。充電用端子53はプラス側とマイナス側の2端子からなり、コンデンサ43の陽極に接続されるのはプラス側の端子である。マイナス側の端子は、電子ペン20内で接地される。充電用端子53は外部の電源供給装置が接続される端子であり、充電用端子53に外部の電源供給装置が接続された状態においては、コンデンサ43の充電が実行される。外部の電源供給装置としては、電子ペン20専用の充電器(不図示)を用いることが好適である。
電源端子Vccと接地端子GNDの間には、コンデンサ44が接続される。コンデンサ44は、電圧変換回路41からコントローラ40に供給される電源電圧を安定させるために設けているもので、具体的には、数十〜数百μF程度のアルミ電界コンデンサとすることが好適である。
電圧変換回路41は、コンデンサ43の両端電圧に応じて、降圧動作と昇圧動作のいずれかを行うように構成される。つまり、コンデンサ43の両端電圧の最大電圧はコントローラ40の定格電圧を上回る値に設計されており、したがって、コンデンサ43が十分に充電されている状態においては、コンデンサ43の両端電圧はコントローラ40の定格電圧を上回っている。そこで、この場合における電圧変換回路41は、電源端子Vccに供給される電圧がコントローラ40の定格電圧となるように、降圧動作を行う。一方、コンデンサ43の充電が不足している場合にはコンデンサ43の両端電圧がコントローラ40の定格電圧を下回る場合があり、そのような場合の電圧変換回路41は、電源端子Vccに供給される電圧がコントローラ40の定格電圧となるように、昇圧動作を行う。
電圧変換回路41は、コントローラ40の制御端子P1,P2にも接続される。コントローラ40が、制御端子P1を通じて電圧変換回路41に対し所定の制御信号を供給すると、電圧変換回路41は、コンデンサ43の両端電圧を検出して、その電圧値を示す信号を制御端子P2へ出力する。コントローラ40は、こうして供給された信号により、コンデンサ43の充電が必要か否かを判定するよう構成される。
ここで、入力システム1は、ユーザに対してコンデンサ43の充電不足を通知する機能を有している。この機能について具体的に説明すると、コントローラ40は、コンデンサ43の充電が必要か否かについて判定した結果を示す信号を、タブレット10に対して送信するように構成される(送信の具体的な方法については後述する)。コンピュータ30は、タブレット10を介してこの信号を受け取り、充電が必要である場合には、図示しない表示装置等にその旨を表示する。これにより、入力システム1のユーザは、電子ペン20の充電が必要となっていることを知ることができる。この知らせを受けたユーザが電子ペン20を上記充電器に載置することで、コンデンサ43の充電が開始される。
制御端子P3は、コンデンサ45及び抵抗素子47のそれぞれを介して、接地端に接続される。コンデンサ45は、導体芯51と連結された可変容量コンデンサであり、電子ペン20をタブレット10に押し当てた際の押圧力(筆圧)に応じて、その容量が変化するように構成される。コントローラ40は、コンデンサ45の容量から筆圧を取得するように構成されるが、この点についての詳細は後述する。
なお、押圧力(筆圧)の検出方法は、上記のような可変容量コンデンサを用いる方法に限られるものではない。例えば、押圧力を複数のフェライトの移動によるインダクタンスの変化として捉える方法、半導体素子(MEMS)を用いる方法、光学的に検出する方法などの他の方法を用いて押圧力(筆圧)を検出するよう、電子ペン20を構成することも可能である。
制御端子P4,P5は、それぞれスイッチ48,49を介して、接地端に接続される。スイッチ48,49はそれぞれ電子ペン20の表面に設けたスイッチ(サイドスイッチ)であり、ユーザによって操作可能とされている。コントローラ40は、制御端子P4,P5の電圧状態から、スイッチ48,49のオンオフ状態を判定する機能を有している。なお、本実施の形態では2つのスイッチ48,49を設けているが、スイッチを1つも設けなくてもよいし、1つだけスイッチを設けることとしてもよいし、3つ以上のスイッチを設けることとしてもよい。
制御端子P6は、コンデンサ46を介して、導体芯51に接続される。なお、導体芯51は、電子ペン20の筐体の先端部を構成する先端部導体52から突出した構造を有している。先端部導体52は、接地されている。
電子ペン20は、上述したように、振幅変調された所定周波数の正弦波信号を送信する機能を有しているが、この正弦波信号はコントローラ40によって生成される。コントローラ40は、制御端子P6から正弦波信号を出力するように構成され、出力された正弦波信号は、コンデンサ46を介して導体芯51に供給される。なお、コンデンサ46は、正弦波信号から直流バイアス成分を除去するために設けられているものである。導体芯51に到達した正弦波信号は電磁波として送出され、上述したように、タブレット10の電極11X,11Yによって受信されることになる。
以上、タブレット10及び電子ペン20それぞれの構成について説明した。次に、電子ペン20がタブレット10に向けて送信する情報の内容、及び、電子ペン20が行う送信動作について順次説明する。
電子ペン20のコントローラ40は、機能的に、図2(b)に示すように、固有ID記憶部40a、情報取得部40b、発振制御部40c、及び発振器40dを有して構成される。
固有ID記憶部40aは、当該電子ペン20に予め付与された固有IDを記憶している。固有IDは、他の電子ペン20に与えられたものとは異なる当該電子ペン20に固有の情報であり、例えば、電子ペン20の個体番号、電子ペン20の所有者識別コード(電子ペンの所有者に割り当てられるユーザIDなど)、電子ペン20の種類、製造者番号などを含んで構成される。固有IDのサイズは、一例では51ビットである。
情報取得部40bは、固有ID記憶部40aから固有IDを取得するとともに、上述した制御端子P2〜P5に供給される信号又はその電圧状態から、その他の各種情報を取得するように構成される。以下、情報取得部40bによる各種情報の取得について、制御端子ごとに説明する。
制御端子P2には、上述したように、コンデンサ43の両端電圧を示す信号が供給される。情報取得部40bは、この信号に基づいてコンデンサ43の充電が必要か否かを判定し、判定の結果を示す充電要求情報を生成する。充電要求情報は、充電が必要である場合に1、必要でない場合に0となる1ビットの情報である。
また、情報取得部40bは、制御端子P3の電圧状態から、上述した筆圧を示す筆圧情報を取得するよう構成される。図3(a)は、この筆圧情報の取得の際の制御端子P3の電圧状態の変化を示している。同図に示すように、筆圧情報の取得は、位置検出用の連続信号CSの送信中に行われる。
具体的に説明すると、情報取得部40bはまず、電子ペン20が連続信号CSの送信を開始した直後から所定時間にわたって、制御端子P3の電位を電源電位とする。電源電位は、例えば1.5Vである。この動作は、その時点での筆圧を検出するためのものである。つまり、この動作によりコンデンサ45には電荷が蓄積されることになるが、その蓄積量は、その時点でのコンデンサ45の容量に応じて変化する。上述したように、コンデンサ45の容量は筆圧に応じて変化するので、コンデンサ45に蓄積された電荷の量は筆圧を反映したものとなる。
次いで、情報取得部40bは、制御端子P3をハイインピーダンス状態とする。これにより、コンデンサ45に蓄積された電荷が抵抗素子47を介して放電される。情報取得部40bは、この放電の結果、制御端子P3の電位が電源電位1.5Vの半分の電位0.75Vに達するまでの経過時間Tpを測定する。こうして測定された経過時間Tpは、コンデンサ45の容量が大きいほど長い時間となる。したがって、情報取得部40bは、測定された経過時間Tpから筆圧情報を取得することができる。こうして取得される筆圧情報は、10〜12ビットの情報となる。
情報取得部40bはさらに、制御端子P4,P5の電圧状態から、スイッチ48,49のオンオフ状態を示すサイドスイッチ情報を生成する。この場合はスイッチが2個であるので、サイドスイッチ情報は2ビットの情報となる。
情報取得部40bは、以上のようにして取得した各種情報(固有ID、充電要求情報、筆圧情報、サイドスイッチ情報)を、発振制御部40cに供給する。なお、情報取得部40bは、ここで説明した情報以外の情報も取得し、発振制御部40cに供給することとしてもよい。このような情報の例としては、電子ペン20のタブレット10に対する傾きを示す傾き情報、電子ペン20に内蔵される指紋センサによって取得される指紋情報、電子ペン20に内蔵される圧力センサによって取得される握力情報、電子ペン20に内蔵される回転センサによって取得される回転情報や、電源の充電状態を示すための電源状態情報などが挙げられる。
発振制御部40cは、発振器40dの動作を制御することにより、発振器40dに2値ASK(Amplitude Shift Keying)による変調信号を出力させる回路である。発振器40dは、所定周波数の正弦波信号を生成し、制御端子P6に出力するように構成されている。発振制御部40cは、このような発振器40dの出力を、例えば情報取得部40bから供給される各種情報に基づいて、オン又はオフのいずれかに制御する。これにより、制御端子P6から出力される信号は、図3(a)に示すように、2値ASK(Amplitude Shift Keying)によって変調されたものとなる。なお、本実施の形態による発振器40dは、発振子50が生成するクロック信号に同期して動作するよう構成される。ただし、このクロック信号に同期せずに個別の周波数で発振するように発振器40dを構成してもよく、その場合の発振器40dは、コントローラ40の外側であって、かつ、P6端子に接続される位置に配置されてもよい。
なお、本実施の形態ではこのように2値ASKを用いているが、他の変調方式を用いてもよいのは勿論である。例えば、例えば多値ASKなどの他の振幅変調を用いてもよいし、周波数変調(Frequency Shift Keying)、位相変調(Phase Shift Keying)、直角位相振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation)などを用いても構わない。
以下、図3(a)、図4(a)(b)、及び図5を参照しながら、発振制御部40c及び発振器40dを利用して電子ペン20が行う送信動作について、詳しく説明する。
発振制御部40c及び発振器40dは、信号ブロックの単位で、順次信号を送信するように構成される。図3(a)は、この信号ブロックの例を示している。図3(a)の例では、1つの信号ブロックに割り当てられる時間長は5m秒であり、そのうち前半の2.2m秒は、位置検出用の連続信号CSの送信に充てられる。上述した各種情報は、後半の2.8m秒を利用して送信される。
なお、図3(a)の例によれば、タブレット10による位置情報の検出は5m秒に一度行われることになるが、この程度の頻度で検出を行えるのであれば、コンピュータ30における表示動作が電子ペン20の速い動きに追従できなくなるようなことは、通常発生しない。
一方で、図3(a)の例によれば、1つの信号ブロックで固有IDの全体を送信することは不可能である。すなわち、本実施の形態による発振制御部40cは、図2に示した発振子50が生成するクロック信号(1周期Td=60μ秒)に対してシングルレートで動作し、かつ、上述したように2値ASKでの変調を行うように構成される。したがって、2.8m秒間で送信可能な情報量は、最大で46ビットに過ぎない(2.8/0.06≒46.7)。後述するスタート信号SSなどの送信に要する時間も考慮すると、実質的に送信可能な情報量はさらに減り、43ビット程度となる。したがって、固有IDが上述したように51ビットの情報である場合、1つの信号ブロックで固有IDの全体を送信することは不可能ということになる。
信号ブロックの後半部分の構成について、具体的に説明する。信号ブロックの後半部分には、図3(a)に示すように、スタート信号SSと、送信情報ブロックSIBとが含まれる。スタート信号SSは、タブレット10に連続信号CSの送信が完了したことを知らせるための既知信号であり、連続信号CSに続けて送信される。一方、送信情報ブロックSIBは、情報取得部40bによって取得された各種情報に基づいて変調された信号によって構成される。
ここで、発振制御部40cは、図2に示した発振子50が生成するクロック信号のライズエッジに同期して送信情報に基づく発振器40dの出力のオンオフ制御を行い、クロック信号のフォールエッジに同期して発振器40dの出力をオフに制御するよう構成される。これにより、1クロック周期の後半半分では送信信号の振幅が0に固定されるので、送信情報ブロックSIBにかかる信号は、図3(a)に例示するように、1クロック周期間隔で必ずローレベル(第1のレベル)となる期間を含む間欠信号となる。このような構成を採用しているのは、タブレット10において、位置検出用の連続信号CS(1クロック周期より長い期間にわたってハイレベル(第2のレベル)を継続する信号)と送信情報ブロックSIBとを明確に区別できるようにするためである。
送信情報ブロックSIBの内部構成について、詳しく説明する。発振制御部40cの動作を規定するプログラムには、情報取得部40bによって取得される各種情報のそれぞれにつき、1つの送信情報ブロックSIBで送信できるものか、そうでないものかが予め規定されている。以下、前者に該当する情報を「第2の情報」と称し、後者に該当する情報を「第1の情報」と称する。本実施の形態では、固有IDが第1の情報であり、固有ID以外の情報(充電要求情報、筆圧情報、サイドスイッチ情報)が第2の情報であるとする。なお、上で挙げたその他の情報、すなわち、傾き情報、指紋情報、握力情報、回転情報については、比較的サイズが大きくなる指紋情報及び握力情報を第1の情報とし、比較的サイズが小さくなる回転情報を第2の情報とすればよい。傾き情報は、サイズが大きくなる場合には第1の情報とし、サイズが小さくなる場合には第2の情報とすればよい。
第1の情報に関して、発振制御部40cは、第1の情報を複数の部分情報に分割する処理を行う機能を有している。図4(a)には、第1の情報としての固有IDの例を示している。この例では、発振制御部40cは、ビットD0〜Dxからなるx+1ビットの情報である固有IDを、mビットずつのn個のIDブロック(部分情報)に分割している。分割の際、発振制御部40cは、各部分情報に、該部分情報の第1の情報内における位置を示す分割番号(分割情報)を付与する。図4(a)の例では、発振制御部40cは、各IDブロックに、分割番号としてのブロック番号A,B,・・・,n−1,nを付与している。なお、固有IDが51ビットである場合、nの具体的な値は「3」とすること(つまり、固有IDを17ビットずつ三分割すること)が好適である。また、ブロック番号A,B,・・・,n−1,nはそれぞれ、aビットの情報である。
また、発振制御部40cは、部分情報ごとに、受信側で誤りを検出するための誤り検出符号を生成する機能を有している。図4(b)に示すbビットのIDブロックチェックビットは、この誤り検出符号の例である。誤り検出符号の具体的な内容としては、パリティ符号や巡回符号などを用いることが好適である。
発振制御部40cは、以上のような部分情報及び誤り検出符号を、信号ブロック送信の都度、対応する分割番号が若いものから順に生成する。そして、生成した情報と、最新の第2の情報とに基づいて、その信号ブロックに含める送信情報ブロックSIBを生成する。図4(b)は、こうして生成された送信情報ブロックSIBの例を示している。
以上の点について図4(a)(b)の例に沿って再度より具体的に説明すると、発振制御部40cは、ブロック番号A,B,・・・,n−1,nの順で順次、1つのIDブロックと、対応するIDブロックチェックビットとを生成する。そして、この生成の都度、取得した情報と、最新の筆圧情報、最新のサイドスイッチ情報、及び最新の充電要求情報を含むcビットの第2の情報とを合わせ、ビットP0〜Pyからなるy+1ビットの送信情報ブロックSIBを生成する。
図5は、以上の処理の結果として順次生成されるn個の送信情報ブロックSIBの例を示している。これらn個の送信情報ブロックSIBのそれぞれに分割番号(ブロック番号A,B,・・・,n−1,n)のいずれかが対応しており、生成は分割番号順で行われる。なお、発振制御部40cは、すべての分割番号についての送信情報ブロックSIBの生成が完了した後、最も若い分割番号に戻って同様の生成を繰り返すよう構成される。
信号の送信にあたっては、発振制御部40cは、図3(a)に示すように、まず位置検出用の連続信号CSを送信するために発振器40dの出力を所定時間にわたってオンにした後、スタート信号SSを送信するために発振器40dの出力のオンオフ制御を行う。その後さらに、生成した送信情報ブロックSIBに基づいて、発振器40dの出力のオンオフ制御を行う。
こうして送信される信号ブロックは、図3(a)に示すように、連続信号CS、スタート信号SS、並びに送信情報ブロックSIBによって構成される信号となる。このうち送信情報ブロックSIBは、図4(b)に示すように、第2の情報を変調することによって得られる第2の変調信号と、第1の情報を分割してなる複数の部分情報のうちのひとつを変調することによって得られる第1の変調信号とによって構成されることになる。
また、発振制御部40cは、上述したようにして送信情報ブロックSIBを生成する都度信号ブロックの生成を行い、それに基づいて順次、発振器40dの出力のオンオフ制御を行う。その結果、最終的には、第1の情報の全体が送信されることになる。電子ペン20が行う送信動作は、以上のようにして実行される。
次に、図1、図3(b)、及び図6を参照しながら、電子ペン20の検出から電子ペン20が送信した情報の受信まで、タブレット10が行う一連の動作について、詳しく説明する。
まず初めに、電子ペン20を検出していない段階では、タブレット10のマイクロプロセッサ18は、各電極11Xの電圧の上昇を検出する動作を繰り返し行う。具体的には、すべての電極11Xを対象にして、選択回路12に1つずつ電極11Xを選択させながら、アナログデジタル変換回路17から出力されるデジタル信号S2をモニタリングする。その結果、ある電極11Xについて電圧の上昇が検出された場合、マイクロプロセッサ18は次に、各電極11Yの電圧を測定する動作を行う。具体的には、すべての電極11Yを対象にして、選択回路12に1つずつ電極11Yを選択させながら、デジタル信号S2をモニタリングする。その結果、ある電極11Yについて電圧が高くなっていることが検出された場合、電子ペン20が、その電極11Yと、電圧の上昇が検出された電極11Xとの交点に近づいていると判定する。なお、複数の電極11Xについて電圧の上昇が検出された場合や、複数の電極11Yについて電圧が高くなっていることが検出された場合には、そのうち最も高い電圧を示すものに電子ペン20が近づいていると判定すればよい。
ここで、図3(b)の例では、電極11Xは、Y方向に沿って順に配置された電極11X9〜11X13を含んで構成され、また、電極11Yは、X方向に沿って順に配置された電極11Y18〜11X22を含んで構成されるとしている。さらに、上記の処理で電圧の上昇が検出された電極11Xは電極11X11であり、電圧が高くなっていることが検出された電極11Yは電極11Y20であるとしている。以下、この図3(b)の例に沿って説明する。
電子ペン20が電極11X11と電極11Y20の交点に近づいていると判定したマイクロプロセッサ18は、選択回路12に電極11X11を選択させる。そしてその状態でデジタル信号S2をモニタリングすることにより、電子ペン20が送信しているであろう連続信号CSの受信を待機する。
電子ペン20が連続信号CSの送信を開始すると、図3(b)に示すように、包絡線信号S1の電圧が上昇し、その結果デジタル信号S2により示される電圧値も上昇する。マイクロプロセッサ18は、この電圧値の上昇を検出すると、その状態が所定時間Tsにわたって継続するか否かを判定する。この所定時間Tsは、送信情報ブロックSIBの信号を連続信号CSと誤認することを避けるため、上述したクロック信号の1周期Tdよりも長い時間に設定される。
継続したと判定した場合、マイクロプロセッサ18は、まず電極11X11及びその近傍にある複数の電極11X(図3(b)の例では5つの電極11X9〜X13)を順次選択回路12に選択させ、デジタル信号S2から、それぞれの電圧レベルを取得する。そして、測定結果として得られた複数の電圧レベルのうち、最も高いものをピーク電圧VPXとして記憶装置19に保持する。また、ピーク電圧VPXが観測された電極11Xの両隣にある電極11Xの電圧レベルを、それぞれ電圧VAX,VBXとして記憶装置19に保持する。
次に、マイクロプロセッサ18は、電極11Y20及びその近傍にある複数の電極11Y(図3(b)の例では5つの電極11Y18〜Y22)を順次選択回路12に選択させ、デジタル信号S2から、それぞれの電圧レベルを測定する。そして、測定結果として得られた複数の電圧レベルのうち、最も高いものをピーク電圧VPYとして記憶装置19に保持する。また、ピーク電圧VPYが観測された電極11Yの両隣にある電極11Yの電圧レベルを、それぞれ電圧VAY,VBYとして記憶装置19に保持する。
なお、マイクロプロセッサ18は、以上のような電圧の測定動作を、連続信号CSの継続期間内(上述した2.2m秒の間)に行うように構成される。連続信号CSに続いて受信されるスタート信号SS及び送信情報ブロックSIBを適切に受信するためである。逆に言えば、2.2m秒という連続信号CSの継続期間は、マイクロプロセッサ18が上述した電圧の測定動作を終わらせるのに必要十分な時間として決められたものである。
マイクロプロセッサ18は、以上のようにして記憶装置19に保持させた各電圧に基づき、電子ペン20の位置情報を算出する。具体的には、各電圧を次の式(1)(2)に代入することにより得られる座標(X,Y)を、電子ペン20の位置情報として取得する。ただし、PXはピーク電圧VPXが検出された電極11XのX座標であり、PYはピーク電圧VPYが検出された電極11YのY座標であり、DXは電極11Xの配列ピッチであり、DYは電極11Yの配列ピッチである。
次に、マイクロプロセッサ18は、ピーク電圧VPXが検出された電極11Xを選択回路12に選択させた状態でデジタル信号S2を監視することにより、スタート信号SSの受信を待機する。スタート信号SSの受信を検出したら、その受信開始の時刻t1から所定の時間Twが経過した時点から、送信情報ブロックSIBの受信を開始する。なお、この送信情報ブロックSIBは上述したように2値ASKによって変調された正弦波信号の形態で受信されるが、マイクロプロセッサ18には、これがアナログデジタル変換回路17などの処理によってデジタル信号S2に変換された状態で供給される。
以下、送信情報ブロックSIBの受信処理にかかるマイクロプロセッサ18の動作について、図6を参照しながら詳しく説明する。
マイクロプロセッサ18は、位置検出用の連続信号CSを受信する都度、上述したようにして電子ペン20の位置情報を取得し、記憶装置19に保持させる。また、マイクロプロセッサ18は、第2の情報と第1の情報の部分情報とを含む送信情報ブロックSIBを受信する都度、その中に含まれる第2の情報及び部分情報を取得し、記憶装置19に保持させる。
図6(a)には、こうして取得される各情報を模式的に示している。同図に示すように、タブレット10には、複数の信号ブロックが上述した分割番号の順で受信される。ただし、分割番号の最も若いものから受信が開始されるとは限らない。図6(a)の例で言えば、ブロック番号Bがまず受信され、そこからブロック番号C,・・・,n−1,n,A,B,C・・・の順で順次受信されている。
マイクロプロセッサ18は、順次受信される信号ブロックのそれぞれから部分情報を取り出し続けた結果、第1の情報を構成する全部分情報の取り出しが完了した時点で、分割番号に基づいてこれらの部分情報を結合し、第1の情報を取得するよう構成される。
ここで、マイクロプロセッサ18によって取得される部分情報には、伝送エラーによって、ビット誤りが含まれる場合がある。マイクロプロセッサ18は、部分情報を取り出す都度、その部分情報と同じ送信情報ブロックSIB内に含まれる誤り検出符号を用いて、その部分情報が正確であるか否か(ビット誤りを含んでいるか否か)を判定する。その結果、正確でないと判定した場合、第2の情報及び位置情報については記憶装置19に保持させつつも、その部分情報を他の部分情報との結合に用いることはせず、再度同じ分割番号の信号ブロックが受信されるまで結合処理の実行を待機する。これにより、マイクロプロセッサ18は、誤りのない第1の情報を得ることが可能になる。図6(a)には、2番目に受信された分割番号Cにかかる信号ブロックに含まれているIDブロック(×印を付したIDブロック)に誤りが検出された例を示している。この場合、マイクロプロセッサ18は、再度分割番号Cにかかる信号ブロックが受信されるまで待機してから、第1の情報を取得するための各部分情報の結合を行う。
第1の情報の取得が完了すると、マイクロプロセッサ18は、それまでに記憶装置19に保持させた複数の位置情報及び複数の第2の情報を、取得した第1の情報と対応付ける。また、必要に応じて、これら複数の位置情報及び複数の第2の情報のそれぞれを、取得した第1の情報と対応付けて、コンピュータ30に向けて出力する。これにより、マイクロプロセッサ18及びコンピュータ30では、第1の情報の取得が完了するまでに受信された位置情報及び第2の情報についても、第1の情報に対応する情報として処理することが可能になる。
なお、上記のようにすると、タブレット10が第1の情報の取得を完了するまで、コンピュータ30は位置情報及び第2の情報を得られないことになる。これは、例えば電子ペン20の軌跡表示の遅延など、ユーザにコンピュータ30の処理が遅延していると感じさせる原因となり得る。これを回避するため、タブレット10は、少なくとも一部の情報については、第1の情報の取得の完了を待たず、コンピュータ30に出力することとしてもよい。
具体的な例を挙げて説明すると、マイクロプロセッサ18は、過去に取得を完了した1又は複数の第1の情報を記憶しておく機能を有することが好ましい。そして、第1の情報の取得が完了するまでの間、新たな信号ブロックが受信される都度、それまでに受信された信号ブロックに含まれる分割番号及びIDブロックと、記憶している過去の第1の情報とに基づいて受信中の第1の情報を推定し、第1の情報の取得が完了する前であっても、順次受信される位置情報及び第2の情報を、推定した第1の情報と対応付けて順次コンピュータ30に向けて出力することが好ましい。
このようにすることで、例えば、電子ペン20がタブレットセンサ11の検出可能エリアに入ってすぐに離脱し、その結果、第1の情報の取得が完了しないような場合であっても、コンピュータ30に、推定した第1の情報を利用して、位置情報や筆圧情報等を処理させることが可能になる。したがって、電子ペン20の速い「出入り動作」により第1の情報(固有ID)が認識できない場合でも、電子ペン20の筆跡を表示することが可能となる。
一例を挙げて、より具体的に説明する。例えば、図6(a)に示される各送信情報ブロックSIBのうち、電子ペン20の速い「出入り動作」によって、分割番号A,Bに対応する2つの送信情報ブロックSIBのみが取得されたとする。この場合において、もしマイクロプロセッサ18が対応する第1の情報を過去に一度取得しており、それを記憶しているとするならば、マイクロプロセッサ18は、これら2つの送信情報ブロックSIBに含まれるIDブロックと、記憶している第1の情報(固有ID)とを対比することで、分割番号C〜nに対応する各IDブロックを含む第1の情報の全体を推定することができる。したがって、コンピュータ30は、これら2つの送信情報ブロックSIBにより取得された位置情報・筆圧情報等を、推定された第1の情報を有する電子ペン20のものとして処理することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態による入力システム1によれば、サイズが大きいために1つの送信情報ブロックSIBでは送信しきれない第1の情報を、それぞれ位置検出用の連続信号CSを含む複数の信号ブロックに分配して送信している。したがって、位置情報のサンプリングレートを低下させずに、電子ペン20からタブレット10に対してサイズの大きな情報を送信できるようになる。
また、各信号ブロックに分割番号を付加しているので、タブレット10では、分割番号に基づいて第1の情報を的確に復元することができる。さらに、誤り検出符号を付加していることにより、誤った部分情報に基づいて第1の情報が復元されてしまうことも防止される。
また、タブレット10では、第1の情報の取得が完了する前に取得した位置情報及び受信した第2の情報を記憶装置19に保持しているので、第1の情報の取得が完了した後、これら保持した情報を、第1の情報に対応する情報として有効に活用することが可能になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態で説明した入力システム1は、自己容量方式のタッチパネルによって位置検出及び通信を行うように構成されていたが、本発明は、他の方式、例えば相互容量方式のタッチパネル又は、電磁誘導方式によって位置検出及び通信を行う入力システムに対しても好適に適用可能である。
図7には、電磁誘導方式によって位置検出及び通信を行う入力システムで用いられる電子ペン20aの構成を示している。同図に示すように、電子ペン20aは、コントローラ60、電源回路61、及び共振回路62を有して構成される。共振回路62は、コイル63と、それぞれコイル63に並列に接続されたコンデンサ64及び可変容量コンデンサ65とから構成される。また、共振回路62には、スイッチ67を介してコンデンサ66が接続されている。
共振回路62は、位置検出装置(タブレット)から送信される特定の周波数の電磁波に対して、共振するよう構成される。コントローラ60は、共振回路62を通じ、共振によって発生した誘導電力を利用して、信号を送信するよう構成される。この信号を上述した実施の形態における信号ブロックと同様の構成とすることにより、電磁誘導方式によって位置検出及び通信を行う入力システムにおいても、上記実施の形態で説明した入力システム1と同様、位置情報のサンプリングレートを低下させることなく、位置指示器から位置検出装置に対してサイズの大きな情報を送信できるようになる。
また、上記実施の形態では、各信号ブロックにより第1及び第2の情報の両方を送信していたが、第2の情報を送信することは必ずしも必要ではない。本発明は、第2の情報を送信しないタイプの電子ペンにも、好適に適用可能である。
また、上記実施の形態では、送信情報ブロックSIBをローレベルとなる期間を所定の時間間隔(具体的には1クロック周期間隔)で含む間欠信号とし、連続信号CSをこの所定の時間間隔より長い期間にわたってハイレベルを継続する信号としたが、送信情報ブロックSIBをハイレベルとなる期間を上記所定の時間間隔で含む間欠信号とし、連続信号CSを上記所定の時間間隔より長い期間にわたってローレベルを継続する信号としてもよい。
また、上記実施の形態では、図3(a)に示したように、位置指示器の位置を検出するために用いる連続信号CSの全体を一度にまとめて送信していたが、複数の部分に分けて連続信号CSを送信することとしてもよい。