JP5776440B2 - 自律移動体 - Google Patents
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Description
非特許文献1は、自律移動体が群衆の中を現在位置から目的位置まで移動する際に、自律移動体が群集の流れに沿って移動する経路を探索する技術を開示している。群衆の密度が高いところと、自律移動体と群集の相対速度が大きいところでは移動コストが高くなるように設定されているため、群集が密集しているところを避け、群集と反対方向に進む機会が少ない経路が探索される。
特許文献1では、粘性抵抗係数分布の代わりに速度分布空間を設定する手法についても言及しているが、その速度分布空間は自律移動体と移動障害物の相対速度にのみ依存する分布空間であり、自律移動体と移動障害物の間の距離に依存しない。そのために、移動障害物から離れた位置においても、移動障害物に沿って移動する経路が高く評価されてしまう。移動障害物から離れた位置では、経路距離を高く評価すべきであるのにも係わらず、移動障害物に沿って移動する経路が高く評価されてしまう。
本明細書で開示する自律移動体は、図1に模式的に示すように、マップ記憶装置4と、目標点指定装置6と、自律移動体情報取得装置8と、移動障害物情報取得装置10と、経路探索装置12を備えている。経路探索装置12は、所要時間計算装置14と、予測装置16と、仮想粘性力計算装置18と、移動コスト計算装置22と、選択装置24を含んでいる。
目標点指定装置6は、自律移動体の使用者が操作するものであり、マップ記述データに含まれている分岐点の中から使用者が任意の分岐点を選択し、選択した当該分岐点を目標点として指定することを許容する。
自律移動体情報取得装置8は、自律移動体の位置と速度を取得する。
移動障害物情報取得装置10は、移動障害物の位置と速度を取得する。
経路探索装置12は、たとえばAスター探索(A*探索と表記されることが多いが、本明細書ではカタカナ表記する)のように、マップ記述データに経路探索処理を施し、自律移動体情報取得装置8によって取得した現在位置から目標点指定装置6によって指定された目標点までの経路を探索する。
所要時間計算装置14は、経路探索装置12が仮に選択した分岐点に自律移動体が移動するのに要する時間を計算する。
予測装置16は、移動障害物情報取得装置10で取得した移動障害物の位置と速度と、所要時間計算装置14で計算した所要時間から、自律移動体が仮に選択した分岐点に移動する時点における移動障害物の位置と速度を予測する。
仮想粘性力計算装置18は、予測装置16で予測した移動障害物の位置と速度と、自律移動体が仮に選択した分岐点を移動する際の速度から、自律移動体に作用する仮想粘性力を計算する。
移動コスト計算装置22は、仮に選択した分岐点を経由する経路によるときの経路距離と仮想粘性力を含む移動コストを計算する。
選択装置24は、仮に選択した分岐点群の中から移動コスト計算装置22で計算される移動コストが最小となる分岐点を選択する。
例えば、自律移動体と移動障害物の間の距離が接近するにつれて急速に増大する仮想斥力と、その距離が接近するにつれて緩やかに増大する仮想粘性力の両方を利用して移動コストを計算すると、パーソナルスペースに進入することがない経路を探索することが可能となる。群衆の中で自律移動体が移動する際に、周囲の人に不安を感じさせないで移動することが可能となる。
人のパーソナルスペースは、進行方向には長く、背後方向には短い。この関係を取り入れた仮想斥力場を設定すれば、人が実際に持っているパーソナルスペースに入り込まない経路を探索することができる。
この場合、自律移動体と移動障害物が高速で相対移動する場合には、移動障害物までの距離が遠い段階から、移動障害物までの距離が長いほど高く評価されて経路探索が実行される。自律移動体と移動障害物が低速で相対移動する場合には、移動障害物に極めて接近するまでは、経路距離が短い経路が高く評価されて経路探索が実行される。そうして探索される経路は、人の感覚によく馴染み、人が不安を覚えない範囲内で短い経路が探索される。
また、仮想粘性力と仮想斥力を併用すれば、人が有するパーソナルスペースに侵入することがない自律移動体を実現できる。
特徴1:実施例の自律移動体は、現時点における移動障害物の位置と速度に基づいて、任意の時刻における移動障害物の位置と速度を計算する。それによって、移動障害物の位置が変化する環境における最適経路を前もって探索する。
特徴2:移動障害物と自律移動体の間の距離に依拠する斥力場と、両者間の距離と両者間の相対速度に依拠する粘性力場を設定して移動コストを計算する。
特徴3:経路探索処理で用いる移動コストの計算式に、距離のコストの他に、特徴2で述べた斥力場と粘性力場から計算されるコストも含める。これにより自律移動体は人などの移動する障害物に接近しすぎることがなく、人の流れに沿って移動する。
特徴4:仮想粘性力がゼロとなる移動障害物からの距離が、移動障害物の移動方向に依拠して変化し、進行方向に長く、背後方向に短い。
特徴5:仮想粘性力がゼロとなる移動障害物からの距離が、自律移動体と移動障害物の相対速度に依拠して変化し、高速時に長く、低速時に短い。
広場Q内を移動する場合、広場Q内を移動する経路を探索して決定する必要がある。そこで、広場内にも分岐点P5・・等が設定されている。広場内の分岐点P5・・は、広場Q内に一様に分布している。広場Q内では、任意の分岐点の間を直接に移動することができる。しかしながら、経路探索のために、分岐点から移動可能な分岐点は、隣接して配置されている8個の分岐点であることを示すデータを記憶している。その条件に従った地図データが記憶されているために、広場Q内を移動する経路を探索すると、隣接する分岐点を辿りながら広場Q内を移動する経路が探索される。以下に説明する実施例では、自律移動体が分岐点P1にいる時に地図データに経路探索処理を実施したために、分岐点P1,P2,P5を辿る経路が探索され、広場Q内の分岐点P5に移動した時点で再度地図データに経路探索処理を実施し、広場Q内を移動して広場Q内の出発点P5から目標点Gに至る経路を探索する場合を説明する。
移動障害物情報取得装置10は、かかる方法で移動障害物の位置と速度と移動方向を取得する。移動障害物の位置と速度と方向は、LRF30を用いる方法の他に、自律移動体2に搭載しているカメラを用いてもよいし、広場Qに接地されている防犯カメラなどのインフラから得られる情報を利用するものであってもよい。
経路探索装置12は、仮に分岐点を選択する装置13を備えている。例えば、経路探索装置12によって、図5に示す分岐点P8までの経路が探索された場合を想定する。この場合、分岐点P8から移動可能な分岐点は、周囲に存在する8点である。分岐点を仮に選択する装置13は、移動可能な分岐点(この場合8分岐点)を順々に選択していく。以下では、分岐点P7を仮に選択した場合を説明する。なお、この実施例では、自律移動体2が広場内の出発点P5にいるときに、経路探索処理を実施して目標点Gに移動する経路を探索する。例えば分岐点P7を仮に選択するタイミングは、自律移動体2が分岐点P8に到着したタイミングではない。自律移動体2が広場内の出発点P5にいるときに、下記を計算して経路を探索する。
経路探索装置12は、予測装置16を備えている。予測装置16は、自律移動体2が仮に選択した分岐点に到着するはずの時刻における移動障害物の位置と速度を予測する。例示している場合、自律移動体2が広場内出発点P5にいる時に、移動障害物の位置と速度が特定されて移動障害物情報取得装置10に記憶されている。その時点から自律移動体2が仮に選択した分岐点に移動するのに要する時間が所要時間経過装置14で特定される。移動障害物が移動方向と速度を維持すると仮定すれば、予測装置16は、自律移動体2が仮に選択した分岐点に到着するはずの時刻における移動障害物の位置と速度を予測することができる。
仮想粘性力Fvisに関与する関数∇Wvis(r-rj)は、re=r-rjの距離でゼロあり、距離がそれよりも短くなると増大する。
仮想斥力Frepを決定する関数∇Wrep(r-rj)も、re=r-rjの距離でゼロあり、距離がそれよりも短くなると増大する。仮想斥力Frepに関与する関数∇Wrep(r-rj)は、仮想粘性力Fvisに関与する関数∇Wvis(r-rj)よりも、距離の減少に対して敏感に増大する。
式2より、仮想粘性力Fvisは、自律移動体2から移動障害物までの距離re=r-rjで決まる関数∇Wvis(r-rj)と、自律移動体2と移動障害物との相対速度v-vjの積であることがわかる。
仮想粘性力Fvisと仮想斥力Frepは、自律移動体2と移動障害物の間の距離に対して下記の関係をもつ。ただしrf<reである。また自律移動体2と移動障害物との相対速度v-vjは過大なものでないとする。
1)距離>reの場合:仮想粘性力Fvisも仮想斥力Frepもゼロである。
2)re>距離>rfの場合:仮想粘性力Fvisが支配的である。
3)rf>距離の場合:仮想斥力Frepが支配的である。
自律移動体2と移動障害物の間の距離が短くなれば、仮想粘性力Fvisが増大する。経路探索技術では、小さな値を持つ経路を探索することから、仮想粘性力Fvisを用いて経路探索すると、自律移動体2と移動障害物の間の距離が短くなる経路は探索されづらい。本実施例では、それに加えて、移動障害物との距離が短くなると急激に増大する仮想斥力Frepまで活用するために、移動障害物に接近する経路は探索されない。移動障害物が人である場合に、人が持っているパーソナルスペースに入り込む経路が探索されることはない。
自律移動体2と人の間の距離r-rjに関するreの値は、人の移動方向によって変化する値とすることができ、人の移動方向の前方には長く、背後方向には短くすることができる。図2に示すように、人の進行方向におけるreをreFとし、人の進行方向と逆方向におけるreをreBとしたときに、reF>reBとする。この場合、自律移動体2が人の移動方向の前方を移動する場合には、人からの距離が長い経路が優先的に探索される。自律移動体2が人の移動方向の後方を移動する場合には、走行距離が短い経路が優先的に探索される。人が持っているパーソナルスペースによく一致するパーソナルスペースを確保することができる。なお、人の側方向におけるreをreLとした場合、reF>reL>reBとする。あるいはreL=reBとする。
さらにreの値は、自律移動体2と移動障害物の相対速度に応じて増減することが好ましい。図3に示すように、相対速度v1のときのreをre1とし、相対速度v2のときのreをre2としたとき、v1>v2であれば、re1>re2とすることが好ましい。高速で相対移動する場合に人が感じるパーソナルスペースは長く、停止また低速で移動する場合に人が感じるパーソナルスペースは短いことに対応させるのが好ましい。
本実施例では、仮想粘性力Fvisも仮想斥力Frepも、自律移動体2と移動障害物の間の距離がre以上の場合はゼロとなるとしている。それによって、仮想粘性力Fvisと仮想斥力Frepの計算量を圧縮している。これに代えて、仮想粘性力Fvisがゼロとなる距離と、仮想斥力Frepがゼロとなる距離が相違する関数を利用してもよい。あるいは、距離が増大すると減少するもののゼロにはならない関数を使って、仮想粘性力Fvisと仮想斥力Frepを計算してもよい。
1.現在の分岐点P5を出発分岐点とする。
2.現在の分岐点から直接移動可能である分岐点Snを全て取得する(ステップS2)。図7の場合、n=6〜10である。
3.そのうちの一つの分岐点Skを仮に選択する(ステップS4)。kは6〜10の内から選択される。
4.分岐点Skを経由した場合の移動コストの推定値f*(Sk)を、f*(Sk)= g(Sk) + h*(Sk)の式で求める(ステップS6)。g(Sk)は、出発点P5から仮に選択した分岐点Skまで移動するのに要するコストであり、h*(Sk)は仮に選択した分岐点Skから目標点Gまで移動するのに要する移動コストの推定値である。h*(Sk)には、仮に選択した分岐点Skから目標点Gに至る直線経路があるものとしたときのその距離に比例する値を採用することができる。g(Sk)は、出発点P5から仮に選択した分岐点Skまでの距離に比例する値と、自律移動体2が出発点P5にあるときの自律移動体2の位置(P5にある)と速度と、移動障害物70の位置と速度と、式2に基づいて計算した仮想粘性力に比例する値と、自律移動体2が出発点P5にあるとき自律移動体2の位置(P5にある)と、移動障害物70の位置と、式3に基づいて計算した仮想斥力に比例する値を加算したものである。
5.現在の分岐点P5から直接移動可能な全ての分岐点Sn(n=6〜10)を仮に選択して移動コストを計算したか否かを判定する(ステップS8)。移動コストを計算していない分岐点が残っていれば(ステップS8でNo)、移動コストが計算されていない分岐点を仮に選択しなおし(ステップS10)、ステップS6に戻って移動コストを計算する。
6.ステップS8の判定において、選択可能な全ての分岐点Sn(n=6〜10)を経由する場合の移動コストが計算されたと判定されれば(ステップS8のYes)、移動コストの計算値が最小となる分岐点を選択する(ステップS12)。図7の場合、P8の分岐点を経由するのが最小移動コストであると計算された場合を例示している。
7.移動コストの計算に仮想粘性力を含める。仮想粘性力は、移動障害物の近傍を移動障害物との速度差が大きい状態で自律移動体2が移動する経路については大きな値となることから、そのような経路が選択されないように作動する。すなわち、移動障害物の近傍を通過する際には、移動障害物との速度差が小さい状態で自律移動体2が移動する経路が優先的に選択されるように作動する。自律移動体2が移動障害物に沿って移動する経路が優先的に選択されるように作動する。
8.移動コストの計算に仮想斥力を含める。仮想斥力は、移動障害物に接近する経路については大きな値となることから、そのような経路が選択されないように作動する。すなわち、移動障害物から離れた位置を通過する経路が優先的に選択されるように作動する。移動障害物が人である場合、あるいは自律移動体2に人が搭乗している場合に、他者・他物が侵入すると人が不安を感じるパーソナルスペースに入り込まない経路が優先的に選択されるように作動する。
9.ステップS14では、ステップS12で選択した分岐点が目標点Gかどうかを判定する。選択した分岐点が目標点Gであった場合は(ステップS14のYes)、目標点Gに至る経路が探索されたので処理を終了する。
10.選択した分岐点が目標点Gでない場合は(ステップS14のNo)、ステップS2における現在の分岐点をステップS12で決定した分岐点に置き換えてステップS2以降の処理を繰り返す。
ステップS2における現在の分岐点を、実際にいる分岐点P5から、計算上で決定した分岐点(この場合にはP8)に置き換えてステップS6を実行する場合には、上記のようにして推定した移動障害物70の位置と速度を用いて仮想粘性力と仮想斥力を計算し、移動コストを計算する。
g(Sk)= L[S0,Sk] + WvisFvis + WrepFrep
ここでL[S0,Sk]は、直前に決定した分岐点S0から仮に選択した分岐点Skまでの距離、Fvisは前述の式2による仮想粘性力、Frepは式3の仮想斥力、WvisはFvisの重みパラメータ、WrepはFrepの重みパラメータである。WvisおよびWrepは、Maximum Entropy Inverse Reinforcement Learningなどの学習アルゴリズムにより同定されるパラメータである。詳細は非特許文献1に記載があるため、本明細書での説明は省略する。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
4:マップ記憶装置
6:目標点指定装置
8:自律移動体情報取得装置
10:移動障害物情報取得装置
12:経路探索装置
13:仮に分岐点を選択する装置
14:所要時間計算装置
16:予測装置
18:仮想粘性力計算装置
20:仮想斥力計算装置
22:移動コスト計算装置
24:選択装置
26:局所回避経路探索装置
28:経路
30:LRF
32:エンコーダ
34:ジャイロ
70:移動障害物
72:移動障害物の速さと方向を示すベクトル
P1,P2・・:分岐点
reF:人の進行方向におけるre
reB:人の進行方向と逆方向におけるre
reL:人の側方向におけるre
re1:相対速度v1のときのre
re2:相対速度v2のときのre
Claims (4)
- 目標点までの経路を探索して移動する自律移動体であり、
分岐点座標と、分岐点と分岐点の間が移動可能経路で接続されているか否かを記述しているマップ記述データを記憶しているマップ記憶装置と、
人が、マップ記述データに含まれている分岐点の中から任意の分岐点を選択し、選択した当該分岐点を目標点として指定することを許容する目標点指定装置と、
自律移動体の位置と速度を取得する自律移動体情報取得装置と、
移動障害物の位置と速度を取得する移動障害物情報取得装置と、
マップ記述データに経路探索処理を施し、自律移動体情報取得装置によって取得した現在位置から目標点指定装置によって指定された目標点までの経路を探索する経路探索装置を備えており、
経路探索装置が、以下の装置、すなわち:
仮に選択した分岐点に自律移動体が移動するのに要する時間を計算する所要時間計算装置と、
移動障害物情報取得装置で取得した移動障害物の位置と速度と、所要時間計算装置で計算した所要時間から、自律移動体が仮に選択した分岐点に移動する時点における移動障害物の位置と速度を予測する予測装置と、
予測装置で予測した移動障害物の位置と速度と、自律移動体が仮に選択した分岐点を移動する際の速度から、自律移動体に作用する仮想粘性力を計算する仮想粘性力計算装置と、
仮に選択した分岐点を経由する経路によるときの経路距離と仮想粘性力を含む移動コストを計算する移動コスト計算装置と、
仮に選択した分岐点群の中から移動コスト計算装置で計算される移動コストが最小となる分岐点を選択する選択装置を含んでいることを特徴とする自律移動体。 - 予測装置で予測した移動障害物の位置と、仮に選択した分岐点の位置から、自律移動体に作用する仮想斥力を計算する仮想斥力計算装置が付加されており、
移動コスト計算装置が、仮に選択した分岐点を経由する経路によるときの経路距離と仮想粘性力と仮想斥力を含む移動コストを計算することを特徴とする請求項1に記載の自律移動体。 - 仮想斥力がゼロとなる移動障害物からの距離が、移動障害物の移動方向に依拠して変化し、進行方向に長く、背後方向に短いことを特徴とする請求項2に記載の自律移動体。
- 仮想斥力がゼロとなる移動障害物からの距離が、自律移動体と移動障害物の相対速度に依拠して変化し、高速時に長く、低速時に短いことを特徴とする請求項2または3に記載の自律移動体。
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