以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は本発明に係る走行支援情報提供装置の一実施形態を示すブロック図、図3は本実施形態に係る車両を示す側面図、図4は図3の車両のIV−IV矢視断面を模式的に示す断面図、図5は図2の上限速度表示装置に代えてナビゲーション装置を用いた態様を示すブロック図、図6は図5のナビゲーション装置の表示部に表示される画面の一例を示す平面図、図7は静的車高と輪荷重との関係を示す輪荷重マップ、図8は輪荷重とホイールレートとの関係を示すホイールレートマップである。
「走行支援情報提供装置の構成」
本実施形態に係る走行支援情報提供装置は、図2〜図4に示すように、GPS受信部11と車速センサ12と上下加速度センサ13と車高センサ14と横加速度センサ19とカメラ39とECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)15と外部記憶装置16と上限車速表示装置17と警報ブザー18と地図データベースファイル41(地図データ記憶手段75)とを備え、これらは車両としてのトラック20に搭載されている。車高センサ14は、後車軸25の左側の車高を検出する左車高センサ14aと右側の車高を検出する右車高センサ14bとを備える。ECU15は、演算処理部31と路面形状データ記録・検索部32と上限車速データ記憶用のバッファメモリ33と上限車速表示・警報指示部34と記憶部37とを備える。また、外部記憶装置16は、路面情報データベースファイル35と上限車速データファイル36とを備える。トラック20の車体24の前部は、前車輪22の前車軸(図示省略)にサスペンション(図示省略)を介して支持され、車体24の後部は、後車輪23の後車軸25に左右のサスペンション26,27を介して支持されている。地図データベースファイル41には車線情報を含む地図データが予め記憶されている。車線情報とは、道路の各地点において、一方向へ向かう車線数と反対方向へ向かう車線数とをそれぞれ個別に特定する情報である。後述するナビゲーション装置40(図5参照)が搭載されている場合には、ナビゲーション装置40の地図データベースファイル41が共用される。
なお、本実施形態は、後述するように、車体24の後車軸25側での上下振動が過大となることを抑えるための上限車速を求めて運転者に報知するものであるため、上下加速度センサ13は後車軸25の上方に、車高センサ14は後車軸25の近傍にそれぞれ設けられているが、前車軸側の上下振動が過大となることを抑えるための上限車速を求めて運転者に報知してもよく、この場合、上下加速度センサ13は前車軸の上方に、車高センサ14は前車軸の近傍にそれぞれ設ければよい。
GPS受信部11は、位置情報取得手段61として機能し、トラック20のキャブ21の天井外面に設けられている。GPS受信部11は、GPS用人工衛星からトラック20の現在の位置情報としての緯度経度情報(緯度N情報、経度E情報)を所定時間毎に逐次受信し、受信した緯度経度情報をECU15の路面形状データ記録・検索部32へ出力する。
車速センサ12は、車速検出手段として機能し、キャブ21のトランスミッション(図示省略)に設けられている。車速センサ12は、トラック20の車速を逐次検出し、検出した車速をECU15の演算処理部31へ出力する。
上下加速度センサ13は、上下加速度検出手段63として機能し、後車軸25の上方で且つ車幅方向のほぼ中央の車体24に設けられている。上下加速度センサ13は、車体24に作用する上下方向加速度を所定時間毎に逐次検出し、検出した上下方向加速度をECU15の演算処理部31へ出力する。なお、上下加速度センサ13を後車軸25の上方で車幅方向両側(左右)にそれぞれ設けてもよい。この場合、左右の上下加速度センサ13は、車体24の左右にそれぞれ作用する上下方向加速度を検出し、検出した上下方向加速度をECU15の演算処理部31へ出力する。演算処理部31は、左右の上下加速度センサ13が検出した上下方向加速度の平均値を算出し、算出した上下方向加速度の平均値を、車体24に作用する上下方向加速度として採用すればよい。
車高センサ14(左車高センサ14a及び右車高センサ14b)は、後車軸25の近傍の車幅方向両側(左右)にそれぞれ設けられ、左右のサスペンション26,27のバネ上とバネ下との間の距離(例えば、車体24の下縁と後車軸25との距離)を左静的車高dL及び右静的車高dRとして検出し、検出した左右の静的車高dL,dRをECU15の演算処理部31へ出力する。
横加速度センサ19は、後車軸25の上方で車体24に設けられている。横加速度センサ19は、車体24に作用する横方向加速度を検出し、検出した横方向加速度をECU15の演算処理部31へ出力する。
カメラ39は、撮影手段として機能し、トラック20のキャブ21の前端上部に設けられている。カメラ39は、トラック20の前方を撮影し、撮影した画像データをECU15の演算処理部31へ逐次出力する。カメラ39は、単眼又はステレオの何れのタイプであってもよい。なお、トラック20の前方の少なくとも走行側の全ての白線を撮影する必要があるため、広角レンズを用いることが好ましい。
ECU15の記憶部37は、RAM等によって構成されている。この記憶部37には、左右の静的車高dL,dRと輪荷重との関係を示す輪荷重マップ(図7に示す)や輪荷重とホイールレートとの関係を示すホイールレートマップ(図8に示す)の他、演算処理部31が実行する処理実行プログラムが予め記憶されている。なお、処理実行プログラムは、各処理で使用する所定の式を含む。
ECU15の演算処理部31は、記憶部37から読み出した処理実行プログラムに従って、上下加速度判定処理と、バネ上質量推定算出処理と、ホイールレート推定算出処理と、車両状態係数算出処理と、路面形状係数算出処理と、旋回半径算出処理と、第1の上限車速算出処理と、予想ホイールレート推定算出処理と、予想車両状態係数算出処理と、第2の上限車速算出処理と、上限車速比較判定処理と、車線情報提供処理と、走行車線判定処理と、道のり算出処理と、車線数取得処理とを実行する。この演算処理部31は、ホイールレート取得手段、路面形状係数演算手段、旋回半径取得手段、ホイールレート推定手段、上限車速演算手段、上限車速比較手段、白線認識手段、車線情報提供手段79、走行車線判定手段81及び道のり算出手段82として機能する。
車線情報提供処理では、カメラ39から逐次入力される画像データを解析し、撮影画像に含まれる白線を認識し、認識した白線の場所と本数とに基づいて、トラック20走行側の全車線の中で右側(或いは左側)から何番目の車線をトラック20が走行しているかを判別し、その判別結果に対応した走行車線ID(車線識別情報)を提供する。本実施形態では、対向車線に最も近い側の車線から順番に、「1,2,3・・・」という整数が走行車線ID(Lid)として使用され、例えば、対向車線に最も近い車線から2番目の車線を走行している場合には、走行車線ID(Lid)として「2」が提供される。なお、白線を認識する処理には、LKAS(Lane Keeping Assist System)などの技術を適用することが可能である。演算処理部31は、カメラ39からの画像データの入力に応じて、トラック20が走行している車線の走行車線ID(Lid)を路面形状データ記録・検索部32へ逐次出力する。
上下加速度判定処理では、上下加速度センサ13が検出した上下方向加速度が、予め定められた所定加速度(上下加速度ピーク値)を超えたか否かを判定する。また、演算処理部31は、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えたと判定された場合、路面形状データ記録・検索部32を介して上限車速表示・警報指示部34へ上下加速度ピーク値を超えたことを示すピーク超過信号を出力する。
バネ上質量推定算出処理では、車体24と乗員と積荷とを含む車両の総重量のうち、後車輪23(サスペンション26,27)が分担するバネ上質量mを求める。具体的には、車高センサ14(左車高センサ14a及び右車高センサ14b)が検出した静的車高dL,dRと図7に示す輪荷重マップとから、静的車高dL,dRに対応する左右の静的輪荷重wL,wRをそれぞれ求め、求めた静的輪荷重wL,wRをそれぞれ質量に換算することにより左バネ上質量mLと右バネ上質量mRとを算出し、算出した左バネ上質量mLと右バネ上質量mRとを次式(1)に代入することにより、後車輪23側のバネ上質量mを算出する。
なお、本実施形態では、静的車高と輪荷重との関係を輪荷重マップとして予め設定しているが、両者の関係をテーブルとして設定してもよく、また所定の式として設定してもよい。
また、上記バネ上質量推定算出処理によりバネ上質量mを算出したが、例えば、アクセル開度とバネ上質量と車両の前後方向加速度との関係をマップ又はテーブルに予め設定しておき、アクセル開度と前後方向加速度とを検出又は取得して、マップ又はテーブルからバネ上質量を推定するなど、他の方法により算出してもよい。
ホイールレート推定算出処理では、後車輪23のタイヤとサスペンション26,27とを考慮した弾性系のバネ定数(以下、タイヤサスペンションのホイールレートkと称する)を求める。具体的には、車高センサ14(左車高センサ14a及び右車高センサ14b)が検出した静的車高dL,dRと図7に示す輪荷重マップとから、静的車高dL,dRに対応する左右の静的輪荷重wL,wRをそれぞれ求め、求めた静的輪荷重wL,wRと図8に示すホイールレートマップとから、左右の静的輪荷重wL,wRに対応する左ホイールレートkLと右ホイールレートkRとをそれぞれ求め、求めた左ホイールレートkLと右ホイールレートkRとを次式(2)に代入することにより、ホイールレートkを算出する。
このホイールレート推定算出処理によって算出されるホイールレートkは、走行中の車両の現在のホイールレートを推定した値である。これに対し、後述する予想ホイールレート推定算出処理によって算出される予想ホイールレートkeは、走行中のトラック20が報知対象路面(走行に注意を要する路面)を将来通過する際のホイールレートの予想値である。
なお、本実施形態では、輪荷重とホイールレートとの関係をホイールレートマップとして予め設定しているが、両者の関係をテーブルとして設定してもよく、また所定の式として設定してもよい。
車両状態係数算出処理では、上記ホイールレート推定算出処理で算出したホイールレートkと、記憶部37に予め記憶されたサスペンション26,27の減衰係数cと、上記バネ上質量推定算出処理で算出したバネ上質量mとを、後述する式(16a)に代入することによって、車両状態係数(第1の車両状態係数)fを算出する。
路面形状係数算出処理、旋回半径算出処理は、上下加速度判定処理において、上下加速度センサ13が検出した上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えたと判定された場合に実行される。
路面形状係数算出処理では、車速センサ12が検出した車速と上下加速度センサ13が検出した上下方向加速度と上記車両状態係数算出処理で算出した車両状態係数fとを、後述する式(17)に代入することによって、路面形状を特定する路面固有の路面形状係数KRdを算出する。なお、路面形状係数算出処理では、上述のように、上下加速度センサ13が検出した上下方向加速度を式(17)に代入する。演算処理部31は、算出された路面形状係数KRdを路面形状データ記録・検索部32へ出力する。
旋回半径算出処理では、車速センサ12が検出した車速Vと横加速度センサ19が検出した横方向加速度ayとを、次式(3)に代入することによって、走行中のトラック20の旋回半径Rcを算出する。演算処理部31は、算出された旋回半径Rcを路面形状データ記録・検索部32へ出力する。
なお、車両が回転する速度を検出するヨーレートセンサを設け、車速センサ12が検出した車速Vとヨーレートセンサが検出するヨーレートγとを、次式(4)に代入することによって、旋回半径Rcを算出してもよい。
路面形状データ記録・検索部32は、演算処理部31から路面形状係数KRd、旋回半径Rc及び走行車線ID(Lid)の入力を受けると、これら路面形状係数KRd、旋回半径Rc及び走行車線ID(Lid)を、GPS受信部11から取得した緯度経度情報(報知対象路面の緯度経度情報)に対応付けた状態で外部記憶装置16の路面情報データベースファイル35に記録する。すなわち、路面形状データ記録・検索部32は、記録制御手段67として機能し、路面情報データベースファイル35には、走行に注意を要する報知対象路面の位置を示す緯度経度情報と当該路面の路面形状係数KRdと旋回半径Rcと走行車線ID(Lid)との組み合わせが順次蓄積される。
また、路面形状データ記録・検索部32は、路面情報データベースファイル35に記録されたデータセット(報知対象路面の緯度経度情報と路面形状係数KRdと旋回半径Rcと走行車線ID(Lid)との組み合わせ)の中から、GPS受信部11から取得した現在の緯度経度情報を中心として所定の範囲(例えば、緯度NについてはN±aの範囲、経度EについてはE±bの範囲)に存在する緯度経度情報を有するデータセットを抽出する。すなわち、路面形状データ記録・検索部32は、車両位置判定手段69としても機能する。そして、抽出したデータセットの路面形状係数KRd、旋回半径Rc及び走行車線ID(Lid)を、演算処理部31へ出力する。
演算処理部31は、路面形状データ記録・検索部32から報知対象路面の緯度経度情報(Nd,Ed)、路面形状係数KRd、旋回半径Rc及び走行車線ID(Lidd)の入力を受けると、走行車線判定処理、道のり算出処理、車線数取得処理、上記第1の上限車速算出処理、予想ホイールレート推定算出処理、予想車両状態係数算出処理、及び第2の上限車速算出処理及び上限車速比較判定処理を実行する。
走行車線判定処理では、車線情報提供処理によって提供された現在(最新)の走行車線ID(Lidc)と報知対象路面の位置情報に対応付けられて記録媒体72に記録された報知対象の走行車線ID(Lidd)とが一致するか否かを判定する。2つの走行車線ID(Lidc,Lidd)が一致する場合には、警報レベルコードWL(警報レベル情報)をレベル2に設定し、一致しない(相違する)場合には、警報レベルコードWLをレベル1に設定する。警報レベルコードWLのレベルは、その数値が大きいほど運転者に対する注意喚起の必要性が高いことを示している。演算処理部31は、設定した警報レベルコードWLを路面形状データ記録・検索部32へ出力する。なお、以下の説明において、レベル1に設定された警報レベルコードを警報レベル「1」と標記し、レベル2に設定された警報レベルコードを警報レベル「2」と標記する。
道のり算出処理では、先ず、地図データベースファイル41に記憶された地図データと、GPS受信部11が最新に受信した現在のトラック20の緯度経度情報(Nc,Ec)と、報知対象路面の緯度経度情報(Nd,Ed)とを用いて、報知対象路面までの走行経路(予測走行経路)を探索して予測する。具体的には、地図データを使用した最短経路算出処理によって、現在位置Pc(Nc,Ec)から報知対象路面の位置Pd(Nd,Ed)までの最短経路を予測走行経路として算出する。なお、最短経路は、所定幅以上の道路を条件とした最短経路であってもよく、一般道を条件とした最短経路であってもよい。また、走行予定経路が事前に設定されている場合には、設定された走行予定経路に従って報知対象路面までの走行経路を予測すればよい。
次に、トラック20の現在位置から報知対象路面までの予測走行経路に沿った距離を道のりDstとして算出し、算出した道のりDstを路面形状データ記録・検索部32へ出力する。なお、後述するナビゲーション装置40(図5参照)が搭載されている場合には、ナビゲーション装置40が道のり算出処理の一部又は全部を実行してもよい。
車線数取得処理では、報知対象路面の緯度経度情報(Nd,Ed)に基づき、報知対象路面における走行側の車線数Lnを地図データの車線情報から取得(抽出)し、取得した車線数Lnを路面形状データ記録・検索部32へ出力する。
第1の上限車速算出処理では、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの路面形状係数KRdと上記車両状態係数算出処理で算出した車両状態係数fとから、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えないようにするための第1の上限車速Vmaxを算出する。具体的には、路面形状係数KRdと車両状態係数fと記憶部37に予め記憶された上下加速度ピーク値とを、後述する式(18)に代入することによって、第1の上限車速Vmaxを算出する。
予想ホイールレート推定算出処理では、車高センサ14が検出した静的車高dL,dRと、バネ上質量推定算出処理で算出したバネ上質量mと、第1の上限車速算出処理で算出した第1の上限車速Vmaxと、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの旋回半径Rcとから、予想ホイールレートkeを求める。
具体的には、車高センサ14が検出した左右の静的車高dL,dRと、空車時(積荷が無い状態)の静的車高dcと、空車時の車両の重心とロールセンタRCとの高さの差hvcと、バネ上質量mと、車両質量mvと、車両の重心と積荷の重心との高さの差hvfとを、後述する式(22)に代入することによって、車体24と積荷とを合わせた重心(バネ上質量mの重心)とロールセンタRCとの高さの差hRCを算出する。ここで、空車時の静的車高dcは、納車時などの空車時に車高センサ14が検出する左右の静的車高dL,dRの平均値であり、記憶部37に予め記憶されている。空車時の車両の重心とロールセンタRCとの高さの差hvcと、車両の重心と積荷の重心との高さの差hvfとは、推定値として記憶部37に予め記憶されている。車両質量mvは、車両固有の値として記憶部37に予め記憶されている。
次に、上記バネ上質量推定算出処理で取得した静的輪荷重wL,wR及びバネ上質量mと、上記算出した高さの差hRCと、第1の上限車速算出処理で算出した第1の上限車速Vmaxと、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの旋回半径Rcと、ロールセンタRCから各サスペンション26,27までの距離tとを、後述する式(25a)及び(25b)に代入することにより、旋回時の左右の予想輪荷重weL,weRを算出する。次に、算出した予想輪荷重weL,weRと図8に示すホイールレートマップとから、左右の予想輪荷重weL,weRに対応する左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとをそれぞれ求め、求めた左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとを式(2)に代入することにより、予想ホイールレートkeを算出する。なお、予想ホイールレート推定算出処理では、左ホイールレートkLと右ホイールレートkRとに代えて左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとを式(2)に代入する。
この予想ホイールレートkeは、走行中のトラック20が報知対象路面を将来通過する際のホイールレートの予測値である。
予想車両状態係数算出処理では、上記予想ホイールレート推定算出処理で算出した予想ホイールレートkeと、記憶部37に予め記憶されたサスペンション26,27の減衰係数cと、上記バネ上質量推定算出処理で算出したバネ上質量mとを、後述する式(16a)に代入することによって、予想車両状態係数(第2の車両状態係数)feを算出する。なお、予想車両状態係数算出処理では、ホイールレートkに代えて予想ホイールレートkeを式(16a)に代入する。
第2の上限車速算出処理では、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの路面形状係数KRdと上記予想車両状態係数算出処理で算出した予想車両状態係数feとから、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えないようにするための第2の上限車速Vmaxeを算出する。具体的には、路面形状係数KRdと予想車両状態係数feと記憶部37に予め記憶された上下加速度ピーク値とを、後述する式(18)に代入することによって、第2の上限車速Vmaxeを算出する。なお、第2の上限車速算出処理では、車両状態係数fに代えて予想車両状態係数feを式(18)に代入する。
すなわち、第1の上限車速算出処理によって算出される第1の上限車速Vmaxと第2の上限車速算出処理によって算出される第2の上限車速Vmaxeとは、第1の上限車速Vmaxが、ホイールレートkを用いて算出される値であるのに対し、第2の上限車速Vmaxeが、トラック20が報知対象路面を将来通過するときの旋回半径Rcを考慮して推測した予想ホイールレートkeを用いて算出される値である点で相違する。
上限車速比較判定処理では、それぞれ算出した第1の上限車速Vmaxと第2の上限車速Vmaxeとを比較し、値が小さい方の上限車速を報知用として路面形状データ記録・検索部32へ出力する。
路面形状データ記録・検索部32は、演算処理部31から警報レベルコード、報知対象路面までの道のり、報知対象路面における車線数、及び報知用の上限車速の入力を受けると、これら警報レベルコード、道のり、車線数及び報知用の上限車速を、上記抽出したデータセットが有する報知対象路面の緯度経度情報及び走行車線IDに対応付けた状態で、外部記憶装置16の上限車速データファイル36に順次記録する。
また、路面形状データ記録・検索部32は、予め設定された所定時間tmax秒毎に、上限車速データファイル36に蓄積された全てのデータセット(警報レベルコード、道のり、車線数、報知用の上限車速、報知対象路面の緯度経度情報及び走行車線IDの組み合わせ)をバッファメモリ33上に移す。なお、係るデータの移動に際し、上限車速データファイル36のデータセットは全て消去される。次に、路面形状データ記録・検索部32は、バッファメモリ33に移されたデータセットの中から、トラック20の進行方向前方に位置する緯度経度情報を有するデータセットを抽出し、さらに、各データセットの道のりに基づいて、各データセットに対して現在位置からの距離(道のり)が近い順に順位を付ける。そして、路面形状データ記録・検索部32は、順位付けられたデータセットの警報レベルコードと道のりと車線数と報知用の上限車速と順位とを、上限車速表示・警報指示部34へ出力する。
上限車速表示装置17と警報ブザー18とは、共に車室内のインパネ(インストルメント・パネル)に設けられている。
上限車速表示装置17は、報知手段71として機能し、路面形状データ記録・検索部32から報知用の警報レベルコードと道のりと車線数と報知用の上限車速と順位とが入力される毎に、現在位置から報知対象路面までの距離(道のり)と、その路面での上限車速と、報知対象路面における車線数とを、順位付けに従って現在位置から近い順に表示する。運転者は、上限車速表示装置17に表示された内容を見ることにより、走行に注意を要する路面までの距離(道のり)と、その路面での上限車速と、報知対象路面における車線数とを事前に認識することができる。
また、上限車速表示装置17は、警報レベルコードのレベル値が大きいほど運転者の注意を惹き付けるように、警報レベルコードに応じて表示色やフォントの大きさを変更する。例えば、警報レベル「1」の場合には黄色の小さいフォントで表示し、警報レベル「2」の場合には赤色の大きいフォントで表示する。すなわち、走行中の車線に報知対象路面が存在しない場合には、警報レベル「1」の態様によって上限車速が表示され、反対に、走行中の車線に報知対象路面が存在する場合には、警報レベル「2」の態様によって上限車速が表示されるので、運転者は、走行中の車線に報知対象路面が存在するか否かを上限車速の表示態様によって事前に判別することができる。また、警報レベル「2」の方が警報レベル「1」よりも注意を惹き付ける表示態様であるので、運転者は、走行中の車線に報知対象路面が存在することを早期に認識することができる。
警報ブザー18は、演算処理部31から路面形状データ記録・検索部32及び上限車速表示・警報指示部34を介してピーク超過信号が入力されたとき、上下加速度ピーク値を超えたことを運転者に報知するための警報音を発する。
また、トラック20に図5に示すようなナビゲーション装置40が搭載されている場合、上限車速表示装置17及び警報ブザー18に代えて又は加えてナビゲーション装置40を用いることができる。
ナビゲーション装置40は、その基本構成として地図データベースファイル41とナビゲーション制御部42と表示部43と音声発生部44とを備える。ナビゲーション制御部42は、ECUによって構成され、GPS受信部11が取得した現在の緯度経度情報に基づき、現在位置周辺の地図データを地図データベースファイル41から読み出し、読み出した地図データに基づく地図画像49を現在位置表示46と共に表示部43の表示画面45(図6に示す)に表示する。また、ナビゲーション制御部42は、予め走行ルートが設定されている場合には、その走行ルートに従った音声ガイドを音声発生部44から出力させる。
上限車速表示装置17及び警報ブザー18に代えて又は加えてナビゲーション装置40を用いる場合、路面形状データ記録・検索部32は、予め設定された所定時間tmax秒毎に、上限車速データファイル36に蓄積された全てのデータセット(警報レベルコード、道のり、車線数、報知用の上限車速、報知対象路面の緯度経度情報及び走行車線IDの組み合わせ)を抽出し、抽出したデータセットを上限車速表示・警報指示部34へ出力する。上限車速表示・警報指示部34は、入力された上記データセットをナビゲーション制御部42へ出力する。また、路面形状データ記録・検索部32は、車線情報提供処理によって提供される最新(現在)の走行車線IDを演算処理部31から取得し、取得した走行車線IDをナビゲーション制御部42へ逐次出力する。なお、路面形状データ記録・検索部32は、上限車速データファイル36から抽出したデータセットをバッファメモリ33上に一時的に記憶してもよく、また、ECU15(図2に示す)内の構成の一部又は全部をナビゲーション制御部42に含めてもよい。また、上限車速表示・警報指示部34は、演算処理部31(図2に示す)から路面形状データ記録・検索部32を介してピーク超過信号が入力されたとき、このピーク超過信号をナビゲーション制御部42へ出力する。
ナビゲーション制御部42は、上記入力されたデータセットの報知用の上限車速と報知対象路面の緯度経度情報とに基づき、図6に示すように、表示部43の表示画面45に表示した地図画像49の中に、報知対象路面の位置情報に対応する報知対象路面(走行に注意を要する路面)の位置を特定する特定表示47を表示するとともに、この特定した位置の近傍に上限車速の数値48を表示する。また、上限車速表示装置17の場合と同様に、警報レベルコードのレベル値が大きいほど運転者の注意を惹き付けるように、警報レベルコードに応じて上限車速の数値48の表示色やフォントの大きさを変更する。すなわち、ナビゲーション制御部42及び表示部43は、報知手段71として機能する。運転者は、表示画面45に表示された内容を見ることにより、走行に注意を要する路面の位置とその路面での上限車速とを事前に認識することができ、且つ走行中の車線に報知対象路面が存在するか否かを事前に判別することができる。
また、ナビゲーション制御部42は、上記入力されたデータセットの道のりが所定距離(設定値)以下であるか否かを判定し、道のりが所定距離以下であると判定したとき、上記入力されたデータセットの道のり、車線数及び走行車線IDと、上記入力された最新(現在)の走行車線IDとに基づいて、報知画像を生成して表示画面45に表示する。報知画像は、報知対象路面の近傍の走行側の全車線のうち何れの車線に報知対象路面が存在するかを視認可能に表示するものであり、地図画像49の一部にマスクして表示してもよく、地図画像49に代えて表示してもよい。すなわち、ナビゲーション制御部42は、道のり判定手段83としても機能する。
例えば、図22に示す報知画像55は、報知対象路面の近傍を鳥瞰するように表わしたコンピュータグラフィックス(Computer Graphics:CG)であり、車線数が示す数(図22の例では3本)の車線56と、2箇所の報知対象路面(車線内での場所)をそれぞれ示す特定表示57,58と、自車両が走行中の車線を示す走行車線表示59と、報知対象路面までの距離(道のり)とが表示される。特定表示57,58は、報知対象路面までの距離(道のり)に応じた遠近感を与えるように、近い報知対象路面ほど下方に表示される。走行車線表示59は、報知画像55の下部に表示される。報知対象路面までの距離(道のり)は、例えば特定表示57,58の内側に表示される。
なお、上限車速表示装置17の場合と同様に、特定表示57,58を、警報レベルコードのレベル値が大きいほど運転者の注意を惹き付けるように、警報レベルコードに応じた表示色や大きさによって表示してもよい。この場合、走行中の車線に存在しない報知対象路面(警報レベル「1」)の特定表示58は、黄色で小さく表示され、走行中の車線に存在する報知対象路面(警報レベル「2」)の特定表示57は、赤色で大きく表示される。
ナビゲーション制御部42は、警報レベルコードのレベル値に応じた音声によって報知対象路面を報知してもよい。この場合、警報レベル「1」のときは、「他の車線の前方に荒れた路面があります。」などの音声を音声発生部44から比較的小さい音量で出力させ、警報レベル「2」のときは、「走行車線の前方に荒れた路面があります。低速での走行又は車線の変更が必要です。」などの音声を比較的大きい音量で音声発生部44から発生させる。
また、ナビゲーション制御部42は、上記ピーク超過信号の入力に応じて、上下加速度ピーク値を超えたことを報知する音声を音声発生部44から出力させる。
「路面形状係数及び上限車速の導出」
[路面から車輪(タイヤ)への入力]
路面形状係数及び上限車速を導出するために、車速Vで走行中の車両の車輪が段差の角部pに当たって通過する状態を想定する。なお、このときのタイヤの変形は微小であるため無視する。
図9に示すように、角部pに接触するまで水平方向に速度Vで移動していた車輪50は、角部pに接触した後、車輪50の回転に伴って破線で示すような軌跡を描き、段差に乗り上げる。車輪50の回転中心の速度ベクトルは、その大きさを終始変えることはないが、角部pに接触した瞬間に、水平面よりも角度φだけ上向きに向きを変える。従って、この瞬間に上下方向に速度vzが発生することになる。速度vzの大きさは、幾何学的関係から以下の式(5)で表される。
式(5)中のφは、図9に示すように車輪50が角部pに接触した瞬間の直線opと鉛直線とがなす角度であり、路面段差の高さhと車輪半径Rとから幾何学的に決まる数値である。
角部pに接触した後、速度vzは、図10に示すように次第に小さくなり、車輪50の回転中心が角部pを通る鉛直線上に達した時点で0(ゼロ)となる。従って、δ(t)をインパルス関数とすれば、路面からの入力は、次式(6)と置き換えることができる。
なお、実際の路面入力は、このような単発の入力ではないが、様々な大きさを有するこのような入力の集まりと捉えることができる。
[バネ上上下加速度の推定]
タイヤ及びサスペンションの質量はバネ上質量に比べて微小であるため、その質量は無視することができる。従って、車輪50が段差を通過する際の振動モデルは、図11に示すような系となる。バネ上質量をm、車体変位をx2、路面変位をx1、タイヤサスペンションのホイールレートをk、減衰係数をcとおくと、この系の運動方程式は次式(7)となる。
式(5)から、この系の状態方程式は次式(8)となる。
式(6)をラプラス変換し、伝達関数を求めると、次式(9)となる。
式(7)から、路面変位速度x1dに対する車体変位速度x2dの伝達関数は、それぞれのラプラス変換をX1d(s)、X2d(s)とおけば、次式(10)となる。
ここで、式(6)より、段差に乗り上げる場合の路面変位速度x1d(t)は、次式(11)と考えられる。
従って、式(11)のラプラス変換は、次式(12)となる。
ゆえに、この入力に対する車体変位速度は、次式(13)となり、
このときの上下加速度の時間応答は、式(13)を逆ラプラス変換して時間tについて微分することによって得られ、次式(14)となる。
式(14)で表される関数は、時間tが次式(15a)で表される値付近でほぼ最大となり、このときのバネ上に発生する上下加速度の理論上のピーク値は、次式(15b)となる。
ここで、
とおけば、
となり、上下加速度ピーク値、車両諸元(バネ上質量m、タイヤサスペンションのホイールレートk、減衰係数c)、及び車速Vが分かれば、式(17)に従って路面形状係数KRdを算出することができる。なお、上記車両諸元(バネ上質量m、タイヤサスペンションのホイールレートk、減衰係数c)を式(16a)に代入することによって算出されるf(m,k,c)を、車両状態係数と称する。
また、路面形状係数KRdが既に分かっている路面であれば、上下方向加速度をある一定値(上下方向加速度の最大値)以下に抑えるための上限車速は、次式(18)によって算出することができる。
「予想ホイールレートの導出」
[重心高の推定]
図12に示すように、車両と積荷とを合わせた全体の重心(バネ上質量mの重心)とロールセンタRCとの高さの差をhRC、車両の重心と積荷の重心との高さの差をhvf、車両と積荷とを合わせた全体の重心と積荷の重心との高さの差をhvf1、車両と積荷とを合わせた全体の重心と車両の重心との高さの差をhvf2、車両の重心とロールセンタRCとの高さの差をhvとする。また、車両と積荷とを合わせた全体の質量(バネ上質量)をm、車両固有の数値である車両質量をmvとすると、積荷の質量をmfは、次式(19)となる。
ここで、車両の重心と積荷の重心との高さの差をhvfは、走行中常に一定であることから、車両と積荷とを合わせた全体の重心と車両の重心との高さの差hvf2は、次式(20)によって求められる。
また、空車時(積荷が無い状態)の静的車高をdc、積荷がある状態での左右の静的車高をdL,dR、空車時の車両の重心とロールセンタRCとの高さの差をhvcとすれば、車両の重心とロールセンタRCとの高さの差をhvは、次式(21)となる。
従って、車両と積荷とを合わせた全体の重心(バネ上質量mの重心)とロールセンタRCとの高さの差をhRCは、次式(22)によって算出することができる。
[予想ホイールレートの推定]
路面情報データベースファイル35に記録されている路面形状係数KRdを用いて式(18)によって算出した上限車速(第1の上限車速)Vmax及び旋回半径Rcで走行した場合に車両に発生する横方向加速度aymaxは、次式(23)によって算出することができる。
通常走行においてロール角が比較小さい範囲であれば、図13に示すように、旋回時のロールセンタRCは固定である(変動しない)と考えられるので、ロールセンタRC回りの静的なモーメントの釣り合いの式から、上限車速(第1の上限車速)Vmaxで走行(通過)した場合の横方向加速度aymaxにより生じるロールに起因する荷重移動Δwは、次式(24)となる。
従って、直進走行時の左右の静的輪荷重をwL,wRとすると、左旋回時の左右の予想輪荷重weL,weRは、次式(25)によって算出される。
得られた左右の予想輪荷重weL,weRと図8に示すホイールレートマップとから、左右の予想輪荷重weL,weRに対応する左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとをそれぞれ求め、求めた左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとを式(2)に代入することにより、予想ホイールレートkeが算出される。
「ECUが実行する処理」
次に、ECU15が実行する処理について、図14〜図20のフローチャートに基づき説明する。なお、本処理は、ナビゲーション装置40を利用した場合の処理であり、ナビゲーション制御部42が実行する処理も含む。
ECU15及びナビゲーション装置40の起動により、図2に示すメインルーチン処理が開始する。メインルーチンが開始すると、まずナビゲーション装置40がONか否かを判定し(ステップS10)、ナビゲーション装置40がONの場合、ステップS1以降の処理を順次実行する。
ステップS1へ進むと、タイマがスタートすると共に、図15に示すバネ上質量推定算出処理及びホイールレート推定算出処理を実行する。
バネ上質量推定算出処理及びホイールレート推定算出処理では、車高センサ14(左車高センサ14a及び右車高センサ14b)が検出した静的車高dL,dRとを読み込み(ステップS41)、図7に示す輪荷重マップから静的車高dL,dRに対応する左右の静的輪荷重wL,wRをそれぞれ推定し(ステップS42)、図8に示すホイールレートマップから左右の静的輪荷重wL,wRに対応する左ホイールレートkLと右ホイールレートkRとをそれぞれ推定し(ステップS43)、ステップS44へ進む。ステップS44では、静的輪荷重wL,wRをそれぞれ質量に換算することにより左バネ上質量mLと右バネ上質量mRとを算出し、算出した左バネ上質量mLと右バネ上質量mRとを式(1)に代入することにより、後車輪23側のバネ上質量mを算出する。また、左ホイールレートkLと右ホイールレートkRとを式(2)に代入することにより、ホイールレートkを算出する。ステップS44の処理が終了すると、図14のステップS2へ進む。
ステップS2では、車両状態係数算出処理を実行する。この車両状態係数算出処理では、ステップS1(ステップS44)で算出したホイールレートk及びバネ上質量mと、記憶部37に予め記憶されたサスペンション26,27の減衰係数cとを、式(16a)に代入することによって、車両状態係数(第1の車両状態係数)fを算出する。
次に、ステップS3へ進み、図16に示す路面形状係数算出処理を実行する。
路面形状係数算出処理では、上下加速度センサ13が検出した車体24の上下方向加速度を読み込み(ステップS11)、読み込んだ上下方向加速度の値が上下加速度ピーク値を超えたか否かを判断する(ステップS12)。上下方向加速度の値が上下加速度ピーク値を超えていない場合には、走行に注意を要する路面ではないと判定し、路面形状係数算出処理を終了して、図14のステップS4へ進む。
一方、上下方向加速度の値が上下加速度ピーク値を超えている場合には、走行に注意を要する路面であると判定し、ステップS13へ進み、ピーク超過信号を出力する。具体的には、演算処理部31が路面形状データ記録・検索部32及び上限車速表示・警報指示部34を介してナビゲーション制御部42へピーク超過信号を出力し、これに応じて、上下加速度ピーク値を超えたことを報知する音声をナビゲーション制御部42が音声発生部44から出力させる。これにより、運転者は、走行に注意を要する路面を走行中であることを認識することができる。
次に、ステップS14へ進み、車速センサ12が検出した車速VとGPS受信部11が受信した緯度経度情報と車線情報提供処理によって提供された走行車線ID(Lid)とを読み込み(ステップS14)、ステップS11で読み込んだ上下方向の上下方向加速度とステップS2で算出した車両状態係数とを式(13)に代入して、路面形状係数KRdを算出する。
次に、ステップS17へ進み、図17に示す旋回半径算出処理を実行する。
旋回半径算出処理では、横加速度センサ19が検出した横方向加速度ayを読み込み(ステップS51)、横方向加速度ayの絶対値が所定の最小値ayLowを超えているか否かを判定する(ステップS52)。
ステップS52で横方向加速度ayの絶対値が所定の最小値ayLowを超えていると判定した場合、ホイールレートが大きく変動している可能性があるため、ステップS53へ進む。ステップS53では、車速センサ12が検出した車速(ステップS14で読み込んだ車速)Vと横加速度センサ19が検出した横方向加速度(ステップS51で読み込んだ横方向加速度)ayとを、式(3)に代入することによって、走行中のトラック20の旋回半径Rcを算出し、ステップS54へ進む。
ステップS54では、旋回半径Rcの絶対値が所定の最大値Rcmax未満か否かを判定し、最大値Rcmax未満の場合には、旋回半径算出処理を終了して図16のステップS16へ進む。
一方、ステップS52で横方向加速度ayの絶対値が所定の最小値ayLow以下であると判定した場合、及びステップS54で旋回半径Rcの絶対値が所定の最大値Rcmax以上であると判定した場合には、ホイールレートの変動が微小であると推定できるため、ステップS55へ進み、旋回半径Rcの値を所定の最大値Rcmaxに置き換えた後、旋回半径算出処理を終了して図16のステップS16へ進む。
ステップS16では、算出した路面形状係数KRd及び旋回半径Rcと緯度経度情報(Nc,Ec)と走行車線ID(Lid)とを対応付けて路面情報データベースファイル35に追加する。ステップS16を実行することにより路面形状係数算出記録処理を終了し、図14のステップS4へ進む。この路面形状係数算出記録処理により、上下方向加速度の値が上下加速度ピーク値を超えた路面の緯度経度情報が、その路面形状係数及び旋回半径に対応付けられた状態で路面情報データベースファイル35に蓄積される。
ステップS4では、タイマの値Tが所定時間tmaxに達したか否かを判断し、所定時間に未だ達していない場合には、ステップS5へ進み、図18及び図19に示す上限車速算出記録処理を実行する。
上限車速算出記録処理では、まず上限車速算出フラッグがONか否かを判定する(ステップS21)。上限車速算出フラッグがONではない(OFFである)場合には、路面情報データベースファイル35に記録された全てのデータセットに対する上限車速算出記録処理が完了し、且つ上限車速データファイル36に抽出したデータセットをまだ表示していない状態(表示情報を更新していない状態)であるため、ステップS22以降の処理を実行せずに上限車速算出記録処理を終了して、図14のステップS10に戻る。
一方、上限車速算出フラッグがONである場合には、路面情報データベースファイル35に記録されたデータセットに対して以下のステップS24及びステップS25の判断を順次実行している途中であるため、ステップS22以降の処理へ進む。
ステップS22以降の処理では、GPS受信部11が受信した現在の緯度経度情報Pc(Nc,Ec)と、車線情報提供処理によって提供された現在の走行車線ID(Lidc)とを読み込み(ステップS22)、路面情報データベースファイル35からn番目のデータセットの緯度経度情報Pd(Nd,Ed)と走行車線ID(Lidd)と路面形状係数KRddとを読み込み(ステップS23)、緯度Ndが所定範囲内か否か(ステップS24)及び経度Edが所定範囲内か否か(ステップS25)を判断し、緯度Nd及び経度Edの少なくとも一方が所定範囲外の場合には、報知の必要がない報知対象路面であるため、上限車速を算出せずにステップS28へ進む。
一方、緯度及び経度が共に所定範囲内の場合には、報知が必要な報知対象路面であるため、n番目のデータセットの走行車線ID(Lidd)が現在の走行車線ID(Lidc)と一致するか否かを判定する(ステップS32)。2つの走行車線IDが一致する場合には、警報レベルコードWLをレベル2にセットし(ステップS33)、一致しない場合には、警報レベルコードWLをレベル1にセットする(ステップS34)。
続いて、地図データベースファイル41から地図データを読み込み(ステップS35)、地図データを用いて現在位置からn番目のデータセット(緯度経度情報が特定する報知対象路面)までの道のりDstを算出し(ステップS36)、データセット(緯度経度情報)が示す位置(報知対象路面)における車線数Lnを地図データから取得して(ステップS37)、ステップS26へ進む。
ステップS26では、ステップS2で算出した車両状態係数とステップS23で読み込んだ路面形状係数とを式(18)に代入して上限車速を算出する。
次に、ステップS31へ進み、図20に示す上限車速補正処理を実行する。
上限車速補正処理では、旋回半径Rcの絶対値が所定の最大値Rcmax未満か否かを判定し(ステップS61)、最大値Rcmax未満の場合には、ホイールレートが大きく変動する可能性が高いため、ステップS62へ進む。一方、旋回半径Rcの絶対値が所定の最大値Rcmax以上の場合には、ホイールレートの変動が微小であると推定できるため、上限車速補正処理を終了して図19のステップS27へ進む。
ステップS62では、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの旋回半径Rcと、第1の上限車速算出処理(ステップS26)で算出した第1の上限車速Vmaxとを用いて、式(25a)及び式(25b)により、旋回時の左右の予想輪荷重weL,weRを算出し、ステップS63へ進む。
ステップS63では、算出した予想輪荷重weL,weRと図8に示すホイールレートマップとから、左右の予想輪荷重weL,weRに対応する左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとをそれぞれ推定し、推定した左予想ホイールレートkeLと右予想ホイールレートkeRとを式(2)に代入することにより、予想ホイールレートkeを算出し、ステップS64へ進む。
ステップS64では、予想ホイールレートkeと、記憶部37に予め記憶されたサスペンション26,27の減衰係数cと、ステップS1(ステップS44)で算出したバネ上質量mとを、後述する式(16a)に代入することによって、予想車両状態係数(第2の車両状態係数)feを算出し、ステップS65へ進む。
ステップS65では、予想車両状態係数feと、路面形状データ記録・検索部32が路面情報データベースファイル35から抽出したデータセットの路面形状係数KRd(KRdd)と、記憶部37に予め記憶された上下加速度ピーク値とを、式(18)に代入することによって、第2の上限車速Vmaxeを算出し、ステップS66へ進む。
ステップS66では、第1の上限車速Vmaxと第2の上限車速Vmaxeとを比較し、第1の上限車速Vmaxが第2の上限車速Vmaxeを超えている場合には、ステップS67へ進み、第1の上限車速Vmaxの値を第2の上限車速Vmaxeに置き換えた後、上限車速補正処理を終了して図19のステップS27へ進む。このように、第1の上限車速Vmaxの値を第2の上限車速Vmaxeに置き換えることにより、実質的に第2の上限車速Vmaxeが報知用の上限車速となる。
一方、第1の上限車速Vmaxが第2の上限車速Vmaxeを超えていない(第1の上限車速Vmaxが第2の上限車速Vmaxe以下である)場合には、第1の上限車速Vmaxの値を第2の上限車速Vmaxeに置き換えずに、上限車速補正処理を終了して図19のステップS27へ進む。この場合、第1の上限車速Vmaxが報知用の上限車速となる。
ステップS27では、ステップS33,ステップS34で設定した警報レベルコードWL、ステップS23で読み込んだ走行車線ID(Lidd)、ステップS36で算出した道のりDst、ステップS37で取得した車線数Ln、報知用の上限車速(ステップS66,ステップS67の後の第1の上限車速Vmax)を、緯度経度情報(位置情報Nd,Ed)に対応付けて上限車速データファイル36に追加して記録し、ステップS28へ進む。
ステップS28では、路面情報データベースファイル35のデータセットの最後(末尾)まで処理が達したか、すなわち、路面情報データベースファイル35に記録されたデータセットのうち、緯度経度情報が所定範囲内であるデータセットの全てに対して上限車速を算出して上限車速データファイル36に記録したかを判断する。
路面情報データベースファイル35のデータセットの末尾まで処理が達している場合には、ステップS30に進んで上限車速算出フラグをOFFし、ステップS1に戻る。
一方、路面情報データベースファイル35のデータセットの末尾まで処理が達していない場合には、ステップS29に進んでn=n+1にセットし、ステップS21に戻って上限車速算出記録処理を繰り返す。
図14のメインルーチン処理のステップS4において、タイマの値Tが所定時間tmaxに達している場合には、ステップS6以降の処理に進む。
ステップS6以降の処理では、上限車速データファイル36のデータセットを全てバッファメモリ33上に読み出す(ステップS6)。
次に、ステップS7へ進み、図21に示す情報提示処理を実行する。
情報提示処理では、バッファメモリ33上の上限車速データと対応する緯度経度情報と警報レベル情報とに基づき、ナビゲーション装置40の表示画面45の地図画像49の中に、緯度経度情報に対応する位置(走行に注意を要する路面の位置)を特定する特定表示47を表示するとともに、この特定した位置の近傍に上限車速の数値48を表示し(ステップS70)、ステップS71へ進む。上限車速の数値48の表示色やフォントの大きさは、警報レベルコードに応じて変更される。
ステップS70では、ステップS6でバッファメモリ33上に読み出したデータセットの中に、道のりDstが設定値(所定距離)以下のデータセットがあるか否かを判定する。
道のりDstが設定値以下のデータセットがある場合には、ステップS72へ進む。ステップS72では、道のりDstが設定値以下のデータセットの道のりDst、車線数Ln、走行車線ID(Lidd)、及び現在の走行車線ID(Lidc)に基づいて、自車両と報知対象路面と車線との位置関係及び報知対象路面(データセット地点)までの道のり(距離)を、CGによる報知画像55(図22)によって表示画面45に表示し、図14のステップS8へ進む。
道のりDstが設定値以下のデータセットがない場合には、ステップS73へ進み、車線位置関係を示すCG(報知画像55)を表示せずに、図14のステップS8へ進む。
ステップS8以降の処理では、上限車速データファイル36のデータセットを全てクリアし(ステップS8)、n=1にセットし、上限車速算出フラグをONし、T=0にセットして(ステップS9)、ステップS1に戻る。
このように、本実施形態によれば、車両の各車輪22,23に作用する上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えると、路面形状データ記録・検索部32は、GPS受信部11が受信した現在の緯度経度情報を報知対象の位置情報として路面情報データベースファイル35に記録するとともに、このときの車速と上下方向加速度と車両のバネ上質量とを用いて算出した路面形状係数と、このときの車速と横方向加速度とを用いて算出した旋回半径とを、報知対象の位置情報に対応付けて路面情報データベースファイル35に記録する。路面形状係数は、路面形状を特定する路面固有の係数であり、旋回半径は、車両が所定の走行経路に従って走行する際に各走行場所ごとに定まる値である。
路面情報データベースファイル35に記録された報知対象の位置情報から所定の範囲内に車両が進入すると、演算処理部31は、現在のホイールレートと報知対象の位置情報に対応する路面形状係数と所定加速度とバネ上質量とを用いて、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えないための第1の上限車速を演算する。また、演算処理部31は、報知対象の位置情報に対応する旋回半径に基づいて、報知対象の位置情報が特定する場所を車両が走行するときの予想ホイールレートを推定し、この予想ホイールレートと報知対象の位置情報に対応する路面形状係数と所定加速度とバネ上質量とを用いて、上下方向加速度が所定加速度を超えないための第2の上限車速を演算する。そして、第1の上限車速と第2の上限車速とを比較し、速度の低い方の上限車速を報知用として選択する。
上限車速表示装置17やナビゲーション装置40は、報知用として選択された上限車速を車室内の運転者に報知する。従って、車両の運転者は、上下方向加速度が所定加速度を超える可能性が高いため走行に注意を要する路面(報知対象路面)が存在することと、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えないようにするための上限車速とを、車両がその報知対象路面に達する前に知ることができ、上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えることに起因する乗り心地の低下や積荷の荷崩れや荷痛みなどを、未然に回避することができる。
また、報知対象路面の路面形状を特定する路面形状係数を、車速と上下方向加速度とバネ上質量とを用いて予め算出して記録しておき、その報知対象路面を走行する際に上下方向加速度が上下加速度ピーク値を超えないようにするための上限車速を、報知対象路面の路面形状係数と上下加速度ピーク値とバネ上質量とを用いて算出しているので、実際の車両の状態に則した的確な上限車速を運転者に対して報知することができる。
さらに、路面形状係数及び上限車速を、上記に加えて車両間で異なるタイヤサスペンションのホイールレート(現在のホイールレート又は予想ホイールレート)と減衰係数を用いて算出しているので、一段と的確な上限車速を運転者に対して報知することができる。
また、現在のホイールレートに基づく第1の上限車速と、報知対象位置での車両の旋回半径から推測された予想ホイールレートに基づく第2の上限車速とを演算し、これら上限車速のうち速度の低い低い方を乗員に報知するので、非線形性の強いサスペンションが搭載された商用車のようにホイールレートが直進状態と旋回状態とで大きく相違する場合であっても、乗員は、車両の旋回状態が考慮された的確な上限車速を知ることができる。
また、車高センサ14が取得した車高変位に基づき演算処理部31がバネ上質量を算出しているので、走行の途中に積荷の増減が頻繁に発生して車両の重量が変動する場合であっても、乗員による煩雑な設定入力を伴うことなく、運転者は的確な上限車速を知ることができる。
また、路面形状係数は路面形状を特定する値であるため、そのデータを異なる車両間で共有して使用することができる。例えば、複数の車両間において路面情報データベースファイル35を共有化することにより、未走行の報知対象路面の緯度経度情報及び路面形状係数を利用することができる。
さらに、ナビゲーション装置40の表示画面45に表示した地図画像49の中に、報知対象路面の位置を特定する特定表示47を表示するとともに、この特定した位置の近傍に上限車速の数値48を表示することにより、運転者は、報知対象路面の位置と上限車速とを事前に認識することができる。
また、走行中の車線に報知対象路面が存在しない場合には、現在の走行車線ID(Lidc)と報知対象の走行車線ID(Lidd)とが一致しないので、警報レベル「1」の態様によって報知対象路面が報知される。反対に、走行中の車線に報知対象路面が存在する場合には、現在の走行車線ID(Lidc)と報知対象の走行車線ID(Lidd)とが一致するので、警報レベル「2」の態様によって報知対象路面が報知される。従って、運転者は、走行中の車線に報知対象路面が存在するか否かを報知態様によって判別することができ、報知対象路面に対処した運転操作的確に行うことができる。
また、報知対象路面の近傍の走行側の全車線のうち何れの車線に報知対象路面が存在するかを視認可能な報知画像55が表示されるので、運転者は、報知画像55を見ることによって走行中の車線に報知対象路面が存在するか否かを的確に判断することができる。
また、報知対象路面までの道のりが所定距離以下になったときに報知画像55が表示されるので、運転者は、報知画像55の表示のタイミングを基準として報知対象路面に対処した運転操作行うことができる。
なお、現在の走行車線ID(Lidc)と報知対象の走行車線ID(Lidd)とが一致するか否かを判定し、判定結果に応じて警報レベルコードのレベル値を設定する処理(ステップS32〜S34)は、省略可能である。この場合であっても、報知対象路面の近傍の走行側の全車線のうち何れの車線に報知対象路面が存在するかを視認可能な報知画像55が表示されるので、運転者は、走行中の車線に報知対象路面が存在するか否かを的確に判断することができる。
また、道のりDstが設定値以下であるか否かの判定処理(ステップS71)を省略し、報知が必要な報知対象画面が存在する場合には、常に報知画像55を表示する(ステップS72)ことも可能である。
また、報知画像は、報知対象路面の近傍の走行側の全車線のうち何れの車線に報知対象路面が存在するかを視認可能な画像であればよく、図22の報知画像55に限定されるものではない。