JP5760914B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用分散液、および有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用分散液、および有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)の陰極用分散液、および有機EL素子の陰極の製造方法に関する。
近年、有機EL素子は、発光効率や耐久性の向上などに伴い、様々な分野に利用され始めており、特に、照明器具やディスプレイの用途への応用展開が急速に進んでいる。
図1に、有機EL素子の断面構造の一例を示す。図1は、トップエミッション型の例である。図1のように、有機EL素子1は、基材20上に、有機分子からなる発光層30を、一対の陰極10と陽極40の間にサンドイッチした多層構造で構成され、通常、陽極40は封止剤50で封止される。有機EL素子1は、陰極10と陽極40に電界を印加することにより、発光層30に、陰極10から電子を、陽極40から正孔を注入して、発光層30で電子と正孔の再結合を起こさせ、この再結合エネルギーによって基底状態の有機分子を励起状態にする。この励起有機分子が再び基底状態に戻る際のエネルギーが光として放出される。
従来、陰極10には、電子注入性を向上させるために、仕事関数が4.0eV以下の低仕事関数のLi等の金属が用いられている。しかし、Li等の低仕事関数の金属は、電子注入性は高いものの、化学的に不安定であるという問題があるため、LiをAl等の安定な金属と合金化して化学的に安定化する方法、さらにLiとAlの合金上に、AlやMgの保護電極を形成する方法が検討されている(特許文献1)。
しかしながら、LiとAlの合金による陰極や、AlやMgの保護電極を用いる方法では、陰極や保護電極を作製するために、抵抗加熱蒸着や電子ビーム蒸着等の真空成膜法を使用している。この真空成膜法は、大型の真空成膜装置を維持・運転するため、多大なコストを必要とする。さらに、LiをAlと合金化しても化学的安定性が十分ではなく、より化学的に安定な陰極が求められている。
また、不安定な低仕事関数の金属を使用せず、仕事関数が低く、化学的に安定なカーボンナノチューブを含む層を、陰極と発光層の間に配置して、陰極にはAl、Au、Ag等を用い、低仕事関数と化学的安定性を実現する方法が検討されている(特許文献2)。
しかしながら、化学的に安定なカーボンナノチューブを含む層を、陰極と発光層の間に配置する方法でも、陰極を作製するために、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜法を使用している。加えて、化学的に安定なカーボンナノチューブを含む層は、電気泳動法で形成されており、量産性に優れているとはいえない。また、カーボンの仕事関数は4.4〜4.5eV程度であり、より仕事関数が低い陰極による有機EL素子の高輝度化も求められている。
陰極にカーボンナノファイバーを含む有機EL素子も検討されているが(特許文献3)、この陰極には、導電性を補うためのAlの金属電極層が真空成膜法(真空蒸着法)で形成されている。また、カーボンナノチューブを、発光層上に直接CVD法で形成しており、量産性に優れているとはいえない。
特開平5−121172号公報 特開2002−124387号公報 特開2002−305087号公報
本発明は、従来の上記問題および要求を解決したものであり、陰極に金属薄膜を形成するための真空成膜法を用いず、湿式塗工法によりランニングコストを大幅に改善し、さらに、高導電性で、仕事関数が低く、化学的に安定で、高密着性の陰極を製造することができる有機EL素子の陰極用分散液を提供することを目的とする。この陰極用分散液で製造された陰極は、有機EL素子の輝度を高くし、耐久性を向上させることが可能である。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決する有機EL素子の陰極用分散液、および有機EL素子の陰極の製造方法に関する。
(1)カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末とを含むことを特徴とする、有機EL素子の陰極用分散液。
(2)基材、陰極、発光層、および陽極をこの順に備える有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法であって、
基材上に、上記(1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法。
(3)基材、陽極、発光層、および陰極をこの順に備える有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法であって、
基材の陽極上に形成された発光層上に、上記(1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法。
(4)上記(2)または(3)記載の製造方法で製造された、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極。
(5)上記(4)記載の陰極を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明(1)によれば、化学的に安定で、仕事関数が低い有機EL素子の陰極を湿式塗工法で製造することができる。カーボンナノファイバーは、導電性が高く、電界を印加した時の電子放出能が高い。一方、酸化マグネシウムは、仕事関数が3.6eV程度と低い。カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末とを共存させることにより、導電性が高く、仕事関数の低い陰極を製造することができ、この陰極は、有機EL素子を高輝度にすることが可能である。また、カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末は、ともに化学的に安定であり、かつカーボンナノファイバーが、陰極の密着性を高くするので、有機EL素子の耐久性を向上させる。
本発明(2)によれば、トップエミッション型有機EL素子を高輝度かつ高耐久性にする陰極を、簡便に低コストで製造することができる。本発明(3)によれば、ボトムエミッション型有機EL素子を高輝度かつ高耐久性にする陰極を、簡便に低コストで製造することができる。また、本発明(4)によれば、高輝度で高耐久性の有機EL素子を容易に製造することができる。
トップエミッション型有機EL素子の断面構造の一例である。 ボトムエミッション型有機EL素子の断面構造の一例である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔有機EL素子の陰極用分散液〕
本発明の有機EL素子の陰極用分散液は、カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末とを含むことを特徴とする。
カーボンナノファイバーは、直径が1〜1000nmで、アスペクト比が5以上のものをいい、直径が1〜100nmで、アスペクト比が10〜1000であると好ましい。また、カーボンナノファイバーは、X線回折測定によるグラファイトの[002]面の面間隔が、0.35nm以下であると好ましい。上記直径とアスペクト比のカーボンナノファイバーは、溶媒中で均一に分散し易く、陰極形成後に相互に十分な接触点を形成することができる。X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の面間隔が上記範囲内であるカーボンナノファイバーは結晶性が高いため電気抵抗が小さく、高導電性の陰極を得ることができる。さらに、カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗値が1.0Ω・cm以下であると、良好な導電性を発揮することができる。
ここで、直径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた平均直径である(n=50)。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長さ/直径)を計算して求める(n=50)。X線回折測定は、CuKα線により行う。カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗値は、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、この測定値から算出する。
カーボンナノファイバーは、気相成長法で作製され、触媒が、Fe、Ni、Co、Mn、Cu、Mg、AlおよびCaの酸化物からなる群より選ばれる1種または2種以上の系であると、好ましい直径、アスペクト比、グラファイト層の[002]面の面間隔のカーボンナノファイバーを得られ易いので、好ましい。
なお、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーを用いると、本発明の効果をより発揮することができる。この一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、表面が親水性であるため分散性に優れ、かつ透明性も優れている。また、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、トルエン着色透過量を95%以上にすることができ、有機EL素子の耐久性を向上させることができる。ここで、トルエン着色透過量の測定は、JISK6218−4「ゴム用カーボンブラック−付随的特性−第4部:トルエン着色透過度の求め方」に準拠して行う。
酸化マグネシウム粉末は、平均粒径が0.1〜5μmであると好ましい。0.1μm未満では、分散液中で凝集し易く、酸化マグネシウム粉末のハンドリングが悪くなり易く、5μmを超えると、有機EL素子の陰極の微細構造を制御しにくくなる。ここで、平均粒径は、堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(型番:LA920)で測定する。また、酸化マグネシウム粉末の純度は、98質量%以上であると、有機EL素子の耐久性の観点から好ましい。
カーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーと酸化マグネシウム粉末の合計100質量部に対して、80〜95質量部であると、陰極の導電性および密着性の観点から好ましく、一方、酸化マグネシウム粉末は、カーボンナノファイバーと酸化マグネシウム粉末の合計100質量部に対して、20〜5質量部であると、陰極の仕事関数の観点から好ましい。
陰極用分散液は、カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末に加えて、溶媒を含有する。溶媒の種類は限定されず、例えば、水系、アルコール系、ケトン系、エステル系などの溶媒を用いることができる。分散性の観点から、溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール(IPA)、シクロヘキサノン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンが好ましい。
溶媒の含有量は、陰極用分散液:100質量部に対して、70〜99.99質量部であると、好ましい。この含有量が70質量部以上であれば、カーボンナノファイバーと酸化マグネシウム粉末を溶媒中に、十分に分散できる。一方、この含有量が99.99質量部以下であれば、陰極として十分な導電性が得られる。
陰極用分散液は、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、慣用の各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、粘度調整剤、消泡剤、硬化触媒、酸化防止剤等が挙げられる。
なお、陰極用分散液は、バインダー成分を含有させて、陰極用組成物として使用することができる。バインダー成分としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
バインダー成分の含有量は、陰極用組成物:100質量部に対して、5〜60質量部であると、陰極用組成物の塗工性、陰極の密着性の観点から、好ましい。
〔有機EL素子の陰極の製造方法(トップエミッション型)〕
本発明の有機EL素子の陰極の製造方法は、
基材、陰極、発光層、および陽極をこの順に備える有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法であって、
基材上に、上記陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥することを特徴とする。
図1に、トップエミッション型有機EL素子の断面構造の一例を示す。図1に示すように、有機EL素子1は、基材20上に陰極10、発光層30、および陽極40をこの順に備え、通常、陽極40上には、封止材50が形成される。陰極10は、発光層30と陽極40を形成する前に、基材20上に、陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥して製造される。
基材は、当業者に公知のものでよく、特に限定されない。基材としては、ガラス基板が挙げられる。
陰極用分散液は、上述の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、カーボンナノファイバー、酸化マグネシウム粉末等を分散させ、作製することができる。無論、通常の攪拌操作によって作製することもできる。なお、カーボンナノファイバーを混合する前に、カーボンナノファイバーの触媒を除去するため、および分散性を高めるために、カーボンナノファイバーを混合する前に、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸等で酸処理すると好ましい。
湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはダイコーティング法のいずれかであることが好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
ここでの塗布は、焼成後の陰極の厚さが、好ましくは0.1〜3.0μmとなるようにする。続いて、この陰極用塗膜を、好ましくは、50〜350℃の温度で、5〜60分間、乾燥する。このようにして陰極を製造する。
この後、有機EL素子を製造するためには、基材20上に形成した陰極10上に、発光層30、および陽極40をこの順に形成する。発光層30は、陽極40は、当業者に公知のものでよく、特に限定されない。例えば、発光層としては、ルブレン5重量%をドープしたトリス(8−キノリノラト)アルミニウムが、陽極としてはITOが挙げられる。
また、形成した陰極10上に、発光層30および陽極40を形成する方法は、特に限定されず、真空成膜法等の当業者に公知の方法でよいが、陽極40は、例えば、透光性バインダーと透明導電材料を含む組成物を用いて、湿式塗工法により成膜を行う方が好ましい。
〔有機EL素子の陰極の製造方法(ボトムエミッション型)〕
次の本発明の有機EL素子の陰極の製造方法は、
基材、陽極、発光層、および陰極をこの順に備える有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極の製造方法であって、
基材の陽極上に形成された発光層上に、上記陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥することを特徴とする。
図2に、ボトムエミッション型有機EL素子の断面構造の一例を示す。図2に示すように、有機EL素子2は、基材21上に陽極41、発光層31、陰極11が形成され、通常、陰極11上に封止材51が形成される。
基材、陽極、発光層は、上述のとおりで、基材21上に、陽極41と発光層31を形成する方法は、上述の陰極10上に、発光層30と陽極40を形成する方法と同様である。
基材の陽極41上に形成された発光層21上に、上記陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥する方法は、上述の基材20上に陰極用分散液を湿式塗工法により塗布した後、乾燥する方法と同様である。
上記の2種の製造方法で製造された陰極により、高輝度かつ高耐久性の有機EL素子を提供することができる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
《陰極用分散液の製造》
Co、Mg酸化物を触媒にし、一酸化炭素を主な原料ガスとして気相成長法によって合成されたカーボンナノファイバー(以下、CNFという)を使用した。このCNF(平均直径:20nm)を、硝酸(濃度60%)と硫酸(濃度95%以上)の混合液に、CNF:硝酸:硫酸=1質量部:5質量部:15質量部の割合で混合し、加熱して表面酸化処理を行った。得られた溶液を濾過し、5回水洗を行って残留する酸を洗い流した。その後、乾燥して粉末化した。
使用したCNFのアスペクト比は、10〜1000であり、X線回折測定によるグラファイトの[002]面の面間隔は、0.339〜0.344nmであり、圧密体の体積抵抗率は、0.05〜0.08Ω・cmであった。また、一酸化炭素を原料とする場合のトルエン着色透過率は、98〜99%であった。CNFの平均直径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた(n=50)。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長さ/直径)を計算して求めた(n=50)。X線回折測定は、CuKα線により行った。CNFの圧密体の体積抵抗値は、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、この測定値から算出した。トルエン着色透過量の測定は、JISK6218−4「ゴム用カーボンブラック−付随的特性−第4部:トルエン着色透過度の求め方」に準拠して行った。
上記の粉末化したCNF:4.75g(95質量部)と、平均粒径0.3μmの酸化マグネシウム粉末:0.25g(5質量部)と、エタノール:95g(1900質量部)を、ペイントシェーカーを用いて混合し、陰極用分散液を製造した。
《トップエミッション型有機EL素子での評価》
ガラス基板に、陰極用分散液を、スピンコートにより1000rpm×60秒で数回成膜を行い、その後、200℃で30分間乾燥を行うことで、膜厚が約300nmの陰極を形成した。ここで、膜厚の測定は、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(SEM、装置名:S−4300、SU−8000)による断面観察により測定した。他の実施例、比較例においても、膜厚を同様に測定した。
その上に電子輸送層(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、厚さ:30nm)、発光層(ルブレン5重量%をドープしたトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、厚さ:30nm)、正孔輸送層(N,N’−ジフェニルーN,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン、厚さ:30nm)を順次形成した後、さらにITOインクを塗布し、175℃で30分焼成して陽極(厚さ:150nm)を形成し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子の輝度、耐久性について評価を行った。輝度は、輝度計(トプコン社製、型番:BM−9)で測定した。耐久性は、輝度が500cd/cm以下になるまでの時間を測定した。表1に、結果を示す。
〔実施例2〜17〕
表1に記載した組成になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、陰極用分散液を製造し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表1に、結果を示す。なお、実施例13で使用したCを原料とするCNFのトルエン着色透過率は、93%であった。
〔比較例1〕
酸化マグネシウム粉末を添加しない陰極用分散液を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、陰極用分散液を形成し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表1に、結果を示す。
〔比較例2〕
CNFを添加しない陰極用分散液を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、陰極用分散液を形成し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表1に、結果を示す。
〔比較例3〕
スパッタ法で作製したAlLi膜(Li:0.024質量%、残部はAl)を陰極として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表1に、結果を示す。
表1からわかるように、実施例1〜17の全てで、MgO添加により陰極の仕事関数が低くなったため、有機EL素子の輝度が、MgOを含有しない比較例1よりも高くなり、かつCNFにより陰極の密着性が高くなったため、有機EL素子の耐久性は、スパッタ法で陰極を作製した比較例3を上回った。これに対して、CNFなしのMgOのみによる陰極を作製した比較例2は、導電性が悪いため、有機EL素子の初期の輝度が低く、耐久性試験を行わなかった。
〔実施例18〕
実施例1と同様にして、陰極用分散液を製造した。
《ボトムエミッション型有機EL素子での評価》
ガラス基板に、ITOインクを塗布し、175℃で30分焼成して陽極(厚さ:150nm)を形成した。その上に正孔輸送層(N,N’−ジフェニルーN,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン、厚さ:30nm)、発光層(ルブレン5重量%をドープしたトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、厚さ:30nm)、電子輸送層(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、厚さ:30nm)を順次形成した後、陰極用分散液を、スピンコートにより1000rpm×60秒で数回成膜を行い、その後、180℃にて60分焼成を行うことで、膜厚が約300nmの陰極を形成し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子の輝度、耐久性を、実施例1と同様にして評価した。表2に、結果を示す。
〔実施例19〜20〕
表2に記載した組成になるようにしたこと以外は、実施例18と同様にして、陰極用分散液を製造し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表2に、結果を示す。
〔比較例4〕
酸化マグネシウム粉末を添加しない陰極用分散液を作製したこと以外は、実施例18と同様にして、陰極用分散液を形成し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表2に、結果を示す。
〔比較例5〕
CNFを添加しない陰極用分散液を作製したこと以外は、実施例18と同様にして、陰極用分散液を形成し、有機EL素子を作製し、有機EL素子の評価を行った。表2に、結果を示す。
表2からわかるように、実施例18〜20の全てで、MgO添加により陰極の仕事関数が低くなったため、有機EL素子の輝度が、MgOを含有しない比較例4よりも高くなり、かつCNFにより陰極の密着性が高くなったため、有機EL素子の耐久性が、十分高かった。これに対して、CNFなしのMgOのみによる陰極を作製した比較例5は、導電性が悪いため、有機EL素子の初期の輝度が低く、耐久性試験を行わなかった。
このように、本発明の有機EL素子の陰極用分散液は、高導電性で、仕事関数が低く、化学的に安定で、高密着性の陰極を製造することができるので、有機EL素子の輝度を高くし、耐久性を向上させることが可能である。
1、2 有機EL素子
10、11 陰極
20、21 基材
30、31 発光層
40、41 陽極
50、51 封止材

Claims (1)

  1. カーボンナノファイバーと、酸化マグネシウム粉末とを含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用分散液。
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