以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波に対する検討)
以下では、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定方法及び鋼材温度測定装置について説明するに先立ち、図1〜図7を参照しながら、本発明者らが行ったマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波に対する検討内容について詳細に説明する。
物体は、その温度に応じた波長及び強度を有する電磁波を放射していることが知られている。従って、物体から放射される電磁波を利用することで、着目している物体の温度を測定することが可能となる。このような放射測温技術における測定原理は、プランクの輻射法則に基づいており、以下の式1に示すように、黒体からの電磁波の放射量は温度と波長とに依存することを示した理論式が存在する。
ここで、上記式1において、
Bv:完全放射体の分光放射輝度[W・sr−1・m−3]
h:プランク定数[J・s]
ν:振動数[Hz]
c:光速[m/s]
k:ボルツマン定数[J/K]
T:温度[K]
である。
図1は、温度Tを100℃〜1000℃まで変化させた場合における分光放射輝度Bvの値を図示したグラフ図である。図1から明らかなように、可視光〜近赤外光帯域(波長1μm〜10μm程度の範囲)については強い輻射が存在するため、従来の放射測温技術では、可視光〜近赤外光帯域の光を用いて、温度の測定がなされている。
図1において斜線で示した領域に該当するマイクロ波帯域では、赤外光帯域に比べて10−10程度の分光放射輝度しか存在していない。また、式1に示したプランクの輻射式は、マイクロ波〜ミリ波帯域のような長波長帯域では、以下の式2で表されるような近似式(レイリー・ジーンズの式)が成立することが知られており、かかる波長帯域では、図2に示したように、分光放射輝度の大きさが温度に比例して増加する放射が発生する。ここで、下記式2において、λは、振動数ν[Hz]を有する電磁波の波長[m]を表している。
このようなマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波は、図3に示したように、アンテナで検波することで測定する。アンテナによって受信されるマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の強度Sは、アンテナの受信面積をAeとし、立体角をΩAとし、黒体放射源からの分光放射輝度をBvとすると、以下の式3のように表される。
上記式3からも明らかなように、検波される信号の強度は、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する電磁波の放射率(すなわち、分光放射輝度Bv)の変化に敏感であり、分光放射輝度がわずかに変化しても、観測される信号強度は大きく変化することとなる。
このように、従来放射測温技術で着目されている可視光〜近赤外光帯域の光に比べ、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する電磁波は、放射輝度が小さく、かつ、放射輝度の変化に敏感であるという特徴を有するため、上記特許文献1及び特許文献2で開示されているように、基準温度源との比較を行いながら、特定の測定環境下で温度測定に利用されてきた。
しかしながら、本発明者らは、以下で詳述するように、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する電磁波について鋭意検討を行った結果、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する放射電磁波が、ダスト、ミスト及び蒸気の存在下であっても、これらの要因に影響を受けづらいという知見を得ることができた。以下、本発明者らによって得られた新たな知見について、図4A〜図6を参照しながら、具体的に説明する。
[ダスト存在下における電磁波の透過率について]
図4Aに示したように、本発明者らは、幅700mmの容器内に、製鉄プロセス中で発生する各種ダスト(例えば、鉄粉、酸化鉄粉末、各種粉塵等)を、粉塵量を変えながら充填し、かかる容器を透過するマイクロ波の透過率を測定した。かかる測定では、22GHzのマイクロ波を発振可能な発振器と、マイクロ波を検波する受振ホーン及びパワーメータからなる検波装置とを、容器を挟んで1000mmの離隔距離で配置し、透過率を測定した。この測定に際し、粉塵量は、0(g/0.1m3)から35(g/0.1m3)まで変化させた。ここで、35(g/0.1m3)という粉塵量は、例えば転炉内において視界がゼロである等といった、製鉄所内の様々な環境の中でも劣悪な部類の状況を大きく超えた値である。
得られた測定結果を、図4Bに示した。図4Bにおいて、横軸は粉塵量であり、縦軸は、22GHzのマイクロ波の透過率である。図4Bから明らかなように、35(g/0.1m3)という粉塵量であっても透過率の低下は2%程度となった。かかる結果は、鋼材の製造プロセスにおける通常の粉塵量では透過率の低下は1%程度であることを考えると、マイクロ波はダスト存在下であってもダストの影響を受けづらいことを示している。他方、従来用いられているような可視光〜近赤外光帯域に属する光は、ダストが存在する場合には、かかるダストによって散乱されてしまうため、透過率の低下は、マイクロ波における2%よりもはるかに大きな値となる。
また、図4A及び図4Bに示した例では、22GHzのマイクロ波を例にとって検証を行ったが、他の周波数のマイクロ波やミリ波であっても、同様の結果を得ることができた。
[ミスト存在下における電磁波の強度について]
次に、図5A及び図5Bを参照しながら、ミスト存在下におけるマイクロ波の受信強度の変化について、具体的に説明する。本発明者らは、図5Aに示したようなマイクロ波測定機器を利用し、マイクロ波の伝播経路上に鋼材の製造工程で用いられるミスト供給ノズルを設けて、ミスト噴射の有無とマイクロ波の受信強度との関係について検討を行った。
より詳細にマイクロ波の測定方法を説明すると、以下の通りである。
マイクロ波の放射源は、300℃程度に加熱した寸法150mm×100mm×50mmtの普通鋼(普通鋼の表面には、既にスケールが成長している。)である。かかる鋼材の表面に対向するように、70GHz帯ヘテロダイン方式のマイクロ波受信器を設置した。また、マイクロ波受信器を配置した側の面と反対側の鋼材表面には、鋼材温度が一定になるように、加熱機を配置した。また、鋼材及びマイクロ波受信器の上方にミスト供給ノズルを設置した。以上のような測定環境下において、鋼材から放射されるマイクロ波放射をマイクロ波受信器で受信しながら、ミスト噴射をオン/オフしたときの信号変化を観測した。
図5Bは、ミスト噴射の有無とマイクロ波の受信強度との関係を示したグラフ図である。図5Bに示したグラフ図において、横軸は、測定の際の経過時間であり、縦軸は、検波したマイクロ波の受信強度(mV)である。図5Bに示したグラフ図において、150秒〜250秒の間、ミスト供給ノズルから伝播経路上にミストを噴射し続けた。
得られた結果から明らかなように、ミスト噴射期間とミスト未噴射期間とでは、マイクロ波の受信強度に変化は見られない。かかる結果は、マイクロ波はミスト存在下であってもミストの影響を受けないことを示している。他方、従来用いられているような可視光〜近赤外光帯域に属する光は、ミストが存在する場合、かかるミストによって散乱されてしまい、ミストが存在することによって大きく影響を受けることとなる。
[蒸気存在下における電磁波の強度について]
次に、図6を参照しながら、蒸気存在下におけるマイクロ波の受信強度の変化について、具体的に説明する。本発明者らは、熱電対を埋め込んだ同一種類の普通鋼(300mm×300mm×50mm)2つを加熱炉内で1000℃まで加熱したのち、大気中に取り出して自然放冷しながら70GHzのマイクロ波放射強度を検波した。
ここで、一方の普通鋼(以下、便宜的に鋼材Aと称する。)については、蒸気が存在しない条件下で放冷及び測定を実施した。また、もう一方の普通鋼(以下、便宜的に鋼材Bと称する。)については、熱電対の温度が750〜700℃の範囲では、鋼材Bが多量の蒸気中に存在するようにし、熱電対の温度が700〜650℃の範囲では、鋼材Bが少量の蒸気中に存在するようにした。その上で、(鋼材Bのマイクロ波放射強度/鋼材Aのマイクロ波放射強度)で表される信号強度比を算出し、算出結果を熱電対による測定温度に対してプロットした。
得られた結果を図6に示す。図6の横軸が熱電対による測定温度を表しており、縦軸が算出した信号強度比を表している。
図6から明らかなように、蒸気の有無に関わらず信号強度比は1.00近傍の値で推移しており、マイクロ波は蒸気存在下であっても蒸気による影響を受けないことを示している。
以上、図4A〜図6に示した結果より、マイクロ波帯域の電磁波は、ダスト、ミスト、蒸気が存在している状況下であっても、これらの要因に影響を受けづらいということが明らかとなった。また、ミリ波帯域の電磁波についても、マイクロ波帯域の電磁波と同様の知見を得ることができた。
これらの知見は、本発明者らによる検討の結果初めて明らかとなった知見である。本発明者らは、このような知見をもとに、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を、ダスト、ミスト、蒸気が存在する状況下での鋼材の表面温度測定に適用することに想到した。
(鋼材表面の酸化状態と放射されるマイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波との関係)
続いて、本発明者らは、温度測定対象である鋼材と、かかる鋼材から放射されるマイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波との関係について、検討を行った。以下では、その検討結果について、具体的に説明を行う。
温度測定対象である鋼材は、スラブ等の塊状物が圧延されることで成形されるものである。かかる成形過程において表面は大気中で自然酸化されており、途中過程において鋼材表面のデスケーリング(剥離)処理が実施される。このように、鋼材の製造プロセスにおいて、その表面状態は大きく変化するものである。
そこで、本発明者らは、酸化膜が存在しない状態の鋼材を無酸化炉で加熱した後に大気中に取り出して自然放冷させて、酸化膜の成長状態とマイクロ波〜ミリ波放射との相関について、測定を行った。その結果、以下で詳述するように、鋼材は、酸化膜が表面に形成されていない地鉄状態では放射輝度が非常に低いものの、酸化膜の成長過程で発生したファイアライト(2FeO−SiO2)によって過渡的に放射輝度が上昇し、酸化膜(マグネタイト:Fe3O4)厚が所定厚み以上になると、安定した放射輝度を有することが明らかとなった。
図7は、熱電対を埋め込んだ普通鋼(200mm×200mm×10mm)を、酸化膜が成長しないようにN2雰囲気中で950℃まで加熱した後、大気中に取り出して自然放冷しながら70GHzのマイクロ波放射強度を測定した結果である。また、同一条件で加熱した普通鋼を、水を用いてクエンチして酸化膜の成長を停止させ、広角X線回折法及び断面検鏡で表面の酸化膜状態を実測した結果(すなわち、マグネタイト層の厚み)を併記している。
図7から明らかなように、無酸化炉から鋼材を取りだした状態では、放射輝度の値は小さな値となっているが(図中の領域(1)に対応)、放射輝度はその後急激に上昇し、ある段階で放射輝度は低下していく(図中の領域(2)に対応)。放射輝度がある程度低下すると、その後は、放射輝度は一定の割合で減少していく(図中の領域(3)に対応)という挙動を示す。
各領域に該当している鋼材を広角X線回折法により分析を行った結果、領域(2)において放射輝度が急激に上昇している部分では、地鉄表面にファイアライト層が成長している状態であり、領域(2)において放射輝度が低下している部分は、ファイアライト層上にマグネタイト層が成長し始めた状態であり、領域(3)に該当する部分は、マグネタイト層が成長している状態に対応することが明らかとなった。
また、各領域におけるマグネタイト層の層厚を断面検鏡により測定した結果、領域(3)に該当する放射輝度の大きさが温度と線形関係にある領域は、マグネタイト層が約5μm以上に成長した状態に対応していることが明らかとなった。
ここで、鋼材の地鉄上にまずファイアライト層が成長し、その後マグネタイト層が成長していくという表面酸化過程は、製造された鋼材が大気中で自然放冷されることにより、一般的に生じている過程である。
また、鋼材表面に成長していくマグネタイト層は、一定の成長速度で成長していくわけではなく、時間の経過とともに成長速度は低下していくと考えられる。しかしながら、図7に示した測定結果から明らかなように、マグネタイト層の厚みが約5μm以上となる領域(3)では、マグネタイト層の成長速度によらず、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさと温度とが線形関係となっている。
放射輝度の大きさと温度とが線形関係にない領域(すなわち、領域(1)及び領域(2)に対応する領域)では、ある放射輝度の値に対応するグラフ上の横軸が、測定結果を表す曲線と複数の点で交差してしまうため、放射輝度の値から一意的に温度を特定することができない。しかしながら、放射輝度の大きさが温度と線形関係にある領域(すなわち、領域(3)に対応する領域)では、ある放射輝度の値に対応するグラフ上の横軸は、測定結果を表す曲線と1点で交差するため、放射輝度の値から一意的に温度を特定することが可能となる。
以上説明したような知見から、本発明者らは、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する電磁波の放射輝度が温度と線形関係となる範囲のマグネタイト層(具体的には、厚み約5μm以上のマグネタイト層)が鋼材表面に成長していれば、マイクロ波〜ミリ波帯域に属する電磁波の検波結果(すなわち、電磁波の受信強度)から鋼材の表面温度を測定可能であることに想到した。
本発明者らは、以上説明したような各種の知見を利用することで、鋼材から放射されるマイクロ波〜ミリ波の電磁波を検波し、検波した電磁波の強度を利用して鋼材の表面温度を一意的に特定可能であることに想到し、以下で説明するような、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定装置及び鋼材温度測定方法に想到した。
(第1の実施形態)
<鋼材温度測定装置の構成について>
続いて、図8を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る鋼材温度測定装置の構成について、詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る鋼材温度測定装置の構成を示した説明図である。
本実施形態に係る鋼材温度測定装置10は、測定対象物である鋼材から放射される放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波して、検波したマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の大きさから、鋼材の表面温度を特定する装置である。
そのため、測定対象物である鋼材を測定する際には、鋼材の表面に、放射電磁波の大きさが温度と線形関係となる範囲に対応する厚み(例えば、5μm以上の厚み)を有するマグネタイト層が形成されているようにする。
所定厚み以上のマグネタイト層が鋼材表面に形成されているか否かについては、本実施形態に係る鋼材温度測定装置10による測定に先立って、各種の表面状態解析を実施することで判断することも可能であり、過去の操業データ等を利用して、大気中に取り出してからx秒後であれば所定厚み以上のマグネタイト層が形成されているという知見を抽出し、所定厚みのマグネタイト層が形成されるために要する時間を特定することで判断するようにしてもよい。
ここで、上記表面状態解析機能は、本実施形態に係る鋼材温度測定装置10に実装されていてもよく、鋼材温度測定装置10と相互に通信可能な他の機器に実装されていてもよい。また、所定厚みのマグネタイト層が形成されるために要する時間が経過したか否かを判断する機能は、本実施形態に係る鋼材温度測定装置10に実装されていてもよく、鋼材温度測定装置10と相互に通信可能な他の機器に実装されていてもよい。
なお、上述の例はあくまでも一例であって、上記以外の方法を利用して、所定厚み以上のマグネタイト層が表面に形成されているか否かを判断してもよい。
本実施形態に係る鋼材温度測定装置10は、図8に例示したように、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさが鋼材の表面温度と線形関係となる状態に対応する厚み以上(例えば5μm以上)のマグネタイト層が成長した鋼材から放射される放射波を検波する放射波検波装置100と、放射波検波装置100による検波結果を利用して鋼材の表面温度を算出する演算処理装置200と、を主に備える。
放射波検波装置100は、鋼材から放射される放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波する装置である。放射波検波装置100は、鋼材から放射されるマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を受信するアンテナと、アンテナからの出力信号に対して各種の処理を実施する装置群と、を有するものである。放射波検波装置100が、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波する方式は、着目する電磁波の波長又は周波数に応じて適宜選択すればよいが、例えば、直接検波方式やヘテロダイン方式等を利用することが可能である。放射波検波装置100は、鋼材から放射された放射波に含まれるマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の検波結果を示した信号を、後述する演算処理装置200に出力する。
ここで、本実施形態に係る放射波検波装置100は、上記マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波として、1GHz〜200GHzの周波数を有する電磁波を検波することが好ましい。周波数が1GHz未満である電磁波を検波する場合には、放射波検波装置100に含まれるアンテナサイズが1m以上の大型装置となるとともに、放射波検波装置100の測定領域も大きくなってしまい、鋼材の製造プロセス内に設置することが困難となってしまう。また、周波数が200GHz超過である電磁波は、粒子サイズが数百μmであるダストや水滴による散乱の影響が大きくなるとともに、放射波検波装置100を構成する部品のコストも増加することとなり、好ましくない。
以下、図9を参照しながら、周波数の上限値を200GHzとすることが好ましい理由について、具体的に説明する。図9は、鋼材の製造プロセスで発生する鉄粉のような導電体を含む粉塵を対象とした場合における、レイリー散乱理論式に基づく散乱強度の算出結果を示したグラフ図である。図9において、横軸は電磁波の波長であり、波長1.5mmが周波数200GHzに相当する。図9に示した3種類のプロットのいずれにおいても、粉塵の粒子径が一定であれば、高周波になるほど散乱性が増加しており、粒子径が大きくなるにつれて同一波長での散乱性が増加していることがわかる。
他方、鋼材の製造プロセスでは、粒子径が0.5mm程度までの粉塵が発生すると考えられ、図9に示した結果では、波長1.5mmよりも高周波では、散乱強度が著しく増大していることがわかる。従って、着目する電磁波の周波数の上限値を200GHz程度とすることで、電磁波の透過性を損なうことなく、測定領域又はアンテナサイズを小さくすることが可能となる。
なお、本実施形態に係る放射波検波装置100の具体例については、以下で改めて詳細に説明する。
演算処理装置200は、放射波検波装置100から出力された検波結果を示した信号を利用し、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさと鋼材の表面温度との相関関係を示した相関関係データに基づいて、測定対象物である鋼材の温度を算出する。
ここで、本実施形態に係る演算処理装置200の具体的な構成については、以下で改めて詳細に説明する。
なお、図1の記載では、放射波検波装置100と演算処理装置200とが異なる装置として実現されているように記載しているが、放射波検波装置100と演算処理装置200とは一体に形成されていてもよい。すなわち、放射波検波装置100が演算処理装置200により実現される機能を有していてもよく、演算処理装置200に放射波を検波する装置が実装されていてもよい。
また、放射波検波装置100と演算処理装置200とは、所定のケーブル等を利用して直接接続されていてもよく、インターネットやローカルネットワーク等の各種ネットワークを介して有線通信又は無線通信により接続されていてもよい。
[放射波検波装置の構成について]
続いて、図10A及び図10Bを参照しながら、本実施形態に係る放射波検波装置100の具体例について説明する。図10Aは、直接検波方式を利用した放射波検波装置100の構成を示した説明図であり、図10Bは、ヘテロダイン方式を利用した放射波検波装置100の構成を示した説明図である。
○直接検波方式を利用した放射波検波装置
まず、図10Aを参照しながら、直接検波方式を利用した放射波検波装置100の構成例について説明する。
直接検波方式による放射波検波装置100は、アンテナ101、アイソレータ103、SPDTスイッチ105、基準温度源107、可変減衰器109、ドライバ111、RFアンプ113、フィルタ115、検波器117、アンプ119及びロックインアンプ121を主に備える。
アンテナ101は、測定対象物である鋼材から放射される放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を受信するものである。アンテナ101は、着目する電磁波を受信可能なように鋼材に対して設置され、好ましくは、測定対象物である鋼材と対向するように設置される。アンテナ101は、鋼材の測定エリアや検波したい電磁波の周波数に応じて設計すればよく、ホーン型やカセグレン型のものを利用することが可能である。アンテナ101によって検波されたマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波は、アイソレータ103へと出力される。
アイソレータ103は、アンテナ101により検波された電磁波に関する信号を後述するSPDTスイッチ105へと出力する一方で、放射波検波装置100内で発生した反射波はアンテナ101へと出力させないように機能する素子である。かかるアイソレータ103を、アンテナ101とSPDTスイッチ105との間に設けることで、アンテナ101に反射波というノイズが重畳することを防止することが可能となる。
SPDT(Single Pole Double Throw:単極双投)スイッチ105は、スイッチング素子の一種であり、アンテナ101が受信した受信信号と、可変減衰器109を介して基準温度源107から出力されたノイズ信号とが入力される。かかるSPDTスイッチ105は、後述するドライバ111により、受信信号とノイズ信号のどちらを外部へ出力するかが制御される。
基準温度源107は、熱雑音の基準となるノイズ信号を出力するものであり、基準温度源107から出力された温度基準となるノイズ信号は、可変減衰器109へと出力される。可変減衰器109は、基準温度源107から出力されたノイズ信号を、受信信号と同レベルとなるように調整し、SPDTスイッチ105へと出力する。
ドライバ111は、SPDTスイッチ105から出力される信号の切り替えを行うデバイスである。ドライバ111は、アンテナ101が受信した受信信号を後述するRFアンプ113へと出力させるとともに、可変減衰器109から出力されたノイズ信号を、後述するロックインアンプ121に参照信号(Ref)として出力する。SPDTスイッチ105のスイッチング周波数は、着目するマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の周波数に応じて適宜設定すればよいが、例えば40Hz程度と設定することができる。
RFアンプ(高周波アンプ)113は、SPDTスイッチ105から出力された受信信号を増幅させる。RFアンプ113により増幅された受信信号は、フィルタ115へと出力される。
フィルタ115は、RFアンプ113から出力された受信信号のうち、特定の周波数範囲の受信信号を透過させるデバイスである。フィルタ115によりフィルタリングされた受信信号は、検波器117へと出力される。
検波器117は、フィルタ115から出力された特定の周波数範囲の信号を電圧信号へと変換して、アンプ119へと出力する。アンプ119は、検波器117から出力された電圧信号を増幅して、ロックインアンプ121へと出力する。
ロックインアンプ121は、アンプ119から出力された電圧信号と、ドライバ111から出力された参照信号との差分を検出し、この差分に対応する信号を、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の検波結果を示す信号として演算処理装置200へと出力する。
以上説明したようなデバイスが連携して機能することにより、測定対象物である鋼材から放射された放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波が検波され、演算処理装置200へと出力されることとなる。
なお、図10Aに示したような直接検波方式を利用した放射波検波装置100は、着目する電磁波の周波数が40GHz未満の場合に用いることが好ましい。着目する電磁波の周波数が40GHz以上である場合には、以下で説明するヘテロダイン方式を利用した放射波検波装置100を用いることが好ましい。
○ヘテロダイン方式を利用した放射波検波装置
次に、図10Bを参照しながら、ヘテロダイン方式を利用した放射波検波装置100の構成例について説明する。
ヘテロダイン方式による放射波検波装置100は、アンテナ101、アイソレータ103、SPDTスイッチ105、基準温度源107、可変減衰器109、ドライバ111、検波器117、アンプ119、ロックインアンプ121、発振器151、可変減衰器153、ミキサ155、フィルタ157及びIFアンプ159を主に備える。
ここで、アンテナ101、アイソレータ103、基準温度源107、可変減衰器109、ドライバ111、アンプ119及びロックインアンプ121は、直接検波方式による放射波検波装置100における各デバイスと同様の機能を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
また、SPDTスイッチ105は、アンテナ101が受信した受信信号を、後述するミキサ155に出力する以外は、直接検波方式による放射波検波装置100のSPDTスイッチ105と同様の機能を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
発振器151は、SPDTスイッチ105から出力される受信信号をダウンコンバートするためのローカル信号を発振する機器である。ローカル信号の周波数は、着目する電磁波の周波数帯域に応じて、適宜設定すればよい。発振器151から出力されたローカル信号は、必要に応じて可変減衰器153で調整された後に、ミキサ155へと入力される。
ミキサ155は、SPDTスイッチ105から出力された受信信号と、発振器151から出力されたローカル信号とを混合することで受信信号をダウンコンバートし、フィルタ157へと出力する。
フィルタ157は、ミキサ155から出力された信号のうち、着目する電磁波の周波数帯域に該当する信号を透過させるデバイスである。フィルタ157によりフィルタリングされた信号は、IFアンプ159へと出力される。
IFアンプ(中間周波数アンプ)159は、フィルタ157から出力された信号のうち、受信信号とローカル信号との差周波に対応する信号を増幅させる。増幅された信号は、検波器117へと出力される。
検波器117は、IFアンプ159から出力された信号を電圧信号へと変換する以外は、直接検波方式による放射波測定装置100の検波器117と同様の機能を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
以上説明したようなヘテロダイン方式の放射波検波装置100を利用して、90GHz〜98GHzの周波数を有する電磁波を検波する場合を考える。かかる場合、フィルタ157が透過させる周波数の帯域は、90GHz〜98GHzと設定することができる。また、発振器151が発振するローカル周波数を100GHzと設定することで、中間周波数IFは、2GHz〜10GHzとなるため、IFアンプ159として、2GHz〜10GHz程度を帯域とするものを利用すればよい。
以上説明したようなデバイスが連携して機能することにより、測定対象物である鋼材から放射された放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波が検波され、演算処理装置200へと出力されることとなる。
以上、図10A及び図10Bを参照しながら、本実施形態に係る放射波検波装置100の具体例について説明した。
[演算処理装置の構成について]
続いて、図11を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200の構成について説明する。図11は、本実施形態に係る演算処理装置200の構成の一例を示したブロック図である。
図11に示したように、本実施形態に係る演算処理装置200は、データ取得部201と、温度算出部203と、算出温度出力部205と、表示制御部207と、記憶部209と、を備える。
データ取得部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。データ取得部201は、放射波検波装置100から出力された、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の検波結果を示したデータ(例えば、上記電磁波の受信電圧を示すデータなど)を取得する。その後、データ取得部201は、取得した電磁波の検波結果を示したデータ(以下、検波データとも称する。)を、後述する温度算出部203へと出力する。
また、データ取得部201は、取得した電磁波の検波結果を示したデータに、当該データを取得した日時等の時刻情報を関連付けて、履歴情報として後述する記憶部209に記録してもよい。
温度算出部203は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。温度算出部203は、データ取得部201から出力された検波データと、予め生成されたマイクロ波〜ミリ波帯域に属する放射電磁波の大きさと鋼材の表面温度との相関関係を示した相関関係情報と、を用いて、検波された電磁波の大きさから鋼材の表面温度を算出する。
ここで、温度算出部203が利用する相関関係情報は、鋼材に対する放射波検波装置100の配置条件を予め決定したうえで、決定した配置条件を保ちながら加熱された鋼材が冷却されていく際のマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波するとともに、鋼材の実温を、熱電対や可視光〜近赤外光を利用した放射温度計等の温度測定手段により測定する。これにより、測定した電磁波の大きさと、温度測定手段による実測温度との対応関係を特定することができる。温度算出部203は、得られた上記対応関係そのものを、相関関係情報として利用してもよく、得られた対応関係から生成した近似直線を、相関関係情報として利用してもよい。
なお、かかる相関関係情報を生成する際にも、着目する鋼材の表面に、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさが鋼材の表面温度と線形関係となる状態に対応する厚み以上のマグネタイト層が生成された後に、電磁波の検波を実施する。かかる相関関係情報は、測定対象となる鋼材の種別ごとに生成され、例えば後述する記憶部209の所定の格納領域に格納される。
以下では、図12を参照しながら、相関関係情報について具体的に説明する。
図12では、上述のようにして測定された、電磁波の大きさ(例えば、電磁波の受信電圧)と、放射温度計を用いて測定した鋼材の表面温度との相関関係を表した相関関係式が、後述する記憶部209に格納されているものとする。
ここで、相関関係式が図12に示したようにY=a・X+bの形で表されており、パラメータXが鋼材の表面温度に対応し、パラメータYがマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の大きさに対応するものとする。
温度算出部203は、データ取得部201から検波データが出力されると、検波データを参照して、検波された電磁波の大きさ(例えば、電磁波の受信電圧)の値(以下、Yobsと表記することとする。)を特定する。その後、温度算出部203は、記憶部209に格納されている相関関係情報である相関関係式を取得して、特定したYobsと相関関係式(Y=a・X+b)とを利用して、鋼材の表面温度Xcalcを算出する。このようにして算出された鋼材の表面温度Xcalcが、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波を検波した鋼材の表面温度に対応することとなる。
なお、上記説明では、検波された電磁波の大きさと、相関関係情報とを利用して、鋼材の表面温度を算出する場合について説明したが、式1に示したプランクの輻射式を利用して、鋼材の温度Tを算出することも可能である。すなわち、放射波検波装置100の設置条件(例えば、アンテナの受信面積や立体角等に関するデータ)と、検波された電磁波の大きさとを利用して、上記式3により分光放射輝度Bvを算出した後に、式1に示したプランクの輻射式を利用して、鋼材温度Tを算出することができる。
温度算出部203は、着目している鋼材の表面温度を算出すると、算出結果を示したデータを、後述する算出温度出力部205に出力する。また、温度算出部203は、算出結果を示したデータを、当該データを生成した日時等に関する時刻情報と関連付けて、履歴情報として記憶部209に格納してもよい。
算出温度出力部205は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。算出温度出力部205は、温度算出部203が算出した鋼材の表面温度を示したデータを、例えば後述する表示制御部207に出力する。また、算出温度出力部205は、インターネットやローカルエリアネットワーク等の各種ネットワークを介して、外部の装置に対して算出した鋼材の表面温度を示したデータを出力してもよい。また、算出温度出力部205は、算出した鋼材の表面温度を、プリンタ等を利用して印刷物として出力してもよい。
また、算出温度出力部205は、算出した鋼材の表面温度を示したデータに、当該データを算出した日時等に関する時刻情報を関連づけて、履歴情報として後述する記憶部209に記録してもよい。
表示制御部207は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部207は、算出温度出力部205から出力された鋼材の表面温度の算出結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、鋼材温度測定装置10の利用者は、鋼材の表面温度に関する測定結果を、その場で把握することが可能となる。
記憶部209は、演算処理装置200が備えるストレージ装置の一例である。記憶部209には、温度算出部203が鋼材の表面温度を算出する際に利用する各種の相関関係情報が格納されている。また、かかる記憶部209には、演算処理装置200が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録されている。この記憶部209は、データ取得部201、温度算出部203、算出温度出力部205、表示制御部207等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
以上、図8〜図12を参照しながら、本実施形態に係る鋼材温度測定装置10の構成について、詳細に説明した。本実施形態に係る鋼材温度測定装置10は、かかる構成を有することにより、ダスト、ミスト、蒸気の存在下であっても、鋼材の温度を連続的かつ非接触で測定することが可能となる。
<鋼材温度測定方法について>
続いて、図13を参照しながら、本実施形態に係る鋼材温度測定方法の流れの一例について説明する。図13は、本実施形態に係る鋼材温度測定方法の流れの一例を示した流れ図である。
まず、鋼材温度測定装置10の放射波検波装置100は、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさが鋼材の表面温度と線形関係となる状態のマグネタイト層(例えば、厚み5μm以上のマグネタイト層)が成長している鋼材から放射される放射波のうち、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波する(ステップS101)。その後、放射波検波装置100は、検出したマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の大きさを、当該電磁波の検波結果を示した検波データとして演算処理装置200に出力する(ステップS103)。
放射波検波装置100から検波データが出力されると、演算処理装置200のデータ取得部201は、放射波検波装置100から出力された検波データを取得して、温度算出部203に出力する。温度算出部203は、記憶部209等に予め格納されている、マイクロ波〜ミリ波帯域の放射電磁波の大きさと鋼材の表面温度との相関関係を示した相関関係情報を取得して、かかる相関関係情報と検波データに記載されている電磁波の大きさとから、測定対象物である鋼材の表面温度を算出する(ステップS105)。その後、温度算出部203は、算出した鋼材の表面温度を示したデータを、算出温度出力部205に出力する。
算出温度出力部205は、温度算出部203から出力された鋼材の表面温度を示したデータを利用して、測定対象物である鋼材の表面温度を出力する(ステップS107)。鋼材の表面温度の出力は、表示制御部207を介してディスプレイ等の表示画面に算出結果を表示するものであってもよく、演算処理装置200の外部に設けられた装置に算出結果を示すデータを出力するものであってもよく、プリンタ等により算出結果を印刷物として出力するものであってもよい。
以上説明したような流れで処理が行われることにより、本実施形態に係る鋼材温度測定方法では、高温である場合も含め鋼材の表面温度を連続的かつ非接触で測定することが可能となる。
(ハードウェア構成について)
次に、図14を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図14は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。演算処理装置200のユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以下では、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定装置及び鋼材温度測定方法について、具体的に説明する。なお、以下で提示する例は、あくまでも本発明の実施形態に係る鋼材温度測定装置及び鋼材温度測定方法の一具体例であって、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定装置及び鋼材温度測定方法が、以下で提示する例に限定されるわけではない。
(第1実施例)
<相関関係情報の生成>
普通鋼(200mm×200mm×10mm)を加熱し、図10Aに示した直接検波方式の放射波検波装置を利用してダスト、ミスト、蒸気の存在しない条件下で、普通鋼から放射されるマイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波を検波するとともに、可視光〜近赤外光の光を利用した放射温度計により、普通鋼の表面温度を測定した。なお、放射波検波装置が検波する電磁波の周波数は、35GHzとした。
得られた測定結果を、図15に示す。図15では、横軸に放射温度計の測定値をとり、縦軸に放射波検波装置が検波した電磁波の受信電圧をとっている。図15から明らかなように、放射温度計の測定値と、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の受信電圧とは、比例関係にあることがわかる。図15に示した測定結果の近似直線を最小二乗法により算出し、得られた近似直線の式を、相関関係式として利用した。
<製造された鋼材の温度測定>
上記普通鋼の製造プロセス上に、図10Aに示した直接検波方式の放射波検波装置を設置し、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定方法を利用して、製造された普通鋼の表面温度の推移を測定した。実際の測定では、5μm以上のマグネタイト層が成長するのに要する時間が経過した後に、マイクロ波〜ミリ波帯域の電磁波の検波を実施した。
得られた結果を、図16に示す。図16において、横軸は経過時間であり、縦軸は、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定方法により算出された鋼材の表面温度である。
図16から明らかなように、一般的に用いられる可視光〜近赤外光を利用した放射温度計では測定困難な状況下であっても、鋼材の表面温度を測定することができた。また、測定開始から8〜9分経過後に、鋼材の温度勾配がほぼ平坦となる箇所が存在するが、かかる箇所は、鋼材の相変態温度に対応しており、変態による発熱と自然冷却による温度降下がほぼ同じとなったことに起因するものである。
このように、本発明の実施形態に係る鋼材温度測定装置及び鋼材温度測定方法を用いることで、ダスト、ミスト、蒸気の存在下であっても鋼材の表面温度を測定することが可能であり、鋼材の冷却過程の温度を測定できることが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。