JP5751756B2 - 芳香族化合物分解能を有する光合成生物および芳香族化合物の分解方法 - Google Patents

芳香族化合物分解能を有する光合成生物および芳香族化合物の分解方法 Download PDF

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本発明は、芳香族化合物分解能を有する光合成生物、および前記光合成生物を用いた芳香族化合物の分解方法に関する。
ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」と略記する)は、ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物である。PCBは、熱安定性、耐薬品性および絶縁性に優れていることから、1970年代まで熱媒体や絶縁油などの様々な用途に使用されてきた。ところが、PCBには生体毒性および生物濃縮の問題があることが判明したため、現在はPCBの製造および使用は禁止されている。特に、分子の平面性が高いコプラナーPCBは、その他のPCBよりも毒性が高いことが知られており、ダイオキシン類に分類されている。
PCBは安定性が極めて高いため、製造および使用が禁止された現在においてもPCBを分解する処理方法の開発が求められている。現在までに、保管されているPCBについては、熱分解をはじめとする様々な物理的または化学的な処理方法が開発されている。一方、環境中(例えば、土壌中)に低濃度で広く残留しているPCBについては、これらの物理的または化学的な処理方法よりも、微生物を用いたバイオレメディエーション(生物的環境浄化)が有効であると考えられている。
アシドボラクス(シュードモナス) sp.(Acidovorax (Pseudomonas) sp.)KKS102株は、PCBのバイオレメディエーションへの応用が期待されているビフェニル化合物分解細菌である。このKKS102株は、ビフェニル化合物の分解酵素群を有する(例えば、非特許文献1〜4参照)。図1は、KKS102株が有するビフェニル化合物の分解酵素群を示す模式図である。図1Aに示されるように、ジオキシゲナーゼ複合体BphA1/A2によるビフェニル骨格への酸素添加反応(水酸化)をきっかけとして、PCB(ビフェニル化合物)は酸化的に分解される。図1Bに示されるように、BphA1/A2による酸素添加反応にはNADHからの電子の供給が不可欠であり、NADHの電子は、BphA4(フェレドキシン還元酵素)およびBphA3(フェレドキシン)を経由してBphA1/A2(ジオキシゲナーゼ複合体)に供給される。
Kimbara, K., Hashimoto, T., Fukuda, M., Koana, T., Takagi, M., Oishi, M. and Yano K., "Cloning and sequencing of two tandem genes involved in degradation of 2,3-dihydroxybiphenyl to benzoic acid in the polychlorinated biphenyl-degrading soil bacterium Pseudomonas sp. Strain KKS102", J. Bacteriol., Vol.171, p.2740-2747. Kikuchi, Y., Nagata Y., Hinata, M., Kimbara, K., Fukuda, M., Yano, K. and Takagi, M., "Identification of the bphA4 gene encoding ferredoxin reductase involved in biphenyl and polychlorinated biphenyl degradation in Pseudomonas sp. strain KKS102", J. Bacteriol., Vol.176, p.1689-1694. Kikuchi, Y., Yasukochi, Y., Nagata Y., Fukuda, M. and Takagi, M., "Nucleotide sequence and functional analysis of the meta-cleavage pathway involved in biphenyl and polychlorinated biphenyl degradation in Pseudomonas sp. Strain KKS102", J. Bacteriol., Vol.176, p.4269-4276. Fukuda, M., Yasukochi, Y., Kikuchi, Y., Nagata Y., Kimbara, K., Horiuchi, H., Takagi, M. and Yano, K., "Identification of the bphA and bphB genes of Pseudomonas sp. strains KKS102 involved in degradation of biphenyl and polychlorinated biphenyls", Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol.202, p.850-856.
しかしながら、上記従来のビフェニル化合物分解細菌には、貧栄養環境下におけるPCB分解能が低いという問題がある。
NADHは、主に解糖系やTCAサイクルなどにより生成されるため、従来のビフェニル化合物分解細菌は、貧栄養環境下ではNADHの産生量が少なく、NADHからの電子の供給が不可欠なBphA1/A2による酸素添加反応を十分に行うことができない。したがって、貧栄養環境下において、従来のビフェニル化合物分解細菌を用いてPCBを分解するためには、外部から糖などの有機化合物を供給しなければならなかった。このように、低濃度のPCBを分解するために有機化合物を供給しなければならないことは、コストなどの観点からバイオレメディエーションの実用化に向けて大きな問題である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、貧栄養環境下においてもPCBなどの芳香族化合物を分解することができる生物、およびその生物を用いた芳香族化合物の分解方法を提供することを目的とする。
本発明者は、NADPHおよび/またはNADHを利用しうる芳香族化合物変換酵素群の遺伝子をシアノバクテリアなどの光合成生物で発現させることで上記課題を解決しうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一は、以下の光合成生物に関する。
[1]NADPHまたはNADH由来の電子を利用して芳香族化合物を他の化合物に変換する芳香族化合物変換酵素群に含まれる1または2以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入されている光合成生物。
[2]前記ポリヌクレオチドは、前記芳香族化合物を基質とするオキシゲナーゼをコードする、[1]に記載の光合成生物。
[3]前記芳香族化合物は、ビフェニル化合物であり、前記芳香族化合物変換酵素群は、ビフェニル化合物変換酵素群である、[1]または[2]に記載の光合成生物。
[4]前記ポリヌクレオチドは、bph遺伝子群に含まれる1または2以上の遺伝子を有する、[3]に記載の光合成生物。
[5]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbph遺伝子群に含まれる1または2以上の遺伝子を有する、[4]に記載の光合成生物。
[6]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphA1、bphA2、bphA3およびbphA4からなる群から選択される1または2以上の遺伝子を有する、[5]に記載の光合成生物。
[7]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphA1、bphA2およびbphA3遺伝子を有する、[6]に記載の光合成生物。
[8]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphA1、bphA2、bphA3およびbphA4遺伝子を有する、[6]に記載の光合成生物。
[9]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphB、bphCおよびbphDからなる群から選択される1または2以上の遺伝子をさらに有する、[5]〜[8]のいずれかに記載の光合成生物。
[10]前記ポリヌクレオチドは、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphB、bphCおよびbphD遺伝子をさらに有する、[5]〜[8]のいずれかに記載の光合成生物。
[11]前記ポリヌクレオチドは、配列番号10のアミノ酸配列を有するBphA4変異体をコードする、[3]に記載の光合成生物。
[12]前記ポリヌクレオチドは、配列番号12のアミノ酸配列を有するBphA4変異体をコードする、[3]に記載の光合成生物。
[13]微生物である、[1]〜[12]のいずれかに記載の光合成生物。
[14]シアノバクテリアである、[1]〜[12]のいずれかに記載の光合成生物。
[15]前記シアノバクテリアは、シネコシスチス sp.PCC6803株である、[14]に記載の光合成生物。
[16]配列番号14のプラスミドを有する、[15]に記載の光合成生物。
[17]配列番号15のプラスミドを有する、[15]に記載の光合成生物。
[18]配列番号16のプラスミドを有する、[15]に記載の光合成生物。
[19]配列番号17のプラスミドを有する、[15]に記載の光合成生物。
[20]配列番号32のプラスミドを有する、[15]に記載の光合成生物。
また、本発明の第二は、以下の芳香族化合物の分解方法に関する。
[21][1]〜[20]のいずれかに記載の光合成生物を芳香族化合物に接触させて、前記芳香族化合物を他の化合物に変換させるステップを含む、芳香族化合物の分解方法。
本発明によれば、貧栄養環境下においてもPCBなどの芳香族化合物を分解することができる光合成生物を提供することができる。したがって、本発明によれば、貧栄養環境下におけるバイオレメディエーションを実現することができる。
従来のビフェニル化合物分解細菌が有するビフェニル化合物の分解酵素群を示す模式図 実施の形態1のシアノバクテリアを説明するための模式図 キメラ電子伝達系を説明するための模式図 実施の形態2のシアノバクテリアを説明するための模式図 実施の形態3のシアノバクテリアを説明するための模式図 実施の形態4のシアノバクテリアを説明するための模式図 プラスミドpCA12を構築する手順を示す模式図 プラスミドpUJK68−A123を構築する手順を示す模式図 プラスミドpVEA1234を構築する手順を示す模式図 プラスミドpKQ175K177を構築する手順を示す模式図 プラスミドpVEA1234QKを構築する手順を示す模式図 プラスミドpVEA123を構築する手順を示す模式図 ウェスタンブロットの結果を示す写真 bphA4遺伝子の転写量を示すグラフ ウェスタンブロットの結果を示す写真 各形質転換体の培養時間とビフェニルの残存量との関係を示すグラフ 水酸化ビフェニルの検出結果を示すグラフ 水酸化トルエンの検出結果を示すグラフ 水酸化ベンゼンの検出結果を示すグラフ プラスミドpCBBCDを構築する手順を示す模式図 プラスミドpCA3BCDを構築する手順を示す模式図 プラスミドpVEABCD6を構築する手順を示す模式図 PCC6803/pVEABCD6株の培養時間とビフェニルの残存量および安息香酸の蓄積量との関係を示すグラフ
1.本発明の光合成生物
本発明の光合成生物は、NADPHまたはNADH依存性の芳香族化合物変換酵素群に含まれる1または2以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを有することを特徴とする。ここで「NADPHまたはNADH依存性の芳香族化合物変換酵素群」とは、由来生物においてNADPHまたはNADH由来の電子を利用することが知られている芳香族化合物変換酵素群をいう。したがって、当該芳香族化合物変換酵素群には、NADPHまたはNADH由来の電子だけでなく、NADPHおよびNADHを経由せずに受け取った電子も利用できる酵素群も含まれる。
本発明の光合成生物は、光合成系由来の電子を利用して特定の芳香族化合物を他の化合物に変換することができる。ここで「光合成系由来の電子を利用」には、光合成を行って生成されたNADPHまたはNADH由来の電子を利用すること、および光合成により合成された糖の代謝により生成されたNADPHまたはNADH由来の電子を利用することだけでなく、NADPHおよびNADHを経由せずに光合成系由来の電子を利用すること(例えば、光合成系で還元されたフェレドキシンなどから電子を受け取ること)も含まれる。
また、本明細書において「NADPHまたはNADHを利用」には、NADPHまたはNADHの一方のみを利用することだけでなく、NADPHおよびNADHの両方を利用することも含まれる。同様に、「NADPHまたはNADH由来の電子を利用」には、NADPHまたはNADHの一方に由来する電子を利用することだけでなく、NADPHおよびNADHの両方に由来する電子を利用することも含まれる。
本発明の光合成生物は、NADPHおよび/またはNADH依存性の芳香族化合物変換酵素群に含まれる1または2以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主の光合成生物に導入することで作製されうる。
宿主となる光合成生物は、光合成を行って芳香族化合物変換酵素群が利用可能な電子を生成しうる生物であれば特に限定されない。ここで「光合成を行って芳香族化合物変換酵素群が利用可能な電子を生成すること」には、光合成を行ってNADPHおよび/またはNADHを生成することが含まれる。また、「光合成を行ってNADHを生成すること」には、光合成により糖を合成し、得られた糖を呼吸基質としてNADHを生成することが含まれる。宿主となりうる光合成生物の例には、シアノバクテリア、光合成細菌、藻類、植物が含まれる。宿主となる光合成生物は、取り扱いの容易さなどを考慮すると微生物が好ましく、シアノバクテリアが特に好ましい。シアノバクテリアの例には、シネコシスチス sp.(Synechocystis sp.)PCC6803株が含まれる。
芳香族化合物変換酵素群とは、光合成系由来の電子を利用して特定の芳香族化合物を他の化合物に変換する芳香族化合物変換系を構成する酵素群を意味する。芳香族化合物変換酵素群は、光合成により直接生成されたNADPH由来の電子を利用できるものであってもよいし、光合成により間接的に生成されたNADH由来の電子も利用できるものであってもよい。
芳香族化合物変換酵素群の種類は、光合成系由来の電子を利用でき、かつ宿主内で機能しうるものであれば特に限定されず、変換対象の芳香族化合物の種類や宿主の種類などに応じて適宜選択すればよい。
たとえば、PCBなどのビフェニル化合物を変換する場合は、アシドボラクス(シュードモナス) sp.(Acidovorax (Pseudomonas) sp.)KKS102株またはロドコッカス sp.(Rhodococcus sp.)RHA1株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)、BphA3(フェレドキシン)、BphA1およびBphA2(ジオキシゲナーゼ)、BphB(ジヒドロゲナーゼ)、BphC(環開裂ジオキシゲナーゼ)ならびにBphD(加水分解酵素)を含むビフェニル化合物変換酵素群を選択してもよい。後述するように、BphA4は、NADPHおよび/またはNADHから電子を受け取り、他のタンパク質(BphA3などのフェレドキシン)に電子を供与することができる(実施の形態1,3参照)。一方、BphA3は、BphA4とは異なるルートでも電子を供給されうる。したがって、KKS102株またはRHA1株由来のビフェニル化合物変換酵素群を利用する場合であっても、BphA4は必須ではない(実施の形態2,4参照)。また、BphA3、BphA1およびBphA2のみでもビフェニル化合物を変換することは可能であるが、さらにBphB、BphCおよびBphDも導入することでビフェニル化合物をより害の少ない安息香酸と脂肪酸の中間体にまで変換(分解)することができる(実施の形態3,4参照)。
また、ベンゼンを変換する場合は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)ML2株(NCIB 12190株)由来のBedC1(フェレドキシン還元酵素)、BedC2(フェレドキシン)ならびにBedBおよびBedA(ジオキシゲナーゼ)を含むベンゼン変換酵素群を選択してもよい。トルエンを変換する場合は、シュードモナス・プチダF1株由来のTodC1(フェレドキシン還元酵素)、TodC2(フェレドキシン)およびTodBおよびTodA(ジオキシゲナーゼ)を含むトルエン変換酵素群を選択してもよい。なお、本発明者らの実験によれば、前述のビフェニル化合物変換酵素群(BphA3、BphA1およびBphA2)を選択しても、ベンゼンおよびトルエンを変換することができる。ダイオキシンを変換する場合は、ヒトまたはラット由来のhCRP(P450還元酵素)およびP450 1A1(薬物代謝酵素)を含むダイオキシン変換酵素群などを選択してもよい。
芳香族化合物変換酵素群に含まれるタンパク質(酵素)は、野生型のものであってもよいし、変異体であってもよい。後述するように、NADH依存性の芳香族化合物変換酵素群を光合成生物に導入する場合は、NADHから電子を受け取る酵素の代わりに、NADPHから電子を受け取れるように改変された変異体を導入することが好ましい。
宿主に複数の遺伝子を導入する場合、各遺伝子は同一の酵素群に属していてもよいが、一つの電子伝達系を構成できるのであれば異なる酵素群に属していてもよい。たとえば、ベンゼン分解能を有する光合成生物を作製する場合、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbphA4遺伝子と、シュードモナス・プチダML2株由来のbedC2遺伝子、bedB遺伝子およびbedA遺伝子とを導入してもよい(後述)。
これらの遺伝子を宿主に導入する方法(形質転換方法)は、特に限定されず、公知の方法から宿主の種類に応じて適宜選択すればよい。たとえば、所望の遺伝子(例えば、bphA4)の上流に高発現型のプロモーターを配置したDNA断片を、宿主内で複製可能なベクターに組み込み、このベクターを用いて宿主を形質転換すればよい。また、相同組み換えにより遺伝子を導入してもよい。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る光合成生物(ビフェニル化合物分解シアノバクテリア)を説明するための模式図である。この例では、宿主はシアノバクテリア(例えば、シネコシスチス sp.PCC6803株)であり、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbph遺伝子群に含まれるbphA1遺伝子(配列番号1)、bphA2遺伝子(配列番号3)、bphA3遺伝子(配列番号5)およびbphA4遺伝子(配列番号7)が導入されている。
実施の形態1のシアノバクテリアは、ビフェニル化合物変換酵素群に含まれる4種類の酵素、すなわちBphA1(ジオキシゲナーゼ;配列番号2)、BphA2(ジオキシゲナーゼ;配列番号4)、BphA3(フェレドキシン;配列番号6)およびBphA4(フェレドキシン還元酵素;配列番号8)を発現しており、BphA1/A2によるビフェニル骨格への酸素添加反応(水酸化)によりPCB(ビフェニル化合物)をジヒドロジオールに変換する。前述の通り、BphA1/A2による酸素添加反応には、電子の供給が不可欠であるが、実施の形態1のシアノバクテリアでは、NADH由来の電子ではなく、NADPH由来の電子が供給される。すなわち、光合成により得られたNADPH由来の電子は、BphA4およびBphA3を経由してBphA1/A2に供給される。
BphA4は、通常はNADHから電子を受け取るが(図1参照)、NADPHからも電子を受け取ることができる(実施例参照)。したがって、野生型BphA4(配列番号8)を発現させても、図2に示すビフェニル化合物変換系は機能するが、より効率的にビフェニル化合物を変換するためには、野生型BphA4の代わりにBphA4変異体を発現させることが好ましい。NADPHへの特異性が高いBphA4変異体の例には、配列番号10または配列番号12のアミノ酸配列を有するものが含まれる。
BphA1(配列番号2)、BphA2(配列番号4)、BphA3(配列番号6)および野生型BphA4(配列番号8)を発現するシアノバクテリアは、例えば配列番号14の塩基配列を有するプラスミドを導入することで作製されうる。BphA1(配列番号2)、BphA2(配列番号4)、BphA3(配列番号6)およびBphA4変異体(配列番号10)を発現するシアノバクテリアは、例えば配列番号15の塩基配列を有するプラスミドを導入することで作製されうる。BphA1(配列番号2)、BphA2(配列番号4)、BphA3(配列番号6)およびBphA4変異体(配列番号12)を発現するシアノバクテリアは、例えば配列番号16の塩基配列を有するプラスミドを導入することで作製されうる。
後述する実施例に示されるように、配列番号14のプラスミドを有するシアノバクテリアの例には、PCC6803/pVEA1234株が含まれる。同様に、配列番号15のプラスミドを有するシアノバクテリアの例には、PCC6803/pVEA1234QK株が含まれる。配列番号16のプラスミドを有するシアノバクテリアの例には、PCC6803/pVEA1234CG株が含まれる。PCC6803/pVEA1234株、PCC6803/pVEA1234QK株およびPCC6803/pVEA1234CG株は、それぞれ受託番号NITE P−745、NITE P−746、NITE P−747として、2009年6月17日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
図2に示されるように、実施の形態1のシアノバクテリアは、光合成を行って生成されたNADPHおよび/またはNADHを電子の供給源として利用して、PCBなどのビフェニル化合物をジヒドロジオールに変換することができる。したがって、実施の形態1のシアノバクテリアは、従来のビフェニル化合物分解細菌がNADHを生成できない貧栄養環境下でもビフェニル化合物を変換することができる。
なお、実施の形態1では、配列番号1、3、5および7の塩基配列からなる遺伝子を導入したが、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子およびbphA4遺伝子として、配列番号2、4、6および8のアミノ酸配列に対して高い相同性(80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなる遺伝子を導入してもよい。すなわち、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子およびbphA4遺伝子は、配列番号1、3、5および7の塩基配列のものに限定されない。この場合、配列番号2のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号2のBphA1と同様に、ジオキシゲナーゼ活性を有していなければならない。同様に、配列番号4のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号4のBphA2と同様に、ジオキシゲナーゼ活性を有していなければならない。また、配列番号6のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号6のBphA3と同様に、フェレドキシン活性を有していなければならない。また、配列番号8のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号8のBphA4と同様に、フェレドキシン還元活性を有していなければならない。
実施の形態1では、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)、BphA3(フェレドキシン)、BphA2およびBphA1(ジオキシゲナーゼ)を発現させたが、KKS102株由来のBphA3、BphA2およびBphA1の代わりに他のフェレドキシンおよびジオキシゲナーゼを発現させて、キメラ電子伝達系を構築することで、他の芳香族化合物を変換できるシアノバクテリアを作製することができる。
たとえば、図3において実線で示すように、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)と、ロドコッカス sp.RHA1株由来のBphA3(フェレドキシン)、BphA2およびBphA1(ジオキシゲナーゼ)とを発現させるか、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)およびBphA3(フェレドキシン)と、RHA1株由来のBphA2およびBphA1(ジオキシゲナーゼ)とを発現させることで、NADPHおよび/またはNADHを利用してビフェニル化合物を変換することができるシアノバクテリアを作製することができる。
また、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)と、シュードモナス・プチダML2株由来のBedC2(フェレドキシン)、BedBおよびBedA(ジオキシゲナーゼ)とを発現させるか、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)およびBphA3(フェレドキシン)と、RHA1株由来のBedBおよびBedA(ジオキシゲナーゼ)とを発現させることで、NADPHおよび/またはNADHを利用してベンゼンを変換することができるシアノバクテリアを作製することができる。
また、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)と、シュードモナス・プチダF1株由来のTodC2(フェレドキシン)、TodBおよびTodA(ジオキシゲナーゼ)とを発現させるか、KKS102株由来のBphA4(フェレドキシン還元酵素)およびBphA3(フェレドキシン)と、F1株由来のTodBおよびTodA(ジオキシゲナーゼ)とを発現させることで、NADPHおよび/またはNADHを利用してトルエンを変換することができるシアノバクテリアを作製することができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る光合成生物(ビフェニル化合物分解シアノバクテリア)を説明するための模式図である。この例では、宿主はシアノバクテリア(例えば、シネコシスチス sp.PCC6803株)であり、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbph遺伝子群に含まれるbphA1遺伝子(配列番号1)、bphA2遺伝子(配列番号3)およびbphA3遺伝子(配列番号5)が導入されている。実施の形態2の光合成生物は、bphA4遺伝子が導入されていない点で実施の形態1の光合成生物と異なる。
実施の形態2のシアノバクテリアは、ビフェニル化合物変換酵素群に含まれる3種類の酵素、すなわちBphA1(ジオキシゲナーゼ;配列番号2)、BphA2(ジオキシゲナーゼ;配列番号4)およびBphA3(フェレドキシン;配列番号6)を発現しており、BphA1/A2によるビフェニル骨格への酸素添加反応(水酸化)によりPCB(ビフェニル化合物)をジヒドロジオールに変換する。実施の形態2のシアノバクテリアでは、光合成系に由来する電子がBphA4を介さずに供給される。すなわち、光合成系に由来する電子は、BphA3を経由してBphA1/A2に供給される。
後述する実施例に示されるように、本発明者らの実験によれば、bphA4遺伝子を導入せずに、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子およびbphA3遺伝子のみを導入しても、光合成系に由来する電子を電子の供給源として利用して、ビフェニル化合物を分解しうるシアノバクテリアを作製できることが判明している。これは、BphA4とは異なるルートでもBphA3およびBphA1/A2に電子が供給されうるためと考えられる。BphA1(配列番号2)、BphA2(配列番号4)およびBphA3(配列番号6)を発現するシアノバクテリアは、例えば配列番号17の塩基配列を有するプラスミドを導入することで作製されうる。
後述する実施例に示されるように、配列番号17のプラスミドを有するシアノバクテリアの例には、PCC6803/pVEA123株が含まれる。PCC6803/pVEA123株は、受託番号NITE P−748として、2009年6月17日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
実施の形態2のシアノバクテリアは、実施の形態1のシアノバクテリアと同様に、貧栄養環境下でもビフェニル化合物を変換することができる。
なお、実施の形態2では、配列番号1、3および5の塩基配列からなる遺伝子を導入したが、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子およびbphA3遺伝子として、配列番号2、4および6のアミノ酸配列に対して高い相同性(80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなる遺伝子を導入してもよい。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る光合成生物(ビフェニル化合物分解シアノバクテリア)を説明するための模式図である。この例では、宿主はシアノバクテリア(例えば、シネコシスチス sp.PCC6803株)であり、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbph遺伝子群に含まれるbphA1遺伝子(配列番号1)、bphA2遺伝子(配列番号3)、bphA3遺伝子(配列番号5)、bphA4遺伝子(配列番号7)、bphB遺伝子(配列番号26)、bphC遺伝子(配列番号28)、bphD遺伝子(配列番号30)が導入されている。実施の形態3の光合成生物は、bphA1、bphA2、bphA3およびbphA4遺伝子に加えて、さらにbphB、bphCおよびbphD遺伝子が導入されている点で実施の形態1の光合成生物と異なる。
実施の形態3のシアノバクテリアは、ビフェニル化合物変換酵素群に含まれる7種類の酵素、すなわちBphA1(ジオキシゲナーゼ;配列番号2)、BphA2(ジオキシゲナーゼ;配列番号4)、BphA3(フェレドキシン;配列番号6)、BphA4(フェレドキシン還元酵素;配列番号8)、BphB(ジヒドロゲナーゼ;配列番号27)、BphC(環開裂ジオキシゲナーゼ;配列番号29)およびBphD(加水分解酵素;配列番号31)を発現している。実施の形態3のシアノバクテリアは、BphA1/A2によりPCB(ビフェニル化合物)をジヒドロジオールに変換し、さらにBphB、BphCおよびBphDによりジヒドロジオールを安息香酸および2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノエートにまで変換する(図1参照)。実施の形態3のシアノバクテリアでは、NADH由来の電子ではなく、NADPH由来の電子が供給される。すなわち、光合成により得られたNADPH由来の電子は、BphA4およびBphA3を経由してBphA1/A2に供給される。
実施の形態3のシアノバクテリアは、光合成を行って生成された電子を利用して、PCBなどのビフェニル化合物を安息香酸および2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノエートにまで変換することができる。これらの分解産物は、毒性が低く、かつ再生可能なエネルギー源として利用可能である。このように、実施の形態3のシアノバクテリアは、貧栄養環境下でもビフェニル化合物を毒性の低い化合物に分解することができる。
なお、実施の形態3では、配列番号1、3、5、7、26、28および30の塩基配列からなる遺伝子を導入したが、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子、bphA4遺伝子、bphB遺伝子、bphC遺伝子およびbphD遺伝子として、配列番号2、4、6、8、27、29および31のアミノ酸配列に対して高い相同性(80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなる遺伝子を導入してもよい。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る光合成生物(ビフェニル化合物分解シアノバクテリア)を説明するための模式図である。この例では、宿主はシアノバクテリア(例えば、シネコシスチス sp.PCC6803株)であり、アシドボラクス sp.KKS102株由来のbph遺伝子群に含まれるbphA1遺伝子(配列番号1)、bphA2遺伝子(配列番号3)、bphA3遺伝子(配列番号5)、bphB遺伝子(配列番号26)、bphC遺伝子(配列番号28)およびbphD遺伝子(配列番号30)が導入されている。実施の形態4の光合成生物は、bphA1、bphA2およびbphA3遺伝子に加えて、さらにbphB、bphCおよびbphD遺伝子が導入されている点で実施の形態2の光合成生物と異なる。
実施の形態4のシアノバクテリアは、ビフェニル化合物変換酵素群に含まれる6種類の酵素、すなわちBphA1(ジオキシゲナーゼ;配列番号2)、BphA2(ジオキシゲナーゼ;配列番号4)、BphA3(フェレドキシン;配列番号6)、BphB(ジヒドロゲナーゼ;配列番号27)、BphC(環開裂ジオキシゲナーゼ;配列番号29)およびBphD(加水分解酵素;配列番号31)を発現している。実施の形態4のシアノバクテリアは、BphA1/A2によりPCB(ビフェニル化合物)をジヒドロジオールに変換し、さらにBphB、BphCおよびBphDによりジヒドロジオールを安息香酸および2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノエートにまで変換する(図1参照)。実施の形態4のシアノバクテリアでは、光合成系に由来する電子がBphA4を介さずに供給される。すなわち、光合成系に由来する電子は、BphA3を経由してBphA1/A2に供給される。
BphA1(配列番号2)、BphA2(配列番号4)、BphA3(配列番号6)、BphB(配列番号27)、BphC(配列番号29)およびBphD(配列番号31)を発現するシアノバクテリアは、例えば配列番号32の塩基配列を有するプラスミドを導入することで作製されうる。
後述する実施例に示されるように、配列番号32のプラスミドを有するシアノバクテリアの例には、PCC6803/pVEABCD6株が含まれる。PCC6803/pVEABCD6株は、受託番号NITE P−848として、2010年1月15日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
実施の形態4のシアノバクテリアは、実施の形態3のシアノバクテリアと同様に、貧栄養環境下でもビフェニル化合物を毒性の低い化合物に分解することができる。
なお、実施の形態4では、配列番号1、3、5、26、28および30の塩基配列からなる遺伝子を導入したが、bphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子、bphB遺伝子、bphC遺伝子およびbphD遺伝子として、配列番号2、4、6、27、29および31のアミノ酸配列に対して高い相同性(80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなる遺伝子を導入してもよい。
以上のように、本発明の光合成生物は、光合成を行って生成されたNADPHおよび/またはNADHを利用して芳香族化合物を分解することができるため、貧栄養環境下でも芳香族化合物を分解することができる。本発明の光合成生物は、貧栄養環境下における芳香族化合物汚染のバイオレメディエーションに適用可能である。
2.本発明の分解方法
本発明の光合成生物を芳香族化合物に接触させることで、その芳香族化合物を分解することができる。したがって、本発明の光合成生物を利用することによって、環境中に含まれるPCBなどの芳香族化合物を分解して、環境浄化処理(バイオレメディエーション)を行うことができる。
本発明の光合成生物は、様々なバイオレメディエーション技術に適用されうる。浄化処理対象の環境の例には、水域、土壌、汚泥、空気が含まれる。本発明の分解方法(環境浄化方法)は、閉鎖系で行われてもよいし、開放系で行われてもよい。
たとえば、汚染水に含まれる汚染物質を本発明の光合成生物により分解する場合は、本発明の光合成生物(例えば、シアノバクテリア)を処理対象の水域に直接導入してもよいし、本発明の光合成生物を入れた培養槽に汚染水を導入してもよい。このとき、汚染水のpHや塩濃度、温度、汚染物質の濃度などを予め調整しておくことが好ましい。培養槽に汚染水を導入する場合は、汚染水を連続して培養槽に導入してもよいし、バッチ式で導入してもよい。
また、汚染土壌または汚泥に含まれる汚染物質を本発明の光合成生物により分解する場合は、本発明の光合成生物(例えば、シアノバクテリア)を処理対象の土壌または汚泥に直接導入してもよいし、本発明の光合成生物を担持させた担体を充填した反応槽に汚染土壌または汚泥を導入してもよい。
また、汚染空気に含まれる汚染物質を本発明の光合成生物により分解する場合は、本発明の光合成生物(例えば、シアノバクテリア)を入れた培養槽に汚染空気を導入すればよい。このとき、汚染空気を連続して培養槽に導入してもよいし、バッチ式で導入してもよい。
以上のように、本発明の光合成生物を芳香族化合物に接触させることで、その芳香族化合物を分解することができる。前述の通り、本発明の光合成生物は、独立栄養生物であり、貧栄養環境下でも芳香族化合物を分解することができる。したがって、本発明の分解方法(環境浄化方法)は、芳香族化合物を低コストで効率的に分解することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
本実施例では、シアノバクテリア(シネコシスチス sp.PCC6803株)に、アシドボラクス(シュードモナス) sp.KKS102株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子およびbphA4遺伝子(野生型または変異型)を導入した例を示す。
1.プラスミドの構築
PCRは、東洋紡績株式会社のDNAポリメラーゼ(KOD−Plus−DNAポリメラーゼ)および株式会社アステックのサーマルサイクラー(PC−320)を用いて行った。DNA断片の連結には、タカラバイオ株式会社のDNAライゲーションキット(DNA Ligation Kit <Mighty Mix>)を用いた。
(1)pCA12
プラスミドpKH20(非特許文献2参照)からbphA1遺伝子(配列番号1)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびSalIで切断した。このDNA断片をプラスミドpCWoriのNdeI部位−SalI部位間に挿入してプラスミドpCA1を構築した。同様に、プラスミドpKH20からbphA2遺伝子(配列番号3)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素BNdeIおよびSalIで切断した。このDNA断片をプラスミドpCWoriのNdeI部位−SalI部位間に挿入して、プラスミドpCA2を構築した。プラスミドpCA1を制限酵素BamHIおよびBglIIで切断し、bphA1遺伝子を含むDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をプラスミドpCA2のBamHI部位に挿入して、プラスミドpCA12を構築した(図7参照)。
(2)pUJK68−A123
シネコシスチス sp.(Synechocystis sp.)PCC6803株の染色体DNAから、psbE、psbF、psbLおよびpsbJ遺伝子を含む1033bpの領域およびその下流1053bpの領域をPCRで増幅した。得られたDNA断片をカナマイシン耐性遺伝子カセットを含むDNA断片と共に、プラスミドpUC118のHindIII部位−EcoRI部位間に挿入して、プラスミドpUJK68を構築した。プラスミドpCA3(Kimura, S., Kikuchi, A. Senda, T., Shiro, Y. and Fukuda, M., "Tolerance of the rieske-type [2Fe-2S] cluster in recombinant ferredoxin BphA3 from Pseudomonas sp. KKS102 to histidine ligand mutations", Biochem. J., Vol.388, p.869-878.参照)からbphA3遺伝子(配列番号5)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素BamHIおよびBglIIで切断した。このDNA断片をプラスミドpUJK68のBamHI部位に挿入して、プラスミドpUJK68−A3を構築した。前述のプラスミドpCA12を制限酵素BamHIおよびBglIIで切断した。得られたDNA断片をプラスミドpUJK68−A3のBamHI部位に挿入して、プラスミドpUJK68−A123を構築した(図8参照)。
(3)pVEA1234
前述のPCC6803株の染色体DNAから、psbE遺伝子のプロモーター領域(335bp)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素HindIIIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVZ321のHindIII−SmaI部位間に挿入して、プラスミドpVEP321(配列番号13)を構築した。このとき、HindIII部位−SmaI部位間にBamHI部位を設けたDNA断片を挿入した。プラスミドpKH204(非特許文献2参照)からbphA4遺伝子(配列番号7)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVEP321のNdeI部位−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpVEA4を構築した。前述のプラスミドpUJK68−A123からbphA1遺伝子の上流のシャイン・ダルガーノ配列(SD)およびbphA3遺伝子の下流のターミネータ領域を含む領域をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素BamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVEA4のBamHI部位−SmaI部位間に挿入して、プラスミドpVEA1234(配列番号14)を構築した(図9参照)。
(4)pKQ175K177
プラスミドpKH204からプライマー1(配列番号18)とプライマー2(配列番号19)のセット、およびプライマー3(配列番号20)とプライマー4(配列番号21)のセットを用いて2種類の遺伝子断片をPCRで増幅した。プライマー2は、BphA4タンパク質の175位のグルタミン酸をグルタミンに変換し、177位のグルタミンをリシンに変換する変異を含むプライマーである。次いで、得られた2種類のDNA断片の混合物を鋳型DNAとして、プライマー1とプライマー4のセットを用いてPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpUC119のHindIII部位−BamHI部位間に挿入して、bphA4変異体遺伝子(E175Q/Q177K;配列番号9)を含むプラスミドpKQ175K177を構築した(図10参照)。
(5)pVEA1234QK
プラスミドpKQ175K177からbphA4変異体遺伝子(E175Q/Q177K)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVEP321のNdeI部位−BamHI部位間に挿入して、bphA4変異体遺伝子を含むプラスミドpVEA4QKを構築した。プラスミドpUJK68−A123からbphA1遺伝子の上流のシャイン・ダルガーノ配列(SD)およびbphA3遺伝子の下流のターミネータ領域を含む領域をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素BamHIで切断した。この断片をプラスミドpVEA4QKのBamHI部位−SmaI部位間に挿入して、bphA4変異体遺伝子(E175Q/Q177K)を含むプラスミドpVEA1234QK(配列番号15)を構築した(図11参照)。
(6)pKC175G177
プラスミドpKH204からプライマー1(配列番号18)とプライマー5(配列番号22)のセット、およびプライマー6(配列番号23)とプライマー4(配列番号21)のセットを用いて2種類の遺伝子断片をPCRで増幅した。プライマー5は、BphA4タンパク質の175位および177位のアミノ酸をランダムに変換する変異を含むプライマーである。配列番号22の塩基配列中のNは、A、G、CおよびTの混合塩基を意味する。次いで、得られた2種類のDNA断片の混合物を鋳型DNAとして、プライマー1とプライマー4のセットを用いてPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpUC119のHindIII部位−BamHI部位間に挿入して、大腸菌JM109株を形質転換することにより、bphA4変異体遺伝子(E175X/Q177X)を含むプラスミドpKX175X177を有する大腸菌ライブラリーJM109/pKX175X177ライブラリーを作製した。
JM109/pKX175X177ライブラリー200μLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地上に播き、37℃で一晩培養した。形成されたコロニーを2×YT−アンピシリン培地1mLに植菌し、37℃で16時間培養した。菌体を含む培地5μLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地1mLに植え継ぎ、1.5時間培養した。次いで、IPTGを終濃度が0.2mMになるように添加し、さらに16時間振とう培養した。遠心分離して集菌し、上清を取り除いた。大腸菌細胞溶解試薬(CelLytic B;シグマアルドリッチ社)100μLを加え、37℃で15分間静置した。遠心分離し、上清を回収して、粗抽出画分を得た。
得られた粗抽出画分を用いてフェリシアン化カリウム(K[Fe(CN)])の還元に伴う420nmの吸光度の減少をマイクロプレートリーダー(Model 680;Bio-Rad Laboratories社)で測定することにより、NADHおよびNADPHからの電子の受け渡しを測定した。NADHおよびNADPHに対する速度は、フェリシアン化カリウムの濃度を十分な濃度である1.5mMに固定し、1mMのEDTAおよび2%(w/v)のグリセロールを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で測定した。フェリシアン酸イオン(Fe(CN) 3−)は酵素非存在下でもピリジンヌクレオチドがあるとわずかに還元されるため、NADHおよびNADPHによるフェリシアン酸イオンの還元速度を測定し、酵素反応の定常状態速度から差し引くことで真の酵素活性速度を算出した。NADPHに対する速度をNADHに対する速度で割った比を特異性の値とした。この解析で最もNADPH特異性が高い値を示した大腸菌株よりプラスミドを抽出し、175位および177位のアミノ酸をコードする塩基配列を決定し、bphA4変異体遺伝子(E175C/Q177G;配列番号11)を含むプラスミド、pKC175G177を得た。
(7)pVEA1234CG
プラスミドpKC175G177からbphA4変異体遺伝子(E175C/Q177G)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVEP321のNdeI部位−BamHI部位間に挿入して、bphA4変異体遺伝子を含むプラスミドpVEA4CGを構築した。プラスミドpUJK68−A123からbphA1遺伝子の上流のシャイン・ダルガーノ配列(SD)およびbphA3遺伝子の下流のターミネータ領域を含む領域をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素BamHIで切断した。この断片をプラスミドpVEA4CGのBamHI部位−SmaI部位間に挿入して、bphA4変異体遺伝子(E175C/Q177G)を含むプラスミドpVEA1234CG(配列番号16)を構築した。
(8)pVEA123
前述のプラスミドpCA12のNdeI部位−PvuII部位間のDNA断片と、前述のプラスミドpUJK68−A123のPvuII部位−SphI部位間のDNA断片を、前述のプラスミドpVEA1234のNdeI部位−SphI部位間に挿入して、プラスミドpVEA123(配列番号17)を構築した(図12参照)。
2.シアノバクテリアの形質転換
(1)形質転換
Zinchenkoらの方法(Zinchenko, V.V., Piven, I.V., Melnik, V.A. and Shestakov, S.V., "Vectors for the complementation analysis of cyanobacterial mutants", Russian Journal of Genetics, Vol.35, p.291-296.)を参考にして、接合伝達を利用してシアノバクテリア(シネコシスチス sp.PCC6803株)の形質転換を行った。
まず、一晩振とう培養したレシピエント大腸菌(プラスミドpVEP、pVEA1234、pVEA1234QK、pVEA1234CGまたはpVEA123のいずれかを保有)およびドナー大腸菌(プラスミドR751を保有)0.1mLを滅菌水で3回洗浄した。また、7〜8日間培養したPCC6803株をBG11培地で3回洗浄した。洗浄は、菌体を50μLの洗浄液(滅菌水またはBG11培地)に懸濁した後、遠心分離(5000rpm、室温、5分間)を行い、抗生物質を完全に洗い流すことで行った。
洗浄後、各菌体を50μLの滅菌水に懸濁し、混合した。BG11寒天培地(5%のLB培地含有)上に置いたニトロセルロースメンブレン(Millipore社)の上に混合した菌体を乗せ、30℃、弱光条件下(〜10μmol photons m−2−1)で一晩培養した。ニトロセルロースメンブレンをマイクロチューブ(容量1.5mL)内に移し、100μLのBG11培地を加え、撹拌した後、チューブ内のBG11培地をBG11寒天培地(25μg/mLクロラムフェニコール含有)に塗布した。30℃、弱光条件下(〜10μmol photons m−2−1)で培養し、形質転換体を選抜した。
以下、上記の手順により、プラスミドpVEP321を導入した菌体を「PCC6803/pVEP321株」と称し、プラスミドpVEA1234を導入した菌体を「PCC6803/pVEA1234株」と称し、プラスミドpVEA1234QKを導入した菌体を「PCC6803/pVEA1234QK株」と称し、プラスミドpVEA1234CGを導入した菌体を「PCC6803/pVEA1234CG株」と称し、プラスミドpVEA123を導入した菌体を「PCC6803/pVEA123株」と称する。なお、PCC6803/pVEP321株、PCC6803/pVEA1234株、PCC6803/pVEA1234QK株、PCC6803/pVEA1234CG株およびPCC6803/pVEA123株は、それぞれ受託番号NITE P−744、NITE P−745、NITE P−746、NITE P−747、NITE P−748として、2009年6月17日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
(2)タンパク質の抽出
以下の手順により、各形質転換体(PCC6803/pVEP321株(NITE P−744)、PCC6803/pVEA1234株(NITE P−745)およびPCC6803/pVEA1234QK株(NITE P−746))からタンパク質を抽出した。
まず、培養液50mLを遠心分離(6000rpm、室温、8分間)して菌体を回収した。得られた菌体を1mLの洗浄バッファー(10mM Tris−HCl(pH7.9)、5mM MgCl、10mM NaN)に素早く懸濁した。懸濁液を再度同じ条件で遠心分離し、上清を取り除いて得た菌体を−80℃で保存した。
氷上でゆっくりと溶かした菌体を250μLのTGEバッファー(50mM Tris−HCl(pH7.9)、5%グリセロール、1mM EDTA・2Na)に懸濁し、懸濁液をマイクロチューブ(容量1.5mL)内に移した。マイクロチューブ内に0.2gのガラスビーズ(直径0.1mm;BioSpec Products社)を加え、アタッチメント(TurboMix)を装着したボルテックス・ミキサー(Vortex-Genie 2;Scientific Industries社)にマイクロチューブをセットした。スケール8で2分間破壊した後、2分間静置という操作を5回繰り返し、細胞を破壊した。この作業は4℃の冷蔵庫内で行った。細胞を破壊した後、懸濁液を遠心分離(14000rpm、4℃、10分間)し、上清を回収した。回収した上清をさらに同じ条件で遠心分離して上清を回収し、−30℃で保存した。上清(シアノバクテリアの全タンパク質を含有)は、使用時に氷上で緩やかに溶解した。
(3)ウェスタンブロット
ウェスタンブロット法で、各形質転換体から抽出したタンパク質に目的のタンパク質(BphA1、BphA2、BphA3、BphA4)が含まれているか否かを確認した。
SDS−PAGEを終了した後、濃縮ゲルを取り除き、分離ゲルをカソードバッファー(25mM Tris−HCl(pH10.4)、20%メタノール、20mM 6−アミノ−n−カプロン酸、水酸化ナトリウムを用いてpH10.0に調整)に30分間浸漬した。このとき、分離ゲル、分離ゲルよりも数ミリ大きいメンブレン(Hybond ECL nitrocellulose membrane;Amersham Bioscience社)1枚、および濾紙(3MM Chr;Whatman社)2枚を同時にカソードバッファーに浸漬した。また、分離ゲルよりも数ミリ大きい濾紙4枚を別個に用意し、そのうちの2枚をアノードバッファーNo.1(300mM Tris−HCl(pH10.4)、20%メタノール)に、別の2枚をアノードバッファーNo.2(25mM Tris−HCl(pH10.4)、20%メタノール)に浸漬した。ゲルの平衡化を終えた後、ブロッティング装置に濾紙およびメンブレンを空気が入らないように積み重ね、メンブレンの面積(cm)×3mA(最高電圧60V)で60分間ブロッティングした。
ブロッティングを終了した後、タンパク質転写面を上にしてメンブレンをブロッキングバッファー(5%スキムミルク(雪印乳業株式会社)を含むTBS−T(25mM Tris、150mM NaCl、0.05% Tween20、塩酸でpH8.0に調整))に浸漬し、卓上小型振とう機(PR−24;タイテック株式会社)を用いてゆっくりと振とうさせながら1時間以上ブロッキングした。
以下の操作は、すべてメンブレンのタンパク質転写面を上にし、室温で行った。メンブレンの大きさに合うようにパラフィルムで船型の容器を作製し、そこにブロッキングバッファー(5〜10mL)を加えた。そこに、1次抗体(抗BphA1抗体、抗BphA2抗体、抗BphA3抗体または抗BphA4抗体;いずれもウサギIgG)を添加して軽く攪拌した後、ブロッキングを終えたメンブレンを浸漬し、卓上小型振とう機で1時間以上振とうさせながら反応させた。メンブレンを適当な大きさのタッパに移し、約80mLのTBS−Tでメンブレンを3回軽く洗浄した後、同量のTBS−Tで15分間卓上小型振とう機でゆっくりと振とうさせながら洗浄した。この操作を3回繰り返した。その後、1次抗体を反応させた手順と同様に、ブロッキングバッファーに希釈した2次抗体(ロバ抗ウサギIgG抗体;NA934V;Amersham Bioscience社)にメンブレンを30分以上浸漬して反応させた。反応後、1次抗体の反応後と同様に洗浄した。シグナルの検出は、「ECL Western blotting detection reagents and analysis system」のプロトコール(Amersham Bioscience社)に従って行った。
図13は、ウェスタンブロットの結果を示す写真である。レーン1は、PCC6803/pVEP321株(NITE P−744)の結果を示し、レーン2は、PCC6803/pVEA1234株(NITE P−745)の結果を示し、レーン3は、PCC6803/pVEA1234QK株(NITE P−746)の結果を示す。この結果から、PCC6803/pVEA1234株(レーン2)およびPCC6803/pVEA1234QK株(レーン3)から抽出したタンパク質にBphA1、BphA2、BphA3およびBphA4が含まれていることがわかる。したがって、これらの株に各遺伝子が正常に導入され、発現していることがわかる。
3.光依存的発現量の解析
(1)菌体の回収
PCC6803/pVEA1234株(NITE P−745)をBG11培地に植菌し、35μmol photons m−2−1の連続光を照射して7日間培養した後、暗条件で12時間培養し、再び35μmol photons m−2−1の連続光を照射して培養した。図14Aに示すように、暗条件にする3時間前(L1)、暗条件開始時(L2)、暗条件にしてから6時間後(D3)、暗条件にしてから12時間後(D4)、照射を再開してから1時間後(L5)、照射を再開してから3時間後(L6)の各ポイントで菌体を回収した。回収した各菌体を1mLの洗浄バッファー(10mM Tris−HCl(pH7.9)、5mM MgCl、10mM NaN)に素早く懸濁した。懸濁液を再度同じ条件で遠心分離し、上清を取り除いて得た菌体を−80℃で保存した。
(2)bphA4遺伝子の転写量の測定
(RNAの抽出)
氷上でゆっくりと溶かした菌体を500μLのLETバッファー(100mM LiCl、10mM EDTA・2Na、10mM Tris−HCl(pH7.5))に懸濁し、懸濁液をマイクロチューブ(容量1.5mL)内に移した。懸濁液を遠心分離(8000rpm、4℃、5分間)し、菌体を回収した。回収した菌体を130μLのLETバッファーに菌体の固まりが無くなるまで注意深く懸濁した。
得られた懸濁液に、TE10−1(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA・2Na)に溶解させたリゾチーム溶液(80mg/mL)を20μL加えた。ボルテックス・ミキサーで1秒間攪拌した後(スケール4)、氷上に1時間静置した。1時間後、ボルテックス・ミキサーで1秒間攪拌した後(スケール4)、LETバッファー(100mM LiCl、10mM EDTA・2Na、10mM Tris−HCl(pH7.5)、1% SDS)を加え、チューブを8回上下逆さまにして緩やかに混ぜた。その後、予め65℃に保温しておいた650μLのTris−HCl飽和フェノールを加え、65℃で1分間保温した後、30秒間に8回のペースで転倒混和した。これを8回繰り返した。得られた混合液を遠心分離(5000rpm、4℃、10分間)し、上層を新しいチューブに移した。上層を移した新しいチューブに500μLのTris−HCl飽和フェノールを加え、よく撹拌した後、遠心分離(14000rpm、4℃、20分間)した。再び上層を新しいチューブに移し、さらに同条件で遠心分離してフェノールを完全に除去した上清を得た。
得られた溶液に1/10容量の2M LiCl溶液と等量の2−プロパノールを加え、−30℃で30分間以上静置した後、遠心分離(14000rpm、4℃、10分間)した。沈殿物を80%エタノールで洗浄した後、再び遠心した。沈殿物を軽く乾燥させた後、40μLのRNaseフリーの超純水に溶解させた。完全に溶解させるために、60℃で3分間保温した後、ボルテックス・ミキサーで5秒間攪拌(スケール8)する操作を2回繰り返した。得られたRNA溶液100μgにRNaseフリーのDNase I(15ユニット;タカラバイオ株式会社)を加え、37℃で30分間処理して混入しているゲノムDNAを完全に分解した。その後、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)処理、およびクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)処理を行った。回収した上清に1/10容量の3M酢酸ナトリウム溶液および2倍容量のエタノールを添加してエタノール沈殿処理を行い、RNAを回収した。
(逆転写反応)
回収したRNA1μgに、5×First-Strand Buffer(PowerScript Reverse Transcriptase(Clontech)に付属)を4μL、リバースプライマー(1pmol/μL;配列番号24)を2μL加え、さらに全液量が16μLとなるようにRNaseフリーの超純水を加えた。70℃で10分間保温した後、42℃の恒温槽の中で10分間保温して、プライマーをRNAにアニーリングさせた。次に、0.1M DTT(PowerScript Reverse Transcriptase に付属)を2μL、20mM dNTPsを1μL, PowerScript Reverse Transcriptaseを1μL加え、42℃で60分間反応(逆転写反応)させた。60分後、70℃で15分間保温して逆転写酵素を失活させた後、氷中で2分間以上静置して溶液を冷却した。その後、RNase H(2ユニット;タカラバイオ株式会社)を加え、37℃で20分間反応させて、定量RT−PCR反応用のcDNA溶液1μLを得た。
(定量RT−PCR)
定量RT−PCR反応は、Bio-Rad Laboratories社のサーマルサイクラー(iCycler)を用いて行った。1μLのcDNA溶液、1μLの20pMフォワードプライマー(配列番号25)、1μLの20pMリバースプライマー(配列番号24)、15μLのiQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad Laboratories社)および12μLの滅菌済み超純水を、互いに混ざらないようにマイクロチューブ(容量0.6mL)内に入れた。反応直前に各溶液を混合し、サーマルサイクラーにセットするまでは氷上に置いて反応を停止させた。
PCR反応は以下のプログラムで行った。なお、今回使用したSYBR Greenは、DNAの2本鎖中で蛍光を発することから、72℃の伸長ステップ(サイクル2のステップ3)の時にシグナルを検出した。
サイクル1(1回)
・ステップ1:95℃、30秒間
サイクル2(40回)
・ステップ1:95℃、30秒間
・ステップ2:61℃、30秒間
・ステップ3:72℃、30秒間
反応後、増幅の特異性を調べるため、55℃で10秒間保温した後、10秒ごとに0.5℃間隔で94℃まで上昇させ、各温度で10秒間保温する際のシグナル強度を測定して解離曲線を作成した。また、転写量を相対的に比較するため、暗条件にする3時間前(L1)のサンプルのcDNAを希釈(1〜1×10−4または1×5−4)し、同じ手順でPCR反応を行って検量線を作成した。得られた検量線より、各サンプルの相対転写量を求めた。なお、それぞれの実験では、1つのサンプルにつき3つの反応液を調製し、それらから得られた測定値の平均値を計算に用いた。また、逆転写反応をしていないRNAについても同じ手順でPCR反応を行い、シグナルが検出されないこと(ゲノムDNAが混入していないこと)を毎回確認した。
図14Bは、各ポイント(L1〜L6)におけるbphA4遺伝子の転写量を示すグラフである。それぞれの値は、L1の転写量を100としたときの相対値である。このグラフからわかるように、psbE遺伝子のプロモーター領域の下流にbphA4遺伝子を繋げているため、bphA4遺伝子の転写は明条件のときに活発に行われていることがわかる。
(3)BphA3タンパク質およびBphA4タンパク質の量の測定
(タンパク質の抽出)
前述の「2.シアノバクテリアの形質転換」の「(2)タンパク質の抽出」および「(3)ウェスタンブロット」と同様の手順で、各ポイント(L1〜L6)におけるBphA3タンパク質およびBphA4タンパク質の量を測定した。
図15は、各ポイント(L1〜L6)におけるウェスタンブロットの結果を示す写真である。「M」は分子量マーカー(20.1kDa、29.0kDa、45.0kDa、66.4kDaおよび97.2kDa)を示す。この写真からわかるように、明条件および暗条件に関係なくBphA3タンパク質およびBphA4タンパク質が存在することがわかる。また、図14Bおよび図15のグラフから、psbE遺伝子のプロモーター領域の下流に導入した各遺伝子は明条件下で転写および翻訳されるが、生成したタンパク質は暗条件下でも分解されずに残っていることがわかる。
4.ビフェニル分解能の測定
(1)ビフェニル減少量の測定
各形質転換体(PCC6803/pVEP321株(NITE P−744)、PCC6803/pVEA1234株(NITE P−745)、PCC6803/pVEA1234QK株(NITE P−746)、PCC6803/pVEA1234CG株(NITE P−747)およびPCC6803/pVEA123株(NITE P−748))をビフェニル存在下で培養し、ビフェニルの減少量を測定した。
遠心して集めた菌体(PCC6803/pVEP321株、PCC6803/pVEA1234株、PCC6803/pVEA1234QK株、PCC6803/pVEA1234CG株またはPCC6803/pVEA123株)を、OD660が4になるようにBG11培地に懸濁した。懸濁液をガラス瓶中に500μL入れ、35μmol photons m−2−1の光を照射して30℃で15分間前培養を行った。50nmolのビフェニルを加えた後、さらに任意の時間培養し、3N HClを3.5μL加えて反応を停止させた。内部標準として50nmolのフェナントレンを加えた。飽和量の塩化ナトリウムおよび1.2mLの酢酸エチルを加えた後、1分間激しく混合した。酢酸エチル層を1mL回収し、硫酸ナトリウムで脱水処理した。遠心分離後の上清800μLを回収し、エバポレーターにより乾固させた。得られた固形物を100μLの酢酸エチルに懸濁し、1μLをガスクロマトグラフィーに供し、ビフェニルの残存量を求めた。
図16は、各形質転換体の培養時間とビフェニルの残存量との関係を示すグラフである。このグラフから、bphA1、bphA2、bphA3およびbphA4を有していないPCC6803/pVEP321株(NITE P−744)は、ビフェニルをほとんど分解できないことがわかる。一方、PCC6803/pVEA1234株(NITE P−745)、PCC6803/pVEA1234QK株(NITE P−746)およびPCC6803/pVEA1234CG株(NITE P−747)は、ビフェニルを分解していることがわかる。特に、変異型のbphA4遺伝子を有するPCC6803/pVEA1234QK株は、野生型のbphA4遺伝子を有するPCC6803/pVEA1234株よりもよりビフェニル分解能が高いことがわかる。また、PCC6803/pVEA123株(NITE P−748)もビフェニルを分解していることがわかる。このことから、BphA3およびBphA1/A2のみでも(BphA4が無くても)ビフェニルを分解することが可能であり、BphA4とは異なるルートでも電子が供給されうることがわかる。
(2)水酸化ビフェニルの検出
ビフェニルの減少が各形質転換体によるビフェニルの分解によるものであるか否かを調べるために、BphA1/A2(ジオキシゲナーゼ複合体)の作用により水酸化ビフェニルが生成されているか否かを調べた。
遠心して集めた菌体(PCC6803/pVEA1234QK株(NITE P−746))を、OD660が4になるようにBG11培地に懸濁した。懸濁液をガラス瓶中に500μL入れ、35μmol photons m−2−1の光を照射して30℃で15分間前培養を行った。50nmolのビフェニルを加えた後、さらに任意の時間培養し、3N HClを3.5μL加えて反応を停止させた。内部標準として50nmolのフェナントレンを加えた。飽和量の塩化ナトリウムおよび1.2mLの酢酸エチルを加えた後、1分間激しく混合した。酢酸エチル層を1mL回収し、硫酸ナトリウムで脱水処理した。遠心分離後の上清800μLを回収し、エバポレーターにより乾固させた。得られた固形物を100μLのシリル化剤(TMSI−H;ジーエルサイエンス株式会社)に懸濁し、50℃で30分間反応させた。反応物1μLをガスクロマトグラフィーに供し、トリメチルシリル化されたビフェニルを検出した。
図17は、水酸化ビフェニルの検出結果を示すグラフである。図17AはGCスペクトルを示し、図17B〜図17Eは図17AのB〜Eの各ピークのマススペクトルを示す。これらのグラフから、トリメチルシリル化されたビフェニルが存在すること、すなわち水酸化ビフェニルが生成されていることがわかる。
5.変異体の酵素活性の測定
以下の手順で、野生型BphA4および変異型BphA4(いずれも大腸菌(Escherichia coli)で発現させ、精製したもの)について、フェリシアン化カリウム(K[Fe(CN)])の還元反応におけるピリジンヌクレオチドに対するみかけの酵素動力学的パラメーターを測定した。野生型BphA4および変異型BphA4の大腸菌菌体からの精製は、文献(Yamada, T., Sakurai, N., Nishizaki, T., Senda, T., Masai, E., Fukuda, M. and Mitsui, Y., "Purification and crystallization of a ferredoxin reductase component of a biphenyl dioxigenase derived from Pseudomonas sp. strain KKS102", Protein Pept. Letters, Vol.7, p.277-280.)に記載の方法と同様の手順で行った。
NADHおよびNADPHに対するみかけの酵素動力学的パラメーター(K NADHおよびkcat NADH、K NADPHおよびkcat NADPH)は、フェリシアン化カリウムの濃度を十分な濃度である1.5mMに固定し、NADH濃度またはNADPH濃度に対する定常状態速度をプロットして算出した。定常状態速度は、1mMのEDTAおよび2%(w/v)のグリセロールを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中、25℃で測定した。吸光度変化の測定は、株式会社日立製作所の分光光度計(U−2010)を使用した。25℃で5分間プレインキュベートした酵素(BphA4)およびフェリシアン化カリウムを含む反応溶液に、NADH溶液またはNADPH溶液を加えて酵素反応を開始し、フェリシアン酸イオン(Fe(CN) 3−)の還元に伴う420nmにおける吸光度の減少を測定して酵素反応の定常状態速度を算出した。フェリシアン酸イオンは酵素非存在下でもピリジンヌクレオチドによって還元するため、NADHおよびNADPHによるフェリシアン酸イオンの還元速度を測定し、酵素反応の定常状態速度から差し引くことで真の酵素活性を算出した。
フェリシアン酸イオンの還元速度は、フェリシアン酸イオンの還元に伴う分子吸光係数の差ε420=1.02×10−1cm−1用いて算出した。NADH溶液およびNADPH溶液の濃度は、それぞれ分子吸光係数ε340 NADH=6.3×10−1cm−1、ε340 NADPH=6.2×10−1cm−1を用いて決定した。以下、これらの値を用いてNADH濃度およびNADPH濃度を決定した。
測定したフェリシアン化カリウムの還元反応における定常状態速度をNADH濃度またはNADPH濃度に対してプロットした。プロットした測定値を統計ソフト(PRIZM4;GraphPad社)を用いてミカエリス・メンテンの式(1)にフィッティングして、みかけのミカエリス定数(K)と最大速度(Vmax)を求めた。VmaxをBphA4の濃度で割って触媒定数(kcat)を算出した。
Vは初速度、[S]は反応溶液中のNADH濃度またはNADPH濃度である。
求めた酵素動力学的パラメーターから、NADHに対する触媒効率(kcat/KNADHおよびNADPHに対する触媒効率(kcat/KNADPHを算出し、両者の比をピリジンヌクレオチドに対する特異性を示すパラメーター(kcat/KNADH/NADPHとした。なお、「(kcat/KNADH/(kcat/KNADPH」と「(kcat/KNADH/NADPH」との間には、以下の式(2)が成り立つ。
表1〜3に、酵素動力学的パラメーターおよびピリジンヌクレオチドに対する特異性を示すパラメーターを示す。
表3から、野生型のBphA4は、(kcat/KNADH/NADPHの値が大きく、NADHに対する依存性(特異性)が高いことがわかる。一方、変異型のBphA4(E175Q/Q177KおよびE175C/Q177G)は、(kcat/KNADH/NADPHの値が小さく、NADPHに対する依存性(特異性)が高いことがわかる。
6.トルエン分解能およびベンゼン分解能の測定
PCC6803/pVEA123株(NITE P−748))をトルエンまたはベンゼン存在下で培養し、トルエンまたはベンゼンの減少量を測定した。
遠心して集めた菌体を、OD660が4になるようにBG11培地に懸濁した。懸濁液をガラス瓶中に500μL入れ、35μmol photons m−2−1の光を照射して30℃で15分間前培養を行った。トルエンまたはベンゼンを小試験管に100μL入れ、菌体懸濁液と混ざらないようにガラス瓶中に挿入した後、さらに6時間培養した。このとき、小試験管内のトルエンまたはベンゼンは揮発して菌体懸濁液に徐々に溶解する。3N HClを3.5μL加えて反応を停止させた後、内部標準として50nmolのフェナントレンを加えた。飽和量の塩化ナトリウムおよび1.2mLの酢酸エチルを加えた後、1分間激しく混合した。酢酸エチル層を1mL回収し、硫酸ナトリウムで脱水処理した。遠心分離後の上清800μLを回収し、エバポレーターにより乾固させた。得られた固形物を100μLのシリル化剤に懸濁し、50℃で30分間反応させた。反応物1μLをガスクロマトグラフィーに供し、トリメチルシリル化されたトルエンまたはベンゼンを検出した。
図18は、水酸化トルエンの検出結果を示すグラフである。図18AはGCスペクトルを示し、図18Bは図18AのピークBのマススペクトルを示す。これらのグラフから、トリメチルシリル化されたトルエンが存在すること、すなわち水酸化トルエンが生成されていることがわかる。
図19は、水酸化ベンゼンの検出結果を示すグラフである。図19AはGCスペクトルを示し、図19Bは図19AのピークBのマススペクトルを示す。これらのグラフから、トリメチルシリル化されたベンゼンが存在すること、すなわち水酸化ベンゼンが生成されていることがわかる。
[実施例2]
本実施例では、シアノバクテリア(シネコシスチス sp.PCC6803株)に、アシドボラクス(シュードモナス) sp.KKS102株由来のbphA1遺伝子、bphA2遺伝子、bphA3遺伝子、bphB遺伝子、bphC遺伝子およびbphD遺伝子を導入した例を示す。
1.プラスミドの構築
PCRは、東洋紡績株式会社のDNAポリメラーゼ(KOD−Plus−DNAポリメラーゼ)および株式会社アステックのサーマルサイクラー(PC−320)を用いて行った。DNA断片の連結には、タカラバイオ株式会社のDNAライゲーションキット(DNA Ligation Kit <Mighty Mix>)を用いた。
(1)pCA12
プラスミドpKH20(非特許文献2参照)からbphB遺伝子(配列番号26)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびHindIIIで切断した。このDNA断片をプラスミドpCWoriのNdeI部位−HindIII部位間に挿入してプラスミドpCBBを構築した。同様に、プラスミドpKH20からbphC遺伝子(配列番号28)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびHindIIIで切断した。このDNA断片をプラスミドpCWoriのNdeI部位−HindIII部位間に挿入して、プラスミドpCBCを構築した。同様に、プラスミドpKH20からbphD遺伝子(配列番号30)をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびXbaIで切断した。このDNA断片をプラスミドpCWoriのNdeI部位−XbaI部位間に挿入して、プラスミドpCBDを構築した。
プラスミドpCBBを制限酵素BamHIおよびBglIIで切断し、bphB遺伝子を含むDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をプラスミドpCBCのBamHI部位に挿入して、プラスミドpCBBCを構築した。プラスミドpCBBCを制限酵素BamHIおよびBglIIで切断し、bphB遺伝子およびbphC遺伝子を含むDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をプラスミドpCBDのBamHI部位に挿入して、プラスミドpCBBCDを構築した(図20参照)。
(2)pCA3BCD
プラスミドpCBBCDを制限酵素BamHIおよびBglIIで切断し、bphB遺伝子、bphC遺伝子、bphD遺伝子を含むDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をプラスミドpCA3のBglII部位に挿入して、プラスミドpCA3BCDを構築した(図21参照)。
(3)pVEABCD6
プラスミドpCA12からbphA1遺伝子およびbphA2遺伝子をPCRで増幅し、得られたDNA断片を制限酵素NdeIで切断した。このDNA断片をプラスミドpVEP321のNdeI部位−SmaI部位間に挿入してプラスミドpVEA12を構築した。プラスミドpCA3BCDを制限酵素BamHIおよびBglIIで切断し、bphA3遺伝子、bphB遺伝子、bphC遺伝子およびbphD遺伝子を含むDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片をプラスミドpVEA12のBglII部位に挿入して、プラスミドpVEABCD6を構築した(図22参照)。
2.シアノバクテリアの形質転換
実施例1と同様の手順により、プラスミドpVEABCD6をシアノバクテリア(シネコシスチス sp.PCC6803株)に導入した。プラスミドpVEABCD6を導入した菌体を「PCC6803/pVEABCD6株」と称する。PCC6803/pVEABCD6株は、受託番号NITE P−848として、2010年1月15日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
3.ビフェニル分解能の測定
(1)ビフェニル減少量および安息香酸の増加量の測定
PCC6803/pVEABCD6株(NITE P−848)をビフェニル存在下で培養し、ビフェニルの減少量および安息香酸の増加量を測定した。
遠心して集めた菌体を、OD660が4になるようにBG11培地に懸濁した。懸濁液をガラス瓶中に1mL入れ、35μmol photons m−2−1の光を照射して30℃で15分間前培養を行った。100nmolのビフェニルを加えた後、さらに任意の時間培養し、3N HClを3.5μL加えて反応を停止させた。遠心分離後の上清800μLを回収し、そのうちの50μLを液体クロマトグラフィーに供し、安息香酸を検出した。
図23は、PCC6803/pVEABCD6株の培養時間とビフェニルの残存量および安息香酸の蓄積量との関係を示すグラフである。このグラフから、ビフェニルが減少するに従い、安息香酸が蓄積していくのがわかる。
本発明の光合成生物は、例えば貧栄養環境下における芳香族化合物汚染のバイオレメディエーションに適用可能な生物として有用である。また、本発明の光合成生物は、精密化学合成やin vitroにおける薬物代謝研究などの様々な分野に適用可能である。

Claims (8)

  1. NADPHまたはNADH由来の電子を利用してビフェニル化合物を他の化合物に変換するビフェニル化合物変換酵素群に含まれるタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入されているシアノバクテリアである光合成生物であって、
    前記ポリヌクレオチドは、ジオキシゲナーゼサブユニットBphA1をコードするbphA1遺伝子、ジオキシゲナーゼサブユニットBphA2をコードするbphA2遺伝子、およびフェレドキシンBphA3をコードするbphA3遺伝子を有し、かつ前記BphA3を還元するフェレドキシンレダクターゼをコードする遺伝子を有しない、
    光合成生物。
  2. 前記bphA1遺伝子、前記bphA2遺伝子および前記bphA3遺伝子は、アシドボラクス sp.KKS102株由来の遺伝子である、請求項1に記載の光合成生物。
  3. 前記ポリヌクレオチドは、ジヒドロゲナーゼBphBをコードするbphB遺伝子、環開裂ジオキシゲナーゼBphCをコードするbphC遺伝子、および加水分解酵素BphDをコードするbphD遺伝子をさらに有する、請求項1または請求項2に記載の光合成生物。
  4. 前記bphB遺伝子、前記bphC遺伝子および前記bphD遺伝子は、アシドボラクス sp.KKS102株由来の遺伝子である、請求項3に記載の光合成生物。
  5. 前記シアノバクテリアは、シネコシスチス sp.PCC6803株である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光合成生物。
  6. 配列番号17のプラスミドを有する、請求項2に記載の光合成生物。
  7. 配列番号32のプラスミドを有する、請求項4に記載の光合成生物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の光合成生物を、ビフェニル化合物、ベンゼンおよびトルエンからなる群から選択される芳香族化合物に接触させて、前記芳香族化合物を他の化合物に変換させるステップを含む、芳香族化合物の分解方法。
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