JP5739433B2 - 血中インスリン抵抗性及び糖尿病マーカープログラニュリン、採血試料中のプログラニュリン濃度の分析方法、及び、インスリン抵抗性を改善及び糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

血中インスリン抵抗性及び糖尿病マーカープログラニュリン、採血試料中のプログラニュリン濃度の分析方法、及び、インスリン抵抗性を改善及び糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、インスリン抵抗性及び糖尿病の診断が行われる臨床診断分野、及び、インスリン抵抗性及び糖尿病を改善する物質を探索する創薬分野に関する。
糖尿病は、膵臓β細胞におけるインスリン分泌低下と、肝臓や脂肪組織、骨格筋などにおけるインスリン作用障害(インスリン抵抗性)とによって、体内の糖代謝調節に異常をきたす疾患である。
(糖尿病の診断)
現在、糖尿病診断には血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)値などの血糖評価が最も一般的な診断基準として用いられている。日本糖尿病学会が定める診断基準では、空腹時血糖値110mg/dL未満又は随時血糖値140mg/dL未満を正常型と示し、空腹時血糖値126mg/dL以上又は随時血糖値200mg/dL以上を糖尿病と示し、それ以外を境界型と示している。このような血糖値による判定を繰り返し、いずれも糖尿病型であれば糖尿病と診断される。HbA1cは血液中の余剰グルコースと結合した糖化蛋白質であり、その血中濃度は恒常的な血糖評価に有効である。よって、HbA1c値が6.5%以上である場合は、血糖値による一度の判定でも糖尿病と診断される。
(糖尿病の治療)
一方、糖尿病治療においては膵臓β細胞に直接作用してインスリンの分泌を促すインスリン分泌促進剤、主に肝臓に作用して糖新生を抑制するビグアナイド剤、腸管からのブドウ糖吸収を抑えるαグルコシダーゼ阻害剤、及びインスリン応答性を向上させる薬剤が知られている。また、最近では、消化管ホルモンの働きを促進することによってインスリン分泌を高めるGLP-1受容体作動薬インクレチンやDPP-4阻害薬といった新ジャンルの薬剤も糖尿病治療に使われ始めている。
これらのうち、インスリン応答性を向上させる薬剤すなわち「インスリン抵抗性改善薬」は、核内受容体(PPARγ)を標的としたチアゾリジン系薬剤が代表的であり、チアゾリジン系薬剤は、脂肪組織や肝臓、筋肉のインスリン作用を高めることにより、体内の糖代謝を正常化させる作用がある。PPARγを主に発現する脂肪組織は、体内のインスリン応答性を調節する重要な内分泌器官であり、アディポネクチンやレプチン、腫瘍壊死因子α(TNF-α)など、脂肪細胞の分化や肥大化、インスリン感受性などに影響を与えるサイトカイン(アディポカイン)を産生・分泌する。さらに、肥満などによる脂肪細胞の肥大化はアディポカインの産生および分泌異常を引き起こし、インスリン抵抗性発症に寄与する事が報告されている(非特許文献1)。PPARγは脂肪細胞の分化や肥大化を調節する転写因子であり、従って、チアゾリジン系薬剤は脂肪組織のPPARγに作用し、アディポカインの産生および分泌を正常化することで、インスリン抵抗性を改善する事が考えられる。
チアゾリジン系薬剤によって糖尿病を改善した実験例としては、以下が報告されている。すなわち、10週齢の糖尿病マウスにチアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン)を1週間連日経口投与し、溶媒のみを投与した群を対照群として、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うと、随時血糖値(0分値)及びブドウ糖負荷後の血糖値は顕著にピオグリタゾン投与群で低値であり、すなわち糖尿病が改善したことが報告されている(非特許文献6)。
(インスリン抵抗性の検出)
インスリン抵抗性は2型糖尿病の発生における第一段階と考えることができ、かつ血糖評価によって糖尿病が診断される以前から発症する。すなわち、第一段階の間、β細胞によるインスリン分泌の増大が筋肉及び肝臓のインスリン応答性の低下(インスリン抵抗性)を補うことにより、患者の血糖値は正常値を維持する(高インスリン血症)。2型糖尿病の発症における後期の段階で、β細胞機能が低下し、耐糖能異常を招来し、最終的に血糖評価によって診断される程度に糖尿病が顕在化する。耐糖能異常の患者においては、体重減量、運動、又は薬学的治療による早期の介入が、糖尿病の発生を遅らせ又は予防することにつながることが示されている(非特許文献4)。
一方、インスリン抵抗性を検出するために最も信頼できる方法は、正常血糖高インスリンクランプ法(euglycemic-hyperinsulinemic clamp; EHC)によるものである。また、HOMAモデリングも、インスリン抵抗性を評価するためにしばしば用いられる診断方法である(非特許文献5)。しかしながら、これらの方法は時間がかかり且つ多大な労働力を要するため、広範な患者を対象とする診断には適さない。
そこで、インスリン抵抗性を検出するために有効なバイオマーカーが報告されている(特許文献1、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9)。
(プログラニュリン)
プログラニュリンは7種のグラニュリン(Granulin)ドメインを持つグラニュリン前駆タンパク質である。プログラニュリン及びグラニュリン類(Granulins)ペプチドは細胞外へ分泌されることで成長因子様の作用を持ち、炎症及び細胞遊走性に関与することが報告されていた(非特許文献3、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
プログラニュリンとインスリン抵抗性との関与については明らかにはされていなかったが、発明者らは、培養脂肪細胞からインスリン作用障害を検出しうるインスリン抵抗性マーカープログラニュリン(Progranulin)(別名プロエピセリン(Proepitherin)/PGRN/PCDGF/PEPI/GEP/GP88)を同定し、インスリン抵抗性とプログラニュリン発現との関連性について明らかにした(特許文献1)。
具体的には、細胞でのインスリン作用を間接的に障害するTNF-α及びデキサメサゾンで培養脂肪細胞を処理すると、プログラニュリンの発現量が増大した。また、インスリン作用を改善する上述のチアゾリジン系薬剤(ピオグリタゾンン)を添加することにより、インスリン作用障害による発現レベルの増大は完全に抑制されることを示した。さらに、本発明者らは、プログラニュリンが脂肪細胞のインスリン応答性を減弱させる作用を持つことを明らかにした。具体的には、培養脂肪細胞をプログラニュリンタンパク質で処理すると、インスリン受容体下流で活性化するAktタンパク質の活性がインスリン刺激下に顕著に抑制されることを明らかにした。また、プログラニュリン遺伝子を標的とするshRNA発現アデノウイルスを脂肪細胞に感染させ、プログラニュリンの発現を抑制させると、インスリン応答性が向上することもわかった。
特開2009−204475号公報 特開2006−513171号公報 特開2008−515459号広報 特開2009−109489号公報 特開2009−538631号公報 特開2004−041208号公報 特開2005−006645号公報 特開2008−523398号公報 特開2008−536474号公報
Diabetes & Metabolism, 34(2008)2-11 Molecular and Cellular Endocrinology, 316(2010)129-139 J Mol Med 81(2003) 600-612 N. Engl. J. Med. 346(2002) 393-403 Diabetes Care 27 (2004) 1487-1495 Journal of Biological Chemistry 281 8748-8755
(糖尿病マーカー)
糖尿病における真の脅威はその合併症にあり、網膜症や糖尿病性腎症、心筋梗塞や脳血管疾患などの血管障害、神経障害など重大な慢性合併症が上げられる。このような合併症のリスクは糖尿病の未発症期から進行していることが知られている。従って、糖尿病をより早期に発見するための早期診断マーカーや、糖尿病をより早期に予防、改善する方法が求められている。現在広く用いられている繰り返し検査による血糖値やHbA1c値などの血糖評価は血糖が十分上がった完全な糖尿病状態の検出には有効であるが、早期診断や境界型糖尿病の検出を行うことは困難とされる。また、糖尿病薬の奏効評価、糖尿病治療戦略決定には、血糖評価だけでは不十分である。
(インスリン抵抗性マーカー)
インスリン抵抗性の早期診断は、抗糖尿病治療又は糖尿病の進行を予防する他の方法による早期の介入を可能にすると推測される。インスリン抵抗性に対するマーカーは、この状態の検出に極めて有効である。すなわち、適切なインスリン抵抗性マーカーは、例えば境界型糖尿病及び糖尿病未発症期における早期診断を可能にする疾患バイオマーカーになることが期待される。
なお、糖尿病などの疾患は、実際は体内の様々な素因が複雑に関与する全身性の疾患である。このため、インスリン抵抗性マーカーによって糖尿病の早期診断を行う場合、そのインスリン抵抗性マーカーは、細胞レベルで発現及び分泌することが確認されたに過ぎない、いわば局所性のインスリン抵抗性を検出するためのものは適切でない。例えば、特開2009−204475号公報(特許文献1)によると、プログラニュリンは、培養細胞において発現及び分泌することが確認されたに過ぎないものである。従ってプログラニュリンは、局所性のインスリン抵抗性を検出するためのものであることが示唆されているに過ぎない。
(新たな薬剤標的の探索法)
インスリン抵抗性を改善することによって糖尿病を治療する薬剤であるチアゾリジン誘導体は、強力な脂肪細胞の分化促進作用を有する。このため、投与により体重の増加や肥満を招く危険性があり、この副作用により薬剤としての安全性が懸念されている。従って、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法が求められている。
本発明の目的は、インスリン抵抗性を評価することを可能にする簡便且つ正確な臨床診断マーカーを提供することにある。
本発明の目的は、インスリン作用の障害を引き起こした細胞における発現及び分泌を確認するいわば細胞レベルでのインスリン抵抗性を検出するためのマーカーではなく、インスリン抵抗性の症状を有する生体において発現及び分泌するいわば全身性のインスリン抵抗性を検出することができるマーカーを提供することにある。
本発明の目的は、糖尿病を検出することができるマーカーを提供することにある。
本発明の目的は、採血試料中における濃度を測定することによってインスリン抵抗性を検査することができる血中マーカー分析法を提供することにある。
本発明の目的は、採血試料中における濃度を測定することによって糖尿病を検査することができる血中マーカー分析法を提供することにある。
本発明の目的は、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することにある。
本発明の目的は、糖尿病改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することにある。
本発明者らは、プログラニュリンが、上記本発明の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
本発明のマーカーとして用いられる「ポリペプチド」には、特定の配列(すなわち配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列)で特定されるポリペプチド、及び、当該ポリペプチドの同族体及び変異体であり且つ当該ポリペプチドと同等のインスリン抵抗性に関与する生物学的機能を有するポリペプチドが含まれる。
従って、「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、一例として、配列番号3に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドが含まれる。
「ポリペプチド」には、オリゴペプチド及びタンパク質が含まれる。
(1)
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中インスリン抵抗性マーカー。
「インスリン抵抗性」とは、正常な量のインスリンによって正常な生理または分子応答を生じさせることができない状態をいう。場合により、内在的に生産されるか、又は外から加えられる過剰な生理学的量のインスリンによって、正常な生理または分子応答を少なくとも一部改善することができる、又は生物学的応答を生じさせることができる状態を含むことができる。本発明における「インスリン抵抗性」とは、細胞レベルで観察されるインスリン作用が障害された状態を示すものではなく、生体における糖代謝、脂質代謝などに対するインスリンの生理的作用が著しく障害された状態、いわば全身性のインスリン抵抗性をいう。
「インスリン抵抗性マーカー」とは、全身性のインスリン抵抗性を評価するマーカーをいう。「インスリン抵抗性を評価する」には、インスリン抵抗性を伴う全身状態を識別すること、及びインスリン抵抗性を伴う疾患の罹患状態を識別することが含まれ、より具体的には、インスリン抵抗性の検出及び診断、及び、インスリン抵抗性を伴う疾患の検出、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を行うことが含まれる。
(2)
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、採血試料中インスリン抵抗性マーカー分析法。
採血試料は、インスリン抵抗性を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体がインスリン抵抗性の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
(3)
インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
インスリン抵抗性を発現している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
インスリン抵抗性を発現している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記生体における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
「インスリン抵抗性を改善する」ことには、インスリン抵抗性を、よりインスリン感受性へ変化させること、及び、インスリン抵抗性を、よりグルコース輸送活性へ変化させることが含まれ、より具体的には、インスリン抵抗性におけるインスリン情報伝達抑制作用を制御すること、及び、グルコース輸送系抑制作用を制御することが含まれ、例えば、インスリン抵抗性を伴う疾患を治療することが挙げられる。
(4)
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中糖尿病マーカー。
「糖尿病マーカー」とは、糖尿病を評価するマーカーをいう。「糖尿病を評価する」には、糖尿病の罹患状態を識別することが含まれ、より具体的には、糖尿病の予測、検出、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を行うことが含まれる。糖尿病の予測には、境界型糖尿病を識別すること(糖尿病の早期診断)が含まれる。境界型糖尿病には、高血糖を伴わないインスリン抵抗性状態或いは耐糖能障害にある容態を含む。
(5)
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、採血試料中糖尿病マーカー分析法。
採血試料は、糖尿病を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体が糖尿病となることが予測されること、又は糖尿病の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
(6)
糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
糖尿病に罹患している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
糖尿病に罹患している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない生体における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
本発明によって、インスリン抵抗性を評価することを可能にする簡便且つ正確な臨床診断マーカーを提供することができる。
本発明によって、インスリン作用の障害を引き起こした細胞における発現及び分泌を確認するいわば細胞レベルでのインスリン抵抗性を検出するためのマーカーではなく、インスリン抵抗性の症状を有する生体において発現及び分泌するいわば全身性のインスリン抵抗性を検出することができるマーカーを提供することができる。
本発明によって、糖尿病を検出することができるマーカーを提供することができる。
本発明によって、採血試料中における濃度を測定することによってインスリン抵抗性を検査することができる血中マーカー分析法を提供することができる。
本発明によって、採血試料中における濃度を測定することによって糖尿病を検査することができる血中マーカー分析法を提供することができる。
本発明によって、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することができる。
本発明によって、糖尿病改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することができる。
ob/obマウス(インスリン抵抗性モデルマウス)及びob/+マウス(対照マウス)における血糖値変化を示す。 ob/obマウス(インスリン抵抗性モデルマウス)及びob/+マウス(対照マウス)における血中インスリン濃度変化を示す。 ob/obマウス(インスリン抵抗性モデルマウス)及びob/+マウス(対照マウス)の脂肪組織(副睾丸脂肪組織(EF)、腸間膜脂肪組織(MF)、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT))中におけるプログラニュリン(PGRN)のmRNA発現量を示す。 ob/obマウス(インスリン抵抗性モデルマウス)及びob/+マウス(対照マウス)における血中プログラニュリン(PGRN)濃度を示す。 db/dbマウス(糖尿病モデルマウス)及びdb/+m(対照マウス)における血糖値変化を示す。 db/dbマウス(糖尿病モデルマウス)及びdb/+m(対照マウス)における血中インスリン濃度変化を示す。 db/dbマウス(糖尿病モデルマウス)及びdb/+m(対照マウス)における血中プログラニュリン(PGRN)濃度を示す。 ピオグリタゾンを投与されたob/obマウス(ピオグリタゾンを投与されたインスリン抵抗性モデルマウス、Pio)及び溶媒のみを投与されたob/obマウス(溶媒のみを投与されたインスリン抵抗性モデルマウス、Vehicle)、及びob/+マウスの、脂肪組織(副睾丸脂肪組織(EF)、腸間膜脂肪組織(MF)、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT))中におけるプログラニュリン(PGRN)のmRNA発現量を示す。 ピオグリタゾンを投与されたob/obマウス(ピオグリタゾンを投与されたインスリン抵抗性モデルマウス、Pio)、溶媒のみを投与されたob/obマウス(溶媒のみを投与されたインスリン抵抗性モデルマウス、Vehicle)及びob/+マウスの血中プログラニュリン(PGRN)濃度を示す。 プログラニュリン遺伝子欠損ノックアウトマウス(PGRN-/-)及び野生型マウス(WT)の、通常食(SD)給餌下(a)及び高脂肪食(HFD)給餌下(b)における体重変化、及び摂食量(c)を示す。 通常食(SD)給餌下及び高脂肪食(HFD)給餌下で飼育したプログラニュリン遺伝子欠損ノックアウトマウス(PGRN-/-)及び野生型マウス(WT)の内臓脂肪の蓄積(a)を確認したもの、及び、脂肪細胞の形態と炎症細胞とを、それぞれヘマトキシリンエオシン染色(HE)(b)と抗Mac3抗体を用いた免疫組織化学染色(Mac3)(c)とによって確認したものである。 高脂肪食(HFD)給餌下で飼育した、プログラニュリン遺伝子欠損ノックアウトマウス(PGRN-/-)及び野生型マウス(WT)と、通常食(SD)給餌下で飼育したプログラニュリン遺伝子欠損ノックアウトマウス(PGRN-/-)及び野生型マウス(WT)におけるインスリン負荷試験の結果を示す。 高脂肪食(HFD)給餌下で飼育したプログラニュリン遺伝子欠損ノックアウトマウス(PGRN-/-)及び野生型マウス(WT)における経口ブドウ糖負荷試験結果であり、血糖値の変化(a)及び血中インスリン濃度の変化(b)を示す。
[1.インスリン抵抗性マーカー]
本発明のマーカーは、インスリン抵抗性に特異性を示すものである。「インスリン抵抗性」とは、正常な量のインスリンによって正常な生理または分子応答を生じさせることができない状態をいう。場合により、内在的に生産されるか、又は外から加えられる過剰な生理学的量のインスリンによって、正常な生理または分子応答を少なくとも一部改善することができる、又は生物学的応答を生じさせることができる状態を含むことができる。本発明における「インスリン抵抗性」とは、細胞レベルで観察されるインスリン作用が障害された状態を示すものではなく、生体における糖代謝、脂質代謝などに対するインスリンの生理的作用が著しく障害された状態、いわば全身性のインスリン抵抗性をいう。
ここで、「正常な量」の具体的な定義は、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、成人の場合、血中インスリン(IRI値)が空腹時で10μU/ml以下である。マウスの場合は、血中インスリン濃度が例えば1ng/ml程度である。しかしながら、これらに限定されることなく、正常な量はその他の様々なファクターでも定義される。
また、「インスリン抵抗性」の量的な定義も、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、HOMA−R値の正常値である2.5以下を逸脱すればインスリン抵抗性の疑い有りと診断されることが多い。マウスの場合は、例えばインスリン抵抗性を伴うob/obマウスで空腹時血中インスリン濃度は10ng/ml以上であるのに対して、インスリン抵抗性を伴わないob/+マウスで1ng/ml程度である。さらに、インスリン負荷試験における血糖変化も顕著に上昇するため、血糖値によって量的定義を行うことも可能である。しかしながら、これらに限定されることなく、インスリン抵抗性の量的な定義は、その他のファクターで定義されて良い。
「インスリン抵抗性マーカー」とは、インスリン抵抗性を評価するマーカーをいい、インスリン抵抗性を伴う容態を識別するマーカー、及びインスリン抵抗性を伴う疾患の罹患状態を識別するマーカーが含まれる。
インスリン抵抗性を伴う容態及び疾患の罹患状態にある例としては、2型糖尿病、代謝性症候群、前糖尿病、多嚢胞卵巣症候群、脂質代謝異常、肥満、不妊症、炎症性障害、癌、炎症性疾患、アルツハイマー病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、及び抹消血管疾患などが挙げられる。
[2.糖尿病マーカー]
本発明のマーカーはインスリン抵抗性に特異的であるため、インスリン抵抗性を示す疾患の一つである糖尿病のマーカーとして有用である。本発明において「糖尿病マーカー」とは、2型糖尿病を評価するマーカーをいい、糖尿病を予測するマーカー、及び糖尿病を識別するマーカーが含まれる。「糖尿病を予測する」には、境界型糖尿病を識別すること(糖尿病の早期診断)が含まれる。境界型糖尿病には、高血糖を伴わないインスリン抵抗性状態或いは耐糖能障害にある容態を含む。本発明のマーカーは、インスリン抵抗性に特異的であるため、高血糖を伴わない糖尿病の初期段階(境界型糖尿病)の検出を可能にすることから、糖尿病の早期診断が可能となる点で非常に有用である。
[3.マーカー成分ポリペプチド]
本発明の血中インスリン抵抗性マーカー及び血中糖尿病マーカーは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む。
「ポリペプチド」には、オリゴペプチド及びタンパク質が含まれる。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列」は、プログラニュリン(完全長)のヒトホモログの配列である。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、プログラニュリン(完全長)、グラニュリンペプチド(具体的には、グラニュリン−1、グラニュリン−2、グラニュリン−3、グラニュリン−4、グラニュリン−5、グラニュリン−6及びグラニュリン−7)、及び、プログラニュリン配列中のインスリン抵抗性に関わる最小配列を一部又は全体に含むいかなるポリペプチドも含まれる。なお、配列番号1に記載するプログラニュリン(完全長)の、284-335番目に相当するペプチドがグラニュリン−1、208-260番目に相当するペプチドがグラニュリン−2、366-416番目に相当するペプチドがグラニュリン−3、443-494番目に相当するペプチドがグラニュリン−4、520-571番目に相当するペプチドがグラニュリン−5、126-178番目に相当するペプチドがグラニュリン−6、61-112番目に相当するペプチドがグラニュリン−7である。
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドは、当該配列の連続する少なくとも50個のアミノ酸からなるポリペプチドであっても良いし、当該配列の連続する少なくとも593個のアミノ酸からなるポリペプチドであっても良い。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列で特定されるポリペプチド、及び、当該ポリペプチドの同族体及び変異体であり且つ当該ポリペプチドと同等のインスリン抵抗性に関与する生物学的機能を有するポリペプチドが含まれる。
上記の同族体には、プログラニュリンのヒトホモログに相当する、他の種のホモログの全部又は部分配列が含まれる。他の種としては、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
従って、「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、マウスホモログである配列番号3に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドが含まれる。
上記の変異体には、プログラニュリンの天然に存在する変異体、及び人為的にアミノ酸の置換、付加、挿入及び欠失させることにより改変された変異体が含まれる。
これら同族体及び変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列との相同性が、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%のものが挙げられる。
例えば、マウスとヒトとの間ではアミノ酸レベルで84%以上の相同性があることが周知である。生命の根幹を担う代謝機構及び情報伝達機構に関しては、マウスとヒトとは極めて類似しているという一般的な認識があり、実際に、脂肪細胞においてマウスとヒトとの間で同等の機能及び発現変動を示すものが多数報告されていることから、糖代謝調節やインスリン情報伝達においても例外でないことは明らかである。糖代謝調節やインスリン情報伝達などは、マウス及びヒトを含めた哺乳類全体に共通する機序としての可能性が極めて高いということは、当業者の間では共通した認識である。このため、本発明におけるポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列を基本とし、相同性が少なくとも80%であるものを含むことが極めて妥当である。例えば、配列番号3によって表されるマウスホモログは、配列番号1によって表されるヒトホモログの84%の相同性(BLASTホモロジー検索による)がある。
[4.インスリン抵抗性マーカー分析法]
上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーの血中濃度を分析することによって、インスリン抵抗性を評価することが可能である。
「インスリン抵抗性を評価する」には、インスリン抵抗性を伴う容態を識別すること、及びインスリン抵抗性を伴う疾患の罹患状態を識別することが含まれ、より具体的には、インスリン抵抗性の検出及び診断、及び、インスリン抵抗性を伴う疾患の検出、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を行うことが含まれる。予後判定には、当該疾患の改善のための治療を行った場合において、治療後の当該疾患の改善の有無又はその程度を判断することが含まれる。
[4−1.インスリン抵抗性マーカー分析のプロセス]
本発明のインスリン抵抗性を評価する方法は、採血試料中における前記ポリペプチドの濃度を測定する工程、及び、得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程を含む。
採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体がインスリン抵抗性の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、インスリン抵抗性の容態又は病態に関連する他のいかなるマーカーの測定結果を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明のポリペプチドの濃度と同様に他のマーカーの濃度を測定することを含んでよい。
[4−2.採血試料]
本発明においては、分析対象として採血試料が用いられる。採血試料は、インスリン抵抗性を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料は、分析に本質的な影響を与えないいかなる前処理が行われたものであっても良い。前処理としては、血漿交換、血清交換、本発明のポリペプチドへの結合能を有する物質の添加(本発明のポリペプチドを分析系から除外しうるもの)などは除外され、抗凝血処理や遠心分離(血漿分離、血清分離)などが含まれる。従って、採血試料としては、全血、血漿、血清などが含まれる。
採血試料はいかなる生体に由来するものであってもよい。生体には、ヒトを含めあらゆる動物が含まれる。例えば、哺乳類が挙げられる。哺乳類の例としては、霊長類(ヒトなど)、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
[4−3.ポリペプチド濃度測定法]
採血試料中のポリペプチドの濃度測定法としては特に限定されず、特定のポリペプチドを特異的に検出することが出来るいかなる方法も用いることができる。具体的には、生体特異的親和性に基づく検査、又は質量分析法によって測定されうる。
生体特異的親和性に基づく検査は当業者に良く知られた方法であり、特に限定されないが、イムノアッセイが好ましい。具体的には、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集測定、補体結合分析検定、免疫放射定量法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの、競合及び非競合アッセイ系を含むイムノアッセイが挙げられる。これらの方法においては、採血試料中のプログラニュリンに結合する抗体の存在を検出する。測定すべきポリペプチド及びこのポリペプチドの抗体からなる免疫複合体を形成しうる条件のもと、採血試料を当該抗体に接触させることによって行われる。より具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に決定することができる。
質量分析法によって測定する方法としては、ポリペプチドを定量的に測定することができる方法を当業者が適宜選択することができる。
例えば、同位体標識法が挙げられる。同位体標識法は、定量性に優れた方法であるため好ましい。この場合、上記ポリペプチドを既知レベルで調製した試料や、正常試料などの適当な試料を対照試料として、対象となる個体の試料との間における前記ポリペプチドの存在量の差を調べることによって、測定を行うことができる。
また、採血試料から免疫沈降物を得て、免疫沈降物を質量分析する方法が挙げられる(国際公開第2008/065806号)。この場合、採血試料中に存在する本発明のポリペプチドを、その抗体が結合した担体用いて、又は、前記抗体及び前記抗体と特異的に結合することができる分子が結合した担体を用いて免疫沈降させる。得られたポリペプチドの免疫沈降物は、電荷中和剤(例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩)を含む水溶液を用いて洗浄される。その後、免疫沈降物を直接質量分析に供することによって、内部標準に基づいてポリペプチドの定量を行うことができる。
[4−4.正常及びインスリン抵抗性の評価]
ポリペプチドの血中「正常濃度」には、インスリン感受性である生体における本発明のポリペプチドの血中濃度が含まれる。インスリン感受性とは、正常な量のインスリンによる正常な生理または分子応答を生じさせることができる状態をいう。
ここで、「正常な量」の具体的な定義は、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、成人の場合、血中インスリン(IRI値)が空腹時で10μU/ml以下である。マウスの場合は、血中インスリン濃度が例えば空腹時で1ng/ml程度である。しかしながら、これらに限定されることなく、正常な量はその他の様々なファクターでも定義される。
また、「インスリン抵抗性」の量的な定義も、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、HOMA−R値の正常値である2.5以下を逸脱すればインスリン抵抗性の疑い有りと診断されることが多い。マウスの場合は、例えばインスリン抵抗性を伴うob/obマウスで空腹時血中インスリン濃度は10ng/ml以上であるのに対して、インスリン抵抗性を伴わないob/+マウスで1ng/ml程度である。さらに、インスリン負荷試験における血糖変化も顕著に上昇するため、血糖値によって量的定義を行うことも可能である。しかしながら、これらに限定されることなく、インスリン抵抗性の量的な定義は、その他のファクターで定義されて良い。
従って、本発明のポリペプチドの血中正常濃度は、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて正常であると判断されるべき生体における本発明のポリペプチドの濃度でありうる。このような血中正常濃度の測定は当業者によって可能であり、血中正常濃度の範囲の決定は、測定結果と公知のインスリン抵抗性評価法とに基づいて当業者が適宜決定する事ができる。例えばマウスなどの齧歯類の場合では、正常範囲が0.2μM〜0.3μMでありうる。
また、本発明のポリペプチドの測定濃度が正常濃度と比較してどの程度大きい場合に生体がインスリン抵抗性の状態にある可能性が高いと判断するかについては、特に限定されるものではない。インスリン抵抗性の状態にある可能性が高いと判断される場合の本発明のポリペプチドの測定濃度は、例えば公知のインスリン抵抗性評価法によりインスリン抵抗性であると判断されるべき生体の血液中における本発明のポリペプチドの濃度まで達しうる。
例えば、測定濃度が正常濃度の1.25倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上(モル基準)となる程度をインスリン抵抗性であると評価する目安にすることができる。例えばマウスなどの齧歯類の場合では、ポリペプチドの測定濃度が0.3μM以上であれば、インスリン抵抗性であると評価する目安にすることができる。
さらに、本発明の方法においては、インスリン抵抗性の容態又は病態に関する他のいかなる所見を組み合わせることも許容される。
[5.糖尿病マーカー分析法]
上記の本発明の糖尿病マーカーの血中濃度を分析することによって、糖尿病を評価することが可能である。
「糖尿病を評価する」には、糖尿病の罹患状態を識別することが含まれ、より具体的には、糖尿病の予測、検出、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を行うことが含まれる。糖尿病の予測には、境界型糖尿病を識別すること(糖尿病の早期診断)が含まれる。境界型糖尿病とは、高血糖を伴わないインスリン抵抗性状態にある容態をいう。予後判定には、糖尿病の治療を行った場合において、治療後の糖尿病の改善の有無又はその程度を判断することが含まれる。
本発明の糖尿病マーカー分析法は、上述のインスリン抵抗性マーカー分析法における「インスリン抵抗性」を「糖尿病」と読み替えて同様に行うことができる。
本発明の糖尿病を評価する方法は、採血試料中における前記ポリペプチドの濃度を測定する工程、及び、得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程を含む。
採血試料は、糖尿病を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体が糖尿病となることが予測されること、又は糖尿病の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、糖尿病に関連する他のいかなる評価基準(例えば他の糖尿病マーカー、血糖値、ヘモグロビンA1c)を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明の糖尿病マーカーの濃度と同様に他の評価基準となる物質の濃度を測定することを含んでよい。
その他、本発明の糖尿病マーカー分析法において行われる採血試料の調製及びポリペプチド濃度測定には、上述のインスリン抵抗性マーカー分析法における場合と同じ方法を用いることができる。正常及び糖尿病の評価は、上述のインスリン抵抗性マーカー分析法における正常及びインスリン抵抗性の評価と同じ基準で行ってよい。
[6.インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法]
上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーは、インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニングに有用である。本発明は、上記のインスリン抵抗性マーカーが、生体が呈する全身性インスリン抵抗性と関連を示すことを利用し、全身性インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法においては、候補物質を生体内に投与することによって本発明のインスリン抵抗性マーカーの発現が制御されるか否かの判断が行われる。この判断においては、生体における上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーの血中濃度を指標の1つとする。
本発明のスクリーニング方法によってインスリン抵抗性を改善すると判断された候補物質は、全身性インスリン抵抗性を改善するための薬剤組成物の有効成分として有用である。また、本発明のインスリン抵抗性マーカー成分であるポリペプチドは、肥満との関連性も本発明者らによって見出されている。より具体的には、このポリペプチドの発現を抑制することによって肥満が抑制されることが本発明者らによって見出されている。すなわち、本発明のスクリーニング方法によって見出される候補物質は肥満抑制性であり、この候補物質を有効成分とする薬剤組成物は、従来のインスリン抵抗性治療薬に用いられるチアゾリジン誘導体において懸念されるような肥満の副作用を回避することができる点で優れている。
「インスリン抵抗性を改善する」ことには、インスリン抵抗性を、よりインスリン感受性へ変化させること、及び、インスリン抵抗性を、よりグルコース輸送活性へ変化させることが含まれ、より具体的には、インスリン抵抗性におけるインスリン情報伝達抑制作用を制御すること、及び、グルコース輸送系抑制作用を制御することが含まれ、例えば、インスリン抵抗性を伴う疾患を治療することが挙げられる。
[6−1.インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニングのプロセス]
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程:
インスリン抵抗性を発現している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記生体における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする。
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、インスリン抵抗性の容態又は病態に関連する他のいかなるマーカーの測定結果を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明のポリペプチドの濃度と同様に他のマーカーの濃度を測定することを含んでよい。
[6−2.生体]
前記生体は、ヒト又は非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが哺乳類でありうる。哺乳類の例としては、霊長類(ヒト以外)、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
「候補物質を投与しない生体」は、インスリン抵抗性を発症している生体であり、候補物質を投与される前の段階における生体、又は陰性対照となる生体でありうる。生体がインスリン抵抗性を発現していることは、公知のインスリン抵抗性評価法又は上述の本発明のインスリン抵抗性マーカー分析法によりインスリン抵抗性であると評価されることによって決定されうる。
[6−3.候補物質]
[6−3−1.候補物質を含む試料]
候補物質となり得るものとしては、特に限定されないが、核酸、タンパク質、ペプチド、有機化合物、無機化合物などが挙げられる。このような候補物質を含む試料としては、特に限定されないが、細胞抽出物、ポリヌクレオチドライブラリの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、及びこれらの混合物などが挙げられる。
[6−3−2.候補物質の予備スクリーニング]
本発明のスクリーニング法において候補物質となる物質には、インスリン抵抗性を改善する物質についての他のスクリーニング方法(以下、予備スクリーニング方法と記載する)において得られた候補物質を採用することができる。予備スクリーニング方法の例として、特開2009−204475号公報に記載の方法が挙げられる。
より具体的には、予備スクリーニング方法においては;
インスリン抵抗性マーカー(予備スクリーニングについて記載する場合、インスリン抵抗性マーカーには、本発明のポリペプチド、及び本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの両方を含む)の発現を制御すること、又は
そのインスリン抵抗性マーカーの機能(具体的にはインスリン抵抗性誘発活性、例えばインスリン情報伝達経路の抑制活性)を制御すること
によってインスリン抵抗性を改善する物質が予備スクリーニングされる。
より具体的には、
インスリン抵抗性マーカーの発現量に基づいてインスリン抵抗性を改善する物質の予備スクリーニング方法は、以下の工程:
インスリン抵抗性試料と、候補物質とを接触させる工程、
前記候補物質を接触させた場合の前記インスリン抵抗性試料におけるインスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能を測定する工程、及び
前記候補物質を接触させた場合の測定された前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能と、前記候補物質を接触させない場合の前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を接触させた場合の測定された前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能が、前記候補物質を接触させない場合の前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする。
予備スクリーニングにおいては、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド)のレベル、そのポリヌクレオチドの翻訳物であるポリペプチドのレベル(発現レベル又は分泌レベル)、又はそのポリペプチドの機能(インスリン抵抗性誘発活性)を指標とする。
ポリヌクレオチドのレベルを指標として予備スクリーニングする場合に用いられるインスリン抵抗性試料としては、ポリヌクレオチドを含む水溶液、ポリヌクレオチドを発現する細胞に由来する画分(細胞溶解液、細胞破砕液、核抽出液など)などが挙げられる。上記細胞としては、マウス細胞(3T3-L1、NIH3T3など)、ヒト細胞(A431、MCF-7など)などのポリヌクレオチドを内在的に発現している細胞が挙げられる。また、マウス由来細胞(NIH 3T3、C127、COP 、MOP、WOPなど)、ハムスター由来細胞(CHO、CHO DHFR-など)、サル由来細胞(COS-7、COS-1、CV-1など)、ヒト由来細胞(HeLaなど)、昆虫由来細胞(Sf21、Sf9、High Fiveなど)などを宿主細胞としてポリヌクレオチドが導入された、遺伝子導入細胞が挙げられる。
ポリペプチドのレベルを指標として予備スクリーニングする場合に用いられるインスリン抵抗性試料としては、ポリペプチドを含む水溶液、ポリペプチドを発現する細胞に由来する画分(細胞溶解液、細胞破砕液、核抽出液など)などが挙げられる。上記細胞としては、ポリヌクレオチドを発現する細胞と同じものを用いることができる。上記細胞は、ポリヌクレオチドを発現し、その翻訳産物として、ポリペプチドを発現する。
ポリヌクレオチド又はポリペプチドのレベルを指標として予備スクリーニングする場合において、例えば、インスリン抵抗性マーカーの発現に発現誘導物質(例えば、TNFα、グルココルチコイド(デキサメサゾン)、遊離脂肪酸、レジスチン、PAI-1など)を必要とする細胞を用いる場合は、当該発現誘導物質の存在下で候補物質を接触させた細胞におけるインスリン抵抗性マーカーのレベルが、当該発現誘導物質の存在下で候補物質を接触させない細胞におけるインスリン抵抗性マーカーのレベルより減少することを指標に、物質の選択を行うことができる。
ポリペプチドの機能を指標として予備スクリーニングする場合に用いられるインスリン抵抗性試料としては、インスリン抵抗性マーカーの恒常的存在下にある試料が用いられ、具体的には、インスリン抵抗性マーカーに長期暴露された試料や、インスリン抵抗性マーカーを恒常的に発現又は分泌している細胞が挙げられる。
インスリン抵抗性誘発活性としては、例えばインスリン情報伝達経路並びにグルコース輸送系を抑制する活性が挙げられる。このような活性としては、例えば、インスリン受容体を介したリン酸化Aktの増加を抑制させ、或いはインスリン情報伝達経路におけるインスリン受容体の下流で機能するその他の因子を、細胞外からのグルコース輸送を抑制するように増加又は減少させる活性をいう。これらの機能は、インスリン抵抗性マーカーが恒常的に存在していることによって獲得される。予備スクリーニングにおいては、インスリン抵抗性マーカーによる上記機能を抑制する物質を選択する。
ポリペプチドの機能を指標として予備スクリーニングする場合において、例えば、インスリン抵抗性マーカーの発現に発現誘導物質(例えば、TNFα、グルココルチコイド(デキサメサゾン)、遊離脂肪酸、レジスチン、PAI-1など)を必要とする細胞を用いる場合は、当該発現誘導物質の存在下で候補物質を接触させたインスリン抵抗性細胞において発現したリン酸化Aktの発現レベルが、当該発現誘導物質の存在下で候補物質を接触させないインスリン抵抗性細胞におけるリン酸化Aktのレベルより減少することを指標の1つとして、候補物質の選択を行うことができる。
インスリン情報伝達関連因子の中でも、上記のリン酸化Aktのように、その発現亢進によりグルコース輸送系を活性化させる因子については、上記と同様にインスリン抵抗性マーカーの機能を制御する物質の選択を行うことができる。
一方、インスリン情報伝達関連因子の中でも、Aktのように、その発現亢進によりグルコール輸送系を不活性化させる因子については、上記とは反対に、候補物質を接触させたインスリン抵抗性試料における当該因子のレベルが、当該候補物質を接触させないインスリン抵抗性試料における当該因子のレベルより増加すること;又は、候補物質を接触させたインスリン抵抗性細胞において発現した当該因子の発現レベルが、当該候補物質を接触させないインスリン抵抗性細胞における当該因子のレベルより増加すること、を指標の1つとして、候補物質の選択を行うことができる。
[6−3−3.候補物質投与法]
候補物質の投与の方法としては特に限定されず、薬剤スクリーニング分野で行われるいかなる方法が用いられても良い。従って、経口投与(口腔内投与、舌下投与等)及び非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等)を問わない。
[6−4.採血試料]
インスリン抵抗性マーカーの血中濃度の測定をするために、生体から血液を採取することができる。
採血試料は、分析に本質的な影響を与えないいかなる前処理が行われたものであっても良い。前処理としては、血漿交換、血清交換、本発明のポリペプチドへの結合能を有する物質の添加(本発明のポリペプチドを分析系から除外しうるもの)などは除外され、抗凝血処理や遠心分離(血漿分離、血清分離)などが含まれる。従って、採血試料としては、全血、血漿、血清などが含まれる。
[6−5.ポリペプチド濃度測定法]
インスリン抵抗性マーカーの血中濃度の測定においては、採血試料中における本発明のポリペプチドの濃度を測定することにより行うことができる。
ポリペプチドの濃度測定法としては特に限定されず、特定のポリペプチドを特異的に検出することが出来るいかなる方法も用いることができる。具体的には、生体特異的親和性に基づく検査、又は質量分析法によって測定されうる。
生体特異的親和性に基づく検査は当業者に良く知られた方法であり、特に限定されないが、イムノアッセイが好ましい。具体的には、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集測定、補体結合分析検定、免疫放射定量法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの、競合及び非競合アッセイ系を含むイムノアッセイが挙げられる。これらの方法においては、採血試料中のプログラニュリンに結合する抗体の存在を検出する。測定すべきポリペプチド及びこのポリペプチドの抗体からなる免疫複合体を形成しうる条件のもと、採血試料を当該抗体に接触させることによって行われる。より具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に決定することができる。
質量分析法によって測定する方法としては、ポリペプチドを定量的に測定することができる方法を当業者が適宜選択することができる。
例えば、同位体標識法が挙げられる。同位体標識法は、定量性に優れた方法であるため好ましい。この場合、上記ポリペプチドを既知レベルで調製した試料や、正常試料などの適当な試料を対照試料として、対象となる個体の試料との間における前記ポリペプチドの存在量の差を調べることによって、測定を行うことができる。
また、採血試料から免疫沈降物を得て、免疫沈降物を質量分析する方法が挙げられる(国際公開第2008/065806号)。この場合、採血試料中に存在する本発明のポリペプチドを、その抗体が結合した担体用いて、又は、前記抗体及び前記抗体と特異的に結合することができる分子が結合した担体を用いて免疫沈降させる。得られたポリペプチドの免疫沈降物は、電荷中和剤(例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩)を含む水溶液を用いて洗浄される。その後、免疫沈降物を直接質量分析に供することによって、内部標準に基づいてポリペプチドの定量を行うことができる。
[6−6.インスリン抵抗性改善の評価]
測定されたインスリン抵抗性マーカー血中濃度の減少の度合いとしては、測定法などによって異なるため特に限定されるものではないが、正常濃度に近い濃度まで、或いは、インスリン抵抗性を治癒させる観点からは正常濃度にまで減少することが好ましい。
「正常濃度」には、インスリン感受性である生体における血中濃度が含まれる。「正常濃度」は、公知のインスリン抵抗性評価法及び/又は上述の本発明のインスリン抵抗性マーカー分析法により正常であると評価されることによって決定されうる。
従って、本発明のスクリーニング方法において測定された本発明のポリペプチドの濃度がどの程度減少した場合に生体のインスリン抵抗性が改善されたと判断するかについては、特に限定されるものではない。インスリン抵抗性が改善されたと判断される場合の本発明のポリペプチド測定濃度は、例えば公知のインスリン抵抗性評価法及び/又は上述の本発明のインスリン抵抗性マーカー分析法により正常の範囲であると判断されるべき生体の血液中における本発明のポリペプチドの濃度まで減少しうる。或いは、既存のインスリン抵抗性治療薬の投与によりインスリン抵抗性が改善されたと判断されるべき生体の血液中における本発明のポリペプチドの濃度まで減少しうる。
例えば、候補物質が投与されない生体におけるインスリン抵抗性マーカーの血中濃度の1/1.25以下、好ましくは1/1.5以下、より好ましくは1/2以下(モル基準)となる程度をインスリン抵抗性が改善したと評価する目安にすることができる。例えばマウスなどの齧歯類の場合では、ポリペプチドの測定濃度が0.2μM〜0.3μMまで減少すれば、インスリン抵抗性が改善したと評価する目安にすることができる。
さらに、本発明の方法においては、インスリン抵抗性の容態又は病態に関する他のいかなる所見を組み合わせることも許容される。
[7.糖尿病を改善する物質のスクリーニング方法]
上記の本発明の糖尿病マーカーは、糖尿病を改善する物質のスクリーニングに有用である。本発明は、上記の糖尿病マーカーが、生体が呈する糖尿病と関連を示すことを利用し、糖尿病を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法においては、候補物質を生体内に投与することによって本発明の糖尿病症状が改善されるか否かの判断が行われる。この判断においては、生体における上記の本発明の糖尿病マーカーの血中濃度を指標の1つとする。
本発明のスクリーニング方法によって糖尿病を改善すると判断された候補物質は、糖尿病を改善するための薬剤組成物の有効成分として有用である。また、本発明の糖尿病マーカー成分であるポリペプチドは、肥満との関連性も本発明者らによって見出されている。より具体的には、このポリペプチドの発現を抑制することによって肥満が抑制されることが本発明者らによって見出されている。すなわち、本発明のスクリーニング方法によって見出される候補物質は肥満抑制性であり、この候補物質を有効成分とする薬剤組成物は、従来の糖尿病治療薬に用いられるチアゾリジン誘導体において懸念されるような肥満の副作用を回避することができる点で優れている。
「糖尿病を改善する」ことには、糖尿病症状の一つであるインスリン抵抗性を、よりインスリン感受性へ変化させること、及び、インスリン抵抗性を、よりグルコース輸送活性へ変化させることが含まれ、より具体的には、インスリン抵抗性におけるインスリン情報伝達抑制作用を制御すること、及び、グルコース輸送系抑制作用を制御することが含まれる。また、糖尿病症状の一つである高血糖値を下げることが含まれる。
本発明の糖尿病を改善する物質のスクリーニング方法は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における「インスリン抵抗性」を「糖尿病」と読み替えて同様に行うことができる。
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程:
糖尿病に罹患している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない生体における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、糖尿病に関連する他のいかなる評価基準(例えば他の糖尿病マーカー、血糖値、ヘモグロビンA1c)を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明のポリペプチドの濃度と同様に他の評価基準となる物質の濃度を測定することを含んでよい。
その他、スクリーニングに用いられる生体及び候補物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法と同じものを用いることができる。採血試料の調製、候補物質投与、及びポリペプチド濃度測定には、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における場合と同じ方法を用いることができる。
糖尿病改善の評価は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における評価方法と同じ基準で行ってよい。
[8.全身性インスリン抵抗性を改善等するための薬剤組成物]
本発明における薬剤組成物は、全身性インスリン抵抗性を評価するための診断薬、全身性インスリン抵抗性を改善するための潜在的又は実用的な治療薬として用いられうるものである。
本発明のインスリン抵抗性マーカーや、上記スクリーニング方法で選択された物質は、薬剤組成物の有効成分として有用である。
すなわち、本発明の薬剤組成物における有効成分としては、以下のものが挙げられる。薬剤組成物は、このような有効成分に、薬剤として許容される希釈剤、担体、賦形剤などを混合して調製することができる。
[8−1.配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド、或いは配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドと類似の構造を有する物質]
本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド、或いは当該ポリペプチドと類似の構造を有する物質は、インスリン抵抗性マーカーと結合可能な蛋白質または受容体との相互作用を著しく阻害する可能性を有する。それゆえ、当該ペプチド或いは当該物質はインスリン抵抗性マーカーの機能を減弱させる可能性を有する。
従って、当該ポリペプチド、或いは当該物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。なお、上記ポリペプチドと類似の構造を有する物質は、上記ポリペプチドと同様にインスリン抵抗性マーカーと結合可能な蛋白質または受容体との相互作用を減弱させる作用を生じさせる構造を有していればよく、そのような観点に基づく限り、具体的な構造類似性は当業者が適宜判断することができる。
[8−2.配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドに対する抗体]
「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び、分子生物学的技術により調製した抗体が含まれる。これらの抗体の調製は、当業者によって良く知られた方法によって行われるものである。
「抗体」とは、広く免疫特異的に結合する物質をいい、抗体フラグメントや抗体融合タンパク質も含まれる。
上述のインスリン抵抗性マーカー分析法において述べたように、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの抗体は、全身性インスリン抵抗性を評価するために有用に用いられる。従って、当該ポリペプチドを有効成分として含む薬剤組成物は、診断薬として有用である。
当該抗体は、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドに特異的に結合するため、当該インスリン抵抗性マーカーの機能を減弱することができる。従って、当該ポリペプチドに対する抗体を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
[8−3.配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの発現レベル又は分泌レベルを制御する物質]
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの発現量又は分泌量を減少させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
[8−4.配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドによる機能を制御する物質]
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの機能を減弱させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
このような物質の例としては、予備スクリーニングにおいて、本発明のインスリン抵抗性マーカーであるポリペプチドの発現又は分泌により下方制御されるインスリン情報伝達関連因子を制御する物質を増加させる、或いは、本発明のインスリン抵抗性マーカーであるポリペプチドの発現又は分泌により上方制御されるインスリン情報伝達関連因子を制御する物質を減少させると判断されたものが挙げられる。
[8−5.配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチド]
「配列番号2に記載の塩基配列」は、配列番号1のポリペプチドをコードする塩基配列であり、すなわちプログラニュリンのヒトホモログをコードする塩基配列である。
「ポリヌクレオチド」には、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドが含まれる。また、「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAが含まれる。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれる。RNAには、totalRNA、mRNA、rRNA、及び合成RNAが含まれる。さらに、「ポリヌクレオチド」には、1本鎖ポリヌクレオチド及び2本鎖ポリヌクレオチドが含まれる。
「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド」には、プログラニュリン、グラニュリンペプチド(具体的には、1−グラニュリン、2−グラニュリン、3−グラニュリン、4−グラニュリン、5−グラニュリン、6−グラニュリン、及び7−グラニュリン)、及び、プログラニュリン配列中のインスリン抵抗性に関わる最小配列を一部又は全体に含むいかなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。
配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチドは、当該配列の連続する少なくとも150個の塩基からなるポリヌクレオチドであっても良いし、当該配列の連続する少なくとも1779個の塩基からなるポリヌクレオチドであっても良い。
「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド」には、配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなる配列で特定されるポリヌクレオチド、及び、当該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの同族体及び変異体であり且つ当該ポリペプチドと同等のインスリン抵抗性に関与する生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
上記の同属体をコードするポリヌクレオチドには、プログラニュリンをコードするポリヌクレオチドのヒトホモログに相当する、他の種のホモログの全部又は部分配列が含まれる。他の種としては、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
従って、「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチド」には、マウスホモログである配列番号4に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチドが含まれる。
上記の変異体をコードするポリヌクレオチドには、プログラニュリンをコードするポリヌクレオチドの天然に存在する変異体、及び人為的に塩基の置換、付加、挿入及び欠失させることにより改変された変異体が含まれる。
これら同族体及び変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなる配列との相同性が、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%のものが挙げられる。
上記のポリヌクレオチドを標的RNAとした場合、当該標的RNAと配列相同性を持つ二本鎖RNA(これも本発明のインスリン抵抗性マーカーとして提供されるポリヌクレオチドに含まれる)は、RNA干渉機構によって、標的RNAの分解を誘導することができる。従って、当該ポリヌクレオチドを有効成分として含む薬剤組成物は、治療剤として有用である。
また、上記のポリヌクレオチドを標的とした場合、当該標的ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドは、その投与によって、遺伝子の活性化を阻害することができる。従って、当該ポリヌクレオチドを有効成分として含む薬剤組成物は、治療剤として有用である。
[8−6.配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチドの発現レベルを制御する物質]
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、上記の配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチドの発現量を減少させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
[9.糖尿病を改善等するための薬剤組成物]
本発明における薬剤組成物は、糖尿病を評価するための診断薬、糖尿病を改善するための潜在的又は実用的な治療薬として用いられうるものである。この薬剤組成物としては、上述のインスリン抵抗性を改善等するための薬剤組成物における「インスリン抵抗性」を「糖尿病」に読み替えることにより上述と同様の薬剤組成物が挙げられる。
[10.インスリン抵抗性又は糖尿病を改善する方法]
上記の薬剤組成物を生体に投与することや、上記のポリヌクレオチド又は上記ポリヌクレオチドを導入したウイルスを生体に感染させることによって、生体中におけるインスリン抵抗性マーカー又は糖尿病マーカーの濃度を低下させうる。これによって、生体のインスリン抵抗性又は糖尿病を改善しうる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、以下において、プログラニュリンは、完全長のプログラニュリンを指すものとする。
[参考例1:インスリン抵抗性を自然発症するマウス(ob/ob)におけるプログラニュリンの脂肪組織発現に関する検証]
ob/obマウスは、遺伝的に肥満を伴って著しいインスリン抵抗性を示すマウスであり、インスリン抵抗性の良好なモデル動物である。より具体的には、ob/obマウスは、高インスリン血症、高コルチコイド血症、高血糖、インスリン抵抗性、中枢神経活動の変化、過食、褐色脂肪細胞の代謝率の低下、白色脂肪細胞の重量の増加、妊孕性の低下などを示す。
一方、ヘテロ接合体であるob/+マウスは肥満もインスリン抵抗性も呈しない。
ob/obマウスとob/+マウスとについて、血糖変化及び血中インスリン濃度変化をそれぞれ図1及び図2に示す。図1において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血糖(Blood glucose)(mg/dl)を表す。ob/obマウスはob/+マウスに比べて若干の高血糖であるが、(後述の実施例2で示される糖尿病モデルマウスdb/dbと対照マウスdb/+との差ほどは)顕著な差を示すものではない。図2において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血清インスリン濃度(Serum insulin)(ng/ml)を表す。ob/obマウスはob/+マウスに比べて顕著にインスリン抵抗性を示している。
7週齢のob/obマウス及びob/+マウスの脂肪組織(腸間膜脂肪組織(MF)、副睾丸脂肪組織(EF)、皮下脂肪組織(SC))を摘出し、リアルタイムPCR法によってプログラニュリン(PGRN)のmRNA発現量を調べた。
その結果、非インスリン抵抗性(インスリン感受性)マウス(ob/+マウス)の対照群と比較して、インスリン抵抗性マウス(ob/obマウス)では副睾丸脂肪組織(EF)において約3.52±0.30(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍、腸間膜脂肪組織(MF)において約3.91±0.50(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT))において約3.08±0.16(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍発現レベルが上昇した。この結果を図3に示す。図3において、横軸は脂肪組織の種類(副睾丸脂肪組織(EF)、腸間膜脂肪組織(MF)、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT))、縦軸は対照群と比較したプログラニュリン(PGRN)のmRNA発現量(mRNA expression (PGRN/36B4))を表す。
[実施例1:肥満を伴いインスリン抵抗性を自然発症するマウス(ob/ob)におけるプログラニュリンの血中濃度に関する検証]
7週齢のob/obマウス及びob/+マウスから血液を採取し、室温放置後、遠心分離により血清を調製し、ELISA法によって血清中のプログラニュリン濃度を測定した。血清中のプログラニュリン濃度はob/+マウスで2.09±0.17(mean±S.D., n=5)μg/ml、ob/obマウスで3.21±0.16(mean±S.D., n=5)μg/mlであり、糖尿病において有意(p<0.01)に高値であった。
ob/obマウスとob/+マウスとについて血中プログラニュリン濃度変化を図4に示す。図4においては、横軸は週齢(Age (Weeks))、縦軸は血清プログラニュリン濃度(Serum PGRN conc.)(μg/ml)を表す。
参考例1及び実施例1より、血中プログラニュリン濃度はインスリン抵抗性と関連することが示された。
[実施例2:肥満を伴い糖尿病を自然発症するマウス(db/db)におけるプログラニュリンの血中濃度に関する検証]
db/dbマウスは遺伝的に肥満を呈し、著しい高血糖を示す糖尿病の良好なモデルマウスである。db/dbマウスとその対照モデルマウス(db/+m)についての血糖変化及び血中インスリン濃度変化をそれぞれ図5及び図6に示す。図5において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血糖(Blood glucose)(mg/dl)を表す。db/db は生後まもなく急激に血糖が上昇し、db/+mマウスに比べて顕著に高血糖を示す。図6において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血清インスリン濃度(Serum iusulin)(ng/ml)を表す。db/dbにおいては、若齢期(6週〜8週齢)に血中インスリン濃度が極めて高値であり、図5に示される血糖値上昇に伴って血中インスリン濃度が低下する。血中インスリン濃度はインスリン抵抗性の間接的指標となり得るが、(すなわち、全時期を通してインスリン抵抗性であるが、)6週〜8週齢で相対的にインスリン抵抗性が強く、糖尿病発症初期である事が示唆される。
遺伝的糖尿病自然発症モデルマウス(db/db)とその対照モデルマウス(db/+m)についての血中プログラニュリン濃度変化を図7に示す。図7においては、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血清プログラニュリン濃度(Serum PGRN conc.)(μg/ml)を表す。図7が示すように、db/dbマウスのプログラニュリン濃度は、インスリン抵抗性においてdb/+mマウスに比べて高値であり、糖尿病発症(すなわち血糖値上昇後)においてはインスリン抵抗性の低下によりdb/+mマウスとの差が小さくなるが、全時期を通して安定的に高値である。
実施例2より、血中プログラニュリン濃度はインスリン抵抗性に特異的であり、さらに糖尿病と関連することが示された。
[実施例3:チアゾリジン誘導体を経口投与した遺伝的糖尿病自然発症モデルマウス(ob/ob)におけるプログラニュリンの脂肪組織発現及び血中濃度の検証]
10週齢のob/obマウスにチアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン)30mg/kgを1週間連日経口投与した。溶媒(10%(w/v)カルボキシメチルセルロース)のみを投与した群を対照群(Vehicle)として、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うと、随時血糖値(0分値)及びブドウ糖負荷後の血糖値は顕著にピオグリタゾン投与群で低値であり、すなわち耐糖能異常が改善したことが報告されている(非特許文献6:Journal of Biological Chemistry 281 8748-8755)。
この場合において、対照群(Vehicle)と比較したピオグリタゾン投与群(Pio)の脂肪組織におけるプログラニュリンのmRNA発現量を測定すると、腸間膜脂肪組織(MF)で0.42±0.11(mean±S.D., n:ピオグリタゾン投与群=5, 対照群=4, p<0.01)倍、副睾丸脂肪組織(EF)で0.74±0.06(mean±S.D., n:ピオグリタゾン投与群=5, 対照群=4, p<0.05)倍、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT))で0.61±0.07(mean±S.D., n:ピオグリタゾン投与群=5, 対照群=4, p<0.05)倍であり、有意にmRNA発現が低値であった。この結果を図8に示す。図8において、横軸は脂肪組織の種類(副睾丸脂肪組織(EF)、腸間膜脂肪組織(MF)、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT))、縦軸はプログラニュリンmRNAの相対発現量(Relative PRGN mRNA expression)、Vehicleは対照群、Pioはピオグリタゾン投与群を表す。
また、血清中プログラニュリン濃度を測定すると、対照群(Vehicle)で2.57±0.28(mean±S.D., n=4)μg/ml、ピオグリタゾン投与群(Pio)で1.86±0.10(mean±S.D., n=5)μg/mlで有意(p<0.05)に低濃度であった。この結果を図9に示す。図9において、横軸は測定対象群の種類(ピオグリタゾン群(Pio)、対照群(Vehicle)及びob/+マウス)、縦軸は血清中のプログラニュリン濃度(Serum PGRN conc.)(μg/ml)を表す。
[参考例2:プログラニュリン遺伝子欠損マウスの解析]
プログラニュリンの発現と肥満によるインスリン抵抗性との因果関係を明らかにするため、プログラニュリン遺伝子を欠損するノックアウトマウスの解析を行った。具体的には、理研バイオリソースセンターにおいて系統維持されているプログラニュリン遺伝子を欠損するノックアウトマウス(PGRN-/-)(Behavioural Brain Research 185 (2007) 110-118)を入手し、プログラニュリン遺伝子を持つ野生型マウス(WT)を対照群として、PGRN-/-マウスを通常食(標準飼料CE-2(日本クレア製):脂質16kcal%)及び高脂肪食(D12492飼料(Research Diets, Inc.製):脂質60kcal%)給餌下で飼育した。
飼育中におけるノックアウトマウス(PGRN-/-)と野生型マウス(WT)との体重の変化を、図10(a)(通常食を給餌した場合)及び図10(b)(高脂肪食を給餌した場合)に示す。図10(a)及び(b)において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は体重(Body weight(g))、図10(c)は、飼育中におけるノックアウトマウス(PGRN-/-)と野生型マウス(WT)との摂食量を示す。図10(c)において、横軸は測定対象群の種類、縦軸は摂食量(Food intake(g))を表す。図10が示すように、野生型マウスとPGRN-/-マウスとを通常食(Standard diet, SD)給餌下で飼育した場合、体重に有意な差が観察されなかった(図10(a))。一方、野生型マウスとPGRN-/-マウスとを高脂肪食(High-fat diet, HFD)給餌下で飼育した場合、摂食量に差が無いにも関わらず(図10(c))、PGRN-/-マウスでは野生型マウスに対して高脂肪食給餌後6週以降、約20%体重が低値となった(図10(b))。
また、12週間高脂肪食給餌下で飼育した野生型マウス(WT)とノックアウトマウス(PGRN−/−)とにおける内臓脂肪蓄積を確認した(図11(a))。また、脂肪細胞の形態と炎症細胞とを、それぞれヘマトキシリンエオシン染色(HE)(図11(b))と抗Mac3抗体を用いた免疫組織化学染色(Mac3)(図11(c))とによって確認した。図11(a)が示すように、高脂肪食給餌下で飼育した野生型マウスでは著しい脂肪組織の沈着が観察されたことに対し、同じ条件下で飼育したノックアウトマウスでは内臓脂肪の沈着は観察されなかった。また、図11(b)が示すように、高脂肪食給餌下で飼育した野生型マウスでは著しい脂肪細胞の肥大化が観察されたことに対し、同じ条件下で飼育したノックアウトマウスでは内臓脂肪の肥大化は観察されなかった。さらに、図11(c)が示すように、高脂肪食給餌下で飼育した野生型マウスでは著しい炎症細胞の浸潤(矢印)が観察されたことに対し、同じ条件下で飼育したノックアウトマウスでは炎症細胞の浸潤は観察されなかった。
さらに、高脂肪食(HFD)給餌下で飼育した13週齢の野生型マウス(WT)及びノックアウトマウス(PGRN-/-)と、通常食(SD)給餌下で飼育した13週齢の野生型マウス(WT)及びノックアウトマウス(PGRN-/-)とを用いて、腹腔に一定量のインスリン(0.75U/kg)を投与した後の血糖変化、すなわちインスリン負荷試験(ITT)を行い、インスリン応答性について調べた。この結果を図12に示す。図12において、横軸はインスリン投与後の経過時間(分)(Time(min))、縦軸はインスリン注射時における血糖値を100とした場合の相対血糖値(Blood glucose)(%)を表す。図12が示すように、高脂肪食(HFD)給餌下で飼育した野生型マウス(WT)のみがインスリン投与後の血糖が顕著に高値であり、すなわち顕著にインスリン抵抗性であることが示された。これに対し、ノックアウトマウス(PGRN-/-)は高脂肪食(HFD)給餌下で飼育した場合であっても、インスリン投与後の血糖が顕著に低値であり、すなわちインスリン応答性が良好であることが示された。
また、3ヶ月高脂肪食(HFD)給餌下で飼育した17週齢の野生型マウス(WT)とノックアウトマウス(PGRN-/-)とを用いて、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。OGTTとは、一定量のブドウ糖を経口投与した後の血糖値と血中インスリン濃度の変化とを調べる方法であり、これによって糖尿病を評価することができる。ブドウ糖投与量は1.5g/kgであった。この結果を図13に示す。図13(a)において、横軸はブドウ糖経口投与後の経過時間(分)(Time(min))、縦軸はブドウ糖経口投与時における血糖値(Blood glucose (mg/ml))を表す。図13(b)において、横軸はブドウ糖経口投与後の経過時間(分)(Time(min))、縦軸はブドウ糖経口投与時における血中インスリン濃度(Serum insulin conc.)(ng/ml)を表す。図13(a)が示すように、ノックアウトマウス(PGRN-/-)は野生型(WT)に対して、ブドウ糖投与後最高血糖を示す15分値における血糖値が有意(p<0.05)に低値であることがわかった。また、図13(b)が示すように、空腹時(0分値)の血中インスリン濃度は野生型(WT)に対して、ノックアウトマウス(PGRN-/-)で有意に低値であった。すなわち、ノックアウトマウスでは高脂肪食による肥満及びインスリン抵抗性の誘発、耐糖能の低下が完全に抑制されていることを示唆している。
以上の知見から、プログラニュリン遺伝子及びプログラニュリン蛋白質の発現抑制、並びにプログラニュリンの機能の抑制が、肥満症を抑制すると共に、インスリン応答性を良好にすることで糖尿病を改善させることが可能になると考えられる。すなわち、肥満を伴うことなくインスリン抵抗性及び糖尿病の予防及び治療のために有用となる、インスリン抵抗性及び糖尿病を改善及び抑制する方法を提供できる。また、肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を改善する物質、及び肥満を伴うことなく糖尿病を改善及び抑制する物質のスクリーニング方法を提供できる。

Claims (6)

  1. 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、肥満を伴わない場合における血中インスリン抵抗性マーカー。
  2. 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
    得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
    を含む、肥満を伴わない場合における採血試料中インスリン抵抗性マーカー分析法。
  3. 肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
    肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を発現している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
    を含み、
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
  4. 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中境界型糖尿病マーカー。
  5. 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
    得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
    を含む、採血試料中境界型糖尿病マーカー分析法。
  6. 境界型糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
    境界型糖尿病に罹患している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
    を含み、
    前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、境界型糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
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