JP5739433B2 - 血中インスリン抵抗性及び糖尿病マーカープログラニュリン、採血試料中のプログラニュリン濃度の分析方法、及び、インスリン抵抗性を改善及び糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法 - Google Patents
血中インスリン抵抗性及び糖尿病マーカープログラニュリン、採血試料中のプログラニュリン濃度の分析方法、及び、インスリン抵抗性を改善及び糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法 Download PDFInfo
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Description
現在、糖尿病診断には血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)値などの血糖評価が最も一般的な診断基準として用いられている。日本糖尿病学会が定める診断基準では、空腹時血糖値110mg/dL未満又は随時血糖値140mg/dL未満を正常型と示し、空腹時血糖値126mg/dL以上又は随時血糖値200mg/dL以上を糖尿病と示し、それ以外を境界型と示している。このような血糖値による判定を繰り返し、いずれも糖尿病型であれば糖尿病と診断される。HbA1cは血液中の余剰グルコースと結合した糖化蛋白質であり、その血中濃度は恒常的な血糖評価に有効である。よって、HbA1c値が6.5%以上である場合は、血糖値による一度の判定でも糖尿病と診断される。
一方、糖尿病治療においては膵臓β細胞に直接作用してインスリンの分泌を促すインスリン分泌促進剤、主に肝臓に作用して糖新生を抑制するビグアナイド剤、腸管からのブドウ糖吸収を抑えるαグルコシダーゼ阻害剤、及びインスリン応答性を向上させる薬剤が知られている。また、最近では、消化管ホルモンの働きを促進することによってインスリン分泌を高めるGLP-1受容体作動薬インクレチンやDPP-4阻害薬といった新ジャンルの薬剤も糖尿病治療に使われ始めている。
インスリン抵抗性は2型糖尿病の発生における第一段階と考えることができ、かつ血糖評価によって糖尿病が診断される以前から発症する。すなわち、第一段階の間、β細胞によるインスリン分泌の増大が筋肉及び肝臓のインスリン応答性の低下(インスリン抵抗性)を補うことにより、患者の血糖値は正常値を維持する(高インスリン血症)。2型糖尿病の発症における後期の段階で、β細胞機能が低下し、耐糖能異常を招来し、最終的に血糖評価によって診断される程度に糖尿病が顕在化する。耐糖能異常の患者においては、体重減量、運動、又は薬学的治療による早期の介入が、糖尿病の発生を遅らせ又は予防することにつながることが示されている(非特許文献4)。
そこで、インスリン抵抗性を検出するために有効なバイオマーカーが報告されている(特許文献1、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9)。
プログラニュリンは7種のグラニュリン(Granulin)ドメインを持つグラニュリン前駆タンパク質である。プログラニュリン及びグラニュリン類(Granulins)ペプチドは細胞外へ分泌されることで成長因子様の作用を持ち、炎症及び細胞遊走性に関与することが報告されていた(非特許文献3、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
プログラニュリンとインスリン抵抗性との関与については明らかにはされていなかったが、発明者らは、培養脂肪細胞からインスリン作用障害を検出しうるインスリン抵抗性マーカープログラニュリン(Progranulin)(別名プロエピセリン(Proepitherin)/PGRN/PCDGF/PEPI/GEP/GP88)を同定し、インスリン抵抗性とプログラニュリン発現との関連性について明らかにした(特許文献1)。
糖尿病における真の脅威はその合併症にあり、網膜症や糖尿病性腎症、心筋梗塞や脳血管疾患などの血管障害、神経障害など重大な慢性合併症が上げられる。このような合併症のリスクは糖尿病の未発症期から進行していることが知られている。従って、糖尿病をより早期に発見するための早期診断マーカーや、糖尿病をより早期に予防、改善する方法が求められている。現在広く用いられている繰り返し検査による血糖値やHbA1c値などの血糖評価は血糖が十分上がった完全な糖尿病状態の検出には有効であるが、早期診断や境界型糖尿病の検出を行うことは困難とされる。また、糖尿病薬の奏効評価、糖尿病治療戦略決定には、血糖評価だけでは不十分である。
インスリン抵抗性の早期診断は、抗糖尿病治療又は糖尿病の進行を予防する他の方法による早期の介入を可能にすると推測される。インスリン抵抗性に対するマーカーは、この状態の検出に極めて有効である。すなわち、適切なインスリン抵抗性マーカーは、例えば境界型糖尿病及び糖尿病未発症期における早期診断を可能にする疾患バイオマーカーになることが期待される。
インスリン抵抗性を改善することによって糖尿病を治療する薬剤であるチアゾリジン誘導体は、強力な脂肪細胞の分化促進作用を有する。このため、投与により体重の増加や肥満を招く危険性があり、この副作用により薬剤としての安全性が懸念されている。従って、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法が求められている。
本発明の目的は、インスリン作用の障害を引き起こした細胞における発現及び分泌を確認するいわば細胞レベルでのインスリン抵抗性を検出するためのマーカーではなく、インスリン抵抗性の症状を有する生体において発現及び分泌するいわば全身性のインスリン抵抗性を検出することができるマーカーを提供することにある。
本発明の目的は、糖尿病を検出することができるマーカーを提供することにある。
本発明の目的は、採血試料中における濃度を測定することによってインスリン抵抗性を検査することができる血中マーカー分析法を提供することにある。
本発明の目的は、採血試料中における濃度を測定することによって糖尿病を検査することができる血中マーカー分析法を提供することにある。
本発明の目的は、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することにある。
本発明の目的は、糖尿病改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。
本発明のマーカーとして用いられる「ポリペプチド」には、特定の配列(すなわち配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列)で特定されるポリペプチド、及び、当該ポリペプチドの同族体及び変異体であり且つ当該ポリペプチドと同等のインスリン抵抗性に関与する生物学的機能を有するポリペプチドが含まれる。
従って、「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、一例として、配列番号3に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドが含まれる。
「ポリペプチド」には、オリゴペプチド及びタンパク質が含まれる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中インスリン抵抗性マーカー。
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、採血試料中インスリン抵抗性マーカー分析法。
インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
インスリン抵抗性を発現している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
インスリン抵抗性を発現している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記生体における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中糖尿病マーカー。
配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、採血試料中糖尿病マーカー分析法。
糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
糖尿病に罹患している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
糖尿病に罹患している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない生体における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
本発明によって、インスリン作用の障害を引き起こした細胞における発現及び分泌を確認するいわば細胞レベルでのインスリン抵抗性を検出するためのマーカーではなく、インスリン抵抗性の症状を有する生体において発現及び分泌するいわば全身性のインスリン抵抗性を検出することができるマーカーを提供することができる。
本発明によって、糖尿病を検出することができるマーカーを提供することができる。
本発明によって、採血試料中における濃度を測定することによってインスリン抵抗性を検査することができる血中マーカー分析法を提供することができる。
本発明によって、採血試料中における濃度を測定することによって糖尿病を検査することができる血中マーカー分析法を提供することができる。
本発明によって、インスリン抵抗性改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することができる。
本発明によって、糖尿病改善のための新たな薬剤候補化合物の探索法を提供することができる。
本発明のマーカーは、インスリン抵抗性に特異性を示すものである。「インスリン抵抗性」とは、正常な量のインスリンによって正常な生理または分子応答を生じさせることができない状態をいう。場合により、内在的に生産されるか、又は外から加えられる過剰な生理学的量のインスリンによって、正常な生理または分子応答を少なくとも一部改善することができる、又は生物学的応答を生じさせることができる状態を含むことができる。本発明における「インスリン抵抗性」とは、細胞レベルで観察されるインスリン作用が障害された状態を示すものではなく、生体における糖代謝、脂質代謝などに対するインスリンの生理的作用が著しく障害された状態、いわば全身性のインスリン抵抗性をいう。
また、「インスリン抵抗性」の量的な定義も、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、HOMA−R値の正常値である2.5以下を逸脱すればインスリン抵抗性の疑い有りと診断されることが多い。マウスの場合は、例えばインスリン抵抗性を伴うob/obマウスで空腹時血中インスリン濃度は10ng/ml以上であるのに対して、インスリン抵抗性を伴わないob/+マウスで1ng/ml程度である。さらに、インスリン負荷試験における血糖変化も顕著に上昇するため、血糖値によって量的定義を行うことも可能である。しかしながら、これらに限定されることなく、インスリン抵抗性の量的な定義は、その他のファクターで定義されて良い。
本発明のマーカーはインスリン抵抗性に特異的であるため、インスリン抵抗性を示す疾患の一つである糖尿病のマーカーとして有用である。本発明において「糖尿病マーカー」とは、2型糖尿病を評価するマーカーをいい、糖尿病を予測するマーカー、及び糖尿病を識別するマーカーが含まれる。「糖尿病を予測する」には、境界型糖尿病を識別すること(糖尿病の早期診断)が含まれる。境界型糖尿病には、高血糖を伴わないインスリン抵抗性状態或いは耐糖能障害にある容態を含む。本発明のマーカーは、インスリン抵抗性に特異的であるため、高血糖を伴わない糖尿病の初期段階(境界型糖尿病)の検出を可能にすることから、糖尿病の早期診断が可能となる点で非常に有用である。
本発明の血中インスリン抵抗性マーカー及び血中糖尿病マーカーは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列」は、プログラニュリン(完全長)のヒトホモログの配列である。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、プログラニュリン(完全長)、グラニュリンペプチド(具体的には、グラニュリン−1、グラニュリン−2、グラニュリン−3、グラニュリン−4、グラニュリン−5、グラニュリン−6及びグラニュリン−7)、及び、プログラニュリン配列中のインスリン抵抗性に関わる最小配列を一部又は全体に含むいかなるポリペプチドも含まれる。なお、配列番号1に記載するプログラニュリン(完全長)の、284-335番目に相当するペプチドがグラニュリン−1、208-260番目に相当するペプチドがグラニュリン−2、366-416番目に相当するペプチドがグラニュリン−3、443-494番目に相当するペプチドがグラニュリン−4、520-571番目に相当するペプチドがグラニュリン−5、126-178番目に相当するペプチドがグラニュリン−6、61-112番目に相当するペプチドがグラニュリン−7である。
従って、「配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド」には、マウスホモログである配列番号3に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドが含まれる。
これら同族体及び変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなる配列との相同性が、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%のものが挙げられる。
上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーの血中濃度を分析することによって、インスリン抵抗性を評価することが可能である。
本発明のインスリン抵抗性を評価する方法は、採血試料中における前記ポリペプチドの濃度を測定する工程、及び、得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程を含む。
採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体がインスリン抵抗性の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
本発明においては、分析対象として採血試料が用いられる。採血試料は、インスリン抵抗性を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料は、分析に本質的な影響を与えないいかなる前処理が行われたものであっても良い。前処理としては、血漿交換、血清交換、本発明のポリペプチドへの結合能を有する物質の添加(本発明のポリペプチドを分析系から除外しうるもの)などは除外され、抗凝血処理や遠心分離(血漿分離、血清分離)などが含まれる。従って、採血試料としては、全血、血漿、血清などが含まれる。
採血試料中のポリペプチドの濃度測定法としては特に限定されず、特定のポリペプチドを特異的に検出することが出来るいかなる方法も用いることができる。具体的には、生体特異的親和性に基づく検査、又は質量分析法によって測定されうる。
例えば、同位体標識法が挙げられる。同位体標識法は、定量性に優れた方法であるため好ましい。この場合、上記ポリペプチドを既知レベルで調製した試料や、正常試料などの適当な試料を対照試料として、対象となる個体の試料との間における前記ポリペプチドの存在量の差を調べることによって、測定を行うことができる。
ポリペプチドの血中「正常濃度」には、インスリン感受性である生体における本発明のポリペプチドの血中濃度が含まれる。インスリン感受性とは、正常な量のインスリンによる正常な生理または分子応答を生じさせることができる状態をいう。
ここで、「正常な量」の具体的な定義は、公知のインスリン抵抗性評価法に基づいて当業者によって適宜なされるものである。例を挙げると、成人の場合、血中インスリン(IRI値)が空腹時で10μU/ml以下である。マウスの場合は、血中インスリン濃度が例えば空腹時で1ng/ml程度である。しかしながら、これらに限定されることなく、正常な量はその他の様々なファクターでも定義される。
上記の本発明の糖尿病マーカーの血中濃度を分析することによって、糖尿病を評価することが可能である。
本発明の糖尿病を評価する方法は、採血試料中における前記ポリペプチドの濃度を測定する工程、及び、得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程を含む。
採血試料は、糖尿病を評価すべき生体から採取されたものである。採血試料中の前記ポリペプチドの測定濃度が、前記ポリペプチドの血中正常濃度よりも大きいことを、前記生体が糖尿病となることが予測されること、又は糖尿病の状態にある可能性が高いことの指標の1つとすることができる。
上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーは、インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニングに有用である。本発明は、上記のインスリン抵抗性マーカーが、生体が呈する全身性インスリン抵抗性と関連を示すことを利用し、全身性インスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法においては、候補物質を生体内に投与することによって本発明のインスリン抵抗性マーカーの発現が制御されるか否かの判断が行われる。この判断においては、生体における上記の本発明のインスリン抵抗性マーカーの血中濃度を指標の1つとする。
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程:
インスリン抵抗性を発現している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記生体における前記濃度よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする。
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、インスリン抵抗性の容態又は病態に関連する他のいかなるマーカーの測定結果を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明のポリペプチドの濃度と同様に他のマーカーの濃度を測定することを含んでよい。
前記生体は、ヒト又は非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが哺乳類でありうる。哺乳類の例としては、霊長類(ヒト以外)、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
「候補物質を投与しない生体」は、インスリン抵抗性を発症している生体であり、候補物質を投与される前の段階における生体、又は陰性対照となる生体でありうる。生体がインスリン抵抗性を発現していることは、公知のインスリン抵抗性評価法又は上述の本発明のインスリン抵抗性マーカー分析法によりインスリン抵抗性であると評価されることによって決定されうる。
[6−3−1.候補物質を含む試料]
候補物質となり得るものとしては、特に限定されないが、核酸、タンパク質、ペプチド、有機化合物、無機化合物などが挙げられる。このような候補物質を含む試料としては、特に限定されないが、細胞抽出物、ポリヌクレオチドライブラリの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、及びこれらの混合物などが挙げられる。
本発明のスクリーニング法において候補物質となる物質には、インスリン抵抗性を改善する物質についての他のスクリーニング方法(以下、予備スクリーニング方法と記載する)において得られた候補物質を採用することができる。予備スクリーニング方法の例として、特開2009−204475号公報に記載の方法が挙げられる。
インスリン抵抗性マーカー(予備スクリーニングについて記載する場合、インスリン抵抗性マーカーには、本発明のポリペプチド、及び本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの両方を含む)の発現を制御すること、又は
そのインスリン抵抗性マーカーの機能(具体的にはインスリン抵抗性誘発活性、例えばインスリン情報伝達経路の抑制活性)を制御すること
によってインスリン抵抗性を改善する物質が予備スクリーニングされる。
インスリン抵抗性マーカーの発現量に基づいてインスリン抵抗性を改善する物質の予備スクリーニング方法は、以下の工程:
インスリン抵抗性試料と、候補物質とを接触させる工程、
前記候補物質を接触させた場合の前記インスリン抵抗性試料におけるインスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能を測定する工程、及び
前記候補物質を接触させた場合の測定された前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能と、前記候補物質を接触させない場合の前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を接触させた場合の測定された前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能が、前記候補物質を接触させない場合の前記インスリン抵抗性マーカーのレベル又は機能よりも減少していることを、インスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする。
インスリン抵抗性誘発活性としては、例えばインスリン情報伝達経路並びにグルコース輸送系を抑制する活性が挙げられる。このような活性としては、例えば、インスリン受容体を介したリン酸化Aktの増加を抑制させ、或いはインスリン情報伝達経路におけるインスリン受容体の下流で機能するその他の因子を、細胞外からのグルコース輸送を抑制するように増加又は減少させる活性をいう。これらの機能は、インスリン抵抗性マーカーが恒常的に存在していることによって獲得される。予備スクリーニングにおいては、インスリン抵抗性マーカーによる上記機能を抑制する物質を選択する。
候補物質の投与の方法としては特に限定されず、薬剤スクリーニング分野で行われるいかなる方法が用いられても良い。従って、経口投与(口腔内投与、舌下投与等)及び非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等)を問わない。
インスリン抵抗性マーカーの血中濃度の測定をするために、生体から血液を採取することができる。
採血試料は、分析に本質的な影響を与えないいかなる前処理が行われたものであっても良い。前処理としては、血漿交換、血清交換、本発明のポリペプチドへの結合能を有する物質の添加(本発明のポリペプチドを分析系から除外しうるもの)などは除外され、抗凝血処理や遠心分離(血漿分離、血清分離)などが含まれる。従って、採血試料としては、全血、血漿、血清などが含まれる。
インスリン抵抗性マーカーの血中濃度の測定においては、採血試料中における本発明のポリペプチドの濃度を測定することにより行うことができる。
ポリペプチドの濃度測定法としては特に限定されず、特定のポリペプチドを特異的に検出することが出来るいかなる方法も用いることができる。具体的には、生体特異的親和性に基づく検査、又は質量分析法によって測定されうる。
例えば、同位体標識法が挙げられる。同位体標識法は、定量性に優れた方法であるため好ましい。この場合、上記ポリペプチドを既知レベルで調製した試料や、正常試料などの適当な試料を対照試料として、対象となる個体の試料との間における前記ポリペプチドの存在量の差を調べることによって、測定を行うことができる。
測定されたインスリン抵抗性マーカー血中濃度の減少の度合いとしては、測定法などによって異なるため特に限定されるものではないが、正常濃度に近い濃度まで、或いは、インスリン抵抗性を治癒させる観点からは正常濃度にまで減少することが好ましい。
上記の本発明の糖尿病マーカーは、糖尿病を改善する物質のスクリーニングに有用である。本発明は、上記の糖尿病マーカーが、生体が呈する糖尿病と関連を示すことを利用し、糖尿病を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法においては、候補物質を生体内に投与することによって本発明の糖尿病症状が改善されるか否かの判断が行われる。この判断においては、生体における上記の本発明の糖尿病マーカーの血中濃度を指標の1つとする。
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程:
糖尿病に罹患している生体に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記生体における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない生体における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記生体における測定された前記濃度が、前記候補物質を投与しない生体における前記濃度よりも減少していることを、糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする
本発明の方法においては、本発明のポリペプチドの測定結果を単独で用いてもよいし、糖尿病に関連する他のいかなる評価基準(例えば他の糖尿病マーカー、血糖値、ヘモグロビンA1c)を組み合わせて用いてもよい。従って、本発明の方法は、本発明のポリペプチドの濃度と同様に他の評価基準となる物質の濃度を測定することを含んでよい。
糖尿病改善の評価は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における評価方法と同じ基準で行ってよい。
本発明における薬剤組成物は、全身性インスリン抵抗性を評価するための診断薬、全身性インスリン抵抗性を改善するための潜在的又は実用的な治療薬として用いられうるものである。
すなわち、本発明の薬剤組成物における有効成分としては、以下のものが挙げられる。薬剤組成物は、このような有効成分に、薬剤として許容される希釈剤、担体、賦形剤などを混合して調製することができる。
本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド、或いは当該ポリペプチドと類似の構造を有する物質は、インスリン抵抗性マーカーと結合可能な蛋白質または受容体との相互作用を著しく阻害する可能性を有する。それゆえ、当該ペプチド或いは当該物質はインスリン抵抗性マーカーの機能を減弱させる可能性を有する。
従って、当該ポリペプチド、或いは当該物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。なお、上記ポリペプチドと類似の構造を有する物質は、上記ポリペプチドと同様にインスリン抵抗性マーカーと結合可能な蛋白質または受容体との相互作用を減弱させる作用を生じさせる構造を有していればよく、そのような観点に基づく限り、具体的な構造類似性は当業者が適宜判断することができる。
「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び、分子生物学的技術により調製した抗体が含まれる。これらの抗体の調製は、当業者によって良く知られた方法によって行われるものである。
「抗体」とは、広く免疫特異的に結合する物質をいい、抗体フラグメントや抗体融合タンパク質も含まれる。
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの発現量又は分泌量を減少させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、本発明のインスリン抵抗性マーカーである配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの機能を減弱させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
「配列番号2に記載の塩基配列」は、配列番号1のポリペプチドをコードする塩基配列であり、すなわちプログラニュリンのヒトホモログをコードする塩基配列である。
「ポリヌクレオチド」には、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドが含まれる。また、「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAが含まれる。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれる。RNAには、totalRNA、mRNA、rRNA、及び合成RNAが含まれる。さらに、「ポリヌクレオチド」には、1本鎖ポリヌクレオチド及び2本鎖ポリヌクレオチドが含まれる。
「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド」には、配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなる配列で特定されるポリヌクレオチド、及び、当該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの同族体及び変異体であり且つ当該ポリペプチドと同等のインスリン抵抗性に関与する生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
従って、「配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチド」には、マウスホモログである配列番号4に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチドが含まれる。
この物質は、上述のインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法における予備スクリーニングの段階で選択されるものであり、上記の配列番号2に記載の塩基配列の連続する少なくとも45個の塩基からなるポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選ばれるポリヌクレオチドの発現量を減少させるものである。従って、この物質を有効成分として含む薬剤組成物は、治療薬として有用である。
本発明における薬剤組成物は、糖尿病を評価するための診断薬、糖尿病を改善するための潜在的又は実用的な治療薬として用いられうるものである。この薬剤組成物としては、上述のインスリン抵抗性を改善等するための薬剤組成物における「インスリン抵抗性」を「糖尿病」に読み替えることにより上述と同様の薬剤組成物が挙げられる。
上記の薬剤組成物を生体に投与することや、上記のポリヌクレオチド又は上記ポリヌクレオチドを導入したウイルスを生体に感染させることによって、生体中におけるインスリン抵抗性マーカー又は糖尿病マーカーの濃度を低下させうる。これによって、生体のインスリン抵抗性又は糖尿病を改善しうる。
[参考例1:インスリン抵抗性を自然発症するマウス(ob/ob)におけるプログラニュリンの脂肪組織発現に関する検証]
ob/obマウスは、遺伝的に肥満を伴って著しいインスリン抵抗性を示すマウスであり、インスリン抵抗性の良好なモデル動物である。より具体的には、ob/obマウスは、高インスリン血症、高コルチコイド血症、高血糖、インスリン抵抗性、中枢神経活動の変化、過食、褐色脂肪細胞の代謝率の低下、白色脂肪細胞の重量の増加、妊孕性の低下などを示す。
一方、ヘテロ接合体であるob/+マウスは肥満もインスリン抵抗性も呈しない。
その結果、非インスリン抵抗性(インスリン感受性)マウス(ob/+マウス)の対照群と比較して、インスリン抵抗性マウス(ob/obマウス)では副睾丸脂肪組織(EF)において約3.52±0.30(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍、腸間膜脂肪組織(MF)において約3.91±0.50(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT))において約3.08±0.16(mean±S.D., n=5, p<0.01)倍発現レベルが上昇した。この結果を図3に示す。図3において、横軸は脂肪組織の種類(副睾丸脂肪組織(EF)、腸間膜脂肪組織(MF)、皮下脂肪組織(SC)(白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT))、縦軸は対照群と比較したプログラニュリン(PGRN)のmRNA発現量(mRNA expression (PGRN/36B4))を表す。
7週齢のob/obマウス及びob/+マウスから血液を採取し、室温放置後、遠心分離により血清を調製し、ELISA法によって血清中のプログラニュリン濃度を測定した。血清中のプログラニュリン濃度はob/+マウスで2.09±0.17(mean±S.D., n=5)μg/ml、ob/obマウスで3.21±0.16(mean±S.D., n=5)μg/mlであり、糖尿病において有意(p<0.01)に高値であった。
ob/obマウスとob/+マウスとについて血中プログラニュリン濃度変化を図4に示す。図4においては、横軸は週齢(Age (Weeks))、縦軸は血清プログラニュリン濃度(Serum PGRN conc.)(μg/ml)を表す。
db/dbマウスは遺伝的に肥満を呈し、著しい高血糖を示す糖尿病の良好なモデルマウスである。db/dbマウスとその対照モデルマウス(db/+m)についての血糖変化及び血中インスリン濃度変化をそれぞれ図5及び図6に示す。図5において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血糖(Blood glucose)(mg/dl)を表す。db/db は生後まもなく急激に血糖が上昇し、db/+mマウスに比べて顕著に高血糖を示す。図6において、横軸は週齢(Week of age)、縦軸は血清インスリン濃度(Serum iusulin)(ng/ml)を表す。db/dbにおいては、若齢期(6週〜8週齢)に血中インスリン濃度が極めて高値であり、図5に示される血糖値上昇に伴って血中インスリン濃度が低下する。血中インスリン濃度はインスリン抵抗性の間接的指標となり得るが、(すなわち、全時期を通してインスリン抵抗性であるが、)6週〜8週齢で相対的にインスリン抵抗性が強く、糖尿病発症初期である事が示唆される。
10週齢のob/obマウスにチアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン)30mg/kgを1週間連日経口投与した。溶媒(10%(w/v)カルボキシメチルセルロース)のみを投与した群を対照群(Vehicle)として、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うと、随時血糖値(0分値)及びブドウ糖負荷後の血糖値は顕著にピオグリタゾン投与群で低値であり、すなわち耐糖能異常が改善したことが報告されている(非特許文献6:Journal of Biological Chemistry 281 8748-8755)。
プログラニュリンの発現と肥満によるインスリン抵抗性との因果関係を明らかにするため、プログラニュリン遺伝子を欠損するノックアウトマウスの解析を行った。具体的には、理研バイオリソースセンターにおいて系統維持されているプログラニュリン遺伝子を欠損するノックアウトマウス(PGRN-/-)(Behavioural Brain Research 185 (2007) 110-118)を入手し、プログラニュリン遺伝子を持つ野生型マウス(WT)を対照群として、PGRN-/-マウスを通常食(標準飼料CE-2(日本クレア製):脂質16kcal%)及び高脂肪食(D12492飼料(Research Diets, Inc.製):脂質60kcal%)給餌下で飼育した。
Claims (6)
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、肥満を伴わない場合における血中インスリン抵抗性マーカー。
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、肥満を伴わない場合における採血試料中インスリン抵抗性マーカー分析法。 - 肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を発現している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、肥満を伴うことなくインスリン抵抗性を改善する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。 - 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドを含む、血中境界型糖尿病マーカー。
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチドの、採血試料中における濃度を測定する工程、及び
得られた測定濃度と、前記ポリペプチドの血中正常濃度とを比較する工程、
を含む、採血試料中境界型糖尿病マーカー分析法。 - 境界型糖尿病を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
境界型糖尿病に罹患している非ヒト動物に候補物質を投与する工程、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における、配列番号1に記載のアミノ酸配列の連続する少なくとも15個のアミノ酸からなるポリペプチド血液中の濃度を測定する工程、及び
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における測定された前記ポリペプチドの血液中の濃度と、前記候補物質を投与しない非ヒト動物における前記ポリペプチドの血液中の濃度と、を比較する工程、
を含み、
前記候補物質を投与した前記非ヒト動物における前記濃度が、前記候補物質を投与しない前記非ヒト動物における前記濃度よりも減少していることを、境界型糖尿病を改善又は抑制する物質として前記候補物質を選択することの指標の1つとする方法。
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