(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の構成について添付図に基づいて説明する。
最初に、本実施形態の基本的な内容について説明し、その後でより具体的な内容について説明する。
本実施形態に係る画像表示装置100は、液晶表示部116と、液晶表示部に映像ソース部117から入力される映像信号を供給する画像処理部105とを備えた液晶表示装置である。液晶表示部116は、単数枚の第1液晶表示素子113と、単数枚の第2液晶表示素子114とが積層されて構成され、画像処理部は、第2液晶表示素子114の各ドットに対し、映像信号の各々のドットを基点とし、基点ドット500および、基点ドットに隣接するドットを含む所定の領域のドット群の中で、相対階調の最大値もしくは相対透過率の最大値を抽出する処理に基づく画像を表示するための駆動信号を生成する。
ここで画像処理部105は、第2液晶表示素子114の各ドットに対し、映像ソース部117から入力された映像信号が暗色の背景に明色のドット表示であった場合、映像ソース部117から入力された映像信号の明色のドット表示の階調もしくは相対透過率をS、第2液晶表示素子114に表示する相対階調もしくは相対透過率をS2とした場合、明色のドットおよび、それらドットのいずれかに隣接するドットから成るドット群において、S2≧Sとなる相対階調もしくは相対透過率S2を表示するための駆動信号を生成する。
一方で画像処理部105は、映像信号の各々のドットを基点とし、基点ドットおよび、基点ドットに隣接するドットを含む所定の領域のドット群の中で、映像信号の相対階調の最大値(以下領域最大相対階調という)もしくは相対透過率の中の最大値(以下最大領域相対透過率という)を抽出する領域内最大透過率抽出部401と、抽出された領域最大相対階調もしくは領域最大相対透過率に基づいて、第2液晶表示素子に表示する画像データを演算する第2素子画像演算部402を有し、第2液晶表示素子演算部は、映像信号から抽出された領域最大相対階調もしくは領域最大相対透過率をSmax、第2液晶表示素子に表示する合成相対階調もしくは合成相対透過率をS2とした場合、第2液晶表示素子に表示する合成相対階調もしくは合成相対透過率S2が、S2≧Smaxとなる合成相対階調もしくは合成相対透過率S2を表示するような駆動信号を生成する。
そして画像処理部105は、第1液晶表示素子113の各ドットに対し、映像ソース部117から入力される映像信号の相対階調もしくは相対透過率をS、第2液晶表示素子114に表示する相対階調もしくは相対透過率をS2とした場合、S2=0の場合にはS1=0、S2≠0の場合にはS1=S/S2となる相対階調もしくは相対透過率S1を表示するための駆動信号を生成する。
この構成を備えることにより、本実施形態は、第2液晶表示素子114からの出力によって液晶表示装置全体のコントラスト比を向上させることが可能となる。
以下、これをより詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置100の構成を示す説明図である。画像表示装置100は、映像データを出力する映像ソース部117からの出力を受け、映像データを各々の液晶表示素子に対応する信号に変換する画像処理部105と変換された信号に基づいて映像を表示する液晶表示部116からなる。各部は、伝送経路120〜122で接続されている。液晶表示部116は、積層された複数の液晶表示素子(図1では、第1および第2液晶表示素子113〜114)を有する。
第1および第2液晶表示素子113および114の表示モードとしては種々の方式、例えばIPS(In Plane Switching)方式、TN(Twisted Nematic)方式またはVA(Vertical Alignment)方式等を適宜組み合わせて適用可能であるが、ここでは、第1および第2液晶表示素子113〜114がIPS方式である場合を例示して説明する。
映像ソース部117は、写真や動画などに代表される映像データを、所定の処理を行って電子画像データとして再構築し、画像処理部105に伝送可能な映像信号を生成する。ここで生成された映像信号は、伝送経路120を介して、画像処理部105に伝送される。映像ソース部117は、映像データを出力するものであれば何でもよく、例えばパーソナルコンピュータでもよいし、テレビ放送(アナログ放送、地上波デジタル放送など)をデコードする放送受信部でもよいし、また各種の録画済映像ソースを再生する再生装置でもよい。
さらに、伝送経路120は、映像ソース部117から出力される映像信号を画像処理部105へ送信できるものであればよく、システムの筐体構成に応じ、公知のインターフェースを適用できる。例えば筐体間の外部伝送であればDVI(Digital Visual Interface)などのデジタル伝送やアナログRGB信号などのアナログ伝送でよく、機器内部の伝送であればLVDS(Low Voltage Differential Signal)などのシリアル伝送や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのパラレル伝送信号でよく、さらにまた同じゲートアレイ内部の論理回路間の伝送であってもよい。
画像処理部105は、液晶表示部116に信号を出力するタイミングを制御するタイミング制御部110、受信した映像信号に対して演算処理を行う演算ユニット118、および後述するローカルメモリ104を有する。画像処理部105は、伝送経路120を介して受信した映像信号に演算ユニット118にて信号変換(画像処理)を施し、伝送経路121、122を介して、液晶表示部116を構成する複数の液晶表示素子のそれぞれに、各液晶表示素子を駆動するための駆動信号を伝送する。
タイミング制御部110は、液晶表示部116に信号を出力するタイミングを制御し、各液晶表示素子113、114で表示される画像を同期させる。ローカルメモリ104については後述する。
画像処理部105は、1つまたは複数のFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)に論理回路として構成してもよい。また画像処理部105における画像処理は、ハードウェアによる画像処理を採用できるほか、ソフトウェア処理による画像処理を採用することもできる。例えば、映像ソース部117と画像処理部105は、CPUを用いたソフトウェア処理や、MPEGデコーダに代表されるグラフィックチップを用いて同一筐体で実施してもよい。
また、伝送経路121、122は、伝送経路120と同じく、映像ソース部117から出力される各液晶表示素子の画像を表示するための信号を画像処理部105へ送信できるものであればよく、システムの構成に応じ、一般的なインターフェースを適用すればよい。例えば機器間の外部伝送であればDVIなどのデジタル伝送やアナログRGB信号などのアナログ伝送でよく、筐体内部の伝送であればLVDSなどのシリアル伝送や、CMOSなどのパラレル伝送信号などでよい。
液晶表示部116は、液晶駆動回路111、112と、第1および第2液晶表示素子113、114と、光源115とを有する。第1液晶表示素子113は、カラー表示を行う液晶表示素子として構成され、第2液晶表示素子114は、モノクロ表示の液晶表示素子として構成される。ここで、第1及び第2液晶表示素子113、114の並び順は逆であってもよい。つまり、観察者に近い側をモノクロ表示の液晶表示素子とし、光源に近い側をカラー表示の液晶表示素子としてもよい。
液晶駆動回路111、112は、それぞれ、画像処理部105から受信した信号に基づいて、第1及び第2液晶表示素子113、114を駆動する。光源115は、光源であり、第1及び第2液晶表示素子113、114に、その背面側から光を入射する。光源115から出射された光は、第2液晶表示素子114で、第2液晶表示素子114に入力される駆動信号に基づいて変調され、第1液晶表示素子113に入射する。第1液晶表示素子113は、入力される駆動信号に基づいて、表示画像が制御される。観察者は、光源115側から第1及び第2液晶表示素子113、114を透過した光を観察することで、表示画像を観察する。
図2は、図1で示した液晶表示部116の、液晶表示素子部分の断面構造を示す説明図である。第1液晶表示素子113は、光出射側から順に、偏光板201、透明基板211、カラーフィルタ層251、配向膜221、液晶層231、配向膜222、透明基板212、偏光板202が配置されている。光源115側の第2液晶表示素子114は、光出射側から順に、偏光板203、透明基板213、配向膜223、液晶層232、配向膜224、透明基板214、及び、偏光板204が配置されている。
以後、説明の便宜上、透明基板211、カラーフィルタ層251、配向膜221、液晶層231、配向膜222、及び、透明基板212等を第1の液晶表示パネル261と呼び、この第1の液晶表示パネル261と、一対の偏光板201、202等とを含めて第1液晶表示素子113と呼ぶ。また、透明基板213、配向膜223、液晶層232、配向膜224、及び、透明基板214等を第2の液晶表示パネル262と呼び、この第2の液晶表示パネル262と一対の偏光板203、204等とを含めて第2液晶表示素子114と呼ぶ。
第1液晶表示素子113を構成する透明基板212の液晶層側には、信号線と走査線がマトリクス状に配置され、その各交点近傍に、3端子型のTFT(Thin Film Transistor)非線形素子が配置されており、1ドットが構成される。ドット内では、前記TFTのソース・ドレインの一端側に接続されたドレイン電極と、共通配線に接続された共通電極とが櫛歯状に形成される。このように櫛歯状に形成されたドレイン電極と共通電極との横電界により、液晶層231が駆動される。
透明基板211にはカラーフィルタ層251が形成されており、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色層が配置され、透明基板213に配置された電極マトリクスに対応するようにRGBの繰り返しとなるようにストライプ状に配置される。1ピクセルは、隣接するR、G、Bのカラーフィルタを有する3ドットで構成される。
第1液晶表示素子113の製造方法について説明する。透明基板211のカラーフィルタ層251側の表面と、透明基板212のマトリクス上の電極を配置した側の面とに、それぞれ配向膜221、222を塗布し、ラビングに代表される液晶配向処理を実施する。
その後、透明基板211、212の配向膜221、222が形成された面同士を、液晶配向方向が互いに平行又は反平行となるように、所望の間隙で対向させる。
この間隙には、液晶材料が配置され、第1の液晶表示パネル261となる。更に、この第1の液晶表示パネル261の外側には、偏光板201、202が配置される。このようにして第1液晶表示素子113が形成される。このとき、偏光板201、202の光透過軸又は光吸収軸同士は互いにほぼ直交した配置とし、偏光板201、202の何れか一方の光吸収軸は、液晶層231の液晶配向方向に平行とする。
第2液晶表示素子114の構成は、第1液晶表示素子113とほぼ同じであるが、その相違点は第1液晶表示素子113では透明基板211にカラーフィルタ層251が配置されたのに対し、第2液晶表示素子114の透明基板213にはカラーフィルタ層が配置されないという点のみが異なる。ここで、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114とで、ピクセル単位での解像度は同一である。
すなわち、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114とでドットサイズを同一として、単色の3ドットを1まとめにして1ピクセルと必ずしもする必要はなく、例えば、第2液晶表示素子114は、カラーフィルタ層を有していないため、第1液晶表示素子113のように、1ピクセルがR、G、Bに対応して3ドットに分割されている必要はなく、1ピクセルを1ドットで構成することができる。
液晶表示部116は、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114とを、該2つの液晶表示素子のピクセルの位置が略一致するように積層されて構成される。このとき、第1液晶表示素子113における液晶配向方向と、第2液晶表示素子114における液晶配向方向とが、略平行又は垂直となるようにする。
さらに、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114の積層は第1液晶表示素子113の光入射側の偏光板202と、第2液晶表示素子114の光出射側の偏光板203とで、光透過軸又は光吸収軸をほぼ平行となるようにすると良い。このようにすれば、偏光板203を透過した光が、第1液晶表示素子113の光入射側の偏光板202を効率よく透過できる。
このような観点から、本実施形態の説明では、第1液晶表示素子には偏光板202が、第2液晶表示素子には偏光板203が配置する例を示したが、本発明にあっては、偏光板202または203のいずれか一方を削除し、第1液晶表示素子と第2液晶表示素子の間に一枚の偏光板のみを位置させる構成とすることもできる。
以上説明したように本実施形態では、画像表示装置100を構成する複数の液晶表示素子のうちの第1液晶表示素子のみ、カラーフィルタ層を形成している。
本実施形態では、バックライトから離れた上層側の表示素子を第1液晶表示素子としたが、バックライトに近い下層側のパネルを第1液晶表示素子とし、上層側を第2の表示素子とすることもできる。本発明の液晶表示装置においては、色層が配置される第1液晶表示素子と色層が配置されない第2液晶表示素子の上下位置関係は特に限定されない。本発明の液晶表示装置では、色層が形成された1枚の液晶表示素子に、色層が形成されない単数または複数枚の液晶表示素子が積層されていればよいのである。
ここで、実施形態において色層が形成される第1液晶表示素子を1枚とした理由について説明する。色層が形成される第1液晶表示素子を複数積層すると、物理的に視野を動かした際に、その角度(以下視認方向という)によっては、3次元的な位置関係のズレ(以下視差という)が生じることに起因して、下層側のカラーフィルタ層と上層側のカラーフィルタ層とで異なる色の領域を光が透過することがある。例えば、ある層では赤のカラーフィルタを透過した光が、別の層の青のカラーフィルタを透過すると、表示色度が視認方向によって大きく変化することになる。
本発明の液晶表示部116では、色層が形成された第1液晶表示素子を1枚で構成したのでこのような視認方向に依存した色度変化が発生しない。
ここで、本発明の液晶表示部116では、色層が形成された1枚の第1液晶表示素子と色層が形成されない単数枚または複数枚の第2液晶表示素子とを積層する構成であるため、視認方向により透過光が異なる色のカラーフィルタ層を透過することはないが、複数枚の表示素子を積層する構成上、視認方向による視差は依然として発生する。
そのため、前記構成の画像表示装置100において、積層された複数の液晶表示素子を同一信号源からの同一の信号で駆動した場合には、観察者の視点と、各液晶表示素子の液晶層との間の距離が、液晶表示素子ごとに異なることから、視認方向によっては、視差によって表示が見づらくなる場合がある。
そこで、本実施形態では、視差の違いによる表示の見え方の違いを補償するため、映像ソース部から入力される映像信号を基準として、第1液晶表示素子113を駆動する信号および第2液晶表示素子114を駆動する信号に画像処理を施す特徴を有する。
本発明の特徴の理解を容易にするために、複数の液晶表示素子が積層された構造において、視認方向による視差感を感じなくする画像処理方法の概念を説明し、第1液晶表示素子113における1つのドットの最大値抽出処理を実施する距離範囲rの定義方法に関して説明する。
図3は、図1で示した液晶表示部116における主要部分を抽出して拡大した断面を示す説明図である。また図3は、図2で例示した積層された液晶表示素子を、説明に必要な部分について抽出した概念図でもある。
積層された第1液晶表示素子113及び第2液晶表示素子に同じ画像情報を表示させた場合における観察者の視認方向と視認性との関係を説明する。観察者が当該液晶表示素子を、その表示面の垂直方向の視点311から視認する場合第1液晶表示素子113に表示される情報αと、第2液晶表示素子114に表示される情報βは重なって見える。そのため観察画像は2重に見えるような違和感は発生しない。
しかしながら、視点312方向、すなわち液晶表示素子の表示面の垂直方向以外から観察する場合は映像の位置がずれることとなり観察画像が2重に見えることとなる。観察者はこの視差により2重になった画像に違和感が生じる。このような、視差による違和感を無くすために、以下で説明する画像処理を行う。
当該液晶表示素子面と鉛直方向からずれて観察者が見る角度をθ、液晶表示素子113、114中を進行するバックライトから入射された光の角度をφとすると、スネルの法則から、以下の式が成立する。
ngは液晶表示素子113、114の透明基板の屈折率であり、naは空気の屈折率である。これを変形すると、液晶表示素子113、114中を進行する角度φは、以下の式で表すことができる。
これらの関係から、視角θの方向から見た場合に、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114との表示位置が異なる量(位置ズレ量)rは、以下の式で表すことができる。
角度θの斜め視野において、視差間をなくすためには、本来βの位置で表示を行うべき情報を、点γの位置まで距離範囲rだけ延在して表示すればよい。そこで、演算ユニット118により、第2液晶表示素子114を駆動する信号について、点βの情報を、距離範囲rまで拡大する画像処理を画面全体に対して実施する。このように視差を考慮した表示を第2液晶表示素子で行えば、視差により像が2重に見える等の違和感は解決できる。
この、距離範囲rまで拡大する画像処理は、前記映像ソース部から入力される映像信号の各ドットに対し、各々のドットを基点とし、該基点ドットおよび、該基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で、相対透過率の最大値を抽出する処理によって行う。即ち、画像処理を実施する所定の領域で、基点となるドット外周からの距離範囲が、位置ズレ量rとなる領域を包含するようにドット群を予定する視認方向を基準に規定すればよい。
また、この画像処理は、カラーフィルタ層を有さない第2液晶表示素子114で実施する。第2液晶表示素子114にて距離範囲rまで拡大する画像処理を表示する理由は、カラー画像を表示する第1液晶表示素子113にて画像処理を実施した場合には、カラー情報が混色されるため色変化、色抜けが発生するためである。また、画像処理を実施する第2液晶表示素子は、必ずしも観察者側に存在している必要はなく、その反対側に存在する場合でも、特に影響はなく、従って第2液晶表示素子は観察者側には限定されない。
この画像処理について、再び図1に戻って説明する。映像ソース部117から伝送経路120を介して映像ソース部から入力される映像信号を受信し、演算ユニット118、タイミング制御部110に入力する。ここで演算ユニット118は、映像ソース部から入力された映像信号を蓄えるローカルメモリ104を用いて、画像の蓄積と、画像処理とを並行して実施する。ローカルメモリ104は、例えば前述の所定の領域が最大N本の走査ラインに及ぶ大きさとすると、(Nー1)本のラインメモリを有した構成で実現できる。
演算ユニット118は、第2液晶表示素子114の各ドットに対しては、映像ソース部117から入力された映像信号の各々のドットを基点とし(以下基点ドットという)、該基点ドットおよび、該基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で、相対透過率の最大値を抽出する処理に基づく画像を表示するための駆動信号を生成し、前記第1液晶表示パネルの各ドットに対しては、積層されたn枚(nは2以上の整数)の液晶表示素子で構成される液晶表示装置の表示が、映像ソース部から入力される映像信号と同じとなるように生成した画像を表示するための駆動信号を生成する。
タイミング制御部110は、画像処理における処理遅延時間を考慮して、第1及び第2液晶表示素子113、114に、同じタイミングで画像が表示されるように、駆動信号の送信タイミングを調整する。生成された駆動信号は、伝送経路121、122を介して、液晶表示部116に送信される。
図4は、図1に示す演算ユニット118のさらに詳しい機能ブロックの構成を示す説明図である。演算ユニット118は、後述の最大値抽出処理を行う領域内最大透過率抽出部401、第1及び第2液晶表示素子113、114に表示する画像データを各々演算する第1表示素子画像演算部403、第2表示素子画像演算部402を有する。演算ユニット118は、図1の伝送経路120から画像信号を受け取り、受け取った画像信号は演算ユニット118内部で領域内最大透過率抽出部401に入力する。本実施形態では入力信号をRGB表色系、液晶表示部116の1ピクセルがRGBの3ドットで構成される場合を例にとって説明している。
領域内最大透過率抽出部401は、受け取った画像信号をローカルメモリ104に書き込み蓄積するとともに、演算処理に使用するタイミングで蓄積した画像信号を適時読み出し、第1及び第2液晶表示素子113、114に表示する画像信号を随時演算する。以下、入力される各ドットの画像信号を、表示面に向かってi,jの2方向の座標系を取り、各々のドットの階調信号をSdot(i,j)とする。
領域内最大透過率抽出部401は、入力された画像信号に基づいて、ピクセルを構成する各ドットについて、各ドットの最低透過率を0、最大透過率を1とした相対透過率Tdot(i,j)を算出する。例えば、入力された画像信号が、Nビット分解能でγカーブと呼ばれる階調特性であれば、以下の式で算出できる。
領域内最大透過率抽出部401では、事前に各々のドットを基点とし、前述した位置ズレ量rとなる領域を包含したi方向に−P1〜+P2ドット、j方向に−Q1〜+Q2ドットの所定ドット領域が設定してあり、基点としたドットから所定領域内に位置するドット群の中で、最大となる相対透過率を、領域最大相対透過率Tmax(i,j)として下式で算出する。ここでk=−P1〜+P2であり、l=−Q1〜+Q2である。
所定ドット領域は、前述した位置ズレ量rとなる領域を包含したi方向に−P1〜+P2ドット、j方向に−Q1〜+Q2ドットの所定ドット領域を拡大し、各ドットに対し、重み係数G(i、j)を設定し、下式で領域最大相対透過率Tmax(i,j)を算出するとより効果的である。
図5は、図4で示した領域内最大透過率抽出部401による所定ドット領域及び重み係数についての処理の一例を示す説明図である。基点となる基点ドット500の外周から、前述した位置ズレ量rとなる領域501を予め見積もり、この位置ズレ量rとなる領域501を包含するピクセル、P1=P2=3、Q1=Q2=1の領域を、ドット領域502とし、ドット領域502内部の重み係数は1とする。
さらに本実施形態は、前述のドット領域502を周囲に拡大し、P3=P4=6、Q3=Q4=2の領域を所定ドット領域503とし、拡大した領域の重み係数を1以下の値として、下式のように設定する。
なお、本実施例は図5に示したように、該基点ドットおよび、該基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で、相対透過率の最大値を抽出する処理を行ったが、基点となるピクセル(以下基点ピクセルとよぶ)および、該基点ピクセルに隣接する所定の領域のピクセル郡のなかで相対透過率の最大値を抽出する処理を行ってもよい。このようにすることで、第2液晶表示素子114の解像度をドット単位からピクセル単位へと荒くすることが可能となり低コスト化が可能となる。
領域内最大透過率抽出部401は、受け取った画像信号をローカルメモリ104に書き込み蓄積するとともに、演算処理に使用するタイミングで蓄積した画像信号を適時読み出し、第1及び第2液晶表示素子113、114に表示する画像信号を随時演算する。以下、入力される各ピクセルの画像信号を、表示面に向かってi,jの2方向の座標系を取り、各々のドットの階調信号をSx(i,j)とする。xはR(赤色),G(緑色),B(青色)のうちのいずれかであり、以後の式で下付添字のxが登場する場合は、特に説明のない場合はこれと同様にxはR,G,Bのうちのいずれかを表す。
領域内最大透過率抽出部401は、入力された画像信号に基づいて、ピクセルを構成する各ドットについて、各ドットの最低透過率を0、最大透過率を1とした相対透過率Tx(i,j)を算出する。例えば、入力された画像信号が、Nビット分解能でγカーブと呼ばれる階調特性であれば、以下の式で算出できる。
算出した各ドットの相対透過率は、ピクセル単位で各ドットのR,G,B各成分ごとの相対透過率TR(i,j)、TG(i,j)、TB(i,j)を比較し、最大値となるものをピクセル最大相対透過率Tpix(i,j)として抽出する。
領域内最大透過率抽出部401では、事前に各々のピクセルを基点とし、前述した位置ズレ量rとなる領域を包含したi方向に−P1〜+P2ピクセル、j方向に−Q1〜+Q2ピクセルの所定ピクセル領域が設定してあり、基点としたピクセルから所定領域内に位置するピクセル群の中で、最大となる相対透過率を、領域最大相対透過率Tmax(i,j)として下式で算出する。k=−P1〜+P2であり、l=−Q1〜+Q2である。
所定ピクセル領域は、前述した位置ズレ量rとなる領域を包含したi方向に−P1〜+P2ピクセル、j方向に−Q1〜+Q2ピクセルの所定ピクセル領域を拡大し、各ピクセルに対し、重み係数G(i、j)を設定し、下式で領域最大相対透過率Tmax(i,j)を算出するとより効果的である。
図6は、図4で示した領域内最大透過率抽出部401による所定ピクセル領域及び重み係数についての処理の一例を示す説明図である。基点となる基点ピクセル500の外周から、前述した位置ズレ量rとなる領域501を予め見積もり、この位置ズレ量rとなる領域501を包含するピクセル、P1=P2=Q1=Q2=1の領域を、ピクセル領域502とし、ピクセル領域502内部の重み係数は1とする。
さらに本実施形態は、前述のピクセル領域502を周囲に1ピクセル拡大し、P3=P4=Q3=Q4=2の領域を所定ピクセル領域503とし、拡大した領域の重み係数を1以下の値として、以下のように設定する。
図7〜図9は、図6に示した所定ピクセル領域及び重み係数にて算出した、輝度変化の急峻な映像表示における領域最大相対透過率Tmax(i,j)の例を示す説明図である。
図7(a)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.9で1ピクセル四方以下の大きさの点である場合、図7(b)は、映像ソース部から入力された画像信号が、相対透過率0.5で1ピクセル四方以下の大きさの点である場合のピクセル最大相対透過率と、領域最大相対透過率Tmax(i,j)とを示す。
また、図8(c)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.9で3ピクセル四方の大きさの点である場合、図8(d)は、映像ソース部から入力された画像信号が、相対透過率0.9で1ピクセル以下の幅の直線である場合のピクセル最大相対透過率と、領域最大相対透過率Tmax(i,j)とを示す。
そして図9(e)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.5で、1ピクセル以下の大きさの点の集合である場合の映像ソース部から入力される映像信号のピクセル最大相対透過率と、領域最大相対透過率Tmax(i,j)とを示す。
図7〜図9に示すように、本発明の領域内最大透過率抽出部401で算出される領域最大透過率Tmax(i,j)は、入力される画像信号が如何なる相対透過率であろうとも、全てのピクセルにおいて入力される画像信号の相対透過率を減衰させず、位置ズレ量rとなる領域を包含するピクセル領域502では平坦な相対透過率分布となる。
また、入力される画像信号が輝度変化の急峻な映像表示であろうとも、表示パタンの明るい領域を、その外周から所定のピクセル領域502及び、重み係数G(k,l)で規定した領域幅に、空間的に広げる処理となり、全てのピクセルにおいて以下の関係が成立する。k=−P1〜+P2であり、l=−Q1〜+Q2である。
図4に戻り、領域内最大透過率抽出部401で算出した領域最大相対透過率Tmax(i,j)は、続く第2表示素子画像演算部402に送られる。第2表示素子画像演算部402では、領域最大相対透過率Tmax(i,j)に変換処理を加え、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)を算出する。変換処理は、次式に示すように領域最大相対透過率Tmax(i,j)より値を下げない変換式であればよい。
図10は、数10に示した領域最大相対透過率Tmax(i,j)と、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)との関係を示すグラフである。数10の関係の変換式であれば、前述した領域内最大透過率抽出部401の処理とともに、入力された各ドットの相対透過率TR(i,j)、TG(i,j)、TB(i,j)に対し、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)は、図10に示すように以下の関係が成立する。k=−P1〜+P2、l=−Q1〜+Q2である。
すなわち、映像ソース部から入力された映像信号がどのような表示であっても、前記映像ソース部から入力された映像信号の相対透過率をTx、前記第2液晶表示素子に表示する相対透過率をT2とした場合、各々のドットにおいてT2≧Txが成り立つ。さらに例えば、前記映像ソース部から入力された映像信号が暗色の背景に明色のドット表示であった場合、前記映像ソース部から入力された映像信号の明色のドット表示の相対透過率をTx’、前記第2液晶表示素子に表示する相対透過率をT2とした場合、明色のドットおよび、少なくともそれらドットのいずれかに隣接するドット群においてはT2≧Tx’となる。
算出した第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)は、画面の同じ場所に位置するピクセルの相対透過率Tx(i,j)とともに、第1表示素子画像演算部403に送られる。
液晶表示部116を観察する観察者は、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114とを透過した光を観察するため、観察者が観察する画像の輝度(トータルの透過率)は、各液晶表示素子の透過率の積となる。第1表示素子画像演算部403は、第1液晶表示素子113が表示する画像を、映像ソース部から入力された映像信号に対して、階調特性が変化しないように演算する。
例えば、本実施形態に示す、第2液晶表示素子114が1枚の液晶表示素子で構成される場合は、第1表示素子画像演算部403は、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)と、画面の同じ場所に位置するピクセルの相対透過率Tx(i,j)により、以下の式で第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)を算出すればよい。
算出した第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)、第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は、最後にそれぞれの表示素子の階調特性に合わせ、第2表示素子に表示する階調値S2(i,j)、第1表示素子に表示する階調値S1x(i,j)にそれぞれ変換する。
例えば、第1液晶表示素子113及び第2液晶表示素子114、Nビット分解能でγカーブと呼ばれる階調特性であれば、以下の式で算出できる。
以上の処理で算出された第1液晶表示素子に表示する階調値S1x(i,j)は、続く伝送経路121を介して第1液晶表示素子113に入力されて表示され、一方、第2液晶表示素子に表示する階調値S2(i,j)は、続く伝送経路122を介して、第2液晶表示素子114に入力され表示される。
図11〜図12は、図4で示した演算ユニット118による処理の算出値および階調特性の一例を示すグラフである。図11は、前述の第2表示素子画像演算部402で、領域最大相対透過率Tmax(i,j)に加える変換処理を、以下の式として算出したものである。
図11(a)は、領域最大相対透過率Tmaxに対する第1および第2表示素子に表示する相対透過率T1およびT2を示す。図11(b)は階調特性に対する相対輝度を示し、また図11(c)は図11(b)の低階調部分を拡大したものである。ここに示すように、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)、第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は、領域最大相対透過率Tmax(i,j)以上の相対透過率であるが、第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は、次の式で表され、不連続な推移となる。
この場合、本発明の液晶表示システムの階調特性にも、図11(c)に示すように、領域最大相対透過率Tmax(i,j)=0付近で急激に黒輝度が変化するため、階調特性は低階調側で誤差が生ずる。
図12は、前述のような誤差を改善するため、第2表示素子画像演算部402で、領域最大相対透過率Tmax(i,j)に加える変換処理を、以下の式として算出したものである。ここで、係数A=0.5である。
図12(a)は、領域最大相対透過率Tmaxに対する第1および第2表示素子に表示する相対透過率T1およびT2を示す。図12(b)は階調特性に対する相対輝度を示し、また図12(c)は図12(b)の低階調部分を拡大したものである。図12(a)に示すように、第2表示素子に表示する相対透過率T2(i,j)および第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は、それぞれが連続的に推移する。
この場合、本発明の液晶表示システムの階調特性は、図12b)及び図12c)に示すように、映像ソース部から入力された映像信号と等しい階調特性となる。これは、本発明の実施に対して好適な一例となる。
図13は、図4で示した演算ユニット118で、本実施形態の条件に属さない算出値および階調特性の算出の例を示すグラフである。図13は、前述の第2表示素子画像演算部402で、領域最大相対透過率Tmax(i,j)に加える変換処理を、下式のようにしたものである。
図13(a)は、領域最大相対透過率Tmaxに対する第1および第2表示素子に表示する相対透過率T1およびT2を示す。図13(b)は階調特性に対する相対輝度を示す。図13(a)に示すように、第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は、1よりも大きな値が算出されるため、液晶表示素子の最大透過率である1で頭打ちされる。この場合、液晶表示システムの階調特性は、図13(b)に示すように、映像ソース部から入力された映像信号と異なる階調特性となる。
入力信号がRGB表色系、液晶表示部116の1ピクセルはRGBの3ドットで構成され、各液晶表示素子の相対透過率特性が、階調信号の指数関数で、同じ指数関数である場合(例えば、各液晶表示素子が、γカーブと呼ばれる階調特性に設定されている場合)は、相対透過率の代わりに階調値を用いてもよい。
例えば、RGB各ドットがNbit分解能である場合、領域内最大透過率抽出部401では、ピクセル単位で各ドットの階調SR(i,j)、SG(i,j)、SB(i,j)を比較し、下式で示すように最大値となるものをピクセル最大階調Spix(i,j)として抽出する。
算出したピクセル最大階調Spix(i,j)は、各々のピクセルを基点とし、i方向に−P3〜+P4ピクセル、j方向に−Q3〜+Q4ピクセルの所定ピクセル領域(各々k=−P3〜+P4、l=−Q3〜+Q4と表す)と、その領域内の各ピクセルに対し、重み係数G(i、j)が設定してあり、領域最大階調Smax(i,j)を下式で算出し、第2表示素子画像演算部402に送られる。
第2表示素子画像演算部402では、領域最大階調Smax(i,j)に変換処理を加え、第2表示素子に表示する階調S2(i,j)を算出する。透過率変換処理は、数20に示す領域最大階調Smax(i,j)を小さくしない変換式であればよい。例えば、数21で示す式で第2表示素子に表示する階調S2(i,j)を算出する。
算出した第2表示素子に表示する階調S2(i,j)は、画面の同じ場所に位置するピクセルの階調Sx(i,j)とともに、第1表示素子画像演算部403に送られる。第1表示素子画像演算部403では、第1液晶表示素子113が表示する画像を、映像ソース部から入力された画像信号に対して、相対階調が変化しないよう、第1表示素子に表示する階調S1x(i,j)を以下の式で算出する。
算出した第1表示素子に表示する階調値S1x(i,j)は、続く伝送経路121を介して第1液晶表示素子113に入力され表示を行い、一方、第2表示素子に表示する階調値S2(i,j)は、続く伝送経路122を介して、第2液晶表示素子114に入力され表示を行う。この構成であれば、階調から相対透過率への変換処理、及び相対透過率から階調への変換処理が不要となり、処理の規模が軽減する。
図14は、図4で示した演算ユニット118による処理の算出値および階調特性の別の例を示すグラフである。図14(a)は、領域最大階調Smax(i,j)に対する第1および第2表示素子に表示する階調S1およびS2を示す。図14(b)は、領域最大相対透過率Tmaxに対する第1および第2表示素子に表示する相対透過率T1およびT2を示す。図14(c)は階調特性に対する相対輝度を示し、また図14(d)は図14(c)の低階調部分を拡大したものである。
図14(a)に示すように、第2表示素子に表示する相対階調S2(i,j)、第1表示素子に表示する相対階調S1x(i,j)は不連続となるが、図14(b)に示すように各表示素子に表示する透過率はそれぞれが連続的に推移するため、液晶表示システムの階調特性は、図14(c)及び図14(d)に示すように、映像ソース部から入力された映像信号と等しい階調特性となる。従って、これも本発明の好適な実施形態であると言える。
この例では、映像ソース部から入力された映像信号がどのような表示であっても、前記映像ソース部から入力された映像信号の階調値をSx、前記第2液晶表示素子に表示する階調値をS2とした場合、各々のドットにおいてS2≧Sxが成り立つ。
さらに例えば、前記映像ソース部から入力された映像信号が暗色の背景に明色のドット表示であった場合、前記映像ソース部から入力された映像信号の明色のドット表示の階調値をSx’、前記第2液晶表示素子に表示する階調値をS2とした場合、明色のドットおよび、少なくともそれらドットのいずれかに隣接するドット群においてはS2≧Sx’となる。
次に、本実施形態に係る領域の最大値抽出処理と、特許文献2などに記載の従来技術に係る領域の平均化処理とについて説明する。まず、従来技術である領域の平均化処理について説明する。図15は、(特許文献2などの)従来技術に係る領域の平均化処理の例を示すグラフである。従来の平均化処理の基点となるピクセル500の外周から、前述した位置ズレ量rとなる領域501を包含するピクセル領域を所定ピクセル領域504とする。所定ピクセル領域504内の重み係数G’(k,l)を1として、領域内の平均透過率Tave(i,j)は下式によって算出される。ただしMおよびNは、画像表示装置100全体の表示ドット数を表し、iの最大値がM、jの最大値がNである。
図16〜18は、図15で示した従来技術に係る領域の平均化処理の例を示すグラフである。図16(a)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.9で1ピクセル以下の大きさの点である場合、図16(b)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.5で1ピクセル以下の大きさの点である場合、また、図17(c)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.9で3ピクセルの大きさの点である場合、図17(d)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.9で1ピクセル以下の幅の直線である場合、図18(e)は、映像ソース部から入力される映像信号が、相対透過率0.5で、1ピクセル以下の大きさの点の集合である場合の、映像ソース部から入力される映像信号のピクセル最大透過率および領域最大透過率Tmax(i,j)を各々示す。
図16〜18に示すように、従来の発明である領域の平均化処理では、入力される画像信号が、空間周波数が高い表示パタンであった場合、映像ソース部から入力される映像信号よりも相対透過率が減衰する。さらにまた、映像ソース部から入力される映像信号の表示パタンによって、明るい領域からの広がり方が変化し、所定ピクセル領域504の内部でも、透過率分布が推移する処理である。
図19は、本実施形態に係る領域の最大値抽出処理と、従来技術に係る領域の平均化処理の各々について、入力される画像信号と出力される相対透過率の分布を示すグラフである。図19(a)は入力信号、図19(b)は本実施形態に係る最大値抽出処理で出力される相対透過率、図19(c)は従来技術に係る領域の平均化処理で出力される相対透過率を各々示す。
本実施形態に係る最大値抽出処理は、入力される画像信号が如何なる相対透過率であろうとも、全てのピクセルにおいて入力される画像信号の相対透過率を減衰させず、位置ズレ量rとなる領域を包含するピクセル領域では平坦な相対透過率分布となる。また、入力される画像信号が空間周波数の高い表示パタンであろうとも、表示パタンの明るい領域を、その外周から所定ピクセル領域503及び、重み係数G(k,l)で規定した領域幅に、空間的に広げる処理となる。
従来技術に係る平均化処理は、入力される画像信号が、空間周波数が高い表示パタンであった場合、入力される画像信号よりも相対透過率が減衰し、さらにまた、入力される画像信号の表示パタンによって、明るい領域からの広がり方が変化し、所定のピクセル領域504の内部でも、透過率分布が推移する処理である。
従来の発明である領域の平均化処理によって算出される透過率分布を、そのまま第2の液晶表示装置の相対透過率T2(i,j)に用いた場合、図13(a)で示した例と同様に、T2(i,j)<Tmax(i,j)の条件になる。入力される画像信号の表示パタンが明るい表示の場合、第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)は1よりも大きな値が算出され、液晶表示素子の最大透過率である1で頭打ちされて、液晶表示システムの輝度は減衰することとなる。
次に、前述の透過率分布の違いによる、角度θの斜め視野における表示の変化を説明する。図20は、図3で示した液晶表示部116の主要部分を抽出した断面を示す説明図であり、この図では、液晶層231〜232を抽出し、観察者側に存在する液晶層231を1ピクセルがRGBの3ドットで構成される第1液晶表示素子、もう一方の液晶層232を1ピクセルが無色(ホワイト)の1ドットで構成される第2液晶表示素子要とする構成として図示したものである。
図20に示すように、垂直方向の視点311が見る表示は、第2液晶表示素子のα2、β2の位置からの透過光となり、角度θの斜め視野からの視点312が見る表示は、それぞれ位置ズレ量rだけずれた第2液晶表示素子のα2’、β2’の位置からの透過光となる。
このため、第2液晶表示素子のα2、β2の領域に対して、α2’、β2’の領域の相対透過率が減衰した場合、視野角により表示の輝度が低下することになる。
さらにまた、第1液晶表示素子は、1ピクセル領域が異なる色領域に分かれているため、第2液晶表示素子のα2、β2の領域に対して、α2’、β2’の領域の透過率分布に差があると、視認方向により表示の色バランスが変化し、色度変化が発生することになる。
図21〜22は、従来技術に係る平均化処理の、液晶表示装置の視認方向による表示の色度変化を示す説明図である。図21は、正面からの視点311の認識する表示について示しており、図21(a)は第1液晶表示素子の相対透過率分布、図21(b)は第2液晶表示素子の相対透過率分布、図21(c)は液晶表示装置の輝度分布であり、それぞれ紙面縦方向で同一視線の透過率が重なる様に示してある。
これに対し図22は、斜めからの視点312の認識する表示について示しており、図22(a)は第1液晶表示素子の相対透過率分布、図22(b)は第2液晶表示素子の相対透過率分布、図22(c)は液晶表示装置の輝度分布であり、それぞれ紙面縦方向で同一視線の透過率が重なる様に、図22(b)は図21(b)に比べ、斜めから観察したときの位置ズレ量rだけ横にずらした分布としてある。
図21(b)及び図22(b)に示すとおり、従来の平均化処理に基づく第2液晶表示素子の相対透過率は、第2液晶表示素子の明るい領域から、斜めから観察したときの位置ズレ量rの範囲で相対透過率が傾きをもつ分布となり、この結果図21(c)及び図22(c)に示すとおり、視認方向により表示の輝度変化および色度変化が発生することとなる。
一方、図23〜23は、本実施形態に係る最大値抽出処理の、液晶表示装置の表示の色度変化を示す説明図である。図23は、正面からの視点311の認識する表示について示しており、図23(a)は第1液晶表示素子の相対透過率分布、図23(b)は第2液晶表示素子の相対透過率分布、図23(c)は液晶表示装置の輝度分布であり、それぞれ紙面縦方向で同一視線の透過率が重なる様に示してある。
これに対して図24は、斜めからの視点312の認識する表示について示しており、図24(a)は第1液晶表示素子の相対透過率分布、図24(b)は第2液晶表示素子の相対透過率分布、図24(c)は液晶表示装置の輝度分布であり、それぞれ紙面縦方向で同一視線の透過率が重なる様に、図24(b)は図24(b)に比べ、斜めから観察したときの位置ズレ量rだけ横にずらした分布としてある。
図23(b)及び図24(b)に示すとおり、本発明の最大値抽出処理に基づく第2液晶表示素子の相対透過率は、第2液晶表示素子の明るい領域から、斜めから観察したときの位置ズレ量rの範囲で相対透過率が平坦な分布となり、この結果図23(c)及び図24(c)に示すとおり、視認方向により表示の輝度変化および色度変化が発生しないこととなる。
以上説明したように、本実施形態は従来の課題を解決している。本実施形態に係る最大値抽出処理は、映像ソース部から入力される映像信号の表示パタンの明域を所定領域幅で拡大する処理(明域拡大処理)であり、所定領域幅を事前に視認方向を考慮して決定した値を用いることで、映像ソース部から入力される映像信号が如何なる表示パタンであろうとも、視認方向による輝度低下と色度変化を抑制する事が可能となる。
本実施形態の効果に検証するために、画像表示装置100にて、上記のような画像処理を行った信号を、第1液晶表示素子113及び第2液晶表示素子114にそれぞれ入力し、画像を表示させたところ、コントラストに関しては、50万:1という高いコントラスト比を得ることができた。
さらにまた、テキスト表示や細かいパタン表示のような輝度変化の急峻な映像表示においても、輝度低下や色度変化は抑制でき、物理的に視野を動かした際にも、通常の画像信号を第1液晶表示素子113のみで表示した場合と遜色ない正確な表示が得られた。
本実施形態の液晶表示装置は、高コントラスト比を実現できるとともに、映像ソース部から入力される映像信号が如何なる表示パタンであろうとも、視認方向による輝度低下と色度変化を抑制する事が可能となる。
(全体的な動作)
次に、上記の第1の実施形態の全体的な動作について説明する。本発明に係る液晶表示装置の駆動方法は、単数枚の第1液晶表示素子と、単数枚または複数枚の第2液晶表示素子とが積層されて構成された液晶表示部に対して、第2液晶表示素子の各ドットに対し、映像ソースから入力された映像信号の各々のドットを基点とし、基点ドットおよび、基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で、相対階調もしくは相対透過率の最大値を抽出し、この相対階調もしくは相対透過率の最大値に基づく信号を液晶表示部に出力する。
その際、信号を液晶表示部に出力する処理は、第2液晶表示素子の各ドットに対し、映像ソースから入力された映像信号が暗色の背景に明色のドット表示であった場合、映像ソース部から入力された映像信号の明色のドット表示の相対階調もしくは相対透過率をS、第2液晶表示素子に表示する合成相対階調もしくは相対透過率をS2とした場合、明色のドットおよび、それらドットのいずれかに隣接するドットからなるドット群において、S2≧Sである合成相対階調もしくは合成相対透過率S2を表示するような信号を液晶表示部に出力する。
また、信号を液晶表示部に出力する処理は、第2液晶表示素子の各ドットに対し、映像信号から抽出された領域最大相対階調もしくは領域最大相対透過率をSmax、第2液晶表示素子に表示する合成相対階調もしくは合成相対透過率をS2とした場合、第2液晶表示素子に表示する合成相対階調もしくは合成相対透過率S2が、S2≧Smaxとなる合成相対階調もしくは合成相対透過率S2を表示するような信号を液晶表示部に出力する。
一方、第1液晶表示素子の各ドットに対しては、映像ソース部から入力される映像信号の相対階調もしくは相対透過率をS、第2液晶表示素子に表示する相対階調もしくは相対透過率をS2とした場合、S2=0の場合はS1=0、S2≠0の場合はS1=S/S2となる相対階調もしくは相対透過率S1を表示するための信号を出力する。
従来の構成では、テキスト表示や細かいパタン表示のような輝度変化の急峻な映像表示においては、映像ソース部から入力される映像信号に平均化手段を施すことでパネル透過率の分布はなだらかななり、視認方向により輝度低下や色度変化が発生しうる。これに対して本実施形態は、映像ソース部から入力される映像信号の各ドットに対し、各々のドットを基点とし、該基点ドットおよび、該基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で最大となる相対透過率を抽出する処理に基づく画像を表示する構成としている。
このため、本実施形態では、所定の領域を斜め視野から観察した際の積層パネルの視差以上の幅に設定することで、テキスト表示や細かいパタン表示のような輝度変化の急峻な映像表示においても、前期第2液晶表示素子の相対透過率の分布は、表示の明部を所定の領域幅以上に広げるため、視認方向により輝度低下や色度変化が発生しないという効果を有する。
従って、高コントラストな画像を要求され、さらに映像ソース部から入力される映像信号の表示変化が許されぬ分野、例えば、画像診断装置の映像表示部や、放送局などで用いるモニタ、映画を上映するような暗室で映像を提供する場所で用いる電子機器の画像表示部として用いるときに、大きな効果を有する。
(第1の実施形態の変形例)
以上で説明した本発明の第1の実施形態は、決して上記で説明した通りの形態に縛られるものではなく、本発明の趣旨を改変しない範囲で様々な実施形態の変形が考えられる。
たとえば、第1液晶表示素子も第2液晶表示素子もカラーフィルタ層を有さないようにしてもよい。また、積層された液晶表示素子の液晶層を外側から挟み込む透明基板に対し、液晶層より挟まれる透明基板が薄いようにしてもよい(図33)。他にも、様々な実施形態の変形が存在しうる。以下、その変形についてより詳しく解説する。
ここまでで説明した各々のピクセルを基点とした所定の領域及び重み係数は、以上で説明した通りに限定されるものではない。図25は、想定される視野角方向によって見積もった位置ズレ量rに合わせ、大きさを適宜変えたという第1の実施形態の変形を示す説明図である。このように位置ズレ量rのパタンを変形することも可能である。また、図26は、想定される視認方向が例えば上下方向に異なる場合に、それに合わせて位置ズレ量rのパタンを不均一な形状とした第1の実施形態の変形を示す説明図である。
図27は、重み係数の異なる領域を4段階に規定した第1の実施形態の変形を示す説明図である。また図28は、第1液晶表示素子113のドットの大きさ単位で、第2液晶表示素子114のドット単位の所定ドット領域503aにより、ドット単位で領域最大相対透過率Tmax(i,j)を直接算出する第1の実施形態の変形を示す説明図である。これらのような形で第2液晶表示素子114の表示を算出することもできる。
演算ユニット118内の第2表示素子画像演算部402、第1表示素子画像演算部403は、階調から相対透過率への変換処理、及び相対透過率から階調への変換処理は演算により実施する構成に限定されない。例えば、入出力をあらかじめ演算し、これをルックアップテーブルに保存して、ルックアップテーブルを用いて演算する構成であってもよい。
さらに、入力される画像信号の形式は、RGB表色系以外にも、CMYK表色系、HSV表色系など、どのような信号形式でも良く、また、第1液晶表示素子では、1ピクセルが、RGBのカラーフィルタ層に対応して3つの領域に分割される例について示したが、R、G、Bの3色には限定されない。図29は、RGB表色系以外の構成による第1表示素子画像演算部403の色構成について示す説明図である。この図29は、例えばR、G、B、Y、M、C、色を有しない領域(W)等の色によって構成されるものとした第1の実施形態の変形を示す。
また、1ピクセルを3つのドット領域ではなく、例えば1ピクセルを4つのドット領域に分割して、各領域をR、G、G、Bに対応させてもよく、或いは、4つのドット領域を、RGBの各色に対応する領域と、色を有しない領域(W)とで構成するなど、多数のドットで構成してもよく、人間の視覚特性を利用した擬似高解像度表示を行うなど、少数のドット構成としてもよい。
また、ドットの配置は、縦ストライプ配置に限定されず、横ストライプ配置やマトリクス配置、デルタ配置でもよい。
図30は、図29で示した第1液晶表示素子113の色構成に対応する、第2液晶表示素子114の種々の変形を示す説明図である。ここに示したように、第2液晶表示素子114については、第1液晶表示素子113とピクセル単位での解像度が同一であればよく、1ピクセルを色を有しない1ドットで構成してもよく、色を有しない複数ドットをまとめて1ピクセルとしてもよい。
図1では、映像ソース部117、画像処理部105、及び、液晶表示部116を分離して図示しているが、それぞれの部分を別々のハードウェアで構成する必要はなく、これら3つの部分が同一筐体内に存在していてもよい。また、映像ソース部117及び画像処理部105が同一筐体で、液晶表示部116が別筐体となっていてもよく、或いは、画像処理部105と液晶表示部116が同一筐体で、映像ソース部117が別筐体となっていてもよい。
また、本発明は、液晶表示部116におけるカラーフィルタ層の配置、及び、積層された液晶表示素子における画像処理に特徴があるため、本発明の有用性は、これらの存在場所に依存して低下することはない。
上記で説明した実施形態では、図2に示したように、第1液晶表示素子113がカラーフィルタ層251を有する構成とし、第1液晶表示素子113の1ピクセルが、RGBのカラーフィルタ層に対応して3つのドットに分割される例について示したが、画像処理を施した画像を表示することによる視差感の解消に関しては、カラーフィルタ層は必須の要素ではない。従って、第1液晶表示素子113を、第2液晶表示素子114と同様に、モノクロ型の液晶表示素子として構成することもできる。
また、上記実施形態では、第1液晶表示素子113および第2液晶表示素子114の液晶駆動方式としてIPS方式を例に挙げて説明したが、液晶駆動方式はこの方式には限定されず、例えば、VA液晶方式、TN液晶方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)液晶方式など、種々の方式を組み合わせることもできる。
また、それらの液晶表示素子の透過特性はノーマリーホワイト、ノーマリーブラックのどちらであろうとも組み合わせ可能であり、対象となる液晶表示素子の特性にあわせ、映像信号と液晶表示素子に印加する電圧を設定すればよい。
また、図2では、液晶表示パネル261、262と、偏光板201〜204との間に位相差補償層を設けない構造としたが、この部分に、視野角の改善を目的とした位相差補償層を設ける場合でも、本発明の効果が減少することはない。位相差補償層を挿入する場合には、液晶層における液晶モードとの組み合わせによって、挿入する位相差補償層の光学特性等を設定すればよい。
例えば、第1液晶表示素子113で位相差補償層を挿入する場合であって、液晶表示素子113がIPS方式で駆動される場合には、偏光板201、202と液晶表示パネル261との間に、屈折率が最も高い方向の屈折率をnxとし、基板平行面内でnxの方向と直交する方向の屈折率をnyとし、nx及びnyと垂直な方向の屈折率をnzとしたとき、nx≧nz>nyの特性を有する位相差補償層を、nx方向が、偏光板201、202の光吸収軸又は光透過軸と平行になるように挿入する。このようにすることで、第1液晶表示素子113の視野角特性を改善することができる。
また、第1液晶表示素子113がVA方式で駆動される場合については、nx≧ny>nzの位相差補償層を、nx方向が偏光板201、202の光吸収軸又は光透過軸と平行になるように挿入することで、視野角特性を改善できる。
第1液晶表示素子113がTN方式又はOCB方式で駆動される場合には、負の位相差を有するディスコティック液晶層で構成され、ディスコティック液晶層の軸角度が厚み方向で連続的に変化するWVフィルムを位相差補償層として挿入することで、視野角特性を改善できる。位相差補償層は、液晶表示パネル261、262の片側のみで挿入されていてもよく、或いは、両側で挿入されていてもよい。
上記では、位相差補償層の挿入位置を、液晶表示パネル261、262と偏光板201〜204との間としたが、実際には、液晶層231、232と偏光板201〜204との間であればどの位置であってもよい。また、挿入する位相差補償層は1層には限られず、複数の位相差補償層を挿入することもできる。
また、上記実施形態では、図2に示すように、各液晶表示素子113を、液晶表示パネル261と、これを外側から挟み込む一対の偏光板201、202とで構成したが、図33に示すように、液晶表示パネル261と液晶表示パネル262との間に配置される偏光板を1枚としてもよい。
これにより、液晶表示パネル261と液晶表示パネル262との間で生じる、偏光板を2枚で透過することにより生じる20%程度の透過率減少を生じさせないようにすることができ光透過時の輝度を1/(0.8)倍程度にすることができ、さらに、液晶層間の厚みが減ることにより、視野角による位置ズレ量を低下させることが可能となり、演算処理に必要なラインメモリの容量を軽減することが可能となる。
図31は、複数の液晶表示素子113および114の間に光拡散層261を配置した、本実施形態の変形を示す説明図である。画像処理を実施する第2液晶表示素子が観察者側から遠い側に存在する場合には、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114の間に光拡散性を有する光学部品、例えば拡散フィルムを配置するとよいこのようにすることで積層された液晶表示素子の配線やBM(ブラックマトリクス)が干渉することによるモアレや干渉縞を軽減可能となる効果があり、観察者により好適な画像を提供できる。
図32は、液晶表示部116内の液晶表示素子への電圧印加を実施するソースドライバ、ゲートドライバの制御を行う際に必要なソースドライバ、ゲートドライバの制御信号を生成するようにした第1の実施形態の変形例を示す説明図である。この場合、画像処理部105は、タイミング制御部110、演算ユニット118、ローカルメモリ104に加え、駆動制御部130が追加される。
図33は、液晶表示素子113の液晶層231と、液晶表示素子114の液晶層232を外側から挟み込む透明基板211、214に対して、液晶層231と液晶層232に挟まれる透明基板212、213を薄くする構成とした、第1の実施形態の変形を示す説明図である。
このようにすることで、外側から挟み込む透明基板211、214により、積層された液晶表示素子の機械的強度を保ちつつ、液晶層間の厚みが減ることにより、視野角による位置ズレ量を低下させることが可能となり、演算処理に必要なラインメモリの容量を軽減することが可能となる。
また、液晶表示素子113がTN方式のように、印加された電圧により液晶分子の基板に対する角度が変化するため、観察者の視野角方向によってコントラストが変動する駆動方式を採用した場合には、隣接する液晶表示素子で、液晶層の中央部分における液晶分子が立ち上がる方向を反対側にし、視野角依存性の特性を逆方向とすることで打ち消し合わせることができ、視野角特性の平均化を図ることができる。
上記各実施形態では、液晶表示素子内部の非線形素子にTFTを用いる例について説明したが、これには限られない。例えば、非線形素子として、薄膜ダイオードを用いる構成も可能であり、解像度が低い場合など、液晶表示素子を単純マトリクス駆動で駆動としてもよい。また、光源115としては、冷陰極管、白色LED、RGB3色のLED等どのような光源であろうとも適用可能であり、本発明の範囲に含まれる。
本発明は、映像ソース部117からの画像データ信号を受けて演算処理(ルックアップテーブル利用も含む)を実施することにより複数の異なる画像処理を適用した画像を生成し、複数の液晶素子を積層した液晶表示部116に送出することで単体の液晶表示素子では得ることができないコントラスト比の表示を可能にする構成ならば、本発明の範囲に含まれる。
また例えば、画像処理部105は、例えば1つ乃至複数のFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Applications Specific Integrated Circuit)に論理回路として構成としてもよく、また例えば画像処理部105における画像処理は、ハードウェアによる画像処理を採用できるほか、ソフトウェア処理による画像処理を採用することもできる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の液晶表示装置及び画像表示装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、画像処理の前段階や後段階でγカーブを補正する処理を実施するなどの画像処理を追加したり、FRC(Frame Rate Controle)などの擬似多階調化手段を実施するなどの画像処理を追加するなど、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
(第2の実施形態とその変形例)
図34は、本発明の第2の実施形態の液晶表示装置における液晶表示部116aの断面構造を示す説明図である。本実施形態では、第2液晶表示素子として複数枚の液晶表示素子を使用する。n枚の液晶表示素子620a〜620nを積層することで、液晶表示素子単体でのコントラスト比をx:1とした場合に、およそxn:1のコントラスト比を得ることができる。
以下、これをより詳しく説明すると、液晶表示部116aを構成するn枚の液晶表示素子620a〜620nのそれぞれは、液晶表示パネル610a〜610nのそれぞれを外側から挟み込む一対の偏光板601a〜601n、607a〜607nを有する。各液晶表示パネル610a〜610nは、それぞれ一対の透明基板602a〜602n、606a〜606nと、一対の透明基板に挟み込まれた液晶層604a〜604nと、液晶層に隣接して形成された配向膜603a〜603n、605a〜605nを有する。
さらに、前記n枚の液晶表示素子620a〜620nは、何れか1枚のカラーフィルタ層608を有する第1液晶表示素子と、(n−1)枚のカラーフィルタ層を有しない第2液晶表示素子とで構成される。例えば図34では、液晶表示素子620aはカラーフィルタ層608を有する第1液晶表示素子とし、液晶表示素子620b〜620nはカラーフィルタ層を有しない第2液晶表示素子である。そして最下層の第nの液晶表示素子620nの背面側には、光源115が配置される。
図35に、図34に示した液晶表示部116aを含む画像表示装置100aの構成を示す説明図である。画像処理部105は、タイミング制御部110、及び、演算ユニット118を有する。画像処理部105は、伝送経路120を介して受信した映像信号に演算ユニット118にて信号変換(画像処理)を施し、伝送経路123a〜123nを介して、液晶表示部116aを構成する複数の液晶表示素子のそれぞれに、各液晶表示素子を駆動するための信号を伝送する。タイミング制御部110は、液晶表示部116aに信号を出力するタイミングを制御し、各液晶表示素子620a〜620nで表示される画像を同期させる。
伝送経路123a〜123nは第1の実施形態とおなじく画像処理部105から液晶表示部116aへと各液晶表示素子を駆動するための信号を送信できればよく、システムの筐体構成に応じ、一般的なインターフェースを適用すればよい。例えば機器間の外部伝送であればDVIなどのデジタル伝送やアナログRGB信号などのアナログ伝送でよく、筐体内部の伝送であればLVDSなどのシリアル伝送や、CMOSなどのパラレル伝送信号などでよい。
図36は、図35に示した画像表示装置100aを、液晶表示部116a内の液晶表示素子への電圧印加を実施するソースドライバ、ゲートドライバの制御を行う際に必要なソースドライバ、ゲートドライバの制御信号を生成するように構成した変形例を示す説明図である。この場合、画像処理部105は、タイミング制御部110、演算ユニット118、ローカルメモリ104に駆動制御部が追加される。
図35に戻って、画像処理部105は、前記第2液晶表示素子の各ドットに対し、各々のドットを基点とし、該基点ドットおよび、該基点ドットに隣接する所定の領域のドット群の中で、前記映像ソース部から入力される映像信号の相対透過率の最大値を抽出する処理に基づく画像を表示するための駆動信号を生成する。例えば、前述した本発明の第1実施形態に記載した第2液晶表示素子と同じ処理を、第2実施形態の(n−1)枚の第2液晶表示素子に適用すればよい。
本実施形態の場合、所定の領域は、例えば、最上層の液晶表示素子620aの液晶層の位置から、最下層の液晶表示素子620nの液晶層の位置までの間の距離に応じた値としてもよく、また例えば、第1液晶表示素子の液晶層の位置から、各液晶表示素子の液晶層の位置までの間の距離に応じて、それぞれ別に設定しても良い。
前記第1液晶表示パネルの各ドットに対しては、前記第2液晶表示パネルに表示する画像と、前記映像ソース部から入力される映像信号とに基づき生成した画像を表示するための駆動信号を生成する。
例えば、前期第1液晶表示素子の各ドットに対し、前記映像ソース部から入力される映像信号の相対透過率を相対透過率Tx(i,j)、前記(n−1)枚の前記第2液晶表示素子に表示する個々の液晶表示素子に表示する相対透過率の積(以下合成相対透過率という)をT2’(i,j)とし、下式で第1表示素子に表示する相対透過率T1x(i,j)を算出すればよい。
また、相対透過率の代わりに階調値を用いた処理の場合、前期第1液晶表示素子の各ドットに対し、前記映像ソース部から入力される映像信号の階調値を階調値Sx(i,j)、前記(n−1)枚の第2液晶表示パネルに表示する階調値を、各々の階調分解能(2N−1)で除した値(以下相対階調値という)の積(以下合成相対階調値という)を{S2(i,j)/(2N−1)}’とし、以下の式で第1表示素子に表示する階調値S1x(i,j)を算出すればよい。
本実施形態では、1つの画像処理ユニット130を、n枚の液晶表示素子620a〜620nに対応させたが、複数の画像処理ユニットを対応させてもよい。
液晶表示部116を観察する観察者は、第1液晶表示素子113と第2液晶表示素子114とを透過した光を観察するため、観察者が観察する画像の輝度(トータルの透過率)は、各液晶表示素子の透過率の積となる。第1表示素子画像演算部403は、第1液晶表示素子113が表示する画像を、入力された画像信号に対して、階調特性が変化しないように演算する。
上記実施形態では、図34に示すように、各液晶表示素子620a〜620nを、液晶表示パネル610a〜610nと、これを外側から挟み込む一対の偏光板601a〜601n、607a〜607nとで構成したが、これを液晶表示パネル間に配置される偏光板を1枚としてもよい。図37は、液晶表示パネル間に配置される偏光板を1枚とした第2の実施形態の変形例を示す説明図である。
これにより、液晶表示パネル間で生じる、偏光板を2枚で透過することにより生じる20%程度の透過率減少を生じさせないようにすることができ、光透過時の輝度を1/(0.8n−1)倍程度にすることができ、さらに、液晶層間の厚みが減ることにより、視野角による位置ズレ量を低下させることが可能となり、演算処理に必要なラインメモリの容量を軽減することが可能となる。
また、図37に示すように、各液晶表示素子620a〜620nの液晶層604a〜604nを外側から挟み込む透明基板602a、606nに対して、液晶層604a〜604nに挟まれる透明基板602b〜602n、606a〜606(n−1)を薄くする構成としても良い。
このようにすることで、外側から挟み込む透明基板602aおよび606nにより、積層された液晶表示素子の機械的強度を保ちつつ、液晶層間の厚みが減ることにより、視野角による位置ズレ量を低下させることが可能となり、演算処理に必要なラインメモリの容量を軽減することが可能となる。
(実施形態の応用例)
図38は、以上で説明した本発明の第1および第2の実施形態に係る液晶表示装置を応用したテレビ放送受信装置1001の構成を示す説明図である。テレビ放送受信装置1001は、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタル放送受信部1010、衛星デジタル放送衛星を受信する衛星デジタル放送受信部1020、地上波アナログ放送を受信する地上波アナログ放送受信部1030、外部入力を受け付ける外部入力処理部1040、表示する映像の種類を選択する切り替え制御部1050、各種設定を行う設定部1060、映像を表示する映像表示部1070、音声を出力する音声出力部1080を備える。映像処理部1070は、ここまでで説明した第1もしくは第2の実施形態に係る画像表示装置100または100aを含む。
地上波デジタル放送受信部1010は、テレビ放送受信装置1001外部に設置された地上波デジタル放送受信用アンテナ1011からの出力信号に接続された地上波デジタルチューナ1012からの信号をOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)復調器1013によりデジタル映像信号とデジタル音声信号に変換し、このデジタル映像信号をMPEG(Moving Picture Export Group)デコーダ1014で復元し、映像信号を生成し、切り替え制御部1050に入力する。
衛星デジタル放送受信部1020は、テレビ放送受信装置1001外部に設置された衛星デジタル放送受信用アンテナ1021に接続した衛星デジタルチューナ1022からの信号をQPSK(Quadrature Phase Sift Keying:四位相偏移変調)復調器1023によりデジタル映像信号とデジタル音声信号に変換し、このデジタル映像信号を地上波デジタル放送受信部1010と共通のMPEGデコーダ1014で復元し、映像信号を生成し、切り替え制御部1050に入力する。
地上波アナログ放送受信部1030は、テレビ放送受信装置1001外部に設置された地上波アナログ放送受信用アンテナ1031からの出力信号に接続した地上波アナログチューナ1032からの信号を復調器1033により映像信号と音声信号を分離し映像信号を生成し、切り替え制御部1050に入力する。
外部入力処理部1040は、外部の映像ソースからの映像信号を入力するデジタル入力端子1041およびアナログ入力端子1042を備える。アナログ入力端子1042からの入力信号はA/Dコンバータ1043によってデジタル化され、切り替え制御部1050に入力される。デジタル入力端子1041からの入力信号はそのまま映像信号を切り替え制御部1050に入力される。
切り替え制御部1050は、ユーザ設定部1061からの入力に基づいて、複数の映像ソースから入力される映像信号および音声信号を切り替え、それぞれを映像表示部1070および音声出力部1080に出力する。
一方、設定部1060は、前述のユーザ設定部1061から入力されるユーザによる設定を受け付けて切り替え制御部1050およびその他の各部に反映させると同時に、OSD(On Screen Display)制御部1062でそのユーザによる設定を補助するユーザ設定画像を構成し、これを映像表示部1070に出力する。
映像表示部1070では、切り替え制御部1050から入力された映像信号を、フォーマット変換(IP変換、スケーラなど)し、さらに映像調整(明るさ、コントラスト、色調など)を行うとともに、これにOSD制御部1062から入力されたユーザ設定画像を合成して、画像表示装置100または100aに入力して表示させる。
音声出力部1080は、切り替え制御部1050から入力された音声信号に対して音声処理部1081でアナログ変換などの処理を行い、スピーカ1082で再生可能な音声信号に変換して増幅し、これをスピーカ1082に入力して再生させる。
本発明に係る画像表示装置100または100aを、テレビ放送受信装置1001に適用することにより、高コントラストの映像表示を実現できる。なお、このテレビ放送受信装置1001は、アナログ放送、地上波デジタル放送、衛星デジタル放送など、多様な放送信号を受信し映像を表示することが可能な例であるが、放送信号もしくは映像ソースの種類はこれらには限定されない。
また、上記の説明は放送受信機のブロック構成は一例に過ぎない。これ以外の構成でも、本発明に係る画像表示装置100または100aが利用されている電子機器であれば、本発明の範囲に含まれる。また、テレビ放送受信装置だけでなく、たとえばコンピュータやデジタルカメラなど、他の用途に本発明に係る画像表示装置100または100aを適用しても同様に、高コントラストの映像表示が実現可能であるという効果を得ることができる。
これまで本発明について図面に示した特定の実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができる。