JP5737342B2 - 収音装置及びプログラム - Google Patents
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Description
本発明は、収音装置及びプログラムに関し、例えば、特定のエリアの音のみを強調し、それ以外のエリアの音を抑圧する場合に適用し得るものである。
特定の方向に存在する音(音声や音響;以下、音声及び音響をまとめて音響と呼ぶこともある)を強調し、それ以外の音を抑圧する技術として、マイクロホンアレイを用いたビームフォーマがある。ビームフォーマとは、各マイクロホンに到達する信号の時間差を利用して指向性や死角を形成する技術である(非特許文献1、非特許文献2参照)。
しかし、単純にビームフォーマの指向性を収音目的とするエリア(以下、目的エリアと呼ぶ)に向けただけでは、目的エリアの周囲に雑音源が存在する場合、目的エリア内に存在する音源(以下、目的エリア音と呼ぶ)だけでなく、雑音も同時に収音してしまうという問題が存在する。
この問題に対して、本願発明者は、複数のマイクロホンアレイを用いて、別々の方向から指向性を目的エリアへ向けて交差させ、目的エリア音を収音する方式(以下、従来法と呼ぶ)を既に提案している(特願2012−217315号明細書及び図面)。従来法は、各マイクロホンアレイのビームフォーマ出力を同時に処理することで、目的エリア音を抽出する。以下、従来法を簡単に説明する。
図6(A)は、2つのマイクロホンアレイMA1及びMA2の指向性を目的エリアTARに向けたときのイメージである。この状態では、各マイクロホンアレイMA1、MA2のビームフォーマの出力に共に、目的エリアTARにある音源による目的エリア音だけでなく、同じ指向性方向の非目的エリアにある音源による非目的エリア音が含まれる。しかし、目的エリアTARは、全てのマイクロホンアレイMA1及びMA2の指向性に含まれているため、目的エリア音の成分は、図6(B)に示すように、各ビームフォーマの出力に、同じ割合、分布で含まれる。これと比較して、雑音成分(非目的エリア音の成分)は、ビームフォーマ出力毎に異なっている。このような特微から、各ビームフォーマ出力に共通に含まれる成分は、目的エリア音が有する成分と推定することができ、これに基づいて、従来法が構築された。
図7は、従来法に従った収音装置の概要構成を演算式に沿って示すブロック図である。マイクロホンアレイMA1を構成する複数のマイクロホンからの捕捉信号x11(t)〜x1M(t)から第1の指向性形成部11によって目的エリアTAR方向のビームフォーマ出力Xma1(t)が得られ、同様に、マイクロホンアレイMA2を構成する複数のマイクロホンからの捕捉信号x21(t)〜x2M(t)から第2の指向性形成部12によって目的エリアTAR方向のビームフォーマ出力Xma2(t)が得られる。
一方のビームフォーマ出力Xma1から他方のビームフォーマ出力Xma2をスペクトル減算することにより、両ビームフォーマ出力で重なっている目的エリア音成分は消去されるが、各ビームフォーマ出力中の雑音成分は重ならないため、被減算側のビームフォーマ出力に含まれている雑音成分Nma1が抽出される。(1)式は、概ねこのような考え方に従っている算出式である。
被減算側のビームフォーマ出力Xma1から、そこに含まれている雑音成分Nma1をスペクトル減算することにより、目的エリア音成分Yma1が抽出される。(2)式は、概ねこのような考え方に従っている算出式である。(2)式におけるγma1は、雑音成分の除去強度を定めている一定値をとる係数(スカラー量)である。
上述のような2回のスペクトル減算を適用した方式により目的エリア音Yma1を抽出するためには、スペクトル減算される各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2、に、同じタイミングの目的エリア音が同じパワーで含まれることが前提となる。図7における伝播遅延差補正部13は、(1)式の演算に供する各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2、のタイミングを同じにするためのものであり、パワー差補正部14は、各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2における目的エリア音のパワーを揃えるものである。これにより、雑音抽出用スペクトル減算部15が(1)式の演算を実行でき、目的エリア音抽出用スペクトル減算部16が(2)式の演算を実行できる。
目的エリア音が各マイクロホンアレイMA1、MA2に到達する時間差τは、マイクロホンアレイMA1、MA2と目的エリアTAR(例えば、エリアの中心位置を適用する)の位置情報が既知であれば、予め伝播遅延を計算して補正することができる。しかし、位置情報だけが既知では、各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2間の目的エリア音のパワーを補正することが難しい。これは、目的エリア音成分が未知であることに加え、人間の音声には指向性があるため、目的エリアTAR内で話者の向きが変わると、その度にパワーが変化してしまうためである。
そこで、従来法では、各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2間で振幅スペクトルの比率を利用し、目的エリア音のパワー補正係数(スカラー)αma1を算出している。この算出方法を説明する。
(3)式に従い、タイミングを揃えたビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ)間で周波数毎に振幅スペクトルの比を求め、その比率の最頻値αma1を算出する。(3)式におけるmode(A(k))は、変数kにより値が変わる関数値A(k)のうち最も多く出現した値(最頻値)を表している。(3)式におけるkは周波数を表すパラメータであり、M、Nはそれぞれ、収音帯域の下限周波数、上限周波数である。Xma1k(t)はビームフォーマ出力Xma1(t)の周波数kの振幅スペクトルを表し、Xma2k(t−τ) はビームフォーマ出力Xma2(t−τ)の周波数kの振幅スペクトルを表している。上述のように、目的エリア音成分は、全てのビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ)に同じ割合、分布で含まれているため、目的エリア音の周波数では、比率が全て同じになる。逆に、雑音成分は、分布が各ビームフォーマ出力Xma1(t)、Xma2(t−τ)で異なるので、比率はばらつくことになる。この特性から、全ての周波数についてそれぞれ比率を求めた後、比率の最頻値を求めれば、その値がそのまま各ビームフォーマ出力の目的エリア音のパワーが等しくなるように補正する係数αma1(t)となる。
図8は、各ビームフォーマ出力間の周波数毎の振幅スペクトルの比率をヒストグラムで表した説明図である。図8(A)は、各マイクロホンアレイMA1、MA2が目的エリアTARから等距離に配置されている場合である。目的エリアTARからの距離が同じため、入力される目的エリア音のパワーはほぼ等しく、比率の最頻値は1に近い値となっている。図8(B)は、マイクロホンアレイMA1よりもマイクロホンアレイMA2の方が目的エリアTARに近い場合である。目的エリアTARに近いマイクロホンアレイMA2の方が目的エリア音のパワーが大きいため、比率の最頻値は1より小さい値となる。算出したパワー補正係数を用い、各ビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ)に含まれる目的エリア音のパワーが全て等しくなるように補正した後、上記手法により目的エリア音を抽出することができる。
上述した(1)式〜(3)式は、マイクロホンアレイMA1をメイン、マイクロホンアレイMA2をサブとした処理を示しているが、マイクロホンアレイMA1及びMA2を逆にしても、同様に、目的エリア音の収音が可能である。
浅野太著、"音のアレイ信号処理 −音源の定位・追跡と分離"、社団法人日本音響学会、コロナ社、2011年2月25日発行
矢頭隆、森戸誠、山田圭、小川哲司共著、"正方形マイクロホンアレイによる音源分離技術(<特集>音声認識技術の実用化への取り組み)"、一般社団法人情報処理学会、情報処理51(11)、pp.1410−1416、2010年
上記従来法を用いれば、目的エリアTARの周囲に雑音源が存在していても、目的エリア音のみを収音することができる。
しかし、目的エリアTAR内に複数の音源が存在していると、各マイクロホンアレイMA1、MA2で収音される各音源のパワーにばらつきが生じる場合がある。例えば、目的エリアTAR内に指向性を持った音源SA及びSBが存在し、音源SA及びSB共にマイクロホンアレイMA1に対して90度方向(一方は時計回りに90度方向、他方は反時計回りに90度方向)を向いているが、マイクロホンアレイMA2に対して音源SAは後ろ、音源SBは正面を向いている、という状況もあり得る。この場合において、各マイクロホンアレイMA1、MA2と目的エリアTARの距離が等しければ、各マイクロホンアレイMA1、MA2で収音された音源SAのパワーは、マイクロホンアレイMA1の方がマイクロホンアレイMA2よりも大きくなる。逆に、音源Bに関しては、マイクロホンアレイMA2の方がマイクロホンアレイMA1よりも大きくなる。この場合、各ビームフォーマ出力間の比率を算出すると、音源SAとSBの比率はそれぞれ異なり、比率のヒストグラムでは、図9に示すように単峰にならず極値(以下、ピーク値と呼ぶ)が複数できる多峰になる。従来法は、最頻値の比率をパワー補正係数とするため、音源によってはパワー補正が充分でなく、目的エリア音の抽出の際に、目的エリア音の成分が抑圧されてしまう可能性がある。
そのため、目的エリアに複数の音源がある場合においても、目的エリア音を適切に収音することができる収音装置及びプログラムが望まれている。
第1の本発明の収音装置は、(1)メイン及びサブのマイクロホンアレイと、(2)上記各マイクロホンアレイの出力のそれぞれに対し、ビームフォーマによって、少なくとも目的エリア方向へ指向性を形成する指向性形成手段と、(3)上記指向性形成部からの、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルに対する、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルの比率を周波数毎の算出し、算出された振幅スペクトル比率が同じ周波数を計数した頻度に基づいて頻度分布を得、頻度分布の形状でピークを取る振幅スペクトル比率であるピーク値を求め、ピーク値に基づいて、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーをメインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーに整合させるための係数であるサブ反映係数を決定するものであって、ピーク値が複数ある場合に、各ピーク値が該当する振幅スペクトル比率そのもの、若しくは、その振幅スペクトル比率に値を小さくする修正を加えた修正振幅スペクトル比率でなる複数の候補値の中から最大値をサブ反映係数に決定するサブ反映係数決定手段と、(4)メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のサブ反映係数倍を、スペクトル減算することにより、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力に含まれている雑音を得、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、重み付けした雑音をスペクトル減算することにより、目的エリア音を抽出する目的エリア音抽出手段とを備えることを特徴とする。
第2の本発明の収音プログラムは、メイン及びサブのマイクロホンアレイを有する収音装置に搭載されるコンピュータを、(1)上記各マイクロホンアレイの出力のそれぞれに対し、ビームフォーマによって、少なくとも目的エリア方向へ指向性を形成する指向性形成手段と、(2)上記指向性形成部からの、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルに対する、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルの比率を周波数毎の算出し、算出された振幅スペクトル比率が同じ周波数を計数した頻度に基づいて頻度分布を得、頻度分布の形状でピークを取る振幅スペクトル比率であるピーク値を求め、ピーク値に基づいて、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーをメインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーに整合させるための係数であるサブ反映係数を決定するものであって、ピーク値が複数ある場合に、各ピーク値が該当する振幅スペクトル比率そのもの、若しくは、その振幅スペクトル比率に値を小さくする修正を加えた修正振幅スペクトル比率でなる複数の候補値の中から最大値をサブ反映係数に決定するサブ反映係数決定手段と、(3)メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のサブ反映係数倍を、スペクトル減算することにより、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力に含まれている雑音を得、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、重み付けした雑音をスペクトル減算することにより、目的エリア音を抽出する目的エリア音抽出手段として機能させることを特徴とする。
本発明によれば、目的エリアに複数の音源がある場合においても、目的エリア音を適切に収音できる収音装置及びプログラムを提供できる。
(A)第1の実施形態
以下、本発明による収音装置及びプログラムの第1の実施形態を、図面を参照にして説明する。
以下、本発明による収音装置及びプログラムの第1の実施形態を、図面を参照にして説明する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る収音装置の構成を示すブロック図である。マイクロホンアレイを除く図1に示す部分は、ハードウェア的に各種回路を接続して構築されても良く、また、CPU、ROM、RAMなどを有する汎用的な装置若しくはユニットが所定のプログラムを実行することで該当する機能を実現するように構築されても良く、いずれの構築方法を採用した場合であっても、機能的には、図1で表すことができる。
図1は、第1の実施形態に係る収音装置の構成を示すブロック図である。マイクロホンアレイを除く図1に示す部分は、ハードウェア的に各種回路を接続して構築されても良く、また、CPU、ROM、RAMなどを有する汎用的な装置若しくはユニットが所定のプログラムを実行することで該当する機能を実現するように構築されても良く、いずれの構築方法を採用した場合であっても、機能的には、図1で表すことができる。
図1において、第1の実施形態に係る収音装置20は、複数(図1は2個の場合を示している)のマイクロホンアレイMA1及びMA2、データ入力部21、指向性形成部22、伝播遅延差補正部23、空間座標データ保持部24、目的エリア音パワー補正係数算出部25及び目的エリア音抽出部26を備える。
第1のマイクロホンアレイMA1は、目的エリア(以下、符号TARを用いる;図6参照)が存在する空間の、目的エリアTARを指向できる場所に配置される。第1のマイクロホンアレイMA1は、M個(M≧2)のマイクロホンa11、a12、…、a1Mから構成され(図7参照)、各マイクロホンa11、a12、…、a1Mが音響を収音(捕捉)して音響信号x11、x12、…、x1Mを当該収音装置20の本体に入力する。
第2のマイクロホンアレイMA2は、第1のマイクロホンアレイMA1とは異なる、目的エリアTARを指向できる場所に配置されるが、第1のマイクロホンアレイMA1と同様な構成を有する。第2のマイクロホンアレイMA2を構成する各マイクロホンa21、a22、…、a2Mから音響信号x21、x22、…、x2Mが入力される。
図1では、第1及び第2のマイクロホンアレイMA1及びMA2が直線上に並設されているように記載しているが、これは紙面上の都合のためであり、実際的な配置では、第1のマイクロホンアレイMA1(のマイクロホンの配置平面)が目的エリアTARを臨む方向と、第2のマイクロホンアレイMA2が目的エリアTARを臨む方向とがなす角度がある程度の値(例えば、45度以上)であることが好ましい(上述した図6参照)。
第1又は第2のマイクロホンアレイMA1、MA2を構成するM個のマイクロホンの配置はビームフォーマを実行できる配置であれば良く、例えば、横一列、縦一列、十字状又は格子状のいずれかであっても良い。
データ入力部21は、マイクロホンアレイMA1、MA2で収音した音響信号をアナログ信号からデジタル信号(データ)に変換するものである。なお、上述した図7では、データ入力部の図示を省略している。
指向性形成部22は、各マイクロホンアレイMA1、MA2からの出力(デジタル信号)に対するビームフォーマにより、目的エリア方向に向けた指向性ビームを形成し、各マイクロホンアレイMA1、MA2についてのビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t)を得るものである。ビームフォーマ法として、加算型の遅延和法、減算型のスペクトル減算法など各種手法を使うことができる。また、ターゲットとする目的エリアTARの範囲に応じて指向性の強度を変更するようにしても良い。ここで、指向性形成部22が、上述した図7における第1及び第2の指向性形成部11及び12に対応している。
空間座標データ保持部24は、目的エリアTAR(の中心)の位置情報や、各マイクロホンアレイMA1、MA2の位置情報を保持しているものである。
伝播遅延差補正部23は、目的エリアTARと各マイクロホンアレイMA1、MA2の距離の違いにより発生する伝播遅延時間の差を算出し、その差を吸収するように、各マイクロホンアレイMA1、MA2についてのビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t)の少なくとも1つを補正するものである。具体的な手順例は、以下の通りであり、マイクロホンアレイの数が3以上でも適用できるように説明する。まず、空間座標データ保持部24から、目的エリアTARの位置と各マイクロホンアレイの位置を取得し、各マイクロホンアレイへの目的エリア音の到達時間(伝播遅延時間)の差を算出する。目的エリアTARから最も遠い位置に配置されたマイクロホンアレイに目的エリア音が到達するタイミングを基準とし、全てのマイクロホンアレイに目的エリア音が同時に到達するように、基準のマイクロホンアレイ以外の他の全てのマイクロホンアレイのビームフォーマ出力に遅延を加える。
ここで、伝播遅延差補正部23及び空間座標データ保持部24が、上述した図7における伝播遅延差補正部14に対応している。
なお、目的エリアTARが変更されることなく、かつ、その目的エリアTARと各マイクロホンアレイMA1、MA2との距離が等しい場合には、伝播遅延差補正部23及び空間座標データ保持部24を省略することができる。
目的エリア音パワー補正係数算出部25は、各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2における目的エリア音のパワーを揃えるための補正係数を算出するものである。目的エリア音パワー補正係数算出部25は、各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2に複数の目的エリア音源が含まれる場合には、複数の目的エリア音源の中で最もパワーが大きい音源のパワーを、全てのビームフォーマ出力について同じにするようにパワー補正係数を算出する。
以下、目的エリア音パワー補正係数算出部25によるパワー補正係数の算出方法における技術的な特徴について説明する。
目的エリア音パワー補正係数算出部25は、各ビームフォーマ出力間の周波数毎の振幅スペクトル比率の頻度を求めた後、頻度のピーク値を検出し、ピーク値をとる振幅スペクトル比率の中で最大値の振幅スペクトル比率をパワー補正係数とする。ここで、ピーク値検出の際に適用する閾値を設け、閾値以上の頻度をもつピーク値だけを検出する。なお、上述した図7では、目的エリア音パワー補正係数算出部の図示を省略している。
以下に、従来法の課題を説明した状況において、第1の実施形態で算出したパワー補正係数を適用すると、その課題を解決できることを説明する。
図2は、目的エリアTAR内に複数の音源が存在する場合の各目的エリア音源に対するパワー補正係数と抽出した雑音パワーの関係例を示す説明図である。
従来法では、上述したように、全ての周波数についてそれぞれ振幅スペクトルの比率を求めた後、比率の最頻値を求めてパワー補正係数としており、目的エリアTARに複数の音源が存在していたときに、上述した課題が生じていた。今、従来法で課題が生じる状況を仮定する。例えば、第1のマイクロホンアレイMA1のビームフォーマ出力Xma1に含まれる目的エリア音源のパワーは音源SA及びSB共に6、第2のマイクロホンアレイMA2のビームフォーマ出力Xma2では、音源SAのパワーが3、音源SBのパワーが9であったとする。この状況で、第1のマイクロホンアレイMA1をメイン、第2のマイクロホンアレイMA2をサブとしてエリア収音する場合を考える。
周波数毎に振幅スペクトルの比率を求め、その頻度をヒストグラムに表すと、ピークをとる振幅スペクトル比率の値(以下、ピーク値と呼ぶことがある)が0.67(≒6/9)と2(=6/3)の2箇所に現れることになる。ここで、従来法のように、最頻値をパワー補正係数αma1として設定すると、ピーク値0.67と2の頻度は状況によって変わるため、どちらが選択されるか予想できない。仮に、ピーク値0.67がパワー補正係数αma1として選択された場合、(1)式により抽出される雑音Nma1には、音源SAのパワーが4.0(=6−3×(2/3))だけ含まれる。つまり、音源SAに対するパワー補正が充分でないため、スペクトル減算後の雑音Nma1に音源SAの成分が消えずに残っている状態である。このまま、(2)式に従って目的エリア音を抽出すると、音源SAの成分が減算され、抑圧されてしまう。逆に、ピーク値2.0をパワー補正係数αma1とした場合、(1)式により抽出した雑音Nma1に含まれる音源SBのパワーは−12(=6−2×9)になる。しかし、スペクトル減算では処理結果が0未満になることはないので、成分がマイナスになった場合は、0に置き換えるかフロアリングにより0に近い値とする。それゆえ、抽出された雑音Nma1には音源SA及びSB共に含まれず、続く処理でどちらの音源SA及びSBも抑圧されずに目的エリア音が抽出されることになる。
同様に、第2のマイクロホンアレイMA2をメイン、第1のマイクロホンアレイMA1をサブとした場合では、パワー補正係数αma2を0.5(=3/6)とすると音源SBが抑圧されてしまうが、パワー補正係数αma2を1.5(=9/6)では、どちらの音源SA及びSBも抑圧されずに目的エリア音として抽出することができる。
これらの結果から、振幅スペクトルの比率の頻度のピーク値が複数検出された場合には、最も値が大きい振幅スペクトル比率をパワー補正係数に設定すれば、全ての目的エリア音源を抑圧することなく抽出できることが分かる。第1の実施形態の目的エリア音パワー補正係数算出部25は、このような考え方に従い、各ピーク値の中で最大値のピーク値(振幅スペクトル比率)をパワー補正係数αma1とすることとした。ピーク値が1個の場合には、唯一のピーク値が最大ピーク値となるので、この場合は、従来法と同じ振幅スペクトル比率がパワー補正係数αma1となる。
目的エリア音抽出部26は、伝播遅延差補正部23から出力された各ビームフォーマ出力Xma1、Xma2と、目的エリア音パワー補正係数算出部25から出力されたパワー補正係数αma1とに基づいて、目的エリア音を抽出するものである。目的エリア音抽出部26は、具体的には、上述した(1)式に従って、メインのマイクロホンアレイMA1のビームフォーマ出力Xma1に含まれている雑音を抽出し、その後、(2)式に従って、メインのマイクロホンアレイMA1のビームフォーマ出力Xma1から抽出した雑音をスペクトル減算することにより、目的エリア音を抽出する。
ここで、目的エリア音抽出部26が、上述した図7における雑音抽出用スペクトル減算部15及び目的エリア音抽出用スペクトル減算部16に対応している。
上述したように、目的エリア音を抽出するための処理では、全てのビームフォーマ出力Xma1及びXma2が周波数領域で表現されていることを要する。そのため、図1では省略しているが、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する変換部や、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換する変換部等が必要となる。前者の変換部の介挿位置として、データ入力部21の後段、指向性形成部22の後段、若しくは、伝播遅延差補正部23の後段等を挙げることができる。例えば、伝播遅延差補正部23の後段に変換部を設けた場合には、伝播遅延の時間差の補正処理が施された後の全ての時間領域のビームフォーマ出力を周波数領域のビームフォーマ出力に変換することとなる。後者の変換部の介挿位置として、目的エリア音抽出部26の入力段や、目的エリア音抽出部26の出力段等を挙げることができる。例えば、目的エリア音抽出部26の出力段に変換部を設けた場合には、抽出された周波数領域の目的エリア音を時間領域の目的エリア音に変換することとなる。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、上述した構成を有する第1の実施形態に係る収音装置20の動作を説明する。
次に、上述した構成を有する第1の実施形態に係る収音装置20の動作を説明する。
目的エリアTARに位置している全ての音源が放音した音響は、目的エリアTARを処理対象としている、全てのマイクロホンアレイMA1及びMA2のマイクロホンa11、a12、…、a1M、a21、a22、…、a2Mによって捕捉される。なお、マイクロホンアレイMA1及びMA2のマイクロホンa11、a12、…、a1M、a21、a22、…、a2Mは、目的エリアTAR以外のエリアに存在する音源からの音響も捕捉する。
第1のマイクロホンアレイMA1の全てのマイクロホンa11、a12、…、a1Mが捕捉して得た音響信号(アナログ信号)x11、x12、…、x1Mは、データ入力部21によってデジタル信号に変換されて指向性形成部22に与えられ、同様に、第2のマイクロホンアレイMA2の全てのマイクロホンa21、a22、…、a2Mが捕捉して得た音響信号(アナログ信号)x21、x22、…、x2Mは、データ入力部21によってデジタル信号に変換されて指向性形成部22に与えられる。
第1のマイクロホンアレイMA1からのデジタル信号に変換された全ての音響信号に対し、指向性形成部22によって、目的エリアTARの方向を指向性方向とするビームフォーマ処理が施されて、メインのビームフォーマ出力Xma1(t)が得られて伝播遅延差補正部23に与えられる。また、第2のマイクロホンアレイMA2からのデジタル信号に変換された全ての音響信号に対し、指向性形成部22によって、目的エリアTARの方向を指向性方向とするビームフォーマ処理が施されて、サブのビームフォーマ出力Xma2(t)が得られて伝播遅延差補正部23に与えられる。
伝播遅延差補正部23において、空間座標データ保持部24の保持データに基づいて、目的エリアTARと各マイクロホンアレイMA1、MA2の距離の違いにより発生する、目的エリアTARから第1のマイクロホンアレイMA1への伝播遅延時間と、目的エリアTARから第2のマイクロホンアレイMAへの伝播遅延時間との差が算出され、その時間差を吸収するように、各マイクロホンアレイMA1、MA2についてのビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t)の少なくとも1つの時間軸が補正される。
以上のようにして時間軸が揃えられたビームフォーマ出力(周波数領域の信号)Xma1(t)及びXma2(t−τ)が、目的エリア音パワー補正係数算出部25及び目的エリア音抽出部26に与えられる。遅延が付与されるビームフォーマ出力がサブのマイクロホンアレイのビームフォーマ出力に限らないが、以下では、サブのマイクロホンアレイのビームフォーマ出力をXma2(t−τ)と表記する(上述した(1)式も、同様な仮定下で表記している)。
目的エリア音パワー補正係数算出部25においては、時間軸が揃えられたビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ)に基づいて、これらビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ) における目的エリア音のパワーを揃えるための補正係数が算出される。
図3は、目的エリア音パワー補正係数算出部25における処理を示すフローチャートである。
最初に、目的エリア音パワー補正係数算出部25は、各ビームフォーマ出力Xma1(t)、Xma2(t−τ)間で、周波数毎に振幅スペクトルの比率を求める(ステップS1)。
次に、目的エリア音パワー補正係数算出部25は、求めた振幅スペクトルの比率の頻度を算出し(ステップS2)、頻度のピーク値を検出する(ステップS3)。例えば、データの中で1階微分値が0であって(極値)、2階微分値がマイナスであるデータ点(極大値)の振幅スペクトルの比率の値をピーク値とすることにより、ピーク値を検出する。また、頻度が何回か連続で増加した後(ここでは、振幅スペクトルの比率を1単位分だけ増加させることを1回と表現している)、何回か連続で減少したとき、その変換点をピーク値であると判定するようにしても良い。
目的エリア音パワー補正係数算出部25は、ピーク値を検出すると、予め設定されている閾値以上の頻度を有するピーク値の中から、最も大きい値を選択し、パワー補正係数αma1とする(ステップS4)。この際、目的エリアTARを撮像した画像情報の分析などから、予め音源数が分かっている場合には、頻度の高い方から順に音源数だけピーク値を選び、その中の最大値をパワー補正係数αma1とするようにしても良い。
以上にようにして決定されたパワー補正係数αma1は、目的エリア音抽出部26に与えられる。
目的エリア音抽出部26においては、まず、時間軸が揃えられたビームフォーマ出力Xma1(t)及びXma2(t−τ)とパワー補正係数αma1とに基づいて、上述した(1)式の演算が実行されて、メインのマイクロホンアレイMA1のビームフォーマ出力Xma1(t)に含まれている雑音Nma1(t)が抽出され、その後、メインのマイクロホンアレイMA1の時間軸が揃えられたビームフォーマ出力Xma1(t)と雑音Nma1(t)と予め定まっている係数γma1とに基づいて、(2)式の演算が実行されて、目的エリア音(周波数領域の信号)Yma1(t)が抽出される。
周波数領域の信号でなる目的エリア音Yma1(t)は、次段の構成によって、周波数領域の信号のまま出力され、若しくは、時間領域の信号に変換されて出力される。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、目的エリア内に複数の音源が存在する場合においても、目的エリア音を適切に抽出することができる。
第1の実施形態によれば、目的エリア内に複数の音源が存在する場合においても、目的エリア音を適切に抽出することができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明による収音装置及びプログラムの第2の実施形態を、図面を参照にして説明する。
次に、本発明による収音装置及びプログラムの第2の実施形態を、図面を参照にして説明する。
上述した第1の実施形態の収音装置20では、目的エリアTAR内の全ての音源に影響を与えずに目的エリア音を抽出できるパワー補正係数αma1を算出している。
この第2の実施形態の収音装置20Aでは、この係数(第2の実施形態ではレベル調整係数と呼ぶ)を特定の範囲内で所定ルールに従って変更することで、目的エリアTAR内の音源の音量レベルを、大きいものからレベルを減少させるように調節する。目的エリア音源の音量レベルを調節することにより、例えば、ある話者の声が大き過ぎて他の話者の声が聞き難いような場合、大きな声を抑圧して目的エリア音全体を聴き易くすることが可能となる。
(B−1)第2の実施形態の構成
図4は、第2の実施形態に係る収音装置20Aの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
図4は、第2の実施形態に係る収音装置20Aの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
図4において、第2の実施形態に係る収音装置20Aは、第1の実施形態の目的エリア音パワー補正係数算出部25に代えて、目的エリア音源レベル調節係数算出部27を備えるものであり、他の構成は、第1の実施形態と同様なものである。
目的エリア音源レベル調節係数算出部27は、目的エリアTAR内に存在する音源のうち、音源レベルの大きい音源から抑圧するレベル調節係数(以下、符号として、βma1を用いる)を算出するものである。レベル調節係数βma1の算出方法については、動作説明の項で明らかにする。
第2の実施形態における目的エリア音抽出部26は、目的エリア音源レベル調節係数算出部27から与えられたレベル調節係数βma1を、第1の実施形態におけるパワー補正係数αma1と同様に取扱い、目的エリア音を抽出するものである。すなわち、目的エリア音抽出部26は、(1)式におけるパワー補正係数αma1に代えてレベル調節係数βma1を適用して目的エリア音を抽出するものである。
(B−2)第2の実施形態の動作
第2の実施形態の収音装置20Aにおける動作は、目的エリア音パワー補正係数算出部25に代えて設けられた目的エリア音源レベル調節係数算出部27の動作だけが、第1の実施形態と異なっているので、以下、目的エリア音源レベル調節係数算出部27の動作だけを説明する。
第2の実施形態の収音装置20Aにおける動作は、目的エリア音パワー補正係数算出部25に代えて設けられた目的エリア音源レベル調節係数算出部27の動作だけが、第1の実施形態と異なっているので、以下、目的エリア音源レベル調節係数算出部27の動作だけを説明する。
図8は、目的エリア音源レベル調節係数算出部27によるレベル調節係数の算出動作を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図3との同一、対応ステップには同一符号を付して示している。
目的エリア音源レベル調節係数算出部27も、各ビームフォーマ出力Xma1(t)、Xma2(t−τ)間で、周波数毎に振幅スペクトルの比率を求め(ステップS1)、次に、求めた振幅スペクトルの比率の頻度を算出し(ステップS2)、頻度のピーク値を検出することを行う(ステップS3)。
この後の処理が、第1の実施形態の目的エリア音パワー補正係数算出部25の処理とは異なっている。
目的エリア音源レベル調節係数算出部27は、ピーク値を検出した後、予め設定した閾値以上の頻度を有するピーク値の中から、最大値と最小値を求め、ピーク値の最小値からピーク値の最大値までの区間を、レベル調節係数βma1の取り得る範囲に設定する(ステップS5)。この際、目的エリアTARを撮像した画像情報の分析などから、予め音源数が分かっている場合には、頻度の高い方から順に音源数だけピーク値を選び、その中から、ピーク値の最大値と最小値を求めるようにしても良い。
目的エリア音源レベル調節係数算出部27は、目的エリアTAR内の各音源の音量レベルが良好な関係になるように、先に決定して設定した範囲内で、予め定められている方法によりレベル調節係数βma1を算出して設定する(ステップS6)。
例えば、予め設定した閾値以上の頻度を有するピーク値が1個の場合には、その唯一のピーク値をレベル調節係数βma1の取り得る最大値に設定する。また、最小値には、0以上最大値未満の値を設定する。この場合、βma1の値を最大値から徐々に小さくしていくと、それに従い目的エリア音のレベルも小さくなり、βma1=0で完全に消えることとなる。例えば、予め設定した閾値以上の頻度を有するピーク値が2個以上の場合には、小さいピーク値をβma1の取り得る最小値に設定し、大きいピーク値を最大値に設定する。図2において、マイクロホンアレイMA2をメイン、マイクロホンアレイMA1をサブとした場合、βma1の最大値は1.5、最小値は0.5となる。βma1=1.5の場合、エリア収音処理後の出力には、目的エリア音源Aの音量レベルが3、目的エリア音源Bの音量レベルが9で含まれている。βma1の値を徐々に小さくしていくと、それに従い目的エリア音源Bの音量レベルは小さくなり、βma1=0.5で3となる。目的エリア音源Aに対応するピーク値は0.5であるため、この間、目的エリア音源Aの音量レベルは変化せず、βma1=0.5で目的エリア音源A、Bの音量レベルは等しくなる。
レベル調節した値がピーク値の最小値からピーク値の最大値までの区間の値にするようにしたのは、この区間より小さい値にした場合には、図2に対する上述した説明から理解できるように、(1)式に従って抽出した雑音に、本来の音源の成分が多く残り過ぎるためである。一方、範囲内であれば、レベル調節した値を採用するようにしたのは、(1)式に従って抽出した雑音に、本来の音源の成分をそれなりに残し、(2)式に従って抽出した目的エリア音における、音響レベルが大きい音源の目的エリア音の比率を小さく抑え込むためである。
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、目的エリアTAR内で他の音源より過度に音量レベルが大きい音源の成分を抑圧し、各音源の音量レベルの差を小さくすることができる。
第2の実施形態によれば、目的エリアTAR内で他の音源より過度に音量レベルが大きい音源の成分を抑圧し、各音源の音量レベルの差を小さくすることができる。
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記各実施形態の説明においても種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記各実施形態においては、第1のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をメインとし、第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をサブとして目的エリア音を抽出するものを示したが、第1及び第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力を利用した他の方法によって目的エリア音を抽出するようにしても良い。例えば、第1のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をメイン、第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をサブとして抽出した目的エリア音と、第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をメイン、第1のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をサブとして抽出した目的エリア音のうち、一方を出力する目的エリア音として選択するようにしても良い。例えば、抽出された目的エリア音の音量レベルやパワーの大小から、一方を選択する。また例えば、第1のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をメイン、第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をサブとして抽出した目的エリア音と、第2のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をメイン、第1のマイクロホンアレイに係るビームフォーム出力をサブとして抽出した目的エリア音との平均値や加算値を、出力する目的エリア音とするようにしても良い。
上記各実施形態では、マイクロホンアレイが2つのものを示したが、マイクロホンアレイが3つ以上あっても良い。例えば、マイクロホンアレイが3つの場合において、第1及び第2のマイクロホンアレイからの出力から上記各実施形態の方法によって得た目的エリア音、第2及び第3のマイクロホンアレイからの出力から上記各実施形態の方法によって得た目的エリア音、第3及び第1のマイクロホンアレイからの出力から上記各実施形態の方法によって得た目的エリア音の計3つの目的エリア音から、出力する目的エリア音を定めるようにしても良い。
上記各実施形態では、図1又は図4に示すように各部が配置されているものを示したが、本発明の特徴から離れないならば、各部の位置関係が逆であっても良い。例えば、伝播遅延差補正部23を指向性形成部22の前段に設けるようにしても良い。
上記各実施形態では、ピーク値として取り扱う振幅スペクトル比率は、その頻度が閾値以上であることを要するものを示したが、これに代え、又は、これに加えて、他の条件を導入するようにしても良い。例えば、最大頻度の所定割合以上の頻度をとることを、ピーク値として取り扱う振幅スペクトル比率の条件とするようにしても良い。
上記各実施形態では、マイクロホンアレイが捕捉して得た音響信号をリアルタイムに処理するものを示したが、マイクロホンアレイが捕捉して得た音響信号を記憶媒体に記憶させ、その後、記憶媒体から読み出して処理して目的エリア音の強調信号を得るようにしても良い。このように記憶媒体を利用する場合には、マイクロホンアレイが設定されている場所と、目的エリア音の抽出処理する場所とが離れていても良い。同様に、リアルタイムに処理する場合にも、マイクロホンアレイが設定されている場所と、目的エリア音の抽出処理する場所とが離れていても良く、通信により信号を遠隔地に供給するようにしても良い。
以上のような記憶媒体や通信を利用したりする場合も、本発明の「収音装置」の概念に含まれるものとする。
上記各実施形態では、各マイクロホンアレイにおけるマイクロホンの数が同じものを示したが、各マイクロホンアレイにおけるマイクロホンの数が異なっていても良い。
MA1、MA2…マイクロホンアレイ、20、20A…収音装置、21…データ入力部、22…指向性形成部、23…伝播遅延差補正部、24…空間座標データ保持部、25…目的エリア音パワー補正係数算出部、26…目的エリア音抽出部、27…目的エリア音源レベル調節係数算出部。
Claims (6)
- メイン及びサブのマイクロホンアレイと、
上記各マイクロホンアレイの出力のそれぞれに対し、ビームフォーマによって、少なくとも目的エリア方向へ指向性を形成する指向性形成手段と、
上記指向性形成部からの、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルに対する、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルの比率を周波数毎の算出し、算出された振幅スペクトル比率が同じ周波数を計数した頻度に基づいて頻度分布を得、頻度分布の形状でピークを取る振幅スペクトル比率であるピーク値を求め、ピーク値に基づいて、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーをメインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーに整合させるための係数であるサブ反映係数を決定するものであって、ピーク値が複数ある場合に、各ピーク値が該当する振幅スペクトル比率そのもの、若しくは、その振幅スペクトル比率に値を小さくする修正を加えた修正振幅スペクトル比率でなる複数の候補値の中から最大値をサブ反映係数に決定するサブ反映係数決定手段と、
メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のサブ反映係数倍を、スペクトル減算することにより、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力に含まれている雑音を得、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、重み付けした雑音をスペクトル減算することにより、目的エリア音を抽出する目的エリア音抽出手段と
を備えることを特徴とする収音装置。 - 上記サブ反映係数決定手段は、ピーク値が複数ある場合に、各ピーク値が該当する振幅スペクトル比率そのものをサブ反映係数の候補値としていることを特徴とする請求項1に記載の収音装置。
- 上記サブ反映係数決定手段は、ピーク値が複数ある場合に、複数のピーク値の最小値から複数のピーク値の最大値の範囲をピーク値の修正範囲に設定し、予め定められている方法によりピーク値をその修正範囲内に収まるように修正してサブ反映係数の決定に利用することを特徴とする請求項1に記載の収音装置。
- 上記サブ反映係数決定手段は、閾値以上の頻度を有するものだけをピーク値として求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の収音装置。
- 目的エリア内の音源からの音響のメインのマイクロホンアレイへの伝播遅延時間と、目的エリア内の音源からの音響のサブのマイクロホンアレイへの伝播遅延時間の差を吸収する補正処理を行う伝播遅延差補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の収音装置。
- メイン及びサブのマイクロホンアレイを有する収音装置に搭載されるコンピュータを、
上記各マイクロホンアレイの出力のそれぞれに対し、ビームフォーマによって、少なくとも目的エリア方向へ指向性を形成する指向性形成手段と、
上記指向性形成部からの、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルに対する、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力の振幅スペクトルの比率を周波数毎の算出し、算出された振幅スペクトル比率が同じ周波数を計数した頻度に基づいて頻度分布を得、頻度分布の形状でピークを取る振幅スペクトル比率であるピーク値を求め、ピーク値に基づいて、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーをメインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のパワーに整合させるための係数であるサブ反映係数を決定するものであって、ピーク値が複数ある場合に、各ピーク値が該当する振幅スペクトル比率そのもの、若しくは、その振幅スペクトル比率に値を小さくする修正を加えた修正振幅スペクトル比率でなる複数の候補値の中から最大値をサブ反映係数に決定するサブ反映係数決定手段と、
メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、サブのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力のサブ反映係数倍を、スペクトル減算することにより、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力に含まれている雑音を得、メインのマイクロホンアレイについてのビームフォーマ出力から、重み付けした雑音をスペクトル減算することにより、目的エリア音を抽出する目的エリア音抽出手段と
して機能させることを特徴とする収音プログラム。
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