JP5735798B2 - サンプル中の不溶性検出対象の測定法 - Google Patents

サンプル中の不溶性検出対象の測定法 Download PDF

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Description

各種の生物学的及び化学的アッセイにおいて,表面又は「チップ」に分子プローブが多数配置されたものが使用されてきた。アッセイは,目的とする標的分子がプローブの何れかと相互作用するかどうか判定するために行われる。選択された試験条件下にプローブを標的分子に接触させた後,検出装置が,標的分子が所定のプローブと相互作用したかどうかを判定する。
これらのシステムは,プローブ又は標的分子に関する情報を得るための各種のスクリーニング操作において有用である。それらは,例えば,関心のある受容体に結合するペプチド又は薬物候補をスクリーニングすること,なかでも:遺伝子突然変異,ある母集団中のアレレ変異体,又は特定の病原体又は特定の病原体株の存在を検出するために,不溶性の標的を含むサンプルをスクリーニングすること,とりわけ:その発現が特定の生理学的条件,発育段階又は疾病状態などに関連づけられているmRNAを同定する等のため,遺伝子発現を研究するために使用されてきた。
本発明の説明
遺伝子を,特に遺伝子発現又はオリゴヌクレオチドを,固定された組織から正確に測定することは,多くの利点を有する。臨床サンプルの場合,ここに記載された方法は,標的オリゴヌクレオチドを,臨床上のプラクティスの変更を必要とすることなく(すなわち,凍結サンプルを調製する必要なしに固定された組織から直接),測定することを可能とする。莫大な量の固定された材料が保管されており,それらは,バイオマーカーや標的遺伝子を同定し検証する遡及的研究のため,あるいは,モニタリング・アッセイ,予後アッセイ又は診断アッセイの開発及び検証のため,あるいは,遺伝子発現と安全性との関連付けのために,あるいは,疾患プロセスの理解等のために,利用することができるであろう。しかし,固定された組織からのそのような測定は,問題を含んだものであった。PCR法又はハイブリダイゼーション法による測定は,大量の組織や,複雑な抽出及びサンプル調製法も必要とする。加えて,測定の質が,当該組織がどれだけ長く保管されたかの関数として,低下することがしばしば認められる。対照的に,原部位(イン・シチュ,in situ)測定は,(当該組織において,RNAがラベルされ,視覚化される場合には)新たに固定された組織又は保管されている組織について実施することができ,同質のデータを生ずる。ここに記載されたものは,組織からプローブを回収することを含んでなる,固定された組織からオリゴヌクレオチドを測定する方法であって,ここに,当該プローブが,天然のオリゴヌクレオチドそのものというより,むしろ測定の基礎として働くものである。更に,本発明は,固定された組織からオリゴヌクレオチドを測定する方法として,ヌクレアーゼ保護(nuclease protection)を用いることに向けられたものである。PCRのような方法は,標的RNAが可溶化され,抽出され,精製され,そして逆転写され,その結果得られたcDNAが増幅されることを必要とする。bDNAは,標的RNAが可溶化されることを必要とする。このように,架橋しているのを元に戻す必要があり,さもなければ,RNAの一部のみが,これら方法によって測定される可溶性のRNAとして,回収されられるだけである。
本発明によって開示される方法は,可溶性のオリゴヌクレオチドだけでなく,架橋されたオリゴヌクレオチドの測定をも可能とするものである。
臨床又は動物実験から得られる組織切片は,しばしば固定され,包埋され,後の顕微鏡による検査に適した形で保存される。従来の固定法は,組織タンパク質内部又は相互間に架橋反応を引き起こすことによって組織を固定するアルデヒド系固定液を,繁用してきた。架橋は,組織の形態及び一体性を保存し,組織をスライシング用に硬くし,微生物からの攻撃を阻害する傾向がある。組織サンプルが固定された後,それらは,薄い切片に切断することができるように,典型的には,包埋剤に包埋される。パラフィンが最も一般的な包埋剤である。もっとも,アクリルアミド及びセロイジンも使用することができる。
他の非ホルマリン固定,例えばエチルアルコール又はアルデヒド固定も,従来技術において知られている。アルデヒド固定は,組織サンプルの構造に実質的な変化を引き起こす傾向がある。これらの変化は,組織サンプル中に存在する可能性のある標的について,しばしば,抗体(そのような抗原を標的とするもの)に対するその反応性を失わせる傾向がある。ホルマリン固定の1つの効果は,組織サンプル中のタンパク質分子の三次元形状を,実質的に固定することである。多くの組織が最初に保存された時には実行不可能だった組織化学的分析が,近年の新しい組織化学的試薬の開発により,現在は実行できるかも知れない。従って,アルデヒド固定によって生じた変化のいくつかを回復させ,組織サンプルの組織化学的染色特性を増強させることができる多くの手法が開発された。
ホルマリンで固定され,アクリルアミドゲルに包埋された組織サンプルの染色能を改善するための,1つの日常的な実験手順は,アクリルアミドゲル包埋組織を,1.0%の2−メルカプトエタノール中で15分間処理し,その後リン酸緩衝食塩水ですすぐものである。組織サンプルの組織化学的染色特性を回復させるための方法が,米国特許第5,244,787号に記載されている(Key et al.)。組織サンプルの組織化学的染色特性を回復させるための別の方法が,米国特許第5,578,452号に記載されている(Shi et al.)。
固定又は保存されたサンプル中の生物学的標的を測定することは,技術的に挑戦的な冒険である。タンパク質は変性し,その過程で,しばしば抗原性(すなわち,抗体認識)を失うことが知られている。炭水化物は,化学的に変化し得るものであり,特に,糖タンパク質部分においてペプチド及びタンパク質に結合しているものは,そうである。核酸は,細胞環境において,互い同士,そしてまたタンパク質,脂質及び炭水化物を含む他の分子と,架橋し得る。これらの分子を回収させて分析することは,費用と時間のかかる工程である。
固定された組織中の核酸についての研究は,さまざまな理由のため,特に困難なものである。ホルマリンで固定されパラフィンに包埋されたサンプルの付加層やコーティングは,従来のプローブや試薬に対し,相当な難題を提示する。更に,検出には,大抵のプローブが,直接に取りつくことに依存していることから,標的の二次構造及び/又は三次構造に相当の変化があると,認識及び検出の観点から,困難をもたらす可能性がある。また別の側面は,認識の特異性であり,それは固定の間における化学薬品及び他の因子への不自然な暴露のため,失われるかもしれない。
固定された生物学的標本中の核酸分析に関する技術的知識は,比較的不足している。
Daniel D'Orazio(American Journal of Pathology. 2002;160:383-384)は,固定されたサンプルにおけるRNA測定を行った。しかしながら,マッチさせた凍結組織からの定量的測定値は,その固定組織の測定値と相関しなかった。著者らは,更に,Sprecht(例えば,Her-2/Neu mRNA)によって観察された,固定組織サンプル間の大きな変動性は,測定に利用可能であったRNAに対する固定の影響によるアーティファクトかもしれず,固定に関するパラメーター(例えば,固定の遅れ,時間,温度)が,このように大きな変動性が現れる原因かも知れないと示唆している。この変動性は,可溶性RNA対する架橋されたものの比率における変動性のためかも知れない。
固定された生物学的標本中の核酸及び他の生物学的標的を分析するための,試薬や方法についての技術的知識は,イン・シチュ検出法に基づくものである。イン・シチュ・ハイブリダイゼーション(ISH)は,それが固定された標本に関わる場合に,フローサイトメトリ(FCM),核型分析及び分子遺伝学の限界を克服するために,開発されてきた。しかし,ISHにおいて使用するこの種のプローブは,欠失,転座,逆位又は増幅によって妨げられるか又は変化させられた特定の遺伝子に対して,特異的ではない。このように,分析される配列がサンプルにおいて適切に提示されていない場合,このような遺伝子の異常を検出することは,可能ではないかも知れない。更に,検出できる変種(すなわち,標的)の数はかなり低く,そして,自動化は,通常,可能でない。
更にまた,ISHの技術は,固定されパラフィン処理された組織よりも,むしろ新たに単離した細胞や培養細胞に利用される。現在まで,以前のハイブリダイゼーションの研究が,細胞株,分離した新しい組織又は凍結組織切片に対して用いられてきた。しかし,典型的には,臨床環境においては,利用可能な唯一の組織がパラフィンで包埋された組織であることがしばしばであるため,生検組織をそれが利用可能になるやいなや分析するということは,常に可能という訳ではない。更に,固定されパラフィン処理された組織の使用は,組織構造が保存されるので,有利である。例えば,核酸は,ヌクレアーゼの作用を受け易い。固定された組織のイン・シチュ・ハイブリダイゼーションは,当該固定がシングル・コピー配列の検出を妨げるので,繰り返しの核酸配列を検出するためのプローブでしか,実施できないであろうと信じられていた。こうして,核酸配列(例えば,SNP)における単独の欠失は,検出することができなかった。イン・シチュ法は,組織の画像を描き出し,それらの画像から,ハイブリダイズし組織と結合したプローブを定量化することにより,固定された組織からのDNA及びRNAの測定に使用することができる。検出は,蛍光(FISH)又はルミネッセンスによることができ,また,種々の方法により,DNA(例えばコピー数)又はRNAを測定することができる。
Hellborg (Ann. Onc., 2007)は,PCR測定法及びマイクロアレイ測定法を,RNAの蛍光イン・シチュ・ハイブリダイゼーション(FISH)検出に代わる方法として記述している。しかし,PCR依存の技術及びマイクロアレイ技術は共に,多くの限界を有している。例えば,抽出及びPCRによる分析はいずれも,扱いにくいばかりでなく高価でもある(Shibutani et al., Lab Invest 2000, 80:199-208)。他の重要な一側面は,マイクロアレイは,可溶性のRNAがよい品質のものである場合に,ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)で機能することである。従って,マイクロアレイは,可溶性のプールを測定するために利用することができる。しかし,これらの技術では,固定されたサンプルからのRNAの迅速な定量的測定ができず,標的が不溶性のときには,尚更である。
固定された組織における,関連する生物学的標的及びバイオマーカーを検出する方法があったなら,有利であろうことは明らかである。
固定されたサンプルからの測定は,低密度及び高密度の両方の並びに固定されたもの(アレイとしてプリントされた捕獲プローブ)若しくはプログラム可能なもの(プリントされたアンカーと,付加されたプログラミング/捕獲リンカーのコンビネーション)の両方のシングル・アレイ,又は,マイクロプレートのウェル内に若しくはビーズ・アレイ(各サンプル中の複数の遺伝子を測定する,溶液中のビーズを含む)上にプリントされ得るマルチアレイを使用して;あるいは,ヌクレアーゼ保護タンパク質を,ある表面に固定するか若しくは固定することなく標識し,撮像することによって;あるいは,例えば慣用のマイクロプレートアッセイにおけるように,混合物として若しくは各反応混合物において検出される個々の標的として,ゲル,電気泳動,クロマトグラフィー,質量スペクトル分析,塩基配列決定を使用することによって;あるいは,ヌクレアーゼ保護プローブのPCR(又は他の増幅法)によって;あるいは,ハイブリッド捕獲,又は,当業者が使用する可能性のある他の方法によって,実施することができる。本願明細書において記載されている試薬及び方法は,固定された組織サンプルからのホスト及び感染因子(異なる種のもの)のオリゴヌクレオチドを,同じ実験で,同じサンプルから,そしてアレイプレート(ArrayPlate)の同じウェルにおいてさえ,測定することを可能にする。個別のサンプル並びに複数のサンプル間の比較の両方,例えば,病態のものと正常のもの,治療を受けたものと対照,又は,同じサンプル(例えば,mRNAとDNA,若しくは,マイクロRNAとRNA,若しくは,リボソームRNAとmRNA,ミトコンドリアRNAとmRNA,若しくは,これらのいずれかの組合せ)を含む,固定されたサンプルからの種々の形のオリゴヌクレオチドの測定を,実施することができる。アプタマー又は他のプローブを使用したタンパク質の測定も,本発明と共に行ってよい。本発明は,また,適切なプロープを同時に使用したタンパク質及びオリゴヌクレオチドの測定にも関するものである。更に他の側面において,本発明は,架橋された(及び可溶性の)RNAへのプローブのハイブリダイゼーション(又は結合),そしてこれに続く当該プローブ又はプローブ/標的分子の除去及び測定に関するものであり,ここに,当該標的分子はたとえ損傷を受け,破壊され,若しくは切断されていてもさえもよいが,但し当該プローブ若しくはプローブ複合体が無傷であるか若しくは十分に結合しているものである。例えば,bDNAの場合,プローブ複合体は,架橋された標的RNA上に形成されることができ,次いで,当該複合体を遊離するため,種々の方法を使用することができる(たとえそのプロセスが,RNAテンプレートを破壊することがあっても,それでも,結合した複合体は,組織の外での測定を許容するのに十分に無傷のまま残る。)。プローブが架橋された若しくは表面に結合した標的分子(オリゴヌクレオチドなど,若しくは,RNAなど)と可溶性の標的分子のいずれとも会合するところの,又は,プローブが架橋された標的分子又は表面に結合した標的分子とのみ会合するところの如何なる方法も,標的分子に関して分析可能な量にまで引き下げられ,そして組織から除去されて,測定される。
更に,本発明は,如何なるタイプのシングル若しくはマルチアレイ(数十万の標的分子まで測定できる高密度アレイを含む)上で,1又は2以上の生物学的又は化学的アッセイを実施するための組成物,装置及び方法を提供する。更に,本発明は,同時に複数の生物学的又は化学的アッセイを実施するための組成物,装置及び方法を提供し,そして,例えば,診断的アッセイにおいてスクリーニングされるべき複数の患者のサンプル,又は,薬物発見の法において試験されるべき複数の薬物候補や治療剤等のような,不溶性標的を含む複数のサンプルのハイ・スループット分析を可能にする。サンプル中の1又は2以上の標的の検出に有用なコンビネーションが,提供される。このコンビネーションは,複数の,空間的に分離した領域を含んでなる表面を含んでなり,該領域は,それは試験領域と呼ばれることができ,そして,それはウェルであってよく,それらの少なくとも二つは実質的に同一である。各表面は,少なくとも2,好ましくは少なくとも20以上,例えば,少なくとも約25,50,96,864,又は1536等の実質的に同一の領域から成る。各試験領域は,1又は2以上の標的を含む(若しくは,潜在的に含んでいる)サンプルの導入のためのスペースを画して,且つ生物学的又は化学的アレイを含んでいる。(「標的を含むサンプル」や「サンプル中の標的の検出」のようなフレーズは,不溶性の標的が全く含まれてない又は検出されない場合のサンプルや判定(検出の試み)を排除することを意味するものではない。一般的な意味では,本発明は,ある標的が(それが検出されるかどうかに拘わらず)サンプルに含まれるかどうかを決定するためのアレイを含むものである。このアレイは,一般的(generic)な「アンカー」を含むものであり,各アンカーは,アンカーに特異的な第一部分と少なくとも一つの標的に特異的なプローブを含む第二部分とを有するバイファンクショナルなリンカー分子と会合するものである。本発明のこのコンビネーションを,1又は2以上の標的を含むサンプルと接触させて標的を任意にディテクター分子と反応させ,次いで試験領域における標的分子とプローブとの間の反応を検出する検出装置により調べ,それにより,アッセイの結果を生ずる。
本発明は,ハイ・スループットの生物学的アッセイに特に役立つ方法及び組成物を提供する。特に好ましい具体例において,本発明は,薬物発見のためのハイ・スループット・スクリーニングに使用することができる。例えば,ハイ・スループットアッセイを,一度に多数(例えば,100枚)の,96ウェル・マイクロプレートにおいて,行うことができる。例えば,アンカーとリンカーの16のペアーのアレイを使用して,プレートの各ウェルは,その中で16の異なる試験を実施することができる。すなわち,100枚のプレートを用いれば,1プレート当たり96ウェル,1ウェルあたり16の試験として,全体で,203,600の試験が可能となる;例えば,それぞれ異なる9,600の候補薬の各々を,16の異なるパラメータ又はアッセイにつき,同時に試験することができる。ハイ・スループットアッセイは,一度に1つのパラメータだけをテストするアッセイよりも,各候補薬について,多くの詳細な情報を提供する。例えば,単一の最初のハイ・スループット・スクリーニングにおいても,ある薬物候補が,選択的か,特異的か,及び/又は,無毒性かを決定することが可能である。ハイ・スループットでない方法の場合は,関心のある薬物候補のそれぞれについて,そのようなパラメーターを試験するための,大量の追跡アッセイを必要とする。幾つかのタイプのハイ・スループット・スクリーニング・アッセイが,従来技術において知られている。一斉に多種多様な生物学的アッセイを実行し,そしてまた一度に非常に多くのアッセイを実施するという能力(すなわち,非常に高い処理能力)は,本発明の2つの重要な利点である。
例えば一態様では,例えば,アミノ酸又は修飾されたオリゴヌクレオチドのような第一級アミンを取り付けるために誘導体化された表面を持つポリスチレン製96ウェルDNA バインドプレート(DNA Bind Plate, Corning Costar 社)を使用して,アンカーの役目をさせるために各プレートの各ウェル表面に異なるオリゴヌクレオチド16種の集合体をスポットすることができる。それらのアンカーは,この誘導体化されたポリスチレンに共有結合で取り付けることができ,同じアンカー16種を全スクリーニング・アッセイに使用できる。如何なる特定のアッセイのためにも,各ウェルの表面を,目的とする16種もの異なる標的又は関心あるアッセイタイプに特異的になるようにプログラムするために,与えられたリンカーの組合せを用いることができ,そして異なるサンプルを各プレートの96ウェルの各々に適用することができる。他の標的及び関心のあるアッセイ用にウェル表面を再プログラムするために,アンカーの同じ組合せを多回使用でき,またそれは,同じリンカーの組合せと共に多回再使用できる。この柔軟性及び再使用可能性は,本発明の更なる利点である。
本発明の別の一態様は,不溶性の標的少なくとも1種を検出するための方法であって,それは,標的を含むかもしれないサンプルと前記コンビネーションとを,標的が該コンビネーションに結合するのに有効な条件下,接触させることを含んでなるものである。別の一態様はRNAの発現パターンを判定するための方法であって,それは,標的として少なくとも2個のRNA分子を含むサンプルを,前記のコンビネーションとともに(ここに,該コンビネーションの少なくとも一つのプローブは,不溶性RNA標的の少なくとも一つに対して特異的(すなわち,選択的)である核酸(例えば,オリゴヌクレオチド)である。),RNA標的とプローブとの特異的なハイブリダイゼーションに有効な条件下,インキュベーションすることを含んでなるものである。別の一態様は,RNAの発現パターンを調節する物質(又は条件)を同定する方法であり,それは,RNAの発現パターンを判定するために前記した方法であって,該物質の存在下(又は該条件下)のRNAの発現パターンと,別な条件のもとに起きたRNAの発現パターンとを比較することを更に含んでなるものである。
例として,図1はこのアンカーの1つ,アンカー1を図式的に示す。アンカー1は,本発明の最も好適な態様では,オリゴヌクレオチドである。アンカー1には,リンカー分子の一つ(リンカー1)が結合し,このリンカーは二つの部分を有する。第一部分は,アンカーに特異的であるが,この図では,アンカーと特異的にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドである。第二部分は,目的とする不溶性標的(ここでは,標的mRNA)に特異的なプローブであるが,この図では,該標的とハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドである。この図には示していないが,他のアンカー15個は,そのアンカー特異的部分を介してそれ自身のリンカーとハイブリダイズでき;各リンカーは,例えば,mRNA1と異なるか(又は同一の)mRNAに特異的なプローブ部分を含むことができる。この図のコンビネーションは,mRNA1の存在について(又は,同時に,アレイ内の他のプローブ5個によって特定(プログラム)されるmRNA標的について),同時に96種もの異なるサンプルをアッセイするために使用できる。このアッセイを行うには,各サンプル(この例では,なんと,独立な細胞株96種の1つからのRNA抽出物であることができる)を領域(すなわちウェル)の1つに少容量添加し,プローブと不溶性標的とのハイブリダイゼーションに有効な条件下,インキュベーションする。mRNA1がサンプル中にあるかどうかを判定するために,パターンを認識でき及び/又はシグナルの存在ついて各領域内の特定の位置を調べることのできる検出装置が使用される。細胞株をそのmRNAがタグでインビボ標識される条件下にインキュベーションすれば,そしてサンプル内にmRNA1が存在すれば,検出器はタグの付いたmRNAから発生するシグナルをアンカー/プローブ複合体1で規定される位置において検出する。あるいは,このmRNAを,領域(ウェル)に加える前又は後に,インビトロで直接標識できる。あるいは,このmRNAには,プローブにハイブリダイズさせる前又は後に,例えばプローブが認識する以外の配列に相補的なタグ付「ディテクター」オリゴヌクレオチド(標的特異的レポーター・オリゴヌクレオチド)と共にインキュベーションすることによって,間接的にタグを付けることができる。例示された実施例では,サンプル15個を同時に分析できる。本発明では,少なくとも20個又はそれより多く,例えば,1536個ものもの又はそれより多くのサンプルを同時に分析できるため,本発明は非常に処理能力の高いアッセイシステムである。
本明細書において,「不溶性」は,その溶媒との関係につき,それら二つのものを含んでなる混合物又は溶媒中において不均質に存在する物に関していうものである。「不溶性」はまた,例えば,細胞,液胞,膜及び/又はそれらの凝集体の等のような,粒子の性質を有する物質を特徴づけるためにも,用いられよう。「不溶性」はまた,溶液中均一に存在可能であるにもかかわらず,表面に取り付けられているか又は残基に固定されているために,不均一に存在するものを記述するためにも用いられよう。この用語はまた,溶解や細胞溶解の後に残された物(例えば,沈殿物)を指すためにも用いることができる。
本明細書で用いられる「不溶性」は,如何なる溶媒にも同一基準である。好ましくは,溶媒は,極性のもの(例えば,水,生理食塩水,PBS,クレブス・リンゲル(Krebs-Ringer)緩衝液,網状赤血球溶解物,血清,その他)であり,そして,溶解度は4℃〜100℃間のいずれかの温度で決定される。「不溶性」の特徴は,日常的な手法,例えば,光散乱や濾過や遠心分離で,決定することができる。「不溶性」は,化学的又は物理的に他の分子又は組織に架橋している標的や,オルガネラ等のような粒子,膜,表面,細胞又は細胞レベル以下の物体等に物理的(例えば,内部に隔離されることにより)又は化学的に会合している標的を含む。
「不溶性」標的の分析に関する本発明の方法は,可溶性標的の分析のための技術手法を除外するものである。
本明細書において,「固定された」とは,ホルマリン,緩衝化ホルマリン,パラホルムアルデヒド又は同等な保存液の中に置かれることによって保存されてきた生物学的サンプルを意味する。場合によっては,固定されたサンプルは,ミクロトームでの切断に備えてパラフィン中に置かれることもあり,ホルマリンの他に,いくつの薬剤(例えば,グルタルアルデヒド,アルコールなど)で固定されてもよい。
本明細書で使用する「標的」は,その存在,活性及び/又は量の測定が所望され,及び特定のプローブに親和性を有する物質のことをいう。標的は人工の又は天然起源の物質であることができる。また,標的は,変化を受けていない状態で又は他の物との集合体として,用いることができる。標的は,共有結合で又は非共有結合で,結合相手に,直接的に又は特定の結合物質を介して取り付けることができる。本発明で用いることができる標的の例には,限定するものではないが,次のものを含む:受容体(小胞,脂質,細胞膜上のものやその他の種々の受容体上);特異的な受容体に結合するリガンド,アゴニスト又はアンタゴニスト;ポリクローナル抗体,モノクローナル抗体及び抗血清であって,特異的抗原性決定基(例えば,ウイルス,細胞その他の物質上の)と反応するもの;薬物;核酸又はポリヌクレオチド(mRNA,tRNA,rRNA,オリゴヌクレオチド,DNA,ウイルスのRNA又はDNA,ESTs,cDNA,RNA又はDNAに由来するPCR増幅産物,miRNA,siRNA,RNAi及びそれらの突然変異体,変種又は修飾体を含む);タンパク質(酵素,例えば神経伝達物質の切断を担っている酵素,プロテアーゼ,キナーゼその他の酵素を含む);酵素の基質;ペプチド;補因子;レクチン;糖類;多糖類;細胞(細胞表面抗原を含むことができる);細胞膜;オルガネラ;など,並びにその他の分子又はその他の物質であって,複合体化した,共有結合した,架橋体したなどの形で存在できるもの。本明細書で使用するものとして,核酸,ポリヌクレオチド,ポリ核酸及びオリゴヌクレオチドの語は,互換可能である。標的は,また抗プローブとも呼ぶことができる。
本明細書で使用する「プローブ」は,特定の標的により特異的に認識されることのできる,例えば分子などの物質である。可能性のあるプローブ/標的又は標的/プローブの結合相手のタイプは,受容体/リガンド;リガンド/抗リガンド;核酸(ポリヌクレオチド)間の相互作用,例えばDNA/DNA,DNA/RNA,PNA(ペプチド核酸)/核酸;LAN(ロックされた核酸,locked nucleic acid:),酵素,その他の触媒又はその他の物質と基質と,小型の分子又はエフェクター分子その他との相互作用を含む。本発明が想定するプローブの例は,限定するものではないが,次のものを含む:有機及び無機の材料又はポリマー,例えば,金属,キレート化剤又はその他の化合物であって金属と特異的に相互作用するもの,プラスチック,細胞膜受容体に対するアゴニスト及びアンタゴニスト,毒素及び蛇毒,ウイルスのエピトープ,ホルモン(例えば,オピオイドペプチド,ステロイドその他),ホルモン受容体,脂質(リン脂質を含む),ペプチド,酵素(例えばプロテアーゼ又はキナーゼ),酵素の基質,補因子,薬物,レクチン,糖類,核酸(オリゴヌクレオチド,DNA,RNA,PNA,LNA又は修飾若しくは置換核酸を含む),オリゴサッカライド,タンパク質,酵素,ポリクローナル及びモノクローナル抗体,単鎖抗体又はその断片。プローブポリマーは,直線状又は環状であることができる。プローブは,活性又は結合の差によって,リン酸化タンパク質と非リン酸化タンパク質とを識別できる。レクチンのようなプローブは,グリコシル化されたタンパク質を識別できる。本明細書で用いるものとして,核酸,ポリヌクレオチド,ポリ核酸及びオリゴヌクレオチドの語は,互換性がある。「プローブ」として上記した物質は何れも「標的」として働くこともでき,この逆も成立する。
加えて,標的分子へのプローブのアクセスを可能とするための組織の破壊を援助するために,他の物質を用いることができ,例えば,免疫組織化学に使用される方法又は固定された組織において機能的若しくは酵素的アッセイを実施するために使用される方法,あるいは,例えば,プロテイナーゼk若しくはコラゲナーゼ又はサポニン若しくは界面活性剤の使用,又は組織中の標的分子を再生するための特定の緩衝剤の使用がある。
如何なる適応性のある表面も,この発明と共に使用できる。表面(通常は固体)は,有機又は無機の各種の材料又はその組合せの何れであることもでき,例えば,単なる例示であるが,ポリプロピレン又はポリスチレンのようなプラスチック;セラミック;シリコン;(溶融)シリカ,水晶又はガラス(例えばガラス製の顕微鏡スライド又はカバーバラスの厚さのものであってよい),濾紙等のような紙;ジアゾ化セルロース;ニトロセルロースフィルター;ナイロン膜;又はポリアクリルアミド又はその他のタイプのゲルパッド,例えば,エアロパッド又はエアロビーズ(エアロゲルでできており,高度に多孔性の固体であって,フィルムを含み,湿潤したゲルを各種日常的な慣用の方法の何れかによって乾燥することにより製造される)を含む。アッセイを実施する方法が光学的検出を含む場合には,透光性基質が有用である。その表面は,例えば慣用の検出法に適合する如何なる厚さ又は不透明度のものでもよい。例えば,この表面は厚底,透明プレート又は不透明なプレートであることができる。好適な態様では,表面は,マルチウェルのプラスチック表面,例えば24−,96−,256−,384−,864−又は1536−ウェルプレート(例えば Corning Costar DNA Bind Plate 等のような修飾されたプレート)等の組織培養皿などである。アンカーは,表面と直接的に結びつける,例えば結合させてもよく,又は1つのタイプの表面,例えばガラスと結び付けてもよく,それは次いで第二の表面,例えば,プラスチック製マイクロタイターディッシュの「ウェル」と接触させた状態で配置される。表面の形は重要ではない。それは,例えば正方形,長方形,円形等の平らな表面;湾曲した表面;又は例えばビーズ,粒子,ひも,沈殿物,管,球の三次元表面;その他,あるいは,フィルター,ビーズ,キャピラリー内又はマイクロフルイディック(microfluidic)の表面又はナノ粒子であることができる。
表面は,単一の領域(高密度アレイに一般に使用されているような),又は,空間的に分離した,アドレス指定可能又は識別可能な複数の領域を有する。各領域は,1セットのアンカー又は1セットの捕獲プローブ(アレイで一般に使用されるもの又は表面上に分子を捕獲するために使用されるもの)を有する。各領域がどのように分離されているか,それらの物理的性質及び相互の相対的方向は,重要ではない。一態様では,これらの領域を,液体の通過を妨げる物理的境界によって,相互に分離することができる。例えば,好適な態様では,この領域は,例えば24−,96−,256−,384−,864−又は1536−ウェルプレートなどのマルチウェル(例えば,組織培養)皿のウェルであることができる。あるいは,例えば,ガラス表面のような表面をエッチングして,例えば864個又は1536個の分離した浅いウェルを持つようにすることもできる。あるいは,表面は,例えばプラスチック,ガラス又は紙の一片などの平らな表面など,境界又はウェルのない領域を有することができ,そして,個々の領域の輪郭を構成する構造(例えばプラスチック又はガラスの一片)を被せることによって,各領域を追加で規定することができる。所望により,表面は,個々の領域の輪郭を構成する前に,アンカーの又はリンカーに会合させたアンカーのアレイ1個又は2個以上を既に含んでいることもできる。別の態様では,各領域内にあるアンカーのアレイは,表面上にアンカーのない空白部分によって又は液滴の拡散を防ぐための例えばワックス又はシリコンのような化学的境界によって,相互に分離することもできる。
更に別の態様では,各領域は,チューブ又は,例えば Beattie et al (1995). Clin. Chem. 4, 700-706 に記載されている,フロースルー(flow through)アッセイのために設計された流体制御流路などによって,規定することもできる。チューブは,例えば毛細管又は内径がより広いチューブ等,どのようなサイズでもよく;液体が流通でき;又は部分的に又は完全に例えばアガロース又はポリアクリルアミド等のゲルで満たされていてもよく,そのゲルを通じて化合物が例えば電気泳動などで輸送(通過,流通,加圧輸送)されることができ;例えば Albota et al. (1998). Science 281, 1653-1656; Cumpston et al. (1998). Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 488, 217-225; and/or Cumpston et al. (1999). Nature 398, 51-54. に記載されている直線形チャネルなどの,チャネルの空間充填マトリックス(space-filling matrix)で満たされることもできる。そのような空間充填マトリックスでは,液体及び/又はその中の分子は,チューブの壁に垂直な方向に流れるばかりでなく,横方向に拡散することもできる。好適な一態様では,チューブをゲル又は空間充填マトリックスで満たす;アンカーを結合させるためにこのゲル又は充填マトリックスを活性化させ,種々のアンカーを順次に通して,ゲル内に各アンカーのアレイ(例えば直線形アレイ)を形成させ;そしてリンカー,標的,その他を逐次に流す。このアレイは直線形,2次元又は3次元であってもよい。
チューブ1つで複数のアッセイを実施できる。例えば,チューブ内の,アンカーの又はリンカーと会合させたアンカーの単一アレイは,同一又は異なるサンプルの逐次的なアッセイでは再使用できる(例えば,除去後再使用又は再プログラム)。別の一態様では,例えば関心のあるサンプルを,異なるアレイを含んだ複数のチューブで分析するなど,複数のチューブを単一のアッセイに使用する。チューブ内のアンカー及びアンカー/リンカー会合体は,本明細書に記載する如何なるタイプのものであってもよい。
表面内又は表面上等の領域は,表面自体の修飾によっても規定できる。例えばプラスチック表面は,修飾又は誘導体化したプラスチックでできた部分を有することができ,それらは,例えば,特定のタイプのポリマーの添加のための部位とすることができる(例えば,PEGをポリスチレン表面に付着させることができ,次にそれをカルボキシル基,アミノ基,二重結合,アルデヒドその他で誘導体化できる)。あるいは,プラスチック表面は,例えば突起部又はこぶのような成型構造を有することができ,そこれらは,アンカーが付くプラットフォームとしての役目を果たす。別の一態様では,各領域は,例えばポリアクリルアミドゲルパッド又はエアロパッドのようなゲルパッドであることができ,それらは,ガラス等のような表面上に所望のパターンに従って配置するか,又はガラス板と水晶板などのような二表面間に挟み込むことができる。アンカー,リンカー等は,そのようなパッドの表面に,固定化するか又は埋め込むことができる。表面上のゲルパッドのその他の種々の配置は,当業者には自明であり,日常的な慣用の方法によって製造できる。試験領域の相対的方向はどのような形をとってもよく,限定するものではないが,正方形又は長方形又はその他の表面内にある平行又は垂直のアレイ,円形又はその他の表面内にある放射状に延びているアレイ,又は直線状アレイ;その他を含む。
本発明の空間的に分離した領域は,一つの又は複数のコピーの状態の形で存在できる。すなわち,少なくとも1個,2個,好ましくは少なくとも20個,又は少なくとも約24,50,96,256,384,864,1536,2025個又はそれより多い数などの実質的に同一な,空間的に分離した(分離された)領域がある。反復された領域の個数の増加は,更に高処理能のアッセイを可能にする。本明細書で使用する,「実質的に同一な領域」は,アンカー及び/又はアンカー/リンカー複合体よりなる同一又は実質的に同一なアレイを有する領域を示す。本明細書で使用する「実質的に同一」は,アレイ又は領域が,他のアレイ又は領域と,本発明による標的分析の文脈において,本質的に同じ機能を果たすように意図されていることを意味する。機能,すなわち標的検出能に対して,本質的な影響を与えない相違は,小さなヌクレオチド欠陥(欠失/挿入/置換)又はオリゴ欠陥(表面結合の弱さ)などに基づくものであり,それは,アッセイの正確さの範囲内で,標的の判定結果に大きな影響を及ぼさない。
勿論,当業者は,ただ一つのサンプルが試験される場合,又は単一の混合サンプルが試験される場合,又はアレイが大きい場合には,単一の領域が有用であること,及び,表面上の全ての領域が相互に実質的に同一である必要はないことを認識するであろう。例えば,異なる組合せのアレイ2個を並行して試験するならば,アレイの組合せ両方を単一の表面上に含めるのが有利であろう。例えば,それら2種の異なったアレイの組合せを,相互の比較を容易にするために,交互の縞模様の形に配置できる。別の一態様では,専門家は,表面上で他の領域と区別した形で検出でき,「登録領域」として使用できる領域を,含めることを望むかもしれない。例えば,登録領域は,表面上の各領域の場所を整列させる「出発点」として走査検出装置により認識できる,蛍光性分子よりなる特有のパターンを表示する,オリゴヌクレオチド又はペプチドを含んでなることができる。
試験領域の大きさと物理的な間隔は,制限的でない。典型的な領域は,面積が約1〜約700mm2,好ましくは1〜約40mm2であり,約0.5〜約5mmの間隔があけられており,使用する面積に応じて常法によって選択できる。好適な態様では,各領域は約5mm離れている。例えば,各領域は,直径約100μmで間隔500μmのほぼ円形のアンカーのスポットを有する,8行6列などの長方形格子を有してもよく,このような領域は,面積約20mm2を占める。領域面積及び間隔がより大きいものもより小さいものも含まれる。
これらの領域は,領域内のアンカーの一部又は全部を,隣接するアンカーから,例えばへこみ又はくぼみなどによって物理的に分離されるようにして,更に分割できる。例えば,領域内の副区分(副領域)は,約10〜約100個又はそれより多い又はそれより少ないの範囲内とすることができる。一態様では,1536ウェル皿の一つのウェルである領域を,例えば約4〜約900個,好ましくは約16〜約36個の更に小さなウェルへと分割し,それによってウェル内ウェルからなる一アレイを形成することができる。そのようなくぼんだ表面は,単一のアンカー(又は一群のアンカー)を各指定空間(ローカス,locus)に物理的に配置する際の許容度を低下させ,またアンカーを含む領域のサイズはより均一になり,そのためプローブに結合した標的の検出が促進される。
本明細書で使用する用語「アンカー」は,例えば分子等のような如何なる物又は物質をも示し,表面に結合させた(例えば,表面上に固定化され又は表面と共有結合的又は非共有結合的に取り付けられる)ものであるか,又は,そのような表面の一部(例えばプラスチック表面の誘導体化された部分)であって,リンカー又は本明細書に記載された他の物質と特異的相互作用し又は会合するものである。リンカー分子等に会合するアンカーの部分は,直接に表面に結合させることでき,又は,アンカーは中間に「スペーサー」部分を含むことができる。そのようなスペーサーは,例えば当該技術において慣用されている各種材料の何れであってもよい。一態様では,スペーサーは,炭素を5〜20個,好ましくは炭素を約12個有する直鎖状の炭素分子である。別の一態様では,スペーサーは,核酸(本明細書のいずれかに記載する如何なるタイプのものでもよい)であるが,これはリンカー分子等と特異的な相互作用又は会合を行わない。
本明細書で使用する用語「アンカー」は,一群の実質的に同一なアンカーを示すこともできる。アンカーの各群の場所を,本明細書では「ローカス」と命名する。当業界でよく知られているように,あるローカスに存在する個々のアンカー分子の数は,アンカーのサイズ等によって持ち込まれる物理的制約によってのみ限定される。例えば,直径約25〜200μmのローカスでは,何百万個ものアンカーを含むことができる。
本明細書で使用する「アンカー/リンカー複合体」は,アンカーとリンカーが特異的な様式用での分子結合を介して一体化しているときに存在する。リンカーとのこの相互作用は,ある種の共有結合を介するような不可逆的なものでもあってもよく,核酸のハイブリダイゼーションを介するような可逆的なものであってもよい。
好適な一態様では,アンカーは核酸であって,いかなる長さ(例えばオリゴヌクレオチド)又はタイプ(例えばDNA,RNA,PNA,LNA又はRNA,若しくはDNA分子のPCR産物など)であることもできる。この核酸は,修飾又は置換することができる(例えば,イノシンのような非天然起源のヌクレオチド;例えばスルファメート,スルファミド,ホスホロチオネート,メチルホスホネート,カルバメートその他のような様々な既知の結合を介して結合しているもの;又は例えばDNA−ストレプトアビジン接合体などのような半合成分子等)。一本鎖核酸が好適である。
核酸アンカーは,本発明に適合するいかなる長さでもよい。例えば,アンカーは,長さが約8個〜約50個のヌクレオチド,好ましくは約10,15,20,25又は30ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドであることができる。別の一態様では,このアンカーは,長さ約50〜約300ヌクレオチド又はそれより長い又はそれより短い,好ましくは約200〜約250ヌクレオチドであることができる。例えば,アンカーは,前記の約150〜約200ヌクレオチドの「スペーサー」核酸を含んでなることができ,また,スペーサーに隣接して,リンカー分子(「リンカー特異的配列」)と相互作用するように設計された約10,15,20,25又は30ヌクレオチドなどの短い配列のヌクレオチドを含むことができる。このようなスペーサーの長さ又はタイプはどのようなものでもよく,本発明で機能するところの如何なる塩基組成を有してもよい。好適な態様では,あるローカスにある各アンカーのスペーサー及び/又はある領域中の異なるローカスにあるアンカーのスペーサーは,実質的に同一であって;アンカーは,従って,主としてリンカー特異的配列に関して,相互に異なっている。
スペーサーは,アンカーに利点を与えることができ,それにより性能の改良を可能にする。例えば,そのようなアンカーのリンカー特異的部分は,表面から更に離れて存在し,従って,それらがより表面に近い場合よりも,物理的拘束を受けることがが少なく,立体的障害に服することも少ない。このことは,例えば,複数の異なる標的特異性を持つ異なるリンカー(例えば約2〜約100種)と,与えられたローカスにあるアンカーとの会合を促進する。以下に一層詳細に論じられているように,個々のアンカーは(スペーサーに加えて),縦一列の直列線状様式などで配置された複数のリンカー特異的配列を含むことができ;これは,タイプの異なるリンカー複数と,与えられたローカスにある少なくとも1つのそのようなアンカーとの会合を,可能にする。以下にまた一層詳細に論じられているのは,別の一方法であり,その方法では,タイプの異なるリンカー複数と与えられたローカスにあるアンカーとを会合させることができ:「混合ローカス」では,アンカー2種又はそれ以上が,各々異なった標的特異性を有する異なったリンカーと会合する。スペーサーを含むアンカーの物理的柔軟性の故に,与えられたローカス内にあるアンカーは,隣接するアンカー分子による物理的束縛を受けることなしに,複数の異なるリンカー分子と容易に結合できる。与えられたローカスにおいて複数のリンカー分子をアンカーに結合させる利点の一つは,特定のローカスにおいて,より多数の標的の検出が可能になる点にある。一態様では,与えられたローカスに結合した複数のリンカーが,関心のある同一標的核酸の異なった部分(例えば,その核酸内の異なったオリゴヌクレオチド配列)に特異的であるプローブを有する。これにより,単一プローブによる検出との比較において,増幅された標的検出が可能になる。別の一態様では,複数のリンカーは,異なる(例えば,無関係の)標的に特異的なプローブを持つ。これにより,特定の一ローカス内で複数の異なる標的の検出が可能になる。スペーサーを含むアンカーの更に別の利点は,タンパク質などのような比較的大きな分子に会合した及び/又はタンパク質,膜又は細胞のように比較的大きな標的に結合するリンカーを,容易に収容できる点にある。
核酸アンカーの塩基組成は,必ずしも制約を受けない。アンカーが本発明の目的にのために機能する限り,どのようなアンカーの塩基組成も,許容可能である。例えば,領域内のあるローカス又は異なる複数のローカスにある一本鎖核酸アンカーは,部分的又は完全にランダムな配列(例えば,A,G,T及び/又はCの,それらの相対的な量について限定なくランダムに作製した配列)を含んでなることができる。一態様では,このアンカーは,「配列異性体」(例えば「ランダム配列異性体」),すなわちG,C,A及びTの量は同一であるが相対的順序が異なるオリゴヌクレオチド,ではない。すなわち,例えば,ある領域の異なるローカスにあるアンカーは,等式 Gn Cn Am Tm[式中,nとmとは整数である]に合致しない。例えば,図1に示すアンカー(これらは,ランダム配列異性体でない)を参照。本発明のアンカーでは,GとCの量はほぼ同じである必要はなく,またAとTの相対的な量も同じである必要はない。更に,G,C,A及びTの正味の相対量の合計にも必ずしも制約はない。例えば,ある領域内にあるアンカーの塩基組成は,比較的GCに豊む場合(すなわち,50%超のG+C)から,等量のG,C,A及びTを有すること場合,また相対的にATに富む場合まで(すなわち,50%超のA+T)の範囲内にわたることができる。一態様では,このアンカーは,例えばG,C,A及びTの相対量に何らの制約もない仕方で,ランダムに作製される。
核酸スペーサーと1個又は2個以上のリンカー特異的部分とを含んでなるアンカーは,塩基組成に関する如何なる特定の制約に合致することもなさそうである。例えば,ある領域の異なるローカスにあるアンカーが実質的に同一のスペーサー(例えば実質的に同一な25量体又は200量体)を持ち,しかし各アンカーが異なるリンカー特異的部分(例えば25量体)を持つ場合,たとえそのリンカー特異的部分が特定の要件に合致するとしても(例えば,AとGの数が大体同じであり;TとCの数が大体同じであり;オリゴが等式Gn Cn Am Tmに合致し;及び/又はG+Cの含量が特定の要件を満足する),このアンカーは全体として,これらの特定の要件を満足しないであろう。同様に,ある領域内の異なるローカスにあるアンカーのリンカー特異的部分が互いに実質的に異なる(例えば,各リンカー特異的部分が,その領域の他のリンカー特異的部分各々から,少なくとも約20%又は50%又は80%異なる配列を持つ)としても,核酸の全長を考えれば,アンカーの正味の配列同一性は,はるかに小さいものとなる可能性がある。例えば,各アンカーが,実質的に同一の250量体のスペーサー及び25量体のリンカー特異的部分とを有し,そのリンカー特異的部分とその領域の別な各リンカー特異的部分とが100%異なっているとしても,そのアンカーは互いに僅か10%しか異ならない。
アンカーは,ペプチド又はタンパク質であることもできる。例えば,アンカーはポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体分子又はそえれらの断片,又はその単鎖抗体又はその断片であることができ,それは抗原又は抗−抗原分子であるリンカーの一部分に特異的に結合する;反対に,アンカーはペプチドであることができ,それに結合するリンカーの部分は抗体等であることができる。別の態様では,アンカーは,特定の炭水化物に特異的なレクチン(例えばコンカナバリンA又は,例えばアメリカカブトガニ,ピーナッツ,リョクトウ,インゲンマメ,麦芽,その他のような生物体から得たアグルチニン類)であることができる。別の態様では,アンカーは,例えばオリゴヌクレオチド固相化学合成の特別の足場等として役立ち得る,修飾され又は誘導体化されたプラスチックポリマーのような有機分子を含んでなることができる。この場合,誘導体化されたプラスチックは,製造過程でコンビネーションのプラスチック表面へと一体に形成された,分離した,誘導体化されたローカスよりなるアレイとして配置できる。別の態様では,アンカーは,例えばNi,Zn,Ca,Mgその他の金属イオンと特定のタンパク質又はキレート剤との間の特異的な又は優先的な結合を利用できる。例えば,アンカーはポリヒスチジンであることができ,リンカーのアンカー特異的部分はニッケルであることができ,それは,ニッケルキレート化剤を介して標的特異的プローブに取りつけられる。あるいは,キレート形成剤がアンカーで,ポリヒスチジンがプローブ関連部分となることができる。あるいは,アンカーは,無機物質を含むことができる。例えば,アンカーは,カルシウム又はマグネシウムのような金属を含むことができ,リンカーのアンカー特異的部分は,例えば,それぞれEDTA又はEGTA等のような,標的特異的プローブに取り付けられる優先的キレート化剤であることができる。当業者は,例えばプローブ及び標的に関連して記載した一般的なタイプのもののような広範な他のタイプの分子が,アンカーとして役立ち得ることを認識するであろう。
アンカーは,例えば,二本鎖DNA,又は,本明細書に記載する何れかの様式で特異的に相互作用するDNAとタンパク質などを含む二本鎖のような,ハイブリッド構造であることもできる。例えば,二本鎖アンカーの「基礎部分」(表面と直接接触する部分)は,所望により,修飾された一本鎖核酸を含むことができ;好ましくは,この基礎部分は,前記のような直鎖状炭素スペーサー等のようなスペーサーを含むことができる。一態様では,第二の一本鎖核酸は,この基礎部分に会合(例えばハイブリダイズ)して,少なくとも部分的な二本鎖(二重の)核酸を有するアンカーを形成している。例えば,この基礎部分は,一端で表面に取り付けられており,他端で約10〜100ヌクレオチド,好ましくは約25ヌクレオチドの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドに取り付けられている直鎖状炭素スペーサーを含むことができ;及びこの二本鎖の第二部分は,該基礎部分の少なくとも一部に(例えば,末端約40ヌクレオチドに)相補的な配列を含むことができ,続いて任意のスペーサー(例えば,約5〜15,好ましくは約10ヌクレオチド),続いてリンカー特異的配列(例えば,長さ約8〜約50ヌクレオチド,好ましくは約15,20,25又は30ヌクレオチド,最も好ましくは約25ヌクレオチドの配列)を含むことができる。
アンカー二本鎖の相補的部分とそのリンカー特異的配列との相対的長さ及び塩基組成は,アッセイの必要に適合させて,当技術分野で慣用の最適化操作を用いて,変化させることができる。例えば,二本鎖アンカー自体は完全なまま残るような条件下,二本鎖アンカー分子からリンカーを解離(例えば,融解して分離)できるように,配列を選択できる。所望ならば,残存する二本鎖アンカーのアレイは,同一又は異なるリンカー分子とハイブリダイズさるのに再使用できる。あるいは,アンカー/リンカーハイブリッド及び二本鎖アンカーの相補的部分2個を,同じ条件下に解離させ,基礎部分のみを表面と接触した形残すように,配列を選択することができる。一態様では,ある領域の特定のローカス又は全ローカスにある塩基部分の全て又は実質的に全てが,同一であるか,又は,実質的に同一である。そのような解離後に残る基礎部分のアレイは,二本鎖アンカーの相補的部分を最初に加えなおした場合にのみ再使用(例えばリンカー分子にハイブリダイゼーションさせるために)でき,これは,二本鎖形成に関与する基礎部分の配列についての知識を必要とするプロセスである。再使用できるが,基礎部分の配列を熟知していない使用者には再使用できないというアンカーのアレーを製造できるという能力は,そのようなハイブリッドアンカーを採用する利点の一つである。例えば,製造者はアレイの無許可の再使用を予防できる。そのような再使用の防止により,例えば,過剰な使用に起因する性能劣化や信頼性欠如という問題を,未然に防ぐことができる。
一態様では,領域内の与えられたローカス内にある一群のアンカーは,実質的に同一である(例えば,一つのタイプのリンカーの「アンカー特異的な」部分に特異的であるか,又は標的一つのみに特異的である)。別の態様では,複数の異なるリンカー及び/又は複数の異なる標的に対しする特異性を有する複数の異なるアンカーを,与えられたローカス(「混合ローカス」と称する)内に存在させることができ,例えば,約2種から約100種,例えば,少なくとも約2種,少なくとも約4種又は少なくとも約10種である。混合ローカスの利点の一つは,特定の一のローカスで,より多くの異なる標的を検出できることにある。一態様では,各混合ローカスは,全てのローカス又は少なくとも幾つかのローカスに共通な一つのアンカーを含む。例えば,ローカス1個以上に共通のアンカーを用いて,品質の保証及び/又は制御又はシグナル正規化に利用することができる。
勿論,「混合ローカス」は,単一(非反復)領域しか有しない表面にとって有利である。そのような単一領域の各ローカスにあるアンカーは,リンカーと,又は関心のある標的と直接,相互作用できる。
一個の試験領域内にあるアンカー(すなわち個々のローカスにあるアンカー群)の数は,少なくとも2個,好ましくは約8〜900個(それ多い又はそれより少ない個数も含む),より好ましくは約8〜300個,最も好ましくは約30〜100個(例えば約64個)である。ある好適な態様では,試験領域(例えばウェル)96個を持つ表面に,試験領域1個当りアンカー約16,36,45又は100個,又は,試験領域(例えばウェル)384個を持つ表面に,試験領域1個当りアンカー約9,16又は25個を有する。最も好適な一態様では,試験領域内の各アンカーは,アレイ内にある他のすべてのアンカーとは異なる特異性を持つ。しかし,アンカー2個又は3個以上が同じ特異性を共有することもでき,また,アンカー全てが同一であることもできる。本発明のコンビネーションが,多数の被検サンプルを一度に処理できるように,非常に多くの数の試験領域(例えば約864,1536個又はそれより多い個数)を含むものである一態様においては,それらのサンプルを,少数のパラメータ(例えば約2,4,6又は9個)のみについて試験することに注意が向けられるかも知れない。換言すれば,領域数が非常に多いコンビネーションでは,領域当りアンカーを,約2〜9個にするのが有利かも知れない。更に好ましい態様では,アレイは,ヌクレアーゼ保護プローブののような標的を,アンカー/リンカー複合体を使用することなく,直接捕獲する分子からなるものであってよい。更に,アレイは,一般的に高密度アレイと呼ばれるような,数千ないし数十万の捕獲サイトのみからなるものであることができ,そして,各々の表面に,ただ一つのそのようなアレイ又は複数のアレイがあってよい。
試験領域内又は試験領域上のアンカー(すなわち各ローカスのアンカー群)の物理的間隔及び相対的方向は,制限的でない。典型的には,アンカー間の距離は,約0.003〜約5mm又はそれ未満,好ましくは約0.03〜約1mmである。アンカーの間隔(及び面積)としては,更に大きいものも小さいものも含まれる。アンカーは,相互にも,また領域の境界に関しても,いかなる方向にも配置できる。例えば,アンカーは,二次元方向に(例えば,正方形,長方形,六角形若しくはその他のアレイの形で,又は,アンカーを中心から放射状に若しくは同心円に沿って配置する円形のアレイの形で),配置できる。アンカーはまた,一次元の直線形アレイにも配置できる。例えば,オリゴヌクレオチドは,DNA又はRNA配列に沿った特定の位置でハイブリダイズさせて,超分子アレイを形成するか,又はフロースルー・ゲル中に直線状に配置,又はフロースルー装置の表面又はフロースルー装置内の構造の表面上に配置することができる。あるいは,アンカーは,「バーコード」様の構成に配置することもできる。例えば,アンカーを互いに平行な長い線状に構成できる。各長い線の幅又は線相互の間隔を規則的な方法で変化させて,「バーコード」様によく似た単純な認識可能なパターンとすることもでき,例えば,第1線及び第3線を他の線より2倍の大きさとしたり,線を省略したりすることができる。最後の線の後に追加の空白の線を置いて一の試験領域の境界を示すこともでき,また次の試験領域でバーコード模様を反復することもできる。
アンカーのパターンは,別の各アッセイウェル(試験領域)又は別の各アッセイ液滴の位置とぴったり一致させる必要はない。用語「アッセイ位置」は,アッセイサンプルが適用されるものであるアッセイ表面の各位置を示すために使用する(これは,アッセイサンプルの別々な液滴の位置として,又は,例えば多ウェルプレート上にある各アッセイウェルを規定する壁又は障壁の位置として,定義できる)。アンカーのパターンそれ自体(例えばオリゴヌクレオチド・アンカーの「バーコード」様のパターン)を,パターン認識によって各アンカーの位置を正確に定義するために(丁度,バーコードの各線が,他の線との相対的位置によって認識できるように),使用する。それ故,最初のアンカーを各アッセイ位置の一端又は一隅に置く必要はない。最初のアンカーは,アッセイ位置との相互関係においてではなく,パターン認識によって見出される。各アッセイ位置によって使用される面積(例えば液滴の面積又はウェルの面積)が,アンカーの反復パターンの完全なユニット少なくとも1個を確実に含むに十分大きいものである限り,各アッセイ位置は,パターンがアッセイ位置の範囲内にあれば,当該(バーコード)パターンによって特定される全ての標的に対してのアッセイ位置に対するサンプルを,試験することになる。
各アンカーは,各試験領域内に,厳密な又は固定したパターンで配置する必要はない。例えば,各アンカーを,試験領域内で不規則な位置と想定される粒子,ビーズ,その他に取りつけてもよい。各アンカーの位置は,例えば,検出タグを用いて判定できる。例えば,各アンカー型に特異的なリンカー分子は,異なる蛍光タグ,ルミネッセントタグ,その他のタグで標識でき,特定のリンカー/アンカーのペアを含む粒子の位置は,例えば,励起スペクトル又は放射スペクトル等,リンカーから発生するシグナルの性質によって,確認できる。当業者は,識別可能なスペクトルを持つ様々なタグが取り付けられたリンカーのセットを製造できる。あるいは,アンカーを直接標識できる。例えば,各タイプのアンカーは,他の型のアンカー上のタグとは,スペクトルが異なる蛍光を示すタグで,標識できる。あるいは,粒子,ビーズ,その他は,サイズ又は形又は色において又はシグナルの放射において,相互に異なることもできる。本明細書に記載する標識方法及び検出方法は,何れも採用できる。例えば,蛍光は,CCD撮像システム,走査蛍光顕微鏡又は蛍光活性化細胞ソーター(FACS)によって測定できる。
アンカーは,リンカー分子の一部(アンカー特異的部分)と特異的に相互作用又は会合できる。用語「相互作用」又は「会合」は,本明細書では,物質又は化合物2種(例えばアンカーとリンカーのアンカー特異的部分,プローブとその標的,又は標的と標的特異的レポーター)が目的とするアッセイを行うのに十分な状況で相互に結合(例えば付着,結合,ハイブリダイズ,接合,アニーリング,共有結合,又はその他の会合)することを意味する。用語「特異的な」又は「特異的に」は,本明細書では,2種の成分(例えばアンカーとリンカーのアンカー特異的領域,プローブとその標的,又は標的と標的特異的レポーター)が互いに選択的に結合するが,なんらの保護技術不在下には,一般には,対象とする成分との結合を意図していない他の成分とは結合しないことを意味する。特異的相互作用を達成するために必要なパラメータは,決まりきったやり方で,例えば当業界での常法を用いて,決定できる。
核酸については,例えば当業者は,核酸(例えばオリゴヌクレオチドアンカー)が,選択されたストリンジェントな条件(他の物質又は分子(例えば他のオリゴヌクレオチドリンカー)との非特異的ハイブリダイゼーションを最小化するもの)下に,他の核酸(例えばリンカーのアンカー特異的部分)とハイブダイズすることを可能にする特性(例えば長さ,塩基組成及び相補性の程度のような)を,経験的に決定できる。典型的には,アンカーのDNA又は他の核酸配列,リンカーの一部分,又はディテクター・オリゴヌクレオチドは,選択したストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下ハイブリダイズするために,その結合相手と十分な相補性を有するであろうし,そのTmは室温よりも約10〜20℃高い(例えば約37℃)であろう。一般に,オリゴヌクレオチドアンカーは,長さ約8〜約50ヌクレオチド,好ましくは約15,20,25又は30ヌクレオチドの範囲内にあることができる。本明細書で使用する「高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は,両核酸間のヌクレオチド相補性(同一性)が少なくとも95%,好ましくは約97〜100%である時にハイブリダイゼーションが起きるいずれかの条件を意味する。しかし所望の目的に依存して,例えば約90%,85%,75%,50%,その他,必要な相補性が低いハイブリダイゼーション条件を選択することもできる。変更可能なハイブリダイゼーション反応パラメータの中には,塩濃度,緩衝液,pH,温度,インキュベーション時間,例えばホルムアミドのような変性剤の量と型がある (例えば Sambrook et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed.) Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Press, New York; Hames et al. (1985). Nucleic acid hybridization, IL Press; Davis et al. (1986), Basic Methods in Molecular Biology, Elsevir Sciences Publishing, Inc., New Yorkを参照)。例えば,核酸(例えばリンカーオリゴヌクレオチド)を,試験領域(例えば多ウェルプレートのウェル,好適な態様では96ウェル,384ウェル又はそれ多くののウェルプレート)に,約0.1〜約100μL又はそれ以上の範囲の容量(好適な態様では,約1〜約50μL,最好適には約40μL)で,約0.01〜約5μM(好適な態様では,約0.1μM)の範囲の濃度で,例えば6×SSPE−T(0.9M−NaCl,60mM−NaH2PO4,6mM−EDTA及び0.05%トリトンX−100)などの緩衝液中で添加し,また約10分間〜少なくとも約3時間(好適な態様では,少なくとも約15分間),約4℃〜約37℃(好適な態様では,約室温)の範囲の温度で,結合相手(例えば表面上のオリゴヌクレオチドアンカー)とハイブリダイズさせることができる。高処理能を可能にするために,条件を選択できる。本発明の一態様では,反応条件を生理的条件に近似させる。
アンカー又はリンカーの一部分などとして役立つ他の型の物質又は分子(例えば,ポリペプチド,レクチン,その他)の設計及び結合相手との特異的相互作用を達成するために必要な反応条件は,当技術分野では日常的な常法である(例えば Niemeyer et al (1994) Nucl. Acids Res. 22, 5530-5539; Fodor et al (1996) U.S. Patent No. 5,510,270; Pirrung et al (1992), U.S. Patent No. 5,143,854の記載など)。インキュベーション用パラメータには,緩衝液,塩濃度,pH,温度,インキュベーション時間,担体及び/又は試薬の存在,又は,非特異的相互作用を削減する条件などがある。例えば,アンカーとして抗体を入れた試験領域(例えば,多ウェルプレートのウェル,好適な態様では,96ウェル又は384ウェル又はそれ多いウェルのプレート)に,抗−抗体(例えば,抗原又は抗体特異的二次抗体)を,例えば6×SSPE−T,PBS又は生理的食塩水のような緩衝液中,容量約0.1〜約100μL又はそれよい多い量(好適な態様では,約1〜約50μL,最も好ましくは約40μL)の範囲で,濃度約10pM〜約10nM(好適な態様では,約1nM)の範囲で加え,表面上のアンカーとともに約10分間〜少なくとも3時間(好適な態様では,少なくとも約15分間),温度約4℃〜約45℃(好適な態様では,約4℃)で,インキュベーションすることができる。ペプチドアンカーとしては,約5〜約20アミノ酸の長さが好適である。
本発明の態様では,アレイ内の各アンカーと対応するリンカーのアンカー特異的部分とは,選択した条件下,アレイ内の他種アンカーと実質的に同程度に,相互作用できる。これにより,アンカーが実質的に均質なリンカーのアレイ,すなわちプローブを,特定することを確実にする。
試験領域内にあるアンカー(すなわち個々のローカス内にある一群のアンカー)は,「一般的な」セットであることができ,そのアンカーは各々,そのアンカーに特異的な部分を有するが,「プローブ部分」が異なる様々なリンカー1個又はそれ以上と,相互作用できる;そこで,一般的アンカーの一つのアレイを用いてプローブのセットをプログラムし,規定することができる。このようなアンカーの一般的アッセイの柔軟性は,図1に例示することができる。図1は,これら(オリゴヌクレオチド)アンカーの一つであるアンカー1を,図式的に説明する。アンカー1は,リンカー1と接触しており,リンカー1の一部は,アンカー1に特異的な第一部分及び標的mRNA1に特異的な第二部分を有する。あるいは,例えば,リンカー1と同様にアンカー1に特異的な部分を有するが,標的mRNA1の代わりに標的mRNA2に特異的な第二部分を有するリンカー2に,置換することができる。そこで,アンカー1を用いて,標的mRNA2個又はそれ以上の各々に対するプローブを特定(プログラム,規定又は判定)できる。オリゴヌクレオチド又はペプチドの高解像度なパターン(アレイ)を作製し,取り付ける過程は,高価で,時間がかかり及び/又は物理的に困難である。アンカーの既製アレイを使用して広範なプローブアレイをプログラムできるという能力は,この発明の一利点である。
図1に示す一般的なアンカーはオリゴヌクレオチドプローブのパターンを規定するが,同一のアンカーアレイを用いて例えば受容体タンパク質のような別なプローブのアレイもプログラムできる。例えば,タンパク質/抗体の組合せのような「サンドウィッチ」又は「ピギーバック」プローブなど更に複雑な層などの,アンカー/リンカー相互作用の型の範囲が与えられれば,明らかに,多数の置換が可能である。例えば,一態様では,アンカーの一般的セットをリンカーのセットと会合(共有結合又は非共有結合で)させて,以下に詳述するようにして,「接合させた」アンカーよりなる修飾アレイを形成することができる。このように,本発明におけるアンカーの表面は,新規な利点を提供する。
本発明の一態様では,アンカーは可逆的にリンカーと相互作用し,従って,アンカーの一般的セットを再使用して多種のプローブセットをプログラムできる。例えば,オリゴヌクレオチド2個が解離を起こす加熱工程によって,オリゴヌクレオチドアンカーを,リンカーのオリゴヌクレオチド部分から分離し,次に,第二のリンカーに再結合させることができる。アンカーアレイの再使用(それは,高価で,製造に時間がかかり,及び/又は製造が物理的に困難であり得るもの)の能力は,本発明の利点の一つである。
アンカーは必ずしもリンカーと相互作用する必要はない。例えば,アンカーは,例えば蛍光色素のような検出可能な分子と結合(直接又は間接に)させることができ,例えば,試験表面とディテクターとの間の記録の目的で,スポットをグリッド内に局在化させるために役立てることができる。あるいは,例えば,補正の目的で,内部定量マーカーとして役立てるように,アンカーを所定量の検出可能な分子を用いて標識できる。
本明細書で使用する用語「リンカー」は,選択(指定)されたアンカー又はアンカーのサブセットに特異的(「アンカー特異的」)な第一部分(又はモィエティ(moiety)又はパート(part))と,目的とする標的に特異的(「標的特異的」)なプローブを有する第二部分とを有する,二官能性物質を示す。リンカーのこの二つの部分は共有結合又は非共有結合を介して取り付けることができ,又は直接に又は中間物(例えば,スペーサー)を介して取り付けることができる。
リンカーにあるアンカー特異的部分の化学的性質は,勿論,それがアンカー又はアンカーらと相互作用する機能である。例えば,アンカーがオリゴヌクレオチドならば,これと相互作用するリンカーの一部分は,例えばオリゴヌクレオチドに特異的に結合するペプチド又は選択したストリンジェントなハイプリダイゼーションの条件下に効果的かつ特異的にハイブリダイズする核酸であることができる。この核酸は,例えば,オリゴヌクレオチド,DNA,RNA,PNA,PCR産物又は置換若しくは修飾された核酸(例えば,非天然起源ヌクレオチド,例えばイノシン;例えばスルファメート,スルファミド,ホスホロチオネート,メチルホスホネート,カルバメートのような既知の様々な結合を介して結合したもの;又は例えばDNA−ストレプトアビジン接合体のような半合成分子,などを含む)であることができる。一本鎖部分構造は,好適である。オリゴヌクレオチドアンカーに特異的なリンカーの部分は,長さ約8〜約50ヌクレオチドの範囲,好ましくは約15,20,25又は30ヌクレオチドであることができる。アンカーが抗体であれば,これと相互作用するリンカーの部分は,例えば抗−抗体,抗原又はこれら分子の小さな断片であることができ,これらはアンカーと特異的に相互作用する。前記した他の型のアンカーと特異的に相互作用し,またリンカーにおけるアンカー特異的部分としての役目を果たす物質又は分子は,当技術分野でよく知られており,慣用の操作(例えば前記)を用いて,設計することができる。
リンカーの標的特異的部分の化学的性質は,勿論,それが標的に対するプローブであるという機能である。例えば,この標的が特定のmRNAであれば,リンカーの標的特異的部分は,選択したハイブリダイゼーションの条件下に,標的に特異的に結合するが妨害するRNA又はDNAには結合しない,オリゴヌクレオチドなどであることができる。当業者は,業界で認められた方法を用いて,非特異的な妨害性DNA又はRNA(例えば前記)とのハイブリダイゼーションを最低にしたままで,標的と最適にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの特性を,経験的に決定できる。一般に,大過剰な非標的RNAバックグラウンド内に存在する標的mRNAを識別するために使用するオリゴヌクレオチドプローブは,長さ約8〜約50ヌクレオチドの範囲内,好ましくは約18,20,22又は25ヌクレオチドであることができる。競合する標的のバックグラウンドが大きくない生化学的アッセイに使用するオリゴヌクレオチドプローブは,短くすることができる。業界で認められた操作(例えばコンピュータプログラムBLAST)を用いて,配列が相互に無関係であり,既知遺伝子データベースの潜在的に妨害する配列とは類似しないようにオリゴヌクレオチドプローブの配列を選択できる。オリゴヌクレオチドプローブとRNAの特異的なハイブリダイゼーションを可能にするハイブリダイゼーション条件の選択は,業界で認められている操作(例えば前記参照)を用いて,常法で決定できる。例えば,標的RNA[例えば,多ウェルマイクロプレート(例えば96又は384ウェル又はそれより多いウェル)のウェルなどのようにいかなる容器中でもよいが,増殖した組織又は細胞(所望ならば目的とする薬剤で処理)から抽出した全RNA又はmRNA]は,例えば6×SSPE−T,その他の緩衝液中,要すれば非特異的結合を削減する試薬(例えば,劣化したニシン若しくはサケの精子DNA又は酵母RNA約0.5mg/mL)とともに,オリゴヌクレオチドプローブアレイ(前記)を含む試験領域に加え,経験的に決めた温度で約10分間〜少なくとも18時間の間(好適な態様では約3時間)インキュベーションすることができる。このハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは,アンカーとリンカーのアンカー特異的部分とを会合させるために採用したストリンジェンシーと同じ又はそれ以下とすることができる。例えば,別なタイプのプローブの設計と使用は,前記のように,当業界で常用されているものである。
一態様では,所与ローカス内のアンカーと会合するリンカーの全部又は実質的に全部は,同一な(又は実質的に同一な)プローブを含み,これは,目的とする一の特異的標的に対して,特異的である。別な一態様では,所与ローカス内のアンカーと会合するリンカー1個又はそれ以上は,異なるプローブ複数を有し,複数の異なる標的に対して,特異的である。これらプローブは,リンカー内に分枝構造の一部として存在することができ,又は,好ましくは,直線的に整列させることができ;それらは,同じ材料(例えば,全部が核酸又は全部がペプチド配列)であるかまた様々な材料の組合せであることができる。事実,各リンカーにプローブが多数あると,特定のローカス内で検出できる標的の数が増加する。一態様では,与えられたリンカー上にある複数のプローブは,全て目的とする特定の標的に対して特異的である(例えば,それらは,目的とする単一のmRNAの異なる部分に特異的であるか,又は,そのmRNAの異なる部分に対応する,ヌクレアーゼ保護断片に対して特異的である);これにより,標的(例えば,サンプル内に低い量で存在する標的)に対するアッセイの感度が向上する。リンカー上にあるプローブの数は,例えば約2〜50個,好ましくは約2,4又は10個である。
勿論,異なるプローブ複数を有するリンカーは,単一の(非反復の)領域のみを含む表面で使用するために,有利である。
リンカーのアンカー特異的部分及び標的特異的部分は,様々な共有結合又は非共有結合のいずれかによって結合(取り付け,連結)していてもよく,結合の性質は,本発明にとって本質的でない。これら両部分は,直接結合しても中間分子を介して結合してもよい。リンカーの両部分がオリゴヌクレオチドである一態様では,両部分がホスホロジエステル結合のような共有結合で結合して,単一の同一直線状の核酸を形成する。アンカー特異的部分がオリゴヌクレオチドであり,標的特異的部分が受容体タンパク質のような受容体である他の態様では,両部分は,ビオチンとストレプトアビジン分子との相互作用を介して結合できる。そのような結合の変種は,多数が知られている(例えば,Niemeyer et al (1994) NAR 22, 5530-5539 参照)。あるいは,この両部分は,直接結合でき,例えばオリゴヌクレオチドをアミド化し,次にアミド結合を介してペプチド又はプロテインと直接連結する(例えば架橋)か,又はアミド結合又は脂質の取り付けを介して膜成分に結合させることができる。そのような共有結合又は非共有結合を形成する方法は,常用のもので,当業者は,その方法を容易に最適化できる。スペーサー配列(例えば核酸)は,リンカーのアンカー特異的部分と標的特異的部分との間に,介在させることができる。
二物質を会合(例えば,核酸2個,タンパク質2個,タンパク質と核酸,その他のインキュベーションによって)させて,複合体(例えばアンカー/リンカー複合体)を形成した後,得られる複合体を,要すれば,特異的相互作用をそのまま残し非特異的に結合した材料を除去すべく経験的に決定された条件を用いて,処理し(例えば洗浄),非結合物質(例えばリンカー)を除去することができる。例えば,反応混合物を,約1回〜10回又はそれより多い回数,複合体形成(例えばアンカー/リンカー複合体)に使用した条件と同一又は幾分かよりストリンジェントな条件下に,洗浄できる。
当業者は,アンカーとリンカーとの様々なタイプのサンドウィッチ型を作製できることを認識するであろう。例えば,アンカーのアレイに(例えば実質的に同一な配列を持つアンカー)に,リンカーの第一のセットを取り付けることができ,その各々がアンカーに特異的な第一部分及びリンカーの第二のセットの一つに特異的な第二部分,などを有する。実際には,サンドウィッチのこの第二層は,アンカーの第一セット(例えば同一オリゴヌクレオチド)を,「複合アンカー」の特異性の異なるセットを持つ別のアレイに変換することを可能にする。リンカーとアンカーとの様々なセットは,所望により,共有結合又は非共有結合によって,互いに会合する。
この発明のコンビネーションは,常法を用いて,日常的に製造できる。
本発明で使用する表面のいくつかは,商業的に購入できる。好適な態様では,この表面は,例えば Corning Costar 社が販売しているモディファイド・プレート(Modified Plate)のような,96−,384−又は1536−ウェルのマイクロタイター・プレートである。あるいは,ウェルを含み,くぼみ又は「へこみ」を含むこの表面は,例えばアルミニウム又は鋼のような材料を微細加工して鋳型を作り,次にプラスチック又は同様な材料を鋳型に微細注入して,構造とすることができる。あるいは,ガラス,プラスチック,セラミック,その他からなる構造を,組み立てることができる。セパレータは,三部品を組立てた時に,例えば各孔が試験ウェルの壁を形成するような孔が間隔を置いて全体に配置された,シリコンなどの材料であることができる。副仕切りは,ふるい又は細かい網細工の形に成型された,例えばシリコンなどの薄い材料であることができる。基板は,例えば生化学アッセイに使用する典型的なマイクロプレートの底部の形をした,ガラスなどのような平らな材料であることができる。基板の上面は,平らであるか,又は,各サンプルウェル内の全副区画又はウェルを提供するために副仕切りの形で整列されたへこみをつけて,形成することができる。この3部品は,例えばシリコンウェファの組立てに使うような標準的操作で,組立てることができる。
オリゴヌクレオチドのアンカー,リンカー部分又はディテクターは,例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機を使用するような常用の技術によって合成し,及び/又は,こうして合成したサブフラクションを互いに連結して合成できる。このような方法で合成するには長すぎる核酸は,例えば慣用の操作を使用するPCRのような,増幅操作で作製できる。本発明の一態様では,オリゴヌクレオチドアンカーなどの予め作製した核酸アンカーは,試験領域の表面上又は表面内に,光リトグラフによる若しくはシルクスクリーンによる化学的取り付け,インクジェット技術,毛細管,スクリーン若しくは液体チャネルチップによる配置,電極アレイを用いる電気化学的パターニング,ピン若しくはトゲの接触,又はフィルターへの焼成又はUV照射による変性を含む各種の慣用の技術によって,配置することができる(例えば, Rava et al (1996). U. S. Patent No. 5,545,531; Fodor et al (1996). U. S. Patent No. 5,510,270; Zanzucchi et al (1997) U.S. Patent No. 5,643,738; Brennan (1995) U.S. Patent No. 5,474,796; PCT WO 92/10092; PCT WO 90/15070参照)。アンカーは試験領域の上面に配置するか,又はポリアクリルアミドゲルパッドの場合には,アンカーのいくつかが表面から突き出て,リンカーとの相互作用に利用できるように,表面内に埋め込むことができる。好適な態様では,予め作製したオリゴヌクレオチドアンカーは,5'−端末を遊離アミノ基で誘導体化し;日常的経験的に決めた濃度(例えば約1μM)で,例えば50mM−リン酸緩衝液(pH8.5及び1mM−EDTA)のような緩衝液に溶解し;ピクサス・ナノジェット・ディスペンサー(Pixus nanojet dispenser, Cartesian Technologies 社)を用いて,約10.4ナノリットルの液滴で,試験ウェル内(この上面は,新鮮な乾燥DNA結合プレート(DNA Bind Plate)(Corning Costar社)である。)の特異的位置に分配する。オリゴヌクレオチドの取り付け及び蒸発の相対的な速度に依存して,製造中は,ウェル内湿度を調整する必要があるかもしれない。別の態様では,オリゴヌクレオチドアンカーは,例えば成長しつつあるオリゴヌクレオチド鎖の光活性化脱保護(例えば,部位指向性「マスク」と連動させて)又はナノジェット・ディスペンサーを用いた不活化化合物のナノリットル液滴のパターン化された放出などの常法を使用して,試験領域表面で直接合成できる。例えば,単一のヌクレオチドを受けとる筈の,成長しつつある全配列の脱保護を行い,そして,表面を横断してヌクレオチドを加えることができる。別な態様では,オリゴヌクレオチドアンカーを,オリゴヌクレオチドの3'−末端を介して,慣用の方法で,表面に取り付ける。
ペプチド,タンパク質,レクチン,キレート化物,プラスチック,その他の型のアンカー又はリンカー部分は,常法により,作成することができ,アンカーは,適当な利用可能な方法を用いて,表面上又は表面内に配置できる(例えば Fodor et al (1996) U.S. Patent No. 5,510,270; Pirrung et al (1992) U.S. Patent No. 5,143,854; Zanzucchi et al (1997). U.S. Patent No. 5,643,738; Lowe et al (1985). U.S. Patent No. 4,562,157; Niemeyer et al (1994). NAR 22, 5530-5539参照)。
本発明の一態様では,開示されたコンビネーションは,種々のスクリーニング操作において,及び/又は,プローブ又は標的分子の濃度,活性若しくは構造に関する情報を得るために使用される。このようなアッセイは,マルチ・アレイ・プレート・スクリーン(Multi Array Plate Screen)(MAPS)法又はアッセイと呼ばれる。このアッセイに用いるアンカー又はアンカーとプローブのアレイを有する表面は,MAPSアレイ又はMAPSプレートと呼ばれる。
反応混合物,アッセイ又はスクリーニング操作の構成要素は,どのような順序に構築してもよい。例えば,アンカー,リンカー及び標的を逐次的に構築することができるし,又は,標的及びリンカーをレポーター存在下又は不存在下に溶液内で構築した後に,アンカーに接触させることもできる。
本発明の一態様は,少なくとも1個の標的を検出する方法に関するものであって,
該標的を含む可能性のあるサンプルを,オリゴヌクレオチドアンカーに特異的な第一の部分と該標的に特異的なプローブとを含んだ第二の部分を有する二官能性リンカーと,該標的と該リンカーとの間の第一のハイブリダイゼーション産物を得るに有効な条件下に,接触させることと,
該第一のハイブリダイゼーション産物を,コンビネーションと,該第一のハイブリダイゼーション産物と該コンビネーションとの間の第二のハイブリダイゼーション産物を得るに有効な条件下に接触させることとを含み,ここに,該コンビネーションは,該第一のハイブリダイゼーション産物を加える前において,
空間的に分離した多数の領域を有する表面を含み,当該領域の少なくとも2個は実質的に同一であり,各領域は少なくとも8種の異なるオリゴヌクレオチドアンカーを含むものであり,
該第一のハイブリダイゼーション産物又は該第二のハイブリダイゼーション産物を,標識されたディテクター・プローブと接触させることと,そして
該検出プローブを検出することと,を含んでなるものである。
以下に記載するアッセイ又は操作は,各々ハイ・スループットの様式で行うことができるが,この様式では,多数のサンプル(例えば,コンビネーション中の領域数に依存して,約864,1036,1536,2025個又はそれより多い個数もののも)が,各プレート又は表面上で,迅速かつ同時にアッセイされる。更に,プレート又は表面多数を,一時に操作できる。例えば,医薬品の発見法において,医薬候補を含む多数のサンプル(例えば,各種の低分子,ペプチド,オリゴヌクレオチド,その他の物質のような,多数のコンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリー)を,前記のコンビネーションの別個の領域に加えることができ,又は,生物学的又は生化学的サンプルに加え次にこれをコンビネーションの別個の領域に加え,領域内に存在するプローブ・アレイとともにインキュベーションすることができ;及び,各サンプルについてアッセイを行うことができる。最近の,高密度マイクロプレート,DNAスポット用具の出現及び継続的発展,並びに,高密度のマイクロプレートからデータを作製,収集するレーザ技術,ロボット技術,改良されたディスペンサー,洗練された検出システム及びデータ管理ソフトウェアなどの方法の出現及び継続的発展によって,本発明方法は,毎日,数千,数万若しくはそれより多くの化合物を,スクリーニング又は分析するために,使用できる。
例えば,プローブがオリゴヌクレオチドである態様では,このアッセイは,遺伝子的変種又は欠陥(例えば,嚢胞性線維症のような疾患に関連する多型又は特異的突然変異,例えば Iitia et al (1992) Molecular and Cellular probes 6, 505-512 を参照);病原生物(例えば,細菌,ウイルス,プロトゾアなどで,その宿主がヒトを含む動物又は植物である)又は特定の生理学的状態又は病状を診断するmRNA転写パターンの存否に対しての,サンプル多数についての,診断用の核酸又はポリヌクレオチド・スクリーニング(例えば結合その他のアッセイ)であることができる。ESTの部分(全長コピーを含む)を含む核酸プローブ・アレイを用いれば,そのESTが由来する細胞(又は他の細胞)が産生する転写パターンを評価できる。核酸プローブは,ペプチド,タンパク質又は特定の核酸配列に特異的に結合するタンパク質・ドメイン(及びその逆)を検出できる。
同様に,プローブが抗原結合分子(例えば抗体)である態様では,このアッセイは,変種タンパク質についての,又は,特定の生理学的状態又は病状に関して診断できるタンパク質発現パターンについての,スクリーニングであることができる。
別な態様では,本発明のコンビネーションは,例えばタンパク質,核酸,低分子,その他の相互作用のような生化学的反応を監視するために使用でき,そのような例としては,抗原と抗体との間の相互作用の;若しくは受容体(例えば精製受容体又は細胞膜結合受容体)とそのリガンド,アゴニスト若しくはアンタゴニストとの;若しくは酵素(例えばプロテアーゼ又はキナーゼ)とその基質との効率性又は特異性が,あるいは,生成物へ変換された基質の増加又は減少その他多数のものがある。そのような生化学的アッセイは,プローブ又は標的の性質を決定するためにまたスクリーニングアッセイの基礎として使用することができる。例えば,特定プロテアーゼ(例えば凝血に関連するプロテアーゼXa及びVIIa)の存在についてサンプルをスクリーニングするために,サンプルをコンビネーションでアッセイすることができるが,ここでは,そのプローブは目的とする各プロテアーゼに特異的な蛍光原性の基質である。標的プロテアーゼが基質に結合して切断するならば,通常,エネルギー転移ペア2個の間の切断と分離などの結果として,基質は蛍光を発し,このシグナルを検出できる。別な例では,サンプルを特定キナーゼ(例えばSrc,チロジンキナーゼ又はZAP70)の存在についてスクリーニングするために,目的とするキナーゼ1種又はそれ以上を有するサンプルを,コンビネーションでアッセイできる。ここに,プローブは目的とするキナーゼの1種で選択的にリン酸化されるペプチドであることができる。業界が認め,常法で決定できる条件を使用して,サンプルを,適当な緩衝液中で必要なコファクターと共に,基質のアレイと,経験的に決めた時間の間,インキュベーションすることができる(アッセイによっては,例えば目的キナーゼの活性を制御する因子についての生化学的研究では,各基質が同様な速度でリン酸化されるように,各キナーゼの濃度を調整することができる。)。各反応を,キナーゼ及び不要な反応成分(要すれば)を除去するため経験的に決定した条件下に,処理(例えば洗浄)した後,それらを,例えば,フルオレセインで標識された抗ホスホチロシン又は抗ホスホセリン抗体(例えば濃度約10nM以上又はそれ以下)のような検出可能な試薬と,インキュベーションすることによって,リン酸化された基質を検出でき,シグナルを検出することができる。別の例では,結合アッセイを行うことができる。例えば,GRB2−SH2又はZAP70−SH2などのようなSH2ドメインは,適当なリン酸化ペプチドのプローブアレイでアッセイでき;血清は,免疫不全の存在について,特定受容体のプローブアレイでスクリーニングできる。また,酵素結合アッセイも,そのようなアレイ形式で行える。本発明のコンビネーションは,野生型の対応物よりも活性が高いかあるいは低い変異体酵素を検出するためにも,又は,除草剤又は殺虫剤を含む種々な薬剤をスクリーニングするためにも,使用できる。
勿論,MAPSアッセイは,サンプル内の活性標的の量を定量する(測定する,定量化する)ためにも使用できる。ただし,プローブが完全には占有されていない,すなわち,利用可能なプローブ部位の約90%又はそれ以下しか標的に占有又は結合(又は反応又はハイブリダイズ)されていないものとする。この条件下では,標的が増えると,更に多くのプローブが結合するので,標的を定量化できる。他方,利用可能なプローブ部位の約90%超が結合している条件では,存在する標的を増加させても,プローブに結合する標的の量は,実質的に増加しない。本明細書に記載する標的の型は,いずれもこの様式で,定量できる。更に,標的が大過剰に存在しても(例えば,標的が,MAPSプローブ・アレイ中の利用可能なプローブ量を飽和するほど大量に,存在する場合であっても),既知量の非標識標的を結合混合物中に加えることによって,そのように大量の標的さえも定量可能にすべく,反応の「感度をシフト」させることができることが示されている。
別な態様では,本発明のコンビネーションを用いて,標的と与えられたプローブとの相互作用を調節する薬剤を,スクリーニングできる。ある薬剤は,プローブ,標的,又は標的とプローブで形成される複合体のいずれかと,直接又は間接に相互作用して,標的/プローブ相互作用を調節できる。この調節は,以下を含む様々な形式を取ることができる。その例は,これに限定するものではないが,次を含む:プローブに対する標的の結合親和性増減,標的とプローブが結合する速度の増減,標的に対するプローブの結合の競合的又は非競合的阻害,又は,場合によっては,プローブ/標的相互作用の増減を起こすプローブ又は標的の活性増減を含むものである。このような薬剤は,人工物又は天然起源の物質であることができる。また,このような薬剤は,原型のままで,又は他の分子種との凝集物として,使用でき;及び共有結合又は非共有結合により,直接的に又は特異的結合物質を介して,結合相手に取り付けることができる。例えば,「血液希釈剤」候補又は凝血を起こすプロテアーゼのカスケードの一つと相互作用する薬剤を確認するためには,目的とするプロテアーゼのカクテルを,複数の候補薬剤で試験し,次に前記のようにして活性を試験することができる。本発明に使用できる薬剤の別な例は,非常に広範であって,殺虫剤と除草剤を含む。
別の態様では,本発明のコンビネーションは,遺伝子発現のパターンを調節する薬剤のスクリーニングに使用できる。例えば,遺伝子のセットからの発現パターンが特定の生理学的状態又は発育段階又は病状に関連するmRNA種(「相関性」遺伝子,RNA又は発現パターン)を確認するために,オリゴヌクレオチドのアレイを用いることができる。用語「相関する」又は「相関性」は,RNAの合成パターンが細胞の生理学的状態に関連することを意味するが,しかし,必ずしも所与RNAの発現が特定の生理学的状態の原因である又はこれを引き起こす必要はない。例えば,mRNAの小さなサブセットを確認できることがあり,このmRNAは,細胞内で,発現され,上方変換され及び/又は下方変換されて,特定の病状のモデルとして役立ち;病理的発現型を示さない正常細胞と比べて変化したこの発現パターンが,病状の指標(「指標」遺伝子,RNA又は発現パターン)として役立つ。この用語「相関性」及び「指標」は,互換的に用いられる。例えば,ミリスチン酸ホルボールのような腫瘍促進剤で処理した細胞は,腫瘍成長の初期に似た遺伝子発現パターンを示すかもしれない。別な癌モデルでは,マウスのインスリノーマ細胞(例えば細胞株TGP61)は,アデノウイルスに感染すると,例えばc−Jun及びMIP−2の発現増加を示すが,一方,例えばGAPDH及びL32のようなハウスキーピング遺伝子の発現には実質的に影響がない。
指標発現パターンを調節する薬剤は,これを病気モデルからの細胞に,直接又は間接に,インビボ又はインビトロ(例えば組織培養で)で接触させると,その病気に罹患している生物(例えばヒトなどの動物の患者又は植物)に対する治療剤又は薬剤として作用するかもしれない。薬剤は,核酸と,例えばインビトロ(試験管)発現システム中で,直接に接触させることによって,発現パターンを調節することもできる。本明細書で使用する「調節」は,測定可能な反応に関連する分子その他の,量及び/又は活性の増減を起こすことを意味する。本発明のコンビネーションは,そのような薬剤のスクリーニングに使用できる。例えば,一連の細胞(例えば疾患モデルから)を,一連の薬剤と,接触させ(例えば約10分間〜約48時間又はそれより長い時間),業界で認められた日常的な方法(例えば購入可能なキット)を使用して,全RNA又はmRNA抽出物を製造することができる。RNA量の増幅を所望するならば,例えばRT−PCR増幅のような標準的操作を使用できる(例えば Innis et al eds., (1996) PCR Protocols: A Guide to Methods in Amplification, Academic Press, New Yorkを参照)。この抽出物(又はその増幅産物)を,適当な指標RNAに対するプローブを含む複数の実質的に同一なアレイと,接触(例えばインキュベーション)させることができ,指標発現パターンの変化に関連する薬剤を,確認することができる。
同様に,特定の生理学的状態又は進行段階に関連する発現パターンを調節する薬剤を,確認できる。そのような薬剤は,人工の又は天然起源物質であることができ,環境因子を含み,例えば胚発育に又は生理学的反応の制御に関与するような物質,又は例えば殺虫剤又は除草剤のように農業に重要な物質を含む。また,そのような薬剤はそのままで,又は他の種との集合体として使用でき;それら薬剤は,共有結合又は非共有結合により,直接に又は特異的な結合物質を介して,結合相手に取り付けることができる。
本発明の別の態様は,サンプル内にある少なくとも1種の標的を検出するために有用なキットであって,当該キットは,
少なくとも2個が実質的に同一であり,各々が少なくとも8種の異なったアンカー(オリゴヌクレオチド,又は本明細書に記載する他のタイプの一つ)を含むものである,空間的に分離した多数の領域を含んでなる表面と,そして
該アンカーの少なくとも1種に特異的な第一の部分及び該標的の少なくとも1種に特異的なプローブを含んだ第二の部分を有する二官能性リンカー分子の少なくとも1種を含んだ容器と
を含んでなる。
一態様では,前記a)の表面と,及び,上記のアンカー少なくとも1種に二官能性リンカー分子を取り付けるさせるための取扱説明書1組とを提供する。かかるリンカー分子は,アンカー少なくとも1種に特異的な第一部分及び標的少なくとも1種に特異的なプローブを含む第二部分を有する。取扱説明書には,例えば(これに限定するものではないが),表面上の各アンカーに関する記載,表面に存在するアンカーの数及びアンカーが存在する表面上の位置に関する表示,及び,リンカーをアンカーに特異的に取り付ける(会合,結合,その他)ためのプロトコルを,各々含むことができる。例えば,アンカーがオリゴヌクレオチドであれば,取扱説明書は,各アンカーの配列を含むことができ,専門家はその配列からアンカーと特異的に相互作用(例えばハイブリダイズ)するように,相補的なリンカーのアンカー特異的部分を,設計できる;アンカーがペプチドであれば,取扱説明書は,例えばペプチドと特異的に相互作用する抗体に関する情報を伝達できる。取扱説明書は,アンカーとリンカーを会合させるためのプロトコル,例えばハイブリダイゼーション(又は他の型の会合)のための,例えばインキュベーション温度及び時間のような条件及び試薬,結合しなかった分子の除去(例えば洗浄)のための条件及び試薬,その他,を含むことができる。更に,取扱説明書は,本明細書に記載する各種タイプのコントロールリンカーの構築と使用に関する情報,及び,例えば本コンビネーションで行うアッセイを定量化,正規化,「微調整」又は補正するための方法の構築と使用に関する情報を含むことができる。取扱説明書は,当業者が日常的に常法により行うことのできる,この出願に開示するパラメータ,条件又は態様を含むことができる。
この明細書の何れかに記載するように,専門家は,与えられたアンカーのアレイ(又はアレイズ)を有する本発明の表面に,多種なタイプのリンカーを取り付け,それによって,広範な種類のプローブアレイのいずれかをプログラムすることができる。更に,専門家は,本発明の表面から,所定のセットのリンカーを除去し,またそれに他のセットのリンカー(最初のセットと同一又は相違するリンカー)を加えることができ,これにより,表面を,何度も再使用することが可能になる。この柔軟性と再使用可能性は,更なる本発明の利点を構成する。
別の一側面において,本発明は,与えられた核酸に対し,複数のポリヌクレオチドのうちのどれが相補的であるかを決定する方法に関するものであって,
ここに,該ポリヌクレオチドの1又は2以上が,該核酸に対し,相補的である可能性のあるものであり,ここに,該ポリヌクレオチドの各々は,二つの異なるオリゴヌクレオチド配列を含むものであり,その第一は該ポリヌクレオチドに対応するオリゴヌクレオチド・プローブを定めるものであり,その第二は該ポリヌクレオチドに対応するディテクター・オリゴヌクレオチドを定めるものであり,
該核酸の分子を含むサンプルを,コンビネーションの少なくとも一つの領域であって,オリゴヌクレオチド・プローブのアレイを含み,その少なくとも一つが該ポリヌクレオチドの各々に対応するものである領域に接触させることと,
該サンプルを,該領域と共にインキュベーションし,それにより,該核酸分子を該核酸の一部に相補的な該ポリヌクレオチド対応オリゴヌクレオチド・プローブに結合させることと,
該ポリヌクレオチド対応オリゴヌクレオチド・プローブの1又は2以上に結合した該核酸分子を含んだ該領域を,該アレイの与えられた一つのオリゴヌクレオチド・プローブが対応するものであるポリヌクレオチドに対応するものであるディテクター・オリゴヌクレオチドと共にインキュベーションし,それにより,ディテクター・オリゴヌクレオチドを,該与えられたオリゴヌクレオチド・プローブに又は該核酸に相補的な他のオリゴヌクレオチド・プローブに結合した核酸分子に,結合させることと,
該ディテクター・オリゴヌクレオチドの存在を検出し,それにより,該アレイのポリヌクレオチド対応オリゴヌクレオチド・プローブのいずれが,該与えられたオリゴヌクレオチド・ポリヌクレオチド対応プローブに結合する核酸の一部に対して相補的であるか同定し,それにより,ポリヌクレオチドのいずれが,該与えられた核酸に相補的であるかを同定することを含んでなり,
ここに,オリゴヌクレオチド・プローブの該アレイは,コンビネーションの領域上に固定されており,ここに,該コンビネーションは,
調べようとするポリヌクレオチドの数に等しい,それぞれ空間的に分離した実質的に同一である多数の領域を含んだ表面を含み,各領域は,
調べようとするポリヌクレオチドの数に等しい,それぞれ異なる多数のアンカーを含み,該アンカーは,
該アンカーに特異的な第一の部分と,該ポリヌクレオチドの少なくとも一つに対応するオリゴヌクレオチド・プローブを含む第二の部分を有している二官能性リンカーと会合しているものである,方法。
本発明の他の側面において,ESTsや他のポリヌクレオチドの地図を作成するための上記方法は,1又は2以上のステップの間において,更に,サンプルの未結合部分を除去することを含んでなる。
架橋された標的から分離されたプローブは,検出の前に,当業者によく知られた多数の方法によって,例えばPCRによって,増幅又は修飾することができる。この場合において,回収されたプローブは,増幅と同じく,延長し,タグを付け又は標識することができる。
本発明の方法で使用する核酸,例えば標的,標的の検出に関与するオリゴヌクレオチド,又はヌクレアーゼ保護断片(本明細書に記載)などは,PCR反応及びリガーゼ反応を含む常法の様々な酵素的操作のいずれかによって増幅できる。かかる増幅法の一つは転写が仲介する増幅である(例えば Abe et al. (1993) J. Clin. Microbiol. 31, 3270-3274を参照)。
本発明の別な態様では,目的とする核酸標的1種又はそれ以上を特異的ポリヌクレオチド保護断片にハイブリダイズさせ,ヌクレアーゼ保護操作を行い,目的とする標的とハイブリダイズした保護断片をMAPSプレート上でアッセイする。勿論,このような「MAPSプレート」はリンカーと会合していないアンカー(例えば,目的とする標的又はヌクレアーゼ保護断片と直接会合できるもの)を含むことができる;いずれかの型のプローブアレイとともに使用するヌクレアーゼ保護の利点は,本明細書及び利点を請求するその先行書から当業者には明白になる。目的とする標的がRNAであり,保護断片がDNAであれば,ヌクレアーゼ保護/MAPSアッセイ(NPA−MAPS)は,夾雑ヌクレアーゼによる分解に感受性があり取扱が難しいRNAの,長大な処理の必要性を軽減できる。ヌクレアーゼ保護操作によるサンプルの処理も,サンプルの粘度を低下させる。サンプルのヌクレアーゼ保護により,アッセイの感度と再現性とを向上できる。本発明の利点の一つは,このアッセイが十分に感度が高いために,シグナル検出のために標的の増幅(例えばPCRによる)を必ずしも必要としない点にある。NPA−MAPSアッセイでは,プローブアレイ中のプローブは,目的とする核酸標的と同じ鎖状構造を持つオリゴヌクレオチドであって,標準的MAPSアッセイにおける場合ように,それらに対して相補的ではない。
NPA−MAPSアッセイでは,目的とする標的は,例えばゲノムDNA,cDNA,ウイルスDNA,ウイルスRNA又はRNA,rRNA,tRNA,mRNA,オリゴヌクレオチド,核酸断片,修飾核酸,合成核酸,その他など,いかなる核酸でもよい。本発明の好適な態様では,この操作を使用して組織又は細胞のRNA抽出物中に存在するmRNA標的1種又は2種以上についてアッセイする。目的とする標的を含むサンプルを,先ず選択したストリンジェントな条件下(特異的ハイブリダイゼーションを達成する適当な反応条件については,前記検討を参照)に,過剰な特異的保護断片1個又は2個以上とハイブリダイズさせる。保護断片はポリヌクレオチドであって,例えばRNA,DNA(PCR産物も含む),PNA又は修飾又は置換核酸であることができ,これらは目的とする核酸標的の一部に特異的である。「特異的」保護断片とは,選択したストリンジェントな条件下にその結合相手と結合するに十分な相補性があるが,望まない核酸には結合しないポリヌクレオチドを意味する。保護断片の長さは少なくとも10ヌクレオチド,好ましくは50〜100ヌクレオチド又は全長cDNAとほぼ同じながさである。好適な態様では,保護断片は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドである。100個又はそれより多くの個数の標的に特異的な保護断片を,単一のハイブリダイゼーション反応に含めることができる。ハイブリダイゼーションの後,サンプルをヌクレアーゼ1種又は2種以上のカクテルで処理して,目的とする核酸及び(場合によっては)核酸標的の一部(これらはハイブリダイズされ,ヌクレアーゼ保護操作(二本鎖ハイブリッド)中のヌクレアーゼ消化から保護されている)とハイブリダイズさせた保護断片以外の核酸を,破壊する。例えば,サンプルが細胞抽出物を含むならば,目的とする核酸以外の望まない核酸,例えばゲノムDNA,tRNA,rRNA及びmRNAなどはこの段階で実質的に破壊できる。ハイブリダイズした複合体とサンプル内に存在する望ましくない核酸との性質に依存して,例えば膵臓RNAse,ヤエナリヌクレアーゼ,S1ヌクレアーゼ,RNAse−A,リボヌクレアーゼT1,エキソヌクレアーゼIII,エキソヌクレアーゼVII,RNAse−CLB,RNAse−PhyM,RNAse−U2,その他を含む様々なヌクレアーゼをいずれも使用できる。RNAse−Hは,DNA保護断片に結合した残余RNAを消化するために特に有用である。これら酵素の反応条件は,当業界でよく知られており,経験的に最適化できる。また,例えばRNAのアルカリ加水分解のような化学的操作も使用できる。必要なら,サンプルを当業界でよく知られた操作によって更に処理してハイブリダイズしない物質を除去し,及び/又は残余酵素を不活性化又は除去する(例えばフェノール抽出,沈殿,カラム濾過,など)ことができる。ハイブリダイゼーション,それに続くヌクレアーゼ消化及び(要すれば)化学分解のプロセスは,ヌクレアーゼ保護操作と呼ばれる;様々なヌクレアーゼ保護操作が報告されている(例えば Lee et al (1987) Meth. Enzymol. 152, 633-648; Zinn et al. (1983). Cell 34, 865-879 を参照)。ヌクレアーゼ保護処理し,これに続いて(要すれば)ヌクレアーゼ不活性化操作を行ったサンプルは,MAPSプローブアレイに接触させ,更にMAPSアッセイの通常のステップを行う。結合した保護断片は,例えば標準的MAPSアッセイ法について本明細書に記載する,標識した標的特異的レポーターとのハイブリダイゼーションによって,又は,保護断片それ自体検出可能な分子で共有結合的又は非共有結合的に標識することができ,検出できる。
所望なら,NPA−MAPSアッセイを正規化するために,コントロールを1個又は2個以上含めることができる。例えば,一連のサンプルに実質的に同一量存在すると期待される核酸(例えば構成的に産生したmRNA,ゲノムDNAの一部分,tRNA,rRNA)に対応する保護断片1個又は2個以上を使用することができる。様々な量で存在する核酸(例えば,mRNA)を測定するためのアッセイにおいて,例えばゲノムDNAなどの内部正規化コントロールを検出し定量できるという能力は,本アッセイの保護断片を使用する利点の一つである。
正規化標準の量は,発現される目的とするmRNAの量よりも少ないかもしれないので,アッセイでは発現した遺伝子に対応するシグナルが正規化標準に対応するシグナルを埋没させないように調整してもよい。シグナル強度を調整する方法は慣用のものあって,当業者には自明である。例えば,本明細書に記載するシグナル強度をバランスさせる,いかなる方法(例えばシグナル減衰,微調整)も使用できる(例えば,ブロックしたリンカーを使用すること;正規化標準を検出するように設計したシグナル部分を,mRNAを検出するために設計したレベルより高いレベルで標識すること;正規化標準の検出を指定したローカスに,正規化核酸の異なる部分に対して又は当該核酸の異なる部分に対応する保護断片に対して特異的なリンカー複数を,配置すること等)。例えば本明細書に記載する方法の何れによっても,正規化標準及び目的とする核酸標的(例えばmRNA)を,同時又は順次に検出することができる。
好適な態様では,保護断片を,例えば標的特異的レポーターとハイブリダイゼーションさせるよりも,直接標識する。例えばレポーターは,例えばストレプトアビジン酵素複合体をビオチン化オリゴヌクレオチドに加えるなど,リガンド−アンチリガンド相互作用を介して保護断片に結合させる。別な例では,この保護断片を化学的に修飾(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)又は蛍光色素との直接結合によって)し,この化学修飾を保護断片の核酸部分を使用するか又は使用しないで(例えば酵素的又は化学的処理によって修飾を切除した後に)検出する。前記方法のいずれにおいても,保護断片は対応するリンカー分子とハイブリダイズする前又は後に標識できる。
ヌクレアーゼ保護操作の妥当な進行,すなわちハイブリダイズしない核酸が所望のように消化されること,を制御するために,操作が妥当に進行すればヌクレアーゼにより切断されるオーバーハング(非ハイブリダイズ)セグメントを含む保護断片1種又は2種以上を設計することができる。オーバーハング断片の存否は,相補的な標識検出プローブとハイブリダイズさせて判定するか,又は,保護断片自体のオーバーハング部分を検出可能な分子で共有結合的又は非共有結合的に標識することもできる。この制御はサンプルをプローブアレイと接触する前に又はMAPSアッセイ自体の一部としても実行できる。勿論,異なる標識は容易に区別できることから(例えば異なる吸収スペクトルを持つ蛍光材),標識の異なる数種のオリゴヌクレオチドを一つのアッセイに含めることができる。更にゲル電気泳動で分析する標準的ヌクレアーゼ保護アッセイをアッセイ開発において使用すれば,その保護断片が期待通りに操作されることを検証できる。
適切なヌクレアーゼ消化のためのその他のコントロールは,当業者に明白であろう。例えば,あるアッセイに,サンプル内にある核酸のいずれにも特異的でないことが知られているヌクレアーゼ保護断片を含めることができる(例えば植物核酸のアッセイでは,植物にはないことが知られている動物遺伝子に特異的な保護断片を含める)。
標的の検出後,検出プローブ(例えばHRP標識)シグナルを除去(例えば,変性,分解,消滅,抑制,遮断)し,プレートを洗浄して,次工程を妨害するかもしれない残留する試薬,薬剤又は緩衝液(例えば変性剤)を除き,次にオーバーハングを別な検出プローブ(例えばHRP標識)で検出することができる。シグナル変性の使用及びそれに続く同じシグナル発生部分を持つ別の検出プローブの添加を,本アッセイの様々な段階で使用できる。2種の異なる蛍光プローブの利用及び二重の呈色検出を,変性やシグナルの遮断なしに,用いることができる。
本発明の一態様では,前記のように,オリゴヌクレオチドプローブを,構造多形1種又は2種以上を含む核酸をスクリーニングするために使用できる。好適な態様では,核酸(例えばゲノムDNAのようなDNA又は例えばmRNAのようなRNA)は,SNP1種又は2種以上を含む。業界で認められた日常的な操作を使用して,この操作を実行できる。例えば既知のSNPを有するDNA又はそのようなDNAから発現されたmRNAをスクリーニングするために,「SNP特異的な」保護断片を,このSNPを含むかもしれない核酸を含むサンプルにハイブリダイズさせる。ここで,「SNP特異的な」保護断片とは,SNPの変化した塩基を有する保護断片又はmRNAを分析するならばその配列の逆相補体を有する保護断片を意味する。このサンプルを次に適当なヌクレアーゼ1種又は2種以上で処理し,経験的に決定できる適当な条件下にハイブリダイズしていない一本鎖核酸を消化して,二本鎖核酸(例えばDNA−DNAハイブリッド,DNA−RNAハイブリッド,その他)をミスマッチ部位(例えば単一塩基ミスマッチ)で切断する。適当なヌクレアーゼには,例えばS1又はRHAse−Hが含まれる。SNPを含む核酸がサンプル内に存在し,SNP特異的保護断片とハイブリダイズするならば,その保護断片は消化操作に耐えて無傷のまま残存するので,MAPSアッセイに付し,検出プローブ又は保護断片の配列に特異的な検出オリゴヌクレオチドによって検出することができる。SNPを含まない核酸は,SNP特異的保護断片と対応するその核酸にある野生型配列との間のミスマッチ部位で切断されることになる。所望ならば,切断部位から遠位又は近位のどちらかにある保護断片の部分は,常法を使用して除去できる(例えば熱変性,酵素的切断など)。切断した分子(又はその一部)がリンカーに結合しないように,又はその切断した分子の一部がリンカーに結合するとしてもその分子が適切に設計された検出プローブ又は検出オリゴヌクレオチドによって検出されないように,アッセイを設計できる。別の態様は,例えばゲノムDNA中のSNP検出などに適用できる,SNPの検出に向けられたものである。
本発明の一態様では,サンプル内にある種々の型の標的,例えばDNA,RNA,細胞内タンパク質及び分泌タンパク質などの様々な組合せをプローブアレイ1個でアッセイできる。
上記各種のハイ・スループットアッセイに加え,他の多くのものが当業者にとって自明のものである。
多プローブアッセイを用いる利点の一つは,多数の「コントロール」プローブを各プローブアレイに含めて,実際の実験プローブと同じ反応条件に付すことができるという能力にある。例えばアレイの各領域は,陽性コントロール及び/又は陰性コントロールを有することができる。本明細書で使用する用語「陽性コントロールプローブ」は,例えば実質的に標的と相互作用することが知られているか,又は既知の様式で標的と定量的又は定性的に相互作用することが知られており,それによってプローブ/標的相互作用の(内部)基準の役目をするコントロールプローブを意味する。このようなプローブは,例えばハイブリダイゼーション効率についてコントロールできる。本明細書で使用する用語「陰性コントロールプローブ」は,標的とは実質的に相互作用しないことが知られているコントロールプローブを意味し,例えばハイブリダイゼーション特異性についてコントロールできる。採用できる型のコントロールの例として,オリゴヌクレオチドプローブのアレイを用いてある疾患に対する相関遺伝子セットの発現を変調する薬剤について,スクリーニングするアッセイを考える。例えば,各サンプルについて溶解した細胞の数,回収mRNA又はハイブリダイゼーション効率のような変数に対しての内部正規化コントロールとして,プローブアレイは,その発現が試験対象の薬剤で変調されるとは期待されない基礎レベルのすなわち構成的ハウスキーピング遺伝子1種又は2種以上(例えば,構造遺伝子(例えばアクチン,チューブリン,その他)又はDNA結合タンパク質(例えば転写制御因子,その他))に対して特異的なプローブを,有することができる。更に,試験している薬剤が例えば細胞死又は細胞毒性のような望ましくない副作用を起こすかどうかを判定するために,プローブアレイにはアポトーシス(プログラムされた細胞死)過程の一部で誘導されるか,細胞障害の状況下又は細胞毒性の状況下に誘導されることが知られている遺伝子(例えば,心臓発作タンパク質又はp450遺伝子)に特異的なプローブを,含めることができる。
他のコントロールプローブもアッセイの感度を「微調整」するためにアレイに導入できる。例えば特定の病状に関連するmRNAの産生を変調する薬剤のアッセイを考えよ。予備実験分析が,このセットの相関性mRNA(mRNA−A)の一つが他と比べて大量に産生されてそのシグナルが他のmRNAシグナルを埋没してしまうことを示したらば,リンカーを調整してシグナル強度を等化するように,アッセイを「微調整」することができる。mRNA−A標的を指向するが,プローブ特異的配列を有しないアンカー特異的オリゴヌクレオチド配列を有する「ブロックされたリンカー」を加えて,標的特異的なリンカーのプールを希釈して,mRNAアッセイの感度を低下させることができる。当業者は,遮断されたリンカーと遮断されていないリンカーとの適当な比率を,日常的な常法で決定できる。
不活性な要素で活性な要素を希釈することによる特定標的に対するアッセイの「微調整」は,本アッセイの別な段階でも実行できる。それは,標識した標的特異的なレポーターを,「不活性」な標的特異的レポーター(例えば,同じ標的特異的部分(例えばオリゴヌクレオチド配列)を持つが,シグナル発生部分を持たないもの,又は,シグナル発生部が不活性化されたか,不活性型であるもの)で希釈することによって,その検出レベルで行うことができる。本明細書で使用する用語「シグナル発生部分」は,標識,タグ,分子又はその他の検出シグナルを放射する物質,又は本明細書に記載するシグナルを発生できる物質(例えば蛍光性分子,ルミネッセンス酵素又は様々なシグナル発生部分)を示す。特に好適な態様では,この「微調整」は,標的含有複合体と検出リンカーとを接触させる段階で行うことができる。例えばあるアッセイにおいて各標的の感度を微調整するために,検出リンカーのセットを設計できる。例えば,特定の標的がサンプル内に非常に高い濃度で存在することが知られていれば,その標的に対する検出リンカーを経験的に決定した量の「ブロックされた検出リンカー」,すなわち標的特異的部分(例えばオリゴヌクレオチド配列)を有するが,レポーター剤(reporter reagent)に特異的な部分がないものであるか又は標的特異的部分と予め不活性化レポーター剤に結合したレポーター剤特異的部分を有するもの,で希釈できる。すなわち,レポーター剤に特異的な部分を有する代わりに,その部分が不在であるか又はレポーター剤との相互作用(例えばハイブリダイジング)を阻止(例えばブロック)されたものである。このような微調整を,本明細書では,シグナルの「減衰」と称する。
本発明のアッセイで試験するサンプルは,前記標的又はその他のいずれかを有することができる。アッセイすべき液体サンプルは,試験領域のサイズに適する約100ナノリットル〜100マイクロリットルまでの範囲のいかなる容量であってもよい。好適な態様では,約1μLの液滴を1536ウェルマイクロタイター皿の各ウェルに加える。サンプルは,例えばピペッティング,インクジェットに基づく分配又は反復ピンツールの使用などハイ・スループット分析に適する様々の方法のいずれかによって,プローブアレイに接触させることができる。サンプルを,プローブと標的との結合を達成するため又はその他の安定な相互作用のために有効な条件下(例えば前記の塩類濃度,pH,温度,インキュベーション時間など),インキュベーションする。これらの条件は,常法で決定できる。インキュベーション後,サンプルを,要すれば処理(例えば洗浄)して,特異的な相互作用はそのまま残るが非特異的に結合した材料は除去する経験的に決定した条件を使用して,非結合標的を除去する。例えば,サンプルを,プローブ/標的結合に使用したものと比べて同一又は幾分よりストリンジェントな条件下に,約1回〜10回又はそれより多い回数の範囲で,洗浄する。
標的RNA,例えばmRNA,rRNA,tRNA,ウイルスRNA又は全RNAを含むサンプルは,様々な操作法のいずれかによって調製できる。例えば,mRNAを抽出すべきインビトロ細胞培養物を,例えばマイクロタイタープレートの各ウェルのような表面の領域上に塗布する。要すれば,この細胞は,所望の細胞密度に達した後に,例えば細胞に添加できる促進剤又は治療剤候補のような関心のある薬剤を,例えば反復ピンツール(Beckman 社から購入できる96又は384ピンツールなど),ピペッティング又はインクジェット分配によってなど,様々な手段のいずれかによって,細胞に加えて処理し,更に検査法に依存して約15分間から約48時間の適当な時間にわたって,細胞とインキュベーションすることができる。インビトロ又はインビボ起源の組織又は細胞から得た全RNA,mRNA等の抽出物は,日常的な業界で認められた方法(例えば市販のキット)を使用して調製できる。
一態様において,ヌクレアーゼ保護断片の存在又は不在下に,細胞を溶解(又は浸透可能化)し,粗製溶解物を,例えば他の細胞成分などからのそれ以上の精製なしに直接(例えばマイクロタイタープレートのウェル中で),使用する。細胞をヌクレアーゼ保護断片不在下に溶解する場合には,後で保護断片を細胞溶解物に加えることもできる。
例えばヌクレアーゼ保護断片を検出するなどの好適な態様では,サンプルは,目的とする細胞(例えばマイクロタイタープレートのウェル表面上の細胞;組織又は全生物サンプル中の細胞;その他)を,界面活性剤又は洗浄剤(例えば約0.01%〜約0.5%w/vのSDSなど)と試薬(例えば,ホルムアミド(例えば約8〜約60%,v/v),塩酸グアニジン(例えば約0.1〜約6M),イソチオシアン酸グアニジウム(例えば約0.05〜約8M)又は尿素(例えば約40〜46%,w/v,又は約7M))を含む水性媒体(細胞溶解溶液)と接触させることによって,調製される。かかる試薬は,単独で又は他の試薬1種又は2種以上と組合せて,カオトロピック(chaotropic)剤として作用する.
この水性媒体は,いずれの標準的緩衝液で緩衝化してもよい。好適な態様では,この緩衝液は,約0.5〜6×SSC,より好ましくは約3×SSCである。要すれば水性媒体には,更にtRNAを適当な濃度,例えば約0.1〜2.0mg/mL,好ましくは約0.5mg/mLで加えることができる。ヌクレアーゼ保護断片は,細胞に加える前の水性媒体に添加してもよい。各保護断片の最適濃度は,常法を用いて経験的に決定できる。好適な態様では,各保護断片の濃度は,約3〜約300pM,より好ましくは約30pMである。
水性溶液中で細胞が浸透性になり及び/又は溶解して,DNA及び/又はmRNAが細胞から液体培地に放出されるまで,細胞をインキュベーションする。細胞は,水性媒体中で経験的に決定できる時間にわたって(例えば約1〜60分間),経験的に決定できる最適温度(例えば約37℃〜約115℃,好ましくは約90℃〜約115℃)で,インキュベーションする。
例えば,DNAとRNAの双方を保護断片と結合できる変性された形で細胞から放出させる一態様では,細胞を,約1〜約60分間,好ましくは約5〜約20分間,水性媒体中で,約90℃〜約115℃,好ましくは約105℃でインキュベーションする。例えばRNA不在下にDNAのアッセイを所望するときは,インキュベーション混合物に,様々な慣用のリボヌクレアーゼのいずれかを添加できる。適当なリボヌクレアーゼの選択及び消化条件の最適化は,常用のものであって,当業者は容易に決定できる。
別な態様では,mRNAは,細胞を約5〜約20分間,好ましくは約10分間,水性媒体中で,約90〜約100℃,好ましくは約95℃で,要すれば保護断片1種又は2種以上の存在下に,インキュベーションすることによって調製できる。この場合,mRNAは保護断片に結合できる変性された形で細胞から実質的に放出されるが,DNAは実質的に細胞内部に残留するか,細胞に付着して残留するか,又は二本鎖であることによる性質のためにプローブへの取込がないか,又は細胞から放出されるが保護断片に結合できない形(例えば未変性)にある。いかなる特定の機序にも拘束されるつもりはないが,核酸が溶解/浸透可能化された細胞から放出されると,十分に変性されて保護断片への結合が可能になって安定な二本鎖を形成するように思われる。この安定な二本鎖は,内在性又は外来性の試薬又は酵素による分解に抵抗性であって,細胞内タンパク質は(例えばヌクレアーゼ)は変性され,及び/又は不活性化される。
前記操作による目的とする核酸の調製に続いて,水性媒体が添加された外因性タンパク質(例えば,ヌクレアーゼ(例えばS1ヌクレアーゼ),ポリメラーゼ(例えばPCR反応に必要なポリメラーゼ)又は結合タンパク質(例えばストレプトアビジン)など)の機能を阻害しないように,サンプルを適当な容積に希釈することができる。前記のような希釈の量及び水溶液中で使用すべき成分の決定及びその量は,常法を用いて経験的に決定できる。
本発明のいずれの方法に対しても,当業界でよく知られている様々な操作法及び/又は本明細書に記載する操作法(例えばヌクレアーゼ保護断片の検出について)のいずれによっても,標的に標識(タグ)をつけることができる。例えば,標的分子は,検出用シグナルを提供する化学基(例えば,化学ルミネッセンス分子又は化学ルミネッセンス分子の産生を触媒する酵素,又はフルオレセイン又はcy5のような蛍光分子,又はキレート化ランタニド金属のような時間分解(time resolved)蛍光分子又は放射性化合物)と,直接又は間接に結合できる。あるいは,標的は,標的特異的レポーター(例えば抗生物質,図1に示すオリゴヌクレオチド,又はプローブ及び標的に関して前記した一般型分子のいずれか)1種又は2種以上によってプローブと反応した後に,標識できる。
蛍光分子の一つの型は,「アップコンバージョン燐光物質」,すなわち,長波長の光(例えばIR)を吸収し,励起され,次に短波長の光(例えば可視光)を放射する蛍光材である。アップコンバージョン燐光物質は,分析すべき典型的なサンプル内に存在する妨害性が予想されるほとんどの物質よりも長波長で吸収するので,アップコンバージョン燐光物質は長波長を吸収する燐光物質よりも,サンプル内物質に由来する妨害を低減する可能性がある。殆どのアップコンバージョン燐光物質の放射スペクトルは狭いので,多数のアップコンバージョン燐光物質の同時検出が可能である。アップコンバージョン燐光物質は当業界でよく知られており,常法のものであって,例えば:例えば希土類金属イオン,例えばイッテルビウム(Yb),エルビウム(Er),ツリウム(Tm)及びプラセオジミウム(Pr),特にオキシスルフィド塩の形のもの,などを含む。80種又はそれより多くの独立して検出可能なアップコンバージョン燐光物質が報告されている(例えばBiological Agent Detection and Identification, April 27-30, 1999, DARPA, Biological Warfare Defense, Defense Sciences Officeを参照)。燐光物質は,要すれば,例えばマイクロスフェア又はラテックスビーズなど,いかなる表面にも取り付けることができる。その他の蛍光標識と同様に,アップコンバージョン燐光物質は,十分に近接したリンカー,標的又はレポーター上の標識へのエネルギー転移(又は変調)によって,検出可能である。更に,本明細書に開示する他種シグナル発生物と同様に,アップコンバージョン燐光物質を用いて標的の量を定量でき,また本明細書に記載する様々な操作のいずれかを用いて,例えばヌクレアーゼ保護断片を検出することもできる。
勿論,アップコンバージョン燐光物質は,いかなる様式で表面に分布していてもよい標的(ヌクレアーゼ保護断片を含む),例えば表面に直接結合する標的,表面上の様々なオリゴヌクレオチドアレイに直接結合する標的,又は二官能性リンカーを介してアンカー(相違するか又は実質的に同一な)に結合している標的を検出するために使用できる。かかるアンカーは,実質的に均等に又は表面にいかなる所望の系統若しくはパターンで,分布していてもよい。例えば通過系又は例えばビーズのような固体表面など,どのような表面も使用できる。本発明のアッセイのいずれかで使用するビーズは,例えばいかなる材料の,磁性及び/又は非磁性の,いかなる型のものでもよく;一つのアッセイに使用するビーズは,実質的に同一又は異なるサイズ及び/又は形であってもよい。
複雑なサンドウィッチ型の様々な検出操作も採用できる。例えば,標的は,標的に特異的な第一部分及び共通の(すなわち同一な)レポーター剤,例えば標識ポリヌクレオチド,抗体,その他によって認識される第二部分を含む,二官能性分子とハイブリダイズすることができる。この二官能性分子は,各アッセイにおいて任意な所望数の共通レポーターを使用できるように,設計できる。
本発明のいずれの方法についても,標的に標識(タグ)を付けるために様々の複雑なサンドウィッチ型複合体検出操作を採用することができる。例えば,標的を,標的に特異的な第一部分及び「レポーター剤」に特異的な第二部分を持つ二官能性(又は多官能性)分子(「検出リンカー」)と,例えばハイブリダイズなど相互作用させることができる。用語「に対して特異的」は,本明細書では,例えばプローブと標的などとの相互作用に関する意味を持つ。本明細書で使用する用語「レポーター剤」は,標識されたポリヌクレオチド,抗体又は本明細書でプローブと標的に関連して記述した一般型の分子のいずれかを示す。検出リンカーのこの二つの部分は,例えばプローブと標的に関連して前記したいずれかの様式で,各々の結合相手を認識(相互作用又は会合)できる。検出リンカーも,他種の配列,例えば標的に特異的であるが,対応するアンカー結合リンカーの標的特異的な部分とは異なる配列(非重複)を有することができる。検出リンカーに存在するいかなる配列も,検出プローブ又はレポーター剤のための認識部位として役立つ。好適な態様では,検出リンカーはポリヌクレオチドである。
検出リンカーは,所望数の共通レポーター剤をアッセイに使用できるように,設計できる。例えば,検出リンカーのセットは,各検出リンカーが異なる標的に特異的であるが,同じ(共通の)レポーター剤に対する結合部位,又は,少数のレポーター剤の一つに対する結合部位を持つように,設計することもできる。少数(例えば1個)のレポーター剤で,1回のアッセイにおける様々な標的を標識できる性能は,費用低下及びバックグラウンド値低減の利点を提供する。勿論,検出リンカー/レポーター剤の組合せは,例えば,アップコンバージョン燐光物質で検出できる標的配置型について前記したように,表面にいかなる様式で分布している標的をも検出するために使用できる。
最も好適な態様では,検出リンカーは,ヌクレアーゼ保護操作の間にコントロール「オーバーハング」配列からヌクレアーゼで切断された保護断片が優先的に標識される方法で,ヌクレアーゼ保護断片を検出するよう,設計できる。この態様では,検出リンカーは,標的に特異的な第一部分,及び,共通コントロールオーバーハング配列に特異的な第二部分を有し,かかる第二部分は,好適な態様では,アッセイ開始の時点で,実質的に全てのヌクレアーゼ保護断片上に存在する。所望であれば,コントロールオーバーハング配列がヌクレアーゼ保護反応の間にヌクレアーゼ保護断片から切断されれば,検出リンカーの標的特異的部分は,切断された保護断片とハイブリダイゼーションするが,検出リンカーのコントロールオーバーハング特異的部分は非結合で,さらなるハイブリダイゼーションに利用可能なままである。他方,コントロールオーバーハング特異的配列が,例えばヌクレアーゼ保護操作の間のヌクレアーゼ消化が不完全であるなどのために,保護断片から切断されなければ,検出リンカーの標的特異的部分及びコントロールオーバーハング特異的部分はいずれも,保護断片にハイブリダイズして,それ以上のハイブリダイゼーションには利用可能ではなくなる。好適な態様では,ヌクレアーゼ保護断片と結合した検出リンカーとを含む複合体は,さらなる工程で,レポーター剤へハイブダイズする。このレポーター剤は,シグナル発生部分(例えば,前記のような,蛍光色素,ハプテン,酵素,又は検出可能なシグナル又はシグナル発生部分を有する他のいずれかの分子)及び検出リンカーのコントロールオーバーハング特異的部分に特異的な部分(例えば,オリゴヌクレオチド)を有する。レポーター剤は,優先的に複合体に結合し,複合体を標識する。この複合体では,ヌクレアーゼ保護断片のコントロールオーバーハング配列は,切断されたものである(すなわち,検出リンカーのコントロールオーバーハング特異的部分がレポーター剤への更なるハイブリブリダイゼーションに利用できるところの複合体である)。
サンドウィッチ検出操作についての多数の変形は,当業者に明白である。
結合又はその他の安定な相互作用を達成するために有効な条件下,標的を標的特異的レポーターと,又は標的/検出リンカー複合体をレポーター剤とインキュベーションする方法は,日常的に決定できる(前記)。例えば,蛍光オリゴヌクレオチドレポーター(約10nM〜約1μM又はそれより高い範囲のいずれかの濃度,より好ましくは約30nM,6×SSPE−Tその他の緩衝液中)は,結合した標的と共に,約15分間から2時間又はそれより長い時間の間(好ましくは約30〜60分間),約15℃〜約45℃の温度(好ましくは約室温)で,インキュベーションすることができる。インキュベーション後,所望なら,特異的相互作用産物はそのまま残すも非特異的結合物質は除去するところの経験的に決定できる条件を用いて,サンプルを処理(例えば洗浄)し,非結合の標的特異的レポーターを除去する。例えば, サンプルは,約1回から約10回又はそれより多い回数の間で,標的/レポーター結合を達成するに用いたものと同一又は幾分よりストリンジェントな条件下で,洗浄することができる。
標的特異的レポーターによるタグ付けは,最初のハイブリダイゼーション反応に対し,追加的な特異性の層を提供することができ,例えば,標的特異的オリゴヌクレオチドレポーターがプローブオリゴヌクレオチドよりも標的核酸の配列の異なる部分を指向する場合,又は,プローブ及びレポーター抗体が標的抗原の様々なエピトープを認識する場合などである。更に標的特異的レポーターによるタグ付けは,反応の感度「調整」を可能にする。例えば,相関発現パターンの一部である標的mRNAが非常に低い水準で発現されるならば,結合した標的を数個(例えば,約2〜約5又はそれより多い個数)の標的特異的オリゴヌクレオチドレポーターとハイブリダイズさせることによって,シグナルのレベルを強化することができる(シグナル増幅)。当該的特異的オリゴヌクレオチドレポーターの各々は,標的mRNAの異なる部分に特異的にハイブリダイズする
2個の標識を独立に検出する性能は,MAPSアッセイにおいて,追加のタイプのコントロールを可能にする。特定のアンカーローカスに指定されたリンカーの幾らか(例えば約10〜約100%)は,一端に標識(例えば,fluor)が取り付けられていることができる。例えば,ローダミン又はCy5 fluorを,リンカーの5'末端に取り付けることができる。このような修飾リンカーを「コントロールリンカー」と称する。リンカーとコントロールリンカーとの混合物をアンカーと会合させ,得られるプローブアレイと標的含有サンプルとをインキュベーションした後は,異なるフルオア(例えばフルオレセイン又はその他の化学ルミネッセント体などのような検出ラベル)を有する標的特異的レポーターを用いることができ(又は標的をフルオア若しくはその他の検出標識で直接的に標識できる);そして,かかる2個シグナルの比率を判定できる。コントロールリンカーの存在は,試験領域内及び試験領域間にある機能的(例えばリンカーとの相互作用が可能であるなど)アンカー数の補正を可能にし(すなわち,シグナル正規化の目的で,アレイの各ローカスが標的に結合する容量をテストし),結合した標的の定量化の基礎として役立ち,アンカーローカスの局在化を助け,及び/又は,例えばサンプルに標的不在のためシグナルがない場合などにおける陽性コントロールを提供する。本発明の一態様において,異なる標識2種(例えば,蛍光色素)もまた,標的分子の2種の異なる母集団を検出するために,使用できる;しかし,シグナルの空間的解像によって標的の存在を認識する性能は,異なる標的分子に対して,1タイプの標識の使用を可能にする。
標識を独立に検出する性能(例えば,フルオレセイン,ローダミンのように識別可能な波長を放射する蛍光標識,又は,異なるアップコンバージョン燐光物質,その他)は,本発明方法に更に追加的な柔軟性を与える。例えば,2個又は3個以上の標的各々を,独自に検出可能なそれ自体の標識で,直接的又は間接的に標識できる。これは,例えば表面に存在する標的の位置を同定すること又は標的が存在するところのビーズの大きさによる同定などに加えて(又は,これらの確認の代わりに),標識に特異的な特徴(例えば,放射の色)に基づく標的の検出を可能にする。本発明の別の態様では,ある領域内の単一のローカスにおいて多数の標的を独立に検出できる。例えば,標的2個又は3個以上(例えば2,3,4,5,6個又は7個以上)を,一群の(実質的に同一の)アンカーで定義される単一のローカス内で検出できる。すなわち,各々が同一のアンカーに特異的なアンカー特異的部分と異なる標的に特異的な標的特異的部分を有する,リンカーのセットを使用できる。そのようなリンカーのセット,例えば4個のセットを使えば,4個とも単一のローカスにおけるアンカー群のそれぞれに結合でき,そのローカスにおいて異なる標的4個の結合が可能になる。これらの各標的を区別可能な異なる標識で(直接又は間接に)標識すれば,研究者はそのローカスにおける標的4種各々の存在を独立に判定できる。それ故,一領域内において例えば5個のアンカー(アンカー群)のアレイを前記シナリオにより用いて,20個もの標的を検出できる。同様に,一の型のアンカーが,単一のローカス内でないが均一に又は所望の様式で,固体表面(例えば,ビーズ又は通過装置のようなもの)の上に分布している時には,複数の(例えば80個又はそれより多くもの)標的を独立に検出できる;例えば,ビーズのサイズや散布度のような別種の側面を用いて,標的の同一性又は標的群に関する情報を取得できる。
標的特異性の異なるリンカー多数(例えば,約2〜約50個又はそれ多い個数の範囲)と与えられたローカス(実質的に同一なアンカー群又は「混合ローカス」)におけるアンカーとの会合は,本明細書において,時々「混合リンカー」と称するものであるが,本発明の別な態様の根拠を形成する。このことは当業者には明白であろう。例えば,与えられたローカスにおいて,アンカーは,様々な保護断片複数に特異的なリンカーの混合物に結合でき,この各保護断片は,目的とする核酸(例えばmRNA)の異なる部分に対応する(特異的である)。あるローカスにおける,このような様々なリンカー複数の存在は,例えばサンプル内に低い存在量で存在する,目的とする標的(例えばmRNA)の検出感度をかなり向上させる。そのローカスを指定するmRNAの様々な部分に対応するリンカーの数が,サンプル内のそのmRNAの存在量に反比例するように(経験的に決定できる様式で),各ローカスを設計できる。例えば,予備実験で目的とするmRNA1個がサンプル内に第二の目的とするmRNAよりも大過剰に存在することが判明すれば,このmRNA2種の異なる部分に対応するリンカーの相対的な数を,各mRNAに対応するシグナルの相対的強度が実質的に同一になるように調整できる。すなわち,第一のmRNAに対応するシグナルが,第二のmRNAに対応するシグナルを圧倒しないように,シグナル強度を調整できる。このようにして,サンプル内に存在する量が極めて異なる複数のmRNAを同時に検出することが可能になるように,各mRNAに対応するシグナル強度をバランスさせて,アッセイを調整できる。
本発明の別な態様では,前記のように,与えられたローカスは,無関係な又は相違する複数の標的又は保護断片に特異的なリンカーを有することができ,これにより,アンカーの単一のアレイでの,非常に多数の標的又は保護断片の検出が可能になる。例えば,350アンカーのアレイを持つ各ローカスが,10個の異なる標的に特異的なリンカーを有すれば,このアレイを用いて3500個もの標的を検出できる。実際,このような配置によれば,低密度の標的を検出できるアレイを,高密度の標的を検出できるものに変換することができる。
単一のローカスに結合した多数の分子(例えば保護断片)は,例えば本明細書のいずれかに記載する検出方法を使用して,順次又は同時に検出できる。(「検出リンカー」及び「レポーター剤」の考察に関しては,例えば,複合体サンドウィッチ型の検出法に関する前記の記載を参照)。一態様において,与えられたローカスにある第一の標的(例えば保護断片)は,例えば第一の検出システム(例えば,検出リンカー/レポーター剤,又は,それに特異的な検出プローブ)で,検出される;次に,第一の検出リンカー/レポーター剤又はプローブを,慣用の操作(例えば,化学ルミネッセントシグナルを発生する酵素を含むレポーター剤をpHを変えて不活性化するなど)を用いて,除去又は不活性化し,また,同じローカスにある第二の検出リンカー/レポーター剤又は第二の標的に特異的な検出プローブを使用して,第二の標的を検出する;及び,同様に,所望の回数反復する。別な態様では,第一の検出リンカー/レポーター剤又は検出プローブを前記のようなコンビネーションに加えるが,これは第二の検出リンカー/レポーター剤又は検出プローブを加える前には除去又は不活性化しない。この態様では,第二の標的に対応するシグナルの量は,第一の標的に対応するシグナルの量を引算することにより,決定することができる。別な態様では,第一及び第二の検出リンカー/レポーター剤又は検出プローブを,前記のようなコンビネーションに実質的に同時に加え,例えば本明細書のいずれかで記載した個別に検出可能な標識を用いて,個々に検出する。本明細書に記載した検出法のいずれにおいても,検出リンカーは,同一又は異なるレポーター剤に特異的な部分を有することができる。例えば,与えられたローカス内で標的4個がリンカーに会合していれば,標的4個の各々に特異的な検出リンカーは,それぞれ異なるレポーター剤に特異的な部分を有することができる。それ故,検出リンカー全4種のセットが標的にハイブリダイズした後に,前記のように異なるレポーター剤4種を使用して,標的を順次又は同時に検出できる。その他の検出法及び前記方法の組合せは,当業者には明白であろう。
勿論,「混合リンカー」は,単一の (非反復の) 領域を含む表面での使用にも有利である。
本発明の別な態様では,目的とする標的に特異的な「アンカー」は,リンカーとは会合しないが,標的と直接的に会合する;この標的は,次には,要すれば,検出リンカー又は検出プローブと相互作用できる。
標的は,標識されていてもいなくても,当業界で日常的で慣用の様々な方法のいずれによっても,検出できる。(例えば, Fodor et al (1996). U.S. Pat. No. 5,510,270; Pirrung et al (1992). U.S. Pat. No. 5,143,854; Koster (1997). U.S. Pat. No. 5,605,798; Hollis et al (1997). U.S. Pat. No. 5,653,939; Heller (1996). U.S. Pat. No. 5,565,322; Eggers et al (1997). U.S. Pat. No. 5,670,322; Lipshutz et al (1995). BioTechniques 19, 442-447; Southern (1996). Trends in Genetics 12, 110-115を参照)。検出法は,酵素に基づく検出法,比色法,SPA,オートラジオグラフィー,質量分析法,電気的方法,吸光度又はルミネッセンス(化学ルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンスを含む)の検出法及びタグとして用いる微視的粒子からの光散乱の検出法を含むものである。また,蛍光標識は,例えば,電荷結合素子(CCD)又は蛍光顕微鏡(例えば走査又は共焦点蛍光顕微鏡)で撮像することによって,又は走査システムをCCDアレイ又は光電増倍管と結合することによって,又はアレイに基づく検出技術を使用することによって,検出できる(例えば,試験領域の各10ミクロン部分の表面電位を検出できるか,又は,解像度を十分に高くできれば表面プラズモン共鳴を使用できる)。あるいは,アレイは,リンカー,標的又はレポーター上の標識へのエネルギー転送(又は標識によるエネルギー調節)によって検出される標識(例えば,フルオレセイン及びローダミンのような,エネルギー転送プローブのペア一つの如きもの)を有することができる。多くの蛍光に基づく検出システムの中には,蛍光強度,蛍光偏光(FP),時間分解蛍光,蛍光共鳴エネルギー転移及びホモジニアス時間分解蛍光法(HTRF)がある。バーコード様の繰り返しパターンの分析は,パターン認識(特定の標識された標的の各々について適した点又は線を,他の点又は線に対するその相対的位置によって見出す)とそれに続く標識強度の定量化によって,達成することができる。バーコード認識装置及び一次元又は二次元アレイを分析するコンピュータソフトウェアは,日常的にに作製されており及び/又は商業的に入手可能である(例えば,Rava et al (1996). U.S. Patent No. 5,545,531を参照)。
検出に使用できる別の方法の一つは二光子蛍光であって,これには,アレイ表面に結合した成分の内在性の又は接合させた蛍光色素の蛍光が,アレイの表面に近接して結合していることによって(例えば,アレイの形成された基質にごく近接していることにより,又は,アンカー若しくはリンカーに含まれ又は結合した複合体に他の形で組み込まれている他の物質にごく近接していることにより),増強されるところの応用例が含まれる。他の蛍光法又は利用法には,蛍光寿命,偏光,エネルギー転移,その他が含まれる。例えば,そのような方法は,同じローカス内にある標的多数の同時検出及び識別を可能とし,場合によっては,結合した標識と非結合標識とを識別することができ,アレイから非結合標識を洗浄除去することが不要になり,このため,急速に可逆的である相互作用又は弱い相互作用のアレイによる測定を容易にする。
本発明のアレイを製造及び使用する方法は,本明細書に記載するような表面又は領域の調製,本明細書に記載するようなアンカー,リンカー,プローブ及びディテクタープローブのような物質の合成又は精製及び取り付け又は会合,並びに,本明細書に記載するような標識又はタグを付けた物質の検出及び分析を含むが,これらはよく知られており,慣用の技術である。前記した文献に記載された方法に加えて,例えば,Affymax, Affymetrix, Nanogen, Protogene, Spectragen, Millipore, Beckman(これら各社から本発明に使用する製品を購入できる)に譲渡された特許;前に引用したものを含む,分子生物学及びタンパク質科学の標準的教科書;及び, Cozette et al (1991). U.S. Pat. 5,063,081; Southern (1996). Current Opinion in Biotechnology 7, 85-88; Chee et al (1996). Science 274, 610-614; and Fodor et al (1993). Nature 364, 555-556 を参照のこと。
本発明の種々の特徴及び付随する利点は,添付された図面と組み合わせて考慮されるときに,より十分に認識され,より良く理解されよう。ここに,類似の参照符号は,いくつかの図を通して,同じ又は類似のパーツを示している。
図1は,生物学的サンプル中の不溶性の標的(例えば,架橋されたRNA)を検出するためのスキームを示している。
図2(A)は,生物学的サンプルにおける遺伝子発現の,定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA)を示している。固定された組織を溶解し,そして,ペレット化された組織切片及び上清における,mRNA含有量を,アレイプレートを使用するqNPAアッセイを使用して,定量化した。凍結した組織サンプルを,陽性コントロールとして用いた。B)は,二番目に溶解したサンプルにおける,ペレットと上清との間におけるRNA含有量の割合を示している。C)は,ホルマリンで固定されパラフィンに包埋された組織における,RNA標的の分析のための,A)の特定の具体例を提供するものである。
図3は,本手法の,組織中のRNA測定への適用可能性を示している。
図4(A)は,FFPE結腸についてのアレイプレートmRNAアッセイの概略図。(B)は,凍結した肝臓及びホルマリンで固定しパラフィンに包埋した切片についての,滴定を示している。代表的な測定結果が,挿入図(右のパネル)に示されている。
図5(A)は,凍結された肝臓及び固定された肝臓における,遺伝子発現の比較を示したものである。パネル(B)は,凍結肝臓とFFPE肝臓の間での,遺伝子発現の相関を示している。
図6は,新たに固定されたサンプル対18年間保存されていた固定サンプルからの,同一性のある定量的結果を表している。
図7は,FFPE肝臓についてのアレイプレートmRNAアッセイの,直線性を示している。
図8は,凍結肝臓対FFPE肝臓における,遺伝子発現の比較を示している。
図9(A)は,FFPE肝臓についてのアレイプレートmRNAアッセイの再現性,及び,凍結サンプル対新たなサンプルに関しての当該アッセイの感度を示している。(B)は,ウイルス核酸の測定におけるqNPA診断法の確実性を示している。
図10は,びまん性大細胞Bリンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)遺伝子発現アッセイにおいて分析された,遺伝子のリストを示している。
図11は,アレイプレートDLBCL遺伝子発現アッセイにおける,遺伝子のレイアウトを示している。
図12は,さまざまな媒体に関してのアッセイの適合性を示している。新たに調製されたサンプル,ホルマリンで固定されパラフィンに包埋されたサンプル,及び,OCT凍結サンプルについて,qNPAアッセイを用いて測定された,種々の遺伝子の発現が,分析された。
図13は,さまざまな遺伝子の発現に関して,新たに調製されたサンプル,ホルマリンで固定されパラフィンに包埋されたサンプル及びOCT凍結サンプルの間の,相互の相関関係を示している。遺伝子発現の分析は,qNPAアッセイを使用して,実行された。
図14は,アレイプレート分析を使用した,臨床生検組織ブロックの試験を示している。4つの異なる生検サンプルは,3つの異なるバイオマーカーを使用して,分析された。
図15は,臨床生検組織ブロックに対しての,アレイプレートmRNAアッセイの再現性を示している。
図16(A)は,アレイ1からの遺伝子発現の結果を示している(図15を参照)。パネル(B)は,4つの生検サンプルにおける遺伝子発現についての,平均正規化シグナルを示している。
図17(A)は,アレイ2からの遺伝子発現の結果を示している(図15を参照)。パネル(B)は,4つの生検サンプルにおける遺伝子発現についての,平均正規化シグナルを示している。
図18は,びまん性大細胞Bリンパ腫サンプルにおける抗原発現についての,免疫組織化学的(IHC)分析を示している(ケース1)。サンプルは,ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で着色されて,HLA―DR,BCL―6,BCL―2,CD―20及びBCL―68の発現に関して,分析された。
図19は,びまん性大細胞Bリンパ腫サンプルの抗原発現についての,免疫組織化学的(IHC)分析を示している(ケース2)。サンプルは,ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で着色されて,HLA―DR,BCL―6,BCL―2,CD―20及びBCL―68の発現に関して,分析された。
図20は,ケース3において,良性反応性リンパ節(LN)の抗原発現についての,免疫組織化学的(IHC)分析を示している。サンプルは,ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で着色されて,HLA―DR,BCL―6,BCL―2,CD―20及びBCL―68の発現に関して,分析された。
図21〜図23は,図18〜図20の結果を要約し,3つの生物学的サンプルにおけるHLA―DR,BCL―6及びBCL―2の発現についての,免疫組織化学的分析(IHC)を示している。IHCの結果は,アレイプレートqNPAアッセイを使用した生検サンプルについての遺伝子発現分析と,相関していた。
図24は,HLA―DR,BCL―6及びBCL―2についての,タンパク質レベルの発現(免疫組織化学によって分析されたもの)とRNAレベルの発現(定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ[qNPA]を使用して分析されたもの)との間の,相関を示している。
図25は,図24の検討を,CD20及びCD3抗原を含むべく,拡張したものである。
図26は,定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(ARRAYPLATE)を誘導遺伝子発現研究に用いた,代表例を提供するものである。リファンピシンによって誘導された,(A)ヒト肝細胞又は(B)イヌ肝細胞における,様々なチトクロームP450アイソフォーム発現の調節は,qNPAアッセイを使用して,測定された。
図27は,拡大された形式のデータを示すことにより,図26の結果を要約するものである。5μMのリファンピシンによって著しく誘導/抑制された遺伝子が,右パネルに示されている。
図28は,カスタム・デザインされたアレイ及びそこに含まれる遺伝子(GenBankのアクセッション・ナンバーと共に)の代表例を示すものである。
図29は,コントロール(無処理)のPC−3サンプル(n=3)及び実験的(クロフィブレートで処理)PC−3サンプル(n=3)における,カスタム・アレイ1及びカスタム・アレイ2からの遺伝子発現の結果を示すものである。
先行技術は,RNAを抽出すること(それを,PCR及びマイクロアレイ法のために,可溶化すること)の必要性に言及するものである。参考文献も,この抽出された可溶性RNAの質が,PCR又はマイクロアレイの結果の質に対して,きわめて重要であることを示している。このように,qNPAは,抽出の必要がないので,ユニークである。
固定された(例えば,ホルマリンで固定された,パラフィンに包埋されホルマリンで固定された,又は,アルコール・ベースの固定液であるプリザーブサイト(preservcyte)で固定された)組織材料を,ヌクレアーゼ保護アッセイを用いて,試験した。しかし,プローブのハイブリダイズ又は結合を標的オリゴヌクレオチドとの結合のために用い,そして定量的な方法で回収させるところのいかなるアッセイも,使用することができるはずである。更にまた,当業者であれば,プローブが生合成的に産生される場合において,架橋したオリゴヌクレオチドを測定するための方法を考えることができるはずである。どのようなタイプの固定液も,標的オリゴヌクレオチドが過度に劣化しない限り,サンプル材料として使用することができる。
組織から抽出されたものでなく(おそらく,架橋されたオリゴヌクレオチド),可溶性でないオリゴヌクレオチドの測定を示すために,サンプルを溶解し,そして遠心分離した。上清をペレットから分離し,そして,ヌクレアーゼ保護プローブを各画分に加え,それらを,後述するプロトコルによって,それぞれ処理した。このアッセイは,定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA)と呼ばれるものであるが,他のハイブリダイゼーション法及び生合成的方法も,生成したプローブを標的オリゴヌクレオチドから分離して測定することができる場合には,使用できよう。このアッセイのための概略図を,図1に示す。
一般的な実験プロトコール
ホルマリン固定組織からの,ペレット化された溶解物と上清についての分析
サンプルを溶解し,遠心分離し,そして,ペレット及び上清からの測定を,マッチさせた凍結サンプルと比較して,行った。ヌクレアーゼ保護アッセイは,RNAが組織から抽出される場合(可溶性)には,それがペレットと会合しているかどうか,またそれが溶解物(架橋されたもの)又は上清から抽出されてないかどうかということに拘わらず,全RNAを測定する。このように,ヌクレアーゼ保護プローブ/標的オリゴヌクレオチドの二本鎖ハイブリッドは,ペレット内で発生する。パネルAはひとつのサンプルを描写し,パネルBは他のものを描写しており,これらは,上清対ペレットにおけるオリゴヌクレオチドの比率が,サンプル毎に変わり得ることを示しているが,しかしそれでも,この方法は, 双方のプールを測定することによって, サンプル中の総オリゴヌクレオチドを測定する。
びまん性大細胞Bリンパ腫の,新しいパラフィン・ブロックと古いパラフィン・ブロックとの間の相関
固定されて18年を経たサンプルと,新たに固定されたサンプル(18年前に元のサンプルが固定された時に凍結された,サンプルのブロックから調製されたもの)から,定量的に同一の結果が得られた。データは,ハウスキーピング遺伝子に対して正規化され,そして,18年間固定されたものについての測定値と新たに固定されたものについての測定値との間のR2相関係数を決定するために,プロットされた。
量的に同一のレベルの遺伝子発現が,固定された組織,新しい組織,及び凍結された組織から測定されることを検証するために,びまん性大細胞Bリンパ腫が用られた。細胞ペレットは,溶解に先立ちOCT中で凍結させられたか,又は,新しいサンプルとして直接溶解されたか,又は,パラフィンに包埋され固定されそして溶解された。固定サンプル対新サンプル,固定サンプル対凍結サンプル,及び,凍結サンプル対新サンプルの間で,R2相関係数を決定するために,データ(ハウスキーピング遺伝子に対して正規化したもの)の対比較法を利用した。このようにして,それぞれの結果は,同一の母集団を分析する場合には,サンプルが新しいものかどうか,凍結されたものかどうか,どのようにテストされたか,あるいは,固定されパラフィンで包埋されたものかどうかに拘わらず,ほぼ一致する。
標的オリゴヌクレオチド測定の特異性
RNAse及びDNAse実験は,アレイプレートがDNAではなく,RNAを検出していることを示している。パラフィンで包埋されホルマリンで固定された組織を,溶解し,95℃で変性し,そして,個々のサンプルに分け,それから,それらサンプルを,DNAse,RNAse又は緩衝液で処理した。この処理の後,サンプルを,DNAse及びRNAseを失活させるために,加熱変性に付し,そして,ヌクレアーゼ保護プローブを追加し,ヌクレアーゼ保護プロトコルを成し遂げた。画像は,無処理のサンプルとDNAseで処理したサンプルとの間で,同一の結果を示し,RNAse処理に起因するシグナルの総減少分は,本プロトコールを用いた場合の,固定組織からのRNAに特異的な測定値を示すものである。
アレイプレート・qNPAヌクレアーゼ保護アッセイによる結果と免疫組織化学による結果との比較
特有の具体例はヌクレアーゼ保護アッセイであり,とりわけ,定量的ヌクレアーゼ保護アッセイである。描写されているのは,可溶性RNAと同様,組織に架橋されていてもよいRNAに対する,ヌクレアーゼ保護プローブのハイブリダイゼーションである。S1での処理は,ハイブリダイズしていないプローブを破壊し,そして,標的オリゴヌクレオチド(架橋したオリゴヌクレオチド及び可溶性オリゴヌクレオチドの両方)の量に比例して,プローブを,化学量論的レベルにまで引き下げる。加熱しながらの塩基の添加により,ヌクレアーゼ保護プローブがオリゴヌクレオチド・テンプレート及び組織から遊離し,当該プローブがプログラムされたアレイプレート上で測定され易くなる。残りのプロトコルは,それぞれの方法についてより詳細に説明したとおり,標準的な方法で実施される。ラット肝臓を半分ずつに切断し,半分は凍結し,半分はホルマリンで固定した。凍結組織を,秤量し,溶解し, そして,テストされるサンプル各々を希釈した。固定されたブロックを,5ミクロンの切片にスライスし,そして,これらは,サンプル当たり,2枚の切片,1枚の切片,1/2枚の切片,又は1/4枚の切片として,試験した。測定は,ヌクレアーゼ保護アッセイを使用して行い,RNAを測定した。測定された遺伝子を示す。測定の再現性は,各遺伝子についての%CV及び全遺伝子についての平均%CVを算出することによって,評価した。
HPV陽性の被検者から膣綿棒を集め,プリザーブサイトに保存した。HPV陽性診断を,PAPスミヤー(PAP smear)及びハイブリッド捕獲試験により,行った。アレイを,ホストRNA,ウイルスRNA及びウイルスDNAを測定するように設計した。ウイルスDNAを,当該遺伝子の非転写部分の配列にハイブリダイズするプローブを使用して,測定した。サンプルは反復してテストし(n=8),当該データは,ハウスキーピング遺伝子に対して正規化しなかった。びまん性大細胞Bリンパ腫組織の実験において測定された遺伝子は,このテーブルにリストされている。当該図に対しては,ここに示されているアレイを使用した。
びまん性大細胞Bリンパ腫(DLBCL)に言及する場合,それはDB細胞株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)であり,それはMHCII−陰性のDLBCL細胞株,又は,DB形質転換体のDB−CIITA−3.1(これは,主要組織適合クラスII遺伝子(HLA−DRA,−DRB,―DPA,及び−DQAを含む)の発現を含むCIITA発現ベクターを含むものである)である(Glinsmann―Gibson(2006))。細胞を,10%ウシ胎児血清を含むRPMIにおいて,4百万/mLの濃度にまで増殖させた。16百万の細胞を,細胞ペレットをつくるために遠心分離し,かかる細胞ペレットは,1)ホルマリン中4時間の固定,ティシューケット(TissueTek)器具上での日常的な一晩の組織処理,及び,パラフィン包埋に付すことにより,ホルマリンで固定されパラフィンで包埋された(FFPE)材料とするか,2)包埋剤(至適カッティング温度すなわちOCT,Sakura Finetechnical Co, Torrance, CA)と共に又はなしにのいずれかで,イソペンタンでクエンチされた液体窒素中急速凍結することにより,急速凍結材料とした。ラット肝臓を,同様に凍結するか,FFPE材料として調製した。
アレイプレートの性能を試験するために使用したFFPE臨床組織は,1つの良性のリンパ節(反応性濾胞過形成)及び2つのDLBCL(1つは胚中心細胞のもの,1つは免疫芽細胞のもの)を含み,それらのためには,急速凍結されたブロック及びFFPEブロックのいずれも複数あった。以前の1989年から急速凍結されていた良性のリンパ組織のブロックを,低温の状態にまで解凍し,直ちに4%のホルマリンで固定することにより,新しいFFPEブロックを作製し,そして,後述するように処理した。組織は,ほぼ5×5×5mmの部分として,固定した。
凍結された切片及びFFPE切片を,5ミクロン迄の厚さで切った。ヌクレアーゼ保護によるアッセイのために,サンプルを,HTG溶解緩衝液(25μL/切片)に入れ,短時間ボルテックスし,95℃で10分間加熱し,再び短時間ボルテックスし,そして,分析の時迄−70℃で凍結した。
アレイプレート・ヌクレアーゼ保護アッセイは,以前に説明されている(Martel, 2002)。要約すれば,細胞又は組織を溶解し,変性し,上記のようにHTG緩衝液中で加熱することによって浸透可能にした後に,凍結サンプルをテストした。しかし,それらは細胞溶解の直後に同様にテストすることができ,そして,プローブは細胞溶解時に添加することができ,又は,サンプルは95℃の加熱ステップの前に凍結することができる。細胞溶解及び加熱の詳細は,測定される標的分子によって,異なり得るものである。例えば,標的オリゴヌクレオチドがDNAである場合には,溶解物を,105℃まで加熱する必要があるかも知れない。当業者であればよく知っている,又は,異なるタイプの標的分子を測定するために若しくは固定された組織から測定活性を回収するために一般的である,他の溶解方法及び破壊方法を使用してもよい。特に,オリゴヌクレオチド標的を測定するためのこれらの実験の場合,目的とする遺伝子に特異的なプローブを,サンプルと共に60℃で6時間インキュベーションして,特異的なプローブ−RNA二本鎖を形成させ,次いで,ハイブリダイズしていないプローブ及びRNAを,S1ヌクレアーゼによって消化した。次に,アルカリ加水分解により,二本鎖からのmRNAを破壊し,それにより無傷のプローブを,最初に存在した特定のmRNAの量に比例した濃度で,後に残した。中和の後,サンプルを検出プレートにハイブリダイズさせた。検出プレートは,96ウェル・プレートのウェルの底面に4×4のグリッドの形にスポットされた,16種の互いに全く異なったアンカーDNAオリゴのセットから形成されるものである。この汎用のアレイを,一方の端に目的とする遺伝子と結合する配列を,そして他方の端にアンカーオリゴの1つと結合する配列を含んだ,16本のリンカー・プローブを付加することによって,目的とする遺伝子用にプログラムした。
ハイブリダイゼーションの後,サンプル・プローブを,リンカー・プローブによって,プレートに結合させた。検出リンカーを追加した(これは,プログラムされたアレイプレートにサンプルを加えるのと同時に,加えることができるものであるが)。この検出リンカーは,一端側に,リンカー・プローブによって結合されていないサンプルプローブの末端側でこれに結合するものである配列を含み,そして,検出プロープに結合する共通の配列を他の一端側に含むものであった。次いで,検出プローブを追加し,それはすべての検出リンカーと結合した。検出プローブは,化学イルミネッセント・ペルオキシダーゼ基質に作用する酵素を含んでおり,最後に追加された。
プレートは,底から,Omix Imagerによって撮像され,各遺伝子についての発現レベルを決定するために,すべての要素について平均ピクセル強度を算出するVuescript(HTG)を使用して,分析された。データが正規化ている場合,その発現レベルは,任意のレベル1000の位置にあるハウスキーピング遺伝子TBPに対して,正規化されものである。
DLBCL実験については,測定された遺伝子は,図10にリストされたものであった。但し,そのデータについて示されているのは,アレイ1及びアレイ2についてである(図16及び図17)。ヒト腫瘍サンプル中の細胞組成物の不均一性のため,我々は,B細胞(CD19,CD20),T細胞(CD3)及び組織球(CD68)に関して腫瘍組成物を調べるべく設計したプローブを含めた。最後に,ハウスキーピング遺伝子として内因的に発現した種々の遺伝子の有用性を評価した,以前に発表された研究に基づいて,2つのハウスキーピング遺伝子,TBP及びPRKG1を選択した。かかる研究は,これら二つの遺伝子が,異なるタイプのリンパ腫において低レベル又は中程度のレベルで非常に安定に発現したものであることを確認するものであった(Lossos, 2003)。これらの2つのハウスキーピング遺伝子は,3つのアレイの各々において繰り返し用いられた。
我々が臨床IHCアッセイをパラフィン中で日常的に実施していたアレイについて,その上に存在する遺伝子のタンパク質生成物につき,IHCを実施した。これらは,CD20,BCL2及びHLA−DRを含むものであった。すべての染色は,Ventana Benchmark XT instrument上で,Ventana I-View detection (Ventana Medical Systems Incorporated, Tucson, Arizona (VMSI) を用いて行った。器具上抗原賦活化を用いた,臨床検査室における標準的な染色手順を使用した。CD20(VMSI, clone L26),BCL2(VMSI, clone B4-2/100/D5)及びHLA−DR(Biogenix, clone LN3)に対して,モノクローナル抗体を使用した。写真撮影は,Labophot-2顕微鏡により,10Xの接眼レンズ及び40X/0.65の対物レンズ(Nikon, Melville, NY)を使用して,実施した。SPOT-RT 2.2.0 カラーカメラ及びSPOT Advanced 4.0.9 ソフトウェア(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)を用いて,画像を捕えデジタル的に得,それらを,以後の処理のために, PowerPoint 10(Microsoft, Redman, WA)に挿入した。
結果:
固定されたサンプルにおいてヌクレアーゼ保護がイン・シチュに進行することを示すために,ホルマリンで固定されパラフィンで包埋された(FFPE)ラット肝臓(5mの切片)を,出発材料として使用した。組織切片を,30μLの溶解緩衝液で処理した。細胞溶解の後,ヌクレアーゼ保護プローブをサンプルに追加し,加熱変性(95℃,10分間)した。サンプルを遠心分離し,上澄を除去した。組織ペレットを,30μLの溶解緩衝液で処理し,ヌクレアーゼ保護プローブと共にインキュベーションした。加熱変性(95℃,10分間)の後,アレイプレートを用いて,ペレット及び上清について,qNPAアッセイを実施し,これにより基質が提供された。凍結組織を,コントロールとして使用した。このアッセイは,ホルマリンで固定された材料からのmRNA抽出に際してのアーティファクトを回避する。
これらの結果を,図2に示す。上清及びペレット化した組織切片を,マッチさせた凍結組織と比較した。この結果は,標的オリゴヌクレオチドをペレットから測定することが可能であることを示す。パネルAにおいて,ルミネッセンス計数値の大部分は,ペレットからであり,上清からではない。これに対して,別のサンプルでは(パネルB),上清から同様に測定された標的オリゴヌクレオチドが,有意なレベルで存在する。この実験において,標的オリゴヌクレオチドはRNAであったが,それは,例えば,DNA,マイクロRNA又はリボソームRNAでもあり得たものである。固定は,オリゴヌクレオチドを,組織に対して架橋させる。ペレットと会合したオリゴヌクレオチドの測定から,架橋したオリゴヌクレオチドは可溶化されることなく,イン・シチュ法で測定するのと同じプールから(そこでは,RNAは,組織において,ラベルされ,視覚化されている)測定されていること,及び,測定値(上清がペレットから分離されていない場合)の合計が,サンプル中の全標的オリゴヌクレオチドの尺度を与えることが,示唆される。パネルAとパネルBでテストされたサンプルの間の違いは,オリゴヌクレオチドの可溶性のものに対する架橋したものの比率が,おそらくはそれぞれの固定のためのプロトコルの違いのために,たとえそれぞれのサンプルが他の点において同一であっても,変化し得るということを示している。このように,架橋したプールのみ又は可溶性のプールのみを測定することは,サンプル中の標的オリゴヌクレオチドのレベルを正確に測定することにならないかも知れない。
パネル(C)は,この研究において使用する実験プロトコルを詳細に記載したものを提供する。結果は,qNPAアッセイにおけるヌクレアーゼ保護ステップはイン・シチュで起こり,一方,検出ステップはエクス・シチュ(ex situ),イン・シチュ又は双方で起こり得ることを示している。
ホルマリンで固定されパラフィンで包埋されたサンプルにおける遺伝子発現の分析
ホルマリンで固定されパラフィンで包埋された結腸組織を,前述のとおり,溶解緩衝液中でホモジナイズし,緩衝液単独,RNAseを添加した緩衝液又はDNAseを添加した緩衝液で処理した。ペレットを,前述のとおり,qNPAアッセイに付した。一つのウェルあたり,ほぼ0.4切片をテストした。これらの研究は,かかる技術を,組織中のRNAの測定に適用可能であることを示している。
この実験の結果を,図3に示す。RNAse処理,それはホモジネートされたサンプルから標的RNAを離脱するものであるが,かかる処理により,サンプルからの生きた標的が減少する結果となる。DNAseによるサンプルの処理は,qNPAアッセイに対して,いかなる重要な影響も及ぼさなかった。定量的ヌクレアーゼ保護アッセイは定量的判定を可能とする
本願明細書において用いられるヌクレアーゼ保護アッセイの定量的性質を評価するために,FFPE切片を,同一の凍結組織に対して,qNPAアッセイを用いて滴定した。RNAを,凍結組織から分離し,スライド上へ乗せた。FFPE切片を,同様の方法で乗せた。FFPE結腸についての,アレイプレートmRNAアッセイの概略図を,パネルAに示す。かかる研究結果は,図4(A)及び(B)に示されているが,凍結組織とFFPE肝臓との間での,遺伝子発現に関わる相関を示している。代表例は,パネル(B)の右側において強調されている。この図から分かるように,さまざまな遺伝子の個々の発現プロファイルは,凍結サンプル又は固定サンプルから確認されるように,相互に視覚的に良く相関している。
更に,様々な生物学的サンプルから得られるこれらの結果を数量化するために,凍結組織切片とFFPE組織切片における,さまざまな遺伝子の発現プロファイルについての回帰分析を実行した。同一セットの遺伝子を,すべてのサンプルに渡り測定し,そして,データを,ハウスキーピング遺伝子に対して正規化し,更に,各対比較におけるR2相関係数を決定するためにプロットした。回帰分析の結果を,図5(B)に示す。2つのサンプルの間に,強い相関(R2=0854)が観察された。これらの結果は,凍結組織と同様,新たに固定された組織からも等価な定量的結果が得られることを本質的に示している。
イン・シチュ・ハイブリダイゼーション(ここに,RNAは,組織において,ラベルされ,視覚化される)によるRNAの測定が,新たに固定された組織を用いるか又は固定され,それから長年にわたって保存された組織を用いるかに拘わらず,いずれもひけを取らないものであるがわかった一方,かかる方法は,典型的には,イン・シチュで実施されないPCR法又はハイブリダイゼーション法のためのものではなかった。このことは,その有用性を制限している。なぜなら,もしそのような制限がなければ,バイオマーカーや標的遺伝子を同定し検証する遡及研究のため,又は,モニタリングアッセイ,予後アッセイ若しくは診断アッセイの開発と検証のため,又は,遺伝子発現に伴う安全性に関連して,又は,疾患プロセスの理解その他のために,利用できるであろう膨大な保管された材料があるからである。18年前に癌患者から得たリンパ節組織がテストされた。その一部は,その時に,組織学的目的のために固定され,そして,他の部分は,組織のブロックとして凍結された。患者は,びまん性大細胞Bリンパ腫に罹っていると診断された。凍結されたブロックの一部は,18年間保管された固定材料と比較するため,新たに固定されたサンプルを提供するべく固定された。各サンプルから,あるセットの遺伝子が測定され,図6に示す結果を得た。ハウスキーピング遺伝子に対する正規化後の,相対的なルミネッセンス値を示している。R2相関係数は0.93であり,本質的に等価な定量的結果が,18年前に固定された組織からと同様,新たに固定された組織からも得られたことが示された。
出発材料の量に対するqNPAシグナルの依存関係を測定するために,遺伝子発現の研究を,前述のとおり,FFPE切片を使用して実施した。サンプルのさまざまな量(それぞれのサンプル量毎に,n=4)から得た,非正規化qNPAシグナルにより,比較を行った。一つのウェルあたり少なくとも0.5のFFPE切片を含むサンプルに対して,サンプルの大きさとqNPAシグナルの間に,比例関係が得られた。これらの結果は,分析された遺伝子の全てにおいて,一貫して観察された。この研究のこれらの結果を,分析された遺伝子のタイプとともに,図7に示す。
新たに凍結された肝臓サンプルとFFPE肝臓サンプルの間において,遺伝子発現レベルを定量的に評価するために,qNPAアッセイを使用して,16の遺伝子の比較分析を実行した。2つのサンプル調製(すなわち,凍結対FFPE)の間における,これら遺伝子大多数の発現プロファイルの違いは,実質的に区別のつかないものであった。この研究の結果を,図8に示す。
本願明細書に記載の方法は,感受性の高い標的オリゴヌクレオチドの測定を可能とする。図9に示されるテーブル(A)は,ヌクレアーゼ保護アッセイによるRNAの測定値を,凍結ラット肝臓の希釈物からのものと,マッチさせたホルマリン固定肝臓サンプルの約5ミクロンの厚さの種々の枚数の切片の希釈物からのものとで,比較している。1枚の組織切片の僅か1/4を使用することで,すべての遺伝子が測定可能であることに注意されたい。加えて,測定値の再現性は卓越しており,測定された全遺伝子を通して,7%という平均CVを与えた。この再現性は,マッチさせた凍結サンプルからの遺伝子測定の再現性と同等であった。最後に,1枚の切片の1/4は,各遺伝子についてもまた全体としても,19μgの凍結組織と同程度の数のルミネッセンス計数値を与え,このことは,この方法を使用した固定組織からのRNAの測定がどれほど高感度であるかの一指標を提供するものである。PCR法及びハイブリダイゼーションに基づく他の方法による固定組織からのRNAの測定は,非常に感受性が低く,大量の組織を必要とすることが,これまで判明している。本ヌクレアーゼ保護法の感度は,おそらく可溶性のプールだけでなく全RNAを測定する結果によるものであり,従って,この同じ感度が,架橋した標的オリゴヌクレオチドを測定するいかなる方法によっても,得られるであろう。
図9の表(B)に示すように,様々な標的遺伝子は,この技術を使用して,確実に検出することができる。測定の再現性は優れたものであり,測定されたすべての遺伝子を通じて,20%未満の平均CVを提供した。
他のヌクレオチド標的種を測定することができ,そして,他のタイプの固定法を用いて固定したサンプルをうまくテストすることができる。テストに先立ち,臨床での膣からのサンプルを集め,プリザーブサイトに保存した。ヌクレアーゼ保護アッセイにより,宿主細胞RNA,ウイルスRNA及びウイルスDNAを測定した。ウイルスDNAを,サンプルに存在するRNAと区別するために,ヌクレアーゼ保護プローブを,当該遺伝子の非転写部分の配列にハイブリダイズするようにデザインした。データは正規化されていない強度であり,8つの複製サンプルの測定から,関連する%CVを決定した。示されているのは,宿主RNA,ウイルスRNA及びウイルスDNAを測定する能力であり,固定サンプルからオリゴヌクレオチド標的の複数タイプを測定することが示されており,他にも,これら標的オリゴヌクレオチドを,同じサンプルから同時にアレイプレートの同じウェルの中で実際に測定する能力が示されている。
これらの図は,可溶性の標的のみならず,架橋したオリゴヌクレオチド標的とも会合するプローブ(それは,切り離され,測定されることができる)を使用した,測定法の概念を表している。具体的な例は,ヌクレアーゼ保護アッセイであり,より詳しくは,定量的ヌクレアーゼ保護アッセイであるが,当業者は,生合成手段によって生成するプローブを又はオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション以外の方法によって会合するかも知れないプローブを利用する方法を含め,架橋されたオリゴヌクレオチド標的について同じ測定結果をもたらす他の方法を考案することができる。示されていることは,標準プロトコルを用いれば,新しい組織又は凍結された組織に対してと同様に,固定組織の中のオリゴヌクレオチド標的を測定できるということである。示されていることは,可溶性RNAと同様,組織に架橋しているかも知れないRNAに対するヌクレアーゼ保護プローブのハイブリダイゼーションである。S1での処理により,プローブは,標的オリゴヌクレオチド(架橋したオリゴヌクレオチド及び可溶性オリゴヌクレオチドの双方)の量に比例して,化学量論的レベルに迄引き下げられる。加熱しながらの塩基の添加により,オリゴヌクレオチド・テンプレート及び組織からヌクレアーゼ保護プローブが遊離し,当該プローブがイン・シチュ法以外の手段により測定され易くなる。しかしながら,かかるプローブ(又は,大きなセットのプローブの中からの一つ又は2〜3のもの)は,最初は,イン・シチュの場合に測定できたはずであることに注意されたい。残りのプロトコルは,それぞれの方法においてより詳細に説明したとおり,標準的な方法によって実施される。
イン・シチュで,そして組織細胞溶解後にという,逐次的なプローブの測定が可能である。一旦過剰なプローブが洗い流されるか,又は,S1ヌクレアーゼで処理した後は,標的に会合したプローブを,例えば蛍光タグ又はルミネッセンスを使用して視覚化し,イン・シチュで定量することができる。もし,これが,一のプローブに対して,又は異なる放射波長を有するプローブの使用等によって区別可能な2若しくは3以上のプローブに対して特異的に実施される場合には,イン・シチュで測定されるこれら標的のレベルは,一のセットの標的に対しての細胞溶解後になされたより大きいセットのプローブについての測定値を,正規化するため又はその解釈を助けるために,用いることができる。このようにして,空間的情報が失われた後でさえ,空間的又は「文脈的」情報は,遺伝子の測定に関連付けることができるものである。プローブが,イン・シチュ測定の前に,単に洗い流される場合においては,プローブは,標的にハイブリダイズしない配列のオーバーハングであって,その代わりオリゴ接合検出プローブと相補的であるものを備えるようにデザインすることができ,そして,当該検出プローブによって標識することができる。あるいは,イン・シチュのプローブは,検出分子で又は検出分子若しくは複合体(例えば,ビオチン)と結合することができる基で,直接標識することができ,そして,洗浄及び/又はS1ステップを,イン・シチュ測定の前に使用することができる。この種の標識は,標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする,ヌクレアーゼ保護プローブの性能には,影響を及ぼさない。
標的オリゴヌクレオチドの測定の前に,サンプルを固定できる能力が有利である例が,数多くある。例えば,血液を直接固定液に集め,各レベルの標的オリゴヌクレオチドを固定し保存する場合,当該サンプルを抜き取った時とそれがテストされる時の間の時間は,より重要でなくなる。取り扱いがより容易になるのである。更に,固定されたサンプルは,例えば濾過など,他の場合には細胞及び組織を損ない又は溶解し,結果として標的オリゴヌクレオチドの変化又は損失に導く可能性のある方法によって処理することができ,サンプル調製を簡単にする。同じことが,多くの種類の細胞,組織又は全生物体サンプルの他,環境サンプルについて,あるいは,サンプルの収集がテストの場所から遠く離れている場合について,当てはまる。
実施例2:臨床研究
びまん性大細胞Bリンパ腫(DLBCL)は,最も一般的な悪性のリンパ腫であり,全リンパ腫のほぼ40%を占める。DLBCLのための,国際的臨床予後指標(IPI)のスコアは,臨床上の特徴に基づいて,患者を,リスク分類に対し層別化するのに役立つ(Shipp, 1993)。しかし,それぞれの分類の範囲内でさえ,患者の結果は様々である。このような患者の予後の多様性のため,DLBCLは実際のところ2つ以上の疾患を含んでいるのではないかと,長く考えられてきた。近年,広範囲な遺伝子発現プロファイリング(GEP)についての実験の結果,DLBCLが一つの疾病ではなく,そして,GEPで定義されたサブタイプの違いが,患者の生存に関連している可能性があることが確認された。異なる3セットの遺伝子が,3つの異なる研究グループの研究に基づいて同定された。
第一のグループは,リンフォチップ(LymphoChip)を使用して,240のDLBCLを,研究した。このチップは,Bリンパ球若しくはTリンパ球によって発現される遺伝子,免疫応答に関係している遺伝子又はリンパ腫及び白血病細胞株によって発現される遺伝子を表すことが知られている多数の要素を含んだ,スポットされたオリゴヌクレオチド・マイクロアレイであった(Alizadeh, 1999)。研究者は,「芽中心」,「主要組織適合抗原(MHC)クラスII」,「リンパ節」及び「増殖」と呼ばれる,患者の生存と高度に相関づけられた,4つの遺伝子発現の印を発見した。これらの4つの特徴からの代表的な遺伝子にBMP6遺伝子を加えたものは,17遺伝子予後予測スコア(17-gene outcome predictor score)(臨床IPIスコアと独立の,付加的な予後評価を提供するもの)をつくるために利用された(Rosenwald, 2002)。他のグループは,アフィメトリクス高密度オリゴヌクレオチド・アレイ・プラットホーム及び管理された学習分類アプローチを使用し,その結果,13の遺伝子のセットを用いた最高精度のDLBCL予後予測スコアを開発した(Shipp, 2002)。他の研究者のグループは,以前報告されたDLBCLにおける生存と極めて関係の深い遺伝子に関する文献の,メタアナリシスを実施した。これらの研究者は,定量的RT−PCRを用いて,一連の66のDLBCLを評価して,6つの最も予測に関係した遺伝子を決定した(LM02,BCL6,FN1,CCND2,SCYA3,及びBCL2)。(Lossos, 2004)2つの遺伝子(BCL6及びFN1)のみが,リンフォチップ(Lymphochip)及びRT−PCRの論文のいずれにおいても確認され,合計34の遺伝子が,DLBCLにおける患者の予後に極めて関係の深いものとして,以前に大いに注目を集めた論文において,確認されていた。リンフォチップのデータ・セットの分析によって,患者の生存と高度に相関づけられた幾つかの酸化還元関連遺伝子が同定され,そして,代表的な遺伝子,マンガンスーパオキシドジスムターゼ及びカタラーゼを含む「レドックス・スコア(Redox Score)」が作成された(Tome, 2005)。これらの4つの論文は全て,DLBCLにおいて生存と相関する遺伝子についての,遺伝子発現キー・セット(gene expression key set)の数量化を使用していた。各々は,一連の特定のケースの結果に対し強い相関を有する,一つの小さな遺伝子セットを見つけ出した。全てが,分析の基礎として,急速凍結された材料に依存した技術を使用していたので,このことが,遺伝子セット間の比較やより広い患者グループへの拡大を困難にした。このように,特にパラフィン包埋サンプルに適用できる方法を用いてのこれら遺伝子セットの比較が,これら予後遺伝子の研究の臨床有用性を決定するにおいての,次のステップである。
定量的ヌクレアーゼ保護アッセイは,mRNAの抽出,続く定量的RT−PCRという困難なステップなしに,mRNAを定量化することを約束するものであるので,従って,ホルマリンで固定されパラフィンで包埋された組織に適用できる可能性がある。この方法は,以前に医薬品への適用に対して記載された,アレイプレート・アッセイに依存するものである(Martel, 2002)。このアッセイにおいては,組織を96ウェル・プレートで溶解する。目的とする遺伝子のためにデザインされたプローブを,特定のプローブ−RNA二本鎖のハイブリダイゼーションを可能とするために,細胞溶解物と共にインキュベーションする。ハイブリダイズしなかったプローブ及びRNAを消化し,そして,アルカリ加水分解を使用してmRNAを二本鎖から切り離し,最初に存在した特定のmRNAの量に比例した濃度で,完全なプローブを放出させる。これら残ったプローブは,それから,第2の96ウェル・プレートへ移し,当該プレートにおいて,リンカー・プローブ及び検出プローブ,並びに,ケミルミネッセント検出,並びに,数量化が使用される。かかるプラットホームは,実施容易であり,高容量のサンプルを扱える可能性がある。
この技術を用いて,全36の遺伝子の他,ハウスキーピング遺伝子及びサンプルの細胞構成の決定を目的とする遺伝子に対しての,アッセイが開発された。(B細胞,T細胞,及びマクロファージ遺伝子)。凍結材料及びパラフィン包埋材料の双方において,このアッセイの性能をテストし評価するためのいくつかの研究が,実行された。Rosenwaldらの論文において以前分析された,DLBCLの症例からのパラフィンブロックは,この技術が予後に重要な遺伝子を同様に定量化することができるかどうか,またこれが患者の予後と相関するかどうかを決定するために,再生利用された。全体の目標は,すべてのDLBCL患者の予後予測のために使用でき,かつ,利用可能な急速凍結組織によってわずかな幸運な場合に限定されることのないアッセイを開発し,検証することであった。パラフィン包埋サンプルに対する凍結サンプルの比較,ほぼ20年経ったパラフィンブロックに対する新しいパラフィンブロックの比較,及び,以前に発行された40人の患者群における結果と患者の死亡に対する危険率の関係についての評価が,実施された。これらの研究は,この分野に対して必然の広範囲に渡る適用と共に,特に保管された材料に適用する場合におけるこの技術の有用性を示している。
患者及び細胞株材料,FFPEブロック及び凍結ブロックの調製:
アレイプレートのデザインを検証するために,MHCII−陰性のDLBCL細胞株である,DB細胞株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を使用した。加えて,最近作成されたDB形質転換体,DB−CIITA−3.1(これには,HLA−DRA,−DRB,−DPA,及び−DQAを含む主要組織適合クラスII遺伝子の発現を含んでいるCIITA発現ベクターが含まれる(Glinsmann-Gibson, 2006))も利用した。当該細胞を,10%のウシ胎児血清を含むRPMIにおいて,1mL当たり,4百万の濃度迄増大させた。16百万の細胞を遠心分離し,細胞ペレットを作成し,それらは,(1)ホルマリン中での4時間の固定,ティシューテック(TissueTek)計測器上での日常的な一晩の組織処理及びパラフィン包埋に付すことによって,FFPE材料とするか,又は,(2)包埋剤と共に又は無しでのいずれかで,イソペンタンでクエンチされた液体窒素中で,急速凍結することによって,急速凍結材料とした(至適切断温度又はOCT,Sakura Finetechnical Co, Torrance, CA)。
アレイプレートの性能を試験するために使用するFFPE組織は,複数の急速凍結ブロックとパラフィンブロックの両方を有しかつほぼ100%の腫瘍を含むものとして,病院コレクションから選択された1つの良性のリンパ節(反応性濾胞過形成)及び2つのDLBCL(1つは胚中心細胞のもの,1つは免疫芽細胞のもの)を含むものであった。新しいFFPEブロックは,以前の1989年から急速凍結された良性のリンパ組織のブロックから,低温の状態にまで解凍することによって作製され,そして,直ちに4%のホルマリンで固定し,かつ,後述するように処理した。図11において,アレイの配置について説明する。
FFPEサンプルについてのアレイプレートの結果が,急速凍結組織からのGEPで発見された結果と十分に類似しているかどうかを調べるために,以前GEPで分析されたサンプルが使用された。かねて,45の急速凍結サンプルが,DLBCLのLLMPP研究に貢献してきた。これらのうち,24は,新規DLBCLにおける患者の生存を反映してOPSの臨床上の有用性を記載した,RosenwaldらのNEJMの論文に含まれるものであった。これらのケースのうち,18のパラフィンブロックにアクセスした。また,LLMPPによってプロファイルされた21のケース(但し,9つの形質転換した及び12の再発したDLBCLケースを含む上記新規DLBCLには含まれないもの)についてのパラフィンブロックが,利用された。
アレイプレートのためのサンプルの調製
凍結切片及びFFPE切片は,5ミクロンの厚さにカットされ,直ちに,ラボ・バッファ(25μL/切片)に入れられ,そして,短時間ボルテックスされ,95℃で10分間加熱され,短時間再びボルテックスされ,そして,−70℃で,分析の時まで,凍結された。アレイプレート上の一つのウェル当たり,組織の1つの切片を使用した。サンプルは,ほぼ5×5×5mmの部分として固定された,切開性パイオプシーからのものであった。パラフィンブロックを薄い切片に切ることは,薄く切られなかったFFPE組織が質の悪い結果を与えたので,重要であった。
アレイプレート・アッセイ
アレイプレート・アッセイは,以前に説明されていたものである(Martel, 2002)。要約すれば,細胞又は組織を溶解した後,変性し,上記のラボ・バッファ中で加熱することによって透過性にした後,凍結サンプルを,分析のため,研究室に送付した。研究室では,目的とする遺伝子に特異的なプローブを,サンプルと共に,60℃で6時間インキュベーションし,特異的なプローブ−RNA二本鎖を形成させ,そして,ハイブリダイズしなかったプローブとRNAを,S1ヌクレアーゼによって消化した。DLBCL遺伝子は,図10の表にリストされている。次に,アルカリ加水分解を利用して,mRNAを二本鎖から切り離し,そして,元から存在する特定のmRNAの量と比例した濃度で,完全なプローブを放出させた。中和の後,サンプルを検出プレートにハイブリダイズさせた。検出プレートは,96ウェル・プレートのウェルの底面に4×4のグリッドの形にスポットされた,一組16のユニークなアンカーDNAオリゴから形成されるものである。この汎用のアレイは,一方の端に目的とする遺伝子と結合する配列を,そして他方の端にアンカーオリゴの1つと結合する配列を含んだ,16本のリンカー・プローブを付加することによって,興味がある遺伝子のためにプログラムされたものである。別々の3セットのリンカー・プローブを,一のアッセイ当たり3つのウェルの割合で,目的とする遺伝子に対して使用した。
ハイブリダイゼーションの後,サンプル・プローブを,リンカー・プローブによって,プレートに結合させた。検出リンカーを追加した。かかる検出リンカーは,一方の端に,リンカー・プローブによって結合されないサンプル・プローブの一端でサンプル・プロープに結合する配列を,及び,他の一端に,検出プロープに結合する普通の配列を含むものであった。それから,検出プローブを追加した。それは,すべての検出リンカーと結合するものであった。検出プローブは,ケミルミネッセント・ペルオキシダーゼの基質に作用する酵素を含むものであり,最後に追加した。
当該プレートを,底から,Omix Imagerによって撮像し,各遺伝子の発現レベルを決定するために,すべての要素について平均ピクセル強度を算出するVuescript(the lab)を使用して,分析した。発現レベルは,任意のレベル1000のハウスキーピング遺伝子TBPに対して,正規化した。
いくつかのウェルは,数個の要素の遺伝子発現がウェル内の残りのスポットのそれから範囲においてはみ出しているスポットを含んでいた。その範囲があまりに高い場合,サンプル・プローブには結合できるがプレートには結合できない検出不能な競合オリゴヌクレオチドの既知量を用いて,シグナルを減じた。その範囲があまりに低い場合,その同じ遺伝子に対する複数のサンプル・プローブ(サンプルRNAと結合する部分に関しては異なる配列を,そしてリンカー・プローブと結合するためには同じ配列を有するもの)を用いて,シグナルを増加した。
遺伝子の選択
導入部の最後のパラグラフで説明したように,DLBCLについての4つの著名な以前の論文において,予後的に重要であるとして同定された,鍵となる遺伝子を使用した。これらの遺伝子は,興味がある36の遺伝子から成るものであった(Lossos, 2004; Rosenwald, 2002; Shipp, 2002; Tome, 2005)。ヒト腫瘍サンプル中の細胞構成物の不均一性のため,B細胞(CD19,CD20),T細胞(CD3)及び組織球(CD68)に対して,腫瘍構成物を調べるようにデザインされたプローブが,含められた。最後に,ハウスキーピング遺伝子として内因的に発現した種々の遺伝子の有用性を評価した,以前に発表された研究に基づいて,2つのハウスキーピング遺伝子,TBP及びPRKG1を選択した。かかる研究は,これら二つの遺伝子が,異なるタイプのリンパ腫において低レベル又は中程度のレベルで非常に安定に発現したものであることを確認するものであった(Lossos, 2003)。これら二つのハウスキーピング遺伝子は,アッセイを構築するために使用された各々3つのウェルで,繰り返し使用された。オリゴdTプローブを,サンプル中のmRNAの量を評価するために,追加した(なぜなら,オリゴdTプローブは,ポリ−A・テールをもつ,すべてのmRNAを検出するからである)。しかし,技術的な理由のために,このプローブは,機能せず,更に利用されなかった。シトクロムオキシダーゼ・プローブも初めから含めた。なぜなら,それはミトコンドリアDNAにコードされており,高いレベルで発現される筈だからである。これは,DNA及びRNAの双方に結合することが明らかとなり,そのため極度に明るいかつ概して過飽和のシグナルを与えたため,アッセイのための材料が不十分でなかったかを,又は,材料が完全に消えた場合においては,サンプルが使用するにはあまりに劣化したものでなかったかを判別するために使用できた場合を除き,更に考慮しなかった。これらの遺伝子を,図10の表に,一覧として示す。
免疫組織化学及び写真撮影(IHC)
アレイ上に存在する遺伝子についてのタンパク質生成物について,IHCを実施した。臨床IHCアッセイは,これらの遺伝子に対して,日常的に実行されてきた。これらは,CD20,CD3,CD68,BCL2,BCL6及びHLA−DRを含むものである。すべての染色は,Ventana I-View検出器(Ventana Medical Systems Incorporated, Tucson, Arizona)(VMSI)を備えたVentana Benchmark XT装置で行った。器具上抗原賦活化を伴う標準的な臨床検査室における染色手順を使用した。モノクローナル抗体を,CD20(VMSI, clone L26),CD3(VMSI, clone PS1),CD68(VMSI, clone KP1),BCL2(VMSI, clone B4-2/100/D5),BCL6(clone IG191E/AB)及びHLA−DR(Biogenix, clone LN3)に対して使用した。写真撮影を,ラボフォト−2(Labophot-2)顕微鏡上で,10Xの接眼レンズ及び40X/0.65の対物レンズ(Nikon, Melville, NY)を使用して実施した。SPOT-RT 2.2.0 カラーカメラ及びSPOT Advanced 4.0.9 ソフトウェア(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)を用いて画像を捕え,デジタル的に得た。そして,それらを,以後の処理のために,パワー・ポイント10(PowerPoint 10)(Microsoft, Redman, WA)に挿入した。
統計的方法
遺伝子発現についてのアレイプレート及びアAffymetix/Lymphochip分析の双方からの結果を用い,上記18のケースについて統計分析を実施した。試験した3つの方法のそれぞれの対比較についてのスピアマン順位相関係数を,各遺伝子つき求めた。所定の比較に関し,10より少ない利用可能な測定値を用いた分析は,検出力を考慮し,実施しなかった。各対比較に利用できた遺伝子の間の中央値の全体的な相関を計算した;バイアスを避けるために,3つ全ての対比較ついてのデータが利用できる遺伝子だけを含めた。全体的生存率についてアレイ・プレートで測定された遺伝子発現についての,一変量解析結果(危険率,95%の信頼区間,及び,p値)を,コックス回帰モデルから得た(Cox DR. Regression models and life tables. J Royal Stat Soc B. 1972;B34:187-220.)。
びまん性大細胞Bリンパ腫(DLBCL)細胞における,遺伝子発現についての臨床実験を,図12−図25に示す。
結果
凍結組織についての試験の性能,及び,FFPEとの比較:
興味がある全44の遺伝子について,適切で特異的なプローブ及びリンカー・プローブをデザインすることができた。8つの遺伝子については,検出不可能な競合するオリゴヌクレオチドによって,シグナルが低下されなければならなかった。4つの遺伝子については,複数のプローブの追加的定量によって,シグナルが,示されたように増強されなければならなかった。2つのハウスキーピング遺伝子,PRKG1及びTBPの間で,TBPは,より強くかつより均一なルミネッセンスの結果を示した。従って,すべてのデータを,人為的に1000にセットしたTBPに対して,正規化した(データは示していない)。アッセイ性能は,0.125mgのサンプル/ウェルまで,直線的であった。RNAse及びDNAse処理は,このアッセイがRNA検出に対してだけ特異的であることを示した。上清及び細胞溶解物のテストは,RNAが組織から抽出されなかったことを決定付けた(細胞溶解物を使用した場合のみの陽性結果)。このことは,おそらく,組織からのRNA抽出の必要がなかったので,凍結組織及びFFPE組織の間の良好な相関を説明するものである。凍結された良性のリンパ節についての4通りの実験に対してのCVは,8〜15%まで変動した(データは示していない)。異なるタイプの組織調製の間における比較は,細胞溶解物対急速凍結(R2=0.989),急速凍結対FFPE(R2=0.991),細胞溶解物対FFPE(R2=0.994)についてが優れていた(データは示していない)。
RT−PCR及びIHCに対するアレイプレート技術の検証:
アレイプレートの結果は,定量的RT−PCRによって示されたとおり,DB細胞株形質転換体クローン1〜5における,HLA−DRA,HLA−DRB,HLA−DQA及びHLA−DPAに対してのmRNAの増加を,正確に反映したものであった(データは示していない)。これら包埋細胞株のFFPEについての,4通りの実験からの係数の変化は,7〜9%に及んだ(図4A)。アレイプレートの結果は,予後的に重要な遺伝子と遺伝子産物についての,免疫組織化学的染色パターンとよく相関した(図5A〜図5D)。
同じサンプルについての,新しいパラフィンブロックと保存されたパラフィンブロックとの間における相関:
同じ生検からの,新しいパラフィンブロック対古いパラフィンブロックとの間における相関は,非常に良好だった(図4B)。新規なパラフィンブロックは,生検時に凍結した急速凍結組織からとり,素早く解凍し,ホルマリン中で固定し,包埋した。結果を,当該患者の18年前の手術時の同じ生検から製造された,姉妹パラフィンブロックと比較した。かかる結果は,このアッセイを非常に古い保存材料に対して適用可能であることを示している。
異なるmRNA定量化技術の間における相関
保存されたFFPE・DLBCLについての更なる40のケースを,アレイプレート分析により分析した。39のケースは,うまく分析された。1つのケースは,シグナルを全く発しなかった。ポリTプローブを用いたイン・シチュ・ハイブリダイゼーションは,このケースが完全なmRNAを全く有していなかったことを示した。残りの39のケースについての結果は,表2に示すように,スピールマン順位統計(Spearman Rank Statistics)を用いて,以前のアフィメトリクス(Affymetrix)及び競合的GEPアレイの結果と比較した 。すべてのプラットフォームについてすべての遺伝子の結果が利用可能であるというわけではなかったので,当該表に示されるとおり,不足データがかなりあった。アレイプレート対アフィメトリクスについての中央値の相関は0.52であり, アレイプレート対リンフォチップでは0.55,そして,アフィメトリックス対リンフォチップでは0.78であった。最後の相関は,当然に高いものであった。なぜなら,これら2つの分析は同じ凍結ブロックに由来するRNAの一部について実行されたものであったのに対し,アレイプレート分析は異なるブロック(同じ標本からではあるものの)について実行されたものであったからである。全体として,この種の技術に対して,これらは優れた相関である。
他のGEP技術と比較してアレイプレートにより評価されるところの,予後的遺伝子に対する危険率
44の遺伝子についての結果を,アレイプレートを使用してうまく分析された39のケースに対して,生存について比較した。最初に,遺伝子発現レベル対患者の生存についての,一変量分析を実施した。しかし,いずれの遺伝子も生存と有意に相関しておらず,それは,この研究グループにおける症例数の少なさに起因していた(これらの遺伝子の全てが,より大きい患者群の生存と関連していたからである)。各々の遺伝子についての,死亡の危険率を算出した。危険率>1に対しては,死亡リスクの上昇があり,危険率<1に対しては,死亡リスクの低下がある。それぞれの遺伝子に対して,これらの危険率は,通常,その重要性が引き出されるところのより大きいデータセットにおいて傾くのと同じ向きに,傾く。一致についての比較(1より大の又は1より小の危険率に対する結果)を実施した。アフィメトリクス・データ対リンフォリップ・データの比較に関して,2つの方法は,33のうちの29の遺伝子(88%)に対して一致し,アレイプレート対アフィメトリクスに関しては,2つの方法は,40のうちの30の遺伝子(75%)に対して一致し,アレイプレート対リンフォチップに関しては, 34のうちの27の遺伝子(79%)に対して一致している。
しばしば,遺伝子発現についての定量的測定値は,そのタンパク質生成物のレベルについての測定値に対して,うまく相関しない。この図は,全RNAが測定(この場合ヌクレアーゼ保護によって)される場合のホルマリン固定組織からの遺伝子発現の測定値が,免疫組織化学的方法によりイン・シチュで測定されたタンパク質生成物のレベルに対して,量的に相関する結果を与えることを示している。びまん性大細胞Bリンパ腫又は良性の活動性リンパ節と診断された3人の患者からの固定組織サンプルを,ヌクレアーゼ保護アッセイで測定した。3つの遺伝子(HLA−DR,Bcl2及びCD20)のレベルが,棒グラフで表されている。それぞれの患者に対して,これらの遺伝子のタンパク質生成物を,免疫組織化学(IHC)により測定した。染色されたスライドを,各タンパク質標識の相対的な定量レベル(高い発現,中程度の発現,低い発現)と共に示す。IHCタンパク質レベルが,遺伝子発現レベルに対して,相関したことに注意されたい。びまん性大細胞Bリンパ腫の診断は,組織学及びイン・シチュ測定に基づくものである。これらのデータは,それが,空間的関係は失われているものの,総オリゴヌクレオチド・レベルを定量的に測定するものであるアッセイを使用して組織から測定された遺伝子発現レベルに基づくことができるものであること,あるいは,そのような方法を使用して付加的な予後情報や診断情報が得られることを,示唆している。
実施例3:研究及び/又は診断における,qNPA技術の利用
本発明は,基礎的な科学研究のために,及び,診断法への応用において,利用することができる。例えば,遺伝子/タンパク質の発現における薬物誘発による変化は,本明細書で先に記載した方法を使用して,日常的に分析することができる。以下に,代表的な実施例を,記載する。
リファンピシンによって媒介される,遺伝子の調節
リファンピシン(既知の肝毒性効果を有する抗生物質)による遺伝子発現の調節を,上述されたqNPAの技術を使用して,分析した。ヒト又はイヌの初代肝細胞を,0〜10μMのリファンピシンと共にインキュベーションし,さまざまな代謝酵素の転写一次産物のレベルを,qNPAを使用して分析した。これらの結果を,図26〜図27に示す。
図26のパネル(A)に示されるように,これらの遺伝子発現研究は,リファンピシンによる酵素誘導の薬理学的測定(例えば,EC50のレベル)に関する手段を提供する。加えて,ヒト・サンプル及びイヌ・サンプルにおいて,比較研究を実施できるかも知れない。ヒトにおいては,チトクロームP450酵素の,Cyp3A4,Cyp2C9,Cyp2B6,GSTA2及びSULT2A1が,リファンピシンによって誘導された。Cyp2D6及びPXRは抑制され,薬物副作用を示した。しかし,これらの酵素の抑制は,50%未満だった(図27のパネルA)。
イヌ肝細胞においては,Cyp1A1,Cyp2D15及びCyp2A337の遺伝子が,上方制御された。しかし,ヒト細胞とは異なり,リファンピシン処理は,結果として,分析されたいかなる遺伝子の抑制にもならなかった。これらの結果を,図26及び図27のパネル(B)に示す。
前述の説明から,当業者は,本発明の本質的特質を容易に確認することができ,その趣旨及び範囲を逸脱することなく,さまざまな使用及び条件に適応させるために,本発明の変更と修正を行うことができる。
当業者は,前述の記載を使用することで,更なる詳述なしに,本発明を最大限に利用することができると信じる。従って,前述の好ましい特定の具体例は,単に例示的なものであって,その余の開示についていかなる方法においても何ら制限的でないものとして,解釈されるべきである。
前述及び実施例において,特に明記しない限り,すべての温度は,訂正されていない摂氏度で示され,そして,すべての部及びパーセントは,重量で示されている。
前述の実施例は,一般的若しくは具体的に記載されている本発明の反応物及び/又は操作条件を,前述の実施例において使用されたものと置換することによって,同様の成功と共に反復することができる 。
上記及び図で引用されたすべての出願,特許及び刊行物,並びに,対応する2007年3月30日に出願した米国仮出願第60/920,814号及び2008年1月3日に出願した米国仮出願第61/018717号のすべての記載は,参照により,本明細書に組み入れられた。

Claims (31)

  1. 生物学的サンプル中の少なくとも一つの固定された及び/又は架橋されたものである核酸標的を検出する方法であって,
    (i) 該サンプルを,該核酸標的と特異的に結合する一本鎖DNA(ssDNA)である核酸分子を含んでなるヌクレアーゼ保護分子(NPM)の少なくとも一つと接触させること,
    (ii) 該サンプルを,如何なる未結合NPMをも除去するのに有効な条件下,1又は2以上の試薬に曝すこと,
    (iii) 結合したNPMを該核酸標的から分離すること,及び次いで
    (iv) 該NPMの存在を検出すること,
    を含んでなるものである,検出方法。
  2. 核酸標的がリボ核酸(RNA)分子若しくはデオキシリボ核酸(DNA)分子を含むものである,請求項1の方法。
  3. 該RNA標的がメッセンジャーRNA(mRNA),リボソームRNA(rRNA),トランスファーRNA(tRNA),マイクロRNA(miRNA),siRNA,及びアンチ−センスRMA,又はウイルスRNA(vRNA)である,請求項の方法。
  4. 該DNA標的がゲノムDNA(gDNA),ミトコンドリアDNA(mtDNA),葉緑体DNA(cpDNA),ウイルスDNA(vDNA),又は形質転換DNAである,請求項の方法。
  5. ステップ(ii)が,如何なる未結合のNPMをも除去する効果を有するヌクレアーゼによる処理を含むものである,請求項1の方法。
  6. ヌクレアーゼがS1ヌクレアーゼである,請求項の方法。
  7. 該生物学的サンプルが固定されたものである,請求項1の方法。
  8. 該固定が,該サンプルをエタノール,ホルマリン,又はジチオ−ビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)で処理することを含んでなるものである,請求項の方法。
  9. 該核酸標的が架橋されたものである,請求項1の方法。
  10. 該核酸標的が,スベリン酸ビス[スルホスクシンイミジル](BS3),スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS),グルタル酸ジスクシンイミジル(DSG),酒石酸ジスクシンイミジル(DST),グルタルアルデヒド,又はそれらの誘導体で架橋されたものである,請求項の方法。
  11. 固定された組織サンプル中の少なくとも一つの固定された及び/又は架橋されたものである核酸標的を検出するための方法であって,
    (i) 該サンプルを,該核酸標的と特異的にハイブリダイズする核酸分子であるヌクレアーゼ保護分子(NPM)の少なくとも一つと,該核酸標的の該NPMへの結合を促進するのに十分な条件下,接触させること,
    (ii) 該サンプルを,如何なる未結合のNPMをも除去するのに有効な条件下,1又は2以上のヌクレアーゼに曝すこと,
    (iii) 結合したNPMを核酸標的から且つ組織から分離すること,及び次いで
    (iv) 上記NPMの存在を検出すること,
    を含んでなるものである,検出方法。
  12. 請求項11の方法であって,ステップ(i)において,該サンプルを該ヌクレアーゼ保護分子(NPM)の少なくとも一つの過剰量と接触させるものであり,及びステップ(iv)において,上記NPMの存在の検出により,該固定されたサンプル中の該少なくとも一つの該核酸標的が定量されるものである,定量方法。
  13. 核酸標的が架橋された核酸である,請求項12の方法。
  14. 該核酸が架橋されたmRNA,miRNA,又はvRNAである,請求項13の方法。
  15. 該NPMがssDNAである,請求項12の方法。
  16. 該1又は2以上のヌクレアーゼがS1ヌクレアーゼを含むものである,請求項12の方法。
  17. 検出の前に,結合したNPMを増幅することを更に含んでなるものである,請求項12の方法。
  18. 結合したNPMを該核酸標的から切り離すために塩基及び/又は熱を使用することを更に含んでなるものである,請求項12の方法。
  19. 該核酸標的が該サンプルから抽出されることなしに検出されるものである,請求項1の方法。
  20. 該核酸標的が可溶化されることなしに検出されるものである,請求項1の方法。
  21. 該核酸標的をテンプレートとして用いて該NPMを生合成的に産生することを更に含んでなるものである,請求項1の方法。
  22. 該核酸標的上で該NPMを構築することを更に含んでなるものである,請求項1の方法。
  23. NPMを,該NPM又はその一部と特異的に結合するプローブを用いて検出することを含んでなるものである,請求項1の方法。
  24. NPMを,該NPM又はその一部と特異的に結合するプローブを用いて検出することを含んでなるものである,請求項11の方法。
  25. NPMを,該NPM又はその一部と特異的に結合するプローブを用いて検出することを含んでなるものである,請求項12の方法。
  26. 該NPMが,8〜50ヌクレオチドの長さのものである,請求項1の方法。
  27. 各々異なる核酸標的に対して特異的である少なくとも二つのNPMを含むものである,請求項1の方法。
  28. 複数のサンプルに対して行われ且つ該複数のサンプルの各々おいて少なくとも二つのNPMが検出されるものである,請求項27の方法。
  29. 少なくとも一つのNPMがmiRNA標的に特異的であり且つ少なくとも一つのNPMがmRNA標的に特異的である,請求項27の方法。
  30. 該生物学的サンプルがホルマリン固定組織を含むものである,請求項27の方法。
  31. ステップ(i)に先立って緩衝液にサンプルを懸濁させることを含むものである,請求項1の方法。
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