JP5719171B2 - 内皮細胞移植、特に膵島移植による糖尿病の処置におけるアジュバント活性を有する医薬を調製するための微小胞(mv)の使用、および関連方法 - Google Patents

内皮細胞移植、特に膵島移植による糖尿病の処置におけるアジュバント活性を有する医薬を調製するための微小胞(mv)の使用、および関連方法 Download PDF

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Description

本発明は、概して、内皮細胞−膵島移植の分野の範囲内にあり、特に膵島移植によるI型およびII型糖尿病の治療的処置に関する。
近年、膵島移植は、ラパマイシンに基づくグルココルチコイドを用いない免疫抑制レジュメ導入後に、およびその分離技術の改善後に、I型およびII型糖尿病の処置に対する注目の治療選択肢となってきた(1−3)。しかしながら、いまだに大きなパーセンテージで、移植された膵島は、門脈内投与後の肝臓への移植片生着に失敗し、結果として、代謝上の利益を得るのに十分な量の膵島を確保するため、複数の提供者からの膵臓が必要である。
この手順の成功を高めるために、移植された膵島の機能および生存を増強できる因子を特定する必要があろう。
1.Shapiro AM, Lakey JR, Ryan EA et al. Islet transplantation in seven patients with type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid-free immunosuppressive regimen. N Engl J Med 2000; 343: 230−238. 2.Biancone L, Ricordi C. Pancreatic islet transplantation: An update. Cell Transplant 2002; 11: 309−311. 3.Ricordi C, Lacy PE, Scharp DW. Automated islet isolation from human pancreas. Diabetes 1989; 38(Suppl 1): 140−142.
内皮前駆細胞(EPC)は、膵島損傷に応答して膵臓に動員されることが知られており、また、EPCに媒介される膵臓の新血管形成により、損傷を受けたβ細胞の回復が促進され、膵島の同種移植の機能を改善しうることもまた知られている(4,5)。しかしながら、細胞移植におけるEPCの使用は、幹細胞ゆえの潜在的な腫瘍形成の危険性を考慮すると、妥当ではない。
本発明において、内皮細胞系の細胞、好ましくは内皮前駆細胞(EPC)に由来する微小胞(MV)が、膵島移植によるI型およびII型糖尿病の治療におけるアジュバント因子として、丸ごとの幹細胞に勝る有利な代替手段を示すことが今回見出された。
本明細書で用いられる表現「内皮細胞系の細胞に由来する微小胞(MV)」は、細胞外膜との融合の際に、少なくとも一部が内皮細胞系の細胞のエンドソーム区画から得られる膜形成性の粒子(membranaceous particle)を意味する。
内皮細胞系の細胞、好ましくはEPCに由来する微小胞は、概して形は球形であり、直径は100nmから5μmの範囲にあり、より典型的には約1μmである。その粒子の形が球状でない場合、上記の値はその粒子の最も長い方向の大きさを意味する。
表現「内皮細胞系の細胞」は、成熟した機能性の内皮細胞に分化できる骨髄由来の一般的な造血前駆細胞から得られる細胞を意味する(6)。
内皮細胞系の細胞、例えばEPCは、密度勾配遠心分離(density centrifugation)により末梢血から都合よく分離され、内皮細胞増殖因子が補充されたEBM−2(内皮細胞基本培地(endothelial basal medium))などの培地に撒かれる(2007年3月29日にオンラインで予め公開された、Deregibus M Cら、Blood. 1 Oct 2007;110(7):2440-8)。次いで、微小胞(MV)は、Deregibus, 2007記載のように超遠心分離により、および本明細書の実施例のように、分離されたEPCの上清から得ることができる。
次いで、単離されたMVは、非常に低温、典型的には−80℃で、1個または複数の凍結防止剤を含む懸濁液にて冷凍することで使用するまで保存できる。好ましい凍結防止剤は、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)およびグリセロールがある。細胞懸濁液容量の10%濃度のDMSOの使用は、細胞のよりよい保存および再注入される患者における限定的な毒性効果をもたらす。言及されうる別の物質は、細胞外凍結防止剤、すなわち細胞表面で作用し細胞内の脱水を軽減する強固な障壁を形成する高分子量の物質である。ヒドロキシエチルスターチ(Hydroxyethylic starch)が一例として言及されうる。
EPC由来のMVは、本発明者らにより、試験管内(インビトロ)および生体内(インビボ)、SCIDマウスにおける皮下膵島移植の実験モデルの両方で試験された。SCIDマウスは、T細胞とB細胞を産生できず、結果として、感染に対抗することおよび移植された組織を拒絶することができない。
本明細書の実施例でさらに詳細に記載され、本発明者らにより実施された実験は、EPC由来のMVが内皮細胞−膵島移植者に、特に膵島移植者に投与された場合に、それらが移植された内皮細胞の生存および機能を改善するという点で、移植のアジュバント因子として作用することを示した。より詳細には、本発明者らは、MVが内皮細胞による血管形成および毛細管様構造物の形成、ならびに膵島β細胞からのインスリン分泌および内皮細胞の応答、アポトーシス耐性および遊走を促進できることを観察した。最も重要なことに、上記MVのアジュバント効果は、膵島移植の基本的な免疫抑制剤であるラパマイシンの治療用量を用いたインキュベーションによっては完全に阻害されない。このことは、ラパマイシンが、膵島内皮細胞において、血管形成阻害だけでなくリンパ球接着および活性化に関与する受容体のダウンレギュレーションを通じた同時の免疫調節効果の誘導を示すという2重の効果を発揮することが知られていたため(7)、非常に驚くべきことであった。
従って、本発明の1つの態様は、内皮細胞移植におけるアジュバント活性を有する医薬を調製するための、内皮細胞系の細胞、好ましく内皮前駆細胞(EPC)に由来する微小胞(MV)の使用である。
本発明の他の態様において、膵島移植によるI型またはII型糖尿病処置におけるアジュバント活性を有する医薬を調製するための、内皮細胞系の細胞、好ましくは内皮前駆細胞(EPC)に由来する微小胞(MV)の使用である。
実施例で実際に示されるように、微小胞のアジュバント活性は、移植された膵島および内皮細胞の生存および機能の改善である。
さらに、上記のようにMVのアジュバント活性は、免疫抑制剤としてのラパマイシンの治療用量の投与により無効とされない。結果として、本発明に用いられるMVは、ラパマイシンと併用されうる膵島移植の枠組みの範囲内で、アジュバント試薬として用いられる。表現「併用」は、MVとラパマイシンが一緒に混合されていることを必ずしも必要とする意味でもなく、それらが必ず同時に投与されなければならないことを意味するものでもない。表現「併用」は、単純に、MVが膵島移植者に投与されることを意味し、該受容者が、移植前におよび/またはその間におよび/またはその後にラパマイシンに基づく免疫抑制を受ける工程を少なくとも1回含む膵島移植の手順の枠組みの範囲内で、好ましくは膵島自体と一緒に、そして一般的には静脈内注射により投与されることを意味する。この内容において、ラパマイシンは、概して、ヒト膵島移植後の最初の週に12ng/ml〜15ng/mlのレベルで膵臓に到達するように用いられる(1)。
上記のように、MVは静脈内注射により投与されてもよいし、概して、MVは膵島と一緒に投与される。門脈は、好ましい注射部位である。膵島は、典型的には、受容者に注射される前にMVとともにあらかじめインキュベートされる。投与されるべき好ましいMVの用量は、多くの要因に依存するが、概して、ヒトに対しては受容者の体重1Kgあたり0.1μg〜10μgの間にあり、好ましくは受容者の体重1Kgあたり1μg〜5μgを含む。
本発明の他の態様は、内皮細胞系の細胞、好ましくは内皮前駆細胞(EPC)に由来する微小胞(MV)をそのような処置を必要とする対象に投与することを含む、内皮細胞移植の方法である。好ましくは、対象はヒトである。MV投与の結果得られる主な利点は、移植された内皮細胞の生存および機能が改善されることである。
本発明のさらなる別の態様は、内皮細胞系の細胞、好ましくは内皮前駆細胞(EPC)に由来する微小胞(MV)を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、膵島移植によりI型およびII型糖尿病を処置する方法である。好ましくは、対象はヒトである。MV投与の結果得られる主な利点は、膵島のβ細胞によるインスリン産生が改善されること、および膵島の生着が向上されることである。I型およびII型糖尿病を膵島移植により処置するために、膵島は受容者の肝臓に移植される。
以下の実施例は、単なる例示として提供される。
図1は、EPC由来のMVによる、膵島でのカスパーゼ3活性の変化を示す。 図2は、EPC由来のMV存在下または非存在下での、SCIDマウスにおける膵島異種移植片の総数および領域の計数を示す。 図3は、IECにおける試験管内での血管形成のEPC由来のMVの用量依存的な効果およびMV誘導性の血管形成におけるラパマイシンの効果を示す。 図4は、IECにおけるEPC由来のMVの増大する用量により誘導される用量依存的な増殖効果を示す。 図5は、無血清条件下で培養されたIECのEPC由来のMVの用量依存的な遊走効果、およびラパマイシンのMV誘導性の運動性における効果を示す。 図6は、無血清条件下で培養されたIECにおけるEPC由来のMVの用量依存的な抗アポトーシス効果、およびMV誘導性のアポトーシスからの救出におけるラパマイシンの効果を示す。 図7は、EPC由来のMVによる、IECにおける遺伝子アレイ分析の結果を示す。
(材料および方法)
ヒト膵島および内皮細胞の分離
不十分な膵島量のために移植使用から除かれる新しい純化ヒト膵島の10個の異なる調製物を、リカルディ(Ricordi)法(3)に従って調製した。純化膵島(>90%純度)は、5mg/mLのアルブミン(Kedrion Spa, Lucca, Italy)および2mMのグルタミン(GIBCO BRL, Gaithersburg, MD)を含むCMRL培地(Mediatech Inc., Herndon, VA)中で培養した。
ヒト膵島内皮細胞系(IEC)は、以下のように調製した。簡単には、膵島から出現する(outgrowing)細胞を、トリプシン/EDTA処理により取り出し、SV40−Tラージ抗原遺伝子を含む4mgのpBR322プラスミドベクターを用い、エレクトロポレーターII(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)にて4mmのエレクトロポレーションキュベット中、250mVおよび960mFにてトランスフェクトした。クローンは、1mg/mLのG418耐性について選択され、内皮細胞マーカーの免疫蛍光およびFACS発現についてスクリーニングされた。陽性クローンは、限界希釈法によりさらにサブクローニングされ、10%FCS(Hyclone, Logan, Utah)、2mMのグルタミン(GIBCO BRL)および内皮細胞増殖因子(10ng/mLのVEGF、10ng/mLのbFGF、10ng/mLのPDGFおよび0.5U/mLのヘパリン)を含むRPMI(Sigma)中で培養された。
ヒト内皮前駆細胞の分離
ヒト内皮前駆細胞(EPC)は、健康な提供者のPBMCから密度勾配遠心分離により分離された。純化細胞は、5%FCSおよび内皮細胞増殖因子(10ng/mLのVEGF、10ng/mLのbFGF、10ng/mLnPDGFおよび0.5U/mLのヘパリン)が補充された培地中、フィブロネクチン被覆された培養フラスコに撒かれ、既報のように(8)、特性評価された。5回〜10回継代したEPCを本研究に用いた。
EPCからの微小胞(MV)の分離および特性評価
MVは、既報のように(Deregibusら、Blood, 2007)、EPCの上清から得た。簡単には、残骸を取り除くために2,000gにて20分間遠心分離した後、細胞を含まない上清を100,000g(Beckman Coulter Optima L-90K ultracentrifuge)にて1時間、4℃で遠心分離し、25mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(Sigma-Aldrich)を含む無血清培地199で洗浄し、同じ条件で2回目の超遠心分離にかけた。選択実験では、EPC由来のMVを、赤色蛍光性の脂肪族の発色団PKH26色素(Sigma Aldrich)を用いて標識化した。標識化後、MVを、新たに100,000gにて1時間、4℃の超遠心分離により洗浄した。MVペレットを、培地199中に再懸濁し、蛋白質含有量はブラッドフォード法(BioRad, Hercules, CA, USA)により定量した。MV特性評価は、既報のように(Deregibus et al., Blood, 2007)、マイクロアレイ、FACS分析、走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡により実施した。MVは、使用するまで−80℃で保存した。
ヒト膵島およびIECにおけるEPC由来のMVのインターナライゼーション
ヒト膵島(500IEQ)は、赤色蛍光色素PKH26(Sigma)を用いて標識化された10μg/mlのEPC由来のMV存在下で、回転(Rotary)細胞培養システムにて6時間培養された。MVインターナライゼーション(内部移行)は、共焦点顕微鏡により評価した(Deregibusら、Blood, 2007)。IECは、ビヒクルのみの存在下または10μg/mlの標識化EPC由来のMV存在下の24ウェルプレートにて培養した。選択実験では、αvβ3−インテグリン(BioLegend)、α4−インテグリン、α5−インテグリン(Chemicon Int.)、CD29(Becton Dickinson Biosciences)またはL−セレクチン(Pharmingen)に対する10μg/mlのブロッキング抗体を、MV刺激されたIECに添加した。IECにおけるMVインターナライゼーションは、共焦点顕微鏡およびFACS分析により評価した。
インスリン分泌応答および生存能の評価
膵島機能は、ELISAインスリン分泌応答(ALPCO Windham, NH)により評価した。簡単には、膵島は、2.8mMのグルコース培地中での予め1時間のインキュベーションに続いて、25mMのグルコース培地中で2時間のインキュベーションによりインキュベートした。刺激の指標は、波長590nmの光の分光光度プレートリーダーを用いて、高グルコース培地存在下でのインスリン分泌(mU/L/IEQ)と平均の基礎的なインスリン分泌レベルとの比を計算した。膵島の生存能は、0.46μMのフルオロセインジアセタートおよび14.34μMのヨウ化プロピジウム(両方ともSigma Aldrich, St. Louis, MOから得た)を用いて二重染色することによって評価した。
カスパーゼ3 ELISA
カスパーゼ3の活性は、p−NA(発色団のp−ニトロアニリド)の分光光度による検出に基づくELISA(Chemicon, Temecula, CA)により評価され、p−NAはカスパーゼにより認識される標識化基質、DEVD−pNAから切り出される。膵島溶解物を、適当な反応緩衝液を用いて希釈し、DEVD−pNAを終濃度50Mで加えた。試料は、波長405nmの自動ELISAリーダーにて分析した。各実験は、3重にて実施した。
新しい純化膵島からの内皮細胞の出現
新しい純化膵島(500IEQ)を、組織培養皿に撒き、EPC由来のMVの存在下または非存在下にて通常の培地を用いてインキュベートした。選択実験では、ラパマイシンの治療用量(10ng/ml)をEPC由来のMVに加えた。内皮細胞増殖因子を含む培地を、細胞出現の陽性対照として用いた。膵島からの内皮細胞の出現は、生細胞解析のためのニコン(Nikon)顕微鏡システム下で研究した。同じ実験手順を、5個の異なる新しい純化膵島調製物において実施した。
IEC遊走
IECを、プレートに撒き、1%FCSを含むRPMIを用いて12時間維持し、続いて、種々の刺激物とともにインキュベートした。細胞の遊走は、上記のニコンシステムにて10×の位相差対物レンズを用いて研究した。正味の遊走速度(直線速度(velocity straight line))は、出発地点と到着地点の間の直線距離を観察時間で割ることに基づくマイクロイメージ(MicroImage)ソフトウェアにより計算された。各実験ポイントあたり少なくとも30細胞の遊走が分析された。
IEC生死判別アッセイ
IECを、細胞密度5×10細胞/ウェルで24ウェルプレート(Falcon Labware, Oxnard, CA)にて培養し、FCSを用いずに12時間欠乏させ、次いで、増大する用量のEPC由来のMV(1〜50μg/ml)を用いて、250μg/mLのXTT(Sigma Aldrich)を含むフェノールレッド不含培地にて培養した。選択実験では、ラパマイシンの治療用量(10ng/ml)をEPC由来のMVに加えた。EPC由来のMVは含まないが内皮細胞増殖因子を含む培地を、陽性対照として用いた。吸光度は、450nmの波長にて決定された。全ての実験は、3重にて実施された。
IECアポトーシスの検出
IECは、FCSを用いず12時間の欠乏の後、続いてEPC由来のMVの存在下または非存在下で48時間のインキュベーションの後に、TUNELアッセイ(ターミナル・デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)媒介dUTPニック末端標識化)(ApopTag, Oncor, Gaithersburg, MD)にかけた。選択実験では、ラパマイシンの治療用量(10ng/ml)をEPC由来のMVに加えた。インキュベーション後に、細胞を1%パラホルムアルデヒドにて固定化し、予め冷却したエタノール−酢酸2:1にてさらに固定化し、加湿チャンバにてTdT酵素とともに37℃で1時間インキュベートし、抗ジゴキシゲニン−FITC抗体を用いて、およびヨウ化プロピジウム(1μg/mL)を用いて対比染色を行った。試料は、適当なマウント培地を用いてUV光顕微鏡にて分析した。緑色染色されたアポトーシス細胞を、別の顕微視野(倍率×100)にて計数した。
試験管内での血管形成アッセイ
試験管内での毛細管様構造物の形成は、氷中での冷却DMEM(Sigma Aldrich)と1:1希釈された増殖因子低減マトリゲル(growth factor-reduced Matrigel)(Becton Dickinson, Bedford, MA)に播種された500IEQヒト膵島またはIEC−GFP(5×10細胞/ウェル)で研究した。細胞は10×/0.25NA対物レンズを備えたニコン倒立顕微鏡にて観察され、実験結果は様々な刺激物質を用いた37℃での6時間のインキュベート後に記録した。画像分析は、マイクロイメージ分析システム(Casti Imaging)により1時間間隔で行った。結果は、毛細管様構造物/視野(倍率×100)の3回の別個の実験の平均値±SDにより与えられる。
SCIDマウスの異種移植
マトリゲルプラグ(Matrigel plug)における膵島またはIEC−GFPの皮下(s.c.)移植が、生体内でのEPC由来のMVの血管形成の効果を評価するために行われた。簡単には、マトリゲルを使用するまで−20℃で維持し、移植直前に4℃にて一晩解凍した。新しい純化膵島(2000IEQ)またはIEQ−GFP(10細胞)を、FCSを含まない新鮮な培地250μLに再懸濁し、冷却したピペットチップを用いて、10μg/mlのEPC由来のMVを含まないまたは含むマトリゲル500μLに混合し、SCIDマウスの首筋(the scruff region of the neck)にs.c.移植した。2週間後に、マウスを犠牲にし、マトリゲルプラグを、後述のように組織学および免疫組織化学のために回収した。各実験群につき6匹の動物で実験した。
遺伝子アレイ技術
血管形成マーカーの研究のためのヒトGEアレイ(GEarray)キット(SuperArray Inc., Bethesda, MD)を用いて、ビヒクルのみを用いてまたは10μg/mlのEPC由来のMVを用いて48時間インキュベートしたIECの遺伝子発現プロファイルを特性評価した。ハイブリダイゼーションは、製造業者の説明書に従って実施した。
免疫蛍光研究
様々な実験条件にてチャンバースライド中で培養された新しい純化ヒト膵島またはIECを、1%パラホルムアルデヒドを用いて固定化し、要すれば0.1%トライトンX100(Sigma)を用いて透過処理し、ポリクローナル・ラビット抗ヒトインスリン抗体を用いて、または以下の内皮細胞抗原に対する抗体;抗ヒトCD31(PECAM−1)、抗ヒトtie−2および抗ヒトVEGF−R2(KDR)(すべてSanta-Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CAから得た)、マウスモノクローナル抗ヒトVEGF(US Biological, Swampscott, MA)、マウスモノクローナル抗ヒトαVβ3−インテグリン(Chemicon International, Temecula, CA)、ラビットポリクローナル抗ヒトフォン・ヴィレブランド因子(vWF)またはアレキサフルオロ(Alexa Fluor)コンジュゲートアセチル化LDLに対する抗体(すべてInvitrogen, Carlsbad, CAから得た)を用いて、1時間染色した。すべての試料は、適当なアレキサフルオロ・コンジュゲート二次抗体(Invitrogen)を用いて30分間インキュベートした。ヒト膵島を含むマトリゲルインプラント(Matrigel implant)を、ホルムアルデヒドにて固定化し、染色前にパラフィン中に包埋した。すべての試料を、1mg/mLのヨウ化プロピジウムを用いて、または0.5mg/mLのヘキスト(Hoechst)を用いて対比染色し、アンチフェード・マウンティング培地(antifade mounting medium)(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いてマウントし、蛍光顕微鏡により試験した。内部の膵島血管再生およびMVインターナライゼーションの評価は、インスリンに対するおよび上記の内皮細胞マーカーに対する同時染色後に、共焦点顕微鏡(Leica TCS SP2 Heidelberg, Germany)により行った。マイクロイメージ・ソフトウェアを用いて、膵島内に新生された血管の数/切片および全領域/切片を決定した。
FACS分析
刺激していないまたは刺激したIECを、EDTAを用いて組織培養プレートから剥がし、45分間4℃でFITC−、PE−コンジュゲート抗体または赤色蛍光標識EPC由来のMVを用いて染色した。次いで、細胞を、1%パラホルムアルデヒドにて固定化し、FACS分析(Becton Dickinson, Mountain View, CA)にかけた。
ウェスタンブロット分析
さまざまな実験条件で培養されたIECを、溶解緩衝液(1%トライトンX−100、1mMのPMSF、10μg/mlのロイペプチンおよび100ユニット/mlのアプロチニンを含む50mMのトリス−HCl、pH8.3)中にて4℃で1時間溶解した。ブラッドフォード法により決定され、30μgのタンパク質を含むその細胞溶解液の一部を、還元条件下で4%〜15%のグラジエントSDS−PAGEにかけ、ニトロセルロース膜フィルターにエレクトロブロットした。以下の一次抗体;Aktに対するモノクローナル抗体(Upstate, Charlottesville, VI, USA)、ホスホ−Aktおよびホスホ−eNOSラビットポリクローナル抗体(Cell Signalling, Beverly, MA, USA)、アクチンに対するマウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗Bcl−xLおよびeNOSに対するラビットポリクローナル抗体(Santa Cruz)を用いた。
IEC単層に対するリンパ球の接着
PBMCは、健常ボランティアから密度勾配遠心分離(density gradient)により分離し、製造者の説明書に従い、RPMIおよび10%FBS中、10μmのVybrantセルトラッカー・キット(Invitrogen)を用いて一晩標識化した。標識化された細胞を計数し、FCSを含まないRPMI中に50×10/mLに再懸濁し、6ウェルプレート上のIECのコンフルエント単層に加え、ビヒクル単独または炎症性サイトカイン(10ng/mLのTNF−アルファおよび10ng/mLのIFN−ガンマ)とともに、10μg/mLのEPC由来のMVの存在下または非存在下でインキュベートした。実験は、穏やかに攪拌する条件下で、1時間37℃にて3重で行われた。インキュベーションの終わりに、プレートを培地で満たし、結合していない細胞を取り除くため3回吸引した。すべての試料を、1%パラホルムアルデヒドを用いて固定化し、蛍光顕微鏡により観察した。緑色蛍光の細胞を、倍率×200倍で異なる10の視野で計数した。
統計分析
種々の実験手順のデータはすべて、平均値±SDで表される。統計分析は、スチューデントt検定もしくは適宜、ニューマン・クールズ(Newmann-Keuls)の多重比較検定を用いるANOVAにより実施した。
(結果)
EPC由来のMVの特性評価
走査電子顕微鏡およびFACS分析は、EPC上清の超遠心分離により得られたペレット中に球状のMVの存在を示した。EPC由来のMVの大部分は、大きさが約1μmであり、通常EPC表面に見られる幾つかの分子、例えば細胞内接着分子−1(ICAM−1)、α4インテグリン、CD29(β1インテグリン)およびCD44を発現していた。さらに、我々はまた、EPC由来のMVの表面上に、損傷組織へのEPCのホーミングに必須のタンパク質であるCD62L(L−セレクチン)の存在も見出した。
EPC由来のMVは膵島から内皮細胞の出現を誘導した
ビヒクル単独でのインキュベーションと比較して、10μg/mlのEPC由来のMVは、膵島表面から24時間後に検出可能なおよび96時間後により明白な細胞の出現(outgrowth)を誘導した。膵島から出現した細胞は、典型的な内皮細胞マーカー、例えば、KDR(VEGFR−2)、CD31(PECAM−1)、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)、CD105およびネスチンを用いた特異的な免疫染色により、内皮細胞と特徴づけられた。さらに、出現した細胞は、アセチル化LDLをインターナライズ(内部移行)する能力と、マトリゲル被覆プレート上に播種された場合に毛細管様構造物を形成する能力とを示した。
ラパマイシンは、EPC由来のMVにより誘導される膵島からの内皮細胞の出現を無効にしなかった
我々が以前に報告したように(7)、ラパマイシンの治療用量(10ng/ml)は、内皮細胞増殖因子に富む培地を用いた膵島のインキュベーションにより誘導される内皮細胞の出現を無効にした。対照的に、同じラパマイシン用量では、EPC由来のMVにより誘導される内皮細胞の出現は完全に阻止することができず、このことは、この血管形成過程に増殖因子による刺激以外の機序の関与を示唆する。
EPC由来のMVは、インスリン分泌を増強し、膵島の生存能を保ち、そしてカスパーゼ3の活性を低下させた
高グルコースチャレンジ後のインスリン応答で評価される膵島機能は、培養の2日後および7日後のビヒクル単独に対し、EPC由来のMV存在下において有意に高かった。加えて、フルオロセインジアセタートおよびヨウ化プロピジウムを用いた二重染色は、EPC由来のMV存在下で維持された膵島の生存を証明した。EPC由来のMVにより誘導される膵島アポトーシスの阻害は、EPC由来のMVとのインキュベーションの2日後および7日後に膵島溶解液中で観察されるカスパーゼ3活性の有意な低下によりさらに確認された(図1)。
EPC由来のMVは、β細胞および膵島内皮細胞にインターナライズされる
ヒト膵島におけるEPC由来のMVのインターナライゼーション(内部移行)は、赤色蛍光色素であるPKH26を用いてMVを染色した後に評価された。共焦点顕微鏡分析により、標識MVの存在が、インスリン、GLUT−2あるいは内皮細胞マーカーであるCD31、KDRおよびフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)を用いた同時染色で検出され、β細胞および膵島内皮細胞の両方でその存在が示された。加えて、EPC由来のMVはまた、共焦点顕微鏡写真およびFACS分析により示されるように、37℃で30分間のインキュベーション後に別系統の膵島由来の内皮細胞(IEC)にも取り込まれた。MVインターナライゼーションに関与する選択的な分子の役割を特定するため、EPC由来のMVを種々のブロッキング抗体とともに15分間4℃で予めインキュベートした。これまでに別の内皮細胞系について報告されているように、膵島内皮細胞でもまた、α4インテグリン、CD29、加えてL−セレクチンの存在が標的細胞へのMVのインターナライゼーションに必須である。
EPC由来のMVは、SCIDマウス内のマトリゲルプラグ中の皮下移植されたヒト膵島の血管新成を増大する
膵島の血管新生におけるEPC由来のMVの効果は、マトリゲルプラグ内の新しい純化膵島を既報(7)の異種移植モデルのSCIDマウスの首筋に皮下注射した後に、生体内で評価した。EPC由来のMV存在下で、移植片は、膵島内にヘマトキシリン−エオシン染色により、および内皮細胞マーカーであるKDRおよびCD31の免疫組織化学分析により検出される血管密度の顕著な増加を示した。EPC由来のMVにより処理された膵島はまた、インスリンのびまん性の染色(diffuse staining)を示した。加えて、マトリゲル区画内に新生された血管の総数および領域の評価は、EPC由来のMVを用いて刺激された膵島での血管形成の有意な増加を裏付けた。図2は、EPC由来のMV存在下または非存在下での、SCIDマウスにおける膵島異種移植片の総数および領域(μm/区画として表される)の計数を示す。
EPC由来のMVは、試験管内および生体内でのIEC−GFP血管形成を増強する
我々は、GFPを発現するレンチウイルスベクターにより形質導入されたIEC(IEC−GFP)において、EPC由来のMVにより誘導される試験管内での血管形成の変化を評価した。マトリゲルで被覆された表面に播種された場合、IEC−GFPは自発的に毛細管様の構造物を形成した。EPC由来のMVの添加は、血管新生過程を促進し、その結果、用量依存的に促進される組織だった毛細血管網の形成を導いた。ラパマイシン(10ng/ml)は、EPC由来のMVの血管新生の効果を完全に無効にしなかった。図3は、得られた結果、すなわちIECにおける試験管内での血管形成のEPC由来のMVの用量依存的な効果およびMV誘導性の血管形成におけるラパマイシンの効果を示す(EndoGF=内皮細胞増殖因子に富む培地)。
次いで、我々は、上記のように、SCIDマウスの首筋に注射することによりIEC−GFPの異種移植を行った。試験管内での血管形成の結果と一致して、IECはEPC由来のMV存在下で組織学的分析および免疫蛍光分析により検出される増殖能および新血管の形成能において顕著な増大を示した。さらに、EPC由来のMVは、試験されたマトリゲル区画内の血管の総数および領域に著しい増大を誘導した。
EPC由来のMVは、増殖効果、抗アポトーシス効果および遊走効果をIECに与える
我々は、膵島内皮細胞生育におけるEPC由来のMVの効果を評価した。IECを、FCSを用いずに一晩欠乏させ、続いて、増大する用量のEPC由来のMVとともにインキュベートした。EPC由来のMVは、IEC増殖において顕著な用量依存的な増大を誘導した。この増殖効果は、1μg/mLの用量で検出可能であり、また50μg/mLの用量でプラトーに達した。加えて、我々は、EPC由来のMVを用いてチャレンジしたIECが、血清の欠乏によって誘導されるアポトーシスに対して増強された耐性を示すことを見出した。IECにおいてEPC由来のMVにより与えられたこの抗アポトーシス効果は、10ng/mlのラパマイシンを用いた同時インキュベーションによっては完全に無効とされなかった。図4は、IECにおけるEPC由来のMVの増大する用量により誘導される用量依存的な増殖効果を示す。
次いで、内皮細胞活性化の指標であるIEC遊走におけるEPC由来のMVの効果を、顕微鏡のコマ撮り(タイムラプス)で記録し、研究した。静止細胞(resting cell)の自発的な運動性に対応するIECの基準となる遊走速度は、観察の全期間にわたって安定を保ちし、5〜6 m/時間を越えないことが見出された。EPC由来のMVは、自発的な細胞の運動性に有意な用量依存的増大をもたらした。アポトーシスのデータと一致して、10ng/mlのラパマイシンは、IEC遊走の活性を完全にブロックしなかった。図5は、無血清条件下で培養されたIECのEPC由来のMVの用量依存的な遊走効果、およびラパマイシンのMV誘導性の運動性における効果を示す(EndoGF=内皮細胞増殖因子に富む培地)。
図6は、無血清条件下で培養されたIECにおけるEPC由来のMVの用量依存的な抗アポトーシス効果、およびMV誘導性のアポトーシスからの救出におけるラパマイシンの効果を示す(EndoGF=内皮細胞増殖因子に富む培地)。
EPC由来のMVにより誘導されるIEC血管形成に関与する経路
我々は、IECにおける遺伝子レベルとタンパク質レベルの両方、ならびにEPC由来のMVとのインキュベーション後の血管形成に関与する分子の発現変化を調べた。EPC由来のMVを用いて刺激されたIECにおける遺伝子アレイ分析は、内皮細胞分化関連因子(Endothelial Differentiation-related Factor-1(EDF−1))、チロシンキナーゼ受容体のエフリン、他のさまざまな増殖因子受容体(FGF−R、VEGF−R1、TGFβ−R)、血管新生促進性のインテグリン(pro-angiogenic integrin)(α5およびβ3)およびマトリックス分子(フィブロネクチン−1)、特異的な内皮細胞マーカー(CD31)およびeNOSの、増強された発現を明らかにした(図7)。加えて、EPC由来のMVを用いて刺激されたIECは、抗血管形成因子トロンボスポンジン−1のダウンレギュレーションを示した。免疫蛍光分析またはウェスタンブロット分析により、我々は、EPC由来のMVが、血管形成および細胞の生存に関与する膵島内皮細胞の分子、例えばAkt/P−Akt、Bcl−xLおよびeNOSをモジュレートすることを確認した。
hIECに対するリンパ球の接着
我々は、内皮細胞−リンパ球相互作用におけるEPC由来のMVの役割を評価した。10μg/mlのEPC由来のMVの添加は、穏やかな攪拌条件下でのIEC単層に対する自発的なリンパ球接着を有意に阻害した。リンパ球接着の阻害は、10ng/mLのTNF−アルファおよび10ng/mLのIFN−ガンマと一緒にIEC単層をインキュベートした後に得られる炎症促進性の微環境のもとで特に明白となった。
(議論)
本研究において、我々は、EPC由来のMVが、試験管内で、およびSCIDマウスへのマトリゲルプラグにおける皮下の膵島移植の実験モデルで、血管形成およびインスリン分泌を促進することを実際に示した。加えて、EPC由来のMVは、膵島由来の内皮細胞系の試験管内での増殖、アポトーシス耐性、遊走、毛細管様構造物の形成および生体内での血管形成をもたらす。
我々はまた、EPC由来のMVが、β細胞と膵島内皮細胞の両方にインターナライズされ、インスリン分泌および生じうるパラクリン作用を通じた試験管内での血管形成がもたらされることを実際に示した。さらに、EPC由来のMVは、SCIDマウスの首筋にマトリゲルプラグにて異種移植した新しい純化ヒト膵島において、新たに形成される血管の総数および面積の有意な増加を引き起こす。これらの結果は、EPC由来のMVにより誘導される直接的な膵島内皮細胞での血管形成の活性化を示唆する。加えて、膵島内皮細胞およびβ細胞におけるEPC由来のMVのインターナライゼーションは、有害な分離および培養条件において生存を維持できる、両方の細胞型からのパラクリン因子のさらなる放出を促進しうる。
MV取り込みは、特定の細胞膜タンパク質、例えばα4、CD29およびL−セレクチンにより媒介される。白血球生物学では、種々の接着受容体は、ローリングを通じてそれらの内皮細胞との相互作用を調節し、それに続く炎症部位への移動を調節する。セレクチン受容体ファミリーは、血管接着の初期事象の鍵となる重要な役割を果たす。我々は、最近、EPCがL−セレクチンをその表面に発現すること、およびこの分子が血管損傷部位へのEPCのホーミングに必須であることを実際に示した。本研究で、我々は、EPC由来のMVもまた、虚血−再灌流損傷に曝された組織において通常はアップレギュレートされるフコシル化残基または別のオリゴ糖リガンドと結合するため、Lセレクチン媒介型の機構を介して標的細胞中にインターナライズすることを示す。
我々はまた、EPC由来のMVが、膵島内皮細胞系の試験管内増殖、血清欠乏により誘導されるアポトーシスに対する耐性、遊走、および膵島からの内皮細胞の出現を増強することを見出した。興味深いことに、ラパマイシンの治療用量は、培地に加えられた可溶性の増殖因子によりIECに与えられる栄養作用を完全に阻害するのに対し、この薬剤の同じ用量との同時インキュベーションによっては、EPC由来のMVにより誘導されるこれらの生物学的現象はすべて完全には無効にされない。これらの結果は、EPC由来のMVと膵島内皮細胞との間をmRNAが水平移行することを推定させる示唆であり、このことは、RNaseを用いてEPC由来のMVをあらかじめインキュベートした後では、MVにより誘導されるIECでの効果が有意に阻害されることによって確認される。加えて、血管形成に関与する分子の遺伝子アレイ解析は、EPC由来のMVによりもたらされる増大した発現のmRNA、例えばBcl−xLおよびeNOSを示した。EPC由来のMVは、IECにおけるP13K/Aktシグナル伝達経路およびeNOSの活性化を引き起こす。
EPC由来のMVはまた、IECにおけるエフリンおよびEDF−1のアップレギュレーションを誘導する。エフリンおよびその関連するチロシンキナーゼ受容体は、血管壁集合の間の細胞の運動性および接着に深く関与し、内皮細胞の走化性およびブランチングのリモデリング(branching remodeling)を誘導する。ファージディスプレイおよびレーザー顕微解剖により、エフリンファミリーのメンバーおよびそれらの受容体が、膵島内皮細胞に認められた(9)。EDF−1は、分化、静止(quiescence)、老化を受けるヒト内皮細胞においてダウンレギュレーションされる低分子量のポリペプチドである。我々の発見は、EPC由来のMVが、IECにおける分化および増殖プログラムを活性化することを示唆する。加えて、ビヒクル単独と比較して、EPC由来のMVで刺激されたIECは、内皮細胞のアポトーシスを阻害すること、およびトロンボスポンジン−1(TSP−1)のダウンレギュレーションを阻害することが知られている分子であるCD31(PECAM−1)の増大したレベルを示す。TSP−1は、血管形成の阻害剤であり、活性型の内皮細胞のアポトーシスも促進する。我々は、最近、IECにおいて、TSP−1がラパマイシンに応答してアップレギュレートされることを見出した。さらに、TSP−1ノックアウトマウスは、増大した血管密度により特徴付けられる膵島過形成を示すことが示された(10)。
本研究の結果得られる別の知見は、EPC由来のMV存在下では、リンパ球がIEC単層に対して低下した接着特性を示すことである。膵島内皮細胞は、移植された膵島の再血管新生だけでなく、同種免疫および自己免疫に関係する機構においても鍵となる重要な役割を果たす。実際、免疫応答の活性化は、膵島移植片の消失の他の重要な原因である。IECは、β細胞により分泌されるインスリンを捕捉できる抗原提示細胞であり、かくして、移植された繊細な膵島に活性型のTリンパ球をホーミングするという特異性に寄与することが以前示された。我々は、他の細胞型に由来するエキソソームとは対照的に、EPC由来のMVはその表面にMHC抗原を提示していないことを見出した。この発見は、IEC単層に対するリンパ球の有意な低下と併せて考えると、移植された膵島における異種免疫および自己免疫のきっかけとなる引き金を制限しうるEPC由来のMVによる抗炎症作用が生じる可能性を示唆する。
結論として、我々の研究の結果は、膵島とEPCとの間のキメラ現象(chimerism)が、細胞表面からの活性型MVの放出によって媒介されるパラクリン機構を通じた膵島におけるβ細胞の機能および血管新生を促進することを実際に示す。EPC由来のMVの血管形成の特性は、臨床での膵島移植に通常用いられるラパマイシン用量が存在しても、得られた。末梢血からのEPCの容易な採取は、それらが、移植後の膵島の再灌流を改善するにあたっての潜在的な治療選択肢であることを示す。さらに、このβ細胞の機能による治療アプローチの代謝上の利益を調べるため、さらなる実験が必要とされることがあっても、EPC由来のMVの使用は、丸ごとの細胞の注入により生じる有害な効果を伴わない、血管新生の機構における一時的で限定的な転換を提供しうる。
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Claims (4)

  1. 膵島移植によるI型およびII型糖尿病の処置においてインスリン産生を増大させるための医薬を調製するための、内皮前駆細胞に由来する微小胞の使用。
  2. 医薬が、静脈内注射による投与に適している、請求項1記載の使用。
  3. 医薬が、受容者の体重1Kgあたり0.1μg〜10μgを含む微小胞の用量を投与するのに適している、請求項1または2のいずれか一項記載の使用。
  4. 膵島移植手順が、受容者が、移植前におよび/またはその間におよび/またはその後にラパマイシンに基づく免疫抑制を受ける工程を少なくとも一回含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
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