JP5712557B2 - 溶鋼の鋳造方法 - Google Patents
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Description
例えば、溶鋼をタンディシュを介して鋳型に注湯して連続鋳造する場合、該タンディシュの底面に開口したゲート(ノズル)は、耐火物からなり且つ該ノズルの上方において昇降可能なストッパロッドにより開閉され、上記ゲートの下側にはスライディングノズルが取り付けられ、溶鋼の凝固片によって上記ゲートが詰まらないように、上記ストッパロッドの内側に加熱バーナを内蔵したタンディシュ用ゲート部の加熱保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、耐火物からなり且つ加熱バーナを内蔵する上記ストッパロッドは、非常に高価となるため、単発式鋳造法などの一般的な鋳造には、ゲートの下側にスライディングノズルのみを取り付けたタンディシュが用いられている。
上記鋳造の初期段階におけるゲート詰まりを防ぎ、且つ非金属介在物をタンディシュ内における溶湯の湯面に浮上させるため、例えば、炭粉をゲートの内側に投入することも検討されている。しかし、該炭粉が溶鋼と共に鋳型に達すると、得られる鋳片の炭素含有量が過大になってしまう、という問題があった。
即ち、本発明による溶鋼の鋳造方法(請求項1)は、溶鋼を受け入れたタンディシュの底面に開口したゲートから、前記溶鋼を当該タンディシュの下方に配置した鋳型に注下して鋳片を鋳造する溶鋼の鋳造方法であって、上記タンディシュのゲートを溶鋼により焼失あるいは溶失可能な材料からなり、上端面の中心部に開口し且つ軸方向に沿った有底穴を有する栓体で塞く第1ステップと、上記タンディシュの内側に溶鋼を供給し、該溶鋼によって上記栓体が焼失あるいは溶失する時間内において、供給された溶鋼の湯面に当該溶鋼に含まれている非金属介在物を浮上させる第2ステップと、該第2ステップの後に、上記タンディシュのゲートから溶鋼を上記鋳型に注下する第3ステップと、を含む、ことを特徴とする。
従って、第3ステップにおいて、タンディシュのゲートを通過する溶鋼は、非金属介在物を含んでいないので、該ゲートや浸漬ノズルなどを詰まらせることなく、鋳型に確実に注湯することができる。加えて、得られる鋳片の組成を所定の範囲に容易に保持することも可能となる。
また、前記タンディシュのゲートの下側には、水平方向にスライドして該ゲートを開閉したり、該ゲートの開度を調整するスライディングノズルが配置され、該ノズルの下側には、耐火物の筒体からなり且つ下端が上記鋳型内の湯面に浸漬される浸漬ノズルが連設されている。
更に、前記タンディシュのゲートの上方には、耐火物からなり縦長で昇降可能なストッパロッドが配置されておらず、当該ゲートの開閉や開度の調整は、前記スライディングノズルによって行われる。係るタンディシュは、主に単発式鋳造方法のような非連続鋳造法に好適に用いられる。但し、本発明は、連続鋳造法にも適用することが可能である。
また、第1ステップは、前記タンディシュの内側の耐火物を1000℃以上の予熱した状態で行われる。
更に、前記栓体が焼失あるいは溶失するに要する時間は、溶鋼の鋼種や溶解量によって一律ではないが、例えば、数分間(2,3分間)あるいは約4〜6分間が例示できる。
加えて、焼失あるいは溶失した栓体は、炭化物となって、鋳片の先端側に含まれるが、係る先端部分は、端材として除去される。
これによれば、前記第2ステップにおいて、適宜選択された木材などからなる円錐形状の栓体が溶湯による焼失ないし溶失(融失)するまでの間に、溶鋼に含まれていた非金属介在物をタンディシュの当該溶鋼の湯面に容易且つ確実に浮上させることができる。
尚、前記天然木材は、樫、檜、杉、松、桜、ナラ、ブナ、椎、さわら、楠、楓、樺、ひば、椰子、ゴムなどで、その密度は、約0.7g/cm3以上であることが推奨される。
また、前記集成木材は、上記天然木材からなる複数の板片や棒片を、圧力を加えて接着したものであり、例えば、ラワン材も含まれる。
更に、前記合成樹脂は、耐熱性で且つ熱可塑性であれば、特に限定されない。
また、前記紙系複合材は、樹脂粒子や樹脂繊維などを含む紙製の成形体である。
加えて、前記低融点金属には、銅またはその合金、アルミニウムまたはその合金、あるいは、Mgまたはその合金が含まれる。
これによれば、比較的緻密で且つ均一なゴムの木製の集成材からなる栓体を用いるので、係る栓体が溶湯によって焼失するまでの間に、溶湯に含まれていた非金属介在物をタンディシュの溶鋼の湯面に容易且つ確実に浮上させられる。
尚、上記集成材は、ゴムの木の板や棒材を併用して、圧着したものである。
本発明の鋳造方法が適用される鋳造装置1は、図1に示すように、タンディシュ2、その底面に開口するゲート5の下側に取り付けたスライディングノズル6、浸漬ノズル7、および該浸漬ノズル7の下方に配置した鋳型8を備えている。
タンディシュ2は、底板3aと側板3bとからなる箱形状の鉄皮3と、該鉄皮3の内側に一定の厚さで張り付けた耐火材4とから構成され、その底面には、左右一対のゲート5が開口している。該ゲート5は、上端側が大径で且つ下端側小径のほぼ円錐形状を呈する。また、上記浸漬ノズル7も耐火材4と同様な耐火物からなる筒体である。更に、鋳型8は、内側に断面が長方形のキャビティ8aを有する直方体であり、該キャビティ8a内には、鋳造された鋳片(C)を支持しつつ下降する下型9が昇降可能に挿入されている。
更に、前記鋳型8の真上には、上記タンディシュ2とは別に、当該鋳型8のキャビティ8aに鋳込まれた溶鋼の湯面を加熱する図示しないトップヒータが、水平方向に沿って移動可能で且つタンディシュ2と代替可能に配置されている。
図1中の垂直な矢印で示すように、タンディシュ2における一対のゲート5には、栓体10が閉塞可能に挿入される。係る栓体10は、図2に示すように、比較的大径の上端面11と、比較的小径の下端面12と、これらの間に傾斜して位置する円錐形状部13とからなり、上端面11の中央部には、当該栓体10の軸方向に沿って形成された有底穴14の開口部15が開口している。
以上のような栓体10は、複数のゴムの木からなる集成材を切削加工したもので、溶鋼に接触すると焼失する。係る栓体10の寸法は、例えば、軸方向の長さ(高さ)が100mm、上端面11の直径が70mm、下端面12の直径が50mm、有底穴14の内径が20mm、下端面12と有底穴14の底面との距離は、20mmである。また、栓体10の密度は、約0.75g/cm3であった。
予め、タンディシュ5の耐火材4が張られた内側を1000℃以上に予熱した。
次に、図3に示すように、栓体10の有底穴14に先端が挿入された鉄棒を下向きとし、タンディシュ2における一対のゲート5内に、上方から上記栓体10をその下端面12側から挿入して、当該ゲート5を塞いだ(第1ステップS1)。
次いで、図4中のカーブした矢印で示すように、図示しない取鍋内に保持された溶鋼Mを、各ゲート5が栓体10で塞がれたタンディシュ2の内側に供給した。溶湯Mが栓体10に接触すると同時に、上記栓体10は、上部側から焼失し始めて、栓体10aとなった。この間において、溶鋼Mに含まれていた炭化物や窒化物などからなり、比較的比重が小さな非金属介在物20は、溶鋼Mの湯面に順次浮上し始めた(第2ステップS2の前段)。
そして、上記非金属介在物20が溶鋼Mの湯面に浮上し終わるのと同時か、あるいは、その後において、タンディシュ2のゲート5を塞いでいた上記栓体10bは、全てが焼失した。該栓体10の焼失に要した時間は、約2〜3分であった。
尚、栓体10(10a,10b)が焼失して生じた炭化物は、溶鋼Mと共に鋳型8に鋳込まれて鋳片Cの先端部に含まれるが、係る先端部は、追って端材の一部として除去される。
これ以降は、鋳型8の下方に垂下した縦長の鋳片Cを、所定長さに切断し、更に水平姿勢となるように倒した後、先端側と後端側とを一定長さごとに切断して端材を除去することで、所要組成およびサイズの鋳片Cを得ることができた。
尚、前記タンディシュ2は、スライディングノズル6を閉鎖した後、前記台車によって鋳型8上の位置から外部に搬出される。
例えば、前記タンディシュ2のゲート5は、1個でも3個以上であっても良く、これらと同数のスライディングノズル6と浸漬ノズル7とが配置される。
また、前記栓体10の円錐形状部13は、前記タンディシュ2のゲート5の内側空間とほぼ同じ形状および寸法であるか、若干大きめの相似形である。
更に、前記栓体10の有底穴14は、前記形態よりも軸方向の長さ(深さ)が短くても良い。
また、前記栓体は、例えば、天然木材の周囲をガラスで包囲したり、あるいは低融点金属の周囲をガラスで包囲した2重構造の形態としても良い。
更に、前記鋳型は、円柱形のキャビティを内設する円筒体であっても良い。
加えて、前記鋳型は、そのキャビティの直下に複数の冷却水噴霧ノズルと、複数のピンチローラとを垂直方向に配設した連続鋳造用の鋳型としても良い。
5…………………………ゲート
8…………………………鋳型
10,10a,10b…栓体
11………………………上端面
12………………………下端面
14………………………有底穴
M…………………………溶鋼
C…………………………鋳片
S1〜S3………………第1〜第3ステップ
Claims (4)
- 溶鋼を受け入れたタンディシュの底面に開口したゲートから、前記溶鋼を当該タンディシュの下方に配置した鋳型に注下して鋳片を鋳造する溶鋼の鋳造方法であって、
上記タンディシュのゲートを溶鋼により焼失あるいは溶失可能な材料からなり、上端面の中心部に開口し且つ軸方向に沿った有底穴を有する栓体で塞く第1ステップと、
上記タンディシュの内側に溶鋼を供給し、該溶鋼によって上記栓体が焼失あるいは溶失する時間内において、供給された溶鋼の湯面に当該溶鋼に含まれている非金属介在物を浮上させる第2ステップと、
上記第2ステップの後に、上記タンディシュのゲートから溶鋼を上記鋳型に注下する第3ステップと、を含む、
ことを特徴とする溶鋼の鋳造方法。 - 前記溶鋼によって焼失あるいは溶失可能な栓体は、天然木材、集成木材、合成樹脂、低融点金属、ガラス、あるいは紙系複合材からなり、前記タンディシュのゲートにおいて上端面が大径で且つ下端面が小径となるように全体が円錐形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の鋳造方法。 - 前記ゲートは、上端側が大径で且つ下端側が小径の円錐形状を呈する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の溶鋼の鋳造方法。 - 前記栓体は、複数のゴムの木からなる集成材を切削加工したものである、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の溶鋼の鋳造方法。
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