JP5705518B2 - 電流計測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、航空機の機体、特には燃料タンク構造の耐雷性能の評価のために、構造体の締結部を流れる電流を正確に計測するのに好適な方法に関する。
航空機の主翼内に設けられる燃料タンクは、落雷から保護される必要がある。そのためには、燃料タンク、その他の構造体の結合部、より具体的には締結部材(ファスナ、リベット、ボルトなど)を用いた締結部に流れる電流による火花(スパーク)の発生を抑制することが重要である。特に、構造体が炭素繊維複合材料で作製される場合には、この炭素繊維複合材料は導電性が劣るので、落雷からの保護がより重要になる。このため、実際の構造体の一部を模擬した供試体(クーポン)に雷撃試験を行い、流れる電流の計測及びスパーク発生の有無の評価が行われている。
一方で、スパーク発生の有無を検討するうえで、実際の構造体と同じ構造のクーポンに流れる電流を計測することが重要である。しかし、二つの異なる部材の締結部には複数のファスナが狭い間隔で、かつ薄い締結部に設置されており、主に計測機器のサイズの制約から個々又は複数のファスナに流れる電流を計測するには困難が伴っていた。
以上の問題点に対して特許文献1は一つの解決策を与えている。特許文献1は、周波数応答が広く、電流の振幅の広い範囲にわたって線形であるロゴスキーコイル(Rogowski coil)に着目している。ロゴスキーコイルによる電流計測は、一次導体周辺に空芯のコイルを配置すると、一次電流に対応した電圧がコイルの両端に誘起されることを利用するものである。この電圧を積分器に通して一次側の電流波形を再現することで一次電流を計測する。ところが、従来の手法では設置スペースの空間的な制限のためにロゴスキーコイルを用いて個々又は複数のファスナに流れる電流を計測することができなかった。これに対して、特許文献1は、ロゴスキーコイルをプリント基板上に実装することで狭隘部へのロゴスキーコイルの配置を可能としている。
特開2008−39775号公報
しかし、ロゴスキーコイルが実装されたプリント基板を設置するスペースを燃料タンクなどの構造体に形成する必要がある。そのために、特許文献1で計測される電流は、実構造体とは異なる構造体の締結部材、例えばファスナを通るものになり、特許文献1は実構造体についての電流を正確に計測できない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、実構造体と同様の構造体のファスナを流れる電流を計測することのできる方法を提供することを目的とする。
かかる目的のもとになされた本発明は、第一部材と第二部材が、第一部材と第二部材を貫通する1又は2以上の導体からなる締結部材により結合された継ぎ手部分を流れる電流Iを計測する方法に関し、以下のステップを少なくとも含んでいる。
ステップ(a):一端と他端を有する線状光導波体の一端側を、継ぎ手部分の電流計測対象領域の周囲に巻き回す。
ステップ(b):線状光導波体の他端から第一直線状偏光を入射する。
ステップ(c):他端から入射された第一直線状偏光が一端で反射され、線状光導波体の他端から出射される第二直線状偏光を検知する。
ステップ(d):第一直線状偏光に対する第二直線状偏光の偏波面の回転角に基づいて電流Iを特定する。
本発明の電流計測方法は、ステップ(a)において、第一部材及び第二部材の一方又は双方に設けられた、締結部材の径方向断面の周囲を取り囲むように線状光導波体を巻き回す溝からなる経路を用い、締結部材の周囲にループ状に線状光導波体を巻き回すことを特徴とする。
本発明の電流計測方法は、線状光導波体を用いて直線状偏光の偏波面の回転角、所謂ファラデー効果を利用して電流計測対象領域を流れる電流を計測するものであるが、この線状光導波体は線径が細い。したがって、線状光導波体を巻き回すためのスペースを設けるとしても微小ですむため、実構造体と実質的に同じ構造のクーポンについて電流を正確に計測できる。また、本発明によると、ロゴスキーコイルを用いる特許文献1に比べて電流を正確に計測できるという効果が得られる。この点について詳しくは後述する。
本発明において、継ぎ手部分の電流計測対象領域とは、締結部材自体のみならず、第一部材、あるいは第二部材をも包含する。もっとも、締結部材自体を電流計測対象とする場合には、ステップ(a)において、締結部材の周囲に線状光導波体を巻き回す。
本発明において、ステップ(a)において、第一部材及び第二部材の一方又は双方に設けられた経路を用いて締結部材の周囲にループ状に線状光導波体を巻き回す。この経路は、第一部材及び第二部材の一方又は双方に線状光導波体を収納する溝を掘ることで形成されるが、線状光導波体の線径が細いのでこの溝も微細なものにできる。したがって、本発明においては、線状光導波体を巻き回す経路を設けたとしても、実構造体の形状を実質的には変える必要がない。また、線状光導波体を締結部材の周囲に巻き回す際に、経路が線状光導波体のガイドとして機能するので、線状光導波体の配設作業が容易である。
本発明において、計測の対象となる締結部材が複数存在する場合には、ステップ(a)において、複数の締結部材の各々の周囲に線状光導波体の一端側を巻き回す。そして、ステップ(b)において、締結部材の各々の周囲に巻き回された線状光導波体の他端から第一直線状偏光を入射し、ステップ(c)において、各々の線状光導波体の他端から出射される第二直線状偏光を検知する。さらにステップ(d)において、各々の線状光導波体について、偏波面の回転角に基づいて電流Iを特定することになる。
本発明において、電流Iを計測する場合、第一部材に対応する位置、あるいは第二部材に対応する位置というように、締結部材の特定の位置において電流Iを計測したい場合がある。本発明は以下説明するようにこの要求に応えることができる。
第一部材に対応する位置における電流Iを計測する場合には、ステップ(a)において第一部材に形成した経路に線状光導波体を巻き回すことで、ステップ(d)において第一部材を経て、第一部材に対応する領域の締結部材を流れる電流Iを特定することができる。
また、第二部材に対応する位置における電流Iを計測する場合には、ステップ(a)において第二部材に形成した経路に線状光導波体を巻き回す。そうすることで、ステップ(d)において締結部材を経て第二部材に流れる電流Iであって、第二部材に対応する領域の締結部材を流れる電流Iを特定することができる。
さらに、第二部材を貫通する締結部材の突出端部に締め付け具が嵌合されて締結部材を第一部材及び第二部材に締め付けている場合には、ステップ(a)において締め付け具に形成した経路に線状光導波体を巻き回す。そうすることで、ステップ(d)において締結部材の突出端部を経て第二部材に流れる電流Iを特定することができる。
線状光導波体を巻き回す場合、その湾曲された部分の曲率は線状光導波体固有の最小曲率半径以上であることが前提となる。そのため、電流Iを計測したい締結部材の配置によっては、最小曲率半径の関係で線状光導波体を単純な円形状に巻き回すことができない場合がある。本発明はこの問題に対する以下の解決策を提案する。
すなわち、隣接する複数の締結部材を一つの対象締結部材と他の非対象締結部材とに区分し、対象締結部材に流れる電流Iを計測するものと考える。
そして、ステップ(a)において、対象締結部材と非対象締結部材を含めた隣接する複数の締結部材の周囲に第一巻き回し部を形成する。さらにステップ(a)において、第一巻き回し部よりも一端側において非対象締結部材の周囲に第二巻き回し部を形成する。第一巻き回し部と第二巻き回し部はターン部を介して繋がっている。
以下、上述したステップ(b)、(c)、(d)が実行されるが、スラップ(d)で特定される電流Iは、対象締結部材と非対象締結部材を合わせた電流から非対象締結部材の電流を差し引いた値として求められる。
上記提案は、一本の線状光導波体を用いることを前提としているが、二本の線状光導波体を用いてもよい。この場合、ステップ(a)おいて、対象締結部材と非対象締結部材を含めた隣接する複数の締結部材の周囲に第一線状光導波体を巻き回す。さらにステップ(a)おいて、対象締結部材を除く非対象締結部材の周囲に第二線状光導波体を巻き回す。
次いでステップ(b)においては、第一線状光導波体及び第二線状光導波体の各々に第一直線状偏光を入射する。
そして、ステップ(c)において第一線状光導波体及び第二線状光導波体の各々から出射される第二直線状偏光を検知し、ステップ(d)において第一線状光導波体について特定される電流と、第二線状光導波体について特定される電流の差分を求めると、対象締結部材を流れる電流Iが特定される。
本発明によると、線状光導波体を巻き回すための微小なスペースを形成するだけで個々の締結部材に流れる電流を計測できるので、実構造体と同様の構造について正確な電流を計測できる。したがって、この計測結果に基づいて、適合可能なマージンを含めた構造体の設計を精度よく行うことができる。
また、本発明によると、線状光導波体自体が絶縁物であり容量結合が生じないために、容量結合による計測誤差を排除できる。
さらに、光ファイバ電流センサはファラデー効果による電流に比例した偏光方向の回転角の変位を計測する。したがって、積分器は不要であるから積分器へのノイズ重畳による計測誤差を排除できる。また、締結部材に流れる電流の低周波成分も評価できる。
さらにまた、光ファイバ電流センサを用いる電流計測は、実際に電流を計測する領域においては光ファイバを巻き回し、信号処理を行う計測装置本体は光ファイバと接続されていればよいので、計測装置本体は計測領域から離して置くことができる。したがって、計測装置本体を絶縁処理する必要がなく、かつノイズ重畳を低減できる。
本実施の形態における、ファスナで第一部材及び第二部材を締結している継ぎ手部分の断面図である。 本実施の形態における、ファスナ及び光ファイバの配列の一例を示す平面図である。 本実施の形態における、光ファイバを用いた電流Iの計測システムの基本構成を示すブロック図である。 本実施の形態における、光ファイバを用いた電流Iの計測システムを示すブロック図である。 ファスナに対する光ファイバの巻き回し位置が図1とは異なる形態を示す断面図である。 隣接する複数のファスナのなかの一つのファスナ(対象ファスナ)の電流Iを計測するためのファスナの巻き回し手法を示す図であり、1本の光ファイバを用いる場合を示す。 隣接する複数のファスナのなかの一つのファスナ(対象ファスナ)の電流Iを計測するためのファスナの巻き回し手法を示す図であり、2本の光ファイバを用いる場合を示す。 本発明の電流計測方法を利用した設計又は適合性証明を行う手順を示すフローチャートである。 雷電流の波形の一例を示す。
[第1実施形態]
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、航空機の機体を構成する翼、脚、ラダー等の機体構造体10の一部(継ぎ手部分)の断面図である。ただし、光ファイバ20についてはその存在を明確にするため、斜視的に示してある。
図1に示すように、機体構造体10を構成する、第一部材11と、第二部材13とが、ファスナ15によって締結されている。ここで、第一部材11、第二部材13としては、機体構造体10の表面を形成する表面パネルと、表面パネルを保持する構造材、構造材と構造材に取り付けられる各種機器を保持するためのブラケットの組み合わせが例示される。もちろん、これ以外の二つの部材の組み合わせであってもよい。第一部材11及び第二部材13は、アルミニウム合金などの金属材料、あるいは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成することができる。これらはいずれも導電性を有している。
ファスナ15は、ピン状のファスナ本体16と、第二部材13側でファスナ本体16に装着されるカラー17とを備えている。ファスナ本体16及びカラー17は、強度の面から一般に金属材料により構成され、導電性を有している。
ピン状をなしたファスナ本体16は、軸部16s及び突出端部16eの周囲にネジ溝(図示省略)が形成され、頭部16bは軸部16s側よりテーパ状に拡径している。このファスナ本体16は、軸部16sを、第一部材11及び第二部材13を貫通して形成された孔11a、13aに第一部材11側から挿入し、頭部16bを第一部材11の孔11aの周囲に突き当てた状態で、軸部16sを第二部材13側に突出させる。
カラー17は、筒状で、その内周面にはファスナ本体16のネジ溝に噛み合うネジ溝(図示省略)が形成されている。このカラー17は、第二部材13側に突出したファスナ本体16の突出端部16eのネジ溝にねじ込まれる。これによって、第一部材11と第二部材13とは、ファスナ本体16の頭部16bとカラー17とによって挟み込まれ、締結されている。
さて、第二部材13には、光ファイバ20が配設される径路である収容溝14が形成されている。収容溝14は、第一部材11に対向する面(図1(a))に開口しているとともに、第二部材13の一側面13b(図1(b))には光ファイバ20の出し入れを行う挿通開口14aを備えている。収容溝14は、挿通開口14aから他側面13cに向けて延びる真直部14bと、他側面13c側においてファスナ15(ファスナ本体16)を周回して取り囲む湾曲部14cとからなる。
一端20a及び他端20bを有する光ファイバ20は、一端20aの側を収容溝14に配設する。
したがって、光ファイバ20は、収容溝14の湾曲部14c内において、ファスナ15の周囲をその軸方向に直交する方向に周回して巻き回される。収容溝14内に光ファイバ20を配設するには、第一部材11と第二部材13とが分離した状態で、光ファイバ20の一端20a側を湾曲させた状態で収容溝14に第一部材11に対向する面の開口から挿入することができる。また、第一部材11と第二部材13とが締結された後に、挿通開口14aから光ファイバ20の一端20aを挿入し、一端20aが湾曲部14cの先端に突き当たるまで押し込んでもよい。いずれにしても、収容溝14は、光ファイバ20をファスナ15の周囲に巻き回す際のガイドとして機能するので、光ファイバ20の配設を容易にする。
なお、図1では収容溝14の幅と光ファイバ20の径に差を設けているが、これは収容溝14と光ファイバ20の関係を明確にするためであり、実際にはその差を小さくできる。この収容溝14は例えば光ファイバ径1mmよりも大きい深さおよび幅3mmで、光ファイバ20を巻き回すことができる程度の深さおよび幅とする。例えば第一部材11の厚さは4mmであり、その形状を変えることなく収容溝14を形成することができた。これにより、実際の電流経路に影響を与えず電流計測ができる。もちろん、この収容溝14の深さおよび幅は光ファイバ20を巻き回すことができる1mm程度でもよい。また、光ファイバ20の位置を固定するために、光ファイバ20の周囲にシーラントなどの充填物を詰めてもよい。さらに、光ファイバ20は、ファスナ15の周りを複数回巻き回すこともできる。そうすることで、感度を増大させることができる。
また、図1では、光ファイバ20の一端20aが第二部材13の内部に配置されているが、これは限定されず、第二部材13の外部に露出していてもよい。
図1では、1つのファスナ15について示しているが、図2に示すように、複数のファスナ15が設けられている場合には、各ファスナ15に対応して光ファイバ20を設けることができる。もちろん、複数のファスナ15の全てに光ファイバ20を設けることに限定されず、本発明は、電流を計測したい任意のファスナ15に対応して光ファイバ20を設けることができる。また、図2におけるファスナ15、光ファイバ20の配列状態は一例にすぎず、他のいかなる配列に対しても本発明を適用できる。
さて落雷することにより機体構造体10には、電流Iが流れる。ここで、図示を省略しているが、第一部材11と第二部材13との間には絶縁物が配置されているので、電流Iは、図1に示すように、第一部材11、ファスナ15及び第二部材13の順に流れる。ファスナ15を通って流れる電流Iが高くなるほど、機体構造体10に火花が発生する可能性が高い。機体構造体10が航空機の燃料タンクに隣接する構造体である場合、そこから発生する火花は燃料タンク内部で生じる火花になる可能性を含んでいる。したがって、燃料タンク内部で火花を生じさせないために、ファスナ15を流れる電流Iを知ることにより、機体構造体10の設計に反映させることが重要である。
なお、第一部材11と第二部材13との間に導電材を介在させると、ファスナ15の周囲に配置される第一部材11及び第二部材13の一方又は双方を含む領域に流れる電流を計測することもできる。本発明は、このような形態をも包含する。
そのために、本実施形態ではファスナ15の周囲に光ファイバ20を配設し、光ファイバ20の他端20bから直線状偏光(第一直線状偏光)を入射し、他端20bから入射された直線状偏光が一端20aで反射され、光ファイバ20の他端20bから出射される直線状偏光(第二直線状偏光)を検知する。そして、入射される直線状偏光に対する出射される直線状偏光の偏波面の回転角に基づいて電流Iを特定する。この電流計測方法を実施する電流計測システム30の概略構成を図3に基づいて説明する。
電流計測システム30は、光源部31と、光学部33と、信号処理部38とを備えている。例えば半導体レーザからなる光源部31から出射された光は、光学部33の光アイソレータ34を通って、さらに偏光子35により直線状偏光(第一直線状偏光)とされてから光ファイバ20にその他端20bから入射される。光ファイバ20に入射した直線状偏光は、導体であるファスナ15を電流が流れることで生ずる磁界による光ファイバ20のファラデー効果により、その偏波面が磁界の強さに応じた角度だけ回転させられる。一般にファラデー素子に磁界Hを印加した場合に生じる偏波面の回転角θは、磁界中に配置されたファラデー素子の長さをL、ベルデ定数をVDとすると、θ=VD×H×Lで与えられる。従って、単一モードの光ファイバ20から出射した直線状偏光は電流の強さに応じて偏波面が所定の角度回転させられている。光ファイバ20の一端20aで反射して他端20bから出射される光(第二直線状偏光)は検光子36により電流の大きさに応じて強度変調された光として取り出され、この光が信号処理部38に導かれ、電流Iに応じた電気信号が得られる。この電気信号により、電流Iを特定する。
なお、図3に示す電流計測システム30は、基本的な構成のみを示しており、本発明を実施する際には他の構成を付加できることは言うまでもない。
図2に示すように、本発明は複数のファスナ15について電流Iを計測することをも想定しており、その際には図4に示すように、計測対象であるファスナ15に対応する光ファイバ20毎に図3に示す電流計測システム30を繋げばよい。このシステムでは、各電流計測システム30で特定、計測された電流Iをデータ収集部40に集約することで、その後の評価を迅速にできる。この場合、個々のファスナ15における電流Iを計測できることはもちろん、複数のファスナ15が配設されている領域における電流の分布を求めることができる。
本実施の形態による電流計測方法、システムは、光ファイバ20を用いて直線状偏光の偏波面の回転角、所謂ファラデー効果を利用してファスナ15を流れる電流を計測するものであり、この光ファイバ20は1mm以下と線径が細い。したがって、光ファイバ20を巻き回すために収容溝14を形成したとしても、周囲の構造に実質的な変更を伴わない。したがって、本実施の形態によると、実構造体と同様の構造体について電流Iを正確に計測できる。
さらに、本実施の形態によると、以下の効果をも奏する。
(1)容量結合による誤差の排除
ロゴスキーコイルを用いた電流計測では、電流路と磁性体からなるロゴスキーコイルが近接するので容量結合による計測誤差が重畳するのに対して、本実施の形態が計測に用いる光ファイバ20は絶縁物で構成されているため容量結合が生じない。したがって、本実施の形態によると、容量結合による計測誤差を排除できる。
(2)積分による計測誤差の排除
ロゴスキーコイルを用いた電流計測は、コイルの両端に誘起される電圧(計測信号)を積分器に通して一次側(ファスナ)の電流波形を特定するものであり、計測信号にノイズが含まれていると積分により誤差が増大される。これに対して、光ファイバ20を用いた電流計測は、ファラデー効果による電流に比例した偏光方向の回転角の変位を計測するものであって、積分器は不要であるから積分器へのノイズ重畳による計測誤差を排除できる。
(3)大電流・高電圧によるノイズ排除
光ファイバ電流センサを用いる電流計測は、実際に電流を計測する領域には絶縁体である光ファイバ20を配置すればよいので、雷のような大電流・高電圧の下でも電気的なノイズ発生の心配がない。また、信号処理を行う電流計測システム30は光ファイバと接続していれば計測領域から離すことができるので、電流計測システム30を絶縁処理することなくノイズ重畳を低減できる。これに対してロゴスキーコイルを用いた電流計測は、計測領域に置かれるロゴスキーコイルは雷のように大電流・高電圧下では電気的なノイズが生じやすく、誤差が生じやすい。
(4)計測できる電流成分
ロゴスキーコイルを用いた電流計測では、コイルに鎖交する磁束の時間変化を計測するため、電流Iの低周波成分及び直流成分を計測できない。これに対して光ファイバ20を用いた電流計測は、ファラデー効果による電流に比例した偏光方向の回転角の変位を計測するものであるから、電流Iの低周波成分及び直流成分も計測できる。
[第2の実施形態]
次に、図5を参照しながら、光ファイバ20の巻き回し位置が図1とは異なる形態について説明する。なお、図1と同じ構成部分には図5に同じ符号を付している。
図5(a)に示す機体構造体110は、第一部材11に収容溝12を形成し、そこに光ファイバ20を配設する。そうすることで、第一部材11を経て、第一部材11に対応する領域のファスナ15を流れる電流Iを特定することができる。
図5(b)に示す機体構造体120は、第一部材11より平面方向の寸法が小さい第二部材13の周囲に光ファイバ20を配設する。この形態は、第二部材13に対応する領域のファスナ15を流れる電流Iを特定する点では図1と同じであるが、第二部材13に収容溝14を形成する手間が省ける。ただし、光ファイバ20の位置決めをするために、シーラント等の接着剤18で光ファイバ20を適宜固定することが望ましい。
図5(c)に示す機体構成部材130は、カラー17に収容溝21を形成し、そこに光ファイバ20を配設する。そうすることで、第一部材11、ファスナ15の突出端部16e及びカラー17を経て第二部材13に流れる電流Ibを特定することができる。なお、図1、図5(a),(b)には、電流Ibの記載を省略している。
以上のように、本実施の形態によると、センサとなる光ファイバ20の線径が細いので、同じファスナ15のなかで電流Iを計測する位置を任意に変更することができる。したがって、本実施の形態によると、より詳細な電流計測データを得ることができる。
[第3の実施形態]
光ファイバ20をファスナ15の周囲に巻き回す場合、その曲率は光ファイバ20固有の最小曲率半径以上とすべきであるが、電流Iを計測したいファスナ15の配置によっては、最小曲率半径の関係で光ファイバ20を単純に円形に巻き回すことができない場合がある。以下、この問題に対する対策例を、図6、7を参照しながら説明する。
図6に示すように、ファスナ15a〜15cが隣接して配置されており、その中でファスナ15aを流れる電流を計測しようとする場合に、ファスナ15b、15cがあるために最小曲率半径の関係で一転鎖線のように光ファイバ20を湾曲できないことがある。そこで、図6に実線で示すように、光ファイバ20をファスナ15aの周囲に巻き回してできる曲率が、光ファイバ20の最小曲率半径を超えるように光ファイバ20を引き回す。
ポイントは、ファスナ15aに近接する領域だけでファスナ15aの周囲に光ファイバ20を巻き回すのではなく、領域を広く使うことである。そして、隣接する複数のファスナ15a〜15cの中で、ファスナ15aを計測の対象(対象ファスナ)とする一方、ファスナ15b、cを計測の対象から外し(非対象ファスナ)、ファスナ15aを流れる電流Iを計測するものと考える。この場合、対象ファスナと非対象ファスナを含めた隣接する複数のファスナ15a〜15cの周囲に第一巻き回し部20cを形成する。第一巻き回し部20cはファスナ15b、15cの周囲をも含むように巻き回されるので、曲率を大きく取れる。第一巻き回し部20cに繋がるターン部20dは、第一巻き回し部20cに比べると曲率は小さいが、このターン部20dを機体構造体10の外部など曲率の制約のない領域に設けることで、最小曲率半径以上の曲率を容易に確保できる。ターン部20dに繋がる第二巻き回し部20eは、ファスナ15aを除くファスナ15b,15cの周囲に巻き回される。この第二巻き回し部20eも曲率を大きくすることができる。
このように巻き回された光ファイバ20により電流Iを計測する際にも、上述したのと同様に、他端20bから直線状偏光(第一直線状偏光)を入射する。そして、一端20aで反射し他端20bから出射される直線状偏光(第二直線状偏光)の偏波面の回転角θに基づいて電流Iが求められる。ここで、ファスナ15a〜15cの各々に流れる電流IをIα、Iβ、Iγとする。第一巻き回し部20cはファスナ15a〜15cを取り囲んでいるので、当該部分で計測されるべき電流IはIα+Iβ+Iγとなる。また、第二巻き回し部20eはファスナ15b、15cを取り囲んでいるので、当該部分で計測されるべき電流IはIβ+Iγとなる。しかし、第二巻き回し部20eで計測されるべき電流(ファラデー回転角)は、第一巻き回し部20cで計測されるべき電流と相殺するように働くため、他端20bから出射される直線状偏光の偏波面の回転角θに基づく電流Iは、(Iα+Iβ+Iγ)−(Iβ+Iγ)、つまりファスナ15aに流れる電流Iαとなる。
以上では、一本の光ファイバ20で隣接するファスナ15a〜15cの中のファスナ15aを流れる電流Iを計測したが、図7に示すように、二本の光ファイバを用いることもできる。つまり、隣接する複数のファスナ15a〜15cの周囲に第一光ファイバ20Aを巻き回す。また、ファスナ15b、15cの周囲であって、ファスナ15aとの間に第二光ファイバ20Bを巻き回す。第一光ファイバ20A、第二光ファイバ20Bはともに、ファスナ15b、15cの周囲に巻き回されるので、曲率を大きく取れる。
図7に示す形態においても、上述したのと同様に、第一光ファイバ20A、第二光ファイバ20Bの各々の他端20bから直線状偏光(第一直線状偏光)を入射する。そして、第一光ファイバ20A、第二光ファイバ20Bの各々の一端20aで反射し他端20bから出射される直線状偏光(第二直線状偏光)の偏波面の回転角θに基づいて、第一光ファイバ20A、第二光ファイバ20Bの各々に対応する電流IA、IBが求められる。ここで、電流IAはIα+Iβ+Iγであり、IBはIβ+Iγである。したがって、ファスナ15aに流れる電流Iαは、IA−IBにより求められる。
図6と図7を比較すると、図6は一本の光ファイバ20でファスナ15aに流れる電流Iを計測できるので、それに繋がる電流計測システム30が一つで足りるととともに、(Iα+Iβ+Iγ)−(Iβ+Iγ)の演算処理を行わなくてもよい。一方、図7は二本の第一光ファイバ20A、第二光ファイバ20Bを用いているので、図6のターン部20dに相当する部位を設ける必要がないため、複数のファスナ15が隣接して配置されていることに対してより柔軟な対応ができる。
なお、以上では3本のファスナ15a〜15cについて説明したが、2本以上のファスナ15が隣接して配置されている場合に本実施の形態を広く適用できる。
[第4実施形態]
本実施の形態による電流計測方法は、例えば航空機の機体(実構造体)を設計する際、あるいは適合性を証明する際に用いられる。図8を参照しながらその手順を説明する。
実構造体の一部又は全部を模擬したクーポンが用意される。このクーポンに対して、ファスナ15の周囲に光ファイバ20が収容される収容溝14(12,21)を加工、形成する(図8 S101)。この収容溝14は、電流Iの計測対象となるファスナ15の全部又は一部について形成される。ファスナ15の周囲に限らず、光ファイバ20の引き回しに必要な特に狭隘部には、第一部材11、第二部材13に溝加工を行う(図8 S103)。これで、光ファイバ20の施工準備が整うことになるが、形成される溝は光ファイバ20を収容できるサイズを有していればよい。したがって、溝加工を行ったクーポンは実構造体と形状が実質的に同じである。
次に、先に加工、成形した収容溝14に光ファイバ20を設置する(図8 S105)。なお、ファスナ15以外に電流を計測したい箇所、部材がある場合には、そこにも光ファイバ20を設置することができる。また、実構造体の構造のままで適切な部位に光ファイバ20を通すことができる場合には収容溝14を形成する必要はない。たとえば径が0.5mmの細径の光ファイバ20であれば、実構造体の僅かな隙間に通すことができる。
光ファイバ20は偏光波分波部と伝送用光ファイバを介して、前述した電流計測システム30に繋がれており、光ファイバ20の設置が完了したならば、電流計測システム30の光源部31から光を出射する。一方、落雷を想定した電流(雷電流)をクーポンに印加する。印加される雷電流の波形の一例を図9に示す。この雷電流は、数10〜100kAの最大電流Hが先行し、次いで数kAレベルの直流成分D、数100Aレベルの低周波成分Lを順に印加するものである。もちろん、模擬電流として小さな電流値を用いても良い。
雷電流を印加することで、ファスナ15には電流Iが流れる。そうすると、光源部31から出射され、一端20aで反射された光は、ファスナ15を流れる電流により生ずる磁界の影響で、その偏波面が磁界を光ファイバ20に沿って線積分した大きさに応じた角度だけ回転させられる。その際、光ファイバ20をファスナ15に流れる電流Iをぐるっと周回するよう巻きまわし、その一端20aと他端20bを偏光波分波部で一致させることで、前記線積分は電流Iによって生じる磁界の周回積分となる。この原理を用いて、前記偏波面の角度により、信号処理部38において電流Iが特定される。以上のようにして電流計測が行われる(図8 S107)。
複数のファスナ15について計測し収集されたデータは整理される(図8 S109)。最も典型的には、各々のファスナ15とそれを流れた電流とを対応付けたデータ集を構築する。さらに、スパークの発生の有無をも対応付ける。このデータ集は解析ツールの検証(図8 S111)に用いられる。
本実施の形態は、解析ツール(図8 S117)を備えている。この解析ツールは、航空機の機体の実構造体、あるいはそれを模擬したクーポンに流れる雷撃電流分布および電圧分布をシミュレートするものである。雷撃現象がパルス現象であることから、電磁界解析コードとしてはマクセル方程式の時間項を正確に計算できるFDTD法(Finite Difference Time Domain法)を用いることが好ましいが、一般的なFEM法(Finite Element Method)なども利用可能である。また、本解析ツールに必要な実構造体を模擬する立体形状モデルは、たとえば実構造体の3次元CADモデルから直接生成する。さらに、この立体形状モデルの他、雷撃電流値およびその時間変化、材料の電気的定数、種々の部品間の接触抵抗など種々のパラメータも含めて作成した解析モデルを本解析ツールに入力することにより、機体、特に主翼燃料タンク構造に流れる電流の分布、および各部に発生する電圧の、時間履歴を解析する。
この立体形状モデルは、実構造体どおりであるが好ましい。しかしながら、たとえば、雷撃電流の立ち上がりは数μsであり、その周波数成分は100kHz程度である。そのため、実構造体がアルミニウム製の場合、浸透厚さは数十μmである。一方、CFRP(Carbon-Fiber Reinforced Plastic)製であれば数mmとなるがCFRPの炭素繊維の各層は数百μm程度である。したがって、正確な計算のためには数μm〜数十μmの間隔で計算セルを生成する必要があるが、このようなセルサイズで十数mの機体構造を切るのは全く非現実的であり、計算時間を考慮してモディファイすることが必要である。
また、CFRPの様な特殊な材料の特性の電気的挙動は複雑であり、特殊なモデルが必要である。このように解析モデルは実構造体からモディファイされるので、その信頼性を確認する必要があり、一般にこの確認は、実構造体あるいはクーポンを用いて行われる各種の試験で得られるデータに基づいて構築される。したがって、正確なモデルを作成するためには正確な試験を行う必要がある。しかも、上記の通り物理現象は構造体の数百μmのサイズの違いにも影響されるので、結合部の形状を変化させることなく電流を計測する手段が必要である。また、航空機の機体を設計する際、あるいは適合性を証明する際に前記解析ツールの使用は不可決であり、そのためにもより正確なモデルが要求されている。
本実施の形態では、ファスナ15に流れる電流Iを正確に計測できるので、その結果を使って、解析ツールの検証を行う(図8 S111)。この検証では、例えば、解析ツールのモデルの中でファスナ15に流れる電流と、同じファスナ15について計測で得られた電流(実測)とを比較して、解析ツールの精度を検証する。このような比較は、流れる電流が計測された全てのファスナ15について行われる。比較の結果、モデルと実測にずれがある場合には、解析モデルを実測に合うように再検討する。このとき、ファスナ15を流れる電流の他に、発生する磁場、電圧その他の因子についても比較検証する。こうして、検証された解析ツールが得られる(図8 S115)。特にCFRPの場合、数百μmの厚さの導電層は繊維方向に高い導電性を持ち、垂直方向に高抵抗であり、ファスナ15との接触部の接触インピーダンスも複雑であるので、解析モデルの入念な検討が必要である。
本ファスナ電流の計測及び本ファスナ電流の計測により検証された解析ツールは、落雷による発火を防ぐための航空機の構造上の設計を改良するために用いられる(図8 S119)。
まず、本ファスナ電流の計測による設計の改良について説明する。本計測方法によれば、航空機の実構造体の設計を計測のために変更することなく、実構造体あるいはそれを模擬したクーポン供試体で計測することができるので、実際の実機への雷撃時、あるいは、適合性証明試験に用いられる規定の雷撃電流波形により当該ファスナ15に流れる電流を正確に計測することができる。したがって、設計のために余分なマージンを考える必要がなくなるため、ファスナ電流の設計要求値を必要最小限に設計することが可能となる。従来の計測ではこのファスナ電流が正確に計測できないため、その誤差として予想されるマージンを加味して設計する必要が生じ、ファスナ電流の設計要求値が大きくなり、必要以上の対策を施す結果、重量やコストなどが増加していた。たとえば、設計対象のファスナを本計測法で直接計測した場合、計測された値をそのまま設計要求値としてよいので、ギリギリの設計により十分で間違いのない安全を確保できる。一方、従来、たとえば当該部に計測のためのストラップなどを付けてカレントトランスフォーマで計測した場合、ストラップのインダクタンス増や電流の流れの変化を考慮して、計測された電流値にたとえば1倍程度のマージンを加味した設計要求値とすることになり、その分ファスナ取り付けの工作精度向上、スパーク封じ込めのためのシーラント量増加などの対策が必要となっていた。
次に、本ファスナ電流の計測により検証された解析ツールによる設計の改良について説明する。航空機の燃料タンクには数万本のファスナがある。これらのファスナ1本1本全てに対し前述したようなファスナ電流の計測を行うことは不可能である。そこで従来は、試験や経験により条件が厳しいと思われるファスナを複数選択し、それらのファスナ毎にクーポン供試体を準備して試験を行っていた。このとき、まず前記のとおり、従来のファスナ計測で必要なマージンを加味して設計する必要があった。さらに、選択したファスナが本当に最も条件が厳しいとは限らないので、ここでマージンを加味する必要があった。したがって、たとえば、先ほどのマージン1に加えて、さらにたとえばマージン1を加味するとした場合、3倍の設計要求値となり、非常に過重な設計をしなければならなかった。一方、選択したファスナが最も条件が厳しいことの確からしさを高めるために、解析コードを用いることが考えられる。すなわち、前述のように、航空機の機体の実構造体、あるいはそれを模擬したクーポンに流れる雷撃電流分布および電圧分布をシミュレートする解析ツールにより最も条件が厳しいファスナを選択し、その部位の電流値を推測することができる。これにより、マージンを低減することが可能であるが、従来はこの解析ツールの検証が前述のように精度の良くない計測で行われていたので、マージンを大きく低減することが出来なかった。それに対し、本ファスナ電流の計測で解析モデルを検証し、その検証された解析モデルで正確に各部位のファスナ電流値を予測することで、設計要求値はたとえば0.5程度のマージンで充分となり、必要最小限の設計を行うことで、間違いのない安全な設計を行うことが可能となった。なお、このような検討を行う際には、航空機のどの部分に電流路ができるかによって各ファスナの電流が大きく異なるので、各種のシナリオを考慮する必要がある。被雷地点として考慮しなければならないのは、たとえば、当該ファスナ、翼端、エンジン、機体頭部、尾翼などが挙げられ、これらのうちから2つを被雷地点に選んだものがシナリオとなる(雷撃には入射部と出射部があるため)。このように考慮すべきパターンが非常に多いため、正確な解析無しにマージンの低減は不可能である。
また、本ファスナ電流の計測及び本ファスナ電流の計測により検証された解析ツールは、航空機が所定の安全基準に適合していることを証明(図8 S121(適合性証明))するために用いられる。
まず、本ファスナ電流の計測による適合性証明について説明する。適合性証明では実機に規定の雷撃波形を印加した場合に当該ファスナに流れるはずの電流を、雷撃対策の適合性を確認するためのクーポン供試体に印加する必要がある。その際、まず、当該ファスナに流れるはずの電流を正確に把握する必要がある。本ファスナ電流の計測では、前述のように、従来と比べてその電流が正確に計測できる。さらに、雷撃対策の適合性を確認するためにクーポン供試体に電流を流す際には、本ファスナ電流の計測により、正確な電流を流すことができる。これにより、前述の方法で設計要求値を下げることに成功した耐雷設計を用いたファスナ部の適合性証明のための試験を、スパークを起こすことなく無事に行うことができる。これにより、適合性証明を適正に行う事ができるのはもちろん、必要最小限のコストで短期間に終えることができる。
次に、本ファスナ電流の計測により検証された解析ツールによる適合性証明について説明する。まず、航空機の燃料タンクに用いられるファスナを構造の種類、ファスナのサイズ・材質、締結する部材の種類、当該部位に規定されている雷撃電流の大小などによってグループ分けする。このグループ毎に、本ファスナ電流の計測により検証された解析ツールで、全てのファスナ、あるいは、ファスナが用いられている締結部の電流を解析する。さらに、この解析においては前述のように航空機のどの部分に電流路ができるかによって各ファスナの電流が大きく異なるので、各種のシナリオを考慮して複数の解析を実施する。被雷地点として考慮しなければならないのは、たとえば、当該ファスナ、翼端、エンジン、機体頭部、尾翼などであり、これらのうちから2つを被雷地点に選んだものがシナリオとなる(雷撃には入射部と出射部があるため)。考慮すべきシナリオを正確な解析モデルで解析し、当該ファスナのグループで最も条件が厳しいファスナあるいはファスナが用いられている締結部の電流を求め、試験電流値を決定する。これにより、疑義を生じることなく必要最低限の試験電流値で適合性証明の試験を行うことができ、スパークを起こすことなく当該試験を無事に行うことができる。これにより、適合性証明を適正に行い、安全な航空機であることを証明することができるのはもちろん、必要最小限のコストで短期間に終えることができる。
以上の実施形態によると、計測される電流Iの精度が高いので、これを反映した解析ツールは高い信頼性を有する。このことは、検証された解析ツールを用いることにより、より大きなクーポンを精度よく解析することができることを示している。
また、検証された解析ツール及び計測されたファスナ電流を併用して行われる機体の設計、適合性証明は信頼性が高い。この中には、従来計測できなかった低周波成分、直流成分も含まれているので、本実施形態によると、実態に即した高い信頼性が確保される。
なお、上記実施の形態では航空機を対象として説明したが、本発明は自動車、船舶、ヘリコプター及び列車などの移動体はもちろん、屋外に配置され落雷のおそれのある構造体に広く適用できる。
また、以上では締結部材としてファスナについて説明したが、リベット、ボルトなどについて適用できることは言うまでもない。また、光導波体として光ファイバについて説明したが、透明樹脂などからなり光を透過する線状材料を本発明に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、他の構成に適宜変更することが可能である。
10,110,120,130…機体構造体
11…第一部材、13…第二部材
12,14,21…収容溝
15,15a,15b,15c…ファスナ、16…ファスナ本体、16e…突出端部、17…カラー
20…光ファイバ、20A…第一光ファイバ、20B…第二光ファイバ
20a…一端、20b…他端、20c…第一巻き回し部、20e…第二巻き回し部
30…電流計測システム
40…データ収集部

Claims (13)

  1. 第一部材と第二部材が、前記第一部材と前記第二部材を貫通する1又は2以上の導体からなる締結部材により結合された継ぎ手部分に流れる電流Iを計測する方法であって、
    一端と他端を有する線状光導波体の前記一端側を、前記継ぎ手部分の電流計測対象領域の周囲に巻き回すステップ(a)と、
    前記線状光導波体の前記他端から第一直線状偏光を入射するステップ(b)、
    前記他端から入射された前記第一直線状偏光が前記一端で反射され、前記線状光導波体の前記他端から出射される第二直線状偏光を検知するステップ(c)と、
    前記第一直線状偏光に対する前記第二直線状偏光の偏波面の回転角に基づいて前記電流Iを特定するステップ(d)と、を備え、
    前記ステップ(a)において、
    前記第一部材及び前記第二部材の一方又は双方に設けられた、前記締結部材の径方向断面の周囲を取り囲むように前記線状光導波体を巻き回す溝からなる経路を用い、前記締結部材の周囲にループ状に前記線状光導波体を巻き回すことを特徴とする電流計測方法。
  2. 前記ステップ(a)において、
    単数または複数の前記締結部材の周囲に前記線状光導波体を巻き回す、
    請求項1に記載の電流計測方法。
  3. 前記ステップ(a)において、
    複数の前記締結部材の各々の周囲に前記線状光導波体の前記一端側を巻き回し、
    前記ステップ(b)において、
    前記締結部材の各々の周囲に巻き回された前記線状光導波体の前記他端から前記第一直線状偏光を入射し、
    前記ステップ(c)において、
    各々の前記線状光導波体の前記他端から出射される第二直線状偏光を検知し、
    前記ステップ(d)において、
    各々の前記線状光導波体について、前記偏波面の回転角に基づいて前記電流Iを特定する、
    請求項1又は2に記載の電流計測方法。
  4. 前記ステップ(a)において、
    前記第一部材に形成した前記経路に前記線状光導波体を巻き回し、
    前記ステップ(d)において、
    前記第一部材を経て、前記第一部材に対応する領域の前記締結部材を流れる前記電流Iを特定する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流計測方法。
  5. 前記ステップ(a)において、
    前記第二部材に形成した前記経路に前記線状光導波体を巻き回し、
    前記ステップ(d)において、
    前記締結部材を経て第二部材に流れる前記電流Iであって、前記第二部材に対応する領域の前記締結部材を流れる前記電流Iを特定する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流計測方法。
  6. 前記第二部材を貫通する前記締結部材の突出端部に嵌合されて、前記第一部材及び前記第二部材に前記締結部材を締め付ける締め付け具を備え、
    前記ステップ(a)において、
    前記締め付け具に形成した前記経路に前記線状光導波体を巻き回し、
    前記ステップ(d)において、
    前記締結部材の前記突出端部を経て第二部材に流れる前記電流Iを特定する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流計測方法。
  7. 隣接する複数の前記締結部材が、一つの対象締結部材と他の非対象締結部材からなり、前記対象締結部材に流れる前記電流Iを特定する場合に、
    前記ステップ(a)において、
    前記対象締結部材と前記非対象締結部材を含めた隣接する複数の前記締結部材の周囲に第一巻き回し部を形成するとともに、
    前記第一巻き回し部よりも一端側において前記非対象締結部材の周囲に、前記第一巻き回し部とターン部を介して繋がる第二巻き回し部を形成する、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の電流計測方法。
  8. 隣接する複数の前記締結部材が、一つの前記対象締結部材と他の前記非対象締結部材からなり、前記対象締結部材に流れる前記電流Iを特定する場合に、
    前記ステップ(a)おいて、
    前記対象締結部材と前記非対象締結部材を含めた隣接する複数の前記締結部材の周囲に第一線状光導波体を巻き回すとともに、
    前記対象締結部材を除く前記非対象締結部材の周囲に第二線状光導波体を巻き回し、
    前記ステップ(b)において、
    前記第一線状光導波体及び前記第二線状光導波体の各々に前記第一直線状偏光を入射し、
    前記ステップ(c)において、
    前記第一線状光導波体及び前記第二線状光導波体の各々から出射される前記第二直線状偏光を検知し、
    前記ステップ(d)において、
    前記第一線状光導波体について特定される第一電流と前記第二線状光導波体について特定される第二電流との差分に基づいて前記対象締結部材を流れる電流Iを特定する、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の電流計測方法。
  9. 第一部材と第二部材が、前記第一部材と前記第二部材を貫通する1又は2以上の導体からなる締結部材により結合された継ぎ手部分に流れる電流Iを計測するために少なくとも前記第一部材もしくは前記第二部材に、前記締結部材が貫通可能な穴を有し、且つ線状光導波体が電流計測対象領域に巻き回すための溝からなる経路を有する部材であって、
    一端と他端を有する前記線状光導波体の前記一端側を、前記継ぎ手部分の前記電流計測対象領域の周囲に巻き回し、
    前記線状光導波体の前記他端から第一直線状偏光を入射し、
    前記他端から入射された前記第一直線状偏光が前記一端で反射され、前記線状光導波体の前記他端から出射される第二直線状偏光を検知し、
    前記第一直線状偏光に対する前記第二直線状偏光の偏波面の回転角に基づいて前記電流Iを特定するために用いることを特徴とする計測用部材。
  10. 航空機のファスナの燃料タンク防爆耐雷対策の設計方法であって、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流計測方法を航空機の実構造体あるいはそれを模擬したクーポン供試体に適用してファスナ電流を計測し、
    その電流値を元に当該ファスナ部の設計要求電流値を決める、
    ことを特徴とする航空機のファスナ部の耐雷対策設計方法。
  11. 航空機のファスナ部の燃料タンク防爆耐雷対策の設計方法であって、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流計測方法を航空機の実構造体あるいはそれを模擬したクーポン供試体のファスナ部に適用し、
    その計測結果を用いてファスナ電流の解析モデルを作成あるいは改善し、
    その解析モデルを用いて当該ファスナ部の設計要求値を決める、
    ことを特徴とする航空機のファスナ部の耐雷対策設計方法。
  12. 航空機の燃料タンク防爆耐雷対策の適合性証明試験方法であって、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流計測方法を航空機の実構造体あるいはそれを模擬したクーポン供試体に適用してファスナ電流を計測し、
    試験を実施する、
    ことを特徴とする航空機のファスナ部の燃料タンク防爆耐雷対策の適合性証明試験方法。
  13. 航空機の燃料タンク耐雷防爆対策の適合性証明試験方法であって、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流計測方法を航空機の実構造体あるいはそれを模擬したクーポン供試体のファスナ部に適用し、
    その計測結果を用いてファスナ電流の解析モデルを作成あるいは改善し、
    ファスナあるいはファスナによる締結部の電流値をその解析モデルを用いて算出し、
    その値を元に試験電流値を決定する、
    ことを特徴とする航空機のファスナ部の燃料タンク防爆耐雷対策の適合性証明試験方法。
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