JP5703981B2 - 光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含み、
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかであり、
CH 2 =CR 4 −COOR 5 −Ar ・・・(II)
CH 2 =CR 4 −COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R 4 は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR 5 で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR 5 は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
前記光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選ばれる1種以上である、
光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上の前記アシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[5]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[6]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[7]
25℃における粘度が5〜15mPa・sである、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[5]
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかである、である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
CH2=CR4−COOR5−Ar ・・・(II)
CH2=CR4−COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R4は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR5で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR5は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
[6]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[7]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[8]
25℃における粘度が5〜15mPa・sである、[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。当該重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を所定量ずつ含む。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、上記一般式(I)で示される。
本実施形態のインク組成物は、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類に加えて、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、硬化性、耐擦性、及び重合開始剤の溶解性が優れたものとなる。
CH2=CR4−COOR5−Ar ・・・(II)
CH2=CR4−COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R4は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR5で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR5は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
上記の一般式(II)において、R5で表される基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分枝状、又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、並びに構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく挙げられる。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、並びにオキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数1〜4のアルキレン基が好適に用いられる。上記有機残基が置換されていてもよい基である場合、置換基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、及びハロ基が挙げられ、置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。
上記の一般式(II)及び(III)において、Ar(芳香環骨格)に少なくとも1個含まれるアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。アリール基の数は1以上であり、好ましくは1又は2である。アリール基は、当該基を構成する炭素原子のうち、式(II)中のR5で表される有機残基に結合する炭素原子、式(III)における−COO−に結合する炭素原子、及びアリール基を複数有する場合にはアリール基同士を結び付ける炭素原子、以外の炭素原子に置換されていてもよい。置換されている場合、アリール基1個当たりの置換数は1以上であり、好ましくは1又は2である。置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基及びアルコキシ基、カルボキシル基、ハロ基、並びに水酸基が挙げられる。
また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類及び芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート以外に、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーもさらに使用可能である(以下、「その他の重合性化合物」という。)。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
本実施形態のインク組成物は重合促進剤を含んでもよい。この重合促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル及びアミノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
本実施形態のインク組成物は重合禁止剤を含んでもよい。この重合禁止剤としては、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール化合物、p−ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5−ジーブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、及び2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル−β−ナフチルアミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、及びジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、及びピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等〔商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、25℃における粘度が5〜15mPa・sであることが好ましい。
本実施形態のインク組成物は、後述する記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。下記実施形態の記録方法は、水性インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水性インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、上記のインク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
本発明の一実施形態は、記録方法に係る。上記実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、本実施形態の記録方法に用いることができる。当該記録方法は、インクジェット方式に適用することができる。当該記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
吐出工程において、被記録媒体上にインク組成物が吐出され、インク組成物が被記録媒体に付着する。吐出時におけるインク組成物の粘度は、5〜30mPa・sが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出され付着したインク組成物が、光(紫外線)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
〔芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート〕
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「PEA」と略記した。)
・FA−BZA(ベンジルアクリレート、日立化成社製商品名、以下では「BZA」と略記した。)
〔その他の重合性化合物〕
・NKエステル A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「A−TMPT」と略記した。)
・IBXA(イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「IBXA」と略記した。)
・NKエステル APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下では「3PGA」と略記した。)
・NKエステル APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「2PGA」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX−S」と略記した。)
〔重合促進剤〕
・EBECRYL7100(ダイセル・サイテック社製商品名、アミノアクリレート、以下では「EBECRYL」と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(東京化成社製商品名、p−メトキシフェノール、以下では「MEHQ」と略記した。)
〔スリップ剤〕
・UV−3500(BYK社製商品名、シリコン系表面調整剤、以下では「UV3500」と略記した。)
〔顔料〕
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)、BASF社製商品名、以下では「BLUE GLVO」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「SOL36000」と略記した。)
下記表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、シアン色のインク組成物を得た。
(1.粘度)
上記の各インク組成物の粘度を、DVM−E型回転粘度計(東京計器社(TOKYO KEIKI INC)製)を用いて、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:15mPa・s以下、
B:15mPa・sを超えて25mPa・s以下、
C:25mPa・s超。
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、上記の各インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPVCシート(Flontlite Grossy 120g〔商品名〕、Cooley社製)上に、印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1,000mW/cm2であり且つ波長が395nmである紫外線を1パス当たり200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PVCシート上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、「ベタパターン画像」とは記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
塗膜に関する硬化性は、表面タックがなくなるまでのパス数で評価した。ここで、「パス数」は、ヘッドが記録物に対して移動し、ヘッドに搭載した紫外線照射装置から塗膜に向けて紫外線照射した回数を意味する。評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:1パス、
B:2パス、
C:3パス以上。
上記「2.硬化性」の試験で、表面タック性がなくなるまで光照射を行い硬化させた記録物を用いた。JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、記録物の塗膜面にクロスカットを行い、セロハンテープによる剥離試験の結果から、下記のランクA〜Eに基づき密着性を評価した。ここで、上記クロスカット法について説明する。
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直行するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒で確実に引き離した。
評価基準は以下のとおりである。なお、各ランクの値は、ハガレ率を計算して得られた値の小数点第1位を四捨五入したものである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:ハガレ率 0〜5%、
B:ハガレ率 6〜15%、
C:ハガレ率 16〜35%、
D:ハガレ率 36〜65%、
E:ハガレ率 66〜100%。
JIS K−5701に準じ、学振型磨耗堅牢度試験機(テスター産業社(TESTER SANGYO CO., LTD.)製商品名)を用いて、耐擦性試験を行った。試験方法は、上記「2.硬化性」の試験で得られた記録物の表面に金巾を乗せ、この金巾に500gの荷重をかけた状態で100往復、記録面を擦り、擦った後の記録物表面の剥離や傷を目視で観察するというものである。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:金巾に汚れなし、記録面の剥離・傷なし。
B:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷なし。
C:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が線状に少し見られた。
D:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が面上に大きく見られた。
上記の各インク組成物に対して、顔料及び顔料分散剤成分を入れずにそれ以外の成分のみで同様に顔料抜きのインク組成物を調合し、十分に撹拌した。その後、目視で光重合開始剤の溶け残りがあるか否かを評価した。光重合開始剤の溶け残りが無いサンプルについては、0℃の恒温槽にインク組成物を入れ、24時間後に取り出し室温に戻した後、インク組成物中に光重合開始剤が析出しているか否かを再度目視で観察した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:室温撹拌後及び0℃保管後共に、光重合開始剤の溶け残りや析出は見られなかった。
B:室温撹拌後は光重合開始剤の溶け残りが無かったが、0℃保管後は光重合開始剤の析出が見られた。
C:室温撹拌後に光重合開始剤の溶け残りが見られた。
実施例1、9、及び14について、印刷物の膜厚を10μmでなく2μmとした点以外は上記「2.硬化性」の試験と同様にして、薄膜硬化性の評価を行った。評価結果を下記表3及び表4に示す。
Claims (8)
- 重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含み、
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかであり、
CH 2 =CR 4 −COOR 5 −Ar ・・・(II)
CH 2 =CR 4 −COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R 4 は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR 5 で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR 5 は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
前記光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選ばれる1種以上である、
光硬化型インクジェット記録用インク組成物。 - 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上の前記アシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 25℃における粘度が5〜15mPa・sである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、
前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、
を含む、インクジェット記録方法。
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