JP5703981B2 - 光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法 - Google Patents

光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、光硬化型インクジェット記録用インク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置であり、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像を形成するため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
近年、インクジェット方式の記録方法において、良好な耐水性、耐溶剤性、及び耐擦過性などを与えることのできるインク組成物として、光を照射すると硬化する光硬化型インク組成物が使用されている。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかであり、
CH 2 =CR 4 −COOR 5 −Ar ・・・(II)
CH 2 =CR 4 −COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R 4 は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR 5 で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR 5 は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
前記光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選ばれる1種以上である、
光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上の前記アシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。

前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]〜[]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。

前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、[1]〜[]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。

25℃における粘度が5〜15mPa・sである、[1]〜[]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。

[1]〜[]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
例えば、特許文献3には、少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートモノマー、少なくとも1つのビニルエーテルモノマー、少なくとも1つのラジカル光開始剤、及び少なくとも1つの分散性顔料を含み、1重量部のビニルエーテルモノマーに対して2〜15重量部の多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有し、上記ビニルエーテルモノマーの含量が1〜15重量%であり、上記多官能性(メタ)アクリレートモノマーの含量が50〜95重量%であるインクジェット用インクが開示されている。
例えば、特許文献4には、25.8重量%のヘキサンジオールジアクリレート、4.6重量%のトリプロピレングリコールジアクリレートのアミン付加化合物、2.3重量%の2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2.5重量%のアルコキシ化フェノキシエチルアクリレート、3.7重量%の2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、3.2重量%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2.8重量%のトリメチルベンゾフェノン及びメチルベンゾフェノンの混合物、0.5重量%のイソプロピルチオキサントン、27.8重量%のシアン顔料分散液、並びに17.6重量%の2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートを含む放射線硬化性インクジェットインクが開示されている。
例えば、特許文献5には、9.5質量%の単官能アクリルモノマー(ベンジルアクリレート)と、9.8質量%のアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルと、47.3質量%の2官能アクリルモノマー(ネオペンチルグリコールジアクリレート)と、19.4質量%の3官能アクリルモノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)と、1.0質量%の光重合開始剤と、2.0質量%の酸化防止剤と、10.0質量%のカップリング剤と、1.0質量%の界面活性剤と、からなる光インプリント用硬化性組成物が開示されている。
特許第3461501号明細書 特許第3544658号明細書 特開2009−62541号公報 特表2008−507598号公報 特開2010−157706号公報
しかしながら、特許文献1〜5に開示されたインク等は、少なくとも硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性の何れかに劣るという問題が生じる。そこで、本発明は、硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性に優れた光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供することを目的の一つとする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。本発明者らは、各特許文献に開示されたインク等が有する問題及びその問題が生じる原因を検討した。まず、特許文献1及び2に開示された活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インクや反応性希釈剤組成物は、特に硬化性及び光重合開始剤の溶解性に劣り、保存安定性にやや劣るという問題が生じる。本発明者らは、この問題の原因が、インク等に含まれる水酸基含有重合性化合物が、保存安定性を悪化させるとともに光重合開始剤の溶解性に殆ど寄与しない点にあることを見出した。また、特許文献3に開示されたインクジェット用インクは、特に硬化性及び密着性に劣り、高粘度化するとともに記録物の柔軟性にやや劣るという問題が生じる。本発明者らは、この問題の原因が、インクに含まれる、置換基としてビニルエーテル基のみを有するビニルエーテルモノマーが、硬化性に殆ど寄与せず、かつ、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが多すぎるため密着性及び記録物の柔軟性を悪化させ高粘度化を引き起こす点にあることを見出した。また、特許文献4に開示された放射線硬化性インクジェットインクは、硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性に劣り、高粘度化するとともに耐擦性にやや劣るという問題が生じる。本発明者らは、この問題の原因が、アルコキシ化フェノキシエチルアクリレートの添加量が少量である点及びアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量が少ない点にあることを見出した。また、特許文献5に開示された光インプリント用硬化性組成物は、硬化性及び密着性に劣るという問題が生じる。本発明者らは、この問題の原因が、主にアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量が少ないため、上記光インプリント用硬化性組成物の組成がインクジェットインクに適さない点にあることを見出した。
以上の知見に基づき、本発明者らが更に鋭意検討を重ねた結果、所定構造のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を各々所定量含む光硬化型インクジェット記録用インク組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[5]
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかである、である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
CH2=CR4−COOR5−Ar ・・・(II)
CH2=CR4−COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R4は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR5で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR5は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
[6]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[7]
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[8]
25℃における粘度が5〜15mPa・sである、[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
本明細書において、「硬化」とは、重合性化合物を含むインクに放射線を照射すると、重合性化合物が重合してインクが固化することをいう。「硬化性」とは、光を感応して硬化する性質をいう。「密着性」とは、インクの塗膜が素地から剥離しにくい性質をいい、特に実施例では、直角の格子パターンが硬化物に切り込まれ、被記録媒体の素地まで貫通するときの当該性質をいう。「耐擦性」とは、硬化物を引っ掻いた時に、硬化物が被記録媒体から剥がれにくい性質をいう。「保存安定性」とは、インクを60℃で1週間保存したときに、保存前後における粘度が変化しにくい性質をいう。
本明細書において、「記録物」とは、被記録媒体上にインクが記録されて硬化物が形成されたものをいう。なお、本明細書における硬化物は、インクの硬化膜や塗膜を含む、硬化された物質を意味する。
[光硬化型インクジェット記録用インク組成物]
本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。当該重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を所定量ずつ含む。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類)
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、上記一般式(I)で示される。
インク組成物が当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を所定量含有することにより、インクの硬化性を良好なものとすることができ、さらにインクを低粘度化することができる。さらに言えば、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル基を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、インクの硬化性に優れる。
上記の一般式(I)において、R2で表される炭素数2〜20の2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
これらの中でも、インクを顕著に低粘度化でき、引火点が高く、かつ、インクの硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、すなわち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。特にアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、何れも単純な構造であって分子量が小さいため、インクを顕著に低粘度化することができる。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルの方が、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルに比べて硬化性の面で優れている。
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、45〜80質量%である。含有量が45質量%以上であると、密着性に優れるとともに硬化性及び耐擦性が良好なものとなる。一方で、含有量が80質量%以下であると、光重合開始剤の溶解性に優れるとともに耐擦性が良好なものとなる。また、上記含有量は、密着性、耐擦性、及び光重合開始剤の溶解性に一層優れるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、47〜77質量%が好ましく、52〜72質量%がより好ましい。
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステルと水酸基含有ビニルエーテルとをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとアルキルビニルエーテルとをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
(芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート)
本実施形態のインク組成物は、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類に加えて、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、硬化性、耐擦性、及び重合開始剤の溶解性が優れたものとなる。
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格を有し、かつ、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を一分子中に1個有する化合物である。芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、ビスコート#192(大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、フェノキシエチルアクリレート)、SR340(フェノキシエチルメタクリレート)、SR339A(フェノキシエチルアクリレート)、SR504(エトキシ化ノニルフェニルアクリレート)、CD614(アルコキシ化ノニルフェニルアクリレート)、及びCD9087(アルコキシ化2−フェノキシエチルアクリレート)(以上、全てサートマー社(Sartomer Company Inc.)製商品名)が挙げられる。
これらの中でも、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかが好ましい。
CH2=CR4−COOR5−Ar ・・・(II)
CH2=CR4−COO−Ar ・・・(III)
(上記式(II)及び(III)中、R4は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR5で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR5は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
上記の一般式(II)において、R5で表される基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分枝状、又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、並びに構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく挙げられる。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、並びにオキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数1〜4のアルキレン基が好適に用いられる。上記有機残基が置換されていてもよい基である場合、置換基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、及びハロ基が挙げられ、置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。
上記の一般式(II)及び(III)において、Ar(芳香環骨格)に少なくとも1個含まれるアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。アリール基の数は1以上であり、好ましくは1又は2である。アリール基は、当該基を構成する炭素原子のうち、式(II)中のR5で表される有機残基に結合する炭素原子、式(III)における−COO−に結合する炭素原子、及びアリール基を複数有する場合にはアリール基同士を結び付ける炭素原子、以外の炭素原子に置換されていてもよい。置換されている場合、アリール基1個当たりの置換数は1以上であり、好ましくは1又は2である。置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基及びアルコキシ基、カルボキシル基、ハロ基、並びに水酸基が挙げられる。
これらの中でも、光重合開始剤などの添加剤との相溶性が良好となり、さらに粘度及び臭気を低下させることができ、かつ、反応性(硬化性)を一層優れたものとできるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
上記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜40質量%である。含有量が5質量%以上であると、硬化性及び光重合開始剤の溶解性に優れるとともに耐擦性が良好なものとなる。一方で、含有量が40質量%以下であると、密着性及び耐擦性に優れるとともに硬化性が良好なものとなる。また、上記含有量は、光重合開始剤の溶解性に一層優れるため、10〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
(上記以外の重合性化合物)
また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類及び芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート以外に、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーもさらに使用可能である(以下、「その他の重合性化合物」という。)。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
上記(メタ)アクリレートのうち、芳香環骨格を有するものを除く単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、塗膜強度がより向上して耐擦性に一層優れるため、その他の重合性化合物は3官能以上の(メタ)アクリレート、即ち3官能以上の(メタ)アクリルモノマーを含むことが好ましく、3官能の(メタ)アクリルモノマーを含むことがより好ましい。
本実施形態のインク組成物が上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類及び芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート以外の重合性化合物を含む場合、当該重合性化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。含有量が上記範囲内であると、添加剤の溶解性に優れ、かつ、塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性に優れる。
特に、上記インク組成物が3官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む場合、この3官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、3〜22質量%であることが好ましく、3〜17質量%であることがより好ましい。含有量が上記範囲内であると、光重合開始剤などの添加剤との相溶性を一層良好にすることができ、かつ、粘度を一層低下させることができる。
以上の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルフォスフィンオキサイド化合物を用いることが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物の併用がより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤は、紫外線硬化速度を向上させて硬化性を優れたものとすることができ、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、光重合開始剤の合計の含有量が、9質量%以上であることが好ましく、9〜17質量%であることがより好ましい。
特に、光重合開始剤がアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む場合、特にLED(350nm〜420nm)による硬化の際に十分な硬化速度が得られることから硬化性に一層優れるため、当該アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、7質量%以上であることが好ましく、7〜15質量%であることがより好ましく、さらに硬化性を一層優れたものとするため10〜15質量%であることが特に好ましい。
〔重合促進剤〕
本実施形態のインク組成物は重合促進剤を含んでもよい。この重合促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル及びアミノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、反応性に一層優れ、特に薄膜時の硬化性を良好なものとできるため、アミノ(メタ)アクリレートが好ましい。当該アミノ(メタ)アクリレートは、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基をそれぞれ1個以上有する化合物である。このアミノ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、及び3官能以上の(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかとアミン化合物とを反応させて得られる化合物が好ましい。
アミノ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばCN371(アミノ基2個及びアクリロイル基2個の含有化合物、サートマー社(Sartomer Co.)製商品名)、EBECRYL 7100(アミノ基2個及びアクリロイル基2個の含有化合物、サイテック社(Cytech, Inc.)製商品名)、CN386(アミノ基2個及びアクリロイル基1個の含有化合物)、CN372(アミノ基1個及びアクリロイル基1個の含有化合物)、CN373(アミノ基1個及びアクリロイル基2個の含有化合物)、CN383(アミノ基1個及びアクリロイル基1個の含有化合物)、CN374(アミノ基2個及びアクリロイル基1個の含有化合物)(以上、サートマー社製商品名)が挙げられる。
重合促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合促進剤、特にアミノ(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、2〜22質量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、薄膜硬化性が一層優れたものとなる。なお、この薄膜硬化性における「薄膜」とは、厚さ3μm以下の膜であり、より明確には厚さ1〜2μmの膜を意味する。
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインク組成物は重合禁止剤を含んでもよい。この重合禁止剤としては、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール化合物、p−ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5−ジーブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、及び2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル−β−ナフチルアミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、及びジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、及びピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、重合禁止剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック 7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製商品名)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製商品名)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,16,17,24,34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108,109,110,113,114,117,120,124,128,129,133,138,139,147,151,153,154,167,172,180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,88,112,114,122,123,144,146,149,150,166,168,170,171,175,176,177,178,179,184,185,187,202,209,219,224,245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19,23,32,33,36,38,43,50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16,18,22,25,60,65,66,又はC.I.バットブルー 4,60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、又はC.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、又はC.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
色材の含有量は、良好な発色性を有し、色材自身の光吸収による塗膜の硬化阻害を低減できるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等〔商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、分散剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
〔スリップ剤〕
本実施形態のインク組成物は、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
スリップ剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、スリップ剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
[光硬化型インクジェット記録用インク組成物の物性]
本実施形態のインク組成物は、25℃における粘度が5〜15mPa・sであることが好ましい。
また、上記インク組成物は、好ましくは350〜420nmの範囲、より好ましくは360〜400nmの範囲に発光ピーク波長を有する紫外線を照射することにより硬化可能である。また、400mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物が好ましく、300mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物がより好ましい。このようなインク組成物を用いることにより、低コストで画像を形成することができる。
このように、本実施形態によれば、硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性に優れた光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供することができる。さらに言えば、一分子中にビニル基及び(メタ)アクリル基を併せ持つ所定構造のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を所定量含有することにより、粘度、臭気、及び皮膚刺激性を低く抑えることができ、かつ、反応性及び密着性に優れたインク組成物とすることができる。一方、一分子中に芳香環及び(メタ)アクリル基を併せ持つ芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを所定量含有することにより、粘度を低下させ、かつ、反応性及び光重合開始剤の溶解性に優れたインク組成物とすることができる。
[被記録媒体]
本実施形態のインク組成物は、後述する記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。下記実施形態の記録方法は、水性インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水性インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、上記のインク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルム、シート、及びプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
[記録方法]
本発明の一実施形態は、記録方法に係る。上記実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、本実施形態の記録方法に用いることができる。当該記録方法は、インクジェット方式に適用することができる。当該記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
〔吐出工程〕
吐出工程において、被記録媒体上にインク組成物が吐出され、インク組成物が被記録媒体に付着する。吐出時におけるインク組成物の粘度は、5〜30mPa・sが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
本実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、通常の水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出され付着したインク組成物が、光(紫外線)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
ここで、LEDの出力を上げやすいため、発光ピーク波長が好ましくは350〜420nm(より好ましくは360〜400nm)の範囲にあるUV−LEDを用いて、好ましくは400mJ/cm2以下、より好ましくは300mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物を記録方法に用いるとよい。この場合、低コストで且つ大きな印刷速度が得られる。このようなインク組成物は、上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤、及び上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物のうち少なくともいずれかを含むことにより得られる。
このように、本実施形態によれば、硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性に優れた光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いた好適な記録方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[使用成分]
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
〔芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレート〕
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「PEA」と略記した。)
・FA−BZA(ベンジルアクリレート、日立化成社製商品名、以下では「BZA」と略記した。)
〔その他の重合性化合物〕
・NKエステル A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「A−TMPT」と略記した。)
・IBXA(イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「IBXA」と略記した。)
・NKエステル APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下では「3PGA」と略記した。)
・NKエステル APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「2PGA」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX−S」と略記した。)
〔重合促進剤〕
・EBECRYL7100(ダイセル・サイテック社製商品名、アミノアクリレート、以下では「EBECRYL」と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(東京化成社製商品名、p−メトキシフェノール、以下では「MEHQ」と略記した。)
〔スリップ剤〕
・UV−3500(BYK社製商品名、シリコン系表面調整剤、以下では「UV3500」と略記した。)
〔顔料〕
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)、BASF社製商品名、以下では「BLUE GLVO」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「SOL36000」と略記した。)
[実施例1〜15、比較例1〜5]
下記表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、シアン色のインク組成物を得た。
〔評価項目〕
(1.粘度)
上記の各インク組成物の粘度を、DVM−E型回転粘度計(東京計器社(TOKYO KEIKI INC)製)を用いて、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:15mPa・s以下、
B:15mPa・sを超えて25mPa・s以下、
C:25mPa・s超。
(2.硬化性)
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、上記の各インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPVCシート(Flontlite Grossy 120g〔商品名〕、Cooley社製)上に、印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1,000mW/cm2であり且つ波長が395nmである紫外線を1パス当たり200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PVCシート上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、「ベタパターン画像」とは記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。
塗膜に関する硬化性は、表面タックがなくなるまでのパス数で評価した。ここで、「パス数」は、ヘッドが記録物に対して移動し、ヘッドに搭載した紫外線照射装置から塗膜に向けて紫外線照射した回数を意味する。評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:1パス、
B:2パス、
C:3パス以上。
(3.密着性)
上記「2.硬化性」の試験で、表面タック性がなくなるまで光照射を行い硬化させた記録物を用いた。JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、記録物の塗膜面にクロスカットを行い、セロハンテープによる剥離試験の結果から、下記のランクA〜Eに基づき密着性を評価した。ここで、上記クロスカット法について説明する。
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直行するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒で確実に引き離した。
評価基準は以下のとおりである。なお、各ランクの値は、ハガレ率を計算して得られた値の小数点第1位を四捨五入したものである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:ハガレ率 0〜5%、
B:ハガレ率 6〜15%、
C:ハガレ率 16〜35%、
D:ハガレ率 36〜65%、
E:ハガレ率 66〜100%。
(4.耐擦性)
JIS K−5701に準じ、学振型磨耗堅牢度試験機(テスター産業社(TESTER SANGYO CO., LTD.)製商品名)を用いて、耐擦性試験を行った。試験方法は、上記「2.硬化性」の試験で得られた記録物の表面に金巾を乗せ、この金巾に500gの荷重をかけた状態で100往復、記録面を擦り、擦った後の記録物表面の剥離や傷を目視で観察するというものである。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:金巾に汚れなし、記録面の剥離・傷なし。
B:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷なし。
C:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が線状に少し見られた。
D:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が面上に大きく見られた。
(5.光重合開始剤の溶解性)
上記の各インク組成物に対して、顔料及び顔料分散剤成分を入れずにそれ以外の成分のみで同様に顔料抜きのインク組成物を調合し、十分に撹拌した。その後、目視で光重合開始剤の溶け残りがあるか否かを評価した。光重合開始剤の溶け残りが無いサンプルについては、0℃の恒温槽にインク組成物を入れ、24時間後に取り出し室温に戻した後、インク組成物中に光重合開始剤が析出しているか否かを再度目視で観察した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:室温撹拌後及び0℃保管後共に、光重合開始剤の溶け残りや析出は見られなかった。
B:室温撹拌後は光重合開始剤の溶け残りが無かったが、0℃保管後は光重合開始剤の析出が見られた。
C:室温撹拌後に光重合開始剤の溶け残りが見られた。
(6.薄膜硬化性)
実施例1、9、及び14について、印刷物の膜厚を10μmでなく2μmとした点以外は上記「2.硬化性」の試験と同様にして、薄膜硬化性の評価を行った。評価結果を下記表3及び表4に示す。
上記表3及び表4より、所定構造のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を各々所定量含む光硬化型インクジェット記録用インク組成物(各実施例)は、そうでないインク組成物(各比較例)に比べて、少なくとも硬化性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性(開始剤溶解性)の点で顕著に優れることが分かった。

Claims (8)

  1. 重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
    前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して45〜80質量%の下記一般式(I):
    CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
    (式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
    で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
    該インク組成物の総質量に対して5〜40質量%の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートと、を含
    前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、下記の一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物のうち少なくともいずれかであり、
    CH 2 =CR 4 −COOR 5 −Ar ・・・(II)
    CH 2 =CR 4 −COO−Ar ・・・(III)
    (上記式(II)及び(III)中、R 4 は水素原子又はメチル基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がR 5 で表される基に結合している1価の有機残基であり、またR 5 は炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(III)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
    前記光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物からなる群より選ばれる1種以上である、
    光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  2. 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  3. 前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上の前記アシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  4. 前記光重合開始剤の含有量は、該インク組成物の総質量に対して9質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  5. 前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して3〜22質量%の3官能以上の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  6. 前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して2〜22質量%のアミノ(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  7. 25℃における粘度が5〜15mPa・sである、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、
    前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、
    を含む、インクジェット記録方法。
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