この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。本実施の形態では、本発明における半導体素子の冷却構造が、ハイブリッド自動車に搭載されるインバータに適用される。図1を参照して、まず、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関して説明する。
ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
ハイブリッド自動車は、バッテリユニット40と、車両用駆動装置20と、図示しないエンジンとを有する。車両用駆動装置20は、モータジェネレータMG1,MG2と、図示しないエンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分配する動力分割機構26と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)21とを有する。
モータジェネレータMG1は、主にジェネレータとして機能し、エンジンの出力により発電を行なう。モータジェネレータMG1は、エンジン始動時にはスタータとして作動する。モータジェネレータMG2は、主にモータとして機能し、エンジンの出力を補助し、駆動力を高める。また、モータジェネレータMG2は、回生制動時には発電を行ない、バッテリBを充電する。
バッテリユニット40には端子41,42が設けられている。PCU21にはDC端子43,44が設けられている。端子41とDC端子43との間および端子42とDC端子44との間は、それぞれケーブル6およびケーブル8によって電気的に接続されている。
バッテリユニット40は、バッテリBと、バッテリBの正極と端子41との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの負極と端子42との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子41との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを有する。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、後述の制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
バッテリユニット40は、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11とを有する。バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の2次電池や、燃料電池などを用いることができる。バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
PCU21は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ100,200と、インバータ100,200に共通して設けられる昇圧コンバータ12と、制御装置30とを有する。
昇圧コンバータ12は、DC端子43,44間の電圧を昇圧する。昇圧コンバータ12は、一方端がDC端子43に接続されるリアクトル32と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)13と、平滑用コンデンサ33とを有する。昇圧用IPM13は、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ12の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを有する。平滑用コンデンサ33は、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する。
リアクトル32の他方端は、IGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続されている。ダイオードD1のカソードは、IGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードは、IGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードは、IGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードは、IGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
インバータ200は、車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ200は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
インバータ200は、走行用IPM18を構成するU相アーム210、V相アーム220およびW相アーム230を含む。U相アーム210,V相アーム220およびW相アーム230は、昇圧コンバータ12の出力ライン間に並列に接続されている。
U相アーム210は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを有する。ダイオードD3のカソードは、IGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードは、IGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードは、IGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードは、IGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
V相アーム220は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを有する。ダイオードD5のカソードは、IGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードは、IGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードは、IGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードは、IGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
W相アーム230は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを有する。ダイオードD7のカソードは、IGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードは、IGBT素子Q7のエミッタと接続されている。ダイオードD8のカソードは、IGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードは、IGBT素子Q8のエミッタと接続されている。
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。U相コイルの他方端は、IGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続されている。V相コイルの他方端は、IGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。W相コイルの他方端は、IGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続されている。
電流センサ25は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30に出力する。電流センサ24は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置30に出力する。
インバータ100は、インバータ200と同様の内部構造を有し、走行用IPM18を構成するU相アーム110、V相アーム120およびW相アーム130を有する。
インバータ100は、昇圧コンバータ12に対してインバータ200と並列的に接続される。インバータ100は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ100は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
また、インバータ100は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
なお、図1および図1に続く図中では、モータジェネレータMG1の各相が、U1相、V1相、W1相と示され、モータジェネレータMG2の各相が、U2相、V2相、W2相と示されている。
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1は、モータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数MRN2およびモータ電流値MCRT2は、モータジェネレータMG2に関するものである。電圧VBは、バッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは、昇圧コンバータ12の昇圧前電圧であり、電圧VHは、昇圧コンバータ12の昇圧後電圧である。
制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
制御装置30は、インバータ200に対して昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。制御装置30は、インバータ100に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
続いて、図1中のインバータ100,200に適用される半導体素子の冷却構造について詳細に説明する。
図2は、図1中のインバータに適用される半導体素子の冷却構造を示す側面図である。図1および図2を参照して、図2中には、モータジェネレータMG1を駆動するためのインバータ100のU相アーム110、V相アーム120およびW相アーム130と、モータジェネレータMG2を駆動するためのインバータ200のU相アーム210、V相アーム220およびW相アーム230とが一括に設けられた半導体素子の冷却構造が示されている。
本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、U相アーム110を構成する半導体素子51pおよび半導体素子51q(以下、特に区別しない場合は半導体素子51という)と、U相アーム210を構成する半導体素子61pおよび半導体素子61q(以下、特に区別しない場合は半導体素子61という)とを有する。半導体素子51pおよび半導体素子51qは、それぞれ、U相アーム110のパワートランジスタ(IGBT)Q3およびパワートランジスタQ4を含む。半導体素子61pおよび半導体素子61qは、それぞれ、U相アーム210のパワートランジスタQ3およびパワートランジスタQ4を含む。
本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、ヒートパイプ70A(以下、後述するヒートパイプ70Bおよびヒートパイプ70Cと特に区別しない場合は、ヒートパイプ70という)と、ヒートパイプ75A(以下、後述するヒートパイプ75Bおよびヒートパイプ75Cと特に区別しない場合は、ヒートパイプ75という)と、スペーサ60とをさらに有する。
ヒートパイプ70Aは、端部71および端部72を有し、ヒートパイプ75Aは、端部76および端部77を有する。ヒートパイプ70Aは、端部71と端部72との間で矢印310に示す一方向に延びて形成され、ヒートパイプ75Aは、端部76と端部77との間で矢印310に示す一方向に延びて形成されている(以下、矢印310に示す方向をヒートパイプ70,75の延伸方向ともいう)。ヒートパイプ70Aおよびヒートパイプ75Aは、矢印310に示す一方向に板状に延びて形成されている。ヒートパイプ70Aおよびヒートパイプ75Aは、端部71と端部72とを結ぶ方向および端部76と端部77とを結ぶ方向が長手方向となる直方体形状を有する。ヒートパイプ70Aとヒートパイプ75Aとは、互いに平行に配置されている。
ヒートパイプ70Aとヒートパイプ75Aとは、ヒートパイプ70,75の延伸方向に直交する矢印320に示す方向に、互いに距離を隔てて積層されている(以下、矢印320に示す方向をヒートパイプ70,75の積層方向ともいう)。ヒートパイプ70Aとヒートパイプ75Aとは、端部71と端部76とが互いに対向し、端部72と端部77とが互いに対向するように配置されている。
ヒートパイプ70Aは、表面70aと、表面70aの裏側に配置される表面70bとを有する。ヒートパイプ70Bは、表面75aと、表面75aの裏側に配置される表面75bとを有する。表面70aおよび表面70bは、ヒートパイプ70Aが有する複数の側面のうち最も広い面積を有する側面であり、表面75aおよび表面75bは、ヒートパイプ75Aが有する複数の側面のうち最も広い面積を有する側面である。ヒートパイプ70Aとヒートパイプ75Aとは、表面70bと表面75aとが互いに向かい合わせとなるように配置されている。
U相アーム110を構成する半導体素子51は、端部71と端部76との間に設けられている。U相アーム210を構成する半導体素子61は、端部72と端部77との間に設けられている。すなわち、本実施の形態では、ヒートパイプ70Aおよびヒートパイプ75Aの両端に、それぞれ、モータジェネレータMG1を駆動するための半導体素子51と、モータジェネレータMG1とは別のモータジェネレータMG2を駆動するための半導体素子61とが設けられている。半導体素子51と半導体素子61とは、ヒートパイプ70,75の延伸方向に互いに距離を隔てて配置されている。
より具体的には、半導体素子51pがヒートパイプ70Aの端部71に載置され、半導体素子51qがヒートパイプ75Aの端部76に載置されている。半導体素子51pおよび半導体素子51qは、それぞれ、表面70bおよび表面75a上に配置されている。また、半導体素子61pがヒートパイプ70Aの端部72に載置され、半導体素子61qがヒートパイプ75Aの端部77に載置されている。半導体素子61pおよび半導体素子61qは、それぞれ、表面70bおよび表面75a上に配置されている。
半導体素子51pと半導体素子51qとは、スペーサ60を介して互いに対向して配置されている。半導体素子61pと半導体素子61qとは、スペーサ60を介して互いに対向して配置されている。スペーサ60は、半導体素子の電極取り出しに用いられる一方、ヒートパイプ70Aとヒートパイプ75Aとの間に、後述する空冷用フィン90を配置するための空間を設けるために用いられる。スペーサ60には、たとえば、銅ブロックが使用される。
本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、空冷用フィン90をさらに有する。空冷用フィン90は、高熱伝導性を有する金属、たとえばアルミニウムにより形成されている。空冷用フィン90は、冷媒としての冷却風(空気)が流通する経路上に設けられている。
空冷用フィン90は、ヒートパイプ70Aおよびヒートパイプ75Aに設けられている。ヒートパイプ70Aに設けられる空冷用フィン90は、端部71と端部72との間に配置されている。ヒートパイプ70Aに設けられる空冷用フィン90は、表面70aおよび表面70bに接合されている。ヒートパイプ75Aに設けられる空冷用フィン90は、端部76と端部77との間に配置されている。ヒートパイプ75Aに設けられる空冷用フィン90は、表面75aおよび表面75bに接合されている。
なお、空冷用フィン90に対して流通される冷媒としては、空気に限られず、たとえばオイルが流通されてもよい。
本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、V相アーム120を構成する半導体素子53pおよび半導体素子53q(以下、特に区別しない場合は半導体素子53という)と、V相アーム220を構成する半導体素子63pおよび半導体素子63q(以下、特に区別しない場合は半導体素子63という)と、W相アーム130を構成する半導体素子55pおよび半導体素子55q(以下、特に区別しない場合は半導体素子55という)と、W相アーム230を構成する半導体素子65pおよび半導体素子65q(以下、特に区別しない場合は半導体素子65という)とをさらに有する。
半導体素子53pおよび半導体素子53qは、それぞれ、V相アーム120のパワートランジスタQ5およびパワートランジスタQ6を含む。半導体素子63pおよび半導体素子63qは、それぞれ、V相アーム220のパワートランジスタQ5およびパワートランジスタQ6を含む。半導体素子55pおよび半導体素子55qは、それぞれ、W相アーム130のパワートランジスタQ7およびパワートランジスタQ8を含む。半導体素子65pおよび半導体素子65qは、それぞれ、W相アーム230のパワートランジスタQ7およびパワートランジスタQ8を含む。
本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、ヒートパイプ70Bと、ヒートパイプ75Bと、ヒートパイプ70Cと、ヒートパイプ75Cとをさらに有する。
上記のU相アーム110およびU相アーム210と同様に、V相アーム120を構成する半導体素子53と、V相アーム220を構成する半導体素子63と、ヒートパイプ70Bおよびヒートパイプ75Bと、スペーサ60と、空冷用フィン90とが組み合わされている。上記のU相アーム110およびU相アーム210と同様に、W相アーム130を構成する半導体素子55と、W相アーム230を構成する半導体素子65と、ヒートパイプ70Cおよびヒートパイプ75Cと、スペーサ60と、空冷用フィン90とが組み合わされている。
より具体的には、ヒートパイプ70A、ヒートパイプ75A、ヒートパイプ70B、ヒートパイプ75B、ヒートパイプ70Cおよびヒートパイプ75Cが、挙げた順に、矢印320に示す方向に並んで積層されている。V相アーム120を構成する半導体素子53は、ヒートパイプ70Bの端部71とヒートパイプ75Bの端部76との間に設けられ、V相アーム220を構成する半導体素子63は、ヒートパイプ70Bの端部72とヒートパイプ75Bの端部77との間に設けられている。W相アーム130を構成する半導体素子55は、ヒートパイプ70Cの端部71とヒートパイプ75Cの端部76との間に設けられ、W相アーム230を構成する半導体素子65は、ヒートパイプ70Cの端部72とヒートパイプ75Cの端部77との間に設けられている。
空冷用フィン90は、ヒートパイプ70Aおよびヒートパイプ75Aに対する態様と同様に、ヒートパイプ70Bおよびヒートパイプ75Bならびにヒートパイプ70Cおよびヒートパイプ75Cに対して設けられている。
なお、図2中においては、上段、中段および下段にそれぞれU相アーム、V相アームおよびW相アームを配置したが、モータジェネレータMG1を駆動するための半導体素子と、モータジェネレータMG2を駆動するための半導体素子との組み合わせであれば、同一の段に、異なる相アームの半導体素子を配置してもよい。
図3は、図2中のIII−III線上に沿った半導体素子の冷却構造を示す上面図である。図4は、図3中のIV−IV線上に沿った半導体素子の冷却構造を示す断面図である。
図3および図4を参照して、ヒートパイプ75は、熱媒体路85が形成された板部材84により形成されている。
熱媒体路85は、端部71と端部72との間で延びている。熱媒体路85は、端部71と端部72との間で連続して延びている。熱媒体路85は、端部71と端部72との間で直線状に延びている。板部材84には、端部71と端部72との間で延びる複数本の熱媒体路85が形成されてもよい。熱媒体路85の内壁には、毛細管構造としての溝形状が形成されている。熱媒体路85には、水やフレオン、アンモニアなどの図示しない熱媒体が少量、封入されている。板部材84は、たとえば、銅、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属から形成されている。
ヒートパイプ75においては、半導体素子51pが設けられた端部71が吸熱部82として機能し、半導体素子51qが設けられた端部72が吸熱部83として機能し、空冷用フィン90が設けられた端部71と端部72との間が、放熱部81として機能する。
なお、上記では、ヒートパイプ75の構造についてのみ説明したが、ヒートパイプ70も同様の構造を有する。
図5は、図2中に示す半導体素子の冷却構造の外観を示す側面図である。図5を参照して、空冷用フィン90に対して、冷却風は、ヒートパイプ70およびヒートパイプ75の延伸方向に直交し、かつ、ヒートパイプ70およびヒートパイプ75の積層方向に直交する方向(図2および図5を示す紙面に直角な方向)に流通される。
本実施の形態では、空冷用フィン90に対して冷却風を供給するためのファンとして、プロペラファン96が設けられている。プロペラファン96は、図2中の空冷用フィン90と向かい合わせとなるように配置されている。プロペラファン96は、その回転軸が、ヒートパイプ70およびヒートパイプ75の延伸方向に直交し、かつ、ヒートパイプ70およびヒートパイプ75の積層方向に直交する方向に延びるように配置されている。
続いて、本実施の形態における半導体素子の冷却構造によって奏される作用、効果について説明する。
図2から図4を参照して、代表的に、U相アーム110,210を構成する半導体素子51,61が設けられた上段を見ると、半導体素子51pで発生した熱は、ヒートパイプ70Aの端部71に伝わって、吸熱部82の熱媒体路85に配置された熱媒体に吸収され、半導体素子51qで発生した熱は、ヒートパイプ75Aの端部71に伝わって、吸熱部82の熱媒体路85に配置された熱媒体に吸収される。これにより、熱媒体は、蒸発し、吸熱部82から放熱部81に向かって移動する。熱媒体は、放熱部81を移動する間、空冷用フィン90を流通する冷却風と熱交換を行なうことによって、熱を放出する。これにより、熱媒体は、液体に戻り、熱媒体路85の毛細管作用によって、放熱部81から再び吸熱部82に移動する。
一方、半導体素子61pで発生した熱は、ヒートパイプ70Aの端部72に伝わって、吸熱部83の熱媒体路85に配置された熱媒体に吸収され、半導体素子61qで発生した熱は、ヒートパイプ75Aの端部77に伝わって、吸熱部83の熱媒体路85に配置された熱媒体に吸収される。これにより、熱媒体は、蒸発し、吸熱部83から放熱部81に向かって移動する。熱媒体は、放熱部81を移動する間、空冷用フィン90を流通する冷却風と熱交換を行なうことによって、熱を放出する。これにより、熱媒体は、液体に戻り、熱媒体路85の毛細管作用によって、放熱部81から再び吸熱部83に移動する。
このように熱媒体路85に封入された熱媒体が、吸熱部82と放熱部81との間および吸熱部82と放熱部81との間でそれぞれ往復移動することによって、半導体素子51および半導体素子61で発生した熱が放熱される。
図6は、比較のための半導体素子の冷却構造を示す上面図である。図6は、図3に対応する図である。
図6を参照して、本比較例では、ヒートパイプ75の端部76に、モータジェネレータMG1を駆動するための半導体素子51(51q)と、モータジェネレータMG2を駆動するための半導体素子61(61q)とが設けられている。半導体素子51(51q)と半導体素子61(61q)とは、本実施の形態でいうヒートパイプ70およびヒートパイプ75の延伸方向に直交し、かつ、ヒートパイプ70およびヒートパイプ75の積層方向に直交する方向に並んでいる。
ヒートパイプ75を形成する板部材84には、半導体素子51(51q)が配置された端部76から端部77に向けて延びる熱媒体路85と、半導体素子61(61q)が配置された端部76から端部77に向けて延びる熱媒体路85とが形成されている。ヒートパイプ75には、端部76を除く領域に空冷用フィン90が設けられている。このような構成においては、半導体素子51(51p)および半導体素子61(61q)が設けられた端部71が、吸熱部82として機能し、端部71を除く、空冷用フィン90が設けられた領域が放熱部81として機能する。
半導体素子51と半導体素子61とでは、別々のモータジェネレータを駆動するため、発熱量や発熱するタイミングといった発熱の特性が互いに異なる。たとえば、主にジェネレータとして機能するモータジェネレータMG1は、低出力であり、主にモータとして機能するモータジェネレータMG2は高出力であるため、一般的に、モータジェネレータMG1を駆動させるための半導体素子51の最大発熱量よりも、モータジェネレータMG2を駆動させるための半導体素子61の最大発熱量の方が大きくなる。また、半導体素子51および半導体素子61の発熱量は、車両の走行状態に応じて刻々と変化するため、半導体素子61の発熱量よりも半導体素子51の発熱量の方が大きくなるようなタイミングも存在する。
ヒートパイプ70,75では、熱媒体が、放熱部81を移動しつつ、空冷用フィン90を流通する冷却風と熱交換を行なうことによって熱を放出するため、ヒートパイプ70,75のその延伸方向における長さが大きいほど冷却性能が増す。図6中に示す比較例においては、半導体素子51の発熱の特性を基準にヒートパイプ70,75の全長を決定すると、半導体素子61を十分に冷却できない懸念が生じる。加えて、冷却風は、図6中の矢印に示すように、半導体素子51と半導体素子61との並び方向に沿って流通するため、上下流における冷却風の温度差に起因して半導体素子51および半導体素子61の冷却効率に偏りが生じるという懸念も発生する。
その一方で、半導体素子61の発熱の特性を基準にヒートパイプ70,75の全長を決定すると、半導体素子51に対応して設けられた熱媒体路85において、熱媒体が端部72,77まで達することなく、その手前で放熱を完了させて液体に戻る現象が想定される。この場合、ヒートパイプ70,75が、半導体素子の冷却という観点から本来不要な部分を備えていることになり、ヒートパイプ70,75の省スペース化を十分に図ることができない。
図2から図4を参照して、これに対して、本実施の形態における半導体素子の冷却構造においては、ヒートパイプ70,75の両端に、それぞれ、モータジェネレータMG1を駆動するための半導体素子51と、モータジェネレータMG2を駆動するための半導体素子61とが設けられている。このような構成によれば、半導体素子51から吸熱した熱媒体が端部71,76から端部72,77に向けて移動する長さ、すなわち、半導体素子51からの放熱に寄与するヒートパイプ70,75のその延伸方向における長さ(図4中のL1)と、半導体素子61から吸熱した熱媒体が端部72,77から端部71,76に向けて移動する長さ、すなわち、半導体素子61からの放熱に寄与するヒートパイプ70,75のその延伸方向における長さ(図4中のL2)とが、半導体素子51および半導体素子61のその時々の発熱量に応じて変化する。このため、無駄のないヒートパイプ70,75の長さ選定を実現しつつ、半導体素子51および半導体素子61を偏りなく冷却することができる。
また、本実施の形態では、半導体素子51および半導体素子61が、それぞれ、冷媒としての冷却風の流通方向に直交する方向に並ぶため、冷却風流れの上下流間における温度差に起因して半導体素子51および半導体素子61の冷却効率に偏りが生じるという懸念も解消される。このため、プロペラファン96により空冷用フィン90に冷却風を供給することにより、半導体素子51および半導体素子61を均一に冷却することができる。
以上に説明した、この発明の実施の形態1における半導体素子の冷却構造の構成についてまとめて説明すると、本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、第1熱輸送部としてのヒートパイプ70(70A)と、第2熱輸送部としてのヒートパイプ75(75A)と、第1半導体素子としての半導体素子51と、半導体素子51と発熱の特性が異なる第2半導体素子としての半導体素子61と、放熱部としての空冷用フィン90とを備える。ヒートパイプ70(70A)は、第1端部としての端部71および第2端部としての端部72を有する。ヒートパイプ70(70A)は、端部71と端部72との間で延伸する。ヒートパイプ75(75A)は、端部71と対向して配置される第3端部としての端部76と、端部72に対向して配置される第4端部としての端部77とを有する。ヒートパイプ75(75A)は、端部76と端部77との間で延伸し、ヒートパイプ70(70A)に対して積層される。半導体素子51は、端部71および端部76の間に設けられる。半導体素子61は、端部72および端部77の間に設けられる。空冷用フィン90は、端部71と端部72との間および端部76と端部77との間に配置され、ヒートパイプ70(70A)およびヒートパイプ75(75A)に設けられる。
このように構成された、この発明の実施の形態1における半導体素子の冷却構造によれば、ヒートパイプ70,75の両端に、別々のモータジェネレータを駆動するための半導体素子51および半導体素子61を配置することにより、冷却構造の体格をより薄くし(図3中の長さSを小さくし)、長さ(図4中の長さL)を持たせる。これにより、半導体素子の冷却構造の省スペース化を図るとともに、別々のモータジェネレータを駆動するための半導体素子51および半導体素子61を偏りなく冷却し、温度調和させることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1における半導体素子の冷却構造の各種変形例について説明する。
図7は、図2から図5中の半導体素子の冷却構造の第1変形例を示す側面図である。図7は、実施の形態1における図2に対応する図である。
図7を参照して、本変形例における半導体素子の冷却構造は、本発明における熱輸送部として、ヒートパイプ70Aと、ヒートパイプ75Aと、ヒートパイプ70Dと、ヒートパイプ75Dとを有する。ヒートパイプ70Aと、ヒートパイプ75Aと、ヒートパイプ70Dと、ヒートパイプ75Dとは、挙げた順に、矢印320に示す方向に並んで積層されている。ヒートパイプ70Dは、端部71および端部72を有し、ヒートパイプ75Dは、端部76および端部77を有する。
U相アーム110を構成する半導体素子51は、ヒートパイプ70Aの端部71とヒートパイプ75Aの端部76との間に設けられ、U相アーム210を構成する半導体素子61は、ヒートパイプ70Aの端部72とヒートパイプ75Aの端部77との間に設けられている。V相アーム120を構成する半導体素子53は、ヒートパイプ75Aの端部76とヒートパイプ70Dの端部71との間に設けられ、V相アーム220を構成する半導体素子63は、ヒートパイプ75Aの端部77とヒートパイプ70Dの端部72との間に設けられている。W相アーム130を構成する半導体素子55は、ヒートパイプ70Dの端部71とヒートパイプ75Dの端部76との間に設けられ、W相アーム230を構成する半導体素子65は、ヒートパイプ70Dの端部72とヒートパイプ75Dの端部77との間に設けられている。
空冷用フィン90は、ヒートパイプ70A、ヒートパイプ75A、ヒートパイプ70Dおよびヒートパイプ75Dの両面に形成されている。
すなわち、本変形例では、ヒートパイプ75Aが、半導体素子51および半導体素子61の冷却と、半導体素子53および半導体素子63の冷却とに共用されている。また、ヒートパイプ70Dが、半導体素子53および半導体素子63の冷却と、半導体素子55および半導体素子65の冷却とに共用されている。このような構成により、半導体素子の冷却構造をより簡易に構成することができる。一方、図2中に示す半導体素子の冷却構造においては、U相、V相およびW相を冷却するためのヒートパイプが互いに独立して設けられるため、半導体素子のより確実な冷却が可能となる。
図8は、図2から図5中の半導体素子の冷却構造の第2変形例を示す側面図である。図8は、実施の形態1における図5に対応する図である。
図8を参照して、半導体素子の発熱量が大きい場合、ヒートパイプ70,75の冷却性能を向上させるため、ヒートパイプ70,75のその延伸方向における長さを大きくする。本変形例では、このようなヒートパイプ70,75の形態に対応させるべく、複数のファンとしてのプロペラファン96Aおよびプロペラファン96Bが、ヒートパイプ70,75の延伸方向に沿って配列されている。このような構成により、ヒートパイプ70,75に対して均一な送風が可能となり、半導体素子を偏りなく冷却することができる。
このように構成された、この発明の実施の形態2における半導体素子の冷却構造によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
なお、以上においては、本発明における熱輸送部としてヒートパイプを用いた構造について説明したが、本発明はこれに限られず、たとえば、熱輸送部として熱伝導性に優れた金属や高熱伝導性グラファイトなどを用いてもよい。
また、本発明を、燃料電池と2次電池とを動力源とする燃料電池ハイブリッド車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に搭載されるインバータに適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、2次電池の使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。