JP5696655B2 - 被冷却体の温度予測方法および金属板の製造方法 - Google Patents

被冷却体の温度予測方法および金属板の製造方法 Download PDF

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本発明は、冷却工程を経て製造される金属板の製造工程において、被冷却体、すなわち高温の金属板に対し冷却媒体を噴射することで冷却する際の、被冷却体の温度を予測する方法および当該方法を用いる金属板の製造方法に関する。本発明は、特に、スラブ圧延後の厚鋼板を冷却する際の、厚鋼板の温度予測方法および当該予測方法を用いる厚鋼板の製造方法に関する。
金属板の製造工程、特に厚鋼板の製造方法では圧延後の冷却工程が重要となる。これは冷却工程により鋼板を一定の組織とすることで必要な特性を付与できるためである。このため、鋼板製造時の冷却工程において、鋼板の温度を予測することは鋼板特性の制御のため重要となる。
しかし、厚鋼板の冷却において、鋼材の温度分布や冷却停止温度を高精度に推測する技術には限界があった。その理由は、冷却される高温鋼材表面からの熱流束が、冷却媒体の流動状態や温度、鋼材温度によって異なるため、どのように分布するか予測困難であったことによる。その中でも特に、冷却媒体の流動状態およびその温度分布予測が困難であった。
例えば特許文献1には、冷却媒体の噴射により被冷却体を冷却する際、冷却媒体のレイノルズ数から被冷却体表面の熱伝達係数分布が推測でき、それを用いて被冷却体の冷却予測を行う手法が示されている。また、非特許文献1には、流動数値解析を用いた鋼板上冷却水の流動状態予測結果が示されている。
特許第4067501号公報
メタラジカル アンド マテリアルズ トランザクションズ ビー(Metallurgical and Materials Transactions B)、(ドイツ)、2008年、第39巻、第4号、p.593−602
特許文献1に開示されている手法では、冷却媒体がどのように流動するか、また冷却媒体が液体である場合、被冷却体周囲にどの程度溜まるかを予測する手法が不明である。冷却媒体は被冷却体から熱を受けながら、すなわち冷却媒体自身の温度を高くしながら、被冷却体周囲および冷却装置内から流出していく。そのため、冷却媒体の流動状態が分からなければ、冷却媒体の温度分布は分からず、したがって、冷却媒体の温度に影響を受ける被冷却体の冷却状況を正確に予測することはできない。
また、非特許文献1に開示されている技術では、鋼板のごく局所の解析に100万点程度の解析格子を要しており、当該手法を冷却装置全体といった広範囲な領域に適用し、工学的に実用性のある解析を行うことは、解析負荷の点から非現実的である。
そこで本発明は、解析負荷を抑制しつつ簡便的に被冷却体、すなわち高温の金属板の温度分布の予測することが可能な、被冷却体の温度予測方法およびこれを用いる金属板の製造方法を提供することを課題とする。
数値解析は、科学分野の数学的問題を、数値の演算によって解く方法である。
被冷却体の温度予測(温度分布予測)における数値解析では、支配方程式として少なくとも質量保存方程式および運動量保存方程式を含み、それらを離散化し、少なくとも質量場、圧力場、速度場を数値的に求める流動数値解析、またはこれらに加え、支配方程式としてエネルギー保存方程式をさらに含み、それらを離散化し、温度場を数値的に求める熱流動数値解析が行われる。
流動数値解析または熱流動数値解析(以下において、これらをまとめて「熱流動数値解析」という。)を用いれば、冷却装置に複数備わるノズルから供給される、ラミナー流、噴流、スプレー流等といった冷却水(「冷却媒体」ともいう。以下において、冷却媒体を冷却水ということがあるが、純水に限らず、工業用水であってもよく、油、その他の液体、およびそれらに不可避的に混入する異物が含まれていてもよい。)の流動状態や温度分布、また被冷却体の温度分布を、その流動を解像可能な程度に詳細な解析格子を用いて詳細に知ることが可能となる。
ところが、このような熱流動数値解析を用いて、例えば鉄鋼製造プロセスの冷却装置全体といった、長さ数十mにもおよぶ広範囲な領域の熱流動状態を詳細に予測することは、解析負荷が過大になるため非現実的である。
金属板の製造で用いられる、複数のノズルを備えた通常の冷却装置は、個々のノズルからのラミナー流、噴流、スプレー流等よりも非常に大きい。したがって、個々のノズルから供給される冷却水は装置全体の熱流動状態に直接は影響しないと考えられ、それらの簡略化、モデル化が可能と考えられる。
本発明者らは、その方法として、ノズルから供給される個々のラミナー流、噴流、スプレー流等の冷却水を、その熱流動を精緻に解析できるほどに詳細な解析格子では解像せず、一つまたは複数のラミナー流、噴流、スプレー流等を含む領域を単位解析領域とし、これを平均化して取り扱う方法について検討した。
このような方法を用いることにより、解析格子数を減少させることが可能となり、現実的な解析負荷で冷却装置全体の熱流動数値解析が可能となる。その結果、これまで困難であった冷却媒体の流動状態およびその温度分布予測が可能となり、被冷却体の温度予測が可能となる。
単位解析領域を平均化して温度予測するには、平均化する領域(単位解析領域)から供給される冷却水の流量、流速、温度が分かればよいことが一般的に知られている。鉄鋼製造プロセスにおける冷却装置のように供給する冷却水の水量密度が大きい場合、被冷却体周囲に、排水されるまでの冷却水が溜まる。このような冷却水は、滞留水と呼ばれる。冷却装置内は、気体(空気や蒸気)と液体(冷却水)とが混合する流動現象となっており、滞留水の流動状態もその相互作用で決定される。したがって、滞留水の流動状態を得るためには、少なくとも気液二相流を取り扱える数値解析法が必要となる。
本発明者らは、検討の結果、数値解析において平均化したラミナー流、噴流、スプレー流等の冷却水を与えるとき、実際にノズルが設置されている場所に与えるより、被冷却体表面近傍に与えた方(例えば、冷却媒体が、ノズル先端より下方かつ被冷却体の上方から供給されていると仮定して数値解析すること)が、より正確な予測が可能であることを知見した。その理由は、実際にノズルが設置されている場所に冷却水を与えると、平均化して与えた冷却水の動きが滞留水に阻害されるためである。
個々のノズルからラミナー流、噴流、スプレー流等として供給された冷却水は、通常、滞留水を貫通しつつ被冷却体表面へと達する。ところが数値解析において、例えば滞留水が多くなる条件で解析を行った場合、平均化した冷却水を供給すると滞留水を貫通できず、滞留水にまぎれてしまう場合があった。
個々のノズルからのラミナー流、噴流、スプレー流等の直下における被冷却体表面近傍では、冷却水が供給され続けることで水温が低く保たれ、冷却が進む。ところが熱流動数値解析において、平均化することで供給された冷却水が滞留水を貫通できないと、被冷却体表面近傍の冷却水温度が上昇して冷却が進まなくなり、実装置とは異なる状況に陥る。
そこで数値解析において、ノズルが設置されている場所からではなく、被冷却体表面近傍の空間から平均化された冷却水を供給すること、すなわち、数値流体解析的にいえば、ソース(湧き出し)項により冷却水を系(解析する空間)に供給することで、このような問題がなく、数値解析できることがわかった。
実際の冷却装置では、個々のノズルから供給される冷却水は質量、運動量、エネルギー(温度)を持っている。そのため、本発明による数値解析においてもこれらをソース項として、それぞれ質量保存方程式、運動量保存方程式、エネルギー保存方程式に組み込めばよい。
ただし、滞留している冷却水の量や冷却水の流速を知ることができれば、経験則で温度や温度ムラを推測できる場合もある。計算の負荷を低減するという観点からは、特にエネルギー(温度)をソース項として考慮せず、冷却水の数値解析のみを行ってもよい。
以上のような数値計算を行えば、十分に精度の高い数値解析ができ、結果として精度の高い被冷却体の温度予測、(ひいては温度分布予測)が可能となる。より精度の高い数値解析を行うには、被冷却体−冷却水間の運動量の相互作用を考慮してもよい。鉄鋼製造プロセスに見られる高温鋼材の冷却を取り扱う場合は、鋼材近傍の冷却水は沸騰状態にあるとして取り扱う。
本発明は、以上の知見に基づいてされたものであって、本発明の趣旨は以下のとおりである。以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
本発明の第1の態様は、被冷却体(1)と間隔を開けて配置された複数のノズルから冷却媒体(3、3、…)を供給することにより被冷却体を冷却する冷却装置で、少なくとも1のノズルから供給される冷却媒体が被冷却体に当たる領域を単位解析領域とし、該単位解析領域を平均化した数値解析を行って被冷却体の温度を予測する際に、冷却媒体が、ノズルの先端よりも被冷却体側、且つ、被冷却体の表面よりもノズル側から供給されていると仮定し、冷却媒体の少なくとも質量および運動量をソース項として取り扱い、質量のソース項を質量保存方程式へ、運動量のソース項を運動量保存方程式へと加えて、少なくとも質量場、速度場、および、圧力場を計算する数値解析を行って、被冷却体の温度を予測することを特徴とする、被冷却体の温度予測方法である。
また、上記本発明の第1の態様において、さらに、冷却媒体(3、3、…)のエネルギーをソース項として取り扱い、該エネルギーのソース項をエネルギー保存方程式へと加えて、少なくとも質量場、速度場、圧力場、および、温度場を計算する数値解析を行って、被冷却体(1)の温度を予測してもよい。
また、上記本発明の第1の態様において、被冷却体(1)および冷却媒体(3、3、…)の間の熱流束と、被冷却体の表面温度と、被冷却体表面近傍の冷却媒体温度と、被冷却体の表面性状との関係式を予め導出し、上記単位解析領域について、上記関係式を用いて熱流束を算出し伝熱解析を行うことで、各単位解析領域の被冷却体の温度を予測してもよい。
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる被冷却体の温度予測方法を用いて、冷却装置により冷却される被冷却体(1)の温度分布を予測する温度分布予測工程と、予測された被冷却体の温度分布を用いて、冷却装置の動作を制御する冷却制御工程と、を有することを特徴とする、金属板の製造方法である。
本発明によれば、多大な解析時間や費用を要さず、冷却装置内全体の冷却水流動状況を予測することが可能になるため、被冷却体(1)と冷却水との間の熱流束に大きな影響を及ぼす冷却水の温度分布や冷却水の流動状態を求めることが可能になる。それにより、冷却装置の設計をより高い信頼性をもって行うことが可能となる。また、稼働中の冷却装置の内部で生じている現象を推測することが可能になるので、推測結果を冷却装置の改良に活かすことが可能となる。特に、鉄鋼冷却プロセスにおいては冷却装置に鋼材が挿入される段階で、鋼材に温度分布が生じている場合がほとんどであるが、本発明を適用することで、鋼板温度分布を低減させ、冷却停止温度を均一化させる冷却装置の制御方法および改良方法を提案することや、冷却停止温度を均一化させて品質を均一化させた金属板の製造方法を提供することが可能になり、鋼材品質の均一化や熱応力等による変形を抑制することも可能になる。
被冷却体表面温度、および、被冷却体と冷却媒体との間の熱流束を説明する図である。 解析格子を用いた解析を説明する概念図である。図2(a)は、複数の柱状噴流により被冷却体を冷却する装置に対して、本発明を用いず、噴流を解像できる解析格子を用いて解析を行う場合の概念図であり、図2(b)は、本発明を用いて、噴流を解像しない解析格子を用いて解析を行う場合の概念図である。 冷却試験装置を説明する図である。 図3に示した装置を用いた冷却試験の結果と本発明を用いた解析結果とを比較する図である。 解析領域10を示す図である。 本発明により厚鋼板の温度分布を求めた結果を示す図である。図6(a)は、厚鋼板の上面に滞留した滞留水の流動も含めた、計算結果の全体を示す図であり、図6(b)は、厚鋼板の表面温度分布を示す図である。 本発明との比較のため、本発明以外の方法により厚鋼板の温度分布を求めた結果を示す図である。図7(a)は、厚鋼板の上面に滞留した滞留水の流動も含めた、計算結果の全体を示す図であり、図7(b)は、厚鋼板の表面温度分布を示す図である。 表面熱流束の平均値と鋼板表面温度の平均値と鋼板表面近傍の平均水温との関係を説明する図である。図8(a)は、鋼板表面近傍の平均水温が37℃の場合の関係を示す図であり、図8(b)は、鋼板表面近傍の平均水温が56℃の場合の関係を示す図である。 図6および図7に結果を示した数値解析における厚鋼板の平均温度の経時変化を示す図である。
図1は、被冷却体表面温度、および、被冷却体と冷却媒体との間の熱流束(熱輸送量)を表す一般的な図である。図1に示したように、一般に沸騰現象は、冷却媒体に接する物質(被冷却体)の温度が上昇するにしたがって、核沸騰、遷移沸騰、膜沸騰と、沸騰の形態が変化する。ここで、核沸騰は、蒸気気泡が固体表面から立ち上る状態であり、蒸気気泡が発生する場所以外では固体および冷却媒体は接する状態となる。膜沸騰は、活発な沸騰が生じた結果固体と冷却媒体との間に蒸気の膜ができた状態であり、ほとんどの場所で固体および冷却媒体は直接には接していない状態となる。一方、遷移沸騰は核沸騰および膜沸騰が入り混じった状態とされる。
数値解析を行うに当たり、沸騰形態と被冷却体−冷却媒体間の運動量の境界条件との関係を考えると、核沸騰時は、被冷却体と冷却媒体とがほとんどの部分で接しているため、熱流動数値解析で一般的に用いられる滑りなし壁条件、または乱流状態では壁関数を用いた壁面境界条件を与えればよい。
膜沸騰時は、被冷却体と冷却媒体との間に摩擦が小さいと考えれば、熱流動数値解析で一般的に用いられる滑り壁境界条件、または蒸気の膜が持つ粘性によるせん断応力を壁面境界条件として与えればよい。
遷移沸騰時は、核沸騰に近いか膜沸騰に近いかを判別し、これらの中間の値を与えればよい。
なお、被冷却体表面の状態が非沸騰、核沸騰、遷移沸騰、膜沸騰のどの状態であるかも、被冷却体表面温度、被冷却体表面近傍の冷却水温度、滞留水の流動状態といったパラメータにより分類できる。したがって、数値解析により前記パラメータを求めれば、沸騰の状態を判別可能である。
また、冷却装置で一般に用いられる冷却水の温度は、室温程度である、すなわち沸点よりも十分に低い。このような場合、高温の被冷却体表面において冷却水は沸騰するものの、生じた蒸気は滞留水により冷却され、凝縮し、水に戻る。したがって、熱流動数値解析において、このような相変化現象は解析してもよく、解析しなくてもよい。
数値解析で被冷却体の温度を予測する際には、被冷却体と冷却水との間の熱流束を考慮する必要がある。被冷却体と冷却水との間の熱流束は、被冷却体の表面温度、被冷却体の表面性状、被冷却体表面近傍の冷却水温度、および冷却水の流動状態をパラメータとして数式化することができる。このため、熱流束とこれらの関係式を予め導出し、当該関係式を用いて熱流束を算出し伝熱解析を行うことで各解析格子の被冷却体の温度を決定し、被冷却体と冷却水との間の熱流束を各時刻・各位置において与え、被冷却体の温度を予測する。
ここで、「被冷却体の表面性状」は、少なくとも被冷却体の表面粗さを含み、特に鉄鋼製造プロセスに見られる高温鋼材の冷却を取り扱う場合には、被冷却体である鋼材表面に生成するスケール(酸化物)の表面粗さ、厚み、物性、空隙率といった、スケールの物理的性状を含むものである。被冷却体の表面性状については、予め与えたものを使用してもよく、また、特に鉄鋼製造プロセスに見られる高温鋼材の冷却を取り扱う場合、例えば冷却中にスケール厚みが変化するといったモデルを組み込み、熱流動数値解析中に変化する値として与えてもよい。
また、「被冷却体表面近傍の冷却水温度」の「被冷却体表面近傍」とは、流体力学において一般的に知られているように、冷却媒体が被冷却体表面に形成する温度境界層の外縁付近かそれよりも遠方を意味する。
また、「冷却水の流動状態」とは、例えば冷却媒体の攪拌状態が、噴流やスプレー流が被冷却体に直接衝突する領域と、噴射された冷却媒体が滞留水となって流動する領域とでは大きく異なり、このような差異を意味する。他にも滞留水の流速による差異や乱流状態も流動状態として考慮すべきである。
被冷却体の表面の各単位解析領域における温度を求めれば、被冷却体全体の温度分布を予測することができる。
以上の計算を時間進展させつつ繰り返すことで、冷却装置中の冷却水の流動状態や温度分布を、現実的な解析負荷範囲で精度および効率良く推定することができ、さらに被冷却体の温度(ひいては温度分布)を精度および効率良く推測することが可能となる。
以下に、複数の柱状噴流により鋼板を冷却する装置に対して、本発明の被冷却体の温度予測方法を適用した例を示す。
図2に、数値解析を行う際の被冷却体表面近傍における解析格子の例を示す。図2(a)は、本発明を用いずに噴流を解像できる解析格子を用いて解析を行う場合を説明する概念図であり、図2(b)は、本発明を用いて噴流を解像しない解析格子を用いて解析を行う場合を説明する概念図である。図2(a)及び図2(b)の各解析格子には数値計算時の解析イメージを合わせて着色を施した。図2(a)及び図2(b)の紙面下方が鋼板(被冷却体)であり、鋼板における着色は黒いほど低温であることを示す。また、図2(a)及び図2(b)の紙面上方は冷却水が供給される領域であり、着色が濃いほど水の濃度が高いことを示す。なお、図2(b)では「冷却媒体がノズル先端より下方かつ被冷却体の上方から供給される」ことをイメージしやすいように「冷却水の湧き出し」と表記し、1の解析格子を単一濃度にせず濃淡があるように表示したが、実際の計算では、冷却水の質量等は解析格子ごとに平均化して計算される。
図2(a)は詳細な解析格子(メッシュ)とした例であり、この例の数値解析では、被冷却体の上方に位置する冷却媒体の供給ノズルからの冷却水を考慮して数値解析がされる。この場合、柱状噴流を解析格子で解像しないと数値解析が行えず、解析格子数が膨大になるため、計算負荷が大きくなり冷却装置全体といった広範囲な領域を解析することは困難である。
一方、図2(b)は解析格子を粗くした例であり、解析格子数を低減し、計算負荷を小さくすることで現実的な解析が可能となる。また、この例ではノズルからの柱状噴流を考慮しなくてよく、この分も計算負荷の軽減に寄与する。
続いて、実際の試験結果と、図2(b)に示したような解析格子に本発明を適用した数値解析結果との比較について説明する。
図3に、実際の試験に用いた装置の例を示す。本装置は、柱状噴流を被冷却体へ供給可能な多数のノズルを有する冷却ヘッダを具備し、該冷却ヘッダよりも幅が広く側方の一面が開いた水槽に冷却水が噴射できるようになっている。噴射された冷却水は滞留水となって水槽内に溜まり、水槽側方の開いた一面より流出する。その流出流量分布を測定した。一方、この装置を想定した解析領域について、流動数値解析を行った。
図4に、図3に示した装置を用いた試験結果と、本発明を用いた解析結果との比較を示す。図4(b)は図4(a)に示す例の2倍の冷却水を用いた例である。図4(a)及び図4(b)では、冷却ヘッダ中央からの距離を横軸とし、冷却水の質量(流量)を縦軸とし、縦軸は冷却水が流出する出口の平均流量により無次元化し、横軸は冷却水が流出する出口の水槽の幅により無次元化した。
図4(a)及び図4(b)に示したように、異なる流量に対しても試験結果と解析結果とがよく一致している。この結果から、本発明における数値解析は滞留水の流動を妥当に表現可能であることが分かる。
本発明者らは、本発明の妥当性、有用性についてさらに検証するため、同一の解析対象に対する金属板の温度予測について、本発明を用いて行った結果と、本発明を用いず、詳細な熱流動解析を用いて行った結果とを比較した。
図5に、計算のための解析領域10を示す。ここでは、12本のノズルから柱状噴流3、3、…が厚鋼板1に噴射される領域を仮定した。厚鋼板1の上面には滞留水2が存在している。本発明の温度予測方法による計算では、この解析領域10を水平方向に20×20の解析格子に分割してその1を単位解析領域としたのに対し、詳細計算の温度予測方法では、この解析領域をさらに細かい解析格子に分割し、その解析格子を単位解析領域として計算を行った。
図6に、本発明の温度予測方法で求めた温度分布結果を示す。図6(a)は、厚鋼板の上面に滞留した滞留水の流動も含めた、計算結果の全体を示す図であり、図6(b)は、厚鋼板の表面温度分布を示す図である。また、図7に、詳細に計算した温度予測方法で求めた温度分布結果を示す。図7(a)は、厚鋼板の上面に滞留した滞留水の流動も含めた、計算結果の全体を示す図であり、図7(b)は、厚鋼板の表面温度分布を示す図である。図7(a)では、滞留水と噴射される柱状噴流が滞留水を貫通している様子も示されている。なお、本発明の温度予測方法で温度分布を求める際には、冷却水が、ノズルの先端よりも下方、且つ、厚鋼板の表面よりも上方から供給されていると仮定し、冷却水の少なくとも質量および運動量をソース項として取り扱い、質量のソース項を質量保存方程式へ、運動量のソース項を運動量保存方程式へと加えて、質量場、速度場、および、圧力場を計算する数値解析を行って、厚鋼板の温度を予測した。
なお、本発明の温度予測方法で温度分布を求める際には、厚鋼板および冷却水間の熱流束と、厚鋼板の表面温度と、厚鋼板表面近傍の冷却水温度と、厚鋼板の表面性状との関係式を予め導出し、この関係式を用いて熱流束を算出し伝熱解析を行うことで、温度を導出した。図8に、表面粗さなし、鋼材表面近傍の冷却媒体の平均温度が37℃および56℃の場合における、鋼材表面温度と鋼材−冷却水間の熱流束との関係を示す。図8(a)は鋼板表面近傍の平均水温が37℃の場合の関係を示す図であり、図8(b)は鋼板表面近傍の平均水温が56℃の場合の関係を示す図である。これらは伝熱学において沸騰曲線として一般的に知られる線図であり、被冷却体の温度を予測する上で必要な線図である。このような線図から導き出される多数の関係式を多数用意することで、温度の導出が可能になる。
図6(b)および図7(b)を見る限り、両者はほぼ同じであり、柱状噴流を詳細に捉えなくても、本発明による温度予測方法で求めた表面温度分布は、詳細計算による温度予測方法で求めた表面温度分布と差異はない。
図9に、図6および図7の数値解析における厚鋼板の平均温度の経時変化を示す。図9の縦軸は厚鋼板の平均温度[℃]であり、同横軸は冷却開始からの経過時間[s]である。図9に示したように、両者の結果はよく一致した。すなわち、本発明の温度予測方法でも詳細に計算した温度予測方法で求めた温度分布結果と同様の結果が得られ、本発明による温度予測方法の妥当性が示されたことがわかる。
なお、本発明では、冷却装置に供給される個々のノズルからのラミナー流、噴流、スプレー流等の冷却水の質量、運動量、エネルギーをソース項として解析に導入し、単位解析領域を平均化して温度予測する。これは、以下の理由による。
まず熱流動数値解析において、冷却水の質量、運動量、エネルギーを系内に導入するには、境界条件として導入するか、ソース項として導入する必要がある。
また本発明で扱うような金属板の製造プロセス(例えば、鉄鋼製造プロセス)で用いられる冷却装置は、長さが数十mにもおよぶものが多く、ノズルを一本ずつ解像できるような細かい解析格子を用いたのでは、冷却装置全体の流動状態や温度分布を、現実的な計算負荷で解析することは困難である。そこで個々のノズルからの流動を平均化する必要がある。
ここで、ノズルから供給されるラミナー流、噴流、スプレー流を平均化して与える場合、実際の冷却装置におけるノズル先端位置から境界条件として導入すると、その挙動を捉えることができず、妥当な結果が得られない。したがって、本発明では、これらをソース項として導入する必要がある。
また、本発明に関する上記説明では、厚鋼板および冷却水間の熱流束と、厚鋼板の表面温度と、厚鋼板表面近傍の冷却水温度と、厚鋼板の表面性状との関係式を予め導出し、この関係式(図8に示したような沸騰曲線から導出される関係式)を用いて熱流束を算出し伝熱解析を行うことで温度を予測する形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。ただし、被冷却体から冷却媒体への熱流束は、被冷却体の表面温度、被冷却体の表面性状、被冷却体表面近傍の冷却媒体温度、および冷却媒体の流動状態と大きな相関がある。そのため、被冷却体から冷却媒体への熱流束と、被冷却体の表面温度、被冷却体の表面性状、被冷却体表面近傍の冷却媒体温度、および冷却媒体の流動状態との関係式を用いて数値解析を行うことにより、これらの被冷却体各所における分布を常に把握し、常に適切な熱流束を与えながら冷却の予測を行うことが可能になる結果、被冷却体の温度予測の精度を高めやすくなる。したがって、本発明では、沸騰曲線から導出される関係式を用いて数値解析を行うことが好ましい。
また、本発明に関する上記説明では、被冷却体の上方に配置された複数のノズルから被冷却体の上面へと冷却媒体を供給することにより、被冷却体を冷却する形態について主に説明したが、本発明の形態は、これに限定されない。本発明は、被冷却体の下方に配置された複数のノズルから被冷却体の下面へと冷却媒体を供給することにより、被冷却体を冷却する形態であっても良い。このほか、本発明は、被冷却体の上方、および、被冷却体の下方にそれぞれ配置された複数のノズルから、被冷却体の上面、および、被冷却体の下面へと冷却媒体をそれぞれ供給することにより、被冷却体を冷却する形態であっても良い。
以上、現時点において実践的であり、且つ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う被冷却体の温度予測方法および金属板の製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
1…被冷却体
2…滞留水
3…冷却水(冷却媒体、柱状噴流)
10…解析領域

Claims (4)

  1. 被冷却体と間隔を開けて配置された複数のノズルから冷却媒体を供給することにより前記被冷却体を冷却する冷却装置で、少なくとも1の前記ノズルから供給される前記冷却媒体が前記被冷却体に当たる領域を単位解析領域とし、該単位解析領域を平均化した数値解析を行って前記被冷却体の温度を予測する際に、
    前記冷却媒体が、前記ノズルの先端よりも前記被冷却体側、且つ、前記被冷却体の表面よりも前記ノズル側から供給されていると仮定し、
    前記冷却媒体の少なくとも質量および運動量をソース項として取り扱い、前記質量のソース項を質量保存方程式へ、前記運動量のソース項を運動量保存方程式へと加えて、少なくとも質量場、速度場、および、圧力場を計算する数値解析を行って、前記被冷却材の温度を予測することを特徴とする、被冷却体の温度予測方法。
  2. さらに、前記冷却媒体のエネルギーをソース項として取り扱い、前記エネルギーのソース項をエネルギー保存方程式へと加えて、少なくとも質量場、速度場、圧力場、および、温度場を計算する数値解析を行って、前記被冷却体の温度を予測することを特徴とする、請求項1に記載の被冷却体の温度予測方法。
  3. 前記被冷却体および前記冷却媒体の間の熱流束と、前記被冷却体の表面温度と、前記被冷却体表面近傍の冷却媒体温度と、前記被冷却体の表面性状との関係式を予め導出し、
    前記単位解析領域について、前記関係式を用いて熱流束を算出し伝熱解析を行うことで、各単位解析領域の前記被冷却体の温度を予測することを特徴とする、請求項1又は2に記載の被冷却体の温度予測方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の被冷却体の温度予測方法を用いて、冷却装置により冷却される被冷却体の温度分布を予測する温度分布予測工程と、
    予測された前記被冷却体の温度分布を用いて、前記冷却装置の動作を制御する冷却制御工程と、
    を有することを特徴とする、金属板の製造方法。
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