JP5681578B2 - 液晶表示装置および電子機器 - Google Patents

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Description

本技術は、液晶層を備える液晶表示パネルおよびそれを備えた液晶表示装置に関する。また、本技術は、上記の液晶表示装置を表示部として備えた電子機器に関する。
液晶表示装置は、CRT(陰極線管)と比較して軽量、薄型、低消費電力という特徴があることから、表示用として多くの電子機器に使用されている。従来の液晶表示装置としては、液晶層に電界を印加する方法で分類すると、縦電界方式のものと横電界方式のものとが知られている。
縦電界方式の液晶表示装置は、液晶層を挟んで配置される一対の電極により、概ね縦方向の電界を液晶分子に印加するものである。この縦電界方式の液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどが知られている。
また、横電界方式の液晶表示装置は、液晶層を挟んで配置される一対の基板のうちの一方の内面側に互いに絶縁分離された一対の電極により、概ね横方向(積層面内方向)の電界を液晶分子に対して印加するものである。この横電界方式の液晶表示装置としては、一対の電極が平面視で重ならないIPS(In-Plane Switching)モードと、一対の電極が平面視で重なるFFS(Fringe Field Switching)モードとが知られている。
これらの液晶表示装置は、所定方向に配向した液晶層のダイレクターを電界により変えることにより光の透過量を変化させて画像を表示させるようになっている。このような従来例の液晶表示装置の動作原理について図22を用いて説明する。
なお、図22(A)は、従来例の縦電界方式の液晶表示装置の模式断面図である。図22(A)に記載の液晶表示装置は、液晶層に外部電場(電圧)を印加した時に生じる光学位相差の変化を光学素子として用いたものである。図22(B)は、図22(A)に記載の液晶表示装置における光の透過状態を示す図である。図22(C)、図22(D)は正の誘電率異方性を有するネマティック液晶層における液晶層内のダイレクターの配置状態の一例を示したものである。図22(C)は、電圧無印加状態でのダイレクターの配置状態の一例を示したものである。図22(D)は、電圧印加状態でのダイレクターの配置状態の一例を示したものである。従来の液晶表示装置のほとんどは、ネマティック液晶のような、ネマティック相−等方相の相転移温度(TNI)未満における液晶のダイレクターの配置を変化させることにより表示を行っている。
図22(A)に示したように、従来の液晶表示装置200では、アレイ基板210とカラーフィルタ基板220との間に液晶層230が狭持されている。アレイ基板210とカラーフィルタ基板220の液晶層230側に、透明電極240,250がそれぞれ形成されている。さらに、アレイ基板210およびカラーフィルタ基板220のそれぞれの外面(液晶層230とは反対側の面)に、偏光板260,270が配置されている。図22(B)に示したように、バックライト280から、アレイ基板210側の偏光板260に入射した光は、直線偏光に変換され、この直線偏光には、液晶層230を通過する間に位相差が付与される。位相差の付与された光のうち、カラーフィルタ基板220側の偏光板270の透過軸と平行な成分だけが偏光板270を透過し、偏光板270を透過した光が観察者(図示せず)に視認される。
液晶層230内のダイレクターは、電界が無印加状態となっている時には、例えば、図22(C)に示したように、透明電極240,250の表面に形成されている配向膜310,320の作用により、水平方向に配向している。また、液晶層230内のダイレクターは、電界が印加されると、例えば、図22(D)に示したように、電界の作用により、垂直方向に配向する。このように、電界の印加状態に応じて、液晶層230内のダイレクターの配向状態が変化するので、液晶層230を透過する光の位相が変化する。従って、従来の液晶表示装置200では、一対の透明電極240,250によって形成される電界と偏光板270の透過軸との相互作用によって、光の透過量を制御することにより、所定の画像が表示される。
なお、横電界方式の液晶表示装置は、一対の電極をアレイ基板側に備えているが、一対の電極によって形成される電界と光出射側の偏光板の透過軸との相互作用によって、光の透過量を制御することにより、所定の画像が表示されるという点では、前述の縦電界方式の液晶表示装置と共通している。
特開平11−183937号公報 特開2001−265298号公報 特開2007−323046号公報
ところで、上述したような液晶表示装置では、応答速度およびコントラストのさらなる向上が求められている。しかし、従来の液晶表示装置では、高速応答および高コントラストが得られる温度領域が狭く、その温度領域を逸脱すると、応答速度およびコントラストが低下してしまうという問題があった。
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高速応答および高コントラストが得られる温度領域を広げることの可能な液晶表示パネルおよびそれを備えた液晶表示装置を提供することにある。また、第2の目的は、上記の液晶表示装置を表示部として備えた電子機器を提供することにある。
本技術による液晶表示パネルは、正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、液晶層に接する垂直配向膜とを有している。この液晶表示パネルは、さらに、液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板を有するとともに、第1基板および第2基板の少なくとも一方の基板の表面に電極を有している。電極は、液晶層に対して、第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させるように構成されている。
本技術による液晶表示装置は、上記の液晶表示パネルと、上記の液晶表示パネルを駆動する駆動回路とを備えたものである。本技術による電子機器は、上記の液晶表示装置を表示部として備えたものである。
本技術による液晶表示パネル、液晶表示装置および電子機器では、電極への電圧印加により、正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含むと共に垂直配向膜に接する液晶層に対して、第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場が発生する。このとき、液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合には、液晶層のダイレクターが、電極へ所定の電圧が印加されることにより電場に倣った方向に向きを変え、電極に印加されていた電圧が取り除かれることにより元の向きに戻る。また、液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、液晶層は、電極へ所定の電圧が印加されることにより液体状態(等方相)から液晶状態(ネマティック相)に相転移し、電極に印加されていた電圧が取り除かれることにより元の液体状態(等方相)に戻る。このように、本技術では、ネマティック相温度領域だけでなく、等方相温度領域においても、光透過率の変化を生じさせることができる。ここで、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失速度は、ネマティック相温度領域におけるダイレクターの再配置速度よりも大幅に早い。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用することにより、高速応答が得られる。また、液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、液晶層のダイレクターは消失しており、液晶層には複屈折が発生しない。そのため、液晶層内に異物が混入した場合であっても、液晶層のうち異物の周辺領域に、液晶層のディスクネーションによる光漏れが生じない。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用した場合であっても、沈んだ黒輝度が得られる。
ところで、本技術において、上述の所定の電圧は、例えば、液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に液晶層の複屈折が、液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合の液晶層の複屈折と同一またはほぼ同一となる電圧(第1電圧)に相当していてもよい。また、本技術において、液晶表示パネルが、第1基板および第2基板を介して互いに対向配置された一対の偏光板を有していてもよい。ここで、一対の偏光板が、クロスニコル条件を満たし、電場の向きに対して45°吸収軸がずれた状態となっている場合には、上述の所定の電圧は、例えば、液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に液晶表示パネルの光透過率が最大となる電圧または高い値で飽和する範囲内の電圧(第3電圧)に相当していてもよい。また、一対の偏光板が、平行ニコル条件を満たし、電場の向きに対して90°吸収軸がずれた状態となっている場合には、上述の所定の電圧は、例えば、液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に液晶表示パネルの光透過率が最小となる電圧または低い値で飽和する範囲内の電圧(第5電圧)に相当していてもよい。
また、本技術において、駆動回路は、上記の第1電圧、上記の第3電圧または上記の第5電圧と、それとは異なる電圧との2値で、電極を駆動するようになっていてもよい。
本技術による液晶表示パネル、液晶表示装置および電子機器によれば、ネマティック相温度領域だけでなく等方相温度領域も利用できるようにしたので、高速応答および高コントラストが得られる温度領域を広げることができる。
また、本技術では、液晶層の温度がネマティック相温度領域および等方相温度領域のいずれの温度領域にある場合であっても、第1電圧、第3電圧または第5電圧を電極に印加することで、表示パネルの光透過率をほぼ同一に制御することができる。これにより、液晶層の温度に拘わりなく、同一の駆動条件で、表示パネルを駆動することができる。つまり、本技術では、通常よりも高い電圧を電極に印加することにより、温度検出器がなくても、高速応答および高コントラストが得られる温度領域を広げることができる。その結果、液晶表示装置の構成を簡素化することができる。
第1の実施の形態に係る液晶表示パネルの構成の一例を示す図である。 第1の実施の形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す図である。 図1の液晶層の状態の一例を示す図である。 図1の液晶層の状態の他の例を示す図である。 図1の液晶表示パネルの光透過率の一例を示す図である。 比較例(1)の光透過率の一例を示す図である。 液晶層の配向が垂直方向のタイプの液晶表示装置の光透過率の一例を示す図である。 応答速度の一例を示す図である。 第2の実施の形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す図である。 第3の実施の形態に係る液晶表示装置の構成の一例を表す図である。 図10の液晶表示パネルの光透過率の一例を示す図である。 図10の液晶表示装置の構成の一変形例を示す図である。 第4の実施の形態に係る液晶表示パネルの構成の一例を表す図である。 第4の実施の形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す図である。 図13の液晶層の状態の一例を示す図である。 図13の液晶層の状態の他の例を示す図である。 図13の液晶表示パネルの光透過率の一例を示す図である。 図14の液晶表示装置の構成の一変形例を示す図である。 一適用例に係る電子機器の構成の一例を表す斜視図である。 図1の液晶表示パネルの光透過率の他の例を示す図である。 図13の液晶表示パネルの光透過率の他の例を示す図である。 従来の液晶表示装置の構成の一例を表す模式図である。
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(液晶表示装置)
垂直配向・横電界制御で表示が行われる例
温度判別回路が設けられている例
2.第2の実施の形態(液晶表示装置)
垂直配向・横電界制御で表示が行われる例
温度制御回路が設けられている例
3.第3の実施の形態(液晶表示装置)
垂直配向・横電界制御で表示が行われる例
温度検出が行われていない例
4.第3の実施の形態の変形例(液晶表示装置)
垂直配向・横電界制御で表示が行われる例
温度判別回路が設けられている例
5.第4の実施の形態(液晶表示装置)
水平配向・縦電界制御で表示が行われる例
温度検出が行われていない例
6.第4の実施の形態の変形例(液晶表示装置)
水平配向・縦電界制御で表示が行われる例
温度判別回路が設けられている例
7.適用例
上記各実施の形態の液晶表示装置が表示部として用いられている例
8.変形例
偏光板が平行ニコル条件を満たしている例
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、第1の実施の形態に係る液晶表示パネル10の構成の一例を示す断面図である。
液晶表示パネル10は、対向する2つの絶縁性を備える透明基板11,12と、透明基板11,12の間に挟まれた液晶層13とを有する。透明基板11,12は、例えば、ガラスで構成されている。
液晶表示パネル10は、透明基板11における透明基板12と対向する表面11a上に、液晶層13に接する配向膜14を有する。配向膜14は、液晶層13の配向を垂直方向に規制する垂直配向膜である。垂直配向膜は、例えば、ポリイミド膜、または斜方蒸着膜で構成されている。なお、斜方蒸着膜は、無機配向膜であり、例えば、SiOxを含んで構成されている。液晶表示パネル10は、さらに、透明基板11の表面11a上に、複数の電極15を有する。複数の電極15は、電圧が供給されることで、透明基板11の法線と直交または交差する方向(つまり横方向)の電界を液晶層13に発生させ、液晶層13の配向方向を変化させるようになっている。各電極15は、例えば、透明基板11の表面11aと平行な面内の一の方向に延在する帯状の形状となっており、互いに隣り合う2つの電極15間に電位差を発生させることにより、液晶層13に、横方向に主たる電場を発生させることができるようになっている。液晶表示パネル10は、透明基板11における表面11aとは反対側の表面11b上に、偏光板16を有する。
液晶表示パネル10は、透明基板12における透明基板11と対向する表面12a上に、液晶層13に接する配向膜17を有する。配向膜17は、液晶層13の配向を垂直方向に規制する垂直配向膜である。垂直配向膜は、例えば、ポリイミド膜、または斜方蒸着膜で構成されている。なお、斜方蒸着膜は、無機配向膜であり、例えば、SiOxを含んで構成されている。液晶表示パネル10は、透明基板12における表面12aとは反対側の表面12b上に、偏光板18を有する。ここで、偏光板16と偏光板18とは、クロスニコル条件を満たし、電極15に対して、45°吸収軸がずれた状態となっている。
このように、液晶表示パネル10の構成は、VAモードの液晶層13を横電界で駆動するVA−IPSモードとなっている。ここで、透明基板11と透明基板12との間隔は、例えば、3μmである。互いに隣り合う2つの電極15の間の間隔は、例えば、10μmである。電極15の幅は、例えば、5μmである。電極15の高さは、例えば、0.5μmである。
液晶層13は、正の誘電率異方性を有するネマティック液晶によって構成されている。液晶層13は、所定の相転移温度(TNI)を有し、相転移温度よりも低い温度のときは、ネマティック相となり、相転移温度以上のときは、液体相である等方相となる。液晶層13は、例えば、4−シアノ−4’ペンチルビフエニル(4-cyano-4' pentylbiphenyl)(以下、「5CB」と表す)を含む。「5CB」の相転移温整度は、35℃である。液晶層13は、5CBとは異なる液晶材料によって構成されていてもよい。
等方相温度領域においては、液晶層13は等方相として存在しているため、液晶層13を透過する光は何等の影響も受けない。偏光板16,18は、クロスニコル配置されているので、一方の偏光板16を透過して直線偏光に変換された光は、他方の偏光板18を透過することができない。
しかしながら、電極15に電圧を供給して、液晶層13に電界を印加すると、ネマティック相が誘起される。このネマティック相を通過する光には、電気光学的カー効果により位相変化が生じるので、一方の偏光板16を透過して直線偏光に変換された光は、ネマティック相を透過する間に位相が変化するので、他方の偏光板18を透過することができるようになる。従って、液晶表示パネル10は、ノーマリーブラック型となっている。
次に、液晶表示パネル10を用いた液晶表示装置について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る液晶表示装置30の一例を示した図である。液晶表示装置30は、液晶表示パネル10と、温度判別回路31と、駆動回路32と、温度検出器33と、バックライト(図示せず)とを有する。
バックライトは、液晶表示パネル10を背後(偏光板11)側から照明するものである。バックライトは、例えば、並列配置された複数の線状光源の上に複数の光学シートが設けられた直下型の光源である。なお、バックライトは、例えば、導光板の端面に線状光源が設けられるとともに導光板の上面に複数の光学シートが設けられたサイドエッジ型の光源であってもよい。
温度検出器33は、液晶層13の温度を検出し、検出信号を温度判別回路31に出力するようになっている。温度判別回路31は、受信した検出信号に基づき、液晶層13の温度が、相転移温度未満であるか、または、相転移温度以上であるかを判別するようになっている。さらに、温度判別回路31は、判別結果を駆動回路32に出力するようになっている。
駆動回路32は、受信した判別結果に基づいて、液晶表示パネル10の電極15に、所定の電圧を供給するようになっている。すなわち、液晶層13の温度が、相転移温度未満である場合、つまり、液晶層13がネマティック相である場合、駆動回路32は、液晶層13のダイレクターの方向の変化に基づく光透過率の変化が生じる電圧を電極15に供給するようになっている。
また、液晶層13の温度が、相転移温度以上である場合、つまり、液晶層13が等方相である場合、駆動回路32は、ネマティック相の誘起および消失現象に基づく光透過率の変化が生じる電圧を電極15に供給するようになっている。
ここで、ネマティック相の誘起および消失現象に基づく光透過率の変化が生じる電圧(例えば、100V)は、ダイレクターの方向の変化に基づく光透過率の変化が生じる電圧(例えば、10V)よりも大きい。
このように、駆動回路32が、受信した判別結果に基づいて、液晶表示パネル10の電極15に所定の電圧を供給することで、液晶表示装置30は、ネマティック相温度領域および等方相温度領域の両方の範囲で駆動することができるようになっている。
[動作]
次に、液晶表示パネル10の液晶層13の状態について説明する。図3(A)〜(D)、図4(A)〜(D)は、第1の実施の形態に係る液晶層13の状態の一例を示す図である。図3は、液晶層13がネマティック相温度領域にある場合の図である。図3(A),(B)は、電極15に電圧を供給していない場合を示し、図3(C),(D)は、電極15に電圧を供給している場合を示す。なお、図3(A),(C)は、断面図であり、図3(B),(D)は、平面図である。
図3(A)、(B)に示すように、電極15に電圧を供給していない場合、すなわち、液晶層13に電界が印加されていない場合、液晶層13のダイレクター13aは、垂直方向を向いている。つまり、ダイレクター13aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと直交する方向に向いている。
図3(C),(D)に示すように、電極15に電圧を供給している場合、すなわち、液晶層13に横方向の電界15aが印加されている場合、液晶層13のダイレクター13aは、横方向を向いている。つまり、ダイレクター13aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと平行な方向を向いている。
図4(A)〜(D)は、液晶層13が等方相温度領域にある場合の図である。図4(A),(B)は、電極15に電圧を供給していない場合を示す。図4(C),(D)は、電極15に電圧が供給されている場合を示す。なお、図4(A),(C)は、断面図であり、図4(B),(D)は、平面図である。
図4(A),(B)に示すように、電極15に電圧が供給されていない場合、すなわち、液晶層13に電界が印加されていない場合、液晶層13は等方相として存在する。つまり、液晶層13では、ネマティック相が消失している。
図4(C),(D)に示すように、電極15に電圧が供給されている場合、すなわち、液晶層13に横方向の電界15aが印加されている場合、液晶層13にネマティック相が誘起される。ここで、液晶層13のダイレクター13aは、横方向を向いている。つまり、ダイレクター13aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと平行な方向を向いている。
次に、液晶表示パネル10の光透過率について説明する。図5は、液晶表示パネル10の光透過率の一例を示す図である。図5の横軸は、電極15に供給する電圧(V)を示し、図5の縦軸は、液晶表示パネル10の光透過率(%)を示す。特性1aは、ネマティック相温度領域における光透過率特性を示し、特性1bは、等方相温度領域における光透過率特性を示す。
特性1a,1bに示されるように、ネマティック相温度領域における上限側の光透過率と、等方相温度領域における上限側の光透過率とは、ほぼ同じ値となっている。この結果から、液晶表示装置30では、液晶表示パネル10の偏光板16,18のクロスニコルと、液晶層13の配向軸との関係を考慮することなく、白および黒のスイッチングが可能となる。
[効果]
次に、液晶表示装置30の効果について、比較例(1)を用いて説明する。比較例(1)は、液晶表示パネルの液晶層の配向が、液晶表示パネル10とは異なり、平行方向のタイプの液晶表示装置である。
図6(A),(B)は、比較例(1)の光透過率の一例を示す図である。図6(A),(B)の横軸は、液晶表示パネルの電極に供給する電圧(V)を示し、図6(A),(B)の縦軸は、液晶表示パネルの光透過率(%)を示す。まず、図6(A)に示す例について説明する。
特性2a,2bは、互いに異なる所定の温度における光透過率特性を示す。特性2a,2bに示されるように、電圧が0V付近では、液晶層の配向41は、クロスニコルの方向42と重なるため、光透過率は0%に近い。電圧がV1の付近では、液晶層の配向43は、クロスニコルの方向42と重ならず、光透過率が高い値で飽和する。このとき、光透過率の飽和値は、特性2a,2bにおいて互いに大きく異なっている。電圧がV1よりも高いV2付近では、液晶層の配向44は、クロスニコルの方向42と重なるため、光透過率は0%に近い。
次に、図6(B)に示す例について説明する。図6(B)に示す例では、クロスニコルの方向が図6(A)に示す例と異なっている。特性3aは、所定の温度における光透過率特性を示す。特性3aに示されるように、電圧が0V付近では、液晶層の配向45は、クロスニコルの方向46と重ならず、光透過率はピーク値に近い値を指す。電圧がV3の付近では、液晶層の配向47は、クロスニコルの方向46と重なり、光透過率は0%に近い。電圧がV3よりも高いV4付近では、液晶層の配向48は、クロスニコルの方向46と重ならず、光透過率はピーク値を指す。
このように、液晶層の配向が平行方向となっている場合は、光透過率が上記の特性を備えているので、ネマティック相温度領域と等方相温度領域の両方を用いるようにした場合、液晶層の配向方向と、クロスニコルの方向との関係を工夫する必要がある。
次に、液晶表示パネルの液晶の配向が、液晶表示パネル10のように、垂直方向となっている液晶表示装置について説明する。図7は、液晶の配向が垂直方向となっている液晶表示装置の光透過率の一例を示す図である。図7の横軸は、液晶表示パネルの電極に供給する電圧(V)を示し、図7の縦軸は、液晶表示パネルの光透過率(%)を示す。
特性4a,4bは、互いに異なる所定の温度における光透過率特性を示す。なお、特性4aの温度はネマティック相温度領域にあり、特性4bの温度は等方相温度領域にある。特性4aの温度では、電圧が0V付近において、液晶層の配向49は、垂直方向であり、光透過率は0%に近い。一方、特性4bの温度では、電圧が0V付近において、液晶層は、等方相層となっており、光透過率は0%に近い。特性4aの温度では、電圧がV5の付近において、液晶層の配向51は、クロスニコルの方向50と重ならず、光透過率はピーク値を指す。電圧がV5よりも高い電圧では、光透過率はピーク値を維持している。一方、特性4bの温度では、電圧がV6付近において、液晶層にネマティック相が誘起され、液晶層の配向51は、クロスニコルの方向50と重ならず、光透過率はピーク値を指す。ここで、特性4a,4bの双方の温度条件において、光透過率のピーク値は似通っている。
このように、液晶層の配向が垂直方向となっている場合は、光透過率が上記の特性を備えているので、ネマティック相温度領域と等方相温度領域の両方を用いるようにした場合、液晶層の配向方向と、クロスニコルの方向との関係を考慮する必要がない。このため、ラビングレス等の工数削減を行うことができ、歩留まりの向上が期待できる。
すなわち、液晶層の配向が垂直方向となっている場合は、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、光学特性が似ている。そのため、理想的な黒および白表示の駆動条件を、ネマティック相温度領域および等方相温度領域の双方で共有しやすく、黒浮きも起こりにくいために高コントラスト化を実現できる。
つまり、液晶表示装置30は、液晶層13の配向が垂直方向であるため、高コントラスト化を実現でき、歩留まりの向上も期待できる。
次に、液晶表示装置30の効果について、比較例(2)を用いて説明する。
図8(A),(B)は、応答速度の一例を示す図である。比較例(2)は、ネマティック相温度領域のみを用いるタイプの液晶表示装置である。液晶表示装置30のような、ネマティック相温度領域および等方向相温度領域の両方を用いるタイプ(ハイブリットタイプとも称す)では、比較例(2)と比べて、応答速度が高速である。
すなわち、ハイブリットタイプが高速応答化を図れる理由は、相転移温度未満の液晶層における粘性の温度依存性にある。図8(A),(B)は、ハイブリットタイプおよび比較例(2)における、液晶層の相転移温度((TNI(N1,N2))と、使用温度範囲と、そのときの応答速度における温度依存性の概念図である。なお、C点(C1,C2)は、クリスタルポイントを示す。
実際の温度Tが相転移温度未満のとき、T1=TNI−Tとしたとき、T1が大きくなると液晶層の粘性が増大する。応答のrise(Tr)およびdecay(Td)は、以下の式ように表される。
Tr={γ×d/π2×Keff}(V/Vth−1)
Td=γ×d/π2×Keff
ここで、γは粘性である。dはセル厚である。Vは電圧である。Vthはしきい値電圧である。Keffは弾性である。
上記の式から、γが増大すれば、応答時間は長くなる、つまり、応答性が遅くなることがわかる。これに対し、ハイブリッドタイプでは、相転移温度の絶対値を下げることが可能となるため、実際の温度が、相転移温度未満の温度でも、比較例(2)に比べて相対的に速い応答性を示すことが可能となる。
つまり、液晶表示装置30は、ネマティック相温度領域および等方相温度領域の両方を用いるため、応答速度を向上させることが可能となる。また、高コントラスト化に関しては、ハイブリットタイプでは、等方相温度領域において、比較例(2)に比べて、液晶層が複屈折を発生させない。このため、例えば、異物等による凹凸周辺の液晶層のディスクネーションによる光漏れなどが生じないため、比較的低い黒輝度となる。その結果、高コントラストを示す。
次に、液晶表示装置30の効果について、比較例(3)を用いて説明する。比較例(3)は、等方相温度領域のみを用いるタイプの液晶表示装置である。比較例(3)の場合、等方相温度領域のみを用いるため、表示が可能な温度範囲が狭い。液晶表示装置30のような、ハイブリットタイプでは、相転移温度未満の温度であっても、表示が可能となるため、広範囲にわたる温度での表示を実現することができる。
以上、説明してきたように、液晶表示装置30では、応答速度の向上、および、高コントラスト化を実現することが可能となる。
<2.第2の実施の形態>
次に、第1の実施の形態の液晶表示パネル10を用いた他の液晶表示装置を、第2の実施の形態として説明する。
図9は、第2の実施の形態に係る液晶表示装置60の一例を示す図である。液晶表示装置60は、液晶表示パネル10と、温度制御部61と、駆動モード選択部62と、駆動回路63とを有している。液晶表示装置60は、さらに、温度検出器33と、ペルチェ素子64とを有している。
ペルチェ素子64は、流す直流電流の方向によって一方側の面を発熱状態ないし吸熱状態に制御できる素子である。ペルチェ素子64は、例えば、図示を省略したサイドライト型のバックライト光源の導光板の背面側に接するように配置されている。
駆動モード選択部62は、外部からの入力に基づき、等方相温度領域で表示を行うのか、または、ネマティック相温度領域で表示を行うのかを選択するようになっている。温度制御部61は、駆動モード選択部62の選択結果に基づいて、液晶表示パネル10の液晶層13の温度を調整するようになっている。すなわち、駆動モード選択部62が等方相温度領域での表示を選択した場合、温度制御部61は、ペルチェ素子64を制御して、液晶層13が等方相温度となるように、液晶層13の温度を調整するようになっている。液晶層13の温度の検出には温度検出器33が用いられる。
また、温度制御部61は、駆動モード選択部62がネマティック相温度領域での表示を選択した場合、ペルチェ素子64を制御して、液晶層13がネマティック相温度となるように、液晶層13の温度を調整するようになっている。
駆動回路63は、駆動モード選択部62の選択結果に基づいて、液晶表示パネル10の電極15に、所定の電圧を供給するようになっている。すなわち、駆動モード選択部62が等方相温度領域での表示を選択した場合、駆動回路63は、液晶層13にネマティック相の誘起および消失現象に基づく光透過率の変化が生じる電圧を、電極15に供給するようになっている。
また、駆動モード選択部62がネマティック相温度領域での表示を選択した場合、駆動回路63は、液晶層13のダイレクターの方向の変化に基づく光透過率の変化が生じる電圧を、電極15に供給するようになっている。
このように、駆動回路63が、駆動モード選択部62の選択結果に基づいて、液晶表示パネル10の電極15に、所定の電圧を供給することで、液晶表示装置60は、ネマティック相温度領域での表示または等方相温度領域での表示のいずれかを選択することができるようになっている。
<3.第3の実施の形態>
[構成]
次に、第1の実施の形態の液晶表示パネル10を用いた他の液晶表示装置を、第3の実施の形態として説明する。
図10は、第3の実施の形態に係る液晶表示装置70の一例を表すものである。液晶表示装置70は、液晶表示パネル10と、液晶表示パネル10を駆動する駆動回路71と、液晶表示パネル10を背後から照明するバックライト(図示せず)とを有している。
駆動回路71は、液晶層13の温度に拘わりなく、所定の範囲内の電圧(以下、便宜的にVxとする。)を、電極15に印加するようになっている。より詳細には、駆動回路71は、各電極15が、例えば、透明基板11の表面11aと平行な面内の一の方向に延在する帯状の形状となっているときに、互いに隣り合う2つの電極15間にVxの電位差を発生させる電圧を各電極15に印加することにより、白表示させるようになっている。また、駆動回路71は、液晶層13の温度に拘わりなく、Vxとは異なる電圧(例えば0Vまたは0V付近の電圧)を印加ことにより、黒表示させるようになっている。
ここで、Vxとは、液晶層13が等方相温度領域となっているときに液晶表示パネル10の光透過率が最大となる電圧(もしくは高い値で飽和する電圧範囲のうち最小の電圧)(V1)(図11参照)以上の電圧であって、かつ液晶表示パネル10の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧以下の電圧を指している。このVxは、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合に液晶層13の複屈折が、液晶層13の温度がネマティック相温度領域にある場合の液晶層13の複屈折と同一またはほぼ同一となる電圧に相当する。
[効果]
次に、液晶表示装置70の効果について説明する。液晶層13は、液晶層13の温度がネマティック相温度領域にある場合には、図3(A)〜(D)に示したように、電極15による電場の印加に応じて液晶層13のダイレクター13aが変位するようになっている。従って、電極15に電圧が印加されていない場合や電極15の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層13の配向は垂直方向となり、液晶表示パネル10の光透過率は0%に近い。また、電極15にVx(例えばV1)が印加されている場合には、液晶層13の配向は水平方向であって、かつクロスニコルの方向とは異なる方向となり、液晶表示パネル10の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。なお、電極15にVx(例えばV1)が印加されているときの液晶層13の複屈折をΔnxとする。
液晶層13は、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合には、図4(A)〜(D)に示したように、電極15による電場の印加に応じて液晶層13のダイレクター13aが消失したり誘起したりするようになっている。従って、電極15に電圧が印加されていない場合や電極15の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層13は無配向状態となり、液晶表示パネル10の光透過率は0%に近い。また、電極15にVx(例えばV1)が印加されている場合には、液晶層13の配向が水平方向であって、かつクロスニコルの方向とは異なる方向に誘起され、液晶表示パネル10の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。電極15にVx(例えばV1)が印加されているとき、液晶層13には複屈折が生じており、その値は、Δnxと同一またはほぼ同等である。
このように、液晶層13の温度がネマティック相温度領域および等方相温度領域のいずれの領域であったとしても、電極15に電圧が印加されていない場合や電極15の電圧が0V付近となっている場合には、液晶表示パネル10の光透過率は0%に近い。さらに、電極15にVx(例えばV1)が印加されている場合には、光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。すなわち、例えば、電極15が0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vx(例えばV1)ボルトとの2値で駆動されている場合には、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、光学特性が似通っている。そのため、電極15を上記の2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、理想的な黒表示および白表示を共有することができる。また、黒表示時には、液晶層13の配向は垂直方向となっているので、黒浮きが起こりにくい。
以上をまとめると、本実施の形態では、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合にVx(例えばV1)が電極15に印加される。これにより、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合には、Vx(例えばV1)が電極15に印加されることにより液体状態(等方相)から液晶状態(ネマティック相)に相転移し、電極15に印加されていた電圧を取り除くことにより元の液体状態(等方相)に戻る。このように、本実施の形態では、ネマティック相温度領域だけでなく、等方相温度領域においても、光透過率の変化を生じさせることができる。ここで、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失速度は、ネマティック相温度領域におけるダイレクターの再配置速度よりも大幅に早い。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用することにより、高速応答が得られる。また、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合には、液晶層13のダイレクターは消失しており、液晶層13には複屈折が発生しない。そのため、液晶層13内に異物が混入した場合であっても、液晶層13のうち異物の周辺領域に、液晶層13のディスクネーションによる光漏れが生じない。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用した場合であっても、沈んだ黒輝度が得られる。以上のことから、本実施の形態では、電極15を0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vx(例えばV1)ボルトとの2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域だけでなく等方相温度領域においても、高速応答および高コントラストを得ることができる。従って、広い温度範囲で、高速応答および高コントラストを実現できる。
なお、本実施の形態において、駆動回路71が、外部から入力された映像信号に基づいて、Vx(例えばV1)の出力時間を変調したり、Vx(例えばV1)の出力回数を変調したりするようになっていてもよい。このようにした場合には、白表示および黒表示だけでなく、中間階調の表示を得ることができる。
<4.第3の実施の形態の変形例>
図12は、第3の実施の形態に係る液晶表示装置70の一変形例を表すものである。本変形例に係る液晶表示装置70は、第3の実施の形態に係る液晶表示装置70に、温度検出器33および温度判別回路31を加えたものに相当する。
温度検出器33は、液晶層13の温度を検出し、検出信号を温度判別回路31に出力するようになっている。温度判別回路31は、受信した検出信号に基づき、液晶層13の温度が、相転移温度未満であるか、または、相転移温度以上であるかを判別するようになっている。さらに、温度判別回路31は、判別結果を駆動回路71に出力するようになっている。
駆動回路71は、液晶表示パネル10の電極15に、0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vx(例えばV1)ボルトとの2値の他に、0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vx(例えばV1)ボルトとの間の大きさの電圧を出力可能になっている。駆動回路71は、外部から入力された映像信号に基づいて、以下の3種類の電圧のうちいずれかの電圧を出力するようになっている。
(1)0ボルトもしくは0V付近の電圧
(2)Vx(例えばV1)ボルト
(3)0ボルトもしくは0V付近の電圧とVx(例えばV1)ボルトとの間の大きさの電圧
駆動回路71は、受信した判別結果に基づいて、液晶表示パネル10の電極15に、上記の3種類の電圧のうちいずれかの電圧を供給するようになっている。例えば、駆動回路71は、液晶層13の温度が等方相温度領域にある場合に液晶表示パネル10の光透過率が低い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧(V2)(図11参照)以上の大きさの電圧を電極15に供給するようになっている。また、例えば、駆動回路71は、液晶層13の温度がネマティック相温度領域にある場合に液晶表示パネル10の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最小の電圧(V3)(図11参照)以下の大きさの電圧を供給するようになっている。このようにした場合には、中間階調を得ることができる。
<5.第4の実施の形態>
[構成]
図13は、第4の実施の形態に係る液晶表示パネル20の構成の一例を示す断面図である。
液晶表示パネル20は、液晶表示パネル10と同様、対向する2つの絶縁性を備える透明基板11,12と、透明基板11,12の間に挟まれた液晶層21とを有する。
液晶表示パネル20は、透明基板11における透明基板12と対向する表面11a上に、液晶層21に接する配向膜22を有する。配向膜22は、液晶層21の配向を水平方向に規制する水平配向膜である。水平配向膜は、例えば、ポリイミド膜で構成されている。液晶表示パネル20は、さらに、透明基板11の表面11a上に、複数の電極23を有する。複数の電極23は、電圧が供給されることで、液晶層21に縦方向の電界を発生させ、液晶層21の配向方向を変化させるようになっている。複数の電極23は、例えば、透明基板11の表面11aと平行な面内に2次元配置されており、後述の電極24との間に電位差を発生させることにより、液晶層21に、透明基板11と直交またはほぼ直交する方向(つまり縦方向)に主たる電場を発生させることができるようになっている。液晶表示パネル20は、透明基板11における表面11aとは反対側の表面11b上に、偏光板16を有する。
液晶表示パネル20は、透明基板12における透明基板11と対向する表面12a上に、電極24を有する。電極24は、面内全体に渡って形成されたシート状の電極であり、各電極23と対向する位置に配置されている。従って、電極24は、各電極23に対する共通電極として機能する。液晶表示パネル20は、さらに、電極24上に、液晶層21に接する配向膜25を有する。配向膜25は、液晶層21の配向を水平方向に規制する水平配向膜である。水平配向膜は、例えば、ポリイミド膜で構成されている。液晶表示パネル20は、透明基板12における表面12aとは反対側の表面12b上に、偏光板18を有する。ここで、偏光板16と偏光板18とは、クロスニコル条件を満たし、電極23に対して、45°吸収軸がずれた状態となっている。
液晶層21は、負の誘電率異方性を有するネマティック液晶によって構成されている。液晶層21は、所定の相転移温度(TNI)を有し、相転移温度よりも低い温度のときは、ネマティック相となり、相転移温度以上のときは、液体相である等方相となる。
等方相温度領域においては、液晶層21は等方相として存在しているため、液晶層21を透過する光は何等の影響も受けない。偏光板16,18は、クロスニコル配置されているので、一方の偏光板16を透過して直線偏光に変換された光は、他方の偏光板18を透過することができない。
しかしながら、電極23に電圧を供給して、液晶層21に電界を印加すると、ネマティック相が誘起される。このネマティック相を通過する光には、電気光学的カー効果により位相変化が生じるので、一方の偏光板16を透過して直線偏光に変換された光は、ネマティック相を透過する間に位相が変化するので、他方の偏光板18を透過することができるようになる。従って、液晶表示パネル20は、ノーマリーブラック型となっている。
次に、液晶表示パネル20を用いた液晶表示装置について説明する。図14は、第4の実施の形態に係る液晶表示装置80の一例を示した図である。液晶表示装置80は、液晶表示パネル20と、液晶表示パネル20を駆動する駆動回路81と、液晶表示パネル20を背後から照明するバックライト(図示せず)とを有する。
次に、駆動回路81について説明する。駆動回路81は、液晶層21の温度に拘わりなく、所定の範囲内の電圧(以下、便宜的にVyとする。)を、電極23に印加するようになっている。より詳細には、駆動回路81は、電極23と電極24との間にVyの電位差を発生させる電圧を各電極23に印加することにより、黒表示させるようになっている。また、駆動回路81は、液晶層21の温度に拘わりなく、Vyとは異なる電圧(例えば0Vまたは0V付近の電圧)を印加ことにより、白表示させるようになっている。
ここで、Vyとは、液晶表示パネル20の光透過率が最大となる電圧(もしくは高い値で飽和する電圧範囲のうち最小の電圧)(V4)(図17参照)以上の電圧であって、かつ液晶表示パネル20の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧以下の電圧を指している。このVyは、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合に液晶層21の複屈折が、液晶層21の温度がネマティック相温度領域にある場合の液晶層21の複屈折と同一またはほぼ同一となる電圧に相当する。
[動作]
次に、液晶表示パネル20の液晶層21の状態について説明する。図15(A)〜(D)、図16(A)〜(D)は、液晶層21の状態の一例を示す図である。図15(A)〜(D)は、液晶層21がネマティック相温度領域にある場合の図である。図15(A),(B)は、電極23に電圧を供給していない場合を示し、図15(C),(D)は、電極23に電圧を供給している場合を示す。なお、図15(A),(C)は、断面図であり、図15(B),(D)は、平面図である。
図15(A)、(B)に示すように、電極23に電圧を供給していない場合、すなわち、液晶層21に電界が印加されていない場合、液晶層21のダイレクター21aは、垂直方向を向いている。つまり、ダイレクター21aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと直交する方向に向いている。
図15(C),(D)に示すように、電極23に電圧を供給している場合、すなわち、液晶層21に縦方向の電界23aが印加されている場合、液晶層21のダイレクター21aは、横方向を向いている。つまり、ダイレクター21aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと平行な方向を向いている。
図16(A)〜(D)は、液晶層21が等方相温度領域にある場合の図である。図16(A),(B)は、電極23に電圧を供給していない場合を示す。図16(C),(D)は、電極23に電圧が供給されている場合を示す。なお、図16(A),(C)は、断面図であり、図16(B),(D)は、平面図である。
図16(A),(B)に示すように、電極23に電圧が供給されていない場合、すなわち、液晶層21に電界が印加されていない場合、液晶層21は等方相として存在する。つまり、液晶層21では、ネマティック相が消失している。
図16(C),(D)に示すように、電極23に電圧が供給されている場合、すなわち、液晶層21に縦方向の電界23aが印加されている場合、液晶層21にネマティック相が誘起される。ここで、液晶層21のダイレクター21aは、横方向を向いている。つまり、ダイレクター21aの長軸方向が、透明基板11,12の表面11a,12aと平行な方向を向いている。
次に、液晶表示パネル20の光透過率について説明する。図17は、液晶表示パネル20の光透過率の一例を示す図である。図17の横軸は、電極23に供給する電圧(V)を示し、図17の縦軸は、液晶表示パネル20の光透過率(%)を示す。特性5aは、ネマティック相温度領域における光透過率特性を示し、特性5bは、等方相温度領域における光透過率特性を示す。
特性5a,5bに示されるように、ネマティック相温度領域における上限側の光透過率と、等方相温度領域における上限側の光透過率とは、ほぼ同じ値となっている。この結果から、液晶表示装置80では、液晶表示パネル20の偏光板16,18のクロスニコルと、液晶層21の配向軸との関係を考慮することなく、白および黒のスイッチングが可能となる。
[効果]
次に、液晶表示装置80の効果について説明する。液晶層21は、液晶層21の温度がネマティック相温度領域にある場合には、図15(A)〜(D)に示したように、電極23による電場の印加に応じて液晶層21のダイレクター21aが変位するようになっている。従って、電極23に電圧が印加されていない場合や電極23の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層21の配向は垂直方向となり、液晶表示パネル20の光透過率は0%に近い。また、電極23にVy(例えばV4)が印加されている場合には、液晶層21の配向は水平方向であって、かつクロスニコルの方向とは異なる方向となり、液晶表示パネル20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。なお、電極23にVy(例えばV4)が印加されているときの液晶層21の複屈折をΔnyとする。
液晶層21は、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合には、図16(A)〜(D)に示したように、電極23による電場の印加に応じて液晶層21のダイレクター21aが消失したり誘起したりするようになっている。従って、電極23に電圧が印加されていない場合や電極23の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層21は無配向状態となり、液晶表示パネル20の光透過率は0%に近い。また、電極23にVy(例えばV4)が印加されている場合には、液晶層21の配向が水平方向であって、かつクロスニコルの方向とは異なる方向に誘起され、液晶表示パネル20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。電極23にVy(例えばV4)が印加されているとき、液晶層21には複屈折が生じており、その値は、Δnyと同一またはほぼ同等である。
このように、液晶層21の温度がネマティック相温度領域および等方相温度領域のいずれの領域であったとしても、電極23に電圧が印加されていない場合や電極23の電圧が0V付近となっている場合には、液晶表示パネル20の光透過率は0%に近い。さらに、電極23にVy(例えばV4)が印加されている場合には、液晶表示パネル20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。すなわち、例えば、電極23が0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vy(例えばV4)ボルトとの2値で駆動されている場合には、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、光学特性が似通っている。そのため、電極23を上記の2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、理想的な黒表示および白表示を共有することができる。また、黒表示時には、液晶層21の配向は垂直方向となっているので、黒浮きが起こりにくい。
以上をまとめると、本実施の形態では、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合にVy(例えばV4)が電極23に印加される。これにより、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合には、Vy(例えばV4)が電極23に印加されることにより液体状態(等方相)から液晶状態(ネマティック相)に相転移し、電極23に印加されていた電圧を取り除くことにより元の液体状態(等方相)に戻る。このように、本実施の形態では、ネマティック相温度領域だけでなく、等方相温度領域においても、光透過率の変化を生じさせることができる。ここで、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失速度は、ネマティック相温度領域におけるダイレクターの再配置速度よりも大幅に早い。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用することにより、高速応答が得られる。また、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合には、液晶層21のダイレクターは消失しており、液晶層21には複屈折が発生しない。そのため、液晶層21内に異物が混入した場合であっても、液晶層21のうち異物の周辺領域に、液晶層21のディスクネーションによる光漏れが生じない。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用した場合であっても、沈んだ黒輝度が得られる。以上のことから、本実施の形態では、電極23を0ボルトおよびVy(例えばV4)ボルト以上の電圧の2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域だけでなく等方相温度領域においても、高速応答および高コントラストを得ることができる。従って、広い温度範囲で、高速応答および高コントラストを実現できる。
なお、本実施の形態において、駆動回路81が、外部から入力された映像信号に基づいて、Vy(例えばV4)の出力時間を変調したり、Vy(例えばV4)の出力回数を変調したりするようになっていてもよい。このようにした場合には、白表示および黒表示だけでなく、中間階調の表示を得ることができる。
<6.第4の実施の形態の変形例>
図18は、第4の実施の形態に係る液晶表示装置80の一変形例を表すものである。本変形例に係る液晶表示装置80は、第4の実施の形態に係る液晶表示装置80に、温度検出器33および温度判別回路31を加えたものに相当する。
温度検出器33は、液晶層21の温度を検出し、検出信号を温度判別回路31に出力するようになっている。温度判別回路31は、受信した検出信号に基づき、液晶層21の温度が、相転移温度未満であるか、または、相転移温度以上であるかを判別するようになっている。さらに、温度判別回路31は、判別結果を駆動回路81に出力するようになっている。
駆動回路81は、液晶表示パネル20の電極23に、0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vy(例えばV4)ボルトとの2値の他に、0ボルトもしくは0V付近の電圧とVy(例えばV4)ボルトとの間の大きさの電圧を出力可能になっている。駆動回路81は、外部から入力された映像信号に基づいて、以下の3種類の電圧のうちいずれかの電圧を出力するようになっている。
(1)0ボルトもしくは0V付近の電圧
(2)Vy(例えばV4)ボルト
(3)0ボルトもしくは0V付近の電圧とVy(例えばV4)ボルトとの間の大きさの電圧
駆動回路81は、受信した判別結果に基づいて、液晶表示パネル20の電極23に、上記の3種類の電圧のうちいずれかの電圧を供給するようになっている。例えば、駆動回路81は、液晶層21の温度が等方相温度領域にある場合に液晶表示パネル20の光透過率が低い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧(V5)(図17参照)以上の大きさの電圧を電極23に供給するようになっている。また、例えば、駆動回路81は、液晶層21の温度がネマティック相温度領域にある場合に液晶表示パネル20の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最小の電圧(V6)(図17参照)以下の大きさの電圧を供給するようになっている。このようにした場合には、中間階調を得ることができる。
<7.適用例>
次に、上記実施の形態およびその変形例に係る液晶表示装置30,60,70および80の一適用例について説明する。図19は、本適用例に係る電子機器100の概略構成の一例を表す斜視図である。電子機器100は、携帯電話機であり、例えば、図19に示したように、本体部111と、本体部111に対して開閉可能に設けられた表示体部112とを備えている。本体部111は、操作ボタン115と、送話部116を有している。表示体部112は、表示装置113と、受話部117とを有している。表示装置113は、電話通信に関する各種表示を、表示装置113の表示画面114に表示するようになっている。電子機器100は、表示装置113の動作を制御するための制御部(図示せず)を備えている。この制御部は、電子機器100全体の制御を司る制御部の一部として、またはその制御部とは別に、本体部111または表示体部112の内部に設けられている。
表示装置113は、上記各実施の形態およびその変形例に係る液晶表示装置30,60,70または80と同一の構成を備えている。これにより、表示装置113において、広い温度範囲で、高コントラストが得られる。
なお、上記実施の形態およびその変形例に係る液晶表示装置30,60,70または80を適用可能な電子機器としては、以上に説明した携帯電話機等の他にも、パーソナルコンピュータ、液晶テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末器等が挙げられる。
<8.変形例>
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、液晶表示パネル10,20はノーマリーブラック型となっていたが、ノーマリーホワイト型となっていてもよい。すなわち、液晶表示パネル10,20において、偏光板16,18が、電極15,電極23に対して、90°吸収軸がずれた状態で、平行ニコル条件を満たしていてもよい。
この場合に、駆動回路71,81は、液晶層13,21の温度に拘わりなく、所定の範囲内の電圧(以下、便宜的にVzとする。)を、電極15(または電極23,24)に印加するようになっている。より詳細には、駆動回路71は、各電極15が、例えば、透明基板11の表面11aと平行な面内の一の方向に延在する帯状の形状となっているときに、互いに隣り合う2つの電極15間にVzの電位差を発生させる電圧を各電極15に印加することにより、黒表示させるようになっている。また、例えば、駆動回路81は、互いに対向する2つの電極23,24間にVzの電位差を発生させる電圧を各電極23,24に印加することにより、黒表示させるようになっている。また、駆動回路71,81は、液晶層13,21の温度に拘わりなく、Vzとは異なる電圧(例えば0Vまたは0V付近の電圧)を印加ことにより、白表示させるようになっている。
ここで、Vzとは、液晶層13,21が等方相温度領域となっているときに液晶表示パネル10,20の光透過率が最小となる電圧もしくは低い値で飽和する電圧範囲のうち最小の電圧(V1,V4)(図20、図21参照)以上の電圧であって、かつ液晶表示パネル10,20の光透過率が低い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧以下の電圧を指している。このVzは、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合に液晶層13,21の複屈折が、液晶層13,21の温度がネマティック相温度領域にある場合の液晶層13,21の複屈折と同一またはほぼ同一となる電圧に相当する。
次に、本変形例の効果について説明する。液晶層13,21は、液晶層13,21の温度がネマティック相温度領域にある場合には、電極15,23による電場の印加に応じて液晶層13,21のダイレクターが変位するようになっている。従って、電極15,23に電圧が印加されていない場合や電極15,23の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層13,21の配向は垂直方向となり、液晶表示パネル10の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している(図20、図21参照)。また、電極15,23にVz(例えばV1,V4)が印加されている場合には、液晶層13,21の配向は水平方向であって、かつ平行ニコルの方向とは異なる方向となり、液晶表示パネル10,20の光透過率は0%に近い。
液晶層13,21は、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合には、電極15,23による電場の印加に応じて液晶層13,21のダイレクターが消失したり誘起したりするようになっている。従って、電極15,23に電圧が印加されていない場合や電極15の電圧が0V付近となっている場合には、液晶層13,21は無配向状態となり、液晶表示パネル10,20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。また、電極15にVz(例えばV1,V4)が印加されている場合には、液晶層13,21の配向が水平方向であって、かつ平行ニコルの方向とは異なる方向に誘起され、液晶表示パネル10,20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。電極15にVz(例えばV1,V4)が印加されているとき、液晶層13,21には複屈折が生じており、その値は、液晶層13,21の温度がネマティック相温度領域にある場合に電極15,23にVzが印加されている時の複屈折の値と同一またはほぼ同等である。
このように、液晶層13,21の温度がネマティック相温度領域および等方相温度領域のいずれの領域であったとしても、電極15,23に電圧が印加されていない場合や電極15の電圧が0V付近となっている場合には、液晶表示パネル10,20の光透過率は最大となるか、もしくは高い値で飽和している。さらに、電極15にVz(例えばV1,V4)が印加されている場合には、光透過率は0%に近い。すなわち、例えば、電極15が0ボルトもしくは0V付近の電圧と、Vz(例えばV1,V4)ボルトとの2値で駆動されている場合には、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、光学特性が似通っている。そのため、電極15,23を上記の2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域と等方相温度領域とで、理想的な黒表示および白表示を共有することができる。また、黒表示時には、液晶層13,21の配向は垂直方向となっているので、黒浮きが起こりにくい。
以上をまとめると、本変形例では、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合にVz(例えばV1,V4)が電極15,23に印加される。これにより、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合には、Vz(例えばV1,V4)が電極15,23に印加されることにより液体状態(等方相)から液晶状態(ネマティック相)に相転移し、電極15,23に印加されていた電圧を取り除くことにより元の液体状態(等方相)に戻る。このように、本変形例では、ネマティック相温度領域だけでなく、等方相温度領域においても、光透過率の変化を生じさせることができる。ここで、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失速度は、ネマティック相温度領域におけるダイレクターの再配置速度よりも大幅に早い。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用することにより、高速応答が得られる。また、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合には、液晶層13,21のダイレクターは消失しており、液晶層13,21には複屈折が発生しない。そのため、液晶層13,21内に異物が混入した場合であっても、液晶層13,21のうち異物の周辺領域に、液晶層13,21のディスクネーションによる光漏れが生じない。従って、等方相温度領域におけるネマティック相の誘起および消失に基づく光透過率の変化を利用した場合であっても、沈んだ黒輝度が得られる。以上のことから、本変形例では、電極15,23を0ボルトおよびVz(例えばV1,V4)の2値で駆動することにより、ネマティック相温度領域だけでなく等方相温度領域においても、高速応答および高コントラストを得ることができる。従って、広い温度範囲で、高速応答および高コントラストを実現できる。
なお、本変形例において、駆動回路71,81が、外部から入力された映像信号に基づいて、電圧Vz(例えばV1,V4)の出力時間を変調したり、電圧Vz(例えばV1,V4)の出力回数を変調したりするようになっていてもよい。このようにした場合には、白表示および黒表示だけでなく、中間階調の表示を得ることができる。
また、本変形例において、温度検出器33および温度判別回路31がさらに設けられていてもよい。この場合に、駆動回路71,81が、液晶層13,21の温度がネマティック相温度領域にある場合に液晶表示パネル10,20の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧(V3,V6)(図20,図21参照)と、電圧Vz(例えばV1,V4)との間の大きさの電圧を出力可能になっていてもよい。また、例えば、駆動回路71,81が、液晶層13,21の温度が等方相温度領域にある場合に液晶表示パネル10,20の光透過率が高い値で飽和する電圧範囲のうち最大の電圧(V2,V5)(図20,図21参照)と、電圧Vz(例えばV1,V4)との間の大きさの電圧を出力可能になっていてもよい。このようにした場合にも、中間階調を得ることができる。
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、
前記液晶層に接する垂直配向膜と、
前記液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の基板の表面に設けられ、かつ前記液晶層に対して、前記第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させる電極と
を備えた
液晶表示パネル。
(2)
前記液晶層は、前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが変位し、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが消失したり誘起したりするようになっている
(1)に記載の液晶表示パネル。
(3)
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを駆動する駆動回路と
を備え、
前記液晶表示パネルは、
正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、
前記液晶層に接する垂直配向膜と、
前記液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の基板の表面に設けられ、前記第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させる電極と
を有する
液晶表示装置。
(4)
前記液晶層は、前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが変位し、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが消失したり誘起したりするようになっている
(3)に記載の液晶表示装置。
(5)
前記駆動回路は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に前記液晶層の複屈折が、前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合の前記液晶層の複屈折と同一またはほぼ同一となる第1電圧を、前記電極に印加するようになっている
(4)に記載の液晶表示装置。
(6)
前記駆動回路は、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第1電圧を前記電極に印加するようになっている
(5)に記載の液晶表示装置。
(7)
前記駆動回路は、前記第1電圧と、前記第1電圧とは異なる第2電圧との2値で、前記電極を駆動するようになっている
(5)に記載の液晶表示装置。
(8)
前記第2電圧は、ゼロボルトまたはゼロボルト近傍の値である
(7)に記載の液晶表示装置。
(9)
前記液晶表示パネルは、前記第1基板および前記第2基板を介して互いに対向配置された一対の偏光板を有する
(4)に記載の液晶表示装置。
(10)
前記一対の偏光板は、クロスニコル条件を満たし、前記電場の向きに対して45°吸収軸がずれた状態となっており、
前記駆動回路は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に前記液晶表示パネルの光透過率が最大となる電圧または高い値で飽和する範囲内の電圧である第3電圧を、前記電極に印加することにより、白表示させるようになっている
(9)に記載の液晶表示装置。
(11)
前記駆動回路は、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第3電圧を前記電極に印加するようになっている
(10)に記載の液晶表示装置。
(12)
前記駆動回路は、前記第3電圧と、前記第3電圧とは異なる第4電圧との2値で、前記電極を駆動するようになっている
(10)に記載の液晶表示装置。
(13)
前記駆動回路は、前記第4電圧を前記電極に印加することにより、黒表示させるようになっている
(12)に記載の液晶表示装置。
(14)
前記一対の偏光板は、平行ニコル条件を満たし、前記電場の向きに対して90°吸収軸がずれた状態となっており、
前記駆動回路は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に前記液晶表示パネルの光透過率が最小となる電圧または低い値で飽和する範囲内の電圧である第5電圧を、前記電極に印加することにより、黒表示させるようになっている
(9)に記載の液晶表示装置。
(15)
前記駆動回路は、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第5電圧を前記電極に印加するようになっている
(14)に記載の液晶表示装置。
(16)
前記駆動回路は、前記第5電圧と、前記第5電圧とは異なる第6電圧との2値で、前記電極を駆動するようになっている
(14)に記載の液晶表示装置。
(17)
前記駆動回路は、前記第6電圧を前記電極に印加することにより、白表示させるようになっている
(16)に記載の液晶表示装置。
(18)
液晶表示装置を表示部として備え、
前記液晶表示装置は、
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを駆動する駆動回路と
を有し、
前記液晶表示パネルは、
正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、
前記液晶層に接する垂直配向膜と、
前記液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の基板の表面に設けられ、かつ前記液晶層に対して、前記第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させる電極と
を有する
電子機器。
1a,1b,2a,2b,3a,4a,5a,5b…特性、10,20…液晶表示パネル、11,12…透明基板、11a,11b,12a,12b…表面、13,21…液晶層、13a,21a…ダイレクター、14,17,23,25…配向膜、15,23,24…電極、15a,23a…電界、16,18…偏光板、30,60,70,80…液晶表示装置、31…温度判別回路、32,71,81…駆動回路、33…温度検出器、41,43,44,45,47,48,49,51…配向、42,46,50…方向、61…温度制御部、62…駆動モード選択部、63…駆動回路、100…電子機器、111…本体部、112…表示体部、113…表示装置、114…表示画面、115…操作ボタン、116…送話部、117…受話部。

Claims (13)

  1. 液晶表示パネルと、
    前記液晶表示パネルを駆動する駆動回路と
    を備え、
    前記液晶表示パネルは、
    正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、
    前記液晶層に接する垂直配向膜と、
    前記液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
    前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の基板の表面に設けられ、前記第1
    基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させる電極と
    を有し
    前記液晶層は、前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが変位し、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが消失したり誘起したりするようになっており、
    前記駆動回路は、第1電圧と、前記第1電圧とは異なる第2電圧とを印加可能であり、
    前記第1電圧は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合及び前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合において、前記液晶表示パネルの透過率が最大、もしくは高い値で飽和している状態の前記液晶層の複屈折となる電圧に設定され、
    前記駆動回路が前記第1電圧を前記電極に印加する場合、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第1電圧を前記電極に印加する、液晶表示装置。
  2. 前記駆動回路は、前記第1電圧と、前記第1電圧とは異なる第2電圧との2値で、前記
    電極を駆動するようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  3. 前記第2電圧は、ゼロボルトまたはゼロボルト近傍の値である
    請求項に記載の液晶表示装置。
  4. 前記液晶表示パネルは、前記第1基板および前記第2基板を介して互いに対向配置され
    た一対の偏光板を有する
    請求項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記一対の偏光板は、クロスニコル条件を満たし、前記電場の向きに対して45°吸収
    軸がずれた状態となっており、
    前記駆動回路は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に前記液晶表示パネル
    の光透過率が最大となる電圧または高い値で飽和する範囲内の電圧である第3電圧を、前
    記電極に印加することにより、白表示させるようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  6. 前記駆動回路は、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第3電圧を前記電極に印加する
    ようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  7. 前記駆動回路は、前記第3電圧と、前記第3電圧とは異なる第4電圧との2値で、前記
    電極を駆動するようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  8. 前記駆動回路は、前記第4電圧を前記電極に印加することにより、黒表示させるように
    なっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  9. 前記一対の偏光板は、平行ニコル条件を満たし、前記電場の向きに対して90°吸収軸
    がずれた状態となっており、
    前記駆動回路は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合に前記液晶表示パネル
    の光透過率が最小となる電圧または低い値で飽和する範囲内の電圧である第5電圧を、前
    記電極に印加することにより、黒表示させるようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  10. 前記駆動回路は、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第5電圧を前記電極に印加する
    ようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  11. 前記駆動回路は、前記第5電圧と、前記第5電圧とは異なる第6電圧との2値で、前記
    電極を駆動するようになっている
    請求項に記載の液晶表示装置。
  12. 前記駆動回路は、前記第6電圧を前記電極に印加することにより、白表示させるように
    なっている
    請求項11に記載の液晶表示装置。
  13. 液晶表示装置を表示部として備え、
    前記液晶表示装置は、
    液晶表示パネルと、
    前記液晶表示パネルを駆動する駆動回路と
    を有し、
    前記液晶表示パネルは、
    正の誘電率異方性を有する液晶材料を主に含む液晶層と、
    前記液晶層に接する垂直配向膜と、
    前記液晶層を介して互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
    前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の基板の表面に設けられ、かつ前記
    液晶層に対して、前記第1基板の法線と直交または交差する方向に主たる電場を発生させ
    る電極と
    を有す
    前記液晶層は、前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが変位し、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合には、前記電極による電場の印加に応じて前記液晶層のダイレクターが消失したり誘起したりするようになっており、
    前記駆動回路は、第1電圧と、前記第1電圧とは異なる第2電圧とを印加可能であり、
    前記第1電圧は、前記液晶層の温度が等方相温度領域にある場合及び前記液晶層の温度がネマティック相温度領域にある場合において、前記液晶表示パネルの透過率が最大、もしくは高い値で飽和している状態の前記液晶層の複屈折となる電圧に設定され、
    前記駆動回路が前記第1電圧を前記電極に印加する場合、前記液晶層の温度に拘わりなく、前記第1電圧を前記電極に印加する、
    電子機器。
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