JP5679983B2 - 超音波トランスデューサ・プローブ用のフロントエンド回路 - Google Patents

超音波トランスデューサ・プローブ用のフロントエンド回路 Download PDF

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Description

本発明は、超音波送信パルスを送信し、前述の送信パルスに応じてエコー信号を受信するためにトランスデューサ素子アレイを有する超音波トランスデューサ・プローブ(スキャンヘッド)に関する。より具体的には、本発明は、前述の超音波トランスデューサ・プローブに予め接続されたフロントエンド回路を表し、上記フロントエンド回路は、例えば、限定された供給電圧を規定する特定の入力電圧制約を有する特定用途向集積回路(ASIC)として実現し得、上記送信段は、その振幅レベルが、電圧制御線によって供給される単一端のフロントエンド回路の電圧レベルの最大2倍である差動励起又はパルス電圧を前述のトランスデューサ素子それぞれに供給するために、各トランスデューサ素子の別の端子にそれぞれ接続された2つの送信分岐を有する分岐電圧制御線を有する。この意味合いで、2つの送信分岐それぞれにおいて一体化された少なくとも1つの送信増幅器又はパルサを含むブリッジ増幅器の幾何構造が提案されている。上記幾何構造では、前述の送信分岐のうちの第1の送信分岐における送信増幅器は非反転入力信号に対応する出力信号を供給し、送信分岐のうちの第2の送信分岐における送信増幅器は、超音波トランスデューサのフロントエンド供給電圧の電圧振幅の最大2倍が、特定用途向集積回路の電圧供給入力における前述の、倍にされた電圧レベルを供給する必要なしで各トランスデューサ素子にわたって存在しているように入力信号の反転形式に対応する出力信号を供給し、よって、トランスデューサ素子に対して2倍の電圧スイングを得るために同じIC製造プロセスを使用することができる。
超音波医療診断システムは、超音波信号で標的領域を走査することにより、患者の体内の解剖学的構造のソノグラフィ・イメージを生成するために使用される。通常、2.0MHzと10MHzとの間程度の超音波信号が、超音波トランスデューサ・プローブを介して患者に送信される。送信された超音波エネルギは部分的に、患者の体によって吸収され、分散させられ、回折させられ、反射させられ、反射させられた超音波エネルギは、トランスデューサ・プローブにおいて受信され、トランスデューサ・プローブでは、評価し、更に処理することが可能な電子エコー信号に変換される。従来の多くの超音波システムでは、例えば、受信されたエコー信号がビーム形成を経るようにし得る。その後、ビーム形成された信号は、エコー、ドップラ、及びフロー情報を解析し、患者の体内の関心の標的化された解剖学的構造又は組織領域のソノグラフィ・イメージを得るよう処理し得る。
現在、市場で利用可能なコンパクトなポータブル超音波マシンの従来の設計では、フロントエンド回路は、限定された供給電圧を規定する特定の入力電圧制約を有する集積回路によって実現される送信装置で装備し得、この集積回路を製造するために使用されるプロセスは、十分な音響送信電力を得るために伝統的な超音波プローブが通常、必要であり、望ましい高電圧レベルを処理することができないということがあり得る。他の応用分野(例として、例えば経食道心エコー法(TEE)において使用される内視鏡超音波プローブなどの内部プローブ及びカテーテル)の場合、患者に対する潜在的なリスクを軽減し、より薄い絶縁層を提供することにより、プローブのサイズを最小にするために、より低い電圧でプローブを使用することが必要であり得る。
本発明の目的は、よって、フロントエンド回路の出力電力及び集積回路の入力電圧に関する上述の制約を考慮しながら、フロントエンド回路の送信部分(及び受信部分)を超音波マシンに一体化するためのやり方を求めることである。この意味合いで、本発明は特に、フロントエンドの集積回路を製造するために使用される処理の変更を必要とすることなく、より高い送信電圧を得るという課題を解決することを目的としている。
この目的に鑑みて、本出願の第1の例示的な実施例は、超音波送信パルスを送信し、上記送信パルスに応じてエコー信号を受信するために、差動接続されたトランスデューサ素子のアレイを有する超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路を表し、フロントエンド回路は、個別のトランスデューサ素子に2つの送信分岐を介して供給されるフロントエンド回路の入力制御信号の差により、振幅レベルが表される差動励起又はパルス電圧を前述のトランスデューサ素子それぞれに供給するために各トランスデューサ素子の別の端子に、別個の2つの送信分岐それぞれが接続された送信段を備える。
この実施例の第1の局面によれば、本願提案のフロントエンド回路は、差動励起又はパルス電圧を各トランスデューサ素子に供給するために使用される2つの送信分岐それぞれに一体化された少なくとも1つの送信増幅器を有するブリッジ増幅器トポロジを更に有し得、上記送信分岐のうちの第1の送信分岐における送信増幅器は、利得係数で増幅された後、非反転形式でフロントエンド回路の入力制御信号のうちの1つによって表される第1の出力信号を供給し、上記送信分岐のうちの第2の送信分岐における送信増幅器は、同じ利得係数で増幅された後、非反転形式で同じ入力制御信号によって表される第2の出力信号を供給する。例えば、入力制御信号が入力電圧によって表された場合、差動励起又はパルス電圧の振幅レベルはこの入力電圧の電圧レベルの最大2倍になるようにし得る。
送信増幅器は、それにより、線形入力制御信号によって制御される2つの線形増幅器として実現し得る。(本発明の好ましい一実施例を表す)前述の場合には、非反転入力制御信号が、一方の増幅器に供給され、反転入力制御信号は他方の増幅器に供給される。同じ効果は、2つの増幅器のうちの1つを反転増幅器にすることによって達成し得る。この場合、両方の増幅器に、同じ入力制御信号を供給し得る。
あるいは、この実施例の第2の局面によれば、本願提案のフロントエンド回路は、差動励起又はパルス電圧を各トランスデューサ素子に供給するために使用される2つの送信分岐それぞれに一体化された少なくとも1つの送信パルサを有するブリッジ増幅器トポロジを有し得、上記送信分岐の第1の送信分岐における送信パルサは、この第1の送信分岐における送信パルサの入力端子に供給されるディジタル制御信号の第1の組によって振幅レベルが設定される第1の出力信号を供給し、上記送信分岐の第2の送信分岐における送信パルサは、この第2の送信分岐における送信パルサの入力端子に供給されるディジタル制御信号の第2の組によって振幅レベルが設定される第2の出力信号を供給する。
特定の増幅器(又はパルサ)はそれにより、ブリッジ・モードで動作させる。各トランスデューサ素子は、よって、関連付けられた2つの増幅器の出力ポートにわたって接続され、各トランスデューサ素子には、増幅器の電圧供給端子に供給される入力電圧の電圧レベルの最大2倍が供給される。前述の回路トポロジを使用することは、事実上、使用される増幅器の数を2倍にすることを意味する。本願提案の回路は、同じICプロセスで、フロントエンド回路の供給ポートにおける単一端供給電圧の振幅レベルを2倍にすることを可能にし、更に、既存のスキャンヘッド音響設計を変えることを必要とすることなく、かつ、接地電位に対してフロントエンド回路の供給電圧の振幅レベルを増加させることを必要とすることなく、より高い送信電力を得、よって、増加した透過又は信号対雑音比の増加を得るという利点を更に示唆している。更に、本願提案のフロントエンド回路は、送信電力を増加させる代わりに維持し、又は、送信電力、透過、信号対雑音比、及び音響スタック設計とコストとの間のトレードオフを行うことが意図される場合、より高価でないスキャンヘッド設計の使用を可能にする。
本発明の特定の局面によれば、送信増幅器又は送信パルサの出力ポートは、トランスデューサ・アレイの関連付けられたトランスデューサ素子に、フリップ・チップ、フレックス回路、又は他のタイプの相互接続によって接続される。すなわち、フロントエンド増幅器は、スキャンヘッドにおけるトランスデューサ素子と同じパッケージ内にあり、よって、増幅器とスキャンヘッドとの間の長いケーブル接続を不要にする。
好ましくは、本発明の特定の局面によれば、送信増幅器又は送信パルサは超音波トランスデューサ・プローブに一体化されており、本願提案のフロントエンド回路は、超音波トランスデューサ・プローブの特定用途向集積回路として実現される。
本発明によれば、本願提案のフロントエンド回路は更に、上記エコー信号を表す出力信号を供給する差動受信段を更に含み得る。受信段はそれにより、関連付けられた低雑音増幅器に少なくとも1つのトランスデューサ素子の各端子を接続し得る。
それ以外に、本発明は、新たなタイプの超音波トランスデューサ・プローブも表す。従来のスキャンヘッドには、共通の接地電位を有する単一端のトランスデューサ素子が装備されており、トランスデューサ素子には、接地及び信号のために2本の配線が供給される一方、本願提案の超音波トランスデューサ・プローブには、差動接続されたトランスデューサ素子(すなわち、接地電極を有しないトランスデューサ素子)が装備されるようにし得る。
したがって、本出願の第2の例示的な実施例は、超音波送信パルスを送信し、前述の送信パルスに応じてエコー信号を受信するために、差動接続されたトランスデューサ素子のアレイを有する超音波トランスデューサ・プローブを備える超音波診断撮像システムに関する。本発明によれば、システムには、第1の例示的な実施例に関して上述した集積されたフロントエンド回路が装備される。
この第2の例示的な実施例の好ましい局面によれば、特許請求の範囲記載の超音波診断撮像システムには効果的には、集積マイクロ・ビーム形成器システムを装備し得る。
従来技術による、従来の超音波撮像システムの大規模構成部分を示す図である。 従来技術による、超音波撮像システムにおけるマルチライン・ビーム形成の従来の実現形態を示す図である。 従来技術による、別の超音波撮像システムにおけるサブアレイ・マルチラインビーム形成の従来の実現形態を示す図である。 本発明による超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路を示す図である。 図3aに表す超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路のアナログ実現形態を示す図である。 図3aに表す超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路のディジタル実現形態を示す図である。 図3bに表すアナログ実現形態に応じて超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路の第1の送信分岐における送信増幅器段の出力端子における第1のアナログ電圧の波形を示す図である。 図3bに表すアナログ実現形態に応じて超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路の第2の送信分岐における送信増幅器段の出力端子における第2のアナログ電圧の波形を示す図である。 超音波トランスデューサ・プローブのトランスデューサ・アレイの少なくとも1つの差動接続トランスデューサ素子を動作させるための励起又はパルス電圧の波形を示す図である。励起又はパルス電圧は、第1のアナログ電圧及び第2のアナログ電圧の差で表される。
本発明の前述並びに他の効果的な構成及び局面は、以下に説明する実施例に関し、かつ添付図面に関し、例として説明する。
以下では、本発明の種々の実施例は、特定の精緻化に関し、かつ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、(当該技術分野においては「超音波トランスデューサ」、「トランスデューサ・プローブ」又は「スキャンヘッド」として表す)超音波トランスデューサ・アッセンブリを含む、国際公開2006/035384号明細書によって知られている従来の超音波システムを表す。超音波検査の間、ソノグラフィ・イメージを生成する際に、主治医は、自分の手に超音波トランスデューサ(送信する対象の超音波信号に電気信号を変換し、反射した超音波を同時に受け取る装置)を持ち、トランスデューサ面(音波を出し、反射した音波を受け取るスキャンヘッド又は表面)を患者の皮膚に押しつけ、患者の解剖学的構造の種々の部位にわたって移動させて、所望のソノグラフィ・イメージの組を得る。(時には、「プローブ」又は「トランスデューサ・プローブ」としても表す)トランスデューサと患者との間の好適な接触を確実にするために、スキャンヘッドが音波を発し、後方散乱エコーを受信している間に、トランスデューサが患者の皮膚をすべるように進むような水溶性高粘性ゲルを使用し得る。コンピュータは次いで、エコーを解析し、モニタ画面上にソノグラフィ・イメージを表示し、エコーの形状及び強度は胸の組織の密度に依存する。例えば、胸の超音波撮像では、液体で満たされた嚢胞が撮像されている場合、音波の大半は嚢胞を通過し、かすかなエコーを発する。しかし、固形腫瘍が撮像されている場合、音波は上記腫瘍に反射し、エコー・パターンは、固体の塊を示すとして主治医によって認識される画像にコンピュータによって変換される。患者はトランスデューサからのわずかな圧力を感じ得るが、患者には、高周波音は聞こえない。
通常、トランスデューサ・プローブ100などの超音波トランスデューサ・アセンブリは、ケーブル120により、超音波ベース・システム130に接続される。超音波ベース・システム130は、処理及び制御機器132、並びにディスプレイ133を備える。トランスデューサ・プローブは、ケーブル120の代わりに超音波ベース・システムとの無線接続を含めるよう容易に構成し得、ビーム形成器を駆動させるソフトウェアは、トランスデューサ・プローブから無線信号を受け取り、処理するよう容易に修正し得る(例えば、無線通信、米国特許第6142946号明細書を参照されたい)。
トランスデューサ・プローブにおいて超音波を送受信するシステム構成部分は、種々の超音波システムにおいて違ったふうに実現し得る。図1の超音波システムでは、(撮像を行うために被験者の皮膚に押しつけられた)トランスデューサ・プローブ100の面101は、超音波を送受信する、(「トランスデューサ素子」として時には表す)圧電素子のアレイ110を含む。前述のアレイを使用する超音波システムでは、超音波は、「ビーム形成」と呼ばれる処理によって生成され(、結果として生じる信号が上記処理によって解釈される)。上記処理は大半が、信号処理ハードウェア及びソフトウェアにおいて行われる。送信する場合、トランスデューサ・アレイ110内の個々の圧電素子が、1つ又は複数の超音波ビームに形成し、集束するために特定のパターンにおいて励起される。受信する場合、トランスデューサ・アレイ110内の個々の圧電素子によって受信される信号情報は、1つ又は複数の超音波ビームの電子的な表現を形成する(すなわち、ビーム形成する)ために、遅延させ、合成し、その他のやり方で操作する。
知られている特定のビーム形成の一実施はマルチライン・ビーム形成として表す。「マルチライン・ビーム形成」では、トランスデューサ・アレイ110は単一の超音波ビームを送信するが、受信ビーム形成器の電子回路は、別々の向きのいくつかの受信超音波ビームを合成する。マルチライン・ビーム形成の最も旧く、最も基本的な手法は、並列に動作させる複数の単一ラインのビーム形成器(参照によって本明細書及び特許請求の範囲に援用する、Augustineによる米国特許第4644795号明細書に記載されたものなど)を使用することである。前述の構成では、トランスデューサ・アレイ内の各素子は、ビーム形成器のチャネルに接続される。前述のチャネルはそれぞれ、その対応する素子からの信号に対して遅延を施し、この遅延は、ビーム形成器によって形成されるビームの向きを変え、上記ビームを集束するのに適切である。ビーム形成器の各チャネルによって遅延させた信号は、一意に向きを変えて集束したビームを形成するよう合成され、並列に動作させたビーム形成器によって同時に生成される複数のビームは、超音波画像の複数のラインを形成するために使用される。
知られている通常の複数の信号ライン・ビーム形成アーキテクチャを有する超音波撮像システムの例は図2aに示す。ここで、(超音波トランスデューサ・プローブ200を含む)トランスデューサ・アレイ210のトランスデューサ素子211それぞれは、何れかの受信された信号が、超音波ベース・システム130においてケーブル220を介して処理手段232に送信されるチャネルを有する。素子211によって受け取られた信号は、トランスデューサにおいて調節され(例えば、インピーダンス・マッチングされ)、次いで、ケーブル220を介して超音波ベース・システムに送信されてもよく、そうされなくてもよい。処理手段232は、なおアナログ形式の受信信号を使用し、アナログ・ディジタル変換器(A/O)233を使用してこれをディジタル信号に変換する。結果として生じるディジタル信号を次いで、ディジタル遅延部234によって遅延させ、加算器235により、併せて加算して、撮像面内の何れかの所望の点に集束した音響受信感度プロファイルを形成する。
トランスデューサ・アレイ210においてサンプリングされた素子211の数が比較的低い状態(すなわち、200未満程度の素子(伝統的なビ―ム形成器は128個のチャネルを有する))に留まっている場合、前述の手法で十分である。トランスデューサ・アレイ210が、数千の音響素子211を有し、特定の処理手法が、前述の素子それぞれからのサンプルを使用することを必要とした場合、電線220は数千のチャネルを搬送しなければならない。前述の手法は、標準の電気コンセント(大半の超音波システムの場合の通常の電源)から利用可能な電線よりも極端に大きな電線を必要とし、上記電気コンセントから利用可能な電力よりも大きな電力を必要とする。(前述の電線並びに関連付けられた電子回路の過剰なコストを含む)前述及び他の理由で、トランスデューサ・アレイにおいて利用可能であり得30の0素子を完全にサンプリングする場合に、図2aに示す手法は実現可能でない。
前述の複雑度の課題に対する既知の解決策は、「サブアレイ・ビーム形成」又は「マイクロ・ビーム形成」として表される。マイクロ・ビーム形成処理を実現することができる、国際公開2006/035384号明細書によって知られているマイクロ・ビーム形成アーキテクチャを有する超音波撮像システムの例は図2bに略示する。詳細な処理は、Bernard Savord及びRod Solomonによる、「Fully Sampled Matrix Transducer for Real Time 3D Ultrasonic Imaging(Paper 3J−1, Proceedings of the 2003 IEEE Ultrasonics Symposium, Oct. 5−8, 2003 (IEEE Prees)」と題する論文、及び米国特許第5318033号明細書に十分に説明されている。前述の参考文献はともに、本明細書及び特許請求の範囲に、参照によって援用する。上記論文及び米国特許文献において記載されているように、かつ、図2bに示すように、サブアレイ・ビーム形成は、ビーム形成機能が2つの段階に分割されることを必要とし、第1の段階はトランスデューサ200で行われ、第2の段階は超音波ベース・システム130の処理手段232において行われる。トランスデューサ200内の第1の段における部分ビーム形成を行うことにより、超音波ベース・システム130に電線220にわたって送信される必要があるチャネルの数は、劇的に削減される。
図2bに示すように、トランスデューサ・アレイ210における個々の素子211はサブアレイ240−1乃至240−nにグループ化される。各サブアレイ240における各素子211は前置増幅器241及び低電力アナログ遅延部242を有する。各サブアレイ240は、サブアレイ内の適切に遅延させたアナログ信号を一チャネルに合成するためのサブアレイ加算器245を有する。第1の段において使用することが可能な低電力アナログ遅延手法の例には、ミクサ、位相シフタ、電荷結合素子(CCD)、アナログ・ランダム・アクセス・メモリ(ARAM)、サンプルアンドホールド増幅器、及びアナログ・フィルタ等を含む。前述の手法は全て、十分なダイナミック・レンジを有し、特定用途向集積回路(ASIC)へのその一体化を可能にするために十分低い電力を使用する。このASICは、マイクロ・ビーム形成の適用例を行うためにトランスデューサ200内に適合させることができる。
マイクロ・ビーム形成を行う場合、種々のバルク遅延を各サブアレイ信号に施し得る。各バルク遅延は、その他のサブアレイに対して各サブアレイに、適切な遅延を課す。サブアレイ240−1乃至240−nからの部分的にビーム形成されたアナログ信号は、ベース超音波システム130における処理手段232にケーブル220を介してチャネル222−1乃至222−n上で送信される。サブアレイ・アナログ信号はディジタルにA/D233によって変換され、ディジタル遅延部234によって適切に遅延させ、次いで、最終加算器235によって合成される。上記段落に記載したバルク遅延部は、ディジタル遅延部234によって実現し得る。
連続的であるが、サブアレイを含むトランスデューサ素子は、トランスデューサ・アレイ上の各種形状又はパターンを形成し得る。例えば、矩形形状のトランスデューサ・アレイでは、トランスデューサ素子の各列はサブアレイを形成し得る。前述の構成は、それぞれを本明細書及び特許請求の範囲において援用する米国特許第6102863号明細書、米国特許第5997479号明細書、米国特許第6013032号明細書、米国特許第6380766号明細書、及び米国特許第6491634号明細書に記載されている。米国特許第6102863号明細書では、「仰角」ビーム形成(すなわち、素子の各列における信号の合成)はトランスデューサ内で行われる一方、「方位角」ビーム形成(すなわち、先行して合成された列の行を合成する)は超音波システム内の処理手段によって行われる。
図3aには、本発明による超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路300を示す。フロントエンド回路は、送信段301を備え、別個の2つの送信分岐302a及び302bはそれぞれ、個別のトランスデューサ素子110に、2つの送信分岐302a及び302bを介して供給されるフロントエンド回路の入力電圧 in1及び in2の差で振幅レベルが表される差動励起又はパルス電圧 opを前述のトランスデューサ素子それぞれに供給するために各トランスデューサ素子110(圧電素子305によって表す)の別々の端子に接続される。
図3aに表す超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路300のアナログ実現形態300’は図3bに示す。ここでは、差動励起又はパルス電圧 opを各トランスデューサ素子110に供給するために使用される2つの送信分岐302a及び302bそれぞれに一体化された少なくとも1つの送信増幅器304a、304bを備えるブリッジ増幅器トポロジが施される。ここで、前述の送信分岐のうちの第1の送信分岐(302a)における送信増幅器304aは、非反転形式( op1=+k・ in1)におけるフロントエンド回路の入力電圧 in1で表される第1の出力信号 op1を供給する。ここで、kは増幅器304a及び304bの利得を表し、前述の送信分岐のうちの第2の送信分岐(302b)における送信増幅器は、反転形式( op2=-k・ in1)で同じ入力電圧によって表される第2の出力信号 op2を供給する。
提案された回路はよって、スキャンヘッド100における(例えば、圧電素子305によって表し得る)フロントエンド回路300’及び関連付けられたトランスデューサ素子110の電圧供給入力における単一のアナログ線302(又は複数のディジタル制御線)間の差動接続を含む。差動回路設計が理由で、本願提案のフロントエンド回路は、共通の接地電位を有していない。本発明によるフロントエンド回路は、従来の送信増幅器304a及び304bを使用して実現し得る。差動ケーブル307が、スキャンヘッド100内のトランスデューサ・アレイの特定のトランスデューサ素子110とフロントエンド回路300’との間に必要である。一方、差動でない同軸ケーブルが伝統的に、使用されている。したがって、特定の他のタイプのケーブル(例えば、ツイストペア・ケーブルなど)が必要である。
別の好ましい実施形態は、スキャンヘッド100内にブリッジ送信増幅器304a及び304bを実現することである。この場合、上記増幅器は、一体化されたフレックス回路を介して、トランスデューサ素子110に接続し得る。この場合、トランスデューサ素子110に直結するフレックス回路を設計することは容易である。
図3bに示すように、本発明の別の重要な局面は、関連付けられたトランスデューサ素子110それぞれと、送信増幅器304a、304bそれぞれの出力ポートとの間に直接的な電気接続307を設けることである。差動から単一端への変換、又は電気絶縁が必要な場合に変圧器が通常、間に配置される。しかし、スキャンヘッド100内の構成部分の至近性により、前述の接続を行う配線の長さは、スキャンヘッド素子に対する直接の差動接続を行い、変圧器に対する必要性をなくすために十分小さいということが認識されている。
図3bは単一のチャネルの本願提案の回路設計を示すに過ぎず、スキャンヘッド100内に2つ以上のトランスデューサ素子及び2つ以上のチャネルを有する回路設計の場合、トランスデューサ・アレイにおいてトランスデューサ素子全てについて複製しなければならない。更に、本発明によれば、図3bに表すフロントエンド回路300’の機能を実現し、集束した、又は集束しない超音波ビームを生成するよう超音波トランスデューサ・プローブ100を制御し、受信チャネルのビーム形成を制御するためのビーム形成器機能(マイクロ・ビーム形成)も組み入れ得る、スキャンヘッド内のASICが好ましい。本願提案の設計では、フロントエンド回路300’を実現する特定用途向集積回路は、フリップ・チップ構成で必ずしもなくてよく、少なくとも、規則的なスキャンヘッド・アレイの場合、フリップ・チップ構成で必ずしもなくてよい。ASIC(フリップ・チップ構成か否かにかかわらず)は代わりに、フレックス回路を介して接続し得る印刷回路基板(PCB)アセンブリ上に実装し得る。
フロントエンド回路が、トランスデューサ素子110の入力ポートに直結された超音波トランスデューサ・プローブの場合、共通の接地を有しなくてよいことを可能にする適切な音響設計を提供し得る。
図3aに表す超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路300のディジタル実現形態300”は図3cに示す。このディジタル実現形態は、差動励起又はパルス電圧 opを各トランスデューサ素子110に供給するために使用される2つの送信分岐302a及び302bそれぞれにおいて一体化された少なくとも1つの送信パルサ304a’、304’bを備える。上述の送信分岐のうちの第1の分岐(302a)における送信パルサ304a’は、この第1の送信分岐302aにおいて送信パルサ304a’の入力端子に供給されるディジタル制御信号Sの第1の組によって振幅レベルが設定される第1の出力信号 op1を供給し、上述の送信分岐のうちの第2の分岐(302b)における送信パルサ304b’は、この第2の送信分岐302bにおいて送信パルサ304b’の入力端子に供給されるディジタル制御信号Sの第2の組によって振幅レベルが設定される第2の出力信号 op2を供給する。
医療プローブ(例えば、超音波トランスデューサ・プローブ(スキャンヘッド)など)を動作させるために上記フロントエンド回路を使用することにより、事実上、フロントエンド回路の供給電圧の振幅レベルが倍になり、したがって、フロントエンド回路の達成可能な出力電力が4倍になる。
図4aは、図3bに表すアナログ実現形態に応じて超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路300’の第1の送信分岐302aにおける送信増幅器304aの出力端子におけるアナログ出力電圧 op1の波形を示す。図4aから分かるように、出力電圧 op1は、上記フロントエンド回路の機能を実現する集積回路のIC製造プロセスによって扱うことが可能な、正の最大電圧レベル( op1,max=+ HV)に達する。
図4bは、図3bに表すアナログ実現形態に応じて超音波トランスデューサ・プローブのフロントエンド回路300’の第2の送信分岐302bにおける送信増幅器304bの出力端子におけるアナログ出力電圧 op2の波形を示す。図4bから分かるように、出力電圧 op2は、IC製造プロセスによって扱うことが可能な負の最小電圧レベル( op2,max=- HV)。
図4cは、超音波トランスデューサ・プローブのトランスデューサ・アレイの少なくとも1つの差動接続トランスデューサ素子305を動作させるための励起又はパルス電圧 opの波形を示し、励起又はパルス電圧は、第1のアナログ電圧 op1及び第2のアナログ電圧 op2の差で表される。本発明によって提供されるように、励起又はパルス電圧 opはよって、IC製造プロセスを変えることなく、2倍にすることが可能であり得る。
本発明の適用分野
効果的には、本発明は、サイズ、コスト、又は安全性の理由で、超音波トランスデューサ・プローブの動作電圧を削減するために、又は比較的低い電圧の製造プロセスを用いて製造されるフロントエンド集積回路の使用を必要とするコンパクト超音波マシン及び他のアプリケーションの分野において適用し得る。本発明の主な適用分野には、一体化されたビーム形成機能を有するスキャンヘッドが使用される低コストのコンパクトな超音波マシンがある。前述の適用分野の場合、本発明は、比較的安価な音響設計を使用するための手段を提供し、特定のIC製造プロセスの電圧制約を前提として、かなり高い励起又はパルス電圧を供給する役目を担う。
本発明は、図面及び明細書において詳細に例証し、説明しているが、前述の例証及び説明は、限定的なものでなく、例証的又は例示的であるとみなすものとし、これは、本発明が、開示された実施例に限定されないことを意味する。上記開示された実施例に対する他の変形は、図面、明細書の説明、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、本願の特許請求の範囲記載の発明を実施するうえで当該技術分野において通常の知識を有する者によって理解され、実施することが可能である。特許請求の範囲では、「comprising」の語は他の構成要素又は構成工程を排除するものでなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数形を排除するものでない。更に、特許請求の範囲に記載の何れの参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解されるべきでない。
参照符号リスト
100 超音波トランスデューサ・アセンブリ(「超音波トランスデューサ」、「超音波トランスデューサ・プローブ」又は「スキャンヘッド」としても表す)
101 超音波トランスデューサ・プローブ100の面
110 超音波を送受信する圧電素子(「トランスデューサ素子」とも表す)のアレイ
120 単一端のケーブル
130 超音波ベース・システム
132 処理及び制御機器
133 ディスプレイ
200 超音波トランスデューサ・プローブ
210 トランスデューサ・アレイ(超音波トランスデューサ・プローブ200を含む)
211 トランスデューサ・アレイ210のトランスデューサ素子
220 単一端のケーブル
221−1 第1の送信チャネル
221−n 第nの送信チャネル
222a 多重化器
222b 逆多重化器
232 処理手段
233 アナログ・ディジタル(A/O)変換器
234 ディジタル遅延部
235 加算器
240−1 トランスデューサ・アレイ210の第1のサブアレイ
240−n トランスデューサ・アレイ210の第nのサブアレイ
241 前置増幅器
242 低電力アナログ遅延部
300 フロントエンド回路(単純化された実施例)
300’ フロントエンド回路(アナログ実現形態、更に詳細な実施例)
300” フロントエンド回路(ディジタル実現形態、更に詳細な実施例)
301 ブリッジ又は差動増幅器として構成された送信段
302 フロントエンド回路300’の入力電圧供給線
302a 第1の入力電圧若しくは電圧制御信号 in1、又はディジタル制御信号Sの第1の組を供給するために使用されるフロントエンド回路300、300’又は300’’の第1の送信分岐
302b 第2の入力電圧若しくは電圧制御信号 in2、又はディジタル制御信号Sの第2の組を供給するために使用されるフロントエンド回路300、300’又は300’’の第2の送信分岐( in2は、インバータ303によって供給される反転形式で in1によって表し得る)
303 第2の送信分岐302bにおいて一体化されたインバータ又はディジタル制御回路
304a アナログ・フロントエンド回路300’の第1の送信分岐302aに一体化された高電圧送信増幅器段
304a’ ディジタル・フロントエンド回路300”の第1の送信分岐302aに一体化された送信パルサ段
304b アナログ・フロントエンド回路300’の第2の送信分岐302bに一体化された高電圧送信増幅器段
304b’ ディジタル・フロントエンド回路300”の第2の送信分岐302bに一体化された送信パルサ段
305 スキャンヘッド100に一体化されたトランスデューサ素子のアレイに属するトランスデューサ素子(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛又は他の物質でできた圧電素子)
306 差動受信段
307 トランスデューサ素子305と、差動増幅器段304a/bとの間の差動ケーブル、フレックス回路、又は他の電気相互接続
k 増幅器304a及び304bの利得
高電圧送信増幅器段304aに供給されるディジタル制御信号の第1の組
高電圧送信増幅器段304bに供給されるディジタル制御信号の第2の組
t 連続時変数
in1 フロントエンド回路300又は300’のアナログ入力電圧若しくは電圧制御信号
in2 フロントエンド回路300又は300’の更なるアナログ入力電圧若しくは電圧制御信号
± HV 高電圧送信増幅器段304a並びに304bの正及び負の供給電圧電位
op トランスデューサ素子305の励起又はパルス電圧
op1 高電圧送信増幅器段304aの出力信号
op1,max 出力信号 op1の最大レベル
op2 高電圧送信増幅器段304bの出力信号
op2,min 出力信号 op2の最小レベル
out (単一端又は差動であり得る)フロントエンド回路300,300’若しくは300”の出力ポートにおける受信増幅器306の出力信号

Claims (9)

  1. 超音波トランスデューサ・プローブであって、
    超音波送信パルスを送信し、前記送信パルスに応じてエコー信号を受信するための差動接続されたトランスデューサ素子のアレイと、
    差動電圧を前記トランスデューサ素子それぞれに供給するために各トランスデューサ素子の別々の端子に、それぞれが接続される別個の2つの送信分岐を備えた送信段を有するフロントエンド回路とを備え、前記差動電圧は、個別のトランスデューサ素子に前記2つの送信分岐を介して供給される前記フロントエンド回路の入力制御信号に基づき生成される第1及び第2の出力信号の差に等しい振幅レベルを有し、
    当該超音波トランスデューサ・プローブは、前記差動電圧を各トランスデューサ素子に供給するために使用される前記2つの送信分岐それぞれに一体化された少なくとも1つの送信パルサを更に備え、前記送信分岐のうちの第1の送信分岐における前記送信パルサは、前記第1の送信分岐において前記送信パルサの入力端子に供給される、前記フロントエンド回路の入力制御信号のうちの1つに対応する第1のディジタル制御信号によって振幅レベルが設定される前記第1の出力信号を供給し、前記送信分岐のうちの第2の送信分岐における前記送信パルサは、前記第2の送信分岐において前記送信パルサの入力端子に供給される、前記フロントエンド回路の入力制御信号のうちの他の1つに対応する第2のディジタル制御信号によって振幅レベルが設定される前記第2の出力信号を供給する、超音波トランスデューサ・プローブ。
  2. 請求項1に記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    前記送信パルサの出力ポートは、前記アレイの関連付けられたトランスデューサ素子に、フリップ・チップ、フレックス回路又は他のタイプの相互接続によって接続される超音波トランスデューサ・プローブ。
  3. 請求項2記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    前記送信パルサは前記超音波トランスデューサ・プローブに一体化される超音波トランスデューサ・プローブ。
  4. 請求項3記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    前記超音波トランスデューサ・プローブの特定業務向集積回路として実現された超音波トランスデューサ。
  5. 請求項4記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    前記エコー信号を表す出力信号を供給する差動受信段
    を備えた超音波トランスデューサ・プローブ。
  6. 請求項5記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    前記受信段は、前記少なくとも1つのトランスデューサ素子の端子それぞれを関連付けられた低雑音増幅器に接続する超音波トランスデューサ・プローブ。
  7. 請求項6記載の超音波トランスデューサ・プローブであって、
    各トランスデューサ素子が圧電素子として実現される超音波トランスデューサ・プローブ。
  8. 超音波診断撮像システムであって、前記システムは、請求項1乃至7のうちの何れか一項に記載された超音波トランスデューサ・プローブを備える超音波診断撮像システム。
  9. 請求項8記載の超音波診断撮像システムであって、一体化されたマイクロ・ビーム形成器システムを装備した超音波診断撮像システム。
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