(発明の背景)
多くの疾患状態は、少なくとも部分的に、生物内の不要なまたは過剰な免疫応答の結果である。移植された器官の拒絶は不要な免疫応答の自明な例である。移植片の拒絶は、生物の免疫応答の制御不能により病理が生じる象徴的な状態である。器官移植において、移植片拒絶を生じる不要な免疫応答は、(1)移植レシピエントのT細胞が移植組織上の外来性のいくつかのペプチドを提示している主要組織適合性複合体(「MHC」)分子をそのT細胞レセプター(「TCR」)を介して直接認識する「直接認識」、またはレシピエントT細胞が移植片由来の抗原決定基を、決定基がレシピエントMHCによってプロセッシングされ、提示された後で認識する「間接認識」;(2)レシピエントの移植片への曝露により生じる、移植片に対して、移植組織の細胞上に存在するヒト白血球抗原(「HLA」)分子に対してより特異的に指向される抗体の生成;ならびに(3)レシピエントの循環系中に先に形成される、移植片に対する抗移植片抗体の結合によって誘導される。試験により、これらの免疫応答は、3種類のドナー由来抗原、MHC(直接または間接認識による)、マイナー組織適合性抗原(「mH」)、および器官由来抗原に指向されるということが示された。
成功の移植は、持続性のキメラ化現象を含む、不要な免疫応答の阻害に依存する。持続性キメラ化現象とは、レシピエントが外来移植片に対して耐性を発生する現象であり、移植された組織が免疫応答にかけられることなくレシピエント中で生存することを可能にする。実験条件化で、持続性キメラ化現象は、短期間であるが、移植片拒絶免疫応答を刺激するものに密接に関連したペプチドによって誘導され得る(Murphy et al. (2003) J. Am. Soc. Nephrol. 14:1053-1065; LeGuern (2003) Trends Immunol. 24:633-638)。エピトープ拡散の過程によりエピトープを損なうことが広がる可能性による困難がある(Immunol. Rev. 1998, 164:241)。
移植医師は、日和見感染に対抗する患者の能力を傷つけることもなく、レシピエントの免疫系が外来物と見なすものの存在により生成される免疫応答を阻害することの両方の必要性を長く認識している。現在、移植患者はしばしば、患者の免疫応答および反応性を全体的に減少させる、免疫抑制剤療法による処置を受ける。免疫抑制剤療法は、既に誘発されている免疫応答に対して体の反応を弱めることを試み、多くの望ましくない副作用を伴う。重大な望ましくない副作用のため、移植片拒絶を処置するために単一の免疫抑制剤を連続的に使用することはできず、一連の処置は、レシピエントのそれぞれの免疫抑制剤およびその副作用への曝露を制限するために、1つの副作用を有する1つの免疫抑制剤を使用すること、異なる副作用を伴う第2および第3等の免疫抑制剤に変更することを含む。例えば、プレドニゾンまたはメチルプレドニゾンなどのステロイドは強力な免疫抑制剤であるが、白内障、高血糖症、多毛症(hirstutism)、挫傷、ざ瘡、骨成長抑制、および潰瘍性食道炎を誘導し得る。ステロイドの長期間の使用は、骨粗鬆症にも関連する。シクロスポリンA(CsA)は広く使用されている免疫抑制剤であるが、腎臓毒性であり、処置後にはしばしばタクロリムス(tacrolimus)(TAC)に代えられる。非急性の拒絶の処置のために、副作用としては白血球減少、貧血、発熱、悪寒、悪心および嘔吐を含むアザチオプリンが使用される。何の免疫抑制剤が使用されたかに関わらず、患者を任意の種類の感染に対して脆弱なままにしておく一般的な免疫系の妥協に加えて、免疫抑制剤による長期的処理と関連する最も実質的な副作用は、カポジ肉腫などの移植片関連悪性疾患の生成である。医師および患者の一部には、これらの現在直面している療法の使用を減らすかまたは止めるという強い要望がある。(Pharmacotherapy: A pathophysiologic Approach, 第5版. 2002, McGraw Hill)。免疫抑制剤療法を継続することなく、持続的キメラ化現象の臨床的目標が達成されたと述べることは困難である。
免疫抑制と比較して、免疫調節は、不要な免疫応答の原因を標的とする。免疫調節は、免疫についての体のメカニズムを標的とすることで抗原/エピトープ非特異的様式、または抗原/エピトープ特異的様式で達成され得る。抗原/エピトープ非特異的処置の例として、Tリンパ球またはその機能を制御することを直接の目標とした療法が、バイオテクノロジー手段を用いて開発されている。かかる処置に有用な治療剤としては、ムロモナブ-CD3(OKT3)、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、またはインターロイキン2レセプターモノクローナル抗体(「mAb」)ダクリズマブもしくはバシリキシマブが挙げられる。他の薬剤としては、可溶性CTLA-4、抗CD154 mAb;抗CD11a;VLA-4を阻害するヒト化mAb;抗CD2、3または4抗体;および抗CD152抗体(Amer. J. Transplantation 3: 794-803)が挙げられる。これらの治療剤の全ては、例えばプレドニゾンと比較して副作用減少を伴うレシピエントの免疫系の移植された組織に対する非反応性の状態を誘導し得るが、全免疫系放射線照射後にATG投与を行なう組合せ療法後に免疫抑制剤を止める(Transplantation 77:932-936)などの限定的な報告以外では、該治療はそれでも免疫抑制剤療法を継続することのない持続性キメラ化現象の臨床的目標を達成しない。さらに、これらの療法では、全免疫機能を弱めるという魅力的でない副作用をこうむる。
抗原非特異的免疫調節アプローチは対照的に、抗原/エピトープ特異的様式では、免疫系はまた、再度調節され得るか、または調節され得る。かかる種類の免疫調節は、MHCおよび抗原により形成された複合体のTCRの認識またはエピトープ自身のB細胞レセプター(「BCR」)のいずれかによる特定の抗原決定基に対する応答を増加し得る免疫系の能力を増加または減少するプロセスである。特定の抗原決定基に対するプロセスおよび全体として免疫系に対しないプロセスのために、抗原特異的免疫調節は、免疫系全体に影響する免疫抑制剤療法などの現在の処置様式と比較してより少ない副作用などの利点を有する。
抗原決定基特異的免疫調節処置は、宿主Tリンパ球のドナー特異的耐性を誘導することでかかる持続性キメラ化現象の確立を補助し得る。任意のおよび全てのこれらの抗原に対する反応の免疫調節は、移植片拒絶の低減または緩和、および持続性キメラ化現象の確立を補助する。研究により、特定の免疫調節ペプチドにより免疫調節の一作用機構が、他の方法でドナー由来抗原に結合するT細胞へのペプチドの結合の間に存在し得、T細胞機能の異なる活性化を生じることが示される。この機構は胸腺に関連する、中心的に誘導される寛容であることが示唆されている(Benichou et al. (1997) Immunol. Today 18(2):67-72)。免疫調節による宿主Tリンパ球におけるドナー特異的寛容の誘導による免疫抑制剤処置を伴わない持続的なキメラ化現象の説明は、3M KCl抽出ドナーMHC由来ペプチドの一連の決定基の胸腺内への注射により、その後の移植に対して寛容を誘導されたマウスを用いる研究者のグループにより実施された。循環T細胞を除去するために、まず抗T細胞抗体の2回投与が与えられた。次いで、ドナーマウスから抽出された8種類のペプチド配列を組み合わせて送達した。処置されたマウスはその後の移植を許容した。該研究は中心的に誘導される寛容の重要性の一例である(Transplantation, 58:105-07)。従って、T細胞に結合するT細胞刺激抗原に類似の適切なペプチドを設計することは持続的キメラ化現象を達成するために有益である。
しかしながら、エピトープ拡散のプロセスよりエピトープの欠損を広げるという可能性を伴った困難性がある。(Immunol. Rev. 1998, 164:241)。従って、移植において、不要な免疫応答の自明の例として、関連のある抗原決定基の経時的に調節する能力の非存在下では、唯一の選択肢は非特異的免疫調節または免疫抑制剤療法であるということが明らかである。
不要な免疫応答の他の例は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患と移植拒絶の間のある重要な文脈上の違いは、(1つまたは複数の)抗原決定基が一般的に、より制限され、より限定できるということである。自己免疫疾患の要因は不明であり、前もって存在するおよび/または環境要因により規定され得るが、病理状態の直接的な原因は多くの自己免疫疾患において同定されている。自己免疫疾患は、自己の抗原(自己抗原(autoantigen))に指向する不適切な免疫応答により生じ、自己寛容の正常な状態からの逸脱である。自己抗原に反応し得るT細胞およびB細胞の生成が発生の初期または末梢での成熟の後のいずれかで起こる事象によって阻害されるかまたは改変される場合は自己寛容が生じる。プロセッシングされたペプチドをT細胞に結合させて提示する能力により免疫応答に中心的な役割を果たす細胞表面タンパク質はMHC分子である(Rothbard, J.B., et al., 1991, Annu. Rev. Immunol. 9:527)。自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、ヒトI型インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、自己免疫ブドウ膜網膜炎、原発性胆管肝硬変(PBC)およびセリアック病が上げられる。
現在関連のある抗原決定基が多くの自己免疫疾患について公知であるが、任意の特定の抗原決定基に非特異的ないくつかの免疫調節治療剤が開発され自己免疫疾患の処置に使用されており、低分子量炎症性化合物の形成を阻害し得るシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)インヒビターなどの一般的な抗炎症薬、腫瘍壊死因子(TNF)を引き離す抗TNF mAbもしくは抗体フラグメント、またはTNFレセプターの可溶性形態等のTNFなどの炎症のタンパク質メディエイタのインヒビターが含まれる、ならびに例えばCD4レセプターまたは細胞接着レセプターICAM-Iを阻害することによるT細胞表面上のタンパク質を標的化して一般的に抗原提示細胞(APC)との相互作用を阻害する薬剤が挙げられる。しかし、治療剤として天然に折りたたまれたタンパク質を有する組成物は、産生、形成、保管および送達における問題に直面し得る。これらの問題のいくつかは、病院設置の患者への送達を必要とする。さらに、これらの種類の抗原決定基非特異的免疫調整治療剤は残留性の免疫抑制剤様の副作用を有し、慢性療法としてのその魅力を低減させる。
抗原特異的処置も研究されている。自己免疫応答の緩和に干渉する1つの魅力的な点は、一連のリンパ球表面タンパク質MHC分子、特にMHCクラスII遺伝子にコードされるタンパク質、例えばHLA-DR、-DQおよび-DPの組であり、抗原決定基特異性を示す。それぞれのMHC遺伝子は、哺乳動物集団中に多くの選択物(alternative)または対立遺伝子形態で見られるが、これらのほんのわずかな対立遺伝子形態が疾患関連抗原決定基に反応性である。特定の自己免疫疾患、例えばMSおよびRAに罹患した被験体のゲノムは、疾患が関連する1つ以上のかかる特徴的なMHCクラスII対立遺伝子を有する可能性が高い。
1つまたはいくつかのMHCクラスII分子に対して適切な親和性を持って相互作用および結合する薬剤は、コポリマー1(Cop1)である。Cop1のMHCとの相互作用は、細胞内プロセッシングおよびその後のMHC分子内への負荷、または結合していないクラスII分子への細胞外結合に依存する。Cop1は、マウス中で誘導され得、MSのモデルである実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE; SeIa, M. et al., 1990, Bull. Inst. Pasteur (Paris) )を抑制し得ることが示されている合成アミノ酸ヘテロポリマーである。酢酸ガラチラメルまたは一文字アミノ酸コード(上記参照;Yはチロシンを表し、Eはグルタミン酸、Aはアラニン、およびKはリジン)を用いた「YEAK」としても公知なポリ(Y、E、A、K)であるコポリマー1は、再発型のMSの処置に使用されている。
Cop-1はMSを緩和することが示されているが、疾患を完全には抑制せず、大部分の患者には無効である(Bornstein, M.B., et al., 1987, N. Engl. J. Med. 317:408; Johnson, K.P. et al., 1995, Neurology 45:1268)。現在のCop1療法の別の不利な点は、多数の変異を生じ、分子量によってのみ規定され得、液相合成によって産生される、それ自身の不定形化合物である。投与の累積効果または疾患段階のいずれも考慮しない繰り返し投与に基づく現在の処置様式は、効果の可能性を制限し、不要な副作用を生じ得る。
特定の投与計画を改変することにより改良がなされ得る。米国特許第6,844,314号には、傷害を受けた神経線維の保護に関連して、ワクチン様のCop1の性質を活用しようとする処置計画が記載されている。'314号特許の発明は傷害を受けた神経線維の数に対する最適な投与に基づき、投与の計画は個体患者の健康全般ならびに年齢および性別や体重などのその他の身体的因子などの要因に基づくと考えられる。しかしながら、依然として、不要な免疫応答を、より大きな効果およびより小さな副作用を生じるランダムコポリマーで処置するための改良された方法、ならびに種々の患者の個性に適合するかかる方法の必要性がある。このために、免疫系機構のTH1/TH2範例(paradign)に基づく処置計画を開発する必要性があるので、疾患状態はより効果的かつ普遍的に調節され得る。改良された様式は、ランダムコポリマーが多発性自己免疫疾患の処置に効果的である可能性を有するために、さらに有用である(Simpson, D. et al, 2003, BioDrugs 17(3):207-10)。従って、Cop1の投与形式ならびに他のランダムコポリマーの開発の必要性が残るので、不要な免疫応答は有効な免疫調節によって制御され得る。
(発明の簡単な概要)
本発明は、Cop1の有効性を改善するための必要性、および本明細書に記載され、YFAKを含むがこれに限定されない他のランダム配列コポリマーのさらなる改良を提供する。該改良は、持続性キメラ化現象を達成するための化合物の能力に基づいた化合物、またはTH1免疫状況またはTH2免疫状況を生じながら、かつ低または高レベルのいずれかで抗化合物抗体を産生しながら、能動的または受動的のいずれかの免疫制御を動的に投与し得る形態をとる。ランダム配列コポリマーの動的な投与は、投与、計画、投与の経路、および/または製剤の任意の組合せからなる。この動的な免疫調節は、特定の患者における疾患の任意の多段階での効果の増加、ならびに多発性、病原性抗原決定基に関連しない疾患をより効果的に処置する能力を提供する。
本発明は、被験体、好ましくはヒトにおける疾患の処置または予防のための方法およびキットを提供する。本発明の一局面は、疾患の処置または予防方法、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を、前記被験体に投与する工程を含む方法を提供し、前記有効量は24時間、36時間、またはより好ましくは48時間よりも長い間隔で被験体に投与される。本発明の関連する局面は、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を、被験体に投与する工程を含む、投与の必要な被験体の処置方法を提供し、毎日投与された場合に有効である量である前記有効量は、ランダムコポリマーを少なくとも2日、少なくとも4日、または少なくとも6日にわたって被験体にランダムコポリマーを投与する、徐放性製剤を使用して被験体に送達される。
いくつかの態様において、本発明の方法の疾患は、T細胞、および特にTH1細胞またはTH1免疫状況を伴う細胞によって媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。一局面において、本願は上述のランダムコポリマー混合物を含む組成物を投与することにより免疫応答を調節する方法に関する。いくつかの態様において、該疾患としては、限定はされないが、急性炎症、慢性関節リウマチ、移植拒絶、喘息、炎症性腸疾患、ブドウ膜網膜炎、再狭窄、多発性硬化症、乾癬、傷の治癒、エリテマトーデスおよび当業者に認識され得る任意のその他の自己免疫疾患または炎症性障害が挙げられる。いくつかの好ましい態様において、ランダムコポリマーはチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)およびリジン(K)(YFAKコポリマー)を含む。他の態様において、該ランダムコポリマーはコポリマー1(YEAK)である。本発明は、任意の特定のランダムコポリマーまたは投与形式には限定されない。
特定の局面において、本願は、器官移植の場合において対移植片宿主病(HVGD)または対宿主移植片病(GVHD)を予防、処置または緩和するため、ならびに上述のランダムコポリマー混合物を含む組成物を投与することにより、自己免疫障害を予防、処置または緩和するための免疫応答を調節する方法を提供する。従って、別の局面において、本願は、器官移植の場合における持続性キメラ化現象の誘導方法に関する。さらに、本願は、T細胞の移植片に対する応答を選択的に抑制し、その結果移植片の生存の機会を増加させる方法に関する。
本発明の一局面は、前記疾患を緩和するための有効量のランダムコポリマー組成物の投与計画を、投与の必要のある被験体に投与する工程を含む、ランダムコポリマー組成物を投与することで処置可能な疾患を処置する方法であり、該ランダムコポリマー組成物は、
(a)固相化学反応により合成され、52アミノ酸長を有する、それぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル投入比でYFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)含む、ランダムコポリマー組成物;
(b)固相化学反応により合成され、52アミノ酸長を有する、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比でYFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)を含み、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する、ランダムコポリマー組成物;
(c)固相化学反応により合成され、約52アミノ酸残基長を有する、それぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比でYEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)を含む、ランダムコポリマー組成物;
(d)固相化学反応で合成され、約75アミノ酸残基長を有する、それぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比でYEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)を含む、ランダムコポリマー組成物;ならびに
(e)固相化学反応で合成され、52アミノ酸長を有する、それぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比でYEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)を含み、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0: 5.5: 5.0の比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の比を有し、残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の比を有するランダムコポリマー組成物
から選択される。
本発明の一局面において、ランダムコポリマー組成物の有効量は、前記ランダムコポリマーの投与について、免疫応答の変化を決定することで規定される。より具体的には、免疫応答の変化は一般的に、(1)適応免疫系および先天性免疫系;(2)適応免疫系;(3)T細胞もしくはB細胞;または(4)T細胞もしくはB細胞の機能においてである。特定の態様において、かかる変化は、(5)T細胞もしくはB細胞の表現型;(6)T細胞寛容;(7)T細胞制御の生成;(8)能動T細胞制御の生成;または(9)受動T細胞制御の生成においてである。さらに、特定の態様において、免疫応答におけるかかる変化は、T細胞機能、末梢寛容、B細胞表現型およびB細胞機能を含む。
特定の態様において、本発明の方法は、TH1免疫状況を誘導する有効量のランダムコポリマー組成物を投与する工程を含む。別の態様において、本発明の方法は、TH2免疫状況を誘導する有効量のランダムコポリマー組成物を投与する工程を含む。
本発明の一態様は、ランダムコポリマー組成物を投与することにより処置可能な疾患を処置する方法であり、ここで前記有効量は、1:1,000未満の力価で、ランダムコポリマーに対する抗体の形成により規定される。別の態様において、かかる有効量は1:100,000より高い力価で、ランダムコポリマーに対する抗体の形成により規定される。
本発明の一局面は、不要なTH1媒介免疫応答である疾患を処置する方法である。かかる方法は、かかるランダムコポリマーに対する抗体を1:50,000未満の力価で誘導する用量および間隔で、ランダムコポリマー組成物を投与する工程を含み得る。別の態様において、かかる方法は、投与計画により、1:50,000未満の力価でランダムコポリマーに対する抗体が誘導されるように、1週間当り3回の投薬まででランダムコポリマー組成物を投与する工程を含む。一態様において、該方法は、T制御細胞の集団を、ランダムコポリマー組成物のかかる投与前の2倍に増加させる。
本発明の別の局面は、不要なTH2媒介免疫応答である疾患を処置する方法である。本発明のさらに別の局面は、不要なTH1応答および不要なTH2応答の両方を特徴とする疾患を処置するための方法である。
本発明の方法の一態様において、被験体は少なくとも1つの自己免疫疾患に罹患している。本発明の方法により処置可能な疾患は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性の特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水胞性類天疱瘡、ショーグレン症候群、特発性粘液水腫、大腸炎および神経防護(neuroprotection)から選択される。特定の態様において、本発明のかかる方法の投薬計画は皮下投与を含む。別の態様において、本発明の方法により処置可能な疾患は、アレルギー、喘息、湿疹、枯草熱、HVGDまたはGVHD、および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択される。特定の態様において、かかる方法の投薬計画は、皮下投与または経皮投与を含む。特定の一態様において、かかる自己免疫疾患は多発性硬化症である。なおもより特別な態様において、多発性硬化症は再発性寛解型の多発性硬化症である。
本発明の方法による多発性硬化症の処置において、一態様におけるランダムコポリマー組成物の有効量は、枯渇抗T細胞療法の投与を含む処置計画後に決定される。別の態様において、有効量は枯渇抗B細胞療法の投与を含む処置計画後に決定される。特定の態様において、有効量はアレムツズマブの投与からなる処置計画後に決定される。別の態様において、有効量はATG療法の投与からなる処置計画後に決定される。
特定の態様において、本発明の方法は、静脈内、皮下、筋内、皮内、腹腔内もしくは皮内または経口投与を含む投与計画を含む。
本発明の別の局面は、1:50,000未満の力価で調節剤に対する抗体を誘導する用量および間隔で免疫調節組成物を投与する工程を含む、投与を必要とする被験体におけるTh1/Th2バランスをシフトさせる方法である。本発明のさらに別の局面は、免疫調節組成物を皮下投与し、それによりTh2へとシフトを誘導する工程を含む、投与を必要とする被験体におけるTh1/Th2バランスをシフトさせる方法である。本発明の選択的な局面は、免疫調節組成物を経皮投与することによりTh1へのシフトを誘導する工程を含む、投与が必要な被験体におけるTh1/Th2バランスをシフトさせる方法である。特定の態様において、これらの方法は、免疫調節剤およびキャリア剤を含む免疫調節組成物を投与する工程を含む。
本発明の局面は、微粒子またはエマルジョンの形態でランダムコポリマー組成物を含む医薬組成物である。特定の態様において、該医薬組成物は、水相、油、および乳化剤を含む油中水エマルジョンの形態である。別の態様において、該医薬組成物は、ミョウバンに懸濁されたランダムコポリマー組成物を含む。特定の態様において、本発明の医薬組成物は、油がミネラルオイルであり、乳化剤がモノラウリル酸ソルビトールである油中水エマルジョンを含む。さらに、特定の態様において、本発明の医薬組成物は上述のランダムコポリマー組成物を含む。
本発明はまた、疾患の処置のためのキットを提供する。本発明の一局面は、(i)ランダムコポリマーを含む組成物、および(ii)少なくとも24時間、より好ましくは36または48時間またはより長い間隔で、該組成物を被験体に投与するための指示書を含む、自己免疫疾患の処置のためのキットを提供する。好ましい態様において、該組成物は皮下注射用に調製され、ランダムコポリマーはYFAKまたはコポリマー1であり、該疾患は多発性硬化症、特に再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
本発明はさらに、疾患の処置のための医薬の製造のための薬剤を提供する。本明細書に開示される、被験体にランダムコポリマーを投与することにより疾患を処置また予防するための任意の方法は、該疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用に適用され得る。従って、本発明の一局面は、被験体における疾患の処置のためのランダムコポリマーの使用を提供し、該ランダムコポリマーが被験体に、24時間、36時間およびより好ましくは少なくとも48時間より長い間隔で投与されるように調製される。好ましい態様において、該ランダムコポリマーはコポリマー1(YEAK)であり、該疾患は多発性硬化症、特に再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
本発明はさらに、製薬ビジネスを行なう方法を提供する。
(発明の詳細な説明)
I. 概観
本発明は、ランダムコポリマーの投与による疾患の処置および予防、疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用、ならびにランダムコポリマーおよび指示書の両方を含むキットに広く関連する。本発明はまた、自己免疫疾患の処置および宿主における免疫応答の調節に関する。
免疫系は、一般に過敏症、自己免疫、欠乏症およびアミロイドーシスの障害の4つの分類を有する。過敏症反応は、原型障害としてアナフィラキシーを有する免疫反応を迅速に発生させるI型;細胞傷害性であり細胞外抗原に対する補体または抗体により媒介されることを特徴とするII型;原型障害として、全身性エリテマトーデスまたは関節炎を有する組織損傷を生じる抗原:抗体複合体を特徴とするIII型;ならびに、細胞外(CD4+ T細胞)または細胞内(CD8+ T細胞)抗原に対する遅延型過敏症反応を伴う細胞媒介性であるIV型として記載され得る。移植拒絶は、多発性過敏症に関連すると思われるので議論の価値がある。移植は、外来移植片に対するT細胞媒介性および抗体媒介性反応に関連する。関連のある抗原決定基の明確なグループが存在しない移植拒絶の処置に関連する処置様式は、主に、多発性硬化症などのより多くのエピトープ限定的疾患にも適用され得る広範にわたる免疫抑制剤である。極めて有効な免疫抑制剤療法としては、OKT3(抗CD3)、サイモグロブリン(Thymoglobulin)(多機能性決定因子)およびCampath(登録商標)(アレムツズマブ、抗CD52)などの抗T細胞処置が挙げられる。移植拒絶の処置において最も標準的なものは、免疫抑制剤療法を伴わない持続性キメラ化現象である。
免疫寛容は、持続性キメラ化現象を説明する別の方法である。これは、1つの抗原について、個体が単一決定因子または決定因子の組に対する有効な免疫応答を備えることができない免疫系の状態である。自己由来の抗原決定基に対する寛容を維持するために免疫系が発生する機構はいくつかある。これらは一般的に、エフェクター機構の起源に属する中枢および末梢として記載され得る。中枢寛容は、中枢リンパ器官(T細胞について胸腺、およびB細胞について骨髄-ただしB細胞は脾臓において成熟し続ける)で成熟中のTおよび(can)B細胞の制御(例えば欠損による)として説明され得る。中枢寛容の効果は、しばしばアネルギー(特定の抗原価に対して非反応性の状態)のようなものであり得る。末梢寛容は、一般的にT制御細胞と呼ばれるさらなる安全装置機構として主に説明される。これらの細胞は、他の免疫細胞に対して抑制性の効果を発揮し得る。
自己免疫疾患が生じる根源的な機構は、非常に多く、包括的である:T細胞アネルギーの崩壊、活性化誘導細胞死の不全、T細胞媒介性抑制の不全、分子擬態(molecular mimicry)、および潜在自己エピトープの拡散。
種々の過敏症型を効果的に処置するための治療について、非常に多岐にわたる方法で免疫系に提示される必要があることを想像することができよう。本発明は、ランダム性質による大きな反応性の一連のエピトープ反応を提供するが、T細胞の全プールに対して反応性であるほどには大きくない。それは免疫系との相互作用であり、その点については一般的に使用されるOKT3などの免疫抑制剤療法を超えた改良であり、全T細胞レパートリーのほんのわずかな部分と相互作用する単一ペプチド免疫のような特異的エピトープ療法である。本発明の化合物は、低用量でのT制御から高用量でのアネルギーまで、免疫反応に変化を生じる種々の用量で送達され得る。曝露の全体的なレベルにおいて違いがもたらされるように、頻度もまた影響を有する。最終的に、本発明の化合物が免疫により最初に見つけられる方法は、TH1対TH2プロフィールのバランスに密接な関係を有する。皮下送達される不活性溶液中で、該化合物は主にTH2プロフィールを送達し、スコアリング後炎症剤と共に経皮送達される場合は主にTH1プロフィールを送達する。本発明のこの動的な免疫調節能力は、複数で過敏症の型の違いを特徴とする見かけ上不適合性の疾患およびTHプロフィールにおいて本発明の化合物を有用とする。
一態様において、本願は、器官移植のレシピエントなどの患者または自己免疫障害の症候を示す患者の免疫系を調節するために有用なランダムコポリマーの混合物を提供する。一態様において、該ランダムコポリマーは、移植片拒絶を誘導する抗原として作用するタンパク質およびペプチドのアミノ酸組成物を含む。これらのランダムコポリマーは、移植された器官の持続性キメラ化現象を達成するための免疫調節組成物として有用である。従って、一局面において、治療的に有効なランダムコポリマーは、マイナー組織適合性抗原;HLAタンパク質;移植された器官由来のアミノ酸由来のアミノ酸組成物を含む。本願はまた、対宿主移植片病、対移植片宿主病および他の自己免疫疾患を処置するための方法を提供する。
本発明の一局面は、ランダムコポリマーにより処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、前記有効量は36時間よりも長い間隔で被験体に送達される、被験体の処置方法を提供する。本発明の関連する局面は、ランダムコポリマーにより処置可能な疾患の緩和のための、有効量の少なくとも1つのランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、前記有効量の少なくとも1つのランダムコポリマーは、24時間よりも長い間隔、特に48時間よりも長い間隔で前記被験体に送達される、被験体の処置方法を提供する。一態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量のランダムコポリマーは、毎日投与された場合に有効な量である。関連のある態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量は、毎日投与された場合に有効な量である。さらに別の関連のある態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量は、毎日投与された場合に有効であることが公知である量である。本発明の態様において、有効量は、10mg〜30mg、または15mg〜25mgからなる。他の態様において、有効量は約20mgである。別の態様において態様において、有効量は20mg未満である。具体的な態様において、有効量は「x」mgであり、「x」は1〜20の任意の整数である。
本明細書に提供される方法の一態様において、被験体は、ランダムコポリマーで処置可能な疾患に罹患している。一態様において、該疾患はT細胞、特にTH1細胞もしくはTH1免疫状況を伴う細胞により媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。別の態様において、被験体は少なくとも1つの自己免疫疾患に罹患している。一態様において、該被験体は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫系リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎、水胞性類天疱瘡、ショーグレン症候群、特発性粘液水腫および大腸炎からなる群より選択される少なくとも1つの疾患に罹患している。好ましい態様において、疾患は多発性硬化症または再発性寛解型多発性硬化症である。本明細書に提供される方法のさらなる態様において、該疾患は対移植片宿主病(HVGD)または対宿主移植片病(GVHD)またはその両方である。本明細書に記載される方法の好ましい態様において、被験体は哺乳動物、またはより好ましくはヒトである。
本明細書に記載される方法の一態様において、投与計画は、静脈内、皮下、筋内、皮内、腹腔内、皮内または経口投与を含む。また、ランダムコポリマーは、経皮パッチまたはポンプまたはインプラントなどのランダムコポリマーを継続的に送達するように設計されたデバイスを介して投与され得る。例えば、ランダムコポリマーを48時間中12時間ごとに、もしくはそれより長く投与するために経皮パッチが使用され得るか、または該コポリマーを4日中2日毎に、もしくはそれよりも長く投与するためにポンプが使用され得る。関連のある局面において、該コポリマーは徐放性製剤中で投与される。
本発明はまた、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、毎日投与された場合に有効である量である前記有効量は、ランダムコポリマーを少なくとも2日、少なくとも4日または少なくとも6日にわたり投与する徐放性製剤を用いて被験体に送達される、投与する必要のある被験体の処置のための方法を提供する。好ましい態様において、徐放性製剤は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間にわたり該コポリマーを投与する。別の態様において、徐放性製剤により毎日送達される総用量は、疾患の処置に有効であることが公知である毎日用量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満である。具体的な態様において、徐放性製剤は、毎日投与された場合に疾患の処置に有効であることが公知である、ランダムコポリマーの1日当り25%以下の用量を投与する。例示として、コポリマー1(YEAK)が20mgの用量で、20mgの毎日皮下注射などにより毎日投与された際に再発性寛解型多発性硬化症の処置に有効であることが公知である場合、本発明は20mg、特に約10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mgまたは1mgのコポリマー1未満の毎日投与を生じるコポリマー1の徐放性製剤を提供する。
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、該方法は、抗T細胞またはB細胞剤などのさらなる治療活性剤を被験体に投与する工程をさらに含む。好ましい態様において、該薬剤は該疾患の処置に有用である。別の好ましい態様において、疾患を処置するために該薬剤はランダムコポリマーと相乗効果を示す。
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、投与計画は、それぞれの投与間に間隔を有して、ランダムコポリマーを被験体に複数回投与する工程を含む。好ましい態様において、該投与間の間隔は少なくとも36、48、72、96、120、または144時間である。別の好ましい態様において、該投与間の間隔は36時間〜14日間、または少なくとも7日間である。関連のある態様において、少なくとも1つの投与間の間隔は、少なくとも36、48、72、96、120、もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。別の関連のある態様において、少なくとも10%、20%、30%、40%以上、好ましくは50%の投与間の間隔は、少なくとも36、48、72、96、120、もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。さらに別の関連のある態様において、投与間の平均間隔は、少なくとも36、48、72、96、120もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、ランダムコポリマーの有効量は、投薬当り0.02mg〜2000mg、またはより好ましくは投薬当り2mg〜投薬当り200mgである。
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、ランダムコポリマーは、コポリマー1(YEAK)、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKからなる群より選択される。好ましい態様において、ランダムコポリマーはコポリマー1である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーはYFAKである。別の態様において、ランダムコポリマーは、YAK、YEK、KEAおよびYEAからなる群より選択されるものなどのターポリマーである。さらに別の態様において、ランダムコポリマーは1〜10のアンカー残基を有する。
本発明はまた疾患を処置するためのキットを提供する。本発明の一局面は、(i)ランダムコポリマーを含む組成物、および(ii)該組成物を、少なくとも36時間の間隔で被験体に投与するための指示書を含む自己免疫疾患を処置するためのキットを提供する。好ましい態様において、キット中のランダムコポリマーはコポリマー1である。別の好ましい態様において、キット中のランダムコポリマーはYFAKである。いくつかの態様において、キット中のランダムコポリマーは、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間ごとの投与のために調製される。いくつかの態様において、キットの指示書は、ランダムコポリマーは少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間の間隔で被験体に投与され得るということを示す。
本発明により提供されるキットのいくつかの態様において、組成物は徐放性製剤として調製される。具体的な態様において、徐放性製剤は、毎日投与された場合に疾患の処置に有効である、全用量を送達する。他の態様において、全用量は約20mg、20mg未満、またはxが1〜20の任意の整数であるx mgである。
本発明により提供されるキットの別の態様において、該キットは、1回投与当り約20mgの用量で、少なくとも24、36、48、72、96、120または144時間またはそれより長い間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含むが、他の態様において、該用量はxが1〜20の任意の整数であるx mgなど、20mg未満である。関連のある態様において、キットは、毎日投与された場合に疾患の処置に有効な用量で、少なくとも24時間の間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含む。関連のある別の態様において、キットは、毎日投与される際に疾患の処置に有効な用量で、少なくとも24時間の間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含む。
いくつかの態様において、該キットが指向される疾患は、T細胞、特にTH1細胞により媒介されるか、または該疾患は過剰な炎症性サイトカインにより悪化するものである。別の態様において、該疾患は、キットが処置を提供する、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水胞性類天疱瘡、ショーグレン症候群、特発性粘液水腫および大腸炎からなる群より選択される自己免疫疾患である。具体的な態様において、該疾患は多発性硬化症、糖尿病または関節炎である。好ましい態様において、該疾患は再発性寛解型多発性硬化症である。キットはまた、皮下注射器、針、さじもしくは目盛りつき容器などの測定デバイス、吸入器またはポンプなどのコポリマーを投与するためのパッケージおよび手段を含み得る。キットの指示書は、家庭での使用のための指示書も含有し得る。
本発明はさらに、疾患の処置のための医薬の製造のための薬剤を提供する。被験体にランダムコポリマーを投与することによる疾患の処置または予防のための本明細書に開示される任意の方法は、該疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用に適用され得る。従って、本発明の一局面は、ランダムコポリマーが24時間、より好ましくは48時間よりも長い間隔で被験体に投与されるように調製される、被験体における疾患の処置のためのランダムコポリマーの使用を提供する。好ましい態様において、ランダムコポリマーはコポリマー1であり、疾患は多発性硬化症またはより具体的には再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。他の好ましい態様において、ランダムコポリマーはYFAKである。
本発明の別の局面は、製薬ビジネスを行なうための特定の方法を提供する。特に、本発明は、キットおよび製剤が、ヘルスケア提供者、または直接かかるキットを必要とする被験体にマーケティングされる製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。一局面は、ヘルスケア提供者、またはかかるキットを必要とする患者に、疾患または障害の処置において本明細書に記載される任意のキットの使用の恩恵をマーケティングすることを含む製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。関連のある局面は、(a)本明細書に記載される任意のキットを製造すること;および(b)ヘルスケア提供者、またはかかるキットを必要とする患者に、疾患または障害の処置におけるキットの使用の恩恵をマーケティングすることを含む、製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。いくつかの態様において、かかる製剤を開発およびマーケティングする権利、またはかかる製造工程を実行する権利は、研究のための第三者に許可される。いくつかの態様において、該疾患は再発性寛解型多発性硬化症などの多発性硬化症である。別の態様において、該キットはコポリマー1またはYFAKを含む。
別の態様において、ヘルスケア提供者または患者にマーケティングすることには、50mgまたはより好ましくは20mg以下のランダムコポリマーを5〜7日ごとに投与するための指示が含まれる。他の態様において、マーケティングすることには、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日ごとにランダムコポリマーを投与するための指示が含まれる。別の態様において、ヘルスケア提供者または患者にマーケティングすることには、50mg、またはより好ましくは20mg以下のランダムコポリマーを5〜7日ごとに投与するための指示が含まれる。さらに別の態様において、マーケティングすることには、本明細書に記載されるキットまたは製剤を使用することにおける既存の製剤または異なるランダムコポリマーと比較した、副作用の低減の示唆が含まれる。特定の態様において、既存の製剤は患者に対してより頻繁にまたはより短い投与間隔で投与され、一方で別の態様において、既存の製剤は、マーケティングされる該キットのものよりも高い平均毎日投与量をもたらす。より高い平均毎日投与量は、該キットにより提供されるものよりも、例えば20、50、100、200または500%高い。
II. 定義
簡便のため、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここにまとめる。特に記載のない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者一般に理解されているものと同じ意味を有する。
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうために使用される。一例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは1つより多くのエレメントを意味する。
用語「含むこと」は、本明細書において句「限定されないが、〜を含む」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
用語「または」は、本明細書において、文脈にそうでないと明白に示されていない限り、用語「および/または」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
用語「など」は、本明細書において句「限定されないが、〜など」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
本発明の方法によって処置される「患者」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは動物のいずれかを意味し得る。
用語「自己免疫状況」または「自己免疫疾患」は、自己抗原として知られる
自己コード実体に指向された不適切な免疫応答によって引き起こされる疾患状態を意味する。本明細書に提供されるコポリマー化合物は、橋本甲状腺炎;特発性粘液水腫、重症な甲状腺機能低下;多発性硬化症、脳または脊髄における斑または硬化組織によって特徴付けられる脱髄疾患;神経筋連結部のアセチルコリン受容体に対する自己免疫攻撃によって引き起こされる筋肉の進行性衰弱を有する疾患である重症筋無力症;ギヤン‐バレー症候群、多発性神経炎;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜網膜炎;自己免疫卵巣炎;慢性免疫性血小板減少性紫斑病;大腸炎;糖尿病;甲状腺機能低下の一形態であるグレーヴス病;乾癬;尋常性天疱瘡;および慢性関節リウマチ(RA)を含むクラスの障害である自己免疫疾患の症状を処置するために使用され得る。
用語「脱髄状態」は、神経細胞の伸長部分で周囲を覆われた原形質膜からなるミエリン鞘の一部が分解によって除去される疾患状態を含む。脱髄状態は、ワクチン接種後、抗TNF処置後、ウイルス感染後、およびMSにおいて生じ得る。
用語アミノ酸の「誘導体」は、さらなる置換、例えば、アミノ酸の原子に結合されたN-カルボキシ無水物基、γ-ベンジル基、ε-N-トリフルオロアセチル基またはハライド基を有するアミノ酸の化学的に関連する形態を意味する。
用語「アナログ」は、異なる立体配置を有するアミノ酸の化学的に関連する形態、例えば、異性体、またはL-立体配置ではなくD-立体配置、または該アミノ酸と同等の大きさ、電荷および形状を有する有機分子、またはペプチド結合に関与する原子に修飾を有し、その結果、アナログ残基を有するコポリマーは、アナログが内部にあろうと、コポリマ末端に位置しようと、アナログのないコポリマーと比べ、その他の点では類似するかかるアナログを欠くコポリマーよりもプロテアーゼ耐性であるアミノ酸を意味する。
句「アミノ酸」および「アミノ酸コポリマー」は、本明細書に規定されるアミノ酸誘導体および/またはアミノ酸アナログである1つ以上の成分を含み得、該誘導体またはアナログは、その組成によって示された20個の天然のアミノ酸の任意の1つ以上の残基の一部または全体を含む。例えば、1つ以上のチロシン残基を有するアミノ酸コポリマー組成物において該残基の1つ以上の一部がホモチロシンで置換され得る。さらに、2つの隣接残基間に1つ以上の非ペプチド結合またはペプチド模倣結合を有するアミノ酸コポリマーは、この定義に含まれる。
用語「疎水性」アミノ酸は、脂肪族アミノ酸アラニン(Aまたはala)、グリシン(Gまたはgly)、イソロイシン(Iまたはile)、ロイシン(Lまたはleu)、メチオニン(Mまたはmet)、プロリン(Pまたはpro)およびバリン(Vまたはval)ならびに芳香族アミノ酸トリプトファン(Wまたはtrp)、フェニルアラニン(Fまたはphe)、およびチロシン(Yまたはtyr)を意味し、括弧内の用語は、各アミノ酸の一文字および三文字の標準的なコード略号である。これらのアミノ酸は、コポリマーまたは他のポリペプチド内に残基として見られる場合は、脂肪族の長さおよび芳香族側鎖の大きさの関数として疎水性を付与する。
用語「荷電した」アミノ酸は、アミノ酸アスパラギン酸(Dまたはasp)、グルタミン酸(Eまたはglu)、アルギニン(Rまたはarg)およびリジン(Kまたはlys)を意味し、これらは、これらのアミノ酸の1つ以上の残基を含有するコポリマーまたは他のアミノ酸組成物の水溶液の生理学的値のpHで、正(lysおよびarg)または負(asp、glu)の電荷を付与する。ヒスチジン(Hまたはhis)は、pH7で疎水性であり、pH6で荷電している。
用語「障害」および「疾患」は包括的に使用され、身体の任意の部分、臓器もしくは系(または任意のその組合せ)の正常な構造または機能からの任意の異常をいう。具体的な疾患は、生物学的、化学的および物理的変化を含む特徴的な症状および徴候によって発現され、しばしば、限定されないが、人口統計学的、環境的、雇用、遺伝的および病歴の因子を含む種々の他の因子と関連している。ある種の特徴的徴候、症状および関連因子は、重要な診断情報をもたらす種々の方法により定量され得る。
用語「予防的」または「治療的」処置は、1つ以上の主題の組成物の望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の被験体への投与をいう。これが、臨床的発現前に投与される場合、処置は予防的である、すなわち、これは、望ましくない状態の発生に対する宿主保護に寄与するが、望ましくない状態の発現後に投与される場合は、処置は治療的である(すなわち、望ましくない状態またはその副作用の進行の低減、改善または抑制ことが意図される)。
用語「治療的効果」は、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、特に哺乳動物、さらに特にヒトにおける局所または全身性効果をいう。該用語は、したがって、動物またはヒトにおける疾患の診断、治癒、軽減、処置もしくは予防または望ましい身体的もしくは精神的発達および状態の増強における使用が意図される任意の物質を意味する。句「治療有効量」は、任意の処置に適用可能な妥当な有益/リスク比でいくらかの望ましい局所または全身性効果を生じるような物質の量を意味する。特定の態様において、化合物の治療有効量は、その治療指数、可溶性などに依存する。例えば、本発明の方法によって見出された特定の化合物は、かかる処置に適用可能な妥当な有益/リスク比を生じるのに充分な量で投与され得る。
用語「有効量」は、適切な用量および計画によって被験体に投与されると望ましい結果を生じる治療的試薬の量をいう。
用語「障害の処置を必要とする被験体」は、該障害を有すると診断された、該障害を発症しやすい、または該障害を有することが疑われる被験体である。
本明細書で使用される用語「抗体」は、例えば、任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgEなど)の抗体全体を含むことが意図され、脊椎動物、例えば哺乳動物のタンパク質とも特異的に反応性であるその断片を含む。抗体は、従来の技術を用いて断片化され得、断片は、有用性および/または目的の特異的エピトープ との相互作用についてスクリーニングされ得る。したがって、該用語は、特定のタンパク質と選択的に反応し得る抗体分子のタンパク質分解的に切断された、または組換えにより作製された部分のセグメントを含む。かかるタンパク質分解的および/または組換え断片の非限定的な例は、Fab、F(ab')2、Fab'、Fv、およびペプチドリンカーによって連結されたV[L]および/またはV[H]ドメインを含有する単鎖抗体(scFv)を含む。ScFvは、共有結合または非共有結合され、2つ以上の結合部位を有する抗体が形成され得る。用語抗体はまた、ポリクローナル、モノクローナルまたは抗体および組換え抗体の他の精製調製物を含む。
用語「T細胞」は、細胞表面マーカーThy1および/またはCD3および/またはCD4および/またはCD8によって表現型的に規定されるリンパ球を意味する。
用語「T調節細胞」は、細胞表面マーカーCD4+FoxP3+、CD25hiの組合せによって表現型的に規定されるリンパ球を意味する。
用語「B細胞」は、任意の成熟段階において細胞表面マーカーB220、CD19、CD20、CD21、CD23、CD24によって表現型的に規定されるリンパ球を意味する。
句「T細胞機能」は、刺激に応答して数を増加させるT細胞の能力を意味する。
句「B細胞機能」は、抗原に対する任意のクラスおよび任意のサブクラスの抗体(IgA、IgD、IgG、IgE、IgM)の産生を意味する。
用語「TH2」は、一般的に、サイトカインIL-4、IL-5、IL-10、IL-13の産生であるT細胞の状態によって規定される。
用語「TH1」一般的に、サイトカインIL-2、TNFα、IFNγの産生であるT細胞の状態で規定される。
用語「中枢寛容(central tolerance)」は、胸腺内での事象、すなわち胸腺内での抗原に反応性のT細胞のクローン除去よって制御される抗原に対する寛容を意味する。抗原に対して高親和性受容体を有する部分活性化されたT細胞は、細胞表面上のFasへのFasLの結合および共発現によって引き起こされるFas媒介アポトーシスによって胸腺内で負の選択およびクローン除去を受ける。対照的に、用語「末梢寛容」は、脾臓におけるクローン除去のないT細胞の活性化誘導細胞死(AICD)および機能的サイレンシング(クローンアネルギー)によるT細胞の除去を意味する。また、ヘルパーT細胞の協働が欠如する場合、B細胞は、おそらく、T細胞依存性抗原に対する応答に「無力」である。末梢寛容は、リンパ節または脾臓または循環系において見られるY505におけるp561ckのリン酸化などのT細胞におけるT細胞内日活性抑制機構を有するが、中枢寛容では、胸腺でのかかるY505でのp561ckリン酸化を示す。中枢および末梢寛容の調節は、p56lckおよびZAP-70のリン酸化によって調節される。これらのタンパク質の重要な残基のリン酸化の(of of)状態および程度により、末梢および中枢寛容に影響するシグナル伝達分子の上方または下方調節がもたらされる。T細胞受容体シグナル伝達の阻害もまた、寛容の誘導において役割を果たす。
本明細書において使用される他の技術用語は、種々の技術辞典に例示されているような、これが使用される当該技術分野におけるその通常の意味を有する。
III. ランダムコポリマー
本発明のランダムコポリマーの組成物は、非常に多数の交差反応性のT細胞エピトープの寄せ集めの特徴を含む。本発明のランダムコポリマーの組成物は、改変されたペプチドリガンドの特徴をさらに含み得る。本発明のランダムコポリマーの組成物の多数の機能的結果が存在する:1つは、MHC分子、好ましくはMHCクラスII 分子の提示によって数千、好ましくは数十万、より好ましくは数百万のT細胞エピトープと機能的に相互作用するという潜在性であるが、別のことは、サイトカインなどの可溶性メディエイタを分泌し得るランダムコポリマー特異的T細胞の生成である。
本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、そのいくつかが病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用するような所定の特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得る。好ましくは、本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、特異的T細胞エピトープ優先的に相互作用し、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る2〜8個のアミノ酸を含むような特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得る。
好ましくは、本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、選択されたアミノ酸および前記アミノ酸の互いに対する比のおかげで、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する2〜8個のアミノ酸を含むような特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得、前記病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、好ましくはペプチド結合を介してランダムに連結された2〜8個のアミノ酸のポリマーを含み、前記病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、好ましくはペプチド結合を介してランダムに連結された3〜5個のポリマーを含み、前記自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
本発明のランダムコポリマーは、グルタミン酸またはアスパラギン酸などの負の電荷を有するアミノ酸(好ましくはより少ない量で)との組合せで、任意に、充填剤としての機能を果たすアラニンまたはグリシンなどの電気的に中性のアミノ酸との組合せで、および任意に、チロシンまたはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸などのコポリマーに免疫原特性を付与するように適合されたアミノ酸とともに適当な量のリジンまたはアルギニンなどの正の電荷のアミノ酸を含み得る。かかる組成物は、その全内容が参照により本明細書に援用されるWO 00/005250に開示された任意のものを含み得る。
4つのアミノ酸を含むコポリマー
本発明の1つの態様において、ランダムコポリマーは、各々、以下の群:(a)リジンおよびアルギニン;(b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;(c)アラニンおよびグリシン;(d)チロシンおよびトリプトファンの異なる1つである4種類の異なるアミノ酸を含有する。
本発明のこの態様による具体的なコポリマーは、組合せで、アラニン、グルタミン酸、リジンおよびチロシンを含み、全体で正味正の電荷を有する。1つの好ましい例は、平均分子量が約4,700〜約13,000ダルトンのコポリマー1(Cop 1)または酢酸グラチラマー(glatiramer)とも称されるYEAKである。好ましいコポリマーは、約2,000〜約40,000ダルトンまたは約2,000〜約13,000ダルトンの分子量を有する。好ましい分子量範囲および好ましい形態のコポリマー1の作製方法は、米国特許第5,800,808号に記載されており、その全内容は、本明細書に援用される。したがって、コポリマーは、約15〜約100、好ましくは約40〜約80アミノ酸長のポリペプチドであり得る。好ましい態様において、コポリマー1の長さは35〜75アミノ酸残基である。より好ましくは、コポリマー1の長さは35〜65アミノ酸残基である。好ましい態様において、コポリマー1の長さは約50アミノ酸である。別の好ましい態様において、コポリマー1の長さは約52アミノ酸である。好ましい態様において、コポリマー1は、以下により詳細に記載する固相化学反応によって合成されるY:E:A:Kについて、それぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比を有する。出力比における変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。
約52アミノ酸残基のコポリマー1の好ましい態様において、アミノ酸31〜52位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸11〜30位においてより大きく、アミノ酸11〜30位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸1〜10位においてより大きい。より具体的には、本発明の好ましい態様は、固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比の組成YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーであり、ここで、該コポリマーは52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比を有し、残基11〜30は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比を有し、残基31〜52は、約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比を有する。
本発明の目的のため、「Cop 1またはCop 1関連ペプチドもしくはポリペプチド」は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)と機能的に交差反応し、抗原提示においてMHCクラスIIに関してMBPと競合し得るランダムコポリマーを含む任意のペプチドまたはポリペプチドを含むこと意図される。コポリマー1は、いくつかの国で、多発性硬化症(MS)の処置のため、商標COPAXONETMで承認されている。COPAXONETMは、Teva Pharmaceuticals Ltd.、Petah Tikva、Israelの登録商標である。コポリマー1は、精製されたMS関連HLA-DR2(DRB1*1501)および慢性関節リウマチ(RA)関連HLA-DR1(DRBI*101)またはHLA-DR4(DRB1*0401)分子に高親和性様式でペプチド特異的様式に結合する。コポリマー1は、ランダムポリペプチドの混合物であるため、異なるHLAタンパク質に結合する異なる配列を含有し得る;この場合、全混合物のうち一画分のみが「活性成分」であり得る。あるいは、全混合物が能力を有し得る、すなわち、すべてのポリペプチドが任意のHLA-DR分子に結合する。
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、炎症サイトカインの異常な産生によって悪化する自己免疫障害と関連する特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介してランダムに連結されたアミノ酸コポリマー1またはYFAKのポリマーを含み、前記自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病、セリアック病、慢性関節リウマチ、ステロイド感受性ネフローゼ症候群、メサンギウム(mesengial)IgAネフロパシー、ナルコレプシー、神経性多発性硬化症、再発性多発性軟骨炎、皮膚障害、例えば、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ベーチェット病、天疱瘡、乾癬、原発性シェーグレン症候群、全身性脈管炎(systemic vasculitides)、紅斑、胃腸障害、例えば、クローン病、呼吸障害、例えば、ソマー型過敏性肺炎、および自己免疫甲状腺 疾患(AITD)と関連する特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、ペプチド結合を介してランダムに連結されたアミノ酸コポリマー1またはYFAKのポリマーを含む。
本発明の別の局面において、ランダムコポリマーは、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKを含む。好ましい態様において、ランダムコポリマーは、それぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比のアミノ酸残基YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)からなり、ここで、XAは11.0より大きく30.0未満であり、出力比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーは、それぞれ約1.0:1.0:XA:6.0のモル出力比のアミノ酸残基YFAKからなり、ここで、XAは5.0より大きく15.0未満であり、出力比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。好ましい態様のランダムコポリマーのYFAKのモル出力比を以下の表Iに示す。
好ましい態様において、任意のかかるコポリマーの長さは35〜75アミノ酸残基である。より好ましくは、ランダムコポリマーの長さは、35〜65アミノ酸残基である。好ましい態様において、ランダムコポリマーの長さは約50アミノ酸である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーの長さは約52アミノ酸である。
本発明の好ましい態様は、以下により詳細に記載する固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比の組成YFAKのランダムコポリマーである。
好ましい態様において、YFAKの平均モル出力比は、約1.0:1.2:XA:6.0であり、ここで、XAは18より大きく、アラニンの比は、コポリマーの長さとともに増大する。好ましい態様において、かかるランダムコポリマーの長さは約52アミノ酸残基であり、アミノ酸31〜52位におけるアラニン組成の比はアミノ酸11〜30位においてより大きく、アミノ酸11〜30位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸1〜10位においてより大きい。より具体的には、本発明の好ましい態様は、固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比の組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーであり、ここで、該コポリマーは、52アミノ酸長を有し、該コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:1.2:16:6のモル出力比を有し、残基11〜30は、約1.0:1.2:18:6のモル出力比を有し、残基31〜52は、約1.0:1.2:20:6のモル出力比を有する。
3つのアミノ酸を含むコポリマー
別の態様において、ランダムコポリマーは、各々が上記の群(a)〜(d)のうちの3つの群の異なる1つに由来する3つの異なるアミノ酸を含む。これらのコポリマーは、本明細書では、「ターポリマー」と称される。平均分子量は、2,000〜約40,000ダルトン、好ましくは約3,000〜約35,000ダルトンである。より好ましい態様において、平均分子量は約5,000〜約25,000ダルトンである。
1つの態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、アラニンおよびリジンを含有し、以下、本明細書においてYAKと命名する。これらのターポリマー中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得る;アラニンは、約0.3〜約0.6のモル分率で存在し得る;およびリジンは、約0.1〜約0.5のモル分率で存在し得る。リジンの代わりにアルギニン、アラニンの代わりにグリシン、および/またはチロシンの代わりにトリプトファンを用いることが可能である。チロシン、アラニンおよびリジンのより好ましいターポリマーまたはYAKのモノマーのモル比は、約0.10対約0.54対約0.35である。例示的なYAK コポリマーは、Fridkis-Hareli M.、Hum Immunol. 2000;61(7):640-50に記載されている。
別の態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、グルタミン酸およびリジンを含有し、以下、本明細書においてYEKと命名する。これらのターポリマー中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る:グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得、リジンは、約0.3〜約0.7のモル分率で存在し得る。グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、リジンの代わりにアルギニン、および/またはチロシンの代わりにトリプトファンを用いることが可能である。グルタミン酸、チロシン、およびリジンのより好ましいターポリマーまたはYEKのモノマーのモル比は、約0.26対約0.16対約0.58である。
別の態様において 本発明における使用のためのターポリマーは、リジン、グルタミン酸およびアラニンを含有し、以下、本明細書においてKEAと命名する。これらのポリペプチド中のアミノ酸の平均モル分率もまた変化し得る。例えば、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、アラニンは、約0.005〜約0.600のモル分率で存在し得、リジンは、約0.2〜約0.7のモル分率で存在し得る。グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、アラニンの代わりにグリシン、および/またはリジンの代わりにアルギニンを用いることが可能である。グルタミン酸、アラニンおよびリジンのより好ましいターポリマーまたはKEAのモノマーのモル比は、約0.15対約0.48対約0.36である。
別の態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、グルタミン酸およびアラニンを含有し、以下、本明細書においてYEAと命名する。これらのポリペプチド中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、アラニンは、約0.005〜約0.800のモル分率で存在し得る。チロシンの代わりにトリプトファン、グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、および/またはアラニンの代わりにグリシンを用いることが可能である。グルタミン酸、アラニンおよびチロシンのより好ましいターポリマーまたはYEAのモノマーのモル比は、約0.21対約0.65対約0.14である。
より好ましい態様において、ターポリマーのアミノ酸のモル分率は、ほぼコポリマー1に好ましいものである。コポリマー1におけるアミノ酸のモル分率は、グルタミン酸約0.14、アラニン約0.43、チロシン約0.10、およびリジン約0.34である。コポリマー1の最も好ましい平均分子量は、約5,000〜約9,000ダルトンである。本明細書に開示された有用性に関するコポリマー1の活性は、以下:グルタミン酸(E)がアスパラギン酸(D)へ、アラニン(A)がグリシン(G)へ、リジン(K)がアルギニン(R)へ、およびチロシン(Y)がトリプトファン(W)への置換の1つ以上が行なわれた場合、残ることが予測される。
MHCクラスIIタンパク質に結合するコポリマー
1つの態様において、本明細書に記載された方法に使用されるコポリマーは、好ましくは自己免疫疾患と関連しているMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。少なくとも3つの型のクラスII MHC分子:HLA-DR、HLA-DQ、およびHLA-DP分子がある。また、これらのHLA分子の各型をコードする対立遺伝子が数多くある。クラスII MHC分子は、主に、Bリンパ球およびマクロファージなどの抗原提示細胞の表面上に発現される。任意の利用可能な方法が、コポリマーが1つ以上のMHCクラスIIタンパク質に結合するかを否かを確認するために使用され得る。例えば、ポリペプチドは、レポーター分子(放射性核種またはビオチンなど)で標識され、MHCクラスIIタンパク質の粗製または精製調製物と混合され得、レポーター分子が未結合ポリペプチドの除去後にMHCクラスIIタンパク質に結合されると、結合が検出される。
別の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるコポリマーは、多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。この態様のポリペプチドは、多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に対して、コポリマー1と類似した、またはより大きな親和性を有し得る。したがって、企図されるポリペプチドは、ミエリン自己抗原の結合を阻害し得るか、またはMHCクラスIIタンパク質から該結合を移動し得る。多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質の1つは、HLA-DR4(DRB1*1501)である。
別の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるランダムコポリマーは、関節炎状態、例えば、慢性関節リウマチまたは変形性関節症と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。この態様のランダムコポリマーは、自己免疫疾患と関連するMHCクラスIIタンパク質抗原結合溝に対してII型コラーゲン261-273ペプチドよりも大きい親和性を有し得る。したがって、YFAKなどの本明細書に記載された企図されるコポリマー1またはランダムコポリマーは、II型コラーゲン261〜273ペプチドの結合を阻害し得るか、またはMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝から該ペプチドを移動し得る。クラスII MHCタンパク質は、ともに膜貫通タンパク質であるほぼ等しいサイズのαおよびβサブユニットからなる。ペプチド結合の裂溝は、αおよびβサブユニット両方のアミノ末端部分によって形成される。このペプチド-結合裂溝は、T細胞への抗原提示部位である。
他の態様において、本発明に使用されるランダムコポリマーは、HLA-DR 分子のペプチド結合溝に結合し得る。MS関連HLA-DR分子へのCop 1の結合モチーフは公知である(Fridkis-Hareli et al、1999、J. Immunol;162(8):4697-704)ため、固定配列のポリペプチドは、容易に調製され、HLA-DR分子ペプチド結合溝への結合について、Fridkis-Hareliに記載のようにして試験され得る。かかるペプチドの例は、WO 00/005249に開示されたものであり、その全内容は、参照により本明細書に援用される。前記出願に具体的に開示されたペプチドのうち32個は、以下のとおりである。
本発明における使用のためのさらなるランダムコポリマー、およびその合成方法は、Shukaliak Quandt、J. et al、2004、Mol. Immunol. 40(14-15):1075-87;Montaudo、M.S.、2004、J. Am. Soc. Mass Spectrom. 15(3):374-84;Takeda、N. et al、2004、J. Control Release 95(2):343-55;Pollino、J.M. et al、2004、J. Am. Chem. Soc. 126(2):563-7;Fridkis- Hareli、M. et al、2002、J. Clin Invest. 109(12):1635-43;Williams、D.M. et al、2000、J. Biol Chem. 275(49):38127-30;Tselios、T. et al.t 2000、Bioorg. Med Chem. 8(8):1903-9;および Cady、CT. et al.、2000、J. Immunol. 165(4):1790-8などの文献に見られ得る。
1つの具体的な態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも7つのアミノ酸残基長を含み、自己免疫疾患と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得、該合成ペプチドは、II型コラーゲン261〜273ペプチドよりも大きな親和性で、MHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に結合し、該合成ペプチドは、アラニン-グルタミン酸-リジン-チロシン-アラニン(AEKYA)、アラニン-グルタミン酸-リジン-バリン-アラニン(AEKVA)、アラニン-グルタミン酸-リジン-フェニルアラニン-アラニン(AEKFA)、アラニン-リジン-チロシン-アラニン-グルタミン酸(AKYAE)、グルタミン酸-アラニン-リジン-チロシン-アラニン(EAKYA)、アラニン-リジン-バリン-アラニン-グルタミン酸(AKVAE)、および グルタミン酸-アラニンリジン-バリン-アラニン(EAKVA)、アラニン-リジン-フェニルアラニン-アラニン-グルタミン酸(AKFAE)、およびグルタミン酸-アラニン-リジン-フェニルアラニン-アラニン(EAKFA)からなる群より選択される配列を含む。
特定の好ましい態様において、本発明のコポリマーは、HLA-DQA1分子に結合し、さらにより好ましくは、対立遺伝子DQA1*0501-DQB1*0201、DQA1*0301、DQB1*0401、およびDQA1*03-DQB1*0302にコードされるHLA分子の1つ以上に結合する。
他の態様において、本発明の方法のコポリマーは、特定のHLA-DQ分子に結合し、この分子は、かかる分子の保有者にI型糖尿病およびセリアック病などの自己免疫関連疾患の素因を与え、解離定数(Kd)は、HLA-DR分子および/または他のDQアイソタイプの結合に対するコポリマーのKdよりも少なくとも10倍小さい。かかるHLA-DQ分子は、DQB1*0201、DQB1*0302、DQB1*0304、DQB1*0401、DQB1*0501、DQB1*0502;およびDQA1*0301、DQA1*0302、DQA1*0303、DQA1*0501として知られる特異的HLA-DQB1ならびにDQA1対立遺伝子の合わせたタンパク質生成物である。これらの対立遺伝子は、DQB1*0201-DQA1*0501-DRB1*0301およびDQB1*0302-DQA1*0301-DRB1*0401などの同じハプロタイプ(「シス」対立遺伝子)にコードされ得る。得られた「シス」対立遺伝子のHLA分子含有ポリペプチド生成物は、本明細書において「シスダイマー」と称される。あるいは、対立遺伝子は、異なるハプロタイプ(「トランス」対立遺伝子)にコードされ得る。「トランス」対立遺伝子のHLA分子含有ポリペプチド生成物は、本明細書において「トランス」ダイマーと称される。「トランス」対立遺伝子の一例は、DQB1*0201-DQA1*0501-DRB1*0301におけるDQB1*0201およびDQB1*0301-DQA1*0301-DRB1*0404におけるDQA1*0301の組合せである。
特定の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるDQ指向コポリマーは、以下の4つの群:(1)疎水性、脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニンなど);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など);(3)小さい親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニンなど);および(4)小さい脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシンなど);の各々からのアミノ酸を含有するランダム化または部分ランダム化アミノ酸配列の混合物であり、さらに、コポリマーはプロリン残基を含有する。1つの態様において、コポリマーは、アミノ酸グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、セリン(S)およびアラニン(A)を用いて誘導され、本明細書において「ELSA」コポリマーと称される。
特定の他の態様において、DQ指向コポリマーは、以下の4つの群:(1)疎水性、脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニンなど);(2)かさ高い疎水性アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニンなど);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など);(3)小さい親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニンなど);および(4)小さい脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシンなど)の各々からのアミノ酸を含有するランダム化または部分ランダム化アミノ酸配列の混合物であり、さらに、コポリマーはプロリン残基を含有する。例示的なコポリマーは、アミノ酸残基グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、チロシン(Y)およびVal(V) を用いて誘導され、本明細書において「DLYV」コポリマーと称される。
1つの態様において、自己免疫疾患の処置方法は、自己免疫疾患と関連するHLA-DQ分子に結合するコポリマーの投与を含む。好ましくは、該処置方法は、(1)疎水性、脂肪族残基(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン);(2)酸性残基(アスパラギン酸、グルタミン酸);(3)小さい親水性残基(セリン、システイン、トレオニン);(4)小さい脂肪族残基(アラニン、グリシン);および(5)プロリンから選択される複数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを含むコポリマーを用いて行なわれる。
好ましい態様において、本発明のコポリマー組成物は、1μM以下の平均Kd、より好ましくは100nM未満、10nMまたは1nMすらの平均Kdで、1つ以上のDQアイソタイプに結合する。好ましいコポリマーを同定するための別の方法は、Sidney et at.、2002、J. Immunol. 169:5098に記載のものなどの競合的結合アッセイにおける別のものへのコポリマーの移動の測定に基づき、これは、IC5O値で示される。本発明の好ましいコポリマーは、1μM未満、より好ましくは500nM未満、さらには100nM未満のIC5Oを有する。
特定の好ましい態様において、コポリマーは、種々のアミノ酸残基のランダム合成(重合)によって形成される。ランダムコポリマーに組み込まれるべきアミノ酸の特定の比が使用され得る。好ましい本発明のランダムコポリマーは、アミノ酸残基K、E、A、S、VおよびPを含む。より好ましくは、K:E:A:S:Vの比は、0.3:0.7:9:0.5:0.5:0.3である。好ましくは、ランダムコポリマーは、約10〜100アミノ酸残基長、より好ましくは20〜80アミノ酸残基長、さらにより好ましくは40〜60アミノ酸残基長、最も好ましくは約50アミノ酸残基長である。合成される場合、ランダムコポリマーの典型的な調製物は、種々の長さのペプチドの混合物であり、その大部分は望ましい長さであるが、現在利用可能な合成方法により不可避的に生成されるより短いまたはより長いペプチドも含有する。
さらに、特定の態様において、コポリマーは、得られるポリマー内に規則的な間隔で生じ、最適なクラスII結合を提供する「アンカー」または固定残基を有する半ランダム(または半規則的)ポリマーであり得る。ペプチド内のアンカー残基は、E、DまたはVであり得る。例えば、コポリマーは、一般配列
の1つを有するように合成され得る。
該ペプチドは、9〜25アミノ酸残基長を有し得る。好ましくは、該ペプチドは13アミノ酸残基長である。9〜25 アミノ酸の定められた長さの配列のペプチドは、2〜20個の固定残基を含有し得る。本発明に記載のペプチドの個々の固定残基は、P1、P4、P7またはP9位のいずれかでクラスII MCH分子のペプチド結合溝(grove)に結合し得る。好ましくは、かかるペプチドは、2または3個の固定残基を含有する。1つの態様において、13アミノ酸の定められた配列長のペプチドは、EもしくはDいずれかまたはその任意の組合せの2個の固定残基を含有する。好ましくは、13アミノ酸の定められた配列長のペプチドは、3個の固定残基を含有する。該ペプチドは、反復単位の数は、好ましくは2〜8の範囲である定められた配列のマルチマーであり得る。より好ましくは、反復単位の数は3〜6である。最も好ましくは、反復単位の数は4である。好ましい態様において、本発明のマルチマーは、EもしくはDいずれかまたはその任意の組合せの2個の固定残基を含有する13アミノ酸の定められた配列長のペプチドを含む。
特定の好ましい態様において、主題のコポリマーは、医薬としての使用のために、25,000未満、より好ましくは10000未満、5000未満、1000未満、500未満、100未満、50未満、または10未満すらの多分散度を有するように製剤化される。
ランダムコポリマーの合成
本発明に使用されるターポリマーおよびランダムコポリマーは、当業者によって利用可能な任意の手順によって作製され得る。例えば、ターポリマーは、縮合条件下で望ましいモル比のアミノ酸を用いて溶液中で、または固相合成手順によって作製され得る。縮合条件としては、1つのアミノ酸のカルボキシル基を、別のアミノ酸のアミノ基と縮合してペプチド結合を形成するための適正な温度、pHおよび溶媒条件が挙げられる。ペプチド結合の形成を容易にするため、縮合剤、例えばジシクロヘキシル-カルボジイミドが使用され得る。ブロック基は、望ましくない副作用に対して、側鎖部分およびいくつかのアミノ基またはカルボキシル基などの官能基を保護するために使用され得る。
例えば、チロシン、アラニン、γ-ベンジルグルタメートおよびN-ε-トリフルオロアセチル-リジンのN-カルボキシ無水物が、開始剤としてのジエチルアミンとともに無水ジオキサン中で、周囲温度で重合される米国特許第3,849,550号に開示された方法が使用され得る。グルタミン酸のγ-カルボキシル基は、氷酢酸中、臭化水素によって脱ブロックされ得る。トリフルオロアセチル基は、1モルのピペリジンによってリジンから除去される。当業者は、該方法が、グルタミン酸、アラニン、チロシンまたはリジンの任意の1つに関する反応を選択的に排除することにより、望ましいアミノ酸、すなわち、コポリマー1の4つのアミノ酸のうち3つを含有するペプチドおよびポリペプチドを作製するために調整され得ることを容易に理解する。本出願の目的のため、用語「周囲温度」および「室温」は、約20〜約26℃の範囲の温度を意味する。
本発明のランダムコポリマーの好ましい合成方法は、固相合成によるものである。合成は、Fmoc保護アミノ酸を使用する固相ペプチド合成(SPPS)アプローチによって多工程で行なわれる。SPPSは、適宜側鎖が保護された保護アミノ酸誘導体のポリマー支持体(ビーズ)への逐次付加に基づく。塩基不安定性Fmoc基がN-保護に使用される。保護基(ピペリジン加水分解により)を除去した後、カップリング試薬(TBTU)を用いて次のアミノ酸混合物が添加される。最後のアミノ酸がカップリングされた後、N末端がアセチル化される。
得られるペプチド(そのC末端を介してポリマー支持体に結合)は、TFAにより切断され、粗製ペプチドが生じる。この切断工程中、すべての側鎖保護基もまた切断される。ジイソプロピルエーテルでの沈殿後、固相を濾過し、乾燥する。得られたペプチドを分析し、2〜8℃で保存する。
固相合成の例
L-アラニン、L-リジン、L-フェニルアラニンおよびL-チロシンからなるランダムコポリマーYFAKを、その保護された形態においてWang樹脂上で調製する。
使用した樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Phe-Wang(0.72mmol/g)、Fmoc-L-Ala- Wang(0.70mmol/g)、およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72mmol/g)であった。4種類のF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-AIa-OH、およびFmoc-L-Lys-OHを、各カップリング工程中、それぞれ1:1:10:6のモル投入比で使用する。合成に使用した他の試薬は、2-(1H-ベンゾトラゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム、テトラフルオロボレート(TBTU)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、およびトリフルオロ酢酸(TFA)である。使用した溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、イソプロパノール(IsOH、IPA、i-PrOH)、塩化メチレン、およびイソプロピルエーテルである。各カップリングの化学量論は、以下のとおり:
・残基1〜10 2当量のFmoc保護アミノ酸を使用;
・残基11〜30 二重カップリングで2当量のFmoc保護アミノ酸を使用;
・残基31〜52 二重カップリングで2.5当量のFmoc保護アミノ酸を使用
である。
漸増的にアラニン含量が高くなるYFAK合成の代表的な例におけるアミノ酸投入比の一例は以下のとおりである。
同様にして、本発明の好ましい態様のランダムコポリマーであるコポリマー1を、その保護された形態においてWang樹脂上で調製する。使用した樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Glu-Wang、Fmoc-L-Ala- Wang(0.70mmol/g)、およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72mmol/g)であった。4種類のF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Glu-OH、Fmoc-L-AIa-OH、およびFmoc-L-Lys-OHを、各カップリング工程中、それぞれ1:2:6:5のモル投入比で使用する。使用した他の試薬およびカップリング化学量論は、YFAKの合成と同様である。
漸増的にアラニン含量が高くなるYFAK合成の代表的な例におけるアミノ酸投入比の一例は以下のとおりである。
非天然ポリペプチドおよびコポリマーの化学的修飾
1つの態様において、本発明のコポリマーは、天然アミノ酸で構成される。他の態様において、コポリマーは、天然および合成誘導体、例えば、セレノシステインで構成される。アミノ酸は、アミノ酸アナログをさらに含む。アミノ酸「アナログ」は、異なる立体配置を有するアミノ酸の化学的に関連する形態、例えば、異性体、またはL-立体配置ではなくD-立体配置、または該アミノ酸と同等の大きさおよび形状を有する有機分子、またはポリペプチドに重合された場合、プロテアーゼ耐性となるようにペプチド結合に関与する原子に修飾を有するアミノ酸である。
本発明における使用のためのコポリマーは、L-もしくはD-アミノ酸またはその混合物で構成され得る。当業者には知られているように、L-アミノ酸は、ほとんどの天然タンパク質中にある。しかしながら、D-アミノ酸は、市販されており、ターポリマーおよび他の本発明のコポリマーを作製するために使用されるアミノ酸のいくつか、またはすべてで置換され得る。本発明では、D-およびL-アミノ酸の両方を含有するコポリマー、ならびに本質的にL-またはD-アミノ酸のいずれかからなるコポリマーが企図される。
特定の態様において、本発明のランダムコポリマーは、異なる化学的部分に置換またはこれを付属させることによりさらに修飾されたかかる線状コポリマーを含む。1つの態様において、かかる修飾は残基の位置であり、被験体において、コポリマーのタンパク質分解的分解を阻害するのに充分な量である。例えば、アミノ酸修飾は、少なくとも1つのプロリン残基の配列中の存在であり得、該残基はカルボキシ末端およびアミノ末端の少なくとも一方に存在し、さらに、プロリンは、カルボキシ末端およびアミノ末端の少なくとも一方の4つの残基内に存在し得る。さらに、アミノ酸修飾は、D-アミノ酸の存在であり得る。
特定の態様において、主題のランダムコポリマーはペプチド模倣物である。ペプチド模倣物は、ペプチドおよびタンパク質に基づく、またはこれらから誘導された化合物である。本発明のコポリマーペプチド模倣物は、典型的に、例えば、非天然アミノ酸、立体配座の拘束、等配電子置換などを用いて、1つ以上の天然アミノ酸残基の構造的修飾によって得られ得る。主題のペプチド模倣物は、ペプチドおよび非ペプチド合成構造間の構造的空間の連続性を構成する。
かかるペプチド模倣物は、加水分解不能(例えば、プロテアーゼまたは対応するペプチドコポリマーを分解する他の生理学的条件に対する増加した安定性)であり、増加した特異性および/または効能のような属性を有し得る。例示の目的のために、本発明のペプチドアナログは、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988参照)、置換γラクタム環(Garvey et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p123)、C−7模倣物(Huffman et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p. 105)、ケト−メチレン偽ペプチド(Ewenson et al.,1986, J. Med. Chem. 29:295; and Ewenson et al. in "Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium)," Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、β−ターンジペプチドコア(Nagai et al., 1985, Tetrahedron Lett. 26:647; and Sato et al., 1986, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1:1231)、β−アミノアルコール(Gordon et al, 1985, Biochem. Biophys. Res. Commun. 126:419; and Dann et al., 1986, Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:71)、ジアミノケトン(Natarajan et al., 1984, Biochem. Biophys. Res. Commun. 124:141)、およびメチレンアミノ修飾物(Roark et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p134)を使用して生成され得る。また、一般にSession III: Analytic and synthetic methods, in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照のこと。
ランダムコポリマーの分子量は、ポリペプチド合成の間またはコポリマーが合成された後に調節され得る。ポリペプチド合成の間に分子量を調節するために、合成条件またはアミノ酸の量は、ポリぺプチドが所望されるおおよその長さに到達したとき合成が停止するように調節される。合成の後、所望の分子量を有するポリペプチドは、分子量サイズ分画カラムまたはゲルによるポリペプチドのクロマトグラフィー等の任意の利用可能なサイズ選択手順、および所望の分子量範囲の回収によって得られ得る。本発明のポリペプチドはまた、例えば、酸加水分解または酵素加水分解によって部分加水分解して高分子量種を除去し、次いで、酸または酵素を除去するために精製され得る。
1つの態様において、所望の分子量を有するランダムコポリマーは、保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させ、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチル−ポリペプチドを形成する工程を含むプロセスによって調製され得る。反応は、1つ以上の試験反応によって前もって決定された時間および温度で実施される。試験反応の間、時間および温度は変化し、試験ポリペプチドの所定のバッチの分子量範囲が決定される。ポリペプチドの該バッチの最適分子量範囲を提供する試験条件は、該バッチに対して使用される。従って、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチル−ポリペプチドは、試験反応によって前もって決定された時間および温度で保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させる工程を含むプロセスによって生成され得る。次いで、所望の分子量プロフィールを有するトリフルロオアセチル−ポリペプチドは、ピペリジン水溶液でさらに処理され、所望の分子量を有する低毒性ポリペプチドを形成する。
1つの好ましい態様において、所定のバッチ由来の保護ポリペプチドの試験試料を、約10〜50時間、約20〜28℃の温度で臭化水素酸と反応させる。該バッチの最良の条件は、いくつかの試験反応を実施することによって決定される。例えば、1つの態様において、保護ポリペプチドを、約17時間、約26℃の温度で臭化水素酸と反応させる。
いくつかの態様において、本発明で使用され得るランダムコポリマーとしては、PCT公報WO 00/05250、WO 00/05249、WO 02/59143、WO 0027417、WO 96/32119に記載されるもの、米国特許公報2004/003888、2002/005546、2003/0004099、2003/0064915および2002/0037848に記載されるもの、米国特許6,514,938, 5,800,808および5,858, 964に記載されるもの、ならびにPCT出願PCT/US05/06822に記載されるものが挙げられる。これらの参考文献は、ランダムコポリマーの合成方法、ランダムコポリマーを含む組成物、ランダムコポリマーの治療製剤、被験体へのランダムコポリマーの投与方法、ランダムコポリマーで治療可能な疾患、およびランダムコポリマーと共に被験体に共投与され得るさらなる治療有効剤をさらに記載する。これらの特許、出願および公開公報全ての教示は、その全体を参照によって本明細書中に援用される。
これは、例示のみによって与えられること、および上記一般的基準が厳守される場合、組成物が構成要素および構成要素の相対的割合の両方に関して変化し得ることは明らかである。
IV.疾患
本発明は、被験体における疾患の治療方法または予防方法を提供する。疾患を発現する危険にある被験体、疾患に罹患していると疑われる被験体、または疾患に罹患している被験体は、本発明によって提供される方法を使用して治療可能な。
1つの態様において、本発明の方法で治療可能な疾患は、T細胞、特にTH1細胞によって媒介される疾患、または過剰の炎症性サイトカインによって悪化される疾患である疾患を含む。本発明の方法は、全身虚血または特に心臓、肺もしくは腎臓の局所虚血によって引き起こされるものを含む、虚血損傷を含む疾患を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、炎症としては、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、トキシックショック症候群、悪液質、壊死、壊疽、人工器官移植物、またはI型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏、抗体媒介性過敏症、免疫複合体媒介性過敏症、Tリンパ球媒介性過敏症、および遅延型過敏を含む過敏症と関連する。他の態様において、疾患は、心筋梗塞、心停止、虚血再灌流障害、うっ血性心不全、心臓毒性、寄生虫感染による心臓損傷、劇症心性アミロイドーシス、心臓手術、心臓移植、外傷性心臓損傷、胸大動脈瘤の手術による回復、副腎動脈瘤、失血による出血性ショック、心筋梗塞または心不全による心臓性ショック、アナフィラキシー、不安定性冠状動脈症候群、頻拍、徐脈、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
1つの態様において、本発明の方法で治療可能な疾患は、自己免疫疾患を含む。本発明により企図される自己免疫疾患は、細胞媒介性疾患(例えば、T細胞)または抗体媒介性(例えば、B細胞)障害のいずれかを含む。かかる障害は、とりわけ、関節炎状態、脱髄疾患および炎症性疾患であり得る。本発明の方法は、多発性硬化症、EAE、視神経炎、急性横断性脊髄炎、および急性播種性脳炎を含む、脱髄炎症性疾患の処置について特に興味深い。1つの特定の態様において、任意の自己免疫疾患は、企図されるポリペプチドが自己免疫疾患と関係のあるMHCクラスIIタンパク質に結合する限り、本発明のポリペプチドによって治療可能な。疾患の進行は、公知の方法を使用して、臨床的症状または診断的症状をモニタリングすることによって測定され得る。
1つの態様において、本明細書中で提供される方法によって処置される疾患は、「関節炎状態」である。本明細書中で使用される場合、関節炎状態は、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状が、哺乳動物の少なくとも1つの関節、例えば、哺乳動物の肩、膝、臀部、背骨または指で観察される状態である。RAは、白人の中で約1%の有病率であり(Harris, B. J. et al, 1997, In Textbook of Rheumatology 898- 932)、現在250万人のアメリカ人が罹患している共通のヒト自己免疫疾患である。RAは、滑膜性の連結の慢性炎症、およびT細胞、マクロファージおよび血漿細胞による浸潤を特徴とし、関節軟骨の進行性破壊を導く。それは、関節疾患の最も重篤な形態である。RAに対する遺伝的感受性は、MHCクラスII DRB1座に、対立遺伝子DRB1*0401、DRB1*0404、もしくはDRB1*0405またはDRB1*0101対立遺伝子を有する罹患した被験体に強く関連する。コラーゲンII型(CII)が有力な候補であるが、RAにおける1つまたは複数の自己抗原の性質は、ほとんど理解されていない。残基261〜273に対応するコラーゲンII型中の免疫優性T細胞エピトープが同定された(Fugger, L. et al., 1996, Eur: J. Immunol. 26: 928-933)。
関節炎状態の他の例としては、1つを超える関節に影響する関節炎状態である「多発性関節炎」;21歳未満のヒトの関節炎状態である「若年性関節炎」;ならびに好中球減少症、巨脾腫症、体重減少、貧血、リンパ節症、および皮膚上の色素斑の症状を含み得るフェルティ症候群が挙げられる。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、多発性硬化症(MS)である。多発性硬化症に対する疾患の進行は、非常に多様であり、予測不可能で、ほとんどの患者において、弛張性である。MSの病理学的特徴は、多中心性かつ多相のCNS炎症および脱髄である。数ヶ月または数年の寛解は、特に、疾患の初期においては、エピソードを分割し(separate)得る。完全なまたは部分的な寛解を伴う急性増悪を特徴とする約70%の患者の再発−寛解(RR)型。残りの患者は、慢性進行性MSを示し、(a)一次進行型(PP)、(b)RRおよびRPの特徴を合わせたパターンであり、臨床的重篤度において中間である再発−進行型(RP)、ならびに(c)RRを有する多くの患者が経時的にそこに進行する二次進行型(SP)にさらに細分化される。特定の好ましい態様において、本方法によって処置される疾患は、再発−寛解多発性硬化症である。
MSの臨床的症状としては、感覚喪失(感覚異常)、運動(痙性の次の筋痙攣)および自律神経性(膀胱、腸、性機能障害)脊髄症状;小脳症状(例えば、構語障害(dysarthna)、運動失調、振せんのシャルコー三徴);疲労およびめまい;神経心理学的試験における情報処理の障害;側方注視の際の複視を含む眼の症状;三叉神経痛;ならびに視神経炎が挙げられる。
MSにおける自己抗原は、間違いなく、いくつかのミエリンタンパク質(例えば、プロテオリピドタンパク質(PLP);ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質(MBOP);シトルリン修飾MBP(6個のアルギニンがシトルリンに脱イミン化されたMBPのC8アイソフォーム)、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase)、α−Bクリスタリン等)の1つである。内在性膜タンパク質PLPは、ミエリンの優性自己抗原である。小グリア細胞およびマクロファージは、抗原提示細胞として共同で働き、サイトカイン、補体、および炎症プロセスの他の調節因子の活性化を生じ、特定の乏突起神経膠細胞およびそれらの膜ミエリンを標的化する。IFN−γを分泌する能力を有するミエリン自己反応性TH1細胞の量的増加は、MSおよびEAEの病因に関連し、MS患者の末梢血中の自己免疫誘導因子/ヘルパーTリンパ球がMSを有する患者において脱ミエリン化プロセスを開始および/または調節し得ることを示唆する。他方、IL−4およびIL−10等の抗炎症性サイトカインを産生するTH2細胞の保護的役割についてさらに詳しい文献がある。細胞のTH1型からTH2型へのバランスの移動は、MSおよびEAE予防および処置に対して利益があると期待される。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、インシュリン依存性糖尿病である。ヒトI型糖尿病、即ち、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)は、膵臓ランゲルハンス島内の細胞の自己免疫破壊を特徴とする。β細胞が枯渇すると、血糖値の調節が不能になる。顕性糖尿病は、血糖値が特定のレベル、通常約250mg/dlを超えて上昇すると、生じる。ヒトにおいて、糖尿病の発症の前に長い症状前期間がある。この期間の間に、膵臓のβ細胞機能が徐々に失われる。疾患の進行は、各々が本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの例である、インシュリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、およびチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在に関係がある。ヒトIDDMは、血糖値をモニタリングして、組換えインシュリンの注射、即ち、ポンプベースの送達を導くことによって現在処置される。食事および運動による療法は、十分な血糖コントロールを達成することに寄与する。
症状前段階の間に評価され得るマーカーは、膵臓におけるインシュリン炎、島細胞抗体のレベルおよび出現率、島細胞表面抗体、膵臓β細胞上のクラスII MHC分子の異常な発現、血中グルコース濃度、およびインシュリンの血漿濃度である。膵臓中のTリンパ球の数、島細胞抗体の数、および血糖の上昇は、インシュリン濃度の減少であるため、該疾患を示す。
血清中の種々の特異性を有する自己抗体の組み合わせの存在は、ヒトI型糖尿病に対して感受性が高くかつ特異的である。例えば、GADおよび/またはIA−2に対する自己抗体の存在は、コントロール血清からI型糖尿病を同定することに対して約98%感受性であり、99%特異性である。I型糖尿病患者の糖尿病でない一等親血縁者において、GAD、インシュリン、およびIA−2を含む3つの自己抗原のうちの2つに対して特異的な自己抗体の存在は、5年以内のI型DMの発現に対して90%を超える正の予想値を示す。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、自己免疫性ブドウ膜網膜炎である。自己免疫性ブドウ膜網膜炎は、40万人が罹患していると推測され、米国で年間4万3千人の新たな患者が発生している眼の自己免疫疾患である。自己免疫性ブドウ膜炎は、ステロイド、メトトレキサートおよびシクロスポリン等の免疫抑制剤、静脈内免疫グロブリン、ならびにTNFα−アンタゴニストで現在処置されている。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)である。EAUは、眼の神経網膜、ブドウ膜、および関連する組織を標的とするT細胞媒介自己免疫疾患である。EAUは、ヒト自己免疫性ブドウ膜網膜炎と多くの臨床的特徴および免疫学的特徴を共有し、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したブドウ膜原性ペプチドの末梢投与によって誘導される。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。PBCは、40〜60歳の女性が主に罹患する器官特異性自己免疫疾患である。この群で報告される有病率は、1000人あたり1人である。PBCは、小肝内胆管の内側を覆う肝内胆管上皮細胞(IBEC)の進行性破壊を特徴とする。これは、胆汁分泌の閉塞および障害を導き、結果として肝硬変を引き起こす。シェーグレン症候群、CREST症候群、自己免疫甲状腺疾患、および慢性関節リウマチを含む、上皮内層/分泌系損傷を特徴とする他の自己免疫疾患との関連が、報告される。
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、セリアックスプルーまたはグルテン感受性腸症としても公知である、セリアック病である。セリアック病は、コムギ、オオムギ、およびカラスムギ中に存在するグルテンまたはその産物であるグリアジンおよびグルテニンを含む穀物貯蔵タンパク質に対する過敏症による胃腸吸収の不全から生じる疾患である。該疾患は、グリアジンを食事抗原として認識するCD4 T細胞によって引き起こされ、これらの細胞は、TH1媒介性慢性炎症性応答を誘導する。症状としては、下痢、体重減少、および脂肪便が挙げられ、絨毛萎縮および吸収不良がみられる。それはまた、疱疹状皮膚炎、小胞性皮疹に関連し得る。セリアック病は、DQA1*0301およびDQA1*0501と組み合わされた対立遺伝子DQB1*0302およびDQB1*0201に関連する。患者の95%は、DQB1*0201またはDQB1*0302のいずれかを保持する。強いHLA関連性は、DQB1*0201、DQA1*0501、DQB1*0302、およびDQA1*0301によってコードされるDQ分子の、グリアジンおよびグルテニンに由来するグルタミンリッチなペプチドの脱アミノ化バリアントを効率的に提示する能力に起因すると考えられている。
別の態様において、被験体において自己免疫疾患を処置する方法は、自己抗原に応答性であるT細胞の増殖または機能を阻害する工程をさらに含む。自己免疫疾患および免疫拒絶の病理学的プロセスは、T細胞によって媒介される。抗原への結合および認識の際に、T細胞は、増殖し、サイトカインを分泌し、部位にさらなる炎症性細胞および細胞傷害性細胞を補充する。
さらに別の態様において、被験体における自己免疫疾患を処置するための本明細書中に記載される方法は、ランダムコポリマーを、自己免疫疾患と関連する主要組織適合性複合体クラスIIタンパク質に結合する工程を含む。クラスII MHCタンパク質は、Bリンパ球、およびマクロファージ等の抗原提示細胞の表面上に主に発現される。これらのクラスII MHCタンパク質は、抗原性ペプチドがT細胞に提示される部位であるペプチド結合溝を有する。本発明のランダムコポリマーが主要組織適合性複合体クラスIIタンパク質を結合する場合、これらのランダムコポリマーは、抗原提示および/またはT細胞活性化をブロックするかまたはそうでなければ干渉し得る。
1つの態様において、本発明の方法によって処置される疾患は、宿主対移植片病(HVGD)または移植片対宿主病(GVHD)である。臓器移植および骨髄再構成等の移植系は、多くの生命を脅かす疾患に対する重要かつ効果的な療法となっている。しかし、免疫拒絶はなお、首尾よい移植に対する大きな障壁である。これは、臓器移植の場合における機能低下および移植片拒絶(宿主対移植片病、即ち、HVGD)により明らかである。病理学的免疫反応性の別の発現は、骨髄受容者の約30%において生じるGVHDである。GVHDを発現する患者の半分までが、このプロセスで死亡し得る。この高い罹患率および死亡率は、GVHDを制御または予防する可能性に対する絶え間ない興味を導いた。臨床病理学的に、2つの形態のGVHDが認識されている。急性GVHDは、骨髄移植後最初の3ヶ月以内に発現し、皮膚、肝臓、および胃腸管の障害を特徴とする。慢性GVHDは、移植後3ヶ月〜3年までに発現する多器官自己免疫様疾患であり、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症のような天然の自己免疫障害と共通する特徴を共有する。本明細書中に記載される方法は、急性GVHDおよび慢性GVHDの両方を処置するために使用され得る。
本明細書中に記載される方法の特定の態様において、コポリマー1またはYFAKランダムコポリマーは、GVHDを発現する全ての場合の臓器移植において、詳細には、胎児胸腺において、より詳細には、同種異系骨髄移植において、GVHDの予防および処置のために使用され得る。適切な移植前処置下の患者に対して、GLATコポリマーは、処置療法において、移植日の2日前から、それから移植日後さらに60〜100日間、少なくとも60日投与され得る。かかる期間の療法は、24、30、36、42、または48時間より長い間隔でのランダムコポリマーの投与を含み得る。シクロスポリン、メトトレキサート、およびプレドニゾン等の他の免疫抑制剤は、コポリマー1コポリマーと共に投与され得る。
本発明の方法はまた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、急性骨髄球性白血病(AML)、および慢性骨髄球性白血病(CML)等の白血病、重症複合型免疫不全症候群(SCID)、大理石骨病、再生不良性貧血、ゴーシェ病、サラセミア、ならびに他の先天性または遺伝的に決定される造血異常または代謝異常を含む、骨髄移植によって治癒できる疾患に罹患する患者における骨髄移植の過程において、GVHDの予防および処置に使用され得る。
別の態様において、本発明の方法は、神経再生を促進するかまたは、例えば、危険なスポーツへの参加によって引き起こされる閉鎖性頭部外傷および鈍的外傷、銃創等の貫通性外傷、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、緑内障、脳虚血、または腫瘍切除等の外科手術によって引き起こされる損傷等の一次神経系損傷の後に続き得る二次変性を予防もしくは阻害するために使用され得る。さらに、かかる組成物は、例えば、糖尿病性神経障害、老年認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、顔面神経(ベル)麻痺、緑内障、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん重積持続状態、非動脈炎症視神経障害、椎間円板ヘルニア、ビタミン欠乏、クロイツフェルトヤコブ病等のプリオン病、手根管症候群、限定されないが尿毒症、ポルフィリン症、低血糖症、シェーグレン‐ラルソン症候群、急性感覚性ニューロパチー、慢性失調性ニューロパチー、胆汁性肝硬変、原発性アミロイドーシス、閉塞性肺疾患、先端巨大症、吸収不良症候群、真性赤血球増加症、IgAおよびIgGガンモパシー(gammapathy)、種々の薬物(例えば、メトロニダゾール)および毒物(例えば、アルコールまたは有機リン酸類)の合併症、シャルコー−マリー−ツース病、毛細血管拡張性運動失調、フリートライヒ運動失調、アミロイド多発性神経障害、副腎脊髄神経障害、巨大軸索ニューロパシー、レフサム病、ファブリー病、リポ蛋白血症等を含む種々の疾患に関連する末梢神経障害を非限定的に含む種々の疾患または障害の結果として、灰白質または白質いずれか(または両方)において生じる変性のような変性プロセスを生じる疾患の影響を改善するために使用され得る。さらに、本発明のランダムコポリマーの投与によって治療可能な他の臨床症状としては、てんかん、健忘症、不安、痛覚過敏、精神病、発作、異常に上昇した眼圧、酸化ストレス、ならびにアヘン耐性および依存症が挙げられる。
特定の態様において、本明細書中に記載される方法によって処置される疾患としては、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性ダンカン病(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン−バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫または大腸炎が挙げられる。いくつかの態様において、被験体は、1つを超える疾患に罹患している。
V.治療組成物
本発明のランダムコポリマーは、薬学的有効量のコポリマーならびに許容され得る担体および/または賦形剤を含む組成物として被験体に投与され得る。薬学的に許容され得る担体としては、生理学的に適合され得る任意の溶媒、分散媒体、またはコーティングが挙げられる。好ましくは、担体は、静脈内、筋内、経口、腹腔内、皮内、経皮、局所または皮下投与に適する。1つの例示的な薬学的に許容され得る担体は、生理食塩水である。他の薬学的に許容され得る担体およびこれらの製剤は、周知であり、一般的に、例えば、Remington 's Pharmaceutical Science (18th Ed., ed. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載される。種々の薬学的に許容される賦形剤は、当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (4th ed., Ed. Rowe et al. Pharmaceutical Press, Washington, D. C)に見出され得る。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、カプセル、錠剤、または他の適切な形態に製剤化される。コポリマーを含む活性成分は、作用の標的部位に到達する前に環境による不活性化から保護するために材料で被覆され得る。本発明の医薬組成物は、好ましくは、送達時に無菌かつ非発熱性であり、好ましくは、製造および保存の条件下で安定である。
本発明の他の態様において、医薬組成物は、調節放出製剤である。本発明のコポリマーは、コポリマーをすぐ近くの環境へ放出する速度を制御する生物学的に適合可能なポリマーまたはマトリクスと混合され得る。制御放出組成物または徐放性組成物は、親油性デポット(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中に製剤を含む。
本発明のいくつかの態様において、医薬組成物は、油中水微小粒子および/またはエマルジョンを形成するために油および乳化剤で製剤化されたランダムコポリマーを含む。油は、ベニバナ油、ダイズ油、コーン油、およびカノーラ油を含む食用植物油または鉱油等の、周囲温度からほぼ体温で液体である任意の非毒性疎水性物質あり得る。ラウリルグリコール等の化学的に定義された油物質もまた、使用され得る。この態様に有用な乳化剤としては、Span20(ソルビタンモノラウレート)およびホスファチジルコリンが挙げられる。いくつかの態様において、ランダムコポリマー組成物は、水溶液として調製され、鉱油等の油:95〜65%およびSpan20等の乳化剤:5〜35%中に分散された油中水エマルジョン中に調製される。本発明の別の態様において、エマルジョンは、油および乳化剤よりはむしろミョウバンで形成される。これらのエマルジョンおよび微小粒子は、ランダムコポリマーの取込み速度を遅くし、制御された抗原送達を達成する。
いくつかの態様において、医薬組成物はまた、さらなる治療活性剤を含む。かかるさらなる成分は、少なくとも、異なるHLA分子に結合するコポリマー1(YEAK、コパキソン(Copaxone)TM)などのさらなるランダムコポリマー、インターロイキン−6、インターロイキン−8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子−α等の不要な炎症性分子またはサイトカインに結合する抗体;プロテアーゼインヒビターアプロチニンまたはシクロオキシゲナーゼインヒビター等の酵素インヒビター;アモキシシリン、リファンピシン、エリスロマイシン等の抗生物質;アシクロビル等の抗ウイルス剤;グルココルチコイド等のステロイド性抗炎症剤;アスピリン、イブプロフェン、もしくはアセトアミノフェン等の非ステロイド性抗炎症剤;またはインターロイキン−4もしくはインターロイキン−10等の非炎症性サイトカインであり得る。インターフェロン−β、腫瘍壊死因子類、抗血管新生因子類、エリトロポエチン類、トロンボポエチン類、インターロイキン類、成熟因子類、走化性タンパク質等の他のサイトカイン類および成長因子類、ならびに同様の生理学的活性を保持するこれらのバリアントおよび誘導体はまた、さらなる成分として使用され得る。
いくつかの態様において、さらなる活性治療活性剤は、抗乾癬クリーム、点眼薬、点鼻薬、スルファサラジン、グルココルチコイド、プロピルチオウラシル、メチマゾール、I131、インシュリン、IFN−β1a、IFN−β1b、グルココルチコイド、ACTH、アボネックス、アザチオプリン、シクロホスファミド、UV−B、PUVA、メトトレキサート、カルシピトリオール(calcipitriol)、シクロホスファミド、OKT3、FK−506、シクロスポリンA、アザチオプリン、およびミコフェノール酸モフェチルからなる群より選択される。
本発明のコポリマーはまた、抗肥満薬との組み合わせで使用され得る。抗肥満薬としては、P−3アゴニスト、CB−1アンタゴニスト、例えば、シブトラミン(メリディア)等の食欲抑制剤、および例えば、オルリスタット(ゼニカル)等のリパーゼインヒビターが挙げられる。主題のコポリマーはまた、本発明の方法において、糖尿病患者の脂質障害を処置するために通常使用される薬物と組み合わせて使用され得る。かかる薬物としては、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、ニコチン酸、胆汁酸金属イオン封鎖剤、およびフィブリン酸誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明のポリペプチドはまた、例えば、β−ブロッカー、カテプシンSインヒビター、およびACEインヒビター等の抗高血圧剤と組み合わせて使用され得る。β−ブロッカーの例としては:アセブトロール、ビソプロロール、エスモロール、プロパノロール、アテノロール、ラベタロール、カルベディロール、およびメトプロロールである。ACEインヒビターの例としては:カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリン、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、トランドプリル、およびモエキシプリルである。
本発明はさらに、(i)ランダムコポリマーを含む組成物および(ii)自己免疫疾患等の疾患の処置のために、該処置を必要とする被験体に、24時間を超える間隔、好ましくは36時間を超える間隔で該組成物を投与するための指示書を含むキットを提供する。1つの態様において、自己免疫障害は、多発性硬化症である。好ましい態様において、ランダムコポリマーは、コポリマー1である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーは、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、約54時間、約60時間、約66時間、約72時間、約78時間、約84時間、約90時間、約96時間、約102時間、約108時間、約114時間、約120時間、約126時間、約132時間、約138時間、約144時間、約150時間、約156時間、約162時間、約168時間、約174時間、約180時間、約186時間、約192時間、約198時間、約204時間、約210時間、約216時間、約222時間、約228時間、約234時間、もしくは約240時間を超えるか、またはこれらの間にある任意の間隔で投与するための用量で製剤化される。本明細書中に記載されるキットの別の態様において、指示書は、ランダムポリマーを、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、約54時間、約60時間、約66時間、約72時間、約78時間、約84時間、約90時間、約96時間、約102時間、約108時間、約114時間、約120時間、約126時間、約132時間、約138時間、約144時間、約150時間、約156時間、約162時間、約168時間、約174時間、約180時間、約186時間、約192時間、約198時間、約204時間、約210時間、約216時間、約222時間、約228時間、約234時間、もしくは約240時間毎に、またはこれらの間の任意の時間毎に投与すべきであることを示す。キットは、包装、および皮下注射器等のコポリマーの投与のための1つ以上の器具等のさらなる構成要素を含む。
特定の態様において、自己免疫疾患は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン−バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および大腸炎からなる群より選択される。
VI.処置方法
本発明の1つの側面は、治療有効量の1つ以上のランダムコポリマーを投与することによって、自己免疫疾患等の疾患に罹患しているまたは罹患していると疑われる被験体を処置する新規方法を提供する。特に、ランダムコポリマー組成物を含む医薬組成物の皮下投与は、本発明の好ましい態様として企図される。皮下注射は、TH2応答に偏ったより望ましい免疫応答を誘導し、これは特定の抗原に対する寛容の基礎である。
T細胞の特異的な活性化は、その抗原レセプター(TCR)を介して生じる。リガンドのTCRへの結合は、レセプター関連srcファミリーPTKp56lckのY394でのリン酸化を誘導するシグナル伝達事象を引き起こし、次に、70kDaの細胞質sykファミリーPTKσ関連タンパク質(ZAP−70)等のSrcホモロジー2(SH2)ドメインを保持するタンパク質に対する結合部位を生成する多くのタンパク質の迅速なチロシンリン酸化を導く。Y319でリン酸化されたZAP−70は、次に、NFkB等の別の下流のシグナル伝達経路の構成要素をリン酸化する。免疫系がその応答を「調律する」1つの方法は、p56lckをY505でリン酸化することである。このリン酸化事象が生じた場合、lckの胸腺でT細胞教育を推進する能力または末梢でT細胞を活性化する能力は低減する。
TCRライゲーションに対する下流の結果は、活性化の部位に依存して大きく異なる。胸腺(中枢免疫系)における高いレベルの抗原特異的シグナル伝達は、T細胞レパートリーの組成および可能な寛容に影響する。脾臓(末梢免疫系)における高いレベルの抗原特異的シグナル伝達は、抗原を保持する細胞を標的とする破壊を導き得る。
末梢応答が望ましくない場合、抗原の無害誘導による免疫系の操作は、抗原に対する寛容を誘導し得る。寛容は、T細胞レパートリーの構造的リモデリングによって中枢的に、またはT細胞レパートリーの状態を変更し、応答の減衰を導くことによって末梢的に、のいずれかで媒介される。
一般的に、本発明の処置方法は、かかる処置を必要とする被験体の免疫調節であって、予防接種と差別化され得る。首尾よい予防接種は、投与されるワクチンの免疫原性に依存し、ワクチン中の抗原に直接的に反応性である抗体の力価を増加させる。対照的に、本発明のランダムコポリマーは、コポリマーそれ自体に対して抗体の高い力価を誘発することなく疾患を処置するのに有効である。以下の実施例に示されるように、本発明の方法の有効性は、コポリマーに対する抗体産生に依存せず、従って、予防接種とは基本的に異なる。予防接種とは違って、本発明の方法によって投与される本発明のランダムコポリマーは、疾患関連抗原に対する寛容を誘導し、より具体的には、末梢性寛容を誘導する。中枢性寛容と対照的に、末梢性寛容は、調節現象としてより安定であるという利点を有する。従って、本発明の1つの側面は、ランダムコポリマーおよび疾患関連抗原に対する末梢性寛容を誘導するように、本発明のランダムコポリマーを含む組成物を投与する方法において具現化される。
一般的に、本発明の態様は、治療効果、例えば症状の軽減を生じるための最低有効用量である適切な用量の治療コポリマー組成物を投与することである。治療コポリマーは、好ましくは、適切な最小開始投薬量として、少なくとも約2mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、もしくは少なくとも約20mg、またはxが1〜20の整数である約xmgの1日あたりの用量に対応する、被験体あたりの用量で投与される。本明細書中に記載される方法の1つの態様において、約0.01〜約500mg/kgの用量が投与され得る。一般的に、本発明の化合物の有効投薬量は、1日あたり被験体1kgあたり約50〜約400μgの化合物である。1つの特定の態様において、用量が投与される頻度にかかわらず、1日あたりの等価投薬量は、約5〜100mg/日、またはより好ましくは、約10〜40mg/日、またはより好ましくは、約20mg/日である。別の特定の態様において、処置療法における各個々の投薬量は、約5〜100mg/用量、またはより好ましくは、約10〜40mg/用量、またはより好ましくは、約20mg/用量である。
しかし、本発明の組成物の用量は、被験体および使用される特定の投与経路に依存して変化することは当業者によって理解される。個々の被験体に適するように投薬量を調節することは、当該分野において常套的である。さらに、有効量は、特に、化合物の大きさ、化合物の生分解性、化合物の生体活性、および化合物のバイオアベイラビリティーに基づき得る。化合物が迅速に分解せず、生物学的に利用可能であり、高度に活性である場合、より少量が、有効であるために必要とされる。被験体に適切な実際の投薬量は、当業者、例えば、一般的な開始点を与えられた医師または獣医によって、常套的な業務として容易に決定され得る。例えば、医師または獣医は、医薬組成物において使用される本発明の化合物の投与を、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりレベル少ないレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで経時的に投薬量を増加させることができる。医師または獣医はまた、一般的開始点としてコパキソンTMの投与のための推奨を参照し得る。
本発明の文脈において、用語「処置療法」は、1つ以上のランダムコポリマーを含む1つ以上の組成物の投与の治療的、緩和的および予防的モダリティを含むことを意味する。特定の処置療法は、特定の疾患または障害の性質、その重篤度および患者の全体的症状に依存して変化し得る期間、続き得、1日に1度、またはより好ましくは、36時間もしくは48時間以上ごとに1度から1ヶ月もしくは数ヶ月に1度にまで延長され得る。処置の後、患者は、症状の変化および障害または疾患状態の症状の軽減についてモニターされる。オリゴヌクレオチドの投薬量は、患者が現在の投薬量レベルに有意に応答しない事象において増加され得るか、あるいは用量は、障害もしくは疾患状態の症状の軽減が観察される場合、または障害もしくは疾患状態が除去された場合、または許容されない副作用が開始投薬量で見られた場合に減少され得る。
1つの態様において、ランダムコポリマーの治療有効量は、投薬量間に少なくとも36時間またはより好ましくは48時間の間隔を含む処置療法において被験体に投与される。別の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、96時間、102時間、108時間、114時間、120時間、126時間、132時間、138時間、144時間、150時間、156時間、162時間、168時間、174時間、180時間、186時間、192時間、198時間、204時間、210時間、216時間、222時間、228時間、234時間、もしくは240時間またはその日数と等価な間隔で投与される。いくつかの態様において、薬剤は、1日おきに投与され、他の態様において、薬剤は、1週間ごとに投与される。2つのコポリマーが被験体に投与される場合、かかるコポリマーは、同時に(simultaneously)等の同時に(at the same time)または連続して等の本質的に同時に投与され得る。あるいは、これらの投与は、変動し得る。例えば、各々48時間ごとに投与される2つのコポリマーは、両方が同じ日に投与され得るか、または交互の様式で一方がある日に投与され得、他方が次の日などに投与され得る。
以下の実施例に示されるように、より長い投薬間隔を有し、結果として、しばしばコポリマーのより少ない全曝露を有する処置療法は、コポリマーそれ自体に対する抗体のより少ない力価を誘導し、一方で、所望の保護効果をなお誘導する。中和抗体のかかる減少は、望ましい、なぜなら中和抗体の減少は、ランダムコポリマー組成物が中和されることなしにその有効性を保持することに役立ちそうであると考えられるからであり、それはアナフィラキシーショックのリスクの減少に関連し、疾患のより安全な処置を提供する。より長い間隔の療法はまた、TH2応答への偏りを強化するため、望ましく、ランダムコポリマー療法に対する作用様式であると考えられる。
他の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも1つの等しくない時間間隔を含む処置療法において投与され、ここで、時間間隔の少なくとも1つは、少なくとも24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、96時間、102時間、108時間、114時間、120時間、126時間、132時間、138時間、144時間、150時間、156時間、162時間、168時間、174時間、180時間、186時間、192時間、198時間、204時間、210時間、216時間、222時間、228時間、234時間、もしくは240時間、またはその日数に等価な間隔である。
1つの態様において、ポリマーは、投与の間に少なくとも2つの時間間隔があるように、処置療法の間に少なくとも3回被験体に投与される。これらの間隔は、I1およびI2で示され得る。ポリマーが4回投与される場合、所定の投与回数「n」に対する間隔の数がn−1であるように、第3と第4の投与の間にさらなる間隔、I3が存在する。従って、1つの態様において、投与の間の少なくとも1つの時間間隔は、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、約54時間、約60時間、約66時間、約72時間、約78時間、約84時間、約90時間、約96時間、約102時間、約108時間、約114時間、約120時間、約126時間、約132時間、約138時間、約144時間、約150時間、約156時間、約162時間、約168時間、約174時間、約180時間、約186時間、約192時間、約198時間、約204時間、約210時間、約216時間、約222時間、約228時間、約234時間、または約240時間より大きい。別の態様において、総数n−1の時間間隔の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%は、少なくとも約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、約54時間、約60時間、約66時間、約72時間、約78時間、約84時間、約90時間、約96時間、約102時間、約108時間、約114時間、約120時間、約126時間、約132時間、約138時間、約144時間、約150時間、約156時間、約162時間、約168時間、約174時間、約180時間、約186時間、約192時間、約198時間、約204時間、約210時間、約216時間、約222時間、約228時間、約234時間、または約240時間である。
さらに別の態様において、投与の間の平均時間間隔((I1+I2+・・・In−1)/n−1)は、少なくとも24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、96時間、102時間、108時間、114時間、120時間、126時間、132時間、138時間、144時間、150時間、156時間、162時間、168時間、174時間、180時間、186時間、192時間、198時間、204時間、210時間、216時間、222時間、228時間、234時間、もしくは240時間、または少なくとも2週間である。
別の態様において、投薬計画は、2つ以上の異なる間隔のセットからなる。例えば、投薬計画の最初の部分は、毎日、1日おき、または2日おきに、例えば、約22mgコポリマー/被験体の体表面積1m2でヒトである被験体に投与される。本発明のいくつかの態様において、投薬計画は、1日おき、2日おき、1週間ごと、2週間ごと、または1ヶ月ごとに被験体に投薬することで開始する。1日おきまたは2日おきの投与のための投薬量は、それぞれ約65mg/m2および約110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投薬を含む投薬計画について、用量は、約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週間ごとまたは1ヶ月ごとの投薬を含む投薬計画について、1.5g/m2までが投与され得る。投薬計画の最初の部分は、30日までの間、例えば、7日間、14日間、21日間、または30日間投与され得る。通常、より低い曝露(ステップダウン投薬)での異なるより長い間隔の投与を伴い、1週間ごと、14日ごと、または1ヶ月ごとに投与される投薬計画の続く第2の部分が、例えば、毎週500mg/体表面積1m2、最大約1.5g/体表面積1m2まで任意に続き得、4週間から2年間まで、例えば、4週間、6週間、8週間、12週間、16週間、26週間、32週間、40週間、52週間、63週間、68週間、78週間、または104週間続く。あるいは、疾患が、寛解に向かうまたは概して改善した場合、投薬量は、最大量より低い投薬量、例えば、毎週140mg/体表面積1m2で維持されるかまたは続けられ得る。ステップダウン投薬計画の間、疾患状態が再発する場合、第1の投薬計画が効果が見られるまで再開され得、第2の投薬計画が、実施され得る。このサイクルは、必要な場合に、複数回繰り返され得る。
より具体的に、本発明の1つの側面は、ランダムコポリマーで治療可能な疾患の処置である。本発明の1つの態様は、それぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0の投入モル量比で固相化学反応によって合成された組成YFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)の52アミノ酸長を有するランダムコポリマーで治療可能な疾患を、1日あたり約22mg/体表面積1m2の用量を含む投薬計画の第1の部分で、処置の必要のあるヒト被験体に該ランダムコポリマーを投与することによって処置するための方法である。本発明のいくつかの態様において、投薬計画は、1日おき、2日おき、1週間ごと、2週間ごと、または1ヶ月ごとに被験体に投薬して開始する。1日おきまたは2日おきの投与のための投薬量は、それぞれ約65mg/m2および約110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投薬を含む投薬計画について、用量は、約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週間ごとまたは1ヶ月ごとの投薬を含む投薬計画について、1.5g/m2まで投与され得る。投薬計画の第1の部分は、30日までの間、例えば、7日間、14日間、21日間、または30日間投与され得る。通常、より低い曝露(ステップダウン投薬量)での異なるより長い間隔の投与を伴い、1週間ごと、14日ごと、または1ヶ月ごとに投与される投薬計画の続く第2の部分が、例えば、500mg/体表面積1m2で1週間ごと、約1.5g/体表面積1m2の最大まで任意に続き得、4週間から2年間まで、例えば、4週間、6週間、8週間、12週間、16週間、26週間、32週間、40週間、52週間、63週間、68週間、78週間、または104週間続く。あるいは、疾患が、寛解または一般的に改善に向かった場合、投薬量は、最大量より低い投薬量、例えば、140mg/体表面積1m2で1週間ごとで維持または続けられ得る。ステップダウン投薬計画の間、疾患状態が再発する場合、第1の投薬計画が効果が見られるまで再開され得、第2の投薬計画が、実施され得る。このサイクルは、必要な場合に、複数回繰り返され得る。
本発明の別の態様において、方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル量比を有し、固相化学反応によって合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためのものである。投薬計画は、上記のYFAKについて記載されたものと類似する。
本発明の別の態様は、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比で固相化学反応によって合成された組成YFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)のランダムコポリマーで治療可能な疾患を、約22mg/体表面積1m2の用量で、毎日または上記のような1日おき、2日おき、1週間ごと、2週間ごと、もしくは1ヶ月ごと等のより長い間隔で、処置の必要のあるヒト被験体に該ランダムコポリマーを投与することによって処置する方法であり、ここで、コポリマーは、52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:1.2:16:6のモル産出量比を有し、残基11〜30は、約1.0:1.2:18:6のモル産出量比を有し、残基31〜52は、約1.0:1.2:20:6のモル産出量比を有する。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、固相化学反応によって合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためのものであり、ここで、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:2.0:5.5:5.0のモル産出量比を有し、残基11〜30は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、残基31〜52は、約1.0:2.0:6.5:5.0のモル産出量比を有する。投薬計画は、上記のものと類似しており、任意にステップダウン投薬量を含み得る。ステップダウン投薬計画の間、疾患状態が再発する場合、第1の投薬計画は、効果が見られるまで再開され得、第2の投薬計画は、実施され得る。このサイクルは、必要な場合に、複数回繰り返され得る。
本発明の別の側面は、それぞれ約1.0:1.0:XA:6.0のモル産出量比の組成YFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)を含むランダムコポリマーで治療可能な疾患を、被験体に該疾患を改善するのに有効な用量を投与することによって改善するための手段として具現化され、ここで、XAは、5.0より大きく15.0より小さい数である。より具体的には、本発明の1つの態様は、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の産出量平均モル比の固相化学反応によって合成された組成YFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)のランダムコポリマーで治療可能な疾患を改善するための手段であり、ここでコポリマーは、52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30は、約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52は、約1.0:1.2:20:6の比を有する。本発明の別の態様において、方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、固相化学反応によって合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためのものであり、ここで、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:2.0:5.5:5.0のモル産出量比を有し、残基11〜30は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、残基31〜52は、約1.0:2.0:6.5:5.0のモル産出量比を有する。ヒトである被験体は、約22mgコポリマー/被験体の体表面積1m2で投薬計画をたどり、処置される。本発明のいくつかの態様において、投薬計画は、1日おき、2日おき、1週間ごと、2週間ごと、または1ヶ月ごとに被験体に投薬して開始する。1日おきまたは2日おきの投与のための投薬量は、それぞれ約65mg/m2および約110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投薬を含む投薬計画について、用量は、約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週間ごとまたは1ヶ月ごとの投薬を含む投薬計画について、1.5g/m2まで投与され得る。投薬計画の第1の部分は、30日までの間、例えば、7日間、14日間、21日間、または30日間投与され得る。通常、より低い露出(ステップダウン投薬量)での異なるより長い間隔の投与を伴い、1週間ごと、14日ごと、または1ヶ月ごとに投与される投薬計画の続く第2の部分が、例えば、500mg/体表面積1m2で1週間ごと、約1.5g/体表面積1m2の最大まで任意に続き得、4週間から2年間まで、例えば、4週間、6週間、8週間、12週間、16週間、26週間、32週間、40週間、52週間、63週間、68週間、78週間、または104週間続く。あるいは、疾患が、寛解または一般的に改善に向かった場合、投薬量は、最大量より低い投薬量、例えば、140mg/体表面積1m2で1週間ごとで維持または続けられ得る。ステップダウン投薬計画の間、疾患状態が再発する場合、第1の投薬計画が効果が見られるまで再開され得、第2の投薬計画が、実施され得る。このサイクルは、必要な場合に、複数回繰り返され得る。
本発明の側面は、それぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル産出量比で組成YFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)を含むランダムコポリマーで該疾患を改善するのに有効な用量を被験体に投与することによって所望されない免疫応答を改善するための手段である。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し固相化学反応によって合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(TEAK)で治療可能な疾患を処置するためのものである。投薬計画は、YFAKについて本明細書中に記載されるものと類似する。両方の型のランダムコポリマーについて、例示的手段は、ヒト被験体に、約22mgランダムコポリマー/体表面積1m2の1日用量を投与することによる。本発明のいくつかの態様において、投薬計画は、1日おき、2日おき、1週間ごと、2週間ごと、または1ヶ月ごとに被験体に投薬して開始する。1日おきまたは2日おきの投与のための投薬量は、それぞれ約65mg/m2および約110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投薬を含む投薬計画について、用量は、約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週間ごとまたは1ヶ月ごとの投薬を含む投薬計画について、1.5g/m2まで投与され得る。投薬計画の第1の部分は、30日までの間、例えば、7日間、14日間、21日間、または30日間投与され得る。通常、より低い曝露(ステップダウン投薬量)での異なるより長い間隔の投与を伴い、1週間ごと、14日ごと、または1ヶ月ごとに投与される投薬計画の続く第2の部分が、例えば、500mg/体表面積1m2で1週間ごと、約1.5g/体表面積1m2の最大まで任意に続き得、4週間から2年間まで、例えば、4週間、6週間、8週間、12週間、16週間、26週間、32週間、40週間、52週間、63週間、68週間、78週間、または104週間続く。あるいは、疾患が、寛解または一般的に改善に向かった場合、投薬量は、最大量より低い投薬量、例えば、140mg/体表面積1m2で1週間ごとで維持または続けられ得る。ステップダウン投薬計画の間、疾患状態が再発する場合、第1の投薬計画が効果が見られるまで再開され得、第2の投薬計画が、実施され得る。このサイクルは、必要な場合に、複数回繰り返され得る。
本発明のさらに別の態様は、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の産出量平均モル比で固相化学反応によって合成された組成TFAK(L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−アラニンおよびL−リジン)のランダムコポリマーで所望されない免疫応答を改善するための手段であり、ここで、コポリマーは、52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30は、約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52は、約1.0:1.2:20:6の比を有する。本発明の別の態様において、方法は、1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、固相化学反応によって合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためのものであり、ここで、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:2.0:5.5:5.0のモル産出量比を有し、残基11〜30は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル産出量比を有し、残基31〜52は、1.0:2.0:6.5:5.0のモル産出量比を有する。投薬計画は、YFAKについて上記したものに類似する。両方の型のランダムコポリマーについて、かかる方法は、ヒト被験体に、約22mgランダムコポリマー/体表面積1m2の1日用量を投与することによって実施され得る。投薬計画は、上記されるものに類似し得、被験体の必要にあわせられ得る。あるいは、ランダムコポリマーは、ヒト被験体に約80mgの最大1日用量で投与され得る。
本発明の別の局面は、固相化学反応により合成され、平均モル出力比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーでTH1表現型を有する不要な免疫応答を改善するための方法であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である方法である。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比である。両方の種類のランダムコポリマーについて、投与計画を被検体のニーズに合わせて決定し得、上述の投与計画と同様にし得る。
本発明のさらに別の局面は、固相化学反応により合成され、平均モル出力比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで被検体における自己免疫反応を改善するための手段であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である手段である。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比である。両方の種類のランダムコポリマーについて、投与計画は被検体のニーズに合わせて、上述の投与計画と同様にし得る。
当該方法および手段のいずれも、この出願に記載される組成物および製剤を用いて実施し得る。
本発明の他の態様において、本発明の方法のいずれも、ランダムコポリマーを含む徐放性製剤を用いて実施し得る。徐放性製剤を用いて本発明のランダムコポリマーを投与する際、コポリマーへの全暴露量は一般にボーラス投与での暴露量よりも低い。例えば、投与計画の前半は、例えば約22mgコポリマー/m2 被検体の体表面積を、毎日、二日毎、または三日毎に被検体に投与し、ここで被検体はヒトである。本発明の一部の態様において、二日毎、三日毎、毎週、二週毎、または毎月、患者に投与する徐放性製剤を投与計画で用いることにより、その間隔にコポリマーが放出される。二日毎または三日毎の投与のための投与量はそれぞれ約35mg/m2および65mg/m2までにし得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画では、投与量は約140mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの二週毎または毎月の投与を含む投与計画では、750mg/m2まで投与し得る。投与計画の前半は、30日間まで、例えば7、14、21、または30日間投与し得る。毎週、14日毎、または毎月投与され、通常は低暴露量で、異なったより長期間隔の投与(ステップダウン(step-down)投与)である、それに続く投与計画の後半を例えば、毎週140mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積で必要に応じて続け得、4週間から二年まで、例えば4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間継続する。あるいは、疾患が小康状態に入るかまたは概して改善する場合、投与量を維持するかまたは、最大量よりも低く、例えば毎週140mg/m2体表面積で続け得る。ステップダウン投与計画中に疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで前半の投与計画を再開し得、それから後半の投与計画を実施し得る。このサイクルは必要に応じて複数回繰り返し得る。
本発明の別の局面は、固相化学反応により合成され、平均モル出力比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで、多発性硬化症(MS)の症状に悩むかまたは示す被検体を処置する手段であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である手段である。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比である。かかるコポリマーを投与して、上記ランダムコポリマーの最大投与量500mgのランダムコポリマーで、MSの症状に悩むかまたは示す被検体を処置し得る。ランダムコポリマーは徐放性製剤中で送達され得る。
固相化学反応により合成され、平均モル出力比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である徐放性製剤で送達される最大投与量500mgの組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで、多発性硬化症に苦しむ被検体を処置する手段であり、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である手段。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比である。あるいは被検体は、徐放性製剤で送達される毎週最大投与量500mgのランダムコポリマーで処置され得る。
上述の例示的な態様のいずれにおいても、各剤形の容量は好ましくは0.1mlから5mlである。
本明細書に記載の方法のある態様において、投与経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下で有り得、静脈内もしくは筋内注射により、吸入、局所、病変内局注、輸液;リポソーム媒介送達;局所、髄腔内、歯肉ポケット、直腸、膣内、気管支内、鼻腔内、経粘膜、腸、眼もしくは耳送達、または当業者が容易に考え得る当該分野で公知のどの他の方法でもあり得る。本発明の組成物の他の態様は、非経口、肺、鼻および経口を含む様々な投与経路のための粒子形態保護皮膜、プロテアーゼ阻害剤または浸透促進剤を組み込む。投与は全身的または局部的であり得る。好ましい態様において、ランダムコポリマーを皮下に投与する。
本発明の方法の態様は、本発明のコポリマーの徐放性形態での投与である。かかる方法は、徐放性経皮パッチを貼布するかまたは徐放性カプセルもしくはコーティングした埋め込み型医療用具を埋め込むことを含むことで、本発明のコポリマーの治療有効量が規定時間間隔でかかる方法の被検体に送達される。主題発明の化合物および/または薬剤は、ランダムコポリマーがある期間にわたり調節放出されるようなカプセルで送達され得る。放出制御または徐放性の組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。また本発明は、ポリマーでコーティングした粒子組成物(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)を含む。特定の態様において、コポリマーの源は自己免疫攻撃の領域内または近傍で、例えば、IDDM治療については膵臓の近くで定位的に提供される。
経口投与では、医薬製剤は液状、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液で有り得るか、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルとともに再構成するための薬物として与え得る。かかる液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水系ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、または分画(fractionated)植物油)、および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)などの、薬学的に許容され得る添加剤とともに従来手段により調製し得る。医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化(pre-gelatinized)コーンスターチ、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの、薬学的に許容され得る賦形剤とともに従来手段により調製した錠剤またはカプセルの形をとり得る。錠剤は当該分野で周知の方法によりコーティングし得る。
コポリマー1または他のランダムコポリマーを経口で導入する際、他の食物形態と混合して、固体、半固体、懸濁液、または乳濁液の形態で摂取し得、また水、懸濁剤、乳化剤、調味料などを含む薬学的に許容され得る担体と混合し得る。ある態様において、経口組成物は腸溶性コーティングをされている。腸溶性コーティングの使用は当該分野で周知である。例えば、Lehman (1971)は、Eudragit SおよびEudragit Lなどの腸溶性コーティングを教示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版もまたEudragit SおよびEudragit L塗布を教示する。本発明で用いられ得るあるEudragitはL30D55である。経口投与のための製剤は、適当に製剤化して活性化合物の放出制御を生じ得る。
口腔内投与では、組成物は従来のやり方で製剤化された錠剤やロゼンジの形をとり得る。組成物は、注入、例えばボーラス注入法または連続輸液による非経口投与のために製剤化され得る。注入用製剤は、単位剤形、例えばアンプル中または複数回投与用容器中で、添加された防腐剤とともに与え得る。組成物は、油性または水性のビヒクル中で懸濁液、溶液または乳濁液などの形をとり得、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に適当なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水での構成のために、粉末形態であり得る。
組成物はまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を含む、坐剤または保留浣腸などの直腸作用性組成物(rectal composition)に製剤化され得る。吸入による投与では、本発明による使用のための組成物は、加圧パックまたは噴霧器から適当な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを用いて、エアゾールスプレーの形で便利に送達される。加圧エアゾールの場合、バルブを備えて定量で送達することにより投与量単位を定め得る。吸入器または注入器での使用のため、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジを、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の混合粉体を含んで製剤化し得る。
好適な態様において、コポリマー1または別のランダムコポリマーを含む組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適合させた医薬組成物として常法により製剤化される。通常は、静脈内投与のための組成物は滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じ、組成物はまた可溶化剤および注入部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含み得る。一般に、成分は別々にまたは一緒に混合して供給される。組成物が輸液により投与される場合、医薬品グレードの滅菌水または滅菌食塩水を含む輸液瓶で、24時間、32時間より長い、または好ましくは36もしくは48時間より長い投与の間隔で投薬し得る。組成物が注入で投与される場合、投与前に成分が混合され得るように注入のための滅菌水または滅菌食塩水のアンプルが提供され得る。
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、活性成分の徐放に適した、経皮パッチ、徐放性製剤をコーティングした埋め込み型医療用具、または埋め込み型もしくは注入用医薬製剤などの徐放性担体による自己免疫疾患の継続的な治療を可能にする。かかる態様において、投与間隔は好ましくは24時間、32時間より長く、またはより好ましくは36または48時間より長い。例えば、コポリマーを2日間にわたり徐放する埋め込み型用具または徐放性製剤を患者に4日毎に埋め込み、コポリマーが被検体に投与されない間隔を2日とし得る。関連した態様において、かかる投与がない間隔は少なくとも24+x時間であり、ここでxは任意の正の整数を示す。
別の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも24時間の時間間隔でランダムコポリマーを必要とする被検体に投与される場合に、治療効果を有するように製剤化される。特定の態様において、ランダムコポリマーは長く持続する治療効果のために製剤化され、ランダムコポリマーが少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234、または240時間の投与間の時間間隔で被検体に投与される場合に、疾患の処置における治療効果がみられる。
本発明の別の態様は、ランダムコポリマーを投与することにより、例えば自己免疫疾患を発症する危険のある被検体を予防的に処置するための方法である。危険のある被検体は、例えば、かかる自己免疫疾患に関連するHLAの対立遺伝子を検査することにより、および/または家族の病歴もしくはかかる自己免疫疾患と相関する他の遺伝マーカーに基づき、自己免疫疾患に対する遺伝的感受性を測定して特定される。かかる予防的治療は、処置する自己免疫疾患と関連する第二のHLA分子に結合する第二のコポリマーをさらに含み得る。第二のHLA分子はHLA-DQまたはHLA-DR分子であり得る。好ましくは、予防的に処置する自己免疫疾患はIDDMまたはセリアック病である。
本明細書に記載される方法の他の態様において、さらなる治療活性剤を被検体に投与する。ある態様において、さらなる治療剤(1つまたは複数)を含む組成物をランダムポリマーを含む組成物とは別の組成物として被検体に投与する。例えば、被検体は、別の治療剤を含む組成物を経口投与され得る一方で、ランダムコポリマーを含む組成物を皮下投与され得る。さらなる治療活性剤は、ランダムコポリマーと同様の疾患、関連の疾患を処置し得るか、または皮内注射部位の腫脹を軽減するなど、コポリマーの投与の好ましくない副作用を処置することを意図し得る。
被検体に投与し得るさらなる治療活性剤としては、コパキソンTMなどの、疾患に関連する第二のHLA分子に結合するコポリマー;抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド抗炎症剤、代謝拮抗物質、サイトカイン、または可溶性サイトカイン受容体が挙げられる。第二のHLA分子はHLA-DQ分子またはHLA-DR分子であり得る。酵素阻害剤はプロテアーゼ阻害剤またはシクロオキシゲナーゼ阻害剤であり得る。さらなる薬剤を、医薬組成物の一部として添加し得るか、または同時にもしくはさらなる薬剤の生理学的効果が本発明のコポリマーの生理学的効果と重複する期間内に投与し得る。より詳細には、さらなる薬剤は、コポリマーの投与と同時に、または一週前、数日前、24時間前、8時間前もしくは直前に投与し得る。あるいは、さらなる薬剤を、コポリマーの投与の一週後、数日後、24時間後、8時間後または直後に投与し得る。
ランダムコポリマーの投与の結果としての、多発性硬化症(MS)に苦しむ被検体の症状の改善は、MSのエピソードの再発頻度の減少により、症状の重症度の軽減により、および投与開始後の一定期間にわたる再発のエピソードの解消により認められ得る。治療的有効量は、好ましくは症状および再発の頻度を、治療していない被検体に対して、少なくとも約20%、例えば、少なくとも約40%、少なくとも約60%、および少なくとも約80%減少するか、または1つまたはそれ以上の症状または自己免疫疾患の再発を約100%解消する。一定期間は少なくとも約1か月、少なくとも約6か月、または少なくとも約1年であり得る。
関節炎、または関節の炎症を生じる任意の他の自己免疫疾患に苦しむ被検体の症状の改善は、1つ以上の関節の浮腫の減少により、1つ以上の関節の炎症の減少により、または1つ以上の関節の可動性の増加により、認められ得る。治療有効量は好ましくは、治療していない被検体に対して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、およびなおさらにより好ましくは少なくとも約80%、関節の炎症および浮腫を減少し、可動性を改善する。
この出願のいずれかの箇所で参照した特許、特許出願、特許公開公報または科学論文の内容は、その全体が本明細書中に援用される。
本発明の実施は、適切であり他に示されない限り、当該分野の知識の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、ウイルス学、組み換えDNAおよび免疫学の従来技術を用いる。かかる技術は、文献に記載される。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、SambrookおよびRussell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 2001); 学術論文、Method In Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.); Using Antibodies, Harlow and Laneによる第2版、 Cold Spring Harbor Press, New York, 1999; Current Protocols in Cell Biology, Bonifacino, Dasso, Lippincott-Schwartz, Harford, およびYamada編、 John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999; ならびに PCR Protocols, Bartlettら編、 Humana Press, 2003; Josehp T. DiPiro, Robert Talbert, Gary, Yee, Gary Matzke, Barbara Wells, およびL. Michael Posey編によるPHARMACOLOGY A Pathophysiologic Approach, 第5版、2002 McGraw Hill; Pathologic Basis of Disease, Ramzi Cotran, Vinay Kumar, Tucker Collins, 第6版、1999, Saundersを参照されたい。