JP5669066B2 - 水分散性のステルスナノ粒子 - Google Patents
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Description
Ed. 2008, 47, 5122-5135(非特許文献2); c) J. Kim, Y. Piao, T. Hyeon, Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 372-390(非特許文献3); d) V. I. Shubayev, T. R. Piasanic, S.
Jin, Advanced Drug Delivery Review 2009, 61, 467-477(非特許文献4)〕。マグネ
タイト(磁鉄鉱、Fe3O4)は、ヒトに対して化学的には無毒なものであることから、例え
ば、薬物や遺伝子デリバリーのキャリアーとしての用途、癌の温熱療法(hyperthermia therapy)における使用、バイオセンサーにおける用途、そして再生移植医療を含む組織工学(tissue engineering)における用途を包含する、Fe3O4の多くの医療用途が提案されて
おり、研究されている〔a) J. Kreuter, Adv. Drug. Deliv. Rev. 2001, 47, 65-81(非
特許文献5); b) J. M. Nam, C. S. Thaxton, D. A. Mirkin, Science 2003, 301, 1884-1886(非特許文献6); c) A. Ito, Y. Kuga, H. Honda, H. Kikkawa, A. Horiuchi, Y.
Watanabe, T. Kobayashi, Cancer Lett. 2004, 212, 167-175(非特許文献7); d) A. Ito, M. Shinlai, H. Honda, T. Kobayashi, J. Biosci. Bioeng. 2005, 100, 1-11(非
特許文献8)〕。
で凝集することなく良好に分散しているようにすることが求められている。加えて、マクロファージを含めた貪食細胞によって捕捉されることがないようにすること、すなわち、ヒトの体内における免疫学的な反応に対してステルス性を有するようにすることが求められている。Fe3O4ナノ粒子は、様々な方法で合成されてきており〔X. Wang, J. Zhuang, Q. Peng, Y. Li, Nature 2005,437, 121-124(非特許文献9)〕、それらの表面の性状は
、リガンド交換法を含めたいくつかの手法で変えることができる〔a) Q. Liu, Z. Xu, Langmuir, 1995, 11, 4617-4622(非特許文献10); b) A. B. Bourlinos, A. Bakandritos,
V. Georgakilas, D. Petridis, Chem. Mater. 2002, 14, 3226-3228(非特許文献11); c) R. Hong, N. O. Fischer, T. Emrick, V. M. Rotello, Chem. Mater. 2005, 17, 4617-4621(非特許文献12); d) S.-W. Kim, S. Kim, J. B. Tracy, A. Jasanoff, M. G. Bawendi, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 4556-4557(非特許文献13); e) D. K. Yi, S. T.
Selvan, S. S. Lee, G. C. Papaefthymiou, D. Kundaliya, J. Y. Ying, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 4990-4991(非特許文献14); f) B.-S. Kim, J.-M. Qiu, J.-P. Wang, T. A. Taton, Nano Lett. 2005, 5, 1987-1991(非特許文献15)〕。
エチレングリコールなどの様々なポリマーでもって酸化鉄のナノ粒子を被覆することが試みられてきた〔a)M. Taupitz, J. Wagner, J. Schonorr, Invest Radiol. 2004, 39, 619-625(非特許文献17); b) T. Neuberger, B. Schopf, H. Hofmann, M. Hofmann, B. Rechenberg, J. Magn. Magn. Mater. 2005, 293, 483-496(非特許文献18); c) M. S. Nikolic, M. Krack, V. Aleksandrovic, A. Kornowski, S. Forster, H. Weller, Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 6557-6580(非特許文献19); d) A. F. Thunemann, D. Schutt, L. Kaufner, U. Pison, H. Mohwald, Langmuir 2006, 22, 2351-2357(非特許文献20)〕。しかしながら、これらの方法では、その個々の方法を適用することが実用上困難であるのに加えて、溶媒間を移動する間の分散液の安定性が問題であった〔R. E. Bailey, S. Nie, in The Chemistry of Nanomaterials: Synthesis, Properties and Application (Eds: C. N. R. Rao, A. Muller, A. K. Cheetham), WILEY-VCH, Weinheim, 2004, pp.405(非特許文献21)〕。
金属酸化物ナノ粒子や金属水酸化物ナノ粒子を合成する手法として、本発明者らのグループは、亜臨界水や超臨界水といった高温高圧水下での水熱合成場を利用する技術を開発している〔特開平4-50105号公報(特許文献1)、特開平6-302421号公報(特許文献2)
、特開2005-194148号公報(特許文献3)、特開2005-21724号公報(特許文献4)、特開2008-162864号公報(特許文献5)など〕。
ナノ粒子などの、好ましくは毒性のない化学物質を使用して、免疫学的応答反応を刺激することのないそして水に分散性であるFe3O4ナノ粒子などの有用ナノ粒子を、ワンステッ
プで合成する技術の開発が求められている。
ナノ粒子は安定して分散状態で維持可能であり、好適に生物医学的な用途に使用できる。
かくして、本発明は、安定な分散水溶液(磁性流体)を形成するナノスケールサイズの磁性ナノ粒子を提供するものである。
本発明では、上記免疫応答回避ナノ粒子、あるいは、単に、ステルスナノ粒子(例えば、ステルス金属酸化物ナノ粒子又はステルス金属水酸化物ナノ粒子)は、ナノ粒子源となる金属イオンなどを含む金属塩(金属錯体を包含する)あるいは金属化合物(配位化合物を包含する)を含有するナノ粒子前駆体溶液を、免疫応答回避能(あるいは生物的なステルス能)を供与する配位子分子の存在下に、高温高圧水環境下、例えば、亜臨界水又は超臨界水中で反応処理に付して合成することができる。本発明の典型的なステルス表面修飾型金属酸化物ナノ粒子やステルス表面修飾型金属水酸化物ナノ粒子においては、コアの単一の粒子である金属酸化物ナノ粒子や金属水酸化物ナノ粒子の構成金属元素と配位子とは、−O−基を介して連結している。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は、安定な分散水溶液(磁性流体)を形成するナノスケールサイズの磁性ナノ粒子を提供する。本発明のステルス表面修飾型ナノ粒子は、その平均直径が、1,000 nmを下回るものであってナノスケールサイズのものであり、代表的には500 nm以下のサイズのもの、典型的には250 nm以下のサイズのもので且つ比較的均一なサイズを有していることを特徴とするものである。ここで比較的均一とは、例えば、平均直径が30 nmであるナノ粒
子と称した場合、25〜35 nmの範囲内の直径を有するナノ粒子が、そのナノ粒子集団の中
で、おおよそ80%以上を占める場合を意味してよいし、ある場合には、おおよそ90%以上を占める場合を意味してよく、好ましい場合では、おおよそ95%以上を占める場合を意味してよい。一つの好ましい具体例では、比較的均一とは、10 nmの範囲内にその直径サイ
ズが収まる粒子の割合が、そのナノ粒子集団の中で、おおよそ80%以上を占める場合を意味してよいし、さらには、おおよそ90%以上を占める場合を意味してよいし、好ましい場合では、おおよそ95%以上を占める場合を意味してよい。
本発明の一つの態様では、当該ステルス表面修飾型ナノ粒子は、その平均直径が、5〜250 nm、好適には8〜200 nm、さらに好適には10〜150 nm、特には12〜100 nmであってよいし、さらに12〜50 nmであってよい。また、本発明の別の一つの態様では、当該ステルス
表面修飾型金属酸化物ナノ粒子は、その平均直径が、5〜40 nm、好適には8〜30 nm、さらに好適には10〜25 nm、特には12〜20 nmである。該ナノ粒子の平均直径は、透過型電子顕
微鏡、走査型電子顕微鏡、X線回折装置などの技術を用いて測定することができる。
本発明のステルス表面修飾型ナノ粒子は、水分散性に優れており、安定な水性分散液を形成できる。
パー細胞、マイクログリア細胞、樹状細胞(dendritic cell)、ランゲルハンス細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満(マスト)細胞、などの免疫系に関与する細胞に対する刺激が、コアナノ粒子(表面非修飾体)と比較して有意に低下していることを意味するものであってもよい。さらに、それは、免疫系に関与する細胞に発現するパターン認識受容体を介する細胞内刺激伝達経路の刺激作用、サイトカイン・ケモカイン類産生作用及び/又はサイトカイン・ケモカイン類産生系刺激作用、コスティミュラトリー分子類発現作用及び/又はコスティミュラトリー分子類発現刺激作用、接着分子類発現作用及び/又は接着分子類発現刺激作用が、コアナノ粒子(表面非修飾体)と比較して有意に低下していることを意味するものであってもよい。
本発明において免疫システムによる捕捉とは、網内系を介しての異物排除作用、例えば、マクロファージの関与する貪食作用を含めたものと理解してもよく、結果として、生体内に導入されたナノ粒子が免疫系に認識され標的細胞・標的組織へ送達できなくなること
を意味してよい。
アルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシアルキル基、カルボアルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基、及びアシルアミノアルキル基からなる群から選択された基を表す〕
を有している化合物が挙げられる。
低級アルキル基あるいはそれ以上の炭素数を有する高級アルキル基であってよいが、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましい。当該低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブ
チル基、n-ペンチル基、neo-ペンチル基などが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基などが好ましい。当該高級アルキル基としては、n-ヘキシル基、2-メチル-1-ブチル基、3-
メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、4-メチル-1-ペンチル基、3-エチル-3-ペンチル基などが挙げられる。Rにおける
カルボアルコキシアルキル基におけるカルボアルコキシ部のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられ、さらに、それらのアルキル部に、
ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボアルコキシ基、フェニル基、p-ニトロフェニル基などからなる群から選択されたものがさらに一個又は複数個置換されているものなどが含まれてよい。Rにおけるアシル基とは、カルボン酸から誘導されるものが挙げ
られ、当該カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アミノ酸、アミノ酸(例えば、天然アミノ酸)などが挙げられる。
を使用できる。DHCAは、ある種の果実や野菜から抽出されるものであり、毒性のない分子と考えられるものである〔S.Kim, S. Bok, S. Lee, H. Kim, M. Lee, Y. B. Park, M. Choi, Toxycol. Appl. Pharmacol. 2005, 208, 29-36〕。
04-50105号公報、特開平6-302421号公報、特開2005-21724号公報、特開2005-194148号公
報、特開2008-162864号公報などに開示があり、その内容は、それらの文献を参照するこ
とにより本明細書の開示に含まれる。例えば、特開平04-50105号公報には、次のような記載がなされている。「金属塩としては、水溶性なら特に限定しないが、IB族金属、IIA族
金属、IIB族金属、IIIA族金属、IIIB族金属、IVA族金属、IVB族金属、VA族金属、VB族金
属、VIB族金属、VIIB族金属、遷移金属等の金属塩が使用できる。例えばCu、Ba、Ca、Zn
、Al、Y、Si、Sn、Zr、Ti、Sb、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、オキシ塩酸塩、燐酸塩、硼酸塩、亜硫酸塩、弗酸塩、酸素酸塩等の無機酸塩及び蟻酸、醋酸、クエン酸、蓚酸、乳酸等の有機酸塩が挙げられる。これらの金属塩は、2種以上組み合わせて使用することも可能である。更にこれらの金属の錯体も使用可能である」。ここで、上記IB族金属とは、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)に基づく元素の周期表では第11
族金属で、以下同様にして、上記IIA族金属とは同第2族金属で、上記IIB族金属とは同第12族金属で、IIIA族金属とは同第3族金属で、IIIB族金属とは同第13族金属で、IVA族金属
とは同第4族金属で、IVB族金属とは同第14族金属で、VA族金属とは同第5族金属で、VB族
金属とは同第15族金属で、VIB族金属とは同第16族金属で、VIIB族金属とは同第17族金属
で、遷移金属とは同第6族〜第10族の金属である。
子としては、金属酸化物を主要な粒子の構成としているものが挙げられ、以下これを「金属酸化物微粒子」と称する。該金属酸化物微粒子に含まれる金属酸化物中の「金属」としては、典型的にはナノ粒子を製造することが可能なものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属としては、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、第VIII族の元素ではFe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、第IB族の元素ではCu, Ag, Auなど、第IIB族の元素ではZn, Cd, Hgなど、第IIIB族の元素ではB, Al, Ga, In, Tlなど、第IVB族の元素ではSi, Ge, Sn, Pbなど、第VB族
の元素ではAs, Sb, Biなど、第VIB族の元素ではTe,Poなど、そして第IIIA〜VIIA族の元素などが挙げられる。金属酸化物としては、Fe, Co, Ni, Cu, Ag, Au, Zn, Cd, Hg, Al, Ga, In, Tl, Si, Ge, Sn, Pb, Ti, Zr, Mn, Eu, Y, Nb, Ce, Baなどの酸化物が挙げられ、
例えば、SiO2, TiO2, ZnO2, SnO2, Al2O3, MnO2, NiO, Eu2O3, Y2O3, Nb2O3, InO, ZnO, Fe2O3, Fe3O4, Co3O4, ZrO2, CeO2, BaO・6Fe2O3, Al5(Y+Tb)3O12, BaTiO3, LiCoO2, LiMn2O4, K2O・6TiO2, AlOOHなどが挙げられる」。ここで、上記長周期型周期表の第IIIB族
とはIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)に基づく元素の周期表では第13族で、以下同様に
、上記第IVB族とは同第14族で、上記第VB族とは、第15族で、上記第VIB族とは同第16族で、上記第VIII族の元素とは同第8族〜第10族の元素で、上記第IB族の元素とは同第11族の
元素で、上記第IIB族の元素とは同第12族の元素で、上記第IIIB族の元素とは同第13族の
元素で、上記第IVB族の元素とは同第14族の元素で、上記第VB族の元素とは同第15族の元
素で、上記第VIB族の元素とは同第16族の元素で、そして上記第IIIA〜VIIA族の元素とは
同第3族〜第7族の元素である。 ナノ粒子は、金属酸化物や金属水酸化物の溶解度が加熱することで低くなるものを使用して形成できることも知られており(例えば、特開2005-21724号公報など参照)、したがって、本発明におけるコアナノ粒子としては、上記した技術で形成できる微粒子に対応するもの、すなわち、金属酸化物ナノ粒子や金属水酸化物ナノ粒子であって、上記免疫応答回避能を供与する配位子と上記強い結合で結合するものを挙げることができる。したがって、好適には、上記で挙げられた元素、すなわち、IUPAC
無機化学命名法改訂版(1989)に基づく元素の周期表で第3族〜第17族の元素、さらに好適
には、第11族金属、第12族金属、第3族金属(ランタノイド、アクチノイドを包含する)
、第13族金属、第4族金属、第14族金属、第5族金属、第15族金属、第16族金属、第17族金属、第6族〜第10族の遷移金属などからなる群から選択された金属の金属酸化物や金属水
酸化物から構成されるものが挙げられる。
磁性金属酸化物ナノ粒子としては、当該分野で磁性金属酸化物あるいは磁性体金属酸化物として知られている群から選択されたものであってよく、典型的には強磁性体として知られたものから好ましく選択されることができる。こうした金属酸化物としては、一般式(3):
≦1の範囲内の正の数である〕で示されるものを挙げることができる。
、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族などの遷移金属元素(希土類元素、ランタノイ
ド、アクチノイドを包含する)などから選択されたものであり、例えば、Mg、Ca、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Sr、Ba、Pbなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用するか、あるいは、二種以上を併用することもできる。そして、三価の金属原子Mbとしては、元素の周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)に基づく)第13族などの典型金属元素、第3族、第8族などの遷移金属元素(希土類元素、ランタノイド、アクチノイドを包含する)など
から選択されたものであり、例えば、Al、Fe、Y、Nd、Sm、Gdなどが挙げられ、これらは
それぞれ単独で使用するか、あるいは、二種以上を組み合わせて併用することもできる。上記式(3)において、三価の金属原子Mbが、三価の鉄である磁性金属酸化物はフェライトとして知られるものである。
マグネタイト: magnetite)を挙げることができるが、γ-酸化鉄(γ-Fe2O3、磁赤鉄鉱、マグヘマイト: maghemite)などであってもよい。ある場合には、酸化鉄は、Fe3O4やγ-Fe2O3といったものの中間体、混合物も許容されてよい。
、Nd、Sm、Gdなどが挙げられる。
の遷移金属元素などから選択されたものであり、例えば、V、Cr、Mn、Snなどが挙げられ
る。上記式(7)及び(8)で示される磁性金属酸化物の具体例としては、例えば、BaSnO3、NiMnO3、CoMnO3、CrO2などが挙げられる。本明細書中の一般式(3)乃至(8)の表示は、金属分析又はX線回折分析、蛍光X線分析、フーリエ変換赤外線分光分析などによる測定により得られた磁性体粒子の組成を意味する。
ここで、共有結合に匹敵する強い結合あるいは共有結合的な結合とは、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis; TGA)により評価され、単なる吸着結合やイオン結合、疎水性
結合、水素結合より強く結合しており、共有結合と同等と評価されるものを意味すると解してよい。
当該一個のコア金属酸化物ナノ粒子(あるいはコア金属水酸化物ナノ粒子)の表面に結合している当該配位子分子の数は、少なくとも一個であるが、それ以上の複数個が結合している場合も包含されるものであり、例えば、2〜10個が結合していてもよく、典型的には2〜8個が結合していてよく、さらには3〜6個が結合しているものであってよく、より具体的には4個が結合しているものが挙げられる。一つの具体的な態様では、当該免疫応答回避表面修飾型ナノ粒子においては、配位子分子の一分子あたり、2個の共有結合でもって、例えば、2個の−O−基を介して、一個のコアナノ粒子の表面に該配位子分子が
結合している。代表的な配位子としては、二座配位子が挙げられ、例えば、カテコール分子の互いにオルト位にある水酸基から導かれる2個の−O−基を介してコアナノ粒子構成金属元素に結合するものが挙げられる。
を有している金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。
には上記で具体的に例示説明した磁性金属酸化物ナノ粒子を挙げることができる。上記式(4)でのRとしては、上記式(1)において説明したものと同様なものが挙げられる。
本発明の一つの具体的態様では、免疫応答回避能を有している表面修飾型金属酸化物ナノ粒子としては、一般式(10):
造を有するものが挙げられる。本発明のさらに別の一つの具体的態様では、免疫応答回避能を有している表面修飾型金属酸化物ナノ粒子としては、一般式(11):
造を有するものが挙げられる。上記式(9)〜(12)において、代表的なコア金属酸化物ナノ粒子としては、Fe3O4ナノ粒子が例示される。
溶液としては、金属酸化物の水性ゾル又は懸濁液、金属水酸化物の水性ゾル又は懸濁液、さらにそれらのスラリーを含有する水性液であってもよいが、好適にはコアナノ粒子を構成する金属酸化物又は金属水酸化物源となる金属イオン又は金属錯体イオンなどを含有している水性溶液を使用できる。当該水性溶液を調製する場合の媒質としては、水であるが、場合によっては、水混和性のある有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ギ酸、酢酸などのカルボン酸類などからなる群から選択されたものを水に添加してある水性混合物を利用することもできる。
金属塩水溶液は、酸又は塩基によって、そのpH値を調整することができる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酸素酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、アセチル酢酸等の有機酸などを挙げることができる。塩基としては、例えば、NaOH、KOH等のア
ルカリ金属水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシメチルアミン等のアミン類などから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。典型的な場合、当該磁性ナノ粒子前駆体液は、例えば、pH7〜12になるように調整されていて
よい。さらに、当該磁性ナノ粒子前駆体液は、その調製を通常空気雰囲気下で行なうことができるが、所望によりN2及びArガス等の不活性ガス下で行なうことも可能である。当該磁性ナノ粒子前駆体液には、所望によりO2ガスなどの酸化性ガス、あるいはH2ガス等の還元性ガスを導入してもよい。さらに、ギ酸などの、当該反応条件で分解して還元性条件を供与するものなどを添加することもできる。当該磁性ナノ粒子前駆体液としては、磁性酸化鉄水性ゾル、金属水酸化物水性ゾルなどの水性ゾル又は懸濁液、スラリー液の状態であるものを使用することもできる。
が、例えば、等モルとすることが適している。また、配位子分子溶液の濃度も厳密に制限されるものではないが、通常約0.0001〜約1M、好ましくは約0.001〜約0.1Mの範囲内が適
当である。各水溶液の添加および混合は撹拌下に室温などの常温で行なうことができ、必要に応じて塩基又は酸を添加してpHを調整することができる。
参考に反応温度・反応圧力を選択できる。具体的には、亜臨界水とは、水の超臨界点よりわずかながら温度及び/又は圧力が低い状態にある水を指しており、例えば、温度でいうと150℃以上の領域から臨界温度374℃までというように、その温度が水の臨界温度より低く、且つ、圧力が水の臨界圧力22MPa又はそれ以上の圧力である領域が挙げられる。
一つの具体的な態様では、反応を行う系(例えば、恒温ゾーンにあるリアクター(反応器))に供給する原料混合物液の圧力を、水の臨界圧力22.12MPa又はそれ以上のもの(例えば、30MPaあるいは35MPaなど)とし、おおよそ150℃にまで加温されたといったように
所定反応温度近傍にまで加熱せしめられた原料混合物液を、反応温度として250℃になる
ように設定されたリアクター(亜臨界水下での反応)に供給あるいは反応温度として390
℃になるように設定されたリアクター(超臨界水下での反応)に供給するといった手法で、反応場である亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件を達成できる。
域、あるいは、250℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、300℃以上の温度から臨界温
度374℃の領域などが挙げられる。もちろん、亜臨界水の領域は、10.0 MPa以上の圧力か
ら臨界圧力22MPaの領域、あるいは、15.0 MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaび領域、あるいは、18.0 MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、あるいは、20.0 MPa以上の圧力か
ら臨界圧力22MPaの領域なども含まれてよい。
本発明の表面修飾型ナノ粒子の形成反応においては、その反応温度としては、例えば、150〜500℃、好ましくは200〜450℃、より好ましくは220〜400℃、さらに好ましくは230
〜360℃であり、その反応圧力としては、例えば、20〜50MPa、好ましくは22〜45MPa、よ
り好ましくは22〜40MPa、さらに好ましくは25〜35MPaである。
本発明の合成法で利用される典型的なフロー型リアクターの概略構成図を、図1に示す。図1に示すように、当該装置は、蒸留水、脱イオン水、あるいは純水を溜めておく水供給源槽(脱イオン水供給槽)から亜臨界水又は超臨界水となる水を供給する水供給路と、ナノ粒子原料であるナノ粒子前駆体溶液(金属塩-配位子分子水溶液など)を供給する原
料供給路を備えており、両供給路は、混合部、すなわち、高温高圧水と高圧ナノ粒子前駆体溶液との会合点(接点、ジャンクション、8)で互いに接続してある。
上記原料供給路(7)には、金属塩と配位子分子を含有する水溶液などの原料液を加圧するための加圧手段、すなわち、高圧ポンプ(6)が設けてある。所望により、原料供給路には、加圧された原料液を所定の温度に加熱するための加熱手段、すなわち、加熱炉を設けておくこともできる。また、修飾剤である配位子分子水溶液を、金属塩水溶液に混合して原料液とする代わりに、別途別の原料供給路を設けて、所定の場所で、反応系に導入するようにしてもよい。
ーレギュレーター(12)を通り、粒子溜、すなわち、生成物受槽(13)へと移動する。
分散化処理と遠心分離処理を繰り返すなどしてナノ粒子を洗浄できる。こうして得られる本発明のナノ粒子は、それ自体既知の方法で乾燥し、例えば、好ましくは凍結乾燥することにより、粉末の形で取得することもできる。
飾型Fe3O4ナノ粒子)は、低毒性のものであることが期待できる。このように本発明の表
面修飾型ナノ粒子は、低毒性である可能性が高いものであると期待される。さらに、本発明の表面修飾型ナノ粒子は、免疫応答回避能(あるいは生物的なステルス能)を有しているか、又は免疫応答回避(あるいは生物的なステルス能)を有していると期待できるものである。また、本発明の表面修飾型ナノ粒子は、生体に投与された場合、半減期(half-life)が比較的長いことが観察されるものである。こうした特徴は、表面が修飾されていな
いナノ粒子(非修飾型ナノ粒子)と比較してのものであってよい。
本発明の免疫応答回避表面修飾型磁性金属酸化物ナノ粒子は、安定した水性分散液を与えるので、いわゆる磁性流体としてメカニカルシール材、磁気クラツチ、磁気インクなどの工業分野に使用することができる。さらに、本発明の免疫応答回避表面修飾型磁性金属酸化物ナノ粒子は、高標的送達性を達成することが期待でき、好ましく、生物学分野および医療分野、例えば、細胞分離、細胞標識剤、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System: DDS)などを含む医療用ナノ粒子、腫瘍の温熱療法剤、鉄補給剤、X線造影剤
、MRI造影剤、血管造影剤、リンパ節造影剤、血流の測定、さらには磁場を利用する局所
への薬物の集中的投与及び/又は生物由来物質の回収又は除去の際の担体等として有用である。
当該ナノ粒子(例えば、金属酸化物ナノ粒子や金属水酸化物ナノ粒子)は、触媒、記憶材料、発光材料、蛍光材料、二次電池用材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料、オプトエレクトロニクス、医薬品、化粧品などの広範な分野での利用が期待できる。本磁性ナノ粒子は、磁性流体、高密度記録材料、医療診断材料など多くの応用が期待される。
FeSO4水溶液(40mM)と3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(DHCA)水溶液(40mM)を等容量で混合して、反応体混合物溶液を調製し、そこに5.0M KOH水溶液を加えて、その溶液のpHを9.5に調整した。こうして調製された混合物溶液を、ナノ粒子前駆体である反応体混合物溶液とした。磁性体ナノ粒子の合成は、フロー型リアクターを使用した。使用したフロー型リアクターの構成を図1に示す。内径1.8mmの直径のSUS 316管を通して高圧ポンプ(日本精密科学(株)、NP-KX-540)でもって、10ml/minの流速で脱イオン水をポンプ送出し、電気炉4で400℃に加熱せしめた。
でポンプ送出せしめられた。高温高圧にされた水と当該ナノ粒子前駆体の反応体混合物溶液とが出会う接点(ジャンクション、8)で両者は混合せしめられ、その反応混合物はおおよそ200〜400℃の高温にせしめられることになる。混合せしめられた流れ(フロー)の温度は、温度センサの熱電対によってモニターした。等温ゾーン9を通した後、得られた反応混合物液は、水冷ジャケットを通過せしめて、室温に急速冷却せしめられた。反応ゾーン中の滞留時間は1.8秒間であった。具体的な反応温度としては、230、260、300、350
、360℃の温度で合成を行った。冷却された生成反応混合物は、0.5mmフィルター(Swegelok, TFシリーズ)を通して濾過処理せしめられて、凝集物を取り除いた後、系の圧力を30MPaに保持するためのバックプレシャーレギュレーター(TESCOM, 26-1700シリーズ)から取り出した。得られた生成物は、遠心処理、デカンテーション処理、0.01M KOH水溶液へ
の再分散化処理からなるサイクルを3度繰り返して洗浄せしめられた。
回収された生成物は、蒸留水中に良好に分散化せしめられるものであり、その水溶液の色は、黒色であった。
上記(1)で合成された無機物質の特性を調べるため、X線回折法(X-ray diffraction; XRD)にかけ、20〜80°の範囲の2θをRIGAKU Ultima IV(RIGAKU,日本)に記録せしめ
た。
図2には、当該生成物のXRDパターンが示してある。その散乱X線パターンのすべては
、それがマグネタイト(magnetite, Fe3O4 JCPDS 86-1354)であると同定されるものであり、230、260、300及び360℃の反応温度で得られたもののその格子定数a=8.42、8.41、8.43及び8.43Åのそれぞれは、報告されたFe3O4の格子定数a=8.432Å〔R. E. Bailey, S. Nie, "The Chemistry of Nanomaterials: Synthesis, Properties and Application" (Eds: C. N. R. Rao, A. Muller, A. K. Cheethan), WILLEY-VCH, Weinheim, 2004, pp. 405
〕と良好な一致をみるものであった。
また、{311}面のピークを使用してシェラーの式(Sherrer's equation)を使用して、
結晶サイズ(crystallite size)を評価した。それぞれ、230、260、300、350℃の反応温度で製造されたFe3O4結晶のサイズは、10.5、13.2、16.2、17.6 nmというものであった。こうした結晶サイズの値は、粉末X線回折法により評価した結晶のサイズとほとんど同じものであり、その合成された粒子が、単一の結晶であることを示すものである。
上記(1)で合成されたFe3O4ナノ粒子の水性媒体への分散性を調べた。水及び食塩水(0.9%NaCl水溶液)に、それぞれ分散せしめられた合成Fe3O4ナノ粒子の分散液1mg/mlの外
観を示す写真を、図3に示す。液は、両者とも良好に分散せしめられているものであった。すなわち、本発明の合成されたFe3O4ナノ粒子は、水や食塩水(0.9%NaCl水溶液)に良好に分散せしめることができるものであった。1ヶ月静置の後でも沈殿や凝集は確認できなかった。
さらに、本発明の製造されたFe3O4ナノ粒子の流体力学的な直径を、動的光散乱法(dynamic light scattering; DLS)法により測定分析して評価した。300℃の反応温度で製造さ
れたFe3O4ナノ粒子についての結果を、図4に示す。そのFe3O4ナノ粒子の流体力学的な直径は、16.2 nmというもので、それはTEM (16.3 nm)やXRD (16.2 nm)により決定された粒
子のサイズとほぼ同様なものであった。これは、当該合成されたナノ粒子が、凝集することなく水の中に分散していることを示唆するものであった。図5には、様々な反応温度で合成されたFe3O4ナノ粒子の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)のイメージを示す。
本発明の生成Fe3O4ナノ粒子が、何故、水に良好な分散性を示すのかを調べるため、そ
の合成されたナノ粒子の表面の特性を調べた。すなわち、Fe3O4上にDHCAが結合している
か否かを確認するために、その合成されたFe3O4ナノ粒子をフーリエ変換赤外分光分析(Fourier Transform Infrared Spectroscopy; FT-IR)にかけ分析し、データを4000〜600cm-1の波長域でFT/IR 680(JASCO Co. Ltd., 日本)に記録せしめた。試料(サンプル)はKBrと一緒に混合粉末化した後、圧縮して、ペレットにせしめた。バックグラウンドスペクトルとしては、純KBrペレットを標準物として用いて測定した。
300℃の反応温度で製造されたFe3O4ナノ粒子のFT-IRスペクトルを図6に示す。そこに
は1484及び1259cm-1にシャープなピークが観察された。これらのピークは、カテコールアニオンを特徴付けるピークであり、それはカテコールアニオンがその金属酸化物の表面に共有結合的に結合していることを示すものである。1627cm-1のシャープなピークは遊離のCOOH基があることを示すものである。もしCOOH基が金属酸化物の表面に結合しているなら、1580cm-1近傍にシャープなピークが観察されよう。しかし、本ナノ粒子では、1580cm-1近傍にはピークは認められない。これは、Fe3O4に結合しているDHCAのCOOH基はすべて、Feイオンに結合しているのではなくて、溶媒側に面していることを示すものである(図7
)。
合成Fe3O4ナノ粒子のゼータポテンシャルを、Zetasizer Nano instrament (Malvern instrument)を使用して測定した。図8には、合成Fe3O4ナノ粒子のゼータポテンシャルを示す。そのゼータポテンシャルはpHの低下と共に徐々に大きくなり、pH4.0で0に達した。
非修飾のFe3O4の等電点は8.00である〔R. E. Bailey, S. Nie, "The Chemistry of Nanomaterials: Synthesis, Properties and Application" (Eds: C. N. R. Rao, A. Muller, A. K. Cheethan), WILLEY-VCH, Weinheim, 2004, pp. 405〕。DHCAのCOOH基のpKaは4.2である〔S. Kim, S. Bok, S. Lee, H. Kim, M. Lee, Y. B. Park, M. Choi, Toxycol. Appl. Pharmacol. 2005, 208, 29-36〕。本合成Fe3O4ナノ粒子の等電点(4.0)は、DHCAのCOOH
基のそれとほぼ同じ値であり、それによりそのCOOH基はそのナノ粒子の表面上に存在していることが示されている。この結果は、上記FT-IRの結果を支持するものであった。
Fe3O4上に結合しているDHCA分子の量を熱重量分析法(thermogravimetric analysis, TGA)により評価した。TG測定は、TGDTA T8120(Rigaku,日本)を使用して行った。測定
はすべて30mL/minのアルゴンの一定流の下で行われた。温度は最初、105℃で30分間保持
して水分を殆んど除去し、ついで10℃/minの速度で800℃まで昇温せしめた。
各サンプルの初期重量は、約5mgとした。測定したTGA曲線はすべて、固体部のみを測定したことを確認するため、105℃での重量に関して正規化処理せしめられた。本合成Fe3O4ナノ粒子の熱重量分析値を図9に示す。280℃でその重量が顕著に低下した。それはDHCA
が離脱または分解したことを示すと考えられる。加えて、すべての合成Fe3O4上におけるDHCAによる被覆度は、約4分子/nm2というものであり、それは反応温度を変えても大きくは変化するものでなかった(表1参照)。表1は、様々な反応温度で合成されたFe3O4ナノ
粒子におけるDHCAの被覆度を評価分析した結果を示す。
超伝導量子干渉型磁束計(Superconducting Quantum Interference Device; SQUID)を使用して、本発明の水分散性の表面修飾型Fe3O4ナノ粒子の磁気的性質を調べた。290K及び5Kで測定された、16.2 nmの直径を持っているナノ粒子の磁化曲線、すなわち、磁化-磁界曲線(M-H曲線)を図10に示す。
290Kの温度では、当該表面修飾型ナノ粒子は、超常磁性(superparamagnetic property)を有していた。一方、5Kの温度では、24.2 emu/gの残留磁束密度と340 Oeの保磁力の
典型的な強磁性ヒステリシス曲線(ferromagnetic hysteresis loop)が観察されるもので
あった。290Kの温度での飽和磁気モーメントは、75.43 emu/gで、5Kの温度での飽和磁気モーメントは、86.67 emu/gである。これらの値は、バルクのマグネタイトで報告され
ている値(理論値92 emu/g、実測値82 emu/g〔D. K. Kim, M. Mikhaylova, Y. Zhang, M.
Muhammed, Chem. Mater. 2003, 15, 1617-1627〕)と殆んど同じであり、これにより、
本発明で合成された表面修飾型Fe3O4ナノ粒子、すなわち、表面修飾型マグネタイトは、
理想的なマグネタイト(磁性体)として機能するものであることが示唆される。
故に、医療用途において使用するのに望ましい性状のものである。
そこで、その合成された表面修飾型Fe3O4ナノ粒子の免疫刺激作用について調べた。
ナノ粒子を体内に導入すると、マクロファージの生体防御作用に影響を与える恐れがある〔G. Bate, Recording Materials, in Handbook of Ferromagnetic Materials, Vol. 2
, Ch. 7 (Ed: E. P. Wohlfarth), North Holland, Amsterdam, 1980, p.381〕。ナノ粒子を導入してマクロファージを刺激すると、貪食作用(phatocytosis)によりそのナノ粒子はマクロファージに取り込まれ、ナノ粒子は血管中を自由に移動することができなくなり、その結果、血中のナノ粒子の半減期寿命が短縮されることになる。それ故に、ナノ粒子を医学用途や生物学的な用途に用いるためには、特にインビボ(in vivo)で、マクロファ
ージをナノ粒子で刺激することを抑制することが求められている。
Forrest, N. M. Davis, Adv. Drug. Deliv. Rev. 2008, 60, 929-938〕。
C57BL/6マウスより得た骨髄(bone, marrow, BM)細胞を、10%FCS,100U/mlペニシリンG
、100μg/mlストレプトマイシンと20ng/mlのマウス顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(murine GM-CSF, Wako, 大阪,日本)を含有している50μM 2-メルカプトエタノール
液を添加したRPMI1640培地10ml中で2×105個/mlで培養した。3日目に、同じ培地をさら
に10ml添加し、6日目にそのGM-CSFを含有する培養培地でもって培地の半分を置き換えた。8日目に非接着性の細胞を集め、BM誘導樹状細胞(BM-DCs)として使用した。
その得られた細胞を0.01〜0.1mg/mlのFe3O4又は合成Fe3O4ナノ粒子と共に1×105個/mlの細胞濃度として5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養した。マウスを使用した
実験は東北大学の倫理委員会により承認されたガイドラインに従って行われた。
が誘導された。これにより、上記で合成されたDHCA表面修飾型Fe3O4ナノ粒子は、免疫学
的な反応を刺激することはないことが示された。
実施例1(1)に記載の方法に従い、DHCAに代えて、カテコール又は4−メチルカテコールを使用して、カテコール又は4−メチルカテコール表面修飾Fe3O4ナノ粒子を合成し
、この得られた表面修飾Fe3O4ナノ粒子について、同様にアッセイした結果を、図12に
示す。
スの樹状細胞が刺激されることがない理由かもしれない。本表面修飾型Fe3O4ナノ粒子は
、血中で長い半減期寿命を有しており、血管中を安定して移動するものであると思われる。つまり、本発明の表面修飾型金属酸化物ナノ粒子が免疫ステルス能あるいは免疫応答回避能を有していることを示している。
ノ粒子は、生体中で安定な金属酸化物ナノ粒子に、安全な配位子分子でもって被覆を施したもので、その上に、標的指向性因子を結合させるなどして、修飾可能であり、それにより、免疫応答回避機能あるいはステルス機能と水溶性(水分散性)、標的細胞や標的組織(例えば、ガン組織、動脈硬化病巣など)へのアクティブ・ターゲッティング機能を賦与したナノ粒子、すなわち、標的細胞指向性ステルスナノ粒子を製造することを可能にする。当該粒子を使用して、免疫細胞、動物アッセイ系で評価可能であり、動物モデルを含め
て、標的組織集積性、標的組織イメージング、磁気温熱療法や中性子捕捉療法などにおいて、研究開発用デバイス、生物医学用薬などとして有用である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
2、6:高圧ポンプ
3:高圧水供給配管
4:加熱炉
5:ナノ粒子前駆体供給源槽(金属塩-配位子分子液供給槽)
7:高圧ナノ粒子前駆体溶液供給配管
8:高温高圧水と高圧ナノ粒子前駆体溶液との会合点(接点、ジャンクション)
9:等温ゾーン(ナノ粒子形成反応ゾーン)
10:水冷ジャケット
11:フィルター(保護フィルター)
12:バックプレシャーレギュレーター
13:生成物(生成物受槽)
14:配管
Claims (8)
- 少なくとも一個又は複数個の免疫応答回避能を供与する配位子が、単一の粒子である金属酸化物ナノ粒子又は金属水酸化物ナノ粒子のコアに、共有結合又は共有結合に匹敵する強い結合で結合しており、且つ、該免疫応答回避能を供与する配位子が、一般式(1):
〔上式中、Rは、一個又は同一あるいは異なるものが複数個存在していてもよく、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシアルキル基、カルボアルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びシアノアルキル基からなる群から選択された基を表す〕
を有している化合物より誘導されたものであり、該ナノ粒子が、免疫応答回避表面修飾型金属酸化物ナノ粒子又は免疫応答回避表面修飾型金属水酸化物ナノ粒子であることを特徴とする表面修飾ナノ粒子。 - 該一般式(1)中のRは、一個又は同一あるいは異なるものが複数個存在していてもよく、水素、アルキル基、及びカルボキシアルキル基からなる群から選択された基を表すものであることを特徴とする請求項1に記載の表面修飾ナノ粒子。
- 表面修飾ナノ粒子が、一般式(9):
〔上式中、CNPは、コア金属酸化物ナノ粒子であり、Rは、一個又は同一あるいは異なるものが複数個存在していてもよく、水素、アルキル基、及びカルボキシアルキル基からなる群から選択された基を表す〕
で表わされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面修飾ナノ粒子。 - 免疫応答回避能を供与する配位子が、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸より誘導されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の表面修飾ナノ粒子。
- 免疫応答回避能を供与する配位子が、カテコールより誘導されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の表面修飾ナノ粒子。
- 免疫応答回避能を供与する配位子が、4-メチルカテコールより誘導されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の表面修飾ナノ粒子。
- コアが、磁性金属酸化物ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の表面修飾ナノ粒子。
- コアが、マグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の表面修飾ナノ粒子。
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