実施の形態1.
本発明は、無線通信の通信装置(ノード)を通信路(リンク)で接続したネットワークにおいて、発信元ノードから宛先ノードに向けて情報を伝送する通信を行う場合に、情報を効率的に伝送するために使用する技術であるネットワークコーディングと時間毎に通信周波数を変化させる周波数ホッピングとを組み合わせて用いることにより、伝送効率を向上させるとともに伝送情報の秘匿性を高めることが可能な技術である。以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1は、この発明が対象とするネットワークモデルの例を示した図である。図1(a)において、10はネットワークモデル、Nは通信装置であるノード、Lは通信路であるリンクである。図において、個々のノードNやリンクLを特定する必要があるときは、N1、L1のように添え字を添えて示す。この発明では、図1(a)のように、各ノードNが、向き付けられたリンクLで互いに結ばれているネットワークを考える。本発明では、複数のノードNの中に一つの発信元ノードNS1(S: Source)と呼ばれる特別なノードがあるものとし、また、複数のノードNの中に一つまたは複数個の宛先ノードNT(T: Target)と呼ばれる特別なノードがあるものとする。
いま、図1(b)に示すように、図1(a)に示すネットワークモデル10に相当する複数のネットワークモデルが集まって、1つのネットワークモデルを形成しているとする。図1(b)に示す、ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nは、それぞれが、図1(a)に示すネットワークモデル10に相当するものである。このように、複数のネットワークモデルを合わせたものをマルチ周波数ネットワークモデル10MF(MF: Multi−Frequency)と呼ぶ。なお、通常は、マルチ周波数ネットワークモデル10MF内においては、ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nの各々で、互いに異なる周波数f1,f2,…,fnを用いる。
従来においては、このように、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_n毎に異なる周波数f1,f2,…,fnが用いられていたが、この発明の本実施の形態1においては、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nにおける各リンクL毎に、互いに異なる周波数を用いることとする。また、その周波数は、各リンクL毎に、互いに異なる周波数変化パタンに基づいて、時刻ごとに順次異なる周波数に変化するものとする。詳細については後述する。
次に、ノードNでの従来の通常のネットワークコーディングの符号化演算手順を、図2および図3について説明する。なお、ここでのノードNとは、発信元ノードNS1から宛先ノードNT1まで情報を伝送する際に、途中の中継ノードとして、符号化演算を施すノードのことである。
図2は、そのような中継ノードとしてのノードNでの符号化演算の手順を示すフロー図である。図2に示すように、発信元ノードNS1から送信された信号が、直接または他の中継ノードNを介して、ノードNに入力されると、当該ノードNは、まず、ステップST11で、入力信号にノードNの符号化行列を乗算し、出力信号を算出する。次に、ステップST12で、算出された出力信号を、各出力リンクLに送信する。この図2の手順について、図3の例を挙げて、さらに詳細に説明する。
図3は、ノードNでの符号化演算を示す図である。図3(a)に示すように、ノードNにおいて、ノードNに入ってくるリンクLの数をh1本、ノードNから出て行くリンクLの数をh2本とする。このとき、h1本のリンクLをそれぞれデータが流れてきて、ノードNに入る。このとき、図3(b)に示すように、ノードNに入ってくるリンクLを流れるデータ(入力信号)をh1次元ベクトルVT2で表し、式(1)の通り、当該h1次元ベクトルVT2(入力信号)に、h2行h1列の行列MT2(符号化行列)を乗算して、h2次元ベクトルVTD2を得る。この処理が、図2のステップST11である。こうして得られたh2次元ベクトルVTD2の成分が、それぞれ、ノードNから出ていくリンクLを流れるデータ(出力信号)になるので、当該h2次元ベクトルVTD2の成分をh2本のリンクLに対し送信する。この処理が、図2のステップST12である。また、従来においては、このときの周波数は、各ネットワークモデル10_1、10_2、…、10_nに対して予め設定されている周波数であり、各リンクにおいては共通であるので、入力信号と同一の周波数で出力を行い、各ノードNにおいて変更するものではない。なお、図3の例では、h1=4(本)、h2=2(本)として、符号化行列MT2を適当な例にとったものを示している。なお、各ノードNの符号化行列は、各ノードN毎に予め設定されているものとする。
今、巡回する経路がネットワークモデル10内にないと仮定すると、図2および図3に示した処理を各ノードNで順々に繰り返し行うことによって、各リンクLを流れるデータが順次決まっていく。
このようにして、発信元ノードNS1から発信されたデータ(受信情報)が、1以上の中継ノードNを介して送信され、発信時に決められた宛先ノードNT1に到達する。宛先ノードNT1では、受信情報を復号化して、発信元ノードNS1からの送信情報を復元する。
次に、従来の通常の周波数ホッピングの手順を図4および図5について説明する。図4は、従来の通常の周波数ホッピングの周波数と時間との関係を示すパタン−時間テーブルFTtab0(F: Frequency, T: Time)を示す図であり、図5は、従来の通常の周波数ホッピングの手順を示すフロー図である。
図4において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8はそれぞれ時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8はそれぞれ周波数1,2,…,8を表わす。図4に示す、テーブルFTtab0において、特定の周波数が使用される時刻がマークされている。例えば、パタン−時間テーブルFTtab0のf8t5がマークされているので、例えば、時刻t5では周波数f8が使用される。同様に、時刻t1では周波数f2、時刻t2では周波数f4、時刻t3では周波数f3、時刻t4では周波数f6、時刻t6では周波数f5、時刻t7では周波数f7、時刻t8では周波数f1が使用される。
従来の通常の周波数ホッピングにおいては、図4に示すように、周波数ホッピングの周波数と時間との関係を示すテーブルFTtab0を予め用意しておき、図5に示すように、まず、ステップST21で、図4のパタン−時間テーブルFTtab0を参照して、現在の時刻に対応する使用周波数を求め、次に、ステップST21で、求めた使用周波数での通信を行う。
従来の通常の周波数ホッピングにおいては、図4に示すように、周波数変化の規則は、発信元ノードから宛先ノードまでのすべてのリンクで共通であり、ある時点でのあるセッションの周波数は同一であるため、ある周波数で長い時間伝送情報を観察していれば、その周波数使用時には伝送情報が見える場合もあるという問題点があった。これに対し、この発明の実施の形態1においては、以下のようにして通信を行う。
この発明の実施の形態1に係る、ノードNでの周波数ホッピングネットワークコーディングの符号化演算および周波数ホッピング手順を、図6、図7、図8、図9について説明する。図6はリンクに周波数変化パタンを付記したネットワーク図、図7は各リンクLのリンク番号と周波数変化パタンとの対応を示すテーブル、図8は周波数変化パタンにおける周波数と時間との関係を示すテーブル、図9は、この発明の実施の形態1における、ノードNでのネットワークコーディングによる符号化演算および周波数ホッピングによる出力周波数決定の手順を示すフロー図である。
図6(a),(b)においては、図1のネットワーク図に示したネットワークモデルにおいて、リンクL1,L2,L3,L4,L5,L6,L7に、それぞれ、周波数変化パタンep1,ep2,ep3,ep1,ep2,ep3,ep1を付記しており、各リンクL1,L2,L3,L4,L5,L6,L7で、それぞれ、これらの周波数変化パタンep1,ep2,ep3,ep1,ep2,ep3,ep1が用いられることを示している。
各リンクL1〜L7と周波数変化パタンep1〜ep3との対応は、図7のリンク−パタン対応表であるリンク−パタン対応テーブルLPtab(L: Link, P: Pattern)に示されている。図7に示すように、対応テーブルLPtabにおいては、各リンクL1〜L7のリンク番号LNoとそれに対して設定された周波数変化パタンのパタン番号PNoとが対応付けられて記憶されている。この対応テーブルLPtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示)等に予め記憶されている。
また、各周波数変化パタンにおいて、各時刻でどの周波数を用いるかは、図8のパタン−時間テーブルPTtab(P: Pattern, T: Time)に、各周波数変化パタン毎に記憶されている。図8において、横軸ATは時刻、縦軸APは周波数変化パタンのパタン番号であり、t1,t2,…,t8はそれぞれ時刻1,2,…,8を表わし、ep1〜ep3,dp1〜dp5は、それぞれ、周波数変化パタンを表わしている。各周波数変化パタンにおける各時刻でどの周波数を用いるかについて、テーブルPTtabの周波数変化パタンep1を例にして、具体的に説明する。テーブルPTtabの周波数変化パタンep1の行をみると、ep1t1がf2になっており、従って、時刻t1では周波数f2が使用されることがわかる。また、同様に、同行のep1t2がf4となっているので、時刻t2では周波数f4が使用されることがわかる。このテーブルPTtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示)等に予め記憶されている。
このように、本実施の形態1においては、図7に示す対応テーブルLPtabと図8に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示)等に記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図9に示すように、まず、ノードNは、ステップST31で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST32で、全出力リンクLの出力信号と周波数とが決定済か否かを判断する。決定済でない場合はステップST33に進み、決定済の場合はステップST36に進む。ステップST33では、図7の対応テーブルLPtabを参照して、当該出力リンクLの周波数変化パタンを求める。ステップST34では、図8のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該出力リンクLの周波数を求める。ステップST35では、当該ノードNの次の出力リンクLを考慮してステップST32に戻る。このようにして、ステップST32〜ST35までの処理を繰り返し、全出力リンクLの出力信号と周波数とが決定されたときに、ステップST36で、各出力リンクLに対し、リンク毎にステップST34で求めた周波数を用いてステップST31で求めた出力信号を送信する。
次に、この発明の本実施の形態1における、周波数と時間との関係を、図10および図11〜図18を用いて説明する。図10は、この発明の実施の形態1における周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図10(a)において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8は、それぞれ、時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8は、それぞれ、周波数1,2,…,8を表わす。図10に示すテーブルFmTtabにおいては、各周波数パタンep1,ep2,ep3,dp1,dp2,dp3,dp4,dp5が使用される時刻が、各々の周波数パタンep1,ep2,ep3,dp1,dp2,dp3,dp4,dp5に付された記号によりマークされている。当該記号については、図10(b)を参照されたい。図10(a)において、例えば、テーブルFmTtabの周波数f8の行では、時刻t1がep2(f8t1)、時刻t2が周波数パタンdp4(f8t2)、時刻t3が周波数パタンdp5(f8t3)、時刻t4が周波数パタンdp3(f8t4)、時刻t5が周波数パタンep1(f8t5)、時刻t6が周波数パタンdp2(f8t6)、時刻t7が周波数パタンep3(f8t7)、時刻t8が周波数パタンdp1(f8t8)であることがわかる。
図10(b)で示されているように、周波数変化パタンep1,ep2,ep3は、図6の各リンクL1〜L7のいずれかで使用されている実効情報EIF用の周波数変化パタンであり、一方、周波数パタンdp1,dp2,dp3,dp4,dp5は、図6で使用されていないダミー情報DIF用の周波数変化パタンである。ダミー情報DIFは、盗聴者を混乱するために挿入する。例えば、盗聴者が、図10の周波数f8を盗聴したとすると、時刻t1,t2,…,t8で、それぞれ、周波数パタンep2,dp4,dp5,dp3,ep1,dp2,ep3,dp1を得る。このうち有効なのは、時刻t1のep2、時刻t5のep1、時刻t7のep3であるが、これらの信号はダミー信号と混在しているため、実効信号を抽出することは困難である。ここで、ダミー情報DIFが実効情報EIFに比べて多ければ、実効信号EIFの抽出は困難になるが、通信資源の利用効率は低くなる。逆に、実効情報EIFがダミー情報DIFに比べて多ければ、通信資源の利用効率は高くなるが、実効信号EIFの抽出は容易になる。従って、この発明の実施の形態1においては、実効情報EIFとダミー情報DIFとの割合を設定する割合設定手段(割合設定ステップ)を各ノードNに備えて、当該割合を変えることにより、伝送効率と秘匿性のトレードオフを選択する。すなわち、使用時の可使用帯域や使用者の秘匿性の要求に基づき、適切な割合を適宜選択する。また、極端な場合として、ダミー情報DIFは全く挿入しなくても、時刻によって周波数パタンを変更するようにしたので、実効情報EIFのみでも盗聴者を混乱する効果は得られる。なお、ダミー情報DIFは、図6のリンクL1〜L7以外の別のリンクを構築して送信する。
図11〜図18は、図10のなかの各周波数変化パタンを抜き出したものである。図11は、図10の内の周波数変化パタンep1を示す図、図12は、図10の内の周波数変化パタンep2を示す図、図13は、図10の内の周波数変化パタンep3を示す図、図14は、図10の内の周波数変化パタンdp1を示す図、図15は、図10の内の周波数変化パタンdp2を示す図、図16は、図10の内の周波数変化パタンdp3を示す図、図17は、図10の内の周波数変化パタンdp4を示す図、図18は、図10の内の周波数変化パタンdp5を示す図である。
図7の対応テーブルLPtabと図11〜図18を併せてみると、リンクL1とL7においては図11の周波数変化パタンで送信を行い、リンクL2とL5においては図12の周波数変化パタンで送信を行い、リンクL3とL6においては図13の周波数変化パタンで送信を行うことがわかる。また、必要に応じて、別のリンクを構築して、図14〜図18の周波数変化パタンの一部または全部を用いて、ダミー情報DIFを送信する。
図19は、従来の通常の周波数ホッピング、従来の通常のネットワークコーディング、この発明の実施の形態1に係る周波数ホッピングネットワークコーディングの比較をまとめたテーブルFHNCtab(FH: Frequency Hopping, NC: Network Coding)を示す図である。図に示すように、通常の周波数ホッピングでは、時間毎に周波数の変更を行うが、中継ノード毎に出力周波数の変更はしない。また、中継ノードでの符号化演算も行わない。また、通常のネットワークコーディングでは、中継ノードでの符号化演算を行うが、時間毎に周波数を変更することはしない。一方、この発明の実施の形態1に係る周波数ホッピングネットワークコーディングでは、中継ノードで符号化演算を行うとともに、各中継ノードで出力リンクおよび現在時刻に対応させて出力周波数を順次変更していく。これにより、ネットワークコーディングの効果による伝送効率向上を実現しながらリンク毎の周波数ホッピングによる盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が向上する。なお、中継ノードでの符号化演算の一例として、入力信号がそのまま出力信号として出力する場合もあり得る。
次に、図20について、この発明の実施の形態1による周波数ホッピングネットワークコーディング方式により、盗聴者に対する秘匿性の向上だけでなく、ネットワークコーディングの伝送効率も向上する可能性が大きいことを示す。
図20は、この発明の実施の形態1による、周波数ホッピングネットワークコーディングの伝送効率向上の様子を示すネットワーク図である。ネットワークコーディングでは、ネットワークトポロジーの構成が複雑になるほどその伝送効率が向上すると一般に言われている。この発明の実施の形態1による、周波数ホッピングネットワークコーディング方式では、図20の10MFbに示すように、複数の周波数の使用により、ネットワークトポロジーの構成が複雑になるので、ネットワークコーディングの効果により、伝送効率も向上する可能性が大きい。
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに出力リンク毎の周波数変換を行い、さらに、ダミー情報も混合することにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が向上するとともに、複数周波数使用によるネットワークトポロジーの複雑化により、ネットワークコーディングの効果による伝送効率向上も実現できる。
なお、上記の説明においては、図6に示すように、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_8間で対応するリンクにおいて共通の周波数変化パタンep1〜ep3を使用する例について説明した。すなわち、ネットワークモデル10_1のリンクL1と、ネットワークモデル10_2のリンクL1と、…、ネットワークモデル10_8のリンクL1とが同じ周波数を用いる例について説明した。しかしながら、その場合に限らず、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_8毎に図7に示す対応テーブルLPtabを別個に作り、ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_8間において、対応するリンクどうしが互いに異なる周波数変化パタンを使用するようにすれば、さらに盗聴が困難となり、盗聴者に対する秘匿性が向上する。また、周波数変化パタンの個数(バリエーション)をさらに増やすようにすれば、さらに、盗聴者に対する秘匿性が向上する。
実施の形態2.
図21は、この発明が対象とするネットワークモデルの他の例を示した図である。図21(a)において、10はネットワークモデル、Nは通信装置であるノード、Lは通信路であるリンクである。図において、個々のノードNやリンクLを特定する必要があるときは、N1、L1のように添え字を添えて示す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、図21(a)のように、各ノードNが、向き付けられたリンクLで互いに結ばれているネットワークを考える。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、複数のノードNの中に一つの発信元ノードNS1(S: Source)と呼ばれる特別なノードがあるものとし、また、複数のノードNの中に一つまたは複数個の宛先ノードNT1,NT2(T: Target)と呼ばれる特別なノードがあるものとする。
いま、図21(b)に示すように、図21(a)に示すネットワークモデル10に相当する複数のネットワークモデルが集まって、1つのマルチ周波数ネットワークモデル10MFを形成しているとする。図21(b)において、ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nは、それぞれが、図21(a)に示すネットワークモデル10に相当するものである。
上記の実施の形態1においては、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nにおける各リンクL毎に互いに異なる周波数を用いていたが、本実施の形態2においては、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nにおける各ノードN毎に、互いに異なる周波数を用いることとする。また、その周波数は、各ノードN毎に、互いに異なる周波数変化パタンに基づいて、時刻ごとに順次異なる周波数に変化するものとする。詳細については後述する。
なお、従来のノードNでの通常のネットワークコーディングの符号化演算手順については、図2および図3について上述した通りであり、従来の通常の周波数ホッピングの手順については、図4および図5について上述した通りであるので、ここでは説明しないが、従来の通常の周波数ホッピングにおいては、図4に示すように、周波数変化の規則は、発信元ノードから宛先ノードまでのすべてのリンクで共通であり、ある時点でのあるセッションの周波数は同一であるため、ある周波数で長い時間伝送情報を観察していれば、その周波数使用時には伝送情報が見える場合もあるという問題点があった。これに対し、この発明の実施の形態2においては、以下のようにして通信を行う。
この発明の実施の形態2に係る、ノードNでの周波数ホッピングネットワークコーディングの符号化演算および周波数ホッピング手順を、図22、図23、図24、図25について説明する。図22はノードにより異なる周波数変化パタンを使用することを示したネットワーク図、図23は各ノードNのノード番号と周波数変化パタンとの対応を示すテーブル、図24は周波数変化パタンにおける周波数と時間との関係を示すテーブル、図25は、この発明の実施の形態2における、ノードNでのネットワークコーディングによる符号化演算および周波数ホッピングによる出力周波数決定の手順を示すフロー図である。
図22(a),(b)においては、図21のネットワーク図に示したネットワークモデルにおいて、ノードNS1,N2,N7(NT2)で、それぞれ、周波数変化パタンep1,ep2,ep7が用いられることを示している。
各ノードNS1,N2,N3,N4,N5,N6(NT1),N7(NT2)と周波数変化パタンep1〜ep7との対応は、図23のノード−パタン対応表であるノード−パタン対応テーブルNPtab(N: Node, P: Pattern)に示されている。図23に示すように、対応テーブルNPtabにおいては、各ノードN1〜N7のリンク番号NNoとそれに対して設定された周波数変化パタンのパタン番号PNoとが対応付けられて記憶されている。この対応テーブルNPtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示)等に予め記憶されているか、あるいはヘッダ等に記載して各ノードに通知される。
また、各周波数変化パタンにおいて、各時刻でどの周波数を用いるかは、図24のパタン−時間テーブルPTtab(P: Pattern, T: Time)に、各周波数変化パタン毎に記憶されている。図24において、横軸ATは時刻、縦軸APは周波数変化パタンのパタン番号であり、t1,t2,…,t8はそれぞれ時刻1,2,…,8を表わし、ep1〜ep8は、それぞれ、周波数変化パタンを表わしている。各周波数変化パタンにおける各時刻でどの周波数を用いるかについて、テーブルPTtabの周波数変化パタンep1を例にして、具体的に説明する。テーブルPTtabの周波数変化パタンep1の行をみると、ep1t1がf2になっており、従って、時刻t1では周波数f2が使用されることがわかる。また、同様に、同行のep1t2がf4となっているので、時刻t2では周波数f4が使用されることがわかる。このテーブルPTtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示していない)等に予め記憶されている。
このように、本実施の形態2においては、図23に示す対応テーブルNPtabと図24に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示していない)等に記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図25に示すように、まず、ノードNは、ステップST41で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST42で、図23の対応テーブルNPtabを参照して、当該ノードNの周波数変化パタンを求める。ステップST43では、図24のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該ノードNの出力周波数を求める。ステップST44で、求めた出力周波数を用いて出力信号を送信する。
次に、この発明の本実施の形態2における、周波数と時間との関係を、図26および図27〜図34を用いて説明する。図26は、この発明の実施の形態2における周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図26(a)において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8は、それぞれ、時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8は、それぞれ、周波数1,2,…,8を表わす。図26に示すテーブルFmTtabにおいては、各周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8が使用される時刻が、各々の周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8に付された記号によりマークされている。当該記号については、図26(b)を参照されたい。図26(a)において、例えば、テーブルFmTtabの周波数f8の行では、時刻t1がep2(f8t1)、時刻t2が周波数パタンep7(f8t2)、時刻t3が周波数パタンep8(f8t3)、時刻t4が周波数パタンep6(f8t4)、時刻t5が周波数パタンep1(f8t5)、時刻t6が周波数パタンep5(f8t6)、時刻t7が周波数パタンep3(f8t7)、時刻t8が周波数パタンep4(f8t8)であることがわかる。
図27〜図34は、図26のなかの各周波数変化パタンを抜き出したものである。図27は、図26の内の周波数変化パタンep1を示す図、図28は、図26の内の周波数変化パタンep2を示す図、図29は、図26の内の周波数変化パタンep3を示す図、図30は、図26の内の周波数変化パタンep4を示す図、図31は、図26の内の周波数変化パタンep5を示す図、図32は、図26の内の周波数変化パタンep6を示す図、図33は、図26の内の周波数変化パタンep7を示す図、図34は、図26の内の周波数変化パタンep8を示す図である。
図35は、図24と図26に対応する図を並べて記したものであり、図24から図34と同様のことを示している。
図23の対応テーブルNPtabと図27〜図34および図35を併せてみると、この実施の形態2においては、全てのノードにおいて異なる周波数パタンで送信を行っている。しかし、ノード間が十分に離れており、干渉を起こさない場合は、同じ周波数パタンを使用してもよい。
図36は、従来の通常の周波数ホッピング、従来の通常のネットワークコーディング、この発明の実施の形態2に係る周波数ホッピングネットワークコーディングの比較をまとめたテーブルFHNCtab(FH: Frequency Hopping, NC: Network Coding)を示す図である。図に示すように、通常の周波数ホッピングでは、時間毎に周波数の変更を行うが、中継ノード毎に出力周波数の変更はしない。また、中継ノードでの符号化演算も行わない。また、通常のネットワークコーディングでは、中継ノードでの符号化演算を行うが、時間毎に周波数を変更することはしない。一方、この発明の実施の形態2に係る周波数ホッピングネットワークコーディングでは、中継ノードで符号化演算を行うとともに、各中継ノードで現在時刻に対応させて出力周波数を順次変更していく。これにより、ネットワークコーディングの効果による伝送効率向上を実現しながらリンク毎の周波数ホッピングによる盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が向上する。なお、中継ノードでの符号化演算の一例として、入力信号がそのまま出力信号として出力する場合もあり得る。
次に、図37について、この発明の実施の形態1による周波数ホッピングネットワークコーディング方式により、盗聴者に対する秘匿性の向上だけでなく、ネットワークコーディングの伝送効率も向上する可能性が大きいことを示す。
図37は、この発明の実施の形態2による、周波数ホッピングネットワークコーディングにおいて、ネットワークモデル10_1のNS1、ネットワークモデル10_2のN3、ネットワークモデル10_nのそれぞれの周辺で、無線の同報性により複数の隣接ノードに送信信号が同時に到達する様子を示すネットワーク図である。ネットワークコーディングでは、無線の同報性を考慮することにより、その伝送効率は一段と向上すると一般に言われている。この発明の実施の形態1による、周波数ホッピングネットワークコーディング方式では、図37の10MFCに示すように、無線の同報性を利用した上に、複数の周波数を使用するので、伝送効率が向上する可能性が大きい。
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行うことにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が向上するとともに、無線の同報性の利用により、ネットワークコーディングの効果による伝送効率向上も実現できる。
実施の形態3.
本実施の形態においては、対象とするネットワークモデルの例として、上述の実施の形態2と同様に、図21に示したものを挙げて説明する。図21における符号の説明は上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。本実施の形態においては、実施の形態2と同様に、図21(a)のように、各ノードNが、向き付けられたリンクLで互いに結ばれているネットワークを考える。また、実施の形態2と同様に、複数のノードNの中に一つの発信元ノードNS1(S: Source)と呼ばれる特別なノードがあるものとし、また、複数のノードNの中に一つまたは複数個の宛先ノードNT1,NT2(T: Target)と呼ばれる特別なノードがあるものとする。
本実施の形態においては、実施の形態2と同様に、図21(b)に示すように、図21(a)に示すネットワークモデル10に相当する複数のネットワークモデルが集まって、1つのマルチ周波数ネットワークモデル10MFを形成しているとする。
また、各ネットワークモデル10_1,10_2,…,10_nにおける各ノードN毎に、互いに異なる周波数を用いることとする。また、その周波数は、各ノードN毎に、互いに異なる周波数変化パタンに基づいて、時刻ごとに順次異なる周波数に変化するものとする。詳細については後述する。
なお、従来のノードNでの通常のネットワークコーディングの符号化演算手順については、図2および図3について述べた通りであり、従来の通常の周波数ホッピングの手順については、図4および図5について述べた通りであるので、ここでは説明しないが、従来の通常の周波数ホッピングにおいては、図4に示すように、周波数変化の規則は、発信元ノードから宛先ノードまでのすべてのリンクで共通であり、ある時点でのあるセッションの周波数は同一であるため、ある周波数で長い時間伝送情報を観察していれば、その周波数使用時には伝送情報が見える場合もあるという問題点があった。
これに対し、上記の実施の形態2においては、上述した通り、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行うことにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性を向上させている。
上記の実施の形態2では、各時刻において滞留する時間、すなわち、ある1つの周波数を継続して用いる時間(以下、滞留時間と呼ぶ。)が一定であったが、本実施の形態ではその滞留時間を可変とする。以下、本実施の形態について説明する。
まず、本実施の形態においては、各時刻で、どのくらいの時間の間、1つの周波数を継続して用いるかを滞留時間DTと呼び、図38に示す時刻−滞留時間テーブルTDTtab(T: Time, DT: Dwell Time)に予め記憶しておく。時刻−滞留時間テーブルTDTtabにおいては、各時刻t1〜t7毎に滞留時間dt1〜dt7がそれぞれ対応付けられて記憶されている。この時刻−滞留時間テーブルTDTtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示していない)等に予め記憶されているか、あるいは、ヘッダ等に記載されて各ノードに通知される。
時刻−滞留時間テーブルTDTtabに記憶する滞留時間DTは、50μ秒、10秒、5分等の時間そのものの値でもよいが、滞留時間を一意に特定できるキーの値(1個または複数個)でもよい。これは、例えば、滞留時間を予め定められた擬似乱数系列による乱数値(秒)としたとき、乱数のシードと何番目の乱数を示すことである。
本実施の形態では、まず実施の形態2と同様に、図23に示す対応テーブルNPtabと図24に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示していない)等に記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図39に示すように、まず、ノードNは、ステップST41で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、上記の図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST42で、図23の対応テーブルNPtabを参照して、当該ノードNの周波数変化パタンを求める。次に、ステップST43では、図24のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該ノードNの周波数を求める。ここまでの処理は実施の形態2と同様であるが、本実施の形態では、さらに、ステップST45Aで、時刻−滞留時間テーブルTDTtabを参照して、現在の時刻での滞留時間を求める。次にステップST44Aで、現在時刻からの経過時間を計測し、ステップST45Aで求めた滞留時間が経過したら、その時点で、ステップST43で求めた周波数を用いて出力信号を送信する。
次に、本実施の形態における、周波数と時間との関係を、図40を用いて説明する。図40は、本実施の形態における周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab_A1(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図40(a)において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8は、それぞれ、時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8は、それぞれ、周波数1,2,…,8を表わす。図40に示すテーブルFmTtab_A1においては、各周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8が使用される時刻が、各々の周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8に付された記号によりマークされている。当該記号については、図40(b)を参照されたい。図40(a)において、例えば、テーブルFmTtab_A1の周波数f8の行では、時刻t1がep2(f8t1)、時刻t2が周波数パタンep7(f8t2)、時刻t3が周波数パタンep8(f8t3)、時刻t4が周波数パタンep6(f8t4)、時刻t5が周波数パタンep1(f8t5)、時刻t6が周波数パタンep5(f8t6)、時刻t7が周波数パタンep3(f8t7)、時刻t8が周波数パタンep4(f8t8)であることがわかる。
本実施の形態の図40では、上述の実施の形態2の図26と異なり、各時刻t1,t2,…,t8の間隔(すなわち、滞留時間)が一定でない。これらの間隔は、図38の時刻−滞留時間テーブルTDTtabに記す滞留時間dt1,dt2,…,dt8で指定されている。これにより、滞留時間を知らない第三者に対する秘匿性が増す。
ここで、指定された滞留時間が経過した時点でネットワーク内の全ノードで一斉に周波数を変換するためには、全ノードの時刻が、滞留時間の間隔を鑑みた精度で同期している必要がある。一般の周波数ホッピングでは周波数を一秒以下の短い周期で変化させることが多いが、滞留時間をマイクロ秒オーダーの精度で管理するためには、全ノードがそれに見合う精度で時刻同期している必要がある。しかし、本実施の形態の方式では、一つの周波数への滞留時間はこのように短い間隔でなくても、数秒、数十分、あるいはそれ以上の間隔でも秘匿性向上の効果があり、時刻同期の精度もそれに見合うもので構わない。
なお、図23の対応テーブルNPtabと図24および図26を併せてみると、実施の形態2においては、全てのノードにおいて異なる周波数パタンで送信を行っている。しかし、ノード間が十分に離れており、干渉を起こさない場合は、同じ周波数パタンを使用してもよい。
図36は、従来の通常の周波数ホッピング、従来の通常のネットワークコーディング、この発明の本実施の形態3に係る周波数ホッピングネットワークコーディングの比較をまとめたテーブルFHNCtab(FH: Frequency Hopping, NC: Network Coding)を示す図である。図に示すように、通常の周波数ホッピングでは、時間毎に周波数の変更を行うが、中継ノード毎に出力周波数の変更はしない。また、中継ノードでの符号化演算も行わない。また、通常のネットワークコーディングでは、中継ノードでの符号化演算を行うが、時間毎に周波数を変更することはしない。一方、本実施の形態3に係る周波数ホッピングネットワークコーディングでは、中継ノードで符号化演算を行うとともに、各中継ノードで現在時刻に対応させて出力周波数を順次変更していく。これにより、ネットワークコーディングの効果による伝送効率向上を実現しながらリンク毎の周波数ホッピングによる盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が向上する。なお、中継ノードでの符号化演算の一例として、入力信号がそのまま出力信号として出力する場合もあり得る。
以上のように、この発明の実施の形態3によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行い、さらに一つの周波数を用いる滞留時間を可変にすることにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が一層向上する。
実施の形態4.
本実施の形態では、上述の実施の形態3の図40で示した可変滞留時間の管理を、TDMA(Time Division Multiple Access)の時間スロットを利用して行う方法を示す。本実施の形態4における、周波数と時間との関係を、図41を用いて説明する。図41は、本実施の形態における、周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab_A1a(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図41において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、ts1,ts2,…,ts7は、それぞれ、TDMAのタイムスロットを表わし、tt1,…,tt6は各タイムスロットを構成するサブタイムスロットを表わす。このように、本実施の形態においては、各タイムスロットts1,ts2,…,ts7は、それぞれ、複数のサブタイムスロットtt1,…,tt6から構成されている。また、f1,f2,…,f7は、それぞれ、周波数1,2,…,7を表わす。また、周波数f7のタイムスロットts1の部分はf7ts1,周波数f7のタイムスロットts2の部分はf7ts2,…と呼ぶこととする。
図41に示すテーブルFmTtab_A1aにおいては、使用するサブタイムスロットが灰色で示されている。タイムスロットts1では周波数f3のf3t1、タイムスロットts1では周波数f1のf1t2が用いられる。タイムスロットts1およびts2では、1タイムスロットに1周波数が割り当てられている。これを1ホップ割当と呼ぶ。
次に、タイムスロットts3およびts4では、1タイムスロットに2周波数が割り当てられている。これを2ホップ割当と呼ぶ。タイムスロットts3では前半が周波数f2のf2t3、後半が周波数f6のf6t3が用いられる。タイムスロットts4では前半が周波数f4のf4t4、後半が周波数f7のf7t4が用いられる。
次に、タイムスロットts5およびts6では、1タイムスロットに3周波数が割り当てられている。これを3ホップ割当と呼ぶ。タイムスロットts5では最初の2サブタイムスロットが周波数f5のf2t5、次の2サブタイムスロットが周波数f3のf3t5、最後の2サブタイムスロットが周波数f1のf1t5が用いられる。タイムスロットts6では最初の2サブタイムスロットが周波数f2のf2t6、次の2サブタイムスロットが周波数f6のf6t6、最後の2サブタイムスロットが周波数f7のf7t6が用いられる。
次に、タイムスロットts7では、1タイムスロットに6周波数が割り当てられている。これを6ホップ割当と呼ぶ。タイムスロットts7では最初のサブタイムスロットtt1が周波数f6のf6t7、次のサブタイムスロットtt2が周波数f5のf5t7、次のサブタイムスロットtt3が周波数f1のf1t7、次のサブタイムスロットtt4が周波数f3のf3t7、次のサブタイムスロットtt5が周波数f7のf7t7、最後のサブタイムスロットtt6が周波数f4のf4t7が用いられる。
TDMAのタイムスロットts1,ts2,…,ts7毎に全ノードで同期をとる方法は、既に確立しており一般的に用いられているため、これらのタイムスロットをサブタイムスロットに分割して、それを用いて滞留時間を変更するという、TDMAの時間スロットを用いた本実施の形態の方式によれば、マイクロ秒オーダーの周波数変化の場合にも、滞留時間の変更が可能となる。
以上のように、この発明の実施の形態4によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行い、さらに、タイムスロットをサブタイムスロットに分割して、それを用いて、一つの周波数を用いる滞留時間を可変にすることにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が一層向上する。
実施の形態5.
上述の実施の形態2では、各時刻に滞留する時間、すなわち、ある周波数を継続して用いる時間(滞留時間)が一定であり、各周波数の帯域幅も一定であった。また、上述の実施の形態3,4では、滞留時間を可変にした。本実施の形態では、滞留時間は一定として、各周波数の帯域を可変とする。各周波数でどのくらいの幅の周波数を用いるかを帯域幅FWと呼び、図42に示す、周波数−帯域幅テーブルFFWtab(F: Frequency, FW: Frequency Band Width)に周波数毎に記憶しておく。図42に示すように、周波数−帯域幅テーブルFFWtabにおいては、各周波数f1〜f7に対応付けられて帯域幅fw1〜fw7がそれぞれ記憶されている。この周波数−帯域幅テーブルFFWtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示していない)等に予め記憶されているか、あるいは、ヘッダ等に記載して各ノードに通知される。
図42の周波数−帯域幅テーブルFFWtabに記憶される帯域幅FWは、2kHz、10MHz等の帯域幅そのものの値でもよいが、帯域幅を一意に特定できるキーの値(1個または複数個)でもよい。これは、例えば、滞留時間を予め定められた擬似乱数系列による乱数値(秒)としたとき、乱数のシードと何番目の乱数を示すことである。
本実施の形態では、まず、上述の実施の形態2と同様に、図23に示す対応テーブルNPtabと図24に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示していない)等に記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図43に示すように、まず、ノードNは、ステップST41で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、上述の図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST42で、図23の対応テーブルNPtabを参照して、当該ノードNの周波数変化パタンを求める。ステップST43では、図24のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該ノードNの周波数を求める。ここまでの処理は実施の形態2と同じであるが、本実施の形態では、さらに、ステップST47Aで、周波数−帯域幅テーブルFFWtabを参照して、現在の周波数での帯域幅を求める。次に、ステップST44Bで、求めた周波数帯域幅の出力信号を送信する。
次に、本実施の形態における、周波数と時間との関係を、図44を用いて説明する。図44(a)は、本実施の形態における周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab_A2(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図44(a)において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8は、それぞれ、時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8は、それぞれ、周波数1,2,…,8を表わす。図44に示す、テーブルFmTtab_A2においては、各周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8が使用される時刻が、各々の周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8に付された記号によりマークされている。当該記号については、図44(b)を参照されたい。図44(a)において、例えば、テーブルFmTtab_A1の周波数f8の行では、時刻t1がep2(f8t1)、時刻t2が周波数パタンep7(f8t2)、時刻t3が周波数パタンep8(f8t3)、時刻t4が周波数パタンep6(f8t4)、時刻t5が周波数パタンep1(f8t5)、時刻t6が周波数パタンep5(f8t6)、時刻t7が周波数パタンep3(f8t7)、時刻t8が周波数パタンep4(f8t8)であることがわかる。
本実施の形態の図44では、上述の実施の形態2の図26と異なり、各周波数f1,f2,…,f8の帯域幅が一定でない。これらの帯域幅は、図42の周波数−帯域幅テーブルFFWtabに記す帯域幅fw1,fw2,…,fw8で指定されている。これにより、帯域幅を知らない第三者に対する秘匿性が増す。
以上のように、この発明の実施の形態5によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行い、さらに、各周波数における帯域幅を可変にすることにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性が一層向上する。
実施の形態6.
上述の実施の形態2では、各時刻に滞留する時間すなわちある周波数を用いる時間が一定であり、各周波数の帯域幅も一定であった。また、上述の実施の形態3,4では、各時刻に滞留する時間、すなわち、1つの周波数を継続して使用する滞留時間を可変にした。さらに、上述の実施の形態5では、滞留時間は一定として、各周波数の帯域を可変とした。本実施の形態6では、各周波数での滞留時間DTも、帯域幅FWも可変とする。滞留時間DTは、図38の時刻−滞留時間テーブルTDTtab(T: Time, DT: Dwell Time)に予め記憶しておく。帯域幅FWは、図42の周波数−帯域幅テーブルFFWtab(F: Frequency, FW: Frequency Band Width)に予め記憶しておく。図38の時刻−滞留時間テーブルTDTtab、および、図42のテーブルFFWtabの構造は、上記の実施の形態3および5とそれぞれ同様である。これらの対応テーブルTDTtabおよびFFWtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示していない)等に予め記憶されているか、あるいは、ヘッダ等に記載されて各ノードに通知される。
本実施の形態では、まず上述の実施の形態2と同様に、図23に示す対応テーブルNPtabと図24に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示していない)等に予め記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図45に示すように、まず、ノードNは、ステップST41で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、上記の図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST42で、図23の対応テーブルNPtabを参照して、当該ノードNの周波数変化パタンを求める。ステップST43では、図24のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該ノードNの周波数を求める。本実施の形態では、さらに、ステップST45Aで、時刻−滞留時間テーブルTDTtabを参照して、現在の時刻での滞留時間を求めるとともに、ステップST47Bで、周波数−帯域幅テーブルFFWtabを参照して、現在の周波数での帯域幅を求める。次に、ステップST44Cで、ステップST45Aで求めた滞留時間が経過したら、ステップST47Bで求めた周波数帯域幅の出力信号を送信する。
次に、本実施の形態における、周波数と時間との関係を、図46を用いて説明する。図46(a)は、本実施の形態における周波数と時間との関係を示すテーブルFmTtab_A3(F: Frequency, m: multi, T: Time)を示す。図46(a)において、横軸ATは時刻、縦軸AFは周波数であり、t1,t2,…,t8は、それぞれ、時刻1,2,…,8を表わし、f1,f2,…,f8は、それぞれ、周波数1,2,…,8を表わす。図46に示す、テーブルFmTtab_A3においては、各周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8が使用される時刻が、各々の周波数パタンep1,ep2,ep3,ep4,ep5,ep6,ep7,ep8に付された記号によりマークされている。当該記号については、図46(b)を参照されたい。図46(a)において、例えば、テーブルFmTtab_A1の周波数f8の行では、時刻t1がep2(f8t1)、時刻t2が周波数パタンep7(f8t2)、時刻t3が周波数パタンep8(f8t3)、時刻t4が周波数パタンep6(f8t4)、時刻t5が周波数パタンep1(f8t5)、時刻t6が周波数パタンep5(f8t6)、時刻t7が周波数パタンep3(f8t7)、時刻t8が周波数パタンep4(f8t8)であることがわかる。
本実施の形態の図46では、上述の実施の形態2の図26と異なり、各時刻t1,t2,…,t8の間隔が一定でないと同時に、各周波数f1,f2,…,f8の帯域幅が一定でない。各時刻t1,t2,…,t8の間隔は、図38の時刻−滞留時間テーブルTDTtabに記す滞留時間dt1,dt2,…,dt8で指定されている。各周波数f1,f2,…,f8の間隔は、図42の周波数−帯域幅テーブルFFWtabに記す帯域幅fw1,fw2,…,fw8で指定されている。滞留時間と帯域幅の両方を可変とすることにより、滞留時間あるいは帯域幅を知らない第三者に対する秘匿性が増す。
ここで、指定された滞留時間が経過した時点でネットワーク内の全ノードで一斉に周波数を変換するためには、全ノードの時刻が、滞留時間の間隔を鑑みた精度で同期している必要がある。一般の周波数ホッピングでは周波数を一秒以下の短い周期で変化させることが多いが、滞留時間をマイクロ秒オーダーの精度で管理するためには、全ノードがそれに見合う精度で時刻同期している必要がある。しかし、本発明の方式では、一つの周波数への滞留時間はこのように短い間隔でなくても、数秒、数十分、あるいはそれ以上の間隔でも効果があり、時刻同期の精度もそれに見合うもので構わない。
また、滞留時間の管理を、上記実施の形態4に示したTDMAの時間スロットを利用する方法を用いて行ってもよい。
以上のように、この発明の実施の形態6によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行い、さらに、一つの周波数を用いる滞留時間を可変にし、かつ、各周波数における帯域幅を可変にすることにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性がより一層向上する。
実施の形態7.
上述の実施の形態6で滞留時間と帯域幅をそれぞれ、図38の時刻−滞留時間テーブルTDTtabと、図42の周波数−帯域幅テーブルFFWtabの二つのテーブルを参照して可変とした。本実施の形態では、滞留時間と帯域幅の両方を図47に示す時刻−滞留時間・帯域幅テーブルTDTFWtab一つに記憶しておく。図47に示すように、テーブルTDTFWtabにおいては、各時刻t1〜t7毎に、滞留時間dt1〜dt7および帯域幅fw1〜fw7が対応付けられて記憶されている。この対応テーブルTDTFWtabは、ノードNに設けられた記憶装置(図示していない)等に予め記憶されているか、あるいはヘッダ等に記載して各ノードに通知される。
本実施の形態では、まず、上述の実施の形態2と同様に、図23に示す対応テーブルNPtabと図24に示すテーブルPTtabとを予め用意して、中継ノードであるノードNの記憶装置(図示していない)等に予め記憶しておく。そうして、ノードNが入力信号を受信すると、図48に示すように、まず、ノードNは、ステップST41で、入力信号に当該ノードNの符号化行列を乗算して、出力信号を算出する。このときの算出方法は、図3に示した通りでよく、各ノードNの符号化行列は、各ノード毎に予め設定されているものとする。次に、ステップST42で、図23の対応テーブルNPtabを参照して、当該ノードNの周波数変化パタンを求める。ステップST43では、図24のテーブルPTtabを参照して、現在の時刻に対応する当該ノードNの周波数を求める。本実施の形態ではさらに、ステップST48Aで、時刻−滞留時間・帯域幅テーブルTDTFWtabを参照して、現在の時刻に対応する滞留時間と帯域幅の両方を求める。次にステップST44Dで、求めた滞留時間が経過したら、求めた周波数帯域幅を用いて出力信号を送信する。
この発明の実施の形態7における、周波数と時間との関係は、上記実施の形態6で図46を用いて説明したものと同様である。
以上のように、この発明の実施の形態7によれば、ネットワークコーディングと周波数ホッピングとを組み合わせて、中継ノードにおいて符号化演算とともに周波数変換を行い、さらに、一つの周波数を用いる滞留時間を可変にし、かつ、各周波数における帯域幅を可変にすることにより、外部からの盗聴者に対する伝送情報の秘匿性がより一層向上する。