JP5649407B2 - 一重項酸素を発生する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大気中の酸素分子を利用して、酸素ボンベ等の強制的通気を必要としない、光等のエネルギー照射により一重項酸素を発生する一重項酸素発生膜を用いた一重項酸素を発生する方法に関する。
通常、大気中に存在する酸素は、基底状態であり反応性が乏しい三重項酸素である。この三重項酸素は不対電子を持つ遊離基(ラジカル)であり、2つの不対電子を持つのでビラジカルと呼ばれるが、例外的に安定である。直接の光による一重項酸素の発生は、三重項から一重項への励起のためスピン禁制であり、ほとんど起こらない。有機光増感剤を用いた場合、増感剤の三重項状態は、一重項酸素と三重項酸素のエネルギー差にほぼ等しく、かつ色素の三重項から三重項酸素への遷移はスピン許容であるため、エネルギー移動が起こり、一重項酸素が発生する。
このため現在、有機光増感剤は光ガン治療(photo dynamic therapy)に広く用いられている。有機光増感剤による光酸化反応には、2通りあることが知られている。1つは光照射により励起された増感剤自身が酸化剤として働くタイプIと呼ばれる反応であり、もう一つは上記のように光照射により励起された増感剤のうち三重項状態のものが三重項酸素分子と衝突することでそのエネルギーを酸素分子に移動し、一重項酸素を発生し、それが酸化剤として働くタイプIIと呼ばれる反応である。溶液中では両反応とも起こりうるため反応は複雑となり、副産物が生じる。しかしながら、気相で光増感剤と対象物との距離を空間的に置いた場合、タイプIIの一重項酸素による酸化反応のみしか起こらず、色素や色素の分解物による副作用や阻害がおこらず、クリーンな酸化分解反応系を構築できる。
一重項酸素は、活性酸素種の中では寿命が長く、また酸化電位の高いオゾンやヒドロキシルラジカルのようなものと異なり、有効かつマイルドな酸化剤と言える。それは、一重項酸素の特有の電子配置にあり、反結合性軌道の一方のみに2個の電子が対として入り、もう一方の空軌道が求電子的に働き、電子供与性の大きい(酸化電位の低い)基質と2電子反応を起こしやすいためである。一重項酸素の寿命は水中では3.3μ秒と近距離にあるものしか酸化できず、そのため光ガン治療ではがん細胞内に光増感剤を取り込ませてからレーザー照射を行う。
気相になると分子密度が下がるため格段に寿命が長くなる。真空中では45分、0.6Torr下では7秒(非特許文献1)、乾燥酸素を用い大気圧条件下で120m秒程度(非特許文献2)と報告されており、大気中の水分子や窒素分子などを考慮すると、大気条件下では数m〜100m秒程度と予想される。これは大気中で酸化剤として使用するのに十分な寿命であり、かつ大気中での使用に関し長時間もしくは長距離に渡って存在することもなく、安全性も高いと言える。加えて必要な照射エネルギー自体500−700nmと低く、安全であるため人体に直接照射しても問題はない。
上記性質を有する一重項酸素を気相中で利用できれば、その酸化力を安全に医療や産業の現場で応用できる。しかしながら、気相中に一重項酸素を有効に発生させるための方法は限られている。
一重項酸素を大気中に発生させる従来技術としては、図2にみられるように、透明なアクリル繊維、ポリエステル繊維、又はポリエチレン繊維のような繊維10の表面に光増感剤11を付着させたフイルター1’がある(特許文献1)。また、光増感剤を溶媒で溶解して担体に吸着させることにより担持させた光増感剤に、酸素を流しながら光源を照射し、光増感剤で光源から発するフォトンエネルギーを活性化し、酸素気体を乖離させて一重項酸素を発生させる方法も提案されている(特許文献2)。
さらに、微細に粗面化された支持体面の凹所に光によって励起する染料を研磨して押し込めることにより導入した染料で被覆された面と、これに対向する光透過性の面を有するケーシング内に、染料で被覆された面を照射するための光源を設けた、一重項酸素を発生させるための装置も知られている。(特許文献3)
しかしながら、これらの従来技術に記載された技術では、光増感剤が繊維やシリカゲル等の支持体層に全面的に接触しており、発生した一重項酸素が気相に放出される前に支持体層で失活してしまい、放出される一重項酸素の量が極めて少なくなるという欠点がある。実際に光増感剤から発生した一重項酸素の多くが、増感剤を含浸しているシリカゲルやアルミナ担体によって失活するとの報告がなされている。(非特許文献3)大気中での一重項酸素の寿命を考慮すると、装置から取り出すまでに相当数失活している恐れがある。
また、特許文献2では一重項酸素を効率的に製造するために酸素ボンベと特殊な反応容器が必要であり、特許文献3では一重項酸素を効率的に製造するために純酸素もしくは高濃度に酸素を含むガスを密閉し反応させるための特殊なケージが必要であり、汎用性が低く、一重項酸素の製造コストが高くなると言う問題点がある。
さらに、光増感剤自身も、光照射により励起されて自身が酸化剤として働くタイプI反応もしくは自身が発生した一重項酸素に分解され退色してしまうタイプII反応による分解(photobleaching)が深刻であり、これが一重項酸素を大気中に放出させる技術の実用化の最大の妨げとなっていた。(非特許文献4)
特開2004−350935号公報 特許第3863909号公報 特表2004−513859号公報
K. Hasegawa, K. Yamada, R.Sasase, R. Miyazaki, A. Kikuchi, and M. Yagi, Chem. Phy. Lett., 457, 312-314(2008) W.C. Eisenberg, A. S.Snelson, R. Butler, and K. Taylor, J. Photochem., 25,439-448 (1984) W. R. Midden and S. Y. Wang,J. Am. Chem. Soc., 105, 4129-4135 (1983) D. Aebisher, M. Zamadar, A. Mahendran, G.Ghosh, C. McEntee and A. Greer, Photochem. and Photobio., 86, 890-894(2010).
したがって、本発明は、これら従来技術の問題点を解消して、大気中の酸素を利用して複雑な装置を必要とせず、安価に一重項酸素を発生させることができ、photobleachingが起こりにくい、一重項酸素発生膜を提供することを目的とする。
本発明では、上記課題を解決するために次の構成1〜4を採用する。
1.エネルギー照射により一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる平均粒径が10〜4000nmの光増感剤微粒子を、表面に前記微粒子の粒径よりも小さい孔径を有する最表面層を備えたメンブレンフイルターの片側表面に膜状に付着させた、エネルギー照射により一重項酸素を発生する一重項酸素発生膜に、エネルギーを照射することを特徴とする一重項酸素を発生する方法。
2.前記一重項酸素発生膜に、光照射することを特徴とする1に記載の一重項酸素を発生する方法。
3.前記メンブレンフイルターの最表面層の孔径が5〜3000nmであることを特徴とする、1又は2に記載の一重項酸素を発生する方法。
4.前記メンブレンフイルターの片側表面に形成した一重項酸素発生膜の膜厚が10nm〜5μmであることを特徴とする、1〜3のいずれかに記載の一重項酸素を発生する方法。
本発明は、上記の構成を採用することによって、次のような顕著な効果を奏する。
(1)極めて簡単な工程により、メンブレンフイルターの片側表面のみに一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる光増感剤の微粒子を膜状に付着させた、一重項酸素発生膜を効率よく作製することができる。
(2)得られた一重項酸素発生膜では、一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる光増感剤が微粒子として膜状に結合されており、安定に保持される。したがって、光増感剤が容易には剥がれず、例えば、水に浸しても、通液しても流出しない。
(3)光増感剤の粒子は、支持体であるメンブレンフイルターと境界面でのみ接触しているので、発生した一重項酸素が支持体によって失活するのを最小限に抑制し、大気条件下でも格段に多量の一重項酸素を気相に放出することができる。
(4)支持体であるメンブレンフイルターの表面に全ての光増感剤が担持されているために、照射光が有効に一重項酸素の励起に使用されるとともに、大気中に含まれる酸素から一重項酸素を発生することができる。
(5)光増感剤が分子でなく粒子であるため、光増感剤自身が発生した一重項酸素によって起こる、もしくは光励起された増感剤が酸化剤として働くことによる退色(photobleaching)が分子状で担持したときと比べて格段に起こりにくい。
本発明で得られる一重項酸素発生膜の断面の構造を示す模式図である。 従来の技術で得られる一重項酸素発生膜の構造を示す部分拡大模式図である。 実施例1で得られたプロトポルフィリンIX微粒子膜の最表層の電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られたルブレン微粒子膜の電子顕微鏡写真である。 実施例4で行った退色実験の結果を示す図で、実施例3で得られたルブレン微粒子膜から発生した一重項酸素によるベーシックレッドの退色を示す図である。 実施例5で行った退色実験の結果を表す図である。実施例3で得られたルブレン微粒子膜を用いたサンプルと、比較例2で得られたルブレンを含浸させたナイロン膜及びナイロン膜のみを用いたサンプルによるベーシックレッドの退色反応を相対比較した図である。 実施例6で行った光増感剤の自己退色実験の結果を表す図である。実施例1で得られたプロトポルフィリンIX微粒子膜を用いたサンプル、比較例1で得られたプロトポルフィリンIXを含浸させたナイロン膜及びプロトポルフィリンIXのTHF溶液について、自己退色反応を相対比較した図である。
本発明では、エネルギー照射により一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる平均粒径が10〜4000nmの光増感剤微粒子を水性媒体に分散させた分散液を、表面に前記複合体粒子の粒径よりも小さい孔径を有する最表面層を備えたメンブレンフイルターで吸引濾過することにより、前記メンブレンフイルターの片側表面に前記複合体粒子を膜状に付着させて一重項酸素発生膜を製造する。
光や超音波のようなエネルギー照射により一重項酸素を発生する、疎水性の有機化合物からなる光増感剤としては、水への溶解度が0.01g/L未満で、水中でイオンとなるような官能基を有していない光増感剤が使用される。
好ましい疎水性の有機光増感剤としては、以下のものが挙げられる。
芳香族炭化水素系色素としては、2-メチル-3,3’-スピロビ[3H-ナフト[2,1-b]ピラン]、アセトフェノン、ペリレン、クマリン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド、ルブレン、C60、C70等。ポルフィリン、フタロシアニン類縁体としては、クロロフィルa、クロロフィルb、バクテリオクロロフィルa、ベンゾポルフィリン、エチオポルフィリンI、オクタエチルポルフィリン、デュートロポルフィリンIX、メソポルフィリンIX、ヘマトポルフィリンIX、プロトポルフィリンIX、コプロトポルフィリンI、コプロトポルフィリンIII、ウロポルフィリンII、ウロポルフィリンIII、クロロクルオロポルフィリン、ペムトポルフィリン、2,4-ジホルミルデュートロポルフィリンIX、フィロポルフィリンXV、ピロポルフィリンXV、ロドポルフィリンXV、フィロエリスリン、デソソフィロエリスリン、フェオポルフィリンa5、エチルエチオプルプリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリンダイマー、フォルビンダイマー、およびそれらの亜鉛、銅、カドミウム、コバルト、マグネシウム、アルミニウム、白金、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウム、シリカ、錫等の金属錯体等が挙げられる。
メンブレンフィルターを構成する素材としては、例えば、セルロースアセテート等のセルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースアセテートの混合物等からなるセルロース混合エステル、これらのエステルの1種又は2種以上を、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルにコートしたもの、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ホリエチレンやポリプロピレンやポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
本発明に用いるメンブレンフィルターとしては、例えばアラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、ウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ガラス繊維等で作られた、不織布もしくは織布や多孔質焼結体が挙げられる。
好適なメンブレンフィルターとしては、例えば、網目状繊維からなる不織布、フィブリル化ポリマーシート、ファイバーシート、溶液キャスト多孔質ポリマーシート、延伸多孔性フィルム、放射線照射多孔性フィルム、多孔質セラミックスシート、多孔質ガラスシート及び多孔質金属シートの中から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また、これらのメンブレンフィルターに、紙やセロハンからなる粘着層を組み合わせたものを使用することもできる。
メンブレンフィルターの最表面の孔径は、疎水性の有機化合物からなる光増感剤微粒子の粒径よりも小さい孔径を有するものが好ましく、特に最表面層の孔径が5〜3000nmの範囲の細孔を有するものが好適に用いられる。
本発明の一重項酸素発生膜は、例えば次の手順によって製造することができる。
1.エネルギー照射により一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる光増感剤を有機溶媒に溶解し、これを激しく攪拌した水又は水及び水と相溶性のある有機溶媒との混合溶媒(以下、両者をあわせて「水系溶媒」という)中に射出する。
2.得られた微粒子の分散液を、表面に粒子の粒径よりも小さい孔径を有する最表面層を備えたメンブレンフイルターで濾過、好ましくは吸引濾過することにより、前記メンブレンフイルターの片側表面に前記疎水性光増感剤微粒子を膜状に付着させて一重項酸素発生膜を製造する。
上記の工程によって、疎水性の有機化合物からなる微粒子をメンブレンフイルターの片側表面に均一に膜状に付着させた、一重項酸素発生膜を低コストで効率的に得ることができる。一重項酸素発生膜の膜厚は10nm〜10μm程度、特に50nm〜5μm程度とすることが好ましい。
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
プロトポルフィリンIXをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、0.2mMのプロトポルフィリンIXTHF溶液を作製した。ビーカーに1M酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.63)を100μl入れ、純水を加えて全量を9mlとして、これをマグネティックスターラーにて1000rpmで激しく撹拌した。ここに0.2mMプロトポルフィリンIXTHF溶液を1ml射出して、プロトポルフィリンIXの微粒子分散液を得た。これを0.2μm孔径の直径47mmナイロンメンブレンフィルター(ミリポア製、有効直径35.5mm)にて吸引濾過し、メンブレンフィルターの上片側表面上にプロトポルフィリンIXの微粒子層を形成させた。得られたプロトポルフィリンIX微粒子膜の電子顕微鏡写真を図3示す。図の下部の大きな繊維がナイロン繊維で、その上にプロトポルフィリンIXの微粒子層が付着している。本膜の断面構造は、図1に示すような片方の表面のみに疎水性光増感剤微粒子からなる層が局在する構造をとっていることがわかる。
(実施例2)
ルブレンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、2mMのルブレンTHF溶液を作製した。ビーカーに純水を10ml入れ、これをマグネティックスターラーにて1000rpmで激しく撹拌した。ここに2mMルブレンTHF溶液を100μl射出して、ルブレンの微粒子分散液を得た。これを0.1μm孔径のポリカーボネイトメンブレンフィルター(アドバンテック社製)に滴下し、吸引濾過して粒子の電子顕微鏡観察用のサンプルを作製した。得られたルブレン微粒子膜の電子顕微鏡写真を図4に示す。ルブレン微粒子は球状であり、粒子径は50〜150nmであった。
(実施例3)
ルブレンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、1mMのルブレンTHF溶液を作製した。ビーカーに1Mグリシン緩衝溶液100μl(pH2.4)を入れ、純水を加えて全量10mlとし、これをマグネティックスターラーにて1000rpmで激しく撹拌した。ここに1mMルブレンTHF溶液を200μl射出して、ルブレンの微粒子分散液を得た。これを0.2μm孔径の直径47mmナイロンメンブレンフィルター(ミリポア製、有効直径35.5mm)にて吸引濾過し、メンブレンフィルターの上片側表面上にルブレンの微粒子層を形成させた。
(比較例1)
比較対照として、図2に示すような均一に有機光増感剤が含浸された構造の膜を、実施例1と同濃度となるようプロトポルフィリンIXをナイロンメンブレンフィルターに含浸させることで作製した。この際、0.2mMプロトポルフィリンIXTHF液1mlにTHF0.6mlを加えて、これを直径35mmの円にカットしたナイロンメンブレンフィルターに垂らし、小さな穴のみを空けた閉鎖空間で1日半かけてゆっくり揮発させて膜を作製した。プロトポルフィリンIXの表面濃度は、実施例1及び比較例1の両方の膜とも、2.02×10−8mol・cm−2であった。
(比較例2)
比較例1と同様にして、実施例3と同濃度となるようルブレンをナイロンメンブレンフィルターに含浸させた膜を作製した。この際、1mMルブレンTHF液200μlにTHF1.4mlを加えてこれを直径35mmの円にカットしたナイロンメンブレンフィルターに垂らし、小さな穴のみを空けた閉鎖空間で1日半かけてゆっくり揮発させて膜を作製した。ルブレンの表面濃度は、実施例3及び比較例2の両方の膜とも、2.02×10−8mol・cm−2であった。
(実施例4:一重項酸素による色素の退色)
実際に大気圧条件下で気相中に一重項酸素が有効量発生していることを確認するために、実施例3で得られたルブレン微粒子膜から空間的に距離をおいたところにおける、光照射時の赤色色素(ベーシックレッド)の分解反応を次のようにして追跡した。
ベーシックレッド試料は一穴のスライドガラスにその水溶液を垂らし、ゆっくり蒸発乾固させることで作製した。ベーシックレッドを塗布したスライドガラスとルブレン微粒子膜を、0.8mmのスペーサーを介して向かい合わせに配置してサンプルとした。サンプルから17cm離して、500Wのハロゲンランプを光源として設置し、ランプによる加熱を防ぐためランプとサンプルの間に水の入ったビーカーとIRカットフィルタを配置した。また、サンプルの下にはクールプレート装置を配置して(5℃に設定)、サンプルが12−13℃に保たれていることを確認した。ベーシックレッドの照射時間によるスペクトル変化を図5に示す。図5において、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射吸光度を表す。
図5によれば、500〜600nmにある赤色の吸収は照射時間が長くなるにつれ減少することがわかる。一重項酸素発生膜とサンプルは距離をおいているため、タイプI反応ではなくタイプIIのみ、すなわち発生した一重項酸素による酸化反応のみが進行し、退色が起こっていることがわかる。
(実施例5:退色反応の比較実験)
実施例3で得られたルブレン微粒子膜を用いたサンプル、比較例2で得られたルブレン含浸膜を用いたサンプル、及びナイロンメンブレンフィルターを用いたサンプルについて、実施例4と同様にしてベーシックレッドの退色反応の比較実験を行った。ベーシックレッドの赤色吸収である520nmでの速度解析を行った結果を図6に示す。図6において、横軸は照射時間(分)を表し、縦軸は0分での反射吸収強度を1としたときの相対反射吸収強度を表す。
図6によれば、比較例2のルブレン含浸膜より実施例3のルブレン微粒子膜の方が大きな分解速度を占めていることがわかる。
(実施例6:光増感剤の自己退色実験の比較)
実施例1で得られたプロトポルフィリンIXの微粒子膜、比較例1で得られたプロトポルフィリンIXの含浸膜、及び10−5MプロトポルフィリンIXのTHF溶液について、実施例4と同様の条件下の光照射実験を行い、光増感剤であるプロトポルフィリンIX自体の自己退色を調べ、比較した。プロトポルフィリンIXの微粒子膜と含浸膜については最大吸収波長の420nmの反射吸収強度、THF溶液については410nmの透過吸収強度の経時変化を比較した結果を図7に示す。図7において、横軸は照射時間(分)を表し、縦軸は0分での反射及び透過吸収強度を1としたときの相対吸収強度を表す。
図7によれば、プロトポルフィリンIXが分子状でナイロン繊維に付着している比較例1の含浸膜では、光照射後直ちに発生した一重項酸素によりphotobleachingが起こってしまうが、実施例1の微粒子膜ではプロトポルフィリンIXは微粒子状の塊であり、一重項酸素の攻撃も酸化反応も微粒子の最表面の分子のみしか受けないため、photobleachingが起きにくい。さらに微粒子膜は、THF溶液に分子状に溶解したプロトポルフィリンIXよりも光に対して安定であり、photobleachingに強いことがわかった。
1 疎水性の有機化合物光増感剤の微粒子からなる薄膜
1’ 従来の繊維表面に光増感剤を付着させたフィルター
2 メンブレンフィルター
10 繊維
11 光増感剤


Claims (4)

  1. エネルギー照射により一重項酸素を発生する疎水性の有機化合物からなる平均粒径が10〜4000nmの光増感剤微粒子を、表面に前記微粒子の粒径よりも小さい孔径を有する最表面層を備えたメンブレンフイルターの片側表面に膜状に付着させた、エネルギー照射により一重項酸素を発生する一重項酸素発生膜に、エネルギーを照射することを特徴とする一重項酸素を発生する方法。
  2. 前記一重項酸素発生膜に、光照射することを特徴とする請求項1に記載の一重項酸素を発生する方法。
  3. 前記メンブレンフイルターの最表面層の孔径が5〜3000nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の一重項酸素を発生する方法。
  4. 前記メンブレンフイルターの片側表面に形成した一重項酸素発生膜の膜厚が10nm〜5μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の一重項酸素を発生する方法。
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