JP5638853B2 - 油膜試験紙 - Google Patents

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本発明は、工場、油槽所、ガソリンスタンド等の地下埋設タンク及びそれらの配管の破損等が原因で漏洩した石油類、土壌調査等でボーリングした際に井戸に浸出したり地下水と共に浸出した汚染油に起因する、土壌や地下水に発生する油膜の有無を簡便かつ正確に判定する油膜試験紙に関するものである。
地下タンク検知管や調査井戸内の浸出油の検出方法としては、漏洩検知棒を管や井戸に挿入して、検知棒を目視で確認する方法、管や井戸内に蓄積した浸出油分を、適当な容器に採取したり、吸引ポンプに接続したチューブで回収したり、地下水と共に回収したりして、目視や分析により漏洩の有無を判断する方法がある。しかし、これらの方法は、漏洩油が充分存在する場合はよいが、漏洩の初期のように油量が少ない場合には判定が困難であるし、目視による判定が困難な場合には、分析機器を用いる必要がある。
また、タンク内のガソリン残量の測定に用いる検尺を活用して、ガソリン残量の測定と同様にしてオイルフィーリングペースト(三共化学工業株式会社製)を塗布し、漏洩油の有無を判定する方法も知られている。しかし、オイルフィーリングペーストは塗布してから時間が経過するにつれて赤色に発色し、漏洩油が付着して発色したのかどうか判定が難しい場合もある。
また、検知管内のガスを測定する方法もあるが、正確を期すためには捕集バッグにガスを採取しなければならず、簡便に実施できる方法ではない。
また、漏洩油が地下水と共に浸出している場合は、地下水と一緒に回収する方法が取られているが、回収できる十分な量の地下水が溜まっている必要がある。
一方、土壌汚染対策法が平成15年2月に施行され、土壌汚染問題に対する適切な対処が必須になっている。日本では土壌汚染、地下水の水質汚濁に対して、重金属類、農薬類、ダイオキシン類、揮発性有機化合物類等の環境基準が定められている。油によって汚染された土壌に対する対処方法として、平成18年3月に環境省から油汚染対策ガイドラインが出された。このガイドラインでは、生活環境保全上の支障となる油臭や油膜があれば除去する必要があるとしている。つまり、油含有土壌の存在自体が問題なのではなく、それによって生じている油臭や油膜が対策の対象である。油含有土壌が存在する土地の水が、周辺の土地の井戸水等に油臭や油膜を生じさせる媒体になることもあるため、そのような場合も含めて適切な対応が出来るように、調査などの考え方が示されており、油分による土壌汚染に対しては、このガイドラインに則って対策が講じられているのが現状である。
上記調査における油膜の測定法としては、土壌試料の場合、ビーカー法とシャーレ法が示されており、水試料の場合、液面を目視で観察するとされている。しかし、実際は油膜の有無を目視で判断するのは容易でなく、油膜であるか油膜に見えるだけなのかの判断が困難な場合も多い。
上記の他に、親油性の素材からなる織布や不織布を用いて油分の有無を(目視で)判別する検知体(特許文献1)や、親油性の素材である、ポリプロピレン、PTFE、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニリデンを用いる装置も提案されているが、いずれも定置型であり、携帯して簡便に油膜の有無を判定できるものではない。また、検知にはある程度の油量が必要であり、僅かな油量の油膜の有無を検知する能力はない。
そこで、上記従来技術の問題点を解決するため、本発明者らは、疎水性かつ親油性の合成樹脂製フィルム等の膜状物を用いて、膜の光透過性の変化により、目視で油分の有無を検知する方法を提案した(特許文献2)。しかし、この方法でも、少量かつ軽度の油膜の場合には、目視による判断が困難であることも多く、判断に個人差が生じることもある。したがって、更に簡便かつ正確に検知できる方法の開発が望まれる。
特開2005−156195号公報 特開2005−257638号公報
本発明は、少量かつ軽度の油膜であっても、油膜の有無を簡便かつ正確に目視で判定することができる油膜試験紙の提供を目的とする。特に油膜であるか油膜のように見えるだけなのかを的確に判定できることが重要である。
上記課題は、次の1)の発明によって解決される。
1) 支持体の一端から一定の範囲に、水に入れると水分を吸収して沈殿する高吸水性樹脂粒子(担体)と油溶性の着色剤粒子とからなる複合粒子を有し、前記範囲に続いて、一定の長さの疎水性かつ親油性の素材からなるシート状物を有し、該シート状物の端から支持体の他端までの範囲を、油膜試験紙を持って水に漬ける際の把持部とした油膜試験紙。
本発明によれば、少量かつ軽度の油膜であっても、油膜の有無を簡便かつ正確に目視で判定することができる油膜試験紙を提供できる。特に油膜であるか油膜のように見えるだけなのかについても的確に判定できる。また、携帯可能であるから、検査が必要な場所に自由に持ち運んで判定することができる。
着色剤粒子が高吸水性樹脂粒子に担持された複合粒子の模式図。 本発明の油膜試験紙の一例を示す写真。 参考例における着色剤粒子の状態を示す写真。 実施例1における油膜試験紙の状態を示す写真。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
前述したように、特許文献2に係る先願発明の場合、少量かつ軽度の油膜について正確に油膜か否かを判定する方法としては改善の余地がある。
そこで、油膜を形成している油分を着色して油分の視認性を向上させることを着想し、水に溶解せず油分のみに溶解する油溶性着色剤の利用について検討した。
その結果、着色剤粒子(粉体)をそのまま水面に投入すると、着色剤粒子が均一に分散しないこと、特に少量の油膜に対して油分量に見合った量の着色剤粒子を溶解させることは非常に難しく、着色剤粒子の一部は油膜に溶解するものの、大部分は凝集して溶解せずに残ってしまうことが分かった。
そこで更に、油膜の極少量の油分量に見合った量の着色剤粒子を、均一に分散させ且つ完全に溶解させる方法として、担体に着色剤粒子を担持させる方法を着想し検討した。
種々の担体材料について検討した結果、高吸水性樹脂粒子からなる担体に着色剤粒子を担持させた粒子(以下、複合粒子という)は、水面に投入すると一旦水面に浮き、続いて高吸水性樹脂粒子は吸水により膨張すると共に比重が大きくなって沈降するが、着色剤粒子は担体から脱離し分散して微粒子状のまま水面に浮き、油膜の少量の油分に効率良く溶解することが分かった。しかし、他の担体材料では、高吸水性樹脂粒子ほど理想的な結果は得られなかった。図1に、この複合粒子の模式図を示す。
次に、油膜試験紙とするための形状、構造について検討した。
油膜の有無を判定すべき試料に対し、現場で複合粒子を一定量秤量して用いようとすると、少量の秤量が難しい上に、屋外現場で天秤などを扱うのは不便であるため、予め複合粒子を保持させた試験紙の形態について検討した。
試行錯誤の結果、試験紙様の支持体の一端から一定の範囲に、水に入れると水分を吸収して沈殿する粒子(担体)と油溶性の着色剤粒子とからなる複合粒子を付着させ、該範囲に続いて、一定の長さの疎水性かつ親油性の素材からなるシート状物を取り付け、該シート状物の端から支持体の他端までの範囲を、油膜試験紙を持って水に漬ける際の把持部とする形態が好ましいことを見出した。
図2に、この油膜試験紙の一例の写真を示す。赤く着色しているのが複合粒子中の着色剤粒子であり、その右側の幅が数cmのやや白い部分がシート状物である。(添付図面は白黒表示で色が識別できないため、物件提出書により元のカラー写真を参考資料として添付した。)なお、この油膜試験紙を実際に用いた場合には、着色剤粒子は高吸水性樹脂粒子から脱離してそのまま水面付近に浮上し、そこに油膜があればその油に溶解してシート状物の水面と同じ位置に付着し、シート状物に吸収されて色を呈する。
支持体の形状は、油膜試験紙の把持部を持って水に漬けることさえ出来れば特に限定されない。通常は長尺状とするが長辺の二等辺三角形など適宜選択可能である。材質や厚さなども特に限定されないが、ポリプロピレンやポリエステルなどのプラスチック製シートが入手しやすく好ましい。大きさは、例えば長尺状の場合、長さ5〜15cm、幅1〜3cm程度とすることが好ましい。
担体としては高吸水性樹脂粒子を用いる。高吸水性樹脂は高分子ゲルの一種で、水溶性ポリマーを軽度に架橋したものであり、圧力を加えた状態でも保水力を維持する樹脂である。例えばアクリル酸重合体の部分ナトリウム塩架橋物には、自重の約400〜700倍の吸水能力を持つものがある。このような高吸水性樹脂は市販品を入手でき、例えば、和光純薬工業株式会社製の高吸水性ポリマー(アクリル酸塩系、吸水能400g/g)、三洋化成株式会社製のサンフレッシュST−500D(吸水能400g/g)、同サンフレッシュST−250(吸水能700g/g)などが挙げられる。
油溶性の着色剤としては、例えば、スダンIV(赤色、和光純薬工業株式会社)、クロロフィル(緑色)、カロテン(黄色)などが挙げられるが、実際に油汚染土壌の油膜を検知する際には、視認性の点で赤色のものが好ましく、安定性の点でスダンIVが特に好ましい。
複合粒子は、例えば、高吸水性樹脂粒子と着色剤粒子を乳鉢で混合すれば得られる。
着色剤粒子よりも硬度が高い高吸水性樹脂粒子を選択することにより、両者を混合した際に着色剤粒子が微粒化し、高吸水性樹脂粒子表面に着色剤の微粒子が分散性良く付着すると同時に、着色剤微粒子の再凝集を防ぐことができる。また、高吸水性樹脂粒子の粒子径は100〜700μm程度が好ましい。
複合粒子における高吸水性樹脂粒子と油溶性着色剤粒子の比率は、高吸水性樹脂粒子1重量部に対し、油溶性着色剤粒子0.0003〜0.02重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.002〜0.003重量部である。
複合粒子を付着させるには、例えば、支持体上に水溶性糊を塗布し、その上に複合粒子を均一に付着させた後、水溶性糊を乾燥させればよい。
複合粒子の付着量は、通常、0.01〜0.03g程度とする。
支持体に取り付けるシート状物の取付け位置は、油膜試験紙を水に入れた際に、水面がシート状物の位置と重なる必要があるため、通常は支持体の一端(複合粒子を付着させる側の端部)から、2.0cm以上5.0cm以下の範囲とするが、適宜変更可能である。シート状物の取付け方法は特に限定されないが、両面テープなどで貼付する方法が最も簡単である。
シート状物の素材は、着色剤粒子が付着しやすい表面状態のものが好ましく、例えば織布や不織布などが挙げられる。その材料としては、ポリプロピレン、PTFE〔テフロン(登録商標)〕、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニリデンなどが挙げられる。これらは、水に触れても吸水せず、油分に触れると吸収する、いわゆる疎水性かつ親油性の素材である。
また、油溶性着色剤が赤色の場合には、白色のシート状物の方が発色状態を視認しやすいので好ましい。
なお、本発明におけるシート状物には、テープ状物も含むものとする。
本発明の油膜試験紙の使用に際しては、油膜の有無を判定したい水面に、油膜試験紙の複合粒子付着部分を下にして静かに投入し、水面がシート状物の取付け範囲にあることを確認して3〜5分間静置する。
油膜試験紙を水に入れると、水溶性糊は水に溶解し複合粒子は支持体から遊離する。そして、高吸水性樹脂粒子は水分を吸収して膨張すると共に比重が大きくなって沈殿する。一方、着色剤粒子は水溶性でないため、高吸水性樹脂粒子から脱離して、そのまま水面付近に浮上し、そこに油膜があれば、その油に溶解してシート状物に付着する。このとき、水面上の油膜がシート状物の水面の位置に付着するので、着色剤粒子は水面の位置でシート状物に吸収されて色を呈する。その結果、付着部分の色が濃くなり視認性が良くなる。したがって油膜の有無を客観的かつ正確に判定できる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
参考例
高吸水性樹脂3.00gをメノウ乳鉢で3分間粉砕した後、油溶性着色剤を加えて1分間良く混ぜ合わせ、複合粒子を調製した。油溶性着色剤の混合量を、表1、表2に示すように、0.001gから0.100gまで変化させて5種類の複合粒子を調製した。
高吸水性樹脂には、次の(A)(B)を用いた。
(A)和光純薬工業株式会社製高吸水性ポリマー(アクリル酸塩系)(吸水能400g/
g)
(B)三洋化成株式会社製サンフレッシュST−500D(吸水能400g/g)
油溶性着色剤には、スダンIV(赤色:和光純薬株式会社製32435−72)を用いた。
次に、水50mLに軽油を添加し水面に油膜を形成させた。軽油の添加量は0.5μL(表1の場合)と1.0μL(表2の場合)の2種類とした。
これらの油膜を形成させた水面上に、前記5種類の複合粒子を、それぞれ0.01g、0.02g、0.03g加えた。5分間経過後、白色のニトフロンパイプシール〔テフロン(登録商標)テープ:日東電工株式会社製No.95S〕を2cm程度に切ったものを静かに水面に浮かべた。
次いで、1分間経過後、ピンセットでニトフロンパイプシールを取り出し、水面に接触していた方の面を観察し、次の基準で判定した。結果を表1、表2に示す。また、判定の対象となったニトフロンパイプシールの一部の写真を図3に示す。なお、添付図面は白黒表示で違いが判りにくいため、物件提出書により元のカラー写真を参考資料として添付した。
○:着色剤の赤色がニトフロンパイプシールに染み込んで赤い斑点になっている場合
△:着色剤の赤色がニトフロンパイプシールに染み込んで薄く赤い斑点になっている
が、視認性があまり良くない場合
×:赤い斑点状の染み込みがなく着色剤粒子がニトフロンパイプシールの表面に付着
しているだけか、又はニトフロンパイプシールに着色剤粒子がほとんど付着して
いない場合
<水50mLに軽油0.5μLを添加して水面に油膜を形成させた場合>
<水50mLに軽油1.0μLを添加して水面に油膜を形成させた場合>
上記表1、表2の結果から分るように、写真2、5、8、11のように判定が「〇」の試料では、着色剤の赤色がニトフロンパイプシールに染み込んで赤い斑点になっており、視認性も良好であるのに対し、写真1、4、7、10のような判定が「×」の試料では、着色剤粒子が油分の量に比較して過剰量であることが推測され、ニトフロンパイプシールの表面に溶解せずに付着している粒子が多く、赤い斑点による判断は不可能であり、写真3、6、9、12の判定が△の試料では、着色剤の赤色がニトフロンパイプシールに染み込んではいるが、その赤い斑点は薄く、視認性があまり良くなかった。
従って、視認性が良好であった高吸水性樹脂粒子(B)3.00gと着色剤粒子(スダンIV)0.01gとを混合した複合粒子を調製して用いることとした。
実施例1
本発明の油膜試験紙を、石油製品により汚染されている実際の土壌試料における油膜の有無の判定に適用した。土壌試料の種類、その「TPH(全石油系炭化水素)値」、土質を表3に示す。判定操作は次のとおりである。
参考例の場合と同様にして、高吸水性樹脂粒子(B)3.00gと、着色剤粒子(スダンIV)0.01gとを混合し、複合粒子を調製した。
長さ8.5cm、幅1cmのポリプロピレン製シートの、長さ方向の一端から2.5cmの位置の片面に、長さ1cmの参考例と同じ白色のニトフロンパイプシールを両面テープで貼付した。次いでニトフロンパイプシールの端部から前記ポリプロピレン製シートの一端までの範囲に水溶性糊を薄く塗布し、その上に、上記複合粒子0.02gを付着させた後、12時間以上乾燥して、油膜試験紙を作製した。
次に、油膜の有無を判定すべき土壌試料5gをビーカーに入れ、水を50mL加え、土壌試料が水中で良く分散するように1分間撹拌した。これを3分間静置した後、上記油膜試験紙を、把持部を持って複合粒子付着部分を下にして投入し、水面がニトフロンパイプシールの貼付した範囲に来るようにして5分間静置した。
次いで、水面上に浮遊している着色剤をニトフロンパイプシールに接触させるように、試験紙をそのままの位置で5〜7回振ったのち取り出し、ニトフロンパイプシール部を目視で観察して、下記の基準で油膜の有無を判定した。結果を表3の「本発明法による油膜有無判定」の欄に示す。また判定の対象となった一部の油膜試験紙の写真を図4に示す。なお、添付図面は白黒表示で違いが判りにくいため、物件提出書により元のカラー写真を参考資料として添付した。

「油膜有り」:着色剤がニトフロンパイプシールに染み込んで赤色又は桃色に着色している。
「油膜無し」:着色剤の染み込みによる赤色がない(着色剤微粒子がニトフロンパイプシールの表面に付着しているだけの状態)か、又はニトフロンパイプシールに付着物がない。

更に上記と同じ油膜の有無を判定すべき土壌試料を用いて、油汚染対策ガイドラインに記載のビーカー法を用いて判定を行った。結果を表3の「油膜有無判定」の欄に示すが、様々な汚染油種、TPH濃度、土質の試料について、「本発明法による油膜有無判定」の結果と完全に一致していることが分かる。

Claims (1)

  1. 支持体の一端から一定の範囲に、水に入れると水分を吸収して沈殿する高吸水性樹脂粒子(担体)と油溶性の着色剤粒子とからなる複合粒子を有し、前記範囲に続いて、一定の長さの疎水性かつ親油性の素材からなるシート状物を有し、該シート状物の端から支持体の他端までの範囲を、油膜試験紙を持って水に漬ける際の把持部とした油膜試験紙。
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