JP5634347B2 - 信号分離装置及び信号分離方法 - Google Patents
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Description
このICAは、異なる信号源から発信される信号は互いに独立であるという前提の下で、複数の信号が混信している受信信号から、複数の信号をブラインド分離抽出するものであり、音波や電波センサをはじめとする様々な分野への応用が可能である(非特許文献1を参照)。
以下、ICAの概要を説明する。
ICAは、下記の式(1)に示す混信受信モデルにおいて、互いに独立な入射信号が混信している受信信号から、各入射信号を信号分離するアルゴリズムである。
ただし、s(k)は入射信号、x(k)は受信信号、Aは入射信号の混信を表す混合行列であり、混合行列Aの各要素は混信を意味する係数である。
また、k=1,2,・・・,Kはサンプル時間のインデックス、Kは総サンプル数である。
ICAは、概して言えば、分離処理後の信号である複数の分離信号が互いに独立になるように混合行列Aを推定し、下記の式(4)に示すように、その推定混合行列Aハット(明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字の上に「^」の記号を付記することができないため、Aハットのように表記している)の(擬似)逆行列に受信信号xを乗算することで、互いに独立な分離信号ベクトルyを得るものである。
ただし、Aハットの右上の「+」の記号はAハットの擬似逆行列を意味し、Mは白色化用の行列である。
ICAでは、何らかの独立指標が最適(最大)となるように分離行列Wを推定する。
ICAでは、様々な独立指標が知られているが、例えば、独立指標として時間差相互相関値を用いるものがある。このようなICAは、TDSEP(Temporal Decorrelation Source SEParation)と称される(非特許文献2を参照)。
例えば、入射信号数が2である場合、時間差τにおける白色化受信信号zの時間差相互相関行列Rz(τ)は、下記の式(7)のように表される。
式(7)の(1,2)要素と(2,1)要素に時間差相互相関が現れているため、これらを最小化するような分離行列Wを計算する。これは式(7)の対角化を意味している。
なお、Eは期待値(または平均値)を意味する数学記号であり、Hは行列の転置を意味し、*は共役複素数を意味する。
実際には、時間差相互相関行列Rz(τ)は対称行列ではないので、下記の式(8)に示すように、時間差相互相関行列Rz(τ)を対称行列に変換し、変換後の行列Rz(τ)チルダ(明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字の上に「〜」の記号を付記することができないため、Rz(τ)チルダのように表記している)を対角化する。
一般的に、適正な時間差τの選び方は、大きく分けて以下の2種類である。
(1)ランダムに複数の時間差τを選択する方法
この方法では、最適な時間差τが選択される訳ではないが、複数の時間差τを用い
るので、安定的な分離性能が得られる。
(2)入射信号の時間差自己相関値が最大となる0以外の時間差τを選択する方法
この方法では、入射信号の周期を事前に知る必要があるため、ブラインドではない
が、時間的相関を捉える意味で最適である。
図1はこの発明の実施の形態1による信号分離装置を示す構成図である。
図1において、白色化部1は複数のアンテナにより受信された受信信号x(信号源が異なる複数の入射信号sが混信している受信信号x)を白色化し、白色化後の受信信号である白色化受信信号zを時間差相互相関計算部2及び信号分離部5に出力する処理を実施する。なお、白色化部1は白色化手段を構成している。
ピーク列抽出部3は時間差相互相関計算部2により算出された各時間差τの二乗和評価関数値J(τ)の中で、隣接している時間差τ−1,τ+1の二乗和評価関数値J(τ−1),J(τ+1)より大きく、かつ、所定の閾値thresholdより大きい二乗和評価関数値J(τ)を検出して、その二乗和評価関数値J(τ)に対応する時間差τを特定する処理を実施する。なお、ピーク列抽出部3はピーク相関値検出手段を構成している。
信号分離部5は受信信号xに混信している複数の入射信号sの周期が周期推定部4により推定された周期τ(p)と一致すると仮定して、白色化部1から出力された白色化受信信号zに混信している複数の入射信号sの信号分離を行う。
即ち、信号分離部5は独立指標として時間差相互相関値を用いる独立成分分析であるTDSEPを実施するものであり、周期推定部4により推定された周期τ(p)における白色化受信信号zの時間差相互相関値を最小化することで、その白色化受信信号zに混信している複数の入射信号sの信号分離を行う。
なお、信号分離部5は信号分離手段を構成している。
信号分離装置がコンピュータで構成される場合、白色化部1、時間差相互相関計算部2、ピーク列抽出部3、周期推定部4及び信号分離部5の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図2はこの発明の実施の形態1による信号分離装置の処理内容を示すフローチャートである。
図3において、第1周期設定部11はピーク列抽出部3により特定された複数の時間差τのうち、第1番目の時間差τを第1番目の周期τ(1)に設定する処理を実施する。
周期格納部12は設定済みの周期τ(p)(p=1,2,・・・,P)を格納する記録媒体である。
ピーク時間差/周期除算部14は次ピーク時間差選択部13により選択された第n番目の時間差τを周期格納部12により格納されている設定済みの周期τ(p)でそれぞれ除算し(第n番目の時間差τ/τ(1),第n番目の時間差τ/τ(2),・・・,第n番目の時間差τ/τ(P))、その除算したときの余りr(p)(p=1,2,・・・,P)を同一列判定部15に出力する処理を実施する。
処理終了判定部16はピーク列抽出部3により特定された全ての時間差τについて、同一列判定部15の判定処理が終了しているか否かを判定し、判定処理が終了していなければ、現時点で未だ選択していない時間差τの選択を次ピーク時間差選択部13に指示する処理を実施する。
図1の信号分離装置は、概略的には、時間差τの時間差相互相関行列Rz(τ)の非対角項である白色化受信信号zの時間差相互相関値が大きい時間差τを選択し、その時間差τをTDSEPに設定するものである。
ただし、理想的な周期信号の場合、時間差相互相関行列Rz(τ)には、各入射信号sの周期でピークが立つため、それぞれのピーク列から1つずつ時間差τを選択するようにする。
即ち、所定の範囲内にある各々の時間差τ毎に、白色化受信信号zの時間差相互相関値を計算し、その計算結果の中で、ピークを有する時間差相互相関値に対応する時間差τを選択する。
複数の時間差τを選択すると、それらの時間差τの列から各ピーク列に対応する周期τ(p)を推定する。
信号受信部(図示せぬ)は、複数のアンテナが混合信号(信号源が異なる複数の入射信号sが混合している信号)を受信すると(図12を参照)、その混合信号に対するA/D変換処理等の受信処理を実施して、ディジタルの混合信号である受信信号xを白色化部1に出力する。
白色化部1は、ディジタルの受信信号xを受けると、下記の式(11)に示すように、その受信信号xを白色化し、白色化後の受信信号である白色化受信信号zを時間差相互相関計算部2及び信号分離部5に出力する(ステップST1)。受信信号xの白色化の処理自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
ただし、Mは白色化用の行列である。
例えば、入射信号数が2である場合、時間差τにおける白色化受信信号zの時間差相互相関行列Rz(τ)は、下記の式(12)のように表される。
式(12)の(1,2)要素と(2,1)要素に時間差相互相関が現れているため、これらを最小化するような分離行列Wを計算する。これは式(12)の対角化を意味している。
なお、Eは期待値(または平均値)を意味する数学記号であり、Hは行列の転置を意味し、*は共役複素数を意味する。
ただし、off(.)は行列の非対角項を意味する。
また、Rzj1j2チルダは、行列Rzチルダの第(j1,j2)要素であることを意味し、j1≠j2は非対角項を意味している。
時間差相互相関行列Rz(τ)に代入する時間差τは離散的な値であり、例えば、受信信号xの長さが2000であれば、0〜1000の間の離散的な値である。
図4は時間差相互相関計算部2による二乗和評価関数値J(τ)の算出例を示す説明図であり、各時間差τの二乗和評価関数値J(τ)が算出されている。
入射信号sの周期に対応する時間差τの二乗和評価関数値J(τ)は大きなピークとなるが、入射信号sの周期に対応していない時間差τの二乗和評価関数値J(τ)にも小さなピークが立つことがあり、その小さなピークと本来の大きなピークを区別する必要がある。
ただし、mean(.)は平均値の計算を意味している。
図5の例では、14個の二乗和評価関数値J(τ)が検出されて、14個の時間差τが特定されている。
図6は周期推定部4による周期推定方法の概要を示す説明図である。
周期推定部4では、周期的なピークの時間差は、周期の整数倍の時間差に存在する性質を利用し、最初のピークの時間差から順番に時間差の割り算を行い、余りが小さければ、同一周期のピーク列に存在し、余りが大きければ、異なる周期のピーク列に属するとみなすことで、それぞれの周期を検出する方法を採用している。
なお、第1周期設定部11により設定された第1番目の周期τ(1)は周期格納部12により格納される。
ピーク時間差/周期除算部14は、次ピーク時間差選択部13から第n番目の時間差τを受けると、第n番目の時間差τを周期の候補τcとして、その周期の候補τcを周期格納部12により格納されている設定済みの周期τ(p)で除算し、その除算したときの余りr(p)を同一列判定部15に出力する。
即ち、ピーク時間差/周期除算部14は、mod(τc,τ(p))を演算することにより、除算時の余りr(p)を同一列判定部15に出力する。なお、mod(a,b)はaをbで割った余りを返す関数である。
なお、ピーク時間差/周期除算部14からP個の余りr(1),r(2),・・・,r(P)を受けていれば、P個の余りr(1),r(2),・・・,r(P)と所定値εをそれぞれ比較する。
例えば、ピーク時間差/周期除算部14からP個の余りr(1),r(2),・・・,r(P)を受けているとき、余りr(2)だけが所定値εより小さければ、第n番目の時間差τを設定済みの周期τ(2)で現れる時間差のグループに分類する。
なお、同一列判定部15により設定された第P+1番目の周期τ(P+1)は周期格納部12により格納される。
一方、判定処理が終了していれば、設定済みの周期τ(p)の出力を周期格納部12に指示する。
なお、M個の周期τ(p)が設定されていれば、周期格納部12からM個の周期τ(1),τ(2),・・・,τ(M)が信号分離部5に出力される。
しかし、ピーク出現誤差は正負両方に出るため、mod(τc,τ(p))を演算する他に、τ(p)−mod(τc,τ(p))も演算して、双方の演算から得られる余りr(p)を所定値εと比較する検定を行うようにしてもよい。
なお、検定式は、下記の式(16)の通りである。
即ち、信号分離部5は、TDSEPにおける時間差パラメータとして、周期推定部4から出力されたM個の周期τ(1),τ(2),・・・,τ(M)を順番に設定し、その設定した周期τ(p)における白色化受信信号zの時間差相互相関値を最小化することで、その白色化受信信号zから当該周期τ(p)を有する入射信号sを信号分離する。
例えば、周期τ(4)が周期τ(1)の整数倍である場合、周期τ(4)又は周期τ(1)の一方だけを信号分離部5に出力して、他方の周期を信号分離部5に出力しないようにする。この場合、TDSEPにおける時間差パラメータとして、周期τ(1)が設定されれば、周期τ(4)は設定されず、周期τ(4)が設定されれば、周期τ(1)は設定されない。
ここでは、周期が“30”の入射信号と、周期が“74”の入射信号と、周期が“77”の入射信号との3波が混信している受信信号(周期性ガウス信号)が受信される場合のシミュレーション結果について説明する。
図7は3波の入射信号の時間差自己相関を示す説明図である。
図7より明らかなように、各入射信号は周期的にピークを有している。ただし、入射信号の周期は事前に分からないため未知である。
また、図10は実施の形態1による信号分離装置及び従来の信号分離装置における入射信号の分離性能のシミュレーション結果を示す説明図である。
図8から明らかなように、白色化受信信号zの時間差相互相関には、各入射信号sの周期でピークが現れる。
このシミュレーションでは、図9に示すように、TDSEPにおける時間差パラメータとして、時間差τ(τ=30,74,77)が設定されており、3波の入射信号の周期“30”,“74”,“77”と一致している。
この実施の形態1による信号分離装置によれば、図10に示すように、従来の信号分離装置(時間差τをランダムに選択する方法を用いる信号分離装置)よりも、入射信号の分離性能が約20dB改善している。
上記実施の形態1では、周期推定部4が、ピーク列抽出部3により特定された複数の時間差τの中から任意の時間差τを選択し、その時間差τを設定済みの周期τ(p)で除算した場合の余りr(p)が所定値εより小さければ、その時間差τを周期τ(p)で現れる時間差τのグループに分類し、その余りr(p)が所定値εより大きければ、その選択した時間差τを周期τ(p)以外の周期で現れる時間差τのグループに分類するものを示したが、図11に示すように、周期推定部4がPRI変換部4aを内蔵し、PRI変換部4aが、ピーク列抽出部3により特定された複数の時間差τをPRI変換することで、複数の時間差τの中で、同じ周期で現れる時間差τを特定して、その時間差τのグループ分け(同じ周期で現れる時間差τは同じグループに分類)を行うようにしてもよく、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、PRI変換は、公知の技術であるため詳細な説明は省略するが(例えば、特公昭62−26603号公報を参照)、異なる周期を持つピーク列が混在しているピーク列から、それぞれのピーク列を検出して、それぞれのピーク列の周期を検出するアルゴリズムである。
Claims (6)
- 信号源が異なる複数の入射信号が混信している受信信号を白色化する白色化手段と、上記白色化手段により白色化された受信信号におけるピーク間の時間差を変数とする上記受信信号の時間差相互相関行列を生成し、所定の範囲内の任意の時間差を上記時間差相互相関行列に順次代入して、各時間差の相互相関値を算出する相互相関値算出手段と、上記相互相関値算出手段により算出された各時間差の相互相関値の中で、隣接している時間差の相互相関値より大きく、かつ、所定の閾値より大きい相互相関値を検出して、その検出した相互相関値に対応する時間差を特定するピーク相関値検出手段と、上記ピーク相関値検出手段により特定された複数の時間差の中で、同じ周期で現れる時間差を同一のグループに分類し、各グループに属している時間差の周期を推定する周期推定手段と、上記入射信号の周期が上記周期推定手段により推定された周期と一致すると仮定して、上記白色化手段により白色化された受信信号に混信している複数の入射信号の信号分離を行う信号分離手段とを備えた信号分離装置。
- 信号分離手段は、独立指標として時間差相互相関値を用いる独立成分分析であるTDSEPを実施するものであり、周期推定手段により推定された周期における受信信号の時間差相互相関値を最小化することで、上記受信信号に混信している複数の入射信号の信号分離を行うことを特徴とする請求項1記載の信号分離装置。
- 周期推定手段は、あるグループに属している時間差の周期が、他のグループに属している時間差の周期の整数倍である場合、どちらか一方のグループに属している時間差の周期だけを推定結果として信号分離手段に出力することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号分離装置。
- 周期推定手段は、ピーク相関値検出手段により特定された複数の時間差の中から任意の時間差を選択し、上記時間差を推定済みの周期で除算した場合の余りが所定値より小さければ、上記時間差を上記周期で現れる時間差のグループに分類し、上記余りが所定値より大きければ、その選択した時間差を上記周期以外の周期で現れる時間差のグループに分類することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号分離装置。
- 周期推定手段は、ピーク相関値検出手段により特定された複数の時間差をPRI変換することで、上記複数の時間差の中で、同じ周期で現れる時間差を特定して、同じ周期で現れる時間差を同一のグループに分類することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号分離装置。
- 白色化手段が、信号源が異なる複数の入射信号が混信している受信信号を白色化する白色化処理ステップと、相互相関値算出手段が、上記白色化処理ステップで白色化された受信信号におけるピーク間の時間差を変数とする上記受信信号の時間差相互相関行列を生成し、所定の範囲内の任意の時間差を上記時間差相互相関行列に順次代入して、各時間差の相互相関値を算出する相互相関値算出処理ステップと、ピーク相関値検出手段が、上記相互相関値算出処理ステップで算出された各時間差の相互相関値の中で、隣接している時間差の相互相関値より大きく、かつ、所定の閾値より大きい相互相関値を検出して、その検出した相互相関値に対応する時間差を特定するピーク相関値検出処理ステップと、周期推定手段が、上記ピーク相関値検出処理ステップで特定された複数の時間差の中で、同じ周期で現れる時間差を同一のグループに分類し、各グループに属している時間差の周期を推定する周期推定処理ステップと、信号分離手段が、上記入射信号の周期が上記周期推定処理ステップで推定された周期と一致すると仮定して、上記白色化処理ステップで白色化された受信信号に混信している複数の入射信号の信号分離を行う信号分離処理ステップとを備えた信号分離方法。
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