JP5634311B2 - 生体音処理装置および生体音処理方法 - Google Patents

生体音処理装置および生体音処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、貼付型の生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理装置および生体音処理方法に関する。
心音など、生体音の音響信号を取得する生体音センサは、広く使用されている。また、生体音の解析処理など、生体音センサの音響信号(以下、単に「音響信号」という)に対する処理を行う生体音処理装置は、従来から存在している。ところが、音響信号には、各種のノイズ成分が混入し得る。ノイズ成分の混入は、生体音に対する解析精度を低下させる。
そこで、例えば、特許文献1には、皮膚などの体表面に接触する瞬間に発生するノイズ成分を低減する技術が、記載されている。特許文献1記載の技術は、生体音センサの体表面との接触面にスイッチを設け、接触面が体表面に触れるタイミングに音響信号をミュートさせる。また、例えば、特許文献2には、人の呼吸音以外の音成分をノイズ成分として検出する技術が、記載されている。特許文献2記載の技術は、直前の呼吸の1サイクルと次の呼吸の1サイクルとの間で音響信号を比較することにより、咳や鼻すすりなどによるノイズ成分が含まれる区間を判定し、その区間のデータを解析対象から除外する。これらの従来技術では、ノイズ成分の混入による生体音の解析精度の低下を抑えることができる。
特開平10−24033号公報 特開2009−261518号公報
ところで、近年の生体音センサは、長時間の連続的な生体音の解析などを目的として、医療用両面テープなどにより体表面に貼り付けて使用されるタイプのものが普及している。このような貼付型の生体音センサの場合は、体表面に対する接着不良や、音響信号を伝送するリード線の取付不良など、生体音センサの様々な取り付け状態に起因したノイズ成分が問題となる。
しかしながら、上述の実施の形態1および実施の形態2記載の技術では、生体音センサの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を、十分に抑えることができないという課題がある。なぜなら、このようなノイズ成分は、生体音センサを体表面に取り付けた後に継続的に発生するが、このような継続的なノイズ成分を、特許文献1記載の技術および特許文献2記載の技術のいずれも検出することができないからである。
そこで、生体音センサの現状の取り付け状態を示す情報を出力することが考えられる。このような情報を出力することができれば、生体音センサの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を抑えることが可能になるからである。
本発明の目的は、生体音センサの現状の取り付け状態を示す情報を出力することができる、生体音処理装置および生体音処理方法を提供することである。
本発明の生体音処理装置は、体表面に取り付けられる生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理装置であって、前記音響信号から、前記音響信号に含まれるノイズ成分を抽出するノイズ抽出部と、抽出された前記ノイズ成分を、前記生体音センサのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、前記分類の結果に対応した情報を出力するノイズ分類判定部とを有する。
本発明の生体音処理方法は、体表面に取り付けられる生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理方法であって、前記音響信号から、前記音響信号に含まれるノイズ成分を抽出するステップと、抽出した前記ノイズ成分を、前記生体音センサのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、前記分類の結果に対応した情報を出力するステップとを有する。
本発明によれば、生体音センサの現状の生体音センサ取り付け状態を示す情報を出力することができる。
本発明の実施の形態1に係る生体音処理装置の構成を示すシステム構成図 本発明の実施の形態2に係る生体音処理装置の構成の一例を示すブロック図 本実施の形態2における生体音センサの取り付け状態の一例を示す模式図 本実施の形態2におけるノイズ分類判定部の構成の一例を示すブロック図 本実施の形態2におけるノイズ種類対策対応表の内容の一例を示す図 本実施の形態2に係る生体音処理装置の動作の一例を示すフローチャート 本実施の形態2における取り付け状態が良い場合の音響信号のスペクトログラムの一例を示す図 本実施の形態2における取り付け状態が悪い場合の音響信号のスペクトログラムの第1の例を示す図 本実施の形態2における取り付け状態が悪い場合の音響信号のスペクトログラムの第2の例を示す図 本実施の形態2における取り付け状態が悪い場合の音響信号のスペクトログラムの第3の例を示す図 本実施の形態2における呼吸と連動するパルス性ノイズの場合の呼吸音成分の周波数帯のパワーを示す第1の図 本実施の形態2における呼吸と連動するパルス性ノイズの場合の呼吸音成分の状態を示す第2の図 本実施の形態2における呼吸と連動するパルス性ノイズの場合のノイズ成分の状態を示す第1の図 本実施の形態2における呼吸と連動するパルス性ノイズの場合のノイズ成分の状態を示す第2の図 本実施の形態2における呼吸と連動しないパルス性ノイズの場合の呼吸音成分の状態を示す第1の図 本実施の形態2における呼吸と連動しないパルス性ノイズの場合の呼吸音成分の状態を示す第2の図 本実施の形態2における呼吸と連動しないパルス性ノイズの場合のノイズ成分の状態を示す第1の図 本実施の形態2における呼吸と連動しないパルス性ノイズの場合のノイズ成分の状態を示す第2の図
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態1は、本発明の基本的態様の例であり、本発明の実施の形態2は、本発明の具体的態様の例である。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る生体音処理装置の構成を示すシステム構成図である。なお、図1は、発明を分かり易く説明するため、本実施の形態に係る生体音処理装置が用いられる生体音処理システムの構成についても併せて図示する。
図1において、生体音処理システム100は、生体音センサ200、本発明に係る生体音処理装置300、および情報出力装置400を有する。
生体音センサ200は、被験者の体表面に取り付けられるセンサである。より具体的には、生体音センサ200は、例えば、医療用両面テープ(以下単に「両面テープ」という)などにより体表面に接着されて使用される貼付型の生体音センサである。そして、生体音センサ200は、体内から体表面に伝播した音を体表面の振動として直接的に、または、体表面の近傍の空気の振動として間接的に、検出する。そして、生体音センサ200は、検出したこれらの振動(以下「音」と総称する)を検出し、検出した音の波形を示す音響信号を出力する。ただし、この生体音センサ200から出力される音響信号(以下単に「音響信号」という)には、上述の通り、皮膚への接着不良など、生体音センサ200の取り付け状態に起因したノイズ成分が混入し得る。
生体音処理装置300は、上述の音響信号に対する処理を行う装置である。生体音処理装置300は、ノイズ抽出部320およびノイズ分類判定部340を有する。ノイズ抽出部320は、音響信号から、音響信号に含まれるノイズ成分を抽出する。ノイズ分類判定部340は、抽出されたノイズ成分を、生体音センサ200のそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、その分類の結果に対応した情報を出力する。
例えば、ノイズ分類判定部340は、抽出されたノイズ成分を、接着面の接着力が弱っている状態またはリード線の取り付け状態等に対応したノイズ種類に分類する。例えば、接着面の接着力が弱っている状態と対応したノイズ種類とは、接着面の接着力が弱っていることに起因して発生するノイズ成分の種類である。
情報出力装置400は、生体音処理装置300の分類結果に対応した情報を出力する。例えば、情報出力装置400は、生体音センサ200が接着面の接着力が弱っている状態にある旨の情報を画面表示する。この情報を見たユーザは、例えば、生体音センサ200の両面テープを新しいものに交換したり、体表面を拭いたりすることになる。その結果、生体音センサ200の体表面への接着度が増し、ノイズ成分が低減する。
なお、生体音処理装置300は、例えば、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)などの記憶媒体、およびRAM(random access memory)などの作業用メモリをそれぞれ有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
このような生体音処理装置300は、音響信号に含まれるノイズ成分を、生体音センサ200の取り付け状態に対応付けることができる。これにより、生体音処理装置300は、生体音センサ200の現状の取り付け状態を示す情報を出力することができる。したがって、生体音処理装置300は、例えば、生体音センサ200の取り付け状態の改善をユーザに促がすことができるので、生体音センサ200の取り付け状態に起因するノイズ成分による生体音の解析精度の低下を抑えることができる。
以上のように、本実施の形態の生体音処理装置は、体表面に取り付けられる生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理装置であって、前記音響信号から、前記音響信号に含まれるノイズ成分を抽出するノイズ抽出部と、抽出された前記ノイズ成分を、前記生体音センサのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、前記分類の結果に対応した情報を出力するノイズ分類判定部と、を有するものである。これにより、本実施の形態の生体音処理装置は、生体音センサの現状の取り付け状態を示す情報を出力することができ、生体音センサの取り付け状態に起因するノイズ成分による生体音の解析精度の低下を抑えることができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、本発明を、人の心音または呼吸音(肺音)を生体音として測定する生体音処理装置に適用した例である。
図2は、本実施の形態に係る生体音処理装置の構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る生体音処理装置は、実施の形態1の図1と同様の生体音処理システムにおいて用いられる。
図2において、生体音処理装置300aは、音響信号入力部310a、ノイズ抽出部320a、呼吸音抽出部330a、ノイズ分類判定部340a、ノイズ対策案内部350a、ノイズ分量判定部360a、ノイズ対策制御部370a、およびノイズ信号処理部380aを有する。
音響信号入力部310aは、生体音センサの音響信号を入力し、ノイズ抽出部320a、呼吸音抽出部330a、およびノイズ信号処理部380aへ出力する。この音響信号には、上述の通り、皮膚への接着不良など、生体音センサの取り付け状態に起因したノイズ成分が混入し得る。
図3は、生体音センサの取り付け状態の一例を示す模式図である。
図3に示すように、生体音センサ200aは、人の体表面510に取り付けられる本体部210aと、本体部210aに接続されたリード線220aとを有する。
本体部210aの体表面510と接着されるべき面(以下「接着面」という)230aは、例えば、両面テープ520により、体表面510と接着される。すなわち、接着面230aと両面テープ520の上部、および、両面テープ520の下部と体表面510は、生体音センサ200aの使用時には、それぞれ密着される。ここでは、図中での視認性確保のため、これらを離隔した状態で示す。
また、リード線220aは、例えば、サージカルテープ530等により、本体部210aに近い位置で、体表面510に固定される。
これらの接着および固定により、生体音センサ200aは、体表面510に取り付けられる。具体的には、生体音センサ200aは、例えば、人の胸部や頸部の皮膚表面に取り付けられる。
本体部210aは、振動センサタイプまたは音響センサタイプ(マイクロホンタイプ)のセンサであり、接着面230aで音を検出する。そして、本体部210aは、検出した音の波形を示す音響信号を、リード線220aへ出力する。振動センサタイプのセンサは、接着面230aが接する体表面の振動を直接的に振動として検知するセンサである。音響センサタイプのセンサは、接着面230aが接する体表面の振動を空気の振動を介して音として検知するセンサである。
生体音は、振動として体表面510に現れる。そして、生体音は、接着面230aが体表面510と一体的に振動することにより、本体部210aで検出され、音響信号に変換されて、リード線220aを伝送される。ところが、音響信号は、接着面230aの体表面510との接着状態やリード線220aの取り付け状態によって、ノイズ成分が混入する。
例えば、体表面510は、被験者の呼吸により収縮する。一方、接着面230aは、合成樹脂など収縮しにくい材質が用いられる。したがって、生体音センサ200aの音響信号には、両面テープ520と体表面510との間の接着力が弱いと、呼吸による体表面510の収縮過程の特定の時点で、パルス性のノイズ成分が混入する。例えば、音響信号には、呼吸中の体表面510が広がるタイミングごとに、ノイズ成分が発生することになる。
また、両面テープ520と体表面510との間の接着力が十分であっても、リード線220aのテンションが高い場合、呼吸に同期してテンションの強弱が発生し、生体音センサ200aの音響信号には、パルス性のノイズ成分が混入する。
また、接着面230aと両面テープ520との間に気泡がある場合や、リード線220aが他の物体と断続的に当たる場合、生体音センサ200aの音響信号には、呼吸に同期しないパルス性のノイズ成分が混入する。
また、リード線220aが継続的に接触するものがあり、擦れている場合、生体音センサ200aの音響信号には、摩擦性のノイズ成分が混入する。なお、摩擦性のノイズ成分は、手持ちで生体音センサ200aを体表面510に押し当てる場合にも発生し得るが、生体音センサ200aの体表面510への貼り付けを前提とする本実施の形態では対象外とする。
図2のノイズ抽出部320aは、音響信号から、音響信号に含まれるノイズ成分を抽出し、抽出したノイズ成分のパワーの時系列信号(以下「パワー波形」という)を、ノイズ分類判定部340aおよびノイズ分量判定部360aへ出力する。音響信号に混入し得るノイズ成分の周波数帯域は、広い。しかし、心音および呼吸音の周波数帯域の上限は、1kHz程度である。したがって、ノイズ抽出部320aは、例えば、HPF(ハイパスフィルタ)により1kHz以上の信号を取り出し、所定の短区間ごとに求めたパワーの時系列信号を、ノイズ成分のパワー波形として抽出する。所定の短区間は、例えば、元の音響信号のサンプリング周波数が48kHzであるとき、480ポイントの区間である。この場合、ノイズ成分のパワー波形のサンプリング周波数は、100Hzとなる。
呼吸音抽出部330aは、音響信号から、音響信号に含まれる呼吸音成分を抽出し、抽出した呼吸音成分のパワー波形を、ノイズ分類判定部340aへ出力する。ノイズ成分が少ない1kHz以下の周波数帯域のうち、低域には心音が含まれる。したがって、呼吸音抽出部330aは、例えば、BPF(バンドパスフィルタ)により500Hz以上1kHz以下の信号を取り出し、上述の所定の短区間ごとに求めたパワーの時系列を、呼吸音成分のパワー波形として抽出する。
ノイズ分類判定部340aは、抽出されたノイズ成分を、生体音センサ200aのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類する。そして、ノイズ分類判定部340aは、分類の結果を、ノイズ対策案内部350aへ出力する。ノイズ成分の分類の詳細およびこの分類を行うためのノイズ分類判定部340aの構成の詳細については、後述する。
ノイズ対策案内部350aは、ノイズ成分の分類の結果に応じて、ノイズ対策の案内を行う。より具体的には、ノイズ対策案内部350aは、抽出されたノイズ成分のノイズ種類と対応した取り付け状態が、改善すべきものであるか否かを判断する。そして、ノイズ対策案内部350aは、改善すべきものと判断したとき、その内容を通知する情報を、情報出力装置(図1参照)へ出力する(以下、「ノイズ対策の案内」という)。ただし、ノイズ対策案内部350aは、後述のノイズ対策制御部370aから、ノイズ対策の案内を行うか否かの制御(つまり、上記取り付け状態が改善すべきものであるか否かの判断)を受ける。ノイズ対策案内部350aにおける、案内すべきノイズ対策の決定手法の詳細については、後述する。
ノイズ分量判定部360aは、ノイズ成分のパワー波形から、音響信号におけるノイズ成分の強さをノイズ分量として定量化し、ノイズ対策制御部370aへ出力する。より具体的には、ノイズ分量判定部360aは、ノイズ成分のパワー波形が、予め設定した第1の閾値を超える区間の、一定時間における頻度または区間比率を、ノイズ分量として求める。この一定時間は、例えば、呼吸音成分のパワー波形が、予め設定した第2の閾値を超える区間の長さである。
ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量に基づいて、ノイズ対策を制御する。より具体的には、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が、予め設定した第3の閾値を超えたことを条件として、ノイズ対策案内部350aに対してノイズ対策の案内を指示する。また、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が、第3の閾値を超えていないことを条件として、ノイズ信号処理部380aに対して、後述の信号処理によるノイズ対策を指示する。なお、ノイズ分量は、生体音の測定開始後において、数回の呼吸周期の間に減少する特性を有する場合がある。このような特性を踏まえて、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が減少傾向にある間、閾値判定を保留し、ノイズ対策を行わないようにしてもよい。
ノイズ信号処理部380aは、抽出されたノイズ成分の影響が少なく、取り付け状態を特に改善する必要がないとき、音響信号に対し、一般的なノイズ成分除去のための信号処理を行う。より具体的には、ノイズ信号処理部380aは、周波数領域あるいは時間領域において、ノイズ成分が存在し得る領域をマスクするなどの信号処理を行い、音響信号に基づく生体音測定におけるノイズ成分の影響を低減する。ただし、ノイズ信号処理部380aは、上述の通り、ノイズ対策制御部370aから、信号処理によるノイズ対策を行うか否かの制御(つまり、上記取り付け状態の改善が不要であるか否かの判断)を受ける。
なお、生体音処理装置300aは、例えば、CPU、制御プログラムを格納したROMなどの記憶媒体、およびRAMなどの作業用メモリをそれぞれ有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
このような生体音処理装置300aは、音響信号に含まれるノイズ成分を、生体音センサ200aの取り付け状態に対応付けることができる。したがって、生体音処理装置300aは、生体音センサ200aの取り付け状態の改善をユーザに促がすことができるので、生体音センサ200aの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を抑えることができる。また、生体音処理装置300aは、取り付け状態を改善する必要がないときは、ノイズ成分除去のための信号処理を行う。したがって、生体音処理装置300aは、取り付け直しの頻度を抑えつつ、生体音センサ200aの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を低減することができ、ユーザの負担を軽減することができる。
次に、ノイズ成分の分類の詳細およびこの分類を行うためのノイズ分類判定部340aの構成の詳細について説明する。
図4は、ノイズ分類判定部340aの構成の一例を示すブロック図である。
図4において、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ短期変化分析部341a、ノイズ長期変化分析部342a、呼吸音長期変化分析部343a、および変化速度・同期性判定部344aを有する。
ノイズ短期変化分析部341aは、ノイズ成分のパワー波形から、一般的な呼吸の周期の最小値よりも短い周期の変化(高い周波数の成分)のうち、最もパワーの大きい周波数帯(以下「ノイズ成分の短期ピーク周波数帯」という)を抽出する。そして、ノイズ短期変化分析部341aは、抽出したノイズ成分の短期ピーク周波数帯を、変化速度・同期性判定部344aへ出力する。この抽出は、例えば、ノイズ成分のパワー波形をポイント数50のFFT(ファーストフーリエ変換)によって処理することにより行うことができる。ノイズ成分の短期ピーク周波数帯は、音響信号のノイズ成分がパルス性のものであるとき、高くなり、音響信号のノイズ成分が摩擦性のものであるとき、低くなる。
ノイズ長期変化分析部342aは、ノイズ成分のパワー波形から、一般的な呼吸の周期の最小値よりも長い周期の変化(低い周波数の成分)において、周波数帯ごとのパワーの大きさの順位付けを行う。そして、ノイズ長期変化分析部342aは、各周波数帯のパワー順位(以下「ノイズパワー順位」という)を、変化速度・同期性判定部344aへ出力する。ノイズパワー順位の上位の周波数帯は、ノイズ成分の原因と呼吸との関連性が高いとき、後述の呼吸音ピーク周波数帯を含むことになる。
呼吸音長期変化分析部343aは、呼吸音成分のパワー波形から、一般的な呼吸の周期の最小値よりも長い周期の変化(低い周波数の成分)において、最もパワーの大きい周波数帯(以下「呼吸音ピーク周波数帯」という)を抽出する。そして、呼吸音長期変化分析部343aは、抽出した呼吸音ピーク周波数帯を、変化速度・同期性判定部344aへ出力する。呼吸音ピーク周波数帯は、呼吸の周期を高精度に示す。
変化速度・同期性判定部344aは、ノイズ成分の短期ピーク周波数帯に基づいて、ノイズ成分のパワー波形の変化が速いか遅いか(ノイズ成分のパワーの変化速度)を判定する。そして、変化速度・同期性判定部344aは、ノイズ成分のパワー波形の変化が速いか遅いかに基づいて、そのノイズ成分がパルス性のものであるか摩擦性のものであるかを判定する。
より具体的には、変化速度・同期性判定部344aは、例えば、ノイズ成分の短期ピーク周波数帯が10Hz以上であるとき、音響信号のノイズ成分がパルス性のものであると判定する。また、変化速度・同期性判定部344aは、ノイズ成分の短期ピーク周波数帯が10Hz未満であるとき、音響信号のノイズ成分が摩擦性のものであると判定する。
また、変化速度・同期性判定部344aは、呼吸音ピーク周波数帯に基づいて、ノイズ成分の発生が呼吸と同期しているか否かを判定する。より具体的には、変化速度・同期性判定部344aは、ノイズパワー順位の上位の周波数帯に、呼吸音ピーク周波数帯が含まれるか否かを判定する。すなわち、変化速度・同期性判定部344aは、呼吸音成分のパワー波形の変化と、ノイズ成分のパワー波形の変化とを照らし合わせて、これらが連動しているか否かを判定する。そして、変化速度・同期性判定部344aは、ノイズ成分の発生が呼吸と同期しているとき、ノイズ成分が呼吸同期性のものであると判定する。また、変化速度・同期性判定部344aは、ノイズ成分の発生が呼吸と同期していないとき、ノイズ成分が呼吸非同期性のものであると判定する。
なお、変化速度・同期性判定部344aは、音響信号のノイズ成分が摩擦性のものである(パルス性のものではない)と判定した場合は、必ずしもノイズ成分と呼吸との同期性の判定を行わなくてもよい。また、ノイズ成分と呼吸との同期性を精度よく判定するには、2呼吸周期程度の時間スパンの分析が必要である。したがって、変化速度・同期性判定部344aは、この時間スパンの分析が完了するまでは、同期性の判定を行わないようにしてもよい。
変化速度・同期性判定部344aは、上述の判定結果に基づいて、音響信号のノイズ成分を、生体音センサ200aのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類する。そして、変化速度・同期性判定部344aは、どのノイズ種類に分類したかを示すノイズ分類結果を、図2のノイズ対策案内部350aへ出力する。
本実施の形態において、複数のノイズ種類とは、例えば、「摩擦性ノイズ」、「呼吸と連動しないパルス性ノイズ」、および「呼吸と連動するパルス性ノイズ」の3つである。
変化速度・同期性判定部344aは、音響信号のノイズ成分が摩擦性のものであるとき、そのノイズ成分を「摩擦性ノイズ」に分類する。変化速度・同期性判定部344aは、音響信号のノイズ成分がパルス性のものであり、かつ、呼吸非同期性のものであるとき、そのノイズ成分を「呼吸と連動しないパルス性ノイズ」に分類する。変化速度・同期性判定部344aは、音響信号のノイズ成分がパルス性のものであり、かつ、呼吸同期性のものであるとき、そのノイズ成分を「呼吸と連動するパルス性ノイズ」に分類する。
次に、各ノイズ種類と取り付け状態との対応付けの詳細、および、ノイズ対策案内部350aにおける案内すべきノイズ対策の決定手法の詳細について説明する。
ノイズ対策案内部350aは、ノイズ種類対策対応表を予め格納している。ノイズ種類対策対応表とは、各ノイズ種類と取り付け状態との対応関係、および、取り付け状態とユーザに対して案内すべきノイズ対策との対応関係を記述した情報である。そして、ノイズ対策案内部350aは、ノイズ分類結果が入力されるごとに、このノイズ種類対策対応表を参照する。そして、ノイズ対策案内部350aは、ノイズ分類結果が示すノイズ種類に対応するノイズ対策を、ユーザに促す(案内する)ノイズ対策として決定する。
図5は、ノイズ種類対策対応表の内容の一例を示す図である。
図5に示すように、ノイズ種類対策対応表610は、各ノイズ種類611に対応付けて、生体音センサ200aの取り付け状態であるリード線220aの状態612および接着面230aの状態613を記述する。また、ノイズ種類対策対応表610は、各ノイズ種類611(リード線220aの状態612と接着面230aの状態613との組)に対応付けて、ノイズ対策614を記述する。
リード線220aの状態612と接着面230aの状態613との組は、対応するノイズ成分の要因となっている可能性が高い、生体音センサ200aの取り付け状態である。ノイズ対策614は、対応するノイズ成分の要因を取り除くための有効な手段の1つであり、案内すべきノイズ対策である。
ノイズ種類対策対応表610には、例えば、「摩擦性ノイズ」というノイズ種類611に対応付けて、「リード線と擦れているものが無いか、確認してください。」というノイズ対策614が記述される。これは、「リード線と接触するものがあり、擦れている。」というリード線220aの状態612(第1の状態)が、摩擦性ノイズの要因である可能性が高いからである。
また、ノイズ種類対策対応表610には、例えば、「呼吸と連動しないパルス性ノイズ」というノイズ種類611に対応付けて、「センサと両面テープの間に気泡が入らないように気をつけて、貼り直して下さい。また、ノイズ種類対策対応表610には、リード線と当たるものがないか、確認して下さい。」というノイズ対策614が記述される。これは、「リード線と接触するものがあり、断続的に当たっている。」というリード線220aの状態612が、呼吸と連動しないパルス性ノイズの要因である可能性が高いからである。また、これは、「センサと両面テープ(上部)の間に気泡が入っている。」という接着面230aの状態613(第2の状態)が、呼吸と連動しないパルス性ノイズの要因である可能性が高いからである。
更に、ノイズ種類対策対応表610には、例えば、「呼吸と連動するパルス性ノイズ」というノイズ種類611に対応付けて、「両面テープを貼り替えて、強く押して下さい。また、リード線のテンションが高くないか確認して下さい。」というノイズ対策614が記述される。これは、「リード線のテンションが高い。」というリード線220aの状態612が、呼吸と連動するパルス性ノイズの要因である可能性が高いからである。また、同様に、「両面テープ(下部)と体表面の接着力が弱い。」という接着面230aの状態613(第3の状態)が、呼吸と連動するパルス性ノイズの要因である可能性が高いからである。
なお、ノイズ種類対策対応表610は、リード線220aの状態612および接着面230aの状態613について、必ずしも記述していなくてもよい。
また、ノイズ種類対策対応表610は、ノイズ対策614として、リード線220aの状態612に対応するものと、接着面230aの状態613に対応するものとを個別に記述してもよいし、いずれか一方のみを記述してもよい。また、ノイズ種類対策対応表610は、生体音センサ200aの取り付け状態に関連する他の要因についても、これ取り除くための手段を、ノイズ対策614として記述してもよい。
更に、ノイズ種類対策対応表610は、ノイズ対策614を複数の段階に分けて記述してもよい。この場合、生体音センサ200aは、例えば、1回目は第1段階目のノイズ対策614を選択し、2回目は第2段階目のノイズ対策614を選択する。生体音センサ200aの貼り替え作業は、比較的負担が大きい。したがって、ノイズ種類対策対応表610は、第1段階目のノイズ対策614として、リード線に当たるものが無いかの確認を記述し、第2段階目のノイズ対策614として、生体音センサ200aの貼り替えを記述すればよい。
次に、生体音処理装置300aの動作について説明する。
図6は、生体音処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS1100において、音響信号入力部310aは、生体音センサ200aから音響信号を入力する。
そして、ステップS1200において、ノイズ抽出部320aは、音響信号から、ノイズ成分を抽出し、ノイズ成分のパワー波形を生成する。また、呼吸音抽出部330aは、音響信号から、呼吸音成分を抽出し、呼吸音成分のパワー波形を生成する。
そして、ステップS1300において、ノイズ分量判定部360aは、ノイズ成分のパワー波形から、音響信号におけるノイズ成分の強さであるノイズ分量を算出する。そして、ノイズ対策制御部370aは、算出されたノイズ分量が多いか否かを判定する。具体的には、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が、所定の閾値(上述の第3の閾値)を超えているか否かを判定する。ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が多くない場合(S1300:NO)、ステップS1400へ進む。
ステップS1400において、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ信号処理部380aに対して、信号処理によるノイズ対策を行わせて、後述のステップS2000へ進む。
一方、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ分量が多い場合(S1300:YES)、ステップS1500へ進む。
ステップS1500において、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分のパワー波形の変化が速いか否かを判定する。
具体的には、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ短期変化分析部341aにおいて、短期ピーク周波数帯を特定する。そして、ノイズ分類判定部340aは、変化速度・同期性判定部344aにおいて、特定した短期ピーク周波数帯が所定の閾値(例えば上述の10Hz)以上であるか否かを判定する。
ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分のパワー波形の変化が速くない場合(S1500:NO)、ステップS1600へ進む。
ステップS1600において、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、摩擦性ノイズについてのノイズ対策の案内を指示して、後述のステップS2000へ進む。
具体的には、まず、ノイズ分類判定部340aは、変化速度・同期性判定部344aにおいて、音響信号のノイズ成分を「摩擦性ノイズ」に分類する。そして、ノイズ対策案内部350aは、ノイズ種類対策対応表(図5参照)を参照し、「摩擦ノイズ」に対応するノイズ対策を、案内すべきノイズ対策として決定する。更に、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、ノイズ対策案内部350aが決定したノイズ対策を、情報出力装置(図1参照)へ出力させる。
一方、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分のパワー波形の変化が速い場合(S1500:YES)、ステップS1700へ進む。
ステップS1700において、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分が呼吸音成分と連動しているか否かを判定する。
具体的には、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ長期変化分析部342aにおいて、ノイズパワー順位を判定する。また、ノイズ分類判定部340aは、呼吸音長期変化分析部343aにおいて、呼吸音ピーク周波数帯を抽出する。そして、ノイズ分類判定部340aは、変化速度・同期性判定部344aにおいて、ノイズパワー順位の上位(例えば3位以内)に、呼吸音ピーク周波数帯が含まれるか否かを判定する。
ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分が呼吸音成分と連動していない場合(S1700:NO)、ステップS1800へ進む。
ステップS1800において、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、呼吸と連動しないパルス性ノイズについてのノイズ対策の案内を指示して、後述のステップS2000へ進む。
具体的には、まず、ノイズ分類判定部340aは、変化速度・同期性判定部344aにおいて、音響信号のノイズ成分を「呼吸と連動しないパルス性ノイズ」に分類する。そして、ノイズ対策案内部350aは、ノイズ種類対策対応表(図5参照)を参照し、「呼吸と連動しないパルス性ノイズ」に対応するノイズ対策を、案内すべきノイズ対策として決定する。更に、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、ノイズ対策案内部350aが決定したノイズ対策を、情報出力装置(図1参照)へ出力させる。
一方、ノイズ分類判定部340aは、ノイズ成分が呼吸音成分と連動している場合(S1700:YES)、ステップS1900へ進む。
ステップS1900において、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、呼吸と連動するパルス性ノイズについてのノイズ対策の案内を指示して、後述のステップS2000へ進む。
具体的には、まず、ノイズ分類判定部340aは、変化速度・同期性判定部344aにおいて、音響信号のノイズ成分を「呼吸と連動するパルス性ノイズ」に分類する。そして、ノイズ対策案内部350aは、ノイズ種類対策対応表(図5参照)を参照し、「呼吸と連動するパルス性ノイズ」に対応するノイズ対策を、案内すべきノイズ対策として決定する。更に、ノイズ対策制御部370aは、ノイズ対策案内部350aに対して、ノイズ対策案内部350aが決定したノイズ対策を、情報出力装置(図1参照)へ出力させる。
ノイズ対策案内部350aは、例えば、ノイズ種類対策対応表を参照し、案内すべきノイズ対策のテキストデータを取得し、このテキストデータを含む画像データを生成し、情報出力装置に画像表示させる。また、ノイズ対策案内部350aは、例えば、案内すべきノイズ対策の読み上げ音声データを取得または生成し、情報出力装置に音声出力させる。また、ノイズ対策案内部350aは、例えば、ノイズ対策ごとに予め定められた画像または音のデータの中から、案内すべきノイズ対策に対応するデータを取得し、情報出力装置に出力させる。
ステップS2000において、音響信号入力部310aは、ユーザ操作などにより処理の終了が指示されたか否かを判定する。音響信号入力部310aは、処理の終了を指示されていない場合(S2000:NO)、ステップS1100へ戻る。また、音響信号入力部310aは、処理の終了を指示された場合(S2000:YES)、一連の処理を終了する。
このような動作により、生体音処理装置300aは、音響信号に含まれるノイズ成分を、生体音センサ200aの取り付け状態に対応した複数のノイズ種類に分類し、分類結果に応じたノイズ対策をユーザに案内することができる。
以下、取り付け状態の違いによる音響信号の違い、および、音の成分の違いによる短期ピーク周波数帯および長期呼吸音ピーク波形の違いについて、説明する。
図7〜図10は、音響信号のスペクトログラムの例を示す図である。具体的には、図7〜図10は、同一の被験者の右鎖骨中線上第二肋間に貼り付けた生体音センサ200aの音響信号の、スペクトログラムの実験データである。ただし、図7は、生体音センサ200aの取り付け状態が良い場合のデータであり、図8〜図10は、生体音センサ200aの取り付け状態が悪い場合のデータである。
生体音センサ200aの取り付け状態が良い場合、図7に示すように、ノイズ成分621は少なく、吸気区間622、休止区間623、および呼気区間624は観察し易い。したがって、信号処理によるノイズ対策により、喘息患者の気道状態の推定などの呼吸音解析を高精度に行うことが可能である。
ところが、生体音センサ200aの取り付け状態が悪い場合は、図8〜図10に示すように、ノイズ成分621は多くなり、上述の各区間は観察し難くなる。このような場合は、信号処理によるノイズ対策を行ったとしても、呼吸音解析を高精度に行うことは困難である。
図11〜図18は、音の成分の違いによる短期ピーク周波数帯および長期呼吸音ピーク波形の違いを示す図である。
図11は、呼吸と連動するパルス性ノイズが含まれる音響信号において、呼吸音成分の各周波数帯のパワーを、濃度で示す図である。具体的には、図11は、呼吸周期が約5秒の被験者から得られた音響信号から、サンプリング周波数100Hzの呼吸音成分のパワー波形を抽出した場合における分析結果である。そして、図11は、その抽出された呼吸音成分のパワー波形を、サンプリング周波数2Hzにダウンサンプリングし、ポイント数32(16秒間に相当)のFFTで処理して得られた結果を、スペクトログラムとして表示したものである。図11において、横軸は時間を示し、縦軸は周波数帯域を示す。また、図12は、図11の各周波数帯のパワーを縦軸で示す図である。
図11に示すように、呼吸音成分のパワー波形では、呼吸周期が約5秒である場合、これに相当する約0.2Hz付近のパワーが大きい。したがって、この場合、呼吸音成分の長期ピーク周波数帯は、約0.2Hz付近の周波数帯域631となる。また、図12において実線632で示す、図11の周波数帯域631のパワーは、周波数帯のパワーの縦軸において、当然ながら最上位となる。
図13は、図11と同一の音響信号におけるノイズ成分の各周波数帯のパワーを、濃度で示す図であり、図11に対応するものである。また、図14は、図13の各周波数帯のパワーレベルを縦軸で示す図であり、図12に対応するものである。
図13の周波数帯633および図14の実線634に示す、呼吸の周期に対応するノイズ成分は、他の周波数帯のノイズ成分よりも大きくなっている。このことからノイズが呼吸と連動して発生していることがわかる。
なお、本実験において、ノイズ長期変化分析部342aは、ノイズ成分のパワー波形に対して、カットオフ周波数25HzでHPFを掛けている。これは、比較的変化の速いノイズ成分を取り出すためであり、また、ノイズ成分のパワー波形に残留する呼吸音成分を除去するためである。このHPFを適用しない場合、図14において、呼吸音ピーク周波数帯(ここでは実線634に相当)のノイズパワー順位は、下位に下がることが観察されている。これは、ノイズ成分のパワー波形に、呼吸周期に一致する正弦波に似た波形の成分ではなく、呼吸周期に一致するタイミングで発生するパルス波形の成分が含まれていることを示す。
図15は、呼吸と連動しないパルス性ノイズが含まれる音響信号における呼吸音成分の各周波数帯のパワーを、濃度で示す図であり、図11に対応するものである。また、図16は、図15の各周波数帯のパワーを縦軸で示す図であり、図12に対応するものである。
図15に示すように、呼吸と連動しないパルス性ノイズが含まれる場合であっても、呼吸音成分の長期ピーク周波数帯は、呼吸周期に対応する約0.2Hz付近の周波数帯域635となる。また、図16では、実線636で示す、図15の周波数帯域635のパワーも、周波数帯のパワーの縦軸において、当然ながら最上位となる。
図17は、図15と同一の音響信号におけるノイズ成分の各周波数帯のパワーを、濃度で示す図であり、図15に対応するものである。また、図18は、図16の各周波数帯のパワーを縦軸で示す図であり、図16に対応するものである。
図17に示すように、音響信号に、呼吸音に同期しないノイズ成分が多く含まれている場合は、呼吸周期に対応する約0.2Hz付近の周波数帯637以外においてパワーが大きくなる。したがって、図18において、実線638で示す、図17の周波数帯域637のパワーは、周波数帯のパワーの縦軸において、上位とはならない。
したがって、生体音処理装置300aは、ノイズパワー順位の上位に呼吸音ピーク周波数帯(ここでは実線634に相当)が含まれるか否かの判定により、ノイズ成分の発生が呼吸と同期しているか否かを高精度に判定することができる。
以上のように、本実施の形態に係る生体音処理装置300aは、音響信号のノイズ成分を、生体音センサ200aのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類することができる。これにより、生体音処理装置300aは、生体音センサ200aの取り付け状態の改善をユーザに促がすことが可能となり、生体音センサ200aの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を抑えることができる。また、生体音処理装置300aは、同じノイズ発生要因となる取り付け状態が繰り返されることを防止することができる。
また、生体音処理装置300aは、ノイズ成分のパワーの変化速度に基づいて、ノイズ成分を、リード線220aのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類することができる。これにより、生体音処理装置300aは、ノイズ成分がリード線220aの取り付け状態に起因する可能性があるとき、リード線220aの貼り直しをユーザに案内することができる。すなわち、生体音処理装置300aは、比較的簡単な作業を積極的に案内することができるので、生体音センサの取り付け状態が改善される率を向上させることができ、上記解析精度の低下をより確実に抑えることができる。
また、生体音処理装置300aは、音響信号におけるノイズ成分と呼吸音成分との同期性に基づいて、ノイズ成分を、生体音センサ200aの接着面230aのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類する。これにより、生体音処理装置300aは、ノイズ成分が接着面230aの取り付け状態に起因する可能性があるとき、接着面230aの貼り直しをユーザに案内することができる。
また、生体音処理装置300aは、音響信号から呼吸音成分を抽出する。したがって、生体音処理装置300aは、呼吸周期の個人差や時間によるばらつきがあっても、ノイズ成分の分類を高精度に行い、適切なノイズ改善のための対策を講じることができる。すなわち、生体音処理装置300aは、上記解析精度の低下をより確実に抑えることができる。
また、生体音処理装置300aは、ユーザに対して適切にノイズ対策の指示を行うことができるので、例えば、リード線220aに原因があるにもかかわらず接着面230aを何度も貼り直すといった事態を防ぐことができる。すなわち、生体音処理装置300aは、ノイズの発生要因を絞り込んだ適切なノイズ対策の案内を行うことができる。これにより、生体音処理装置300aは、ユーザに対して、無駄な作業を回避させつつ、ノイズ成分の少ないクリーンな音響信号を提供することができる。
なお、本発明に係る生体音処理装置の処理対象は、実施の形態2では、リード線を有する生体音センサの音響信号としたが、これに限定されるものではなく、上述の無線式の生体音センサの音響信号としてもよい。この場合、ノイズ種類対策対応表は、リード線の状態に対応するノイズ対策については、記述しなくてもよい。
また、実施の形態2のノイズ分類判定部は、時間領域の処理により、ノイズ成分のパワーの変化の速さという観点での分類を行ってもよい。例えば、ノイズ分類判定部は、ノイズ成分のパワー変化の速さで分類し、変化の速いものをパルス性ノイズ、変化の遅いものを摩擦性ノイズとする。具体的には、例えば、変化速度・同期性判定部は、ノイズ成分のパワーが所定の閾値を超えている状態が継続した時間を計測する。そして、変化速度・同期性判定部は、その継続時間が100msecを超えているとき、音響信号のノイズ成分が摩擦性のものであると判定する。一方、変化速度・同期性判定部は、その継続時間が100msecを超えていないとき、音響信号のノイズ成分がパルス性のものであると判定する。
また、生体音処理装置は、生体音センサの取り付け状態に起因するノイズ種類ごとに、適切な音響信号処理を行うことが可能である場合には、ノイズ種類の分類結果を、ノイズ対策案内にではなく、またはこれと併せて、ノイズ信号処理に反映させてもよい。この場合、例えば、ノイズ信号処理部は、ノイズ種類ごとに信号処理手法を記憶し、ノイズ分類結果に対応する信号処理手法を適用する。この場合でも、生体音処理装置は、生体音センサの取り付け状態に起因する生体音の解析精度の低下を抑えることができる。
また、本発明は、実施の形態2では、人の心音または呼吸音(肺音)を生体音として測定する生体音処理装置に適用したが、これに限定されるものではない。本発明は、体表面から検出可能な他の生体音や、動物の生体音を測定する装置に適用することができる。
また、本発明に係る生体音処理装置は、情報出力装置を含む肺音診断装置や心音診断装置など、音響信号に対する解析を行う装置の内部や、生体音センサの内部に配置してもよい。
本発明に係る生体音処理装置および生体音処理方法は、生体音センサの現状の取り付け状態を示す情報を出力することができる、生体音処理装置および生体音処理方法として有用である。
100 生体音処理システム
200、200a 生体音センサ
210a 本体部
220a リード線
230a 接着面
300、300a 生体音処理装置
310a 音響信号入力部
320、320a ノイズ抽出部
330a 呼吸音抽出部
340、340a ノイズ分類判定部
341a ノイズ短期変化分析部
342a ノイズ長期変化分析部
343a 呼吸音長期変化分析部
344a 変化速度・同期性判定部
350a ノイズ対策案内部
360a ノイズ分量判定部
370a ノイズ対策制御部
380a ノイズ信号処理部
400 情報出力装置
510 体表面
520 両面テープ
530 サージカルテープ

Claims (6)

  1. 体表面に取り付けられる生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理装置であって、
    前記音響信号から、前記音響信号に含まれるノイズ成分を抽出するノイズ抽出部と、
    抽出された前記ノイズ成分を、前記生体音センサのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、前記分類の結果に対応した情報を出力するノイズ分類判定部と、を有する、
    生体音処理装置。
  2. 前記取り付け状態は、前記生体音センサの前記体表面に対する接着面の取り付け状態を含み、
    前記音響信号から、前記音響信号に含まれる呼吸音成分を抽出する呼吸音抽出部、を更に有し、
    前記ノイズ分類判定部は、
    前記ノイズ成分と前記呼吸音成分との同期性に基づいて、前記ノイズ成分を、前記接着面のそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類する、
    請求項1記載の生体音処理装置。
  3. 前記取り付け状態は、前記生体音センサの前記音響信号を伝送するリード線の取り付け状態を含み、
    前記ノイズ分類判定部は、
    前記ノイズ成分のパワーの変化速度に基づいて、前記ノイズ成分を、前記リード線のそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類する、
    請求項2記載の生体音処理装置。
  4. 前記取り付け状態は、前記リード線と擦れるものがある第1の状態と、前記リード線に断続的に接触するものがある、または、前記接着面に気泡が入っている第2の状態と、前記リード線のテンションが高い、または、前記接着面の接着力が弱っている第3の状態と、を含み、
    前記ノイズ分類判定部は、
    前記ノイズ成分のパワーの変化速度が高いことを条件として、前記ノイズ成分を、前記第1の状態に対応するノイズ種類に分類し、
    前記ノイズ成分のパワーの変化速度が低く、かつ、前記ノイズ成分と前記呼吸音成分との同期性が低いことを条件として、前記ノイズ成分を、前記第2の状態に対応するノイズ種類に分類し、
    前記ノイズ成分のパワーの変化速度が低く、かつ、前記ノイズ成分と前記呼吸音成分との同期性が高いことを条件として、前記ノイズ成分を、前記第3の状態に対応するノイズ種類に分類する、
    請求項3記載の生体音処理装置。
  5. 前記取り付け状態は、前記生体音センサが適切に取り付けられた第4の状態を含み、
    前記ノイズ分類判定部は、
    前記ノイズ成分の量が少ないことを条件として、前記ノイズ成分を、第4の状態に対応するノイズ種類に分類する、
    請求項4記載の生体音処理装置。
  6. 体表面に取り付けられる生体音センサの音響信号に対する処理を行う生体音処理方法であって、
    前記音響信号から、前記音響信号に含まれるノイズ成分を抽出するステップと、
    抽出した前記ノイズ成分を、前記生体音センサのそれぞれ異なる取り付け状態と対応した複数のノイズ種類に分類し、前記分類の結果に対応した情報を出力するステップと、を有する、
    生体音処理方法。
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