JP5627957B2 - 穴あき中空シリカ粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、穴あき中空シリカ粒子に関するものである。
近年、殻の内部に空洞が形成された中空粒子が注目されている。中空粒子は、空洞が存在するため、殻を構成する材料の物性とは異なる物性を示す。例えば、中空粒子の空洞内に空気が存在している場合、空気の屈折率、誘電率および密度は小さいので、中空粒子全体としての見かけの屈折率、誘電率および密度は、それぞれ、殻を構成する材料の屈折率、誘電率および密度に比べて小さくなる。これを利用して、殻がシリカからなる中空シリカ粒子は低屈折率材料として実用化されており、例えば、画像表示装置などの反射防止膜を構成する低屈折率材料として用いられている。また、中空シリカ粒子を低誘電率材料や低密度のフィラーなどとして用いることもできる。
また、空洞内に別の材料を入れることで、様々な機能をもたせることができる。この場合、中空粒子は極めて微小な容器のように機能する。例えば、医薬品や化粧品の分野では、中空粒子内部に有効成分を内包した徐放性医薬品や徐放性化粧品の開発が行われている。また、中空粒子を、外部物質と接触すると変質して劣化してしまう物質を外界から隔離する保護材や、体内の作用箇所まで医薬品を送り届けるための運搬体(ドラッグデリバリーシステムの担体)などとして活用しようとする研究も行われている。また、製紙分野では、内部に染料やインクを内包したマイクロカプセルが、感圧紙の発色部材として用いられている。
中空粒子は上記以外にも様々な用途に応用されることが期待されているが、光学的に透明であることが求められる用途では、中空粒子の粒子径は可視光の波長に比べて十分小さく、ナノサイズであることが求められる。また、ナノサイエンスおよびナノテクノロジーに代表される、極めて微小な材料を対象とする科学技術の発展の中で、中空粒子についてもナノサイズのものが求められている。この場合、ナノ粒子であることの特徴をより効果的に発現させるためには、ナノ粒子が互いに凝集せず、1個1個が単独で存在する、分散性のよいものであることが重要である。
さらに、前記空洞内に別の材料を入れること等を考慮すると、上記ナノサイズの中空粒子の殻にナノサイズの穴(ホール)を有する中空粒子の開発が必要である。
前記中空シリカ粒子の製法としては、例えば、エアロゾル法により基本粒子を製造し加熱、乾燥する方法、金属化合物水性ゾルを噴霧、乾燥し焼成する方法、w/o型またはo/w/o型エマルジョンを調製し加熱して水および油を除去する方法等が提案されている。しかし、これらの製法により得られた中空粒子はいずれも、粒子径が大きく、外殻(シェル)層の厚みが大きいが傾向にある(例えば、特許文献1参照)。
また、チタニウムアルコキシド及び/またはシリコンアルコキシドのアルコール溶液中またはアルコール/水混合溶液中に、スチレン重合体またはスチレン/ジビニルベンゼン共重合体の球状重合体粒子を均一に分散せしめ、加水分解反応により該球状重合体粒子の表面に均一なチタニウム化合物またはシリコン化合物被覆層を設け、さらに必要に応じ、加熱処理するコア・シェル粒子の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、粒子内に細孔を有する粒子としては、例えば、有機性溶液中でシラン化合物を加水分解、縮合した球状シリカ水和物微粒子中のシラノール基に、沸点が120℃以上のアルコールを結合せしめ、焼成することにより得られる、粒子内細孔の細孔径が50Å以下の多孔質球状シリカ粒子が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、短軸、長軸を有し、長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状の核粒子を炭酸ストロンチウムで作製し、この表面をシリカ層により被覆し、その後希塩酸中で炭酸ストロンチウム核粒子を溶解除去することにより、外殻の内部に外形とほぼ相似形状の空洞が形成された中空シリカ粒子が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平4−210228号公報 特開平4−302592号公報 特開平1−230421号公報 特開2010−37137号公報
しかしながら、前記の各方法によれば、粒子径の小さい中空シリカ粒子は得られるものの、細孔や空洞は粒子の内部に形成され、外殻に十分な大きさの穴を形成することはできなかった。また、従来の方法により得られる中空シリカ粒子において外殻に形成される穴は、粒子の製造過程において内部からコア成分がガス状で流出する等により形成されるため、例えば中空シリカ粒子内部に別の材料を導入するのに十分な形状、大きさを有していないものであった。
本発明は、上記の状況に鑑みなされたもので、粒子径がナノサイズであり、かつ内部が中空で、しかもシリカ層からなる外殻に十分な大きさの貫通穴を有する穴あき中空シリカ粒子を提供することを課題とするものである。
上記課題は、下記本発明により解決される。すなわち、本発明は、
(1) シリカ層からなる外殻を有し、平均粒子径が10nm以上1000nm以下であり、前記外殻に、開口部の形状が円形状、楕円形状及び多角形状から選択される少なくとも1つである貫通穴を有する穴あき中空シリカ粒子、
(2) 前記貫通穴の平均径が、5nm以上100nm以下である(1)に記載の穴あき中空シリカ粒子、及び
(3) 前記外殻の平均厚みが、2nm以上100nm以下である(1)または(2)に記載の穴あき中空シリカ粒子、
を提供するものである。
本発明の前記(1)の発明によれば、粒子径がナノサイズであり、かつ内部が中空で、しかもシリカ層からなる外殻に十分な大きさの貫通穴を有する穴あき中空シリカ粒子が提供される。
前記(2)の発明によれば、さらに中空粒子内部への物質の挿入を容易にし、また粒子内に内包された物質の放出制御なども容易に行える穴あき中空シリカ粒子が提供される。
前記(3)の発明によれば、さらに強度が維持され、製造時あるいは取り扱い時にも壊れにくい穴あき中空シリカ粒子が提供される。
実施例の製造例1で得られた金微粒子を担持した樹脂粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 実施例の製造例1で得られたシリカ層で被覆したコア・シェル粒子のTEM写真である。 実施例の製造例1で得られた焼成後の中空粒子のTEM写真である。 (A)は実施例の製造例1で得られたレーザー光照射後の中空粒子のTEM写真であり、(B)はその拡大写真である。 レーザー光照射前後の中空粒子の紫外・可視吸収スペクトルである。
以下、本発明を実施形態により説明する。
本実施形態の穴あき中空シリカ粒子は、シリカ層からなる外殻を有し、平均粒子径が10nm以上1000nm以下であり、前記外殻に、開口部の形状が円形状、楕円形状及び多角形状から選択される少なくとも1つである貫通穴を有することを特徴とする。
本実施形態の穴あき中空シリカ粒子は、シリカ層からなる外殻を有する。ここで、該シリカとは、無水物及び含水物を含む酸化ケイ素を意味する。また、穴あき中空シリカ粒子の形状は特に限定されないが、略球状の中空粒子であることが好ましい。ここで、略球状とは粒子の投影断面形状の最短径に対する最長径の比で定義される形状因子が0.8以上であるものを95%以上含むものをいう。
前記穴あき中空シリカ粒子の平均粒子径は、10nm以上1000nm以下であり、好ましくは50nm以上1000nm以下、より好ましくは250nm以上1000nm以下である。平均粒子径が10nmに満たないと、貫通穴を有しつつ強度を維持できる中空粒子を得ることができない。一方1000nmを超えると、前記貫通穴を有する穴あき中空シリカ粒子としては外殻厚みに対して粒径が大きいため、製造時あるいは取り扱い時に粒子が壊れやすくなる。
なお、上記平均粒子径は、球状粒子の場合は直径、楕円形粒子の場合は、長径であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、粒子約100個の粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。
また、シリカ層からなる外殻(シェル)の平均厚みは、穴あき中空シリカ粒子が担体としての強度を維持できる範囲で薄い方が好ましく、中空部の平均直径(平均容積)は、例えば内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。さらに、本実施形態の穴あき中空シリカ粒子はシェルに貫通穴を有するが、該貫通穴を形成する工程において、中空粒子形状を維持しつつ確実にシェルに貫通する穴を形成するためにも、シリカ層の厚みは特定の範囲にあることが好ましい。これらの観点から、シリカ層(外殻)の平均厚みは、2nm以上100nm以下が好ましく、14nm以上32nm以下がより好ましい。
本実施形態の穴あき中空シリカ粒子の外殻に形成されている貫通穴は、電子顕微鏡等による粒子の観察像でその存在が確認できる大きさを有するものであり、開口部の形状は、円形状、楕円形状及び多角形状から選択される少なくとも1つである。ここで、該多角形状は円形状、楕円形状には該当しないものの、これらに近い多角形状であり、例えばひし形、台形、正多角形、ダイヤモンド形などの形状が含まれる。すなわち、本実施形態における貫通穴の開口部の形状は、割れ目や裂け目といった細長い形状ではなく、縦横ともに十分な幅を有する形状であり、穴の長辺に対する短辺の比(短辺/長辺)は0.5以上であることが好ましい。さらに、少なくとも穴の最大幅の50%以上の直径を有する円が内接できる形状であることが好ましい。
また、前記外殻(シェル)に形成されている貫通穴の平均径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、17nm以上56nm以下であることがより好ましい。貫通穴の平均径を5nm以上100nm以下とすることにより、中空粒子内部への物質の挿入を容易にし、また粒子内に内包された物質の放出制御なども容易に行うことができる。
本実施形態の穴あき中空シリカ粒子は、前記のような構成、特性を有する粒子として得られるのであれば、いかなる製造方法により製造されてもよいが、以下の(1)〜(5)の工程を経て製造されることが好ましい。
(1)表面に還元性の官能基を有する樹脂粒子を作製する工程。
(2)前記樹脂粒子表面に金属微粒子を固定する工程。
(3)前記金属微粒子を有する樹脂粒子表面をシリカ層で被覆しコア・シェル粒子を作製する工程。
(4)前記コア・シェル粒子を加熱することにより前記樹脂粒子を分解、除去し、中空粒子を作製する工程。
(5)レーザー光を照射することにより前記金属微粒子を除去すると共に、前記中空粒子のシェルに貫通穴を形成する工程。
以下、前記各工程について説明する。
(1)表面に還元性の官能基を有する樹脂粒子を作製する工程
本工程で作製される樹脂粒子は、後述するコア・シェル粒子のコア粒子となるものである。該樹脂粒子は、後述する樹脂粒子表面に金属微粒子を成長させる工程で、水溶液中で効率的に金属化合物から金属を還元させる観点から、表面に還元性の官能基(詳細には、水溶性貴金属化合物を還元する官能基)を有している必要がある。該官能基としては、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基(−SO3H)、グリシジル基、チオール基等が挙げられる。これらの中では、特にアミノ基が好ましく用いられ、該アミノ基としては第2級アミノ基、第3級アミノ基がより好ましい。
樹脂粒子用に用いられる高分子材料としては、特に制限されないが、水溶性あるいは水溶性溶剤に溶解しない通常の高分子材料が好ましい。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスチレン(PS)などのビニル系ポリマー;ポリオキシメチレン(POM)などのポリエーテル;ポリラクトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリカーボネート(PC);ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリウレタン;ポリブタジエン(PBd)、ポリイソプレン(PIP)などのジエン系ポリマー;メラミン・ベンゾグアナミン系ポリマー;芳香族系ポリマー;ポリイミド;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリシラン;ポリシロキサン;ポリカプロラクトン;ポリ環状チオエーテルなどの硫黄系高分子;セルロース、蛋白質、DNAなどの天然高分子等が挙げられる。これらの中では、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、硫黄系高分子などが好適な材料として用いられる。
前記樹脂粒子に還元性の官能基を導入する手段としては、種々の方法が採用される。例えば、樹脂粒子の重合に際して還元性の官能基を元々側鎖等に有するモノマーを用いて重合を行ってもよいし、得られた樹脂粒子の表面に後処理で還元性の官能基を導入してもよい。
上記特定のモノマーの重合により官能基としてアミノ基を導入する場合に、好適に用いられるモノマーとしては、アミノアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミノアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、N−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。また、アンモニウム基を導入する場合に好適に用いられるモノマーとしては、上記各モノマーの塩化メチレン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等による4級塩等が挙げられる。
また、前記得られた樹脂粒子の表面に後処理で還元性の官能基を導入する方法としては、例えば樹脂粒子を作製した後に、粒子表面に発生させた重合開始点から、所望の官能基を有するモノマーを粒子表面にグラフト重合する方法が挙げられる。重合開始点は、微小粒子とモノマーとの共存下にγ線などを照射して発生させることができる。また、重合開始点を予め微小粒子表面に電子線照射等により発生させてからモノマーと接触させてグラフト鎖を成長させても良い。
上記還元性の官能基を有する樹脂粒子の一部は、いわゆる陰イオン交換樹脂であってもよい。陰イオン交換樹脂は表面の官能基の数も多く、しかも多数の微細孔を有し多孔性であることから比表面積が大きく、より粒径の小さな貴金属ナノ粒子を表面に分散・固定することができるため好ましい。
イオン交換樹脂は一般には次のようにして製造される。すなわち、スチレンとジビニルベンゼンとを混合し、重合開始剤を加えて、懸濁重合法によりラジカル重合を行って、三次元的に架橋された共重合体を得、この共重合体に官能基を導入することにより形成される。陰イオン交換樹脂とする場合には、ルイス酸の存在下、ハロアルキル化を行いハロアルキル基を導入し、次いでアミノ化を行う方法がとられる。したがって、イオン交換樹脂を用いる場合には、アミノ基、第4級アミノ基は、通常メチレン基、エチレン基などのアルキレン基を介してベースポリマーに連結されている。イオン交換樹脂には大別してゲル型とポーラス型(多孔性型)があり、ゲル型は、水中で膨潤して生じるミクロ孔を有し、この細孔内をイオンが移動する。この孔の大きさはジビニルベンゼンの架橋度によって決まり、ジビニルベンゼンが多いほどミクロ孔が小さい。一方、ポーラス型はミクロ孔以外にマクロ孔を有し、大分子量の分子が粒内に拡散できる構造となっている。
なお、前記表面に還元性の官能基を有する樹脂粒子において、該官能基濃度は1.0×10-2meq/g〜1.0meq/gの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.5×10-2meq/g〜0.5meq/gの範囲であり、さらに好ましくは0.125meq/g程度である。
本工程における金属微粒子の担体となる樹脂粒子の形状は特に限定されないが、最終的に得られる前記穴あき中空シリカ粒子同様、略球状の樹脂粒子であることが好ましい。
また、その大きさも特に制限されず、平均粒子径は金属微粒子を担持する樹脂粒子の用途に応じ適宜設定されればよいが、10nm以上1000nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは250nm以上1000nm以下である。当該平均粒子径の測定法は、前述の穴あき中空シリカ粒子の場合と同様である。
(2)樹脂粒子表面に金属微粒子を固定する工程
本工程は、前記工程により得られた表面に還元性の官能基を有する樹脂粒子表面に金属微粒子を固定する工程である。本工程においては、例えば、還元性の官能基を有する樹脂粒子料を分散させた水溶液に金属化合物を加え、室温下で該水溶液を攪拌することにより金属イオンが金属原子に還元され、金属原子の凝集が起こり、樹脂粒子表面に金属微粒子が吸着、成長し固定される。
前記金属微粒子を構成する金属としては、金、銀や、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムなどの白金族元素が好ましいものとして例示される。また本実施形態においては、金属微粒子を形成するために用いられる金属前駆体である金属化合物は、水溶液として用いられることから、水溶性であればよく、これ以外に特に限定されるものではない。
例えば、水溶性の金属化合物としては、金属の水酸化物、塩化物、カルボン酸塩および硝酸塩、塩化金酸およびその塩、金属錯体化合物などが挙げられる。さらに水溶性金属化合物について具体的に説明すると、水溶性の金化合物の好ましい例としては、例えば、四塩化金酸(HAuCl4)、四塩化金酸のアルカリ金属塩、三塩化金(AuCl3)、シアン化金(AuCN)、シアン化金カリウム{K〔Au(CN)2〕}、三塩化ジエチルアミン金酸〔(C252NH・AuCl3〕、エチレンジアミン金錯体(例えば、塩化物錯体(Au[C24(NH22]Cl3))、ジメチル金β−ジケトン誘導体金錯体(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート((CH32Au[CH3COCHCOCH3])、(CH32Au(CF3COCHCOCH3)、(CH32Au(CF3COCHCOCF3)、(C252Au(CH3COCHCOCH3)、(CH32Au(C65OOCHCOCF3))などを挙げることができる。
また白金族元素としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金が挙げられる。これらのうち、水溶性の白金化合物としては、白金の水酸化物、塩化物、カルボン酸塩および硝酸塩、塩化白金酸およびその塩、白金錯体化合物などが挙げられる。水溶性の白金化合物の具体例としては、例えば、塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、ビス(エチレン白金)クロライド、シス−ジクロルジアミン白金(II)、シス−ジクロル−ビス−トリフェニルスルフィン白金(II)、白金(II)アセチルアセトネートなどが挙げられ、またルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどの他の白金族や銀についても、金または白金と同様の水溶性化合物が挙げられる。
これらの金属化合物は単独で用いられてもよいし、必要であれば2種以上を併用してもよい。また金属化合物の水溶液は該金属化合物が水に溶解されたものであるが、必要であれば水の他に水溶性の有機溶剤が溶媒として含まれていてもよい。
本実施形態においては、還元を行う水溶液中の金属化合物の濃度は、用いる化合物の種類、固体高分子材料に分散・固定する貴金属の量等種々の条件によって異なり特に限定されないが、1.0×10-7mmol/dm3以上1.0×10-3mmol/dm3以下の濃度で用いることが好ましく、より好ましくは1.0×10-6mmol/dm3以上1.0×10-4mmol/dm3以下である。
特に用いる金属化合物が四塩化金酸(HAuCl4)である場合、四塩化金酸の濃度は1.0×10-7mmol/dm3以上1.0×10-3mmol/dm3以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×10-6mmol/dm3以上5.0×10-5mmol/dm3以下である。濃度が1.0×10-7mmol/dm3より希薄すぎると金が樹脂粒子上に還元析出できなくなる場合があり、1.0×10-3mmol/dm3より濃厚すぎると、樹脂粒子上だけでなく溶液中でも金の還元析出が起こってしまう場合がある。また、四塩化金酸の濃度を上記範囲とすることにより、固定化される金微粒子の粒径を制御することができる。
また、金属化合物の樹脂粒子に対する量は、分散・固定された金属微粒子の大きさ、並びに樹脂粒子表面にどの程度の量の金属を分散・固定するかにより異なる。金属の樹脂粒子への担持量は、水溶液の濃度と量により、例えば0.40質量%以上35質量%以下の範囲で調整することができる。したがって、金属担持量に応じて、水溶液の濃度や溶液の使用量を決めればよい。
樹脂粒子表面に金微粒子を形成させる場合、先ず、水に樹脂粒子を分散させ、この樹脂粒子分散液に前記金化合物が添加される。金化合物は直接反応溶液である水に加えられてもよいが、予め水溶液とされた後反応溶液を構成する水に加えられることが好ましい。このとき金化合物は一度に加えられてもよいし、複数回に分けて加えられてもよい。反応溶液はゆっくりと攪拌されることが好ましい。また、樹脂粒子を分散させた後に金化合物を加えることが好ましいが、金化合物を水に溶解した後、これに担体材料を分散させてもよい。
樹脂粒子は通常疎水性であることから、水に対する濡れが悪いが、超音波をかけて分散させることにより、水への分散は可能である。このとき必要であれば、メタノールなどの水溶性有機溶媒を加えるなどの方法を採用してもよいし、溶液中にポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性高分子を加えるなどしてもよい。
金微粒子を固定化するための反応溶液として用いられる水は、水であればどのようなものでもよく特に限定されるものではないが、形成された金微粒子への不純物の混入、付着を防ぐ意味からも、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により有機不純物、金属イオンを除去したものが好ましい。温度は、使用される樹脂粒子の軟化が起こらない範囲で、かつ溶剤の沸点以下、たとえば反応溶液として水を用いる場合、水の沸点(100℃)以下であればよく、特に限定されないが、通常0℃から90℃までの範囲とされる。
また、反応水溶液には、樹脂粒子、金化合物のほかに、必要に応じ前記したようにポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子などが加えられることが好ましい。これらは樹脂粒子の分散や金微粒子の保護剤として添加されるが、その場合には、それらの濃度は1.0×10-6mol/dm3 以上1.0×10-3mol/dm3以下とすることが好ましく、2.0×10-5mol/dm3以上7.0×10-4mol/dm3以下とすることがより好ましい。
上記反応水溶液中に水溶性高分子を含む場合、該水溶性高分子の分子量により、樹脂粒子表面に固定される金属微粒子の粒径を制御することができる。例えば、水溶性高分子として前記ポリビニルピロリドンを用いる場合には、上記粒径制御の観点から、重量平均分子量が5000以上400000以下のものを用いることが好ましく、40000以上360000以下のものを用いることがより好ましい。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)を用い、THF(テトラヒドロフラン)を溶離液として、IR検出器を用いて測定を行った。その結果から、polystylene標準試料による検量線から数平均分子量を求めた。
また、本実施形態において、金属を還元させる水溶液には、必要に応じて還元剤を加えてもよい。該還元剤としては、重量分析で用いる金属イオンの還元剤を用いることができる。このような還元剤は、無機系であっても、有機系であってもよく、無機系還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、二酸化硫黄(SO2)、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)などが挙げられ、有機系還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸およびその塩、シュウ酸およびその塩、グルコース、エチレングリコールが挙げられる。さらに、ホルムアルデヒド(HCHO)、クエン酸およびその塩(クエン酸ナトリウム塩、クエン酸マグネシウム塩など)、グルコース、エチレングリコールなども用いることができる。
本実施形態において、樹脂粒子表面に担持された金属微粒子の平均粒子径は、後述する中空シェル粒子に形成する貫通穴の径との関係から、2nm以上100nm以下とすることが好ましく、14nm以上32nm以下とすることがより好ましい。
なお、上記金属微粒子の平均粒子径も、前記同様、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、金属微粒子約100個の粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。
(3)コア・シェル粒子を作製する工程
本工程では、前記工程により得られた表面に金属微粒子が形成された樹脂粒子(以下、これを単に「コア樹脂粒子」と称する場合がある)の表面を、シリカ層により被覆してコア・シェル粒子を作製する。
具体的に上記コア・シェル粒子は、例えば、前記コア樹脂粒子を分散させた分散体中に、シリコンアルコキシドと塩基性触媒とを加えて、シリコンアルコキシドの加水分解反応によって生じるシリカ層によって前記コア樹脂粒子の表面を被覆することによって形成される。
前記シリコンアルコキシドとしては、下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
1 dSi(OR24-d ・・・ (I)
(式中、R1、R2は独立して1価の有機基を示し、dは0〜3の整数を示す。)
上記一般式(I)において、R1、R2で表される1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。なかでも、R1、R2で表される1価の有機基は、アルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
ここで、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。また前記アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。
また、dは0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどを挙げることができ、特に好ましい化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
前記分散体における分散媒としては、アルコール類を主成分とするアルコール系溶媒であるのがよい。本工程で用いる溶媒は、前記シリコンアルコキシドとともに水をも溶かし込める溶媒であることが好適であるので、極性の大きな有機溶媒、例えば、アルコール類やケトン類を主成分とする溶媒であることが必要である。アルコール類は同程度の分子量のケトン類よりも蒸気圧が小さいので、安全上、ケトン類よりも好ましい。
上記アルコールとしては、2−プロパノール、エタノール、メタノールなどを用いることが好ましい。
また、本工程では、必要に応じて前記アルコール系溶媒に水を加えるのがよい。上述したように、前記シリコンアルコキシドは、完全に加水分解するために4倍の物質量の水を必要とする。一方、前記コア樹脂粒子は、通常水溶液中で作製されるので、多少の水が前記コア樹脂粒子とともに前記アルコール系溶媒中に持ち込まれる。この他、前記塩基性触媒としてアンモニアを用いる場合には、アンモニア水に含まれる水が前記アルコール系溶媒中にもちこまれる。このようにして持ち込まれる水によって前記加水分解反応に必要な水が確保される場合には、あえて水を加える必要はない。これらの水では不足する場合には、必要に応じて前記アルコール系溶媒に水を加えるのがよい。
本実施形態では、前記分散媒中に水を25質量%程度含むことが好ましい。
前記シリコンアルコキシドの加水分解縮合を行う際には、加水分解縮合を促進させるための塩基性化合物を触媒として用いることが好ましい。
上記触媒として使用可能な塩基性化合物としては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン等のアミン類や、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド等のアンモニウム水酸化物、さらにはピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができるが、これらの中ではアンモニアを用いることより好ましい。
上記塩基性化合物の使用量は、シリコンアルコキシド中の加水分解性基の総量1モルに対して、通常、0.00001〜20モルの範囲、好ましくは0.00005〜10モルの範囲である。
前記アルコール系溶媒等の分散媒における前記コア樹脂粒子の濃度は5.0質量%以下とするのが好ましく、0.12質量%以下とするのがより好ましい。このようにすると、前記シリカ層の形成の際に、粒子同士が凝集したり、癒着したりするのが抑えられ、分散性の良好な前記コア・シェル粒子が得られ、ひいては分散性の良好な前記中空シリカ粒子(中空粒子)が得られる。
また、前記分散媒中に前記コア樹脂粒子を分散させる際に、凝集防止剤を添加することが好ましい。そして、該凝集防止剤の存在下で前記シリコンアルコキシドの加水分解反応を起こさせ、前記コア樹脂粒子の表面をシリカ層で被覆するのがよい。このようにすると、前記シリカ層の形成の際に、粒子同士が凝集したり、癒着したりするのが抑えられ、分散性の良好な前記コア・シェル粒子が得られ、ひいては分散性の良好な前記中空シリカ粒子が得られる。また、粒子同士の癒着を防ぐために低い粒子濃度で中空シリカ粒子の作製を行う必要がなく、粒子濃度を高く設定できるので、生産性が高くなる。
前記凝集防止剤としては、非イオン性の界面活性剤、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、前記のように、例えば金属微粒子を成長させる工程においてポリビニルピロリドンを使用し、そのままポリビニルピロリドンが本工程に持ち込まれる態様であってもよい。
加水分解縮合における反応温度は0〜100℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは20〜80℃の範囲である。また、反応時間は30〜1500分間の範囲程度である。
本工程によって形成されるコア・シェル粒子におけるシリカ層(外殻、シェル)の平均厚みの好適な範囲については、前述の通りである。
(4)中空粒子を作製する工程
本工程は、前記工程で得られたコア・シェル粒子を加熱することにより、樹脂粒子を分解することで、内部に空孔を有するシリカ系の中空粒子を作製する工程である。
上記中空粒子の製造は、前記で得られるコア・シェル粒子を、コアの重合体の種類により異なるが、好ましくは100℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは450℃以上に加熱して、コアを構成する樹脂粒子を分解しガス化させてコア・シェル粒子内部から飛散させ、粒子内部に空孔を形成することによりなされる。加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、空気、酸素存在下以外にも、真空中、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
上記中空粒子の製造において、コアの樹脂粒子には特に制約はないが、完全に分解し、ガス化させやすくするためには、架橋していないことが好ましい。これにより、低温で短時間に空孔を形成させることができる。例えばコアの樹脂粒子が架橋されている場合、800℃以上、さらに好ましくは1100℃以上で加熱する必要がある。従って、コアの重合体の単量体成分としては、加熱により分解する点で、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等の単量体を主成分とし、架橋されていないものが好ましい。
本工程を経ることにより、前記コア・シェル粒子におけるコア(樹脂粒子)が消失し、シリカ層(シェル)の内面に金属微粒子が残存した中空粒子を得ることができる。
(5)中空粒子のシェルに貫通穴を形成する工程
本工程は、前記工程により作製された中空粒子に対してレーザー光を照射して、シリカ層(シェル)の内面に固定された金属微粒子をプラズモン励起させ、金属微粒子が破壊されるとともに当該箇所のシリカ層をも破壊して、中空粒子のシェルに貫通穴を形成する工程である。
本工程において用いられるレーザーは、前記金属微粒子を内面に有する中空粒子に光照射して、上記金属微粒子をプラズモン励起させるものである。上記レーザー光の波長は上記金属微粒子の可視紫外吸収波長を持つものである。当該レーザー光の波長は、金属微粒子の種類によって適宜設定することが可能であり、レーザー光を発振する素子の基本波長でもよいし、例えば、非線形光学素子によって高調波に変換したものでもよい。上記レーザー光の波長としては、例えば、金属微粒子が金である場合、金の可視紫外吸収波長は530nmであるので、レーザーとしては、例えば、Nd3+:YAGレーザーの第2高調波(532nm)を挙げることができる。
また、前記レーザー光はパルス光であることが好ましく、パルス幅は、例えば、1〜10nsの範囲である。当該レーザー光の照射強度は特に限定されず、上記金属微粒子の種類および上記パルス幅によって適宜調整することができるが、粒径が30nmの金を金属微粒子とし、パルス幅を5nsとした場合には、100〜230mJ/cm2の範囲とすることが好ましい。
本工程において得られる貫通穴は、前記のように金属微粒子の破壊にともなって外殻であるシリカ層が破壊して形成されるものであるため、通常穴の径は金属微粒子の粒径よりやや大きく、穴の開口部の形状も金属微粒子の破壊にともなう円形状、楕円形状及び多角形状のいずれかである。すなわち、本実施形態における貫通穴の開口部の形状は、割れ目や裂け目といった細長い形状ではなく、縦横ともに十分な幅を有する形状である。
前記形成される貫通穴の平均径やその標準偏差については、前述の通りである。
以上説明した本実施形態の穴あき中空シリカ粒子は、ナノサイズの粒子でありながら外殻の厚み、表面は比較的均一であり、しかも外殻に所望の大きさの貫通穴を有するため、様々なデバイスへの応用が期待されるものである。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
まず、実施例等に用いる穴あき中空シリカ粒子(1)〜(8)を製造した。なお、下記製造例では、前述の工程(1)〜(5)で説明した方法により穴あき中空シリカ粒子を製造した。
製造例1(中空シリカ粒子(1)の製造)
−金微粒子の樹脂粒子表面への固定−
樹脂粒子としては、アミノ基含有ポリスチレン(PS)粒子を使用した。
まず、ポリビニルピロリドン(PVP、キシダ化学社製、商品名:ポリビニルピロリドン K−30、重量平均分子量Mw:40000)0.144gを、サンプル瓶中でMilli−Q水20cm3に希釈し、10分間超音波処理を行って完全に分散させたPVP分散液を作製した。
一方、前記アミノ基含有ポリスチレン粒子分散液(フナコシ(株)製、Polybead Amino Microspheres、アミノ基含有量:0.125meq/g、固形分:2.5質量%、平均粒子径:1.0μm)0.1gをマイクロチューブ内で超純水1cm3に希釈し、15000rpmにて5分間遠心分離した後、上澄みを除去した。
このようにして洗浄したアミノ基修飾されたポリスチレン粒子を前記PVP分散液に加え、蓋をしてホットスターラーにて30℃で30分間撹拌した。次いで、この溶液を約1000rpmで激しく撹拌しながら、濃度97mmol/dm3のHAuCl4水溶液1.05mm3を加えた(このときの反応液内のHAuCl4濃度は1.0×10-5mol/dm3)。その後、蓋をして17時間ゆっくりと撹拌を続けた。なお、撹拌中はホットスターラー上部にアルミホイルを被せて遮光した。反応終了後、4000rpmで15分間遠心分離を行って粒子を分離し、上澄みを除去することにより金微粒子を担持したポリスチレン粒子を回収した。
図1に、得られた金微粒子を担持したポリスチレン粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
図に示すように、ポリスチレン粒子表面に金微粒子がほぼ均一に担持されていることがわかる。この観察から、金微粒子の平均粒子径は12nmであった。また、粒子同士は凝集することなく安定に存在していたため、金微粒子を担持したポリスチレン粒子全体がPVPによって修飾されていると考えられる。なお、超音波処理をしても金微粒子は粒子表面から離れることなく強く結合していた。
−コア・シェル粒子の作製−
前記工程で作製した金微粒子を担持したポリスチレン粒子を、サンプル瓶中で2−プロパノール20cm3及び超純水5cm3の混合溶液に希釈した。この溶液を約1000rpmで激しく撹拌しながら、濃度25質量%のアンモニア水溶液0.8cm3を加え、そのまま撹拌しながら、即座にこれにテトラエトキシシラン(TEOS)30mm3を加えた。その後、蓋をして24時間ゆっくりと撹拌した。なお撹拌中はホットスターラー上部にアルミホイルを被せて遮光した。反応終了後、4000rpmで15分間遠心分離を行って粒子を分離し、上澄みを除去した後、エタノールで3回洗浄することにより、前記金微粒子を担持したポリスチレン粒子がシリカ層によって被覆されたコア・シェル粒子を回収した。
図2に、得られたコア・シェル粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
図に示すように、シリカ層が金微粒子を担持したポリスチレン粒子表面に均一な膜厚で形成され、外殻(シェル)を形成していることがわかる。また、シリカ層からなるシェル表面は滑らかであり、層厚は32.0nmであった。
−樹脂粒子の分解・除去−
前記工程で得たコア・シェル粒子(シリカ層で被覆された金微粒子担持ポリスチレン粒子、ポリスチレン量で25mg分)を0.5cm3程度のエタノールに分散させ、サンプル瓶中で減圧乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子をサンプル瓶ごと450℃で2時間焼成した。焼成後の粒子が付着したサンプル瓶にエタノール0.5cm3を加え、数秒間の超音波処理にて分散させた。
図3に、得られた焼成後の中空粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
図に示すように、450℃での焼成によってコア・シェル粒子におけるコアであるポリスチレン粒子が除去できたことがTEM写真のコントラストからわかる。また、中空粒子の内側に金微粒子が残存していることが、写真の黒点として確認できる。
−中空粒子への貫通穴の形成−
前記工程で得た中空粒子を、開口の1辺が1cmの石英セル中でエタノールに希釈し、波長532nmでの吸光度が0.15になるように濃度を調整した。次いで、パラフィルムで石英セルに蓋をし、溶液を窒素ガスで緩やかにバブリングしながらYAGレーザーによりレーザー光(波長:532nm、強度:200mJ/パルス、周波数:10Hz)を3分間照射することにより、穴あき中空シリカ粒子(1)を得た。
製造例2〜4(穴あき中空シリカ粒子(2)〜(4)の製造)
製造例1の金微粒子を樹脂粒子表面に固定する工程において、反応液内のHAuCl4濃度を第1表に示すように各々変更した以外は、製造例1と同様にしてコア・シェル粒子、中空粒子、さらに穴あき中空シリカ粒子(2)〜(4)を製造した。
製造例5〜8(穴あき中空シリカ粒子(5)〜(8)の製造)
製造例1の金微粒子を樹脂粒子表面に固定する工程において、PVPの重量平均分子量Mw及び配合量と反応液内のHAuCl4濃度とを第1表に示すように各々変更した以外は、実施例1と同様にしてコア・シェル粒子、中空粒子、さらに穴あき中空シリカ粒子を作製した。なお、前記金微粒子の樹脂粒子表面への固定の工程で得られる各粒子について、後述の方法により測定した金微粒子の粒径についても併せて示す。
参考例1>
穴あき中空シリカ粒子(1)について、下記の方法により、平均粒子径、外殻の平均厚み、貫通穴の形状、平均径等の確認、測定を行った。
具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:日立電子顕微鏡H−7600)を用いて加速電圧100kVで粒子の観察を行った。明視野中の全粒子(約100個)の直径及び外殻部厚みを写真上で実測し、平均粒子径、及び平均外殻厚みを求めた。また、約100個の粒子の全貫通穴について最大幅を実測し、平均径及びその標準偏差を求めた。なお、上記観察は、各粒子をメタノールに分散してTEMグリッド上に滴下して乾燥したものを用いて行った。測定結果をまとめて第2表に示す。
なお、図4に、得られたレーザー光照射後の中空粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を示すが、図4(A)に示すように、レーザー照射により、図3における中空粒子の金微粒子に相当する箇所が白く抜けていることがわかる。また図4(B)に、該白く抜けている部分を拡大して示すが、当該部分は明らかに円形状の穴であり、この穴は中空粒子におけるシリカ層(シェル)を貫通していることがわかる。また、図5にレーザー光照射前後の中空シェル粒子の紫外・可視吸収スペクトルを示すが、照射前(0min)に比べて照射後(3min)では、金微粒子のプラズモン由来のピーク(520nm)が大きく減少していることがわかる。この結果は、中空粒子において金微粒子が消失、または小さくなっていることを示している。
以上の結果から、中空粒子のシェルに形成された貫通穴は金微粒子に由来し、レーザー光照射により金微粒子がプラズモン励起され、破壊、消失するとともに当該箇所のシリカ層を破壊することにより形成されることが確認された。
また、上記TEM写真から求められた貫通穴の平均径は22nmであり、穴の長辺に対する短辺の比(短辺/長辺)は2/3であり、また穴の最大幅の67%の直径を有する円が内接可能であった。金微粒子と貫通穴径とを比較すると、金微粒子の平均粒子径よりも貫通穴の平均径の方が大きくなっている。この理由として、レーザー光照射に伴って金微粒子周辺のシリカ層がエッチング(破壊)されたと考えると、穴の平均径の方が若干大きくなることも考えられるが、接近した二つ以上の金微粒子により穴がつながってしまうことや、衝撃で穴周辺のシリカ層が破損してしまうことも考えられる。
<実施例1〜5、参考例2〜3
穴あき中空シリカ粒子(2)〜(8)について、各々参考例1と同様に粒子のTEM観察を行い、同様にして平均粒子径、平均外殻厚み、貫通穴の平均径及びその標準偏差を求めた。結果をまとめて第2表に示す。
なお、上記TEM観察により確認された各粒子における貫通穴の開口部の形状は、いずれも円形状、楕円形状及び多角形状から選択される少なくとも1つであった。
なお、第2表の実施例に示すように、同一反応系でHAuCl4濃度を変化させることにより、金微粒子の平均粒子径を変えることができ、さらにはそれに対応して、中空粒子における貫通穴の平均径も変化させることが可能であることがわかる。
また、参考例3、実施例4〜5に示すように、同一反応系でPVPの分子量を変化させることによっても、金微粒子の平均粒子径を変えることができ、さらにはそれに対応して、中空粒子における貫通穴の平均径も変化させることが可能であることがわかる。
本発明の穴あき中空シリカ粒子は、粒子径がナノサイズでありながら内部に空気や種々の化合物や材料を内包できるものであり、該穴あき中空シリカ粒子を用いた、自動車産業、一般機械産業、電気・電子産業、医療産業などに広く貢献することができる。

Claims (3)

  1. シリカ層からなる外殻を有し、平均粒子径が10nm以上1000nm以下であり、前記外殻に、開口部の形状が円形状、楕円形状及び多角形状から選択される少なくとも1つである貫通穴を有し、
    前記貫通穴の平均径が36nm以上56nm以下であり、穴の長辺に対する短辺の比(短辺/長辺)が0.5以上であり、かつ、少なくとも穴の最大幅の50%以上の直径を有する円が内接できる形状である穴あき中空シリカ粒子。
  2. 前記貫通穴が、金属微粒子を有する樹脂粒子表面をシリカ層で被覆したコア・シェル粒子から樹脂粒子を分解、除去した中空粒子に対し、レーザー光を照射して前記金属微粒子を除去することにより形成された貫通穴である請求項1に記載の穴あき中空シリカ粒子。
  3. 前記外殻の平均厚みが、2nm以上100nm以下である請求項1または2に記載の穴あき中空シリカ粒子。
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