定義
本明細書中用いられる「医療用画像化技術」および「画像化技術」という用語は互換的に用いられ、臨床目的(疾患の明示化、診断または調査のための医療手順)または医学(例えば、正常な人体解剖構造および生理学の研究)のためにヒトの身体(またはその一部)の画像を生成する際に用いられる任意の種類の技術および/またはプロセスを指す。本発明のいくつかの局面によれば、高分解能3次元情報が得られる任意の画像化技術が有用である。本発明のいくつかの局面において有用な技術の例として、多様な種類の磁気共鳴画像化(MRI)技術(例えば、磁気共鳴血管造影、多様な種類のコンピュータ断層撮影(CT)(コンピュータ断層撮影法(CAT)とも呼ばれる)、および多様な種類のポジトロン放出断層撮影(PET))がある。本発明のいくつかの局面において有用な画像化技術により、(例えば複数面再構成アプローチ、表面レンダリングアプローチ、体積レンダリングアプローチまたは画像セグメント化アプローチによって)取得された画像化データから3次元画像再構成を得ることが可能となる。
いくつかの実施形態において、造影剤の投与無しに医療用画像化(例えば、CT)を行うことができる。いくつかの実施形態において、特定のより低コントラストの構造(例えば、末梢血管系)を画像化するために、本発明のいくつかの局面において関連するように、造影剤の利用により、医療用画像化結果を向上させることができる。医療用画像化技術のための造影剤は当業者に周知であり、例えば、W.Krause(Contrast Agents I−Magnetic Resonance Imaging,Springer,2002,ISBN3−540−42247−1)およびW.Krause(Contrast Agents II-Optical,Ultrasound,X−Ray,and Radiopharmaceutical Imaging,Springer、2002、ISBN3−540−43451−8)中に記載されており、本明細書中、周囲組織よりも原子番号がより高い元素(例えば、ヨウ素、バリウム、硫酸バリウム、またはガストログラフイン)を含む造影剤の開示内容について、これらの文献双方全体を援用する。造影剤投与は、多様な経路(例えば、静脈注射または経口投与)を通じて行うことができる。いくつかの実施形態において、造影剤の製剤設計は、特定の組織、細胞型、または標的構造(例えば、病変組織(例えば、腫瘍)中の血管、血管型、または血管下部構造への)造影剤の標的送達を可能にするような様態において、行われ得る。標的送達において有用な造影剤の製剤設計(例えば、造影剤カプセル化(例えば、マイクロカプセル化またはナノカプセル化)、会合または共役inまたはtoa伝達ベクトル(例えば、脂質、リポタンパク、タンパクまたはペプチド、結合剤(例えば、抗体、そのフラグメント、抗体標識リポソーム(例えば、血管の抗原、器官、疾患などへのもの))内におけるまたはこれらへの会合または共役と、このような製剤設計の投与経路および投与モードとが、当業者にとって公知である。
「血管系」という用語は、組織または身体中における血管系を指し、例えば、動脈(心臓から遠位方向に血液を搬送する血管(例えば、酸素化された血液を末梢組織へと送達する動脈))、静脈(血液を心臓へと送り返す血管(例えば、非酸素化血液を末梢組織から除去する静脈))、細動脈(動脈から分岐して毛細血管へと延びる小径血管)、小静脈(毛細血管から静脈へと繋がる小血管)、および毛細血管を指す。
本明細書中用いられる「放射線治療」という用語(「放射線治療」または「放射線腫瘍学」とも呼ばれる)は、電離放射線を医療用途に用いることを指す。放射線治療は、単独で用いてもよいし、あるいは、他の臨床的介入(例えば、血管新生阻害剤の投与)と組み合わせて用いても良い。放射線治療は、細胞死の誘発および/または増殖の抑制のために、主に悪性組織(例えば、腫瘍)に適用される。放射線治療は、単一のビームまたは複数のビームを用いた単一用量の電離放射線の投与あるいはまたは一定期間(例えば複数のセッション)にわたる電離放射線の反復投与を含み得る。本明細書中用いられる「電離放射線」という用語は、亜原子粒子または電磁波からなる放射線を差し、そのエネルギーにより電子原子または分子を分離させ、これらの原子または分子を電離させるものを指す。電離粒子の例としては、エネルギーアルファ粒子、ベータ粒子および中性子がある。電離電磁波の例としては、紫外線、X線およびガンマ線がある。
本明細書中用いられる「画像ガイド下放射線治療」および「画像ガイド下放射線治療」という用語は任意の種類の放射線治療を指し、治療標的構造から得られた画像化情報を用いて、当該標的構造に電離放射線ビームを当てる治療を指す。画像化情報は、一定投与量の電離放射線の投与前または投与時に得ることができる。本明細書中、「画像ガイド下」および「画像化ガイド下」という用語は互換的に用いられる。
本明細書中用いられる「定位的放射線治療」という用語は、高精度の放射線治療を指し、高度に収束された電離放射線ビームを高精度に標的組織まで送達させ、標的構造部位(例えば、腫瘍または腫瘍下部構造)に収束させることで、高投与量の電離放射線を当該標的構造に送達させる治療を指す。
本明細書中用いられる「化学療法剤」という用語は、任意の化学物質(例えば、薬剤または複合物)を指し、疾患治療において用いられるかまたは有用であるものを指す。例えば、この用語が指すものとして、細胞増殖抑制剤、癌治療に用いられる細胞毒性剤および/または抗腫瘍剤あるいは標準癌治療レジメンにおいて用いられる薬剤の組み合わせがある。化学療法剤の非限定的例として、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、またはクロラムブシル)、代謝拮抗物質(例えば、プリン類似体アザチオプリン、メルカプトプリン、またはピリミジン類似体、植物性アルカロイド)、およびテルペノイド(例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン))、タキサン(例えば、パクリタキセル、タクソールまたはドセタキセル)、またはポドフィロトキシンおよびその導関数(例えば、エトポシドまたはテニポシド)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトセシン(例えば、イリノテカンまたはトポテカン))、アムサクリン、エピドフィロトキシン導関数、ならびに抗腫瘍抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシ、マイトマイシンなど)がある。
本明細書中用いられる「対象」という用語は、例えば個々のヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ネズミまたは他の動物を指す。
本明細書中用いられる「自動」または「自動化された」という用語は、方法、プロセス、あるいは少なくとも1つのコンピュータによって実質的に実行される方法またはプロセス内の行為を指す。自動的に実行される行為とは、対応する出力が前記少なくとも1つのコンピュータによって決定されたことを指す。結果または出力を少なくとも1つのコンピュータが計算する場合、入力(例えば、パラメータまたは変数)が提供されるかまたは(例えば人間が)手作業で当該入力を選択する行為も自動的または自動化されたものとみなされる。
上述したように、血管構造(例えば、血管構造)を分析するステップと、1つ以上の生理学的状態または反応(例えば、医薬品に対する陽性反応)の特性を示す構造的プロフィールを特定するステップとは、多くの診断、治療および/または治療分野において注目される場合がある。しかし、画像データ(例えば、X線、CT、MRIなど)から直接入手または確認可能な情報の量は、この点において極めて限られる場合がある。従って、出願人は、画像からジオメトリを抽出することで、上記した分析を促進する方法による恩恵を認識した。抽出後、血管網の幾何学的特性が1つ以上の画像から得られ、得られた血管網の幾何学的表現を分析して、生理学的目的、生物目的および/または医療目的のためにデータマイニングを行うことができる。
本明細書中、血管網の幾何学的表現とは、血管網内の血管のうち少なくとも一部のジオメトリの数学的記述および/またはモデルを指す。幾何学的表現を非限定的に挙げると、幾何学的情報(例えば、血管位置、血管直径、血管方位、血管長さなど)がある。幾何学的表現を用いて、より高次の幾何学的フィーチャ(たとえば、血管同士の連結様態、血管分岐情報、血管長さ、分岐点間の血管長さ、血管曲率および/または屈曲度を得ることができ、あるいは、幾何学的表現はこのようなフィーチャを含み得る。また、以下にさらに詳細に説明するように、幾何学的表現を用いて、他のフィーチャ(例えば、血管密度、ビニング血管密度、血管表面積など)を決定することもできる。一般的に、血管網の多くの潜在的に有用な形態学的フィーチャを血管網の幾何学的表現から得ることができる。
出願人は、血管網のうち一部の境界が分かっておりかつ/または規定されている場合、生理学的、生物および/または医療の分野において有用であり得る特定の情報が入手可能であることを理解した。例えば、特定の器官の血管系の境界または腫瘍に属する血管系の範囲を規定する境界を決定することが可能な場合、重要である可能性がある診断および/または予後情報を、血管網の幾何学的表現から広い集めることができる。
出願人は、血管網の幾何学的表現から血管網の注目部分の境界を決定および規定するための自動化技術を開発した。いくつかの実施形態によれば、血管網の幾何学的表現のうち少なくとも1つのフィーチャに基づいて、境界を規定する。例えば、前記少なくとも1つのフィーチャを非限定的に挙げると、血管密度、ビニング血管密度、分岐密度、曲率および/または屈曲度の測定ならびに/または血管方位、長さおよび/または直径の測定のうちのいずれか1つまたはその組み合わせがある。前記境界によって形成される体積は、前記体積内にある血管と、前記体積外にある血管とを規定する。例えば、器官境界は、前記器官の一部である血管と、前記器官の一部ではない血管とを規定し得る。同様に、腫瘍境界は、当該腫瘍の一部である血管と、当該腫瘍の一部ではない血管とを規定し得る。境界規定後、本明細書中さらに詳細に説明するように、当該血管系の多様な形態学的属性の入手および分析が可能となる。
以下、本発明による方法および装置に関連する多様なコンセプトおよびsの実施形態について、より詳細に説明する。本明細書中に記載の多様な本発明の局面は、多数の様式のうちの任意の様式によって実行可能であることが理解されるべきである。本明細書中、特定の実行の例をひとえに例示目的のために示す。さらに、多様な本明細書中の実施形態において説明する本発明の局面は、単独で用いてもよいしあるいは組み合わせて用いてもよく、本明細書中に明示的に記載の組み合わせに限定されない。
上述したように、血管網のうち少なくとも一部の境界を決定する能力が得られることにより、医療診断用途、予後用途および/または環境用途(例を非限定的に挙げると、構造(例えば、血管)および境界付けられた血管網の形態学的属性を分析して、疾患との関連性、治療に対する反応および/または他の状態を評価する用途)において貴重なツールを得ることができる。
血管網のうち少なくとも一部の境界の決定および/または規定が可能となる前に血管網の幾何学的表現を入手しておく必要があることが理解されるべきである。血管網の幾何学的表現は、前記血管網の1つ以上の画像から計算してもよいし、あるいは、保存されている幾何学的表現を取得してもよい。以下に、血管網の1つ以上の画像から当該血管網の幾何学的表現を抽出するための技術を挙げる。このような技術について、WO2009/088963A2(タイトル:「Methods of obtaining geometry from images」)中に記載があり、本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
I.血管網の幾何学的表現の抽出
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、血管系の1つ以上の画像から血管ジオメトリを抽出する方法を示す。行為110は、少なくとも血管系構造の一部の画像情報を得るステップを含む。例えば、前記画像情報は、X線CT、MRI、PET、SPECTなどを用いて対象をスキャンすることによっって得られた2次元(2D)画像、3次元(3D)画像または他次元画像であり得る。スキャン対象は、生体試料(例えば、ヒトまたは他の動物(すなわち、in−vivoスキャン)であってもよいし、あるいは、試料の血管系の外観から入手してもよい。
図1の方法は、本発明の局面はこの点に限定されていないため、当該画像の入手様態と無関係に、任意の次元の任意の画像に対して行うことができる。2D画像の場合、関連付けられた強度を有する各2D位置を、従来から画素と呼ぶ。3D画像の場合、関連付けられた強度を有する各体積位置を、従来からボクセルと呼ぶ。本明細書中に記載の方法は次元に対して包括的に用いられるため、本明細書中用いられる「ボクセル」という用語は、画像の次元を指定する必要を無くすために、2D画像位置および3D画像位置の双方を指すものとする。
画像から情報を抽出するための多くの技術において、多様なフィルタリング技術が用いられている。例えば、フィルタの設計は、画像の一部(例えば、前記画像の一部とコンボリューションされたもの)に適用された場合に、前記画像中において検出された構造を示すフィーチャまたは特性を含む画像部分に前記フィルタが適用されている場合にフィルタ反応が相対的に大きくなり、そうではない場合に相対的に小さくなるような設計である場合が多い。行為140と関連して以下に説明するフィルタ検出は、整合フィルタリングの一例である。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、他のフィルタリング技術も利用可能である。
検出されているフィーチャまたは構造が画像内において異なるサイズまたはスケールで出現している場合、所望のフィーチャの存在をフィルタ反応が正確に示すことができるよう、フィルタカーネルのサイズを適切なスケールに調節する必要がある。例えば、生物血管系(特に、腫瘍血管系)を含む画像において、構成血管の直径は大きく異なることが多い。そのため、相対的に大きな血管を検出するように設計されたフィルタを正確な位置に適用した場合であっても、当該フィルタは小血管には反応しない。しかし、大血管も小血管も存在していることが先験的に分かっている。そのため、検出を成功させるためには、フィルタ適用前に画像内の構造のスケールを決定することが必要となり得る。本明細書中、この技術のことを「スケール検出」と呼ぶ。スケール検出は、画像の所定の部分に行ってもよいし、あるいは、以下にさらに詳細に説明するようにボクセル単位で行ってもよい。
適切なスケールの検出に加え、フィルタの適用方向を検出するとよい場合がある。詳細には、検出されているフィーチャ(単数または複数)が画像内において任意の方位を向いて出現している場合がある。例えば、血管系の場合、検出されている血管特性は、任意の方向を向き得る。従って、当該フィーチャを検出するように設計されたフィルタが当該フィーチャの方向と主にアライメントをとるように方向付けられていない場合、検出されているフィーチャに対応する画像領域に対して前記フィルタを適切なスケールで適用した場合にも、フィルタ反応が相対的に低い場合がある。従って、検出されているフィーチャまたは特性の方位を決定すると、フィルタ検出技術を有利に利用できる。本明細書中、この技術を「方位検出」と呼ぶ。
従来のフィルタリング技術では、単一の動作においてスケールおよび方位検出を組み合わせている。すなわち、可能なスケールおよび方位の組み合わせを同時に試験し、反応が最大になるスケールおよび方位を選択する。しかし、出願人は、最大反応が最適スケールおよび最適方位に同時に対応しない場合があることを理解している。反応はスケールおよび方位の組み合わせであるため、スケールおよび方位双方により強い反応が得られる一方、スケールおよび方位のうち一方または双方が準最適である場合がある。出願人は、方位独立型のスケール検出動作を開発した。その結果、スケール検出の動作および方位検出の動作を2つの別個の動作に分割することができる。加えて、検出されたスケールをその後用いて、後続の方位検出プロセスを向上させることができる。
行為120において、方位検出から独立した様態でスケール検出を行う。いくつかの実施形態において、スケール検出120は、方位から独立したフィルタを用いて行われる。スケール検出120により、画像内の異なる領域における当該画像のスケールが得られる。いくつかの実施形態において、スケール検出120により、当該画像中の各ボクセルにおけるスケールが決定される。あるいは、事前処理動作を行って、対象(例えば、血管)に対応する画像中のボクセルと、バックグラウンドに対応するボクセルとをおおまかに決定することも可能である。その後、対象に対応するものとして決定された画素のみに対してスケール検出を行うことで、計算量を低減することができる。スケール検出の結果は、フィルタが適用された各位置と関連付けられたスケール(例えば、画像内における各選択されたボクセルにおけるスケール)である。いくつかの実施形態による方位独立型スケール検出アルゴリズムについて、以下にさらに詳細に説明する。
行為130において、方位検出が行われ得る。より高精度の方位検出を支援するために、スケール検出120において決定された画像の選択された領域におけるスケールを、前記方位検出動作において用いることができる。上述したように、1つ以上の画像内の対象の方位を決定することは、対象(例えば、構造、フィーチャ、性質または特性)の高精度のフィルタ検出において重要であり得る。例えば、対象が血管系である実施形態において、血管の中央または長手方向軸の方向を検出した後に、血管中心線を検出するフィルタを適用することが重要であり得る。いくつかの実施形態において、スケール検出120から検出されたスケールを用いることで、方位検出精度を向上させることができる。方位検出の結果は、各選択されたボクセルにおける方位または方向であり、各位置における中心線の方向を示す。いくつかの実施形態による方位検出アルゴリズムについて、以下にさらに詳細に説明する。
行為140において、フィルタ検出が行われ得る。フィルタ検出140において、画像内の対象に対応するように設計されたフィルタが適用され得る。いくつかの実施形態において、前記フィルタは、スケール検出および/または方位検出から決定されたスケールおよび/または方位それぞれにおいて、適用される。画像内における選択された位置におけるフィルタ反応の大きさは、前記位置に当該対象が含まれる可能性を示す。いくつかの実施形態において、当該対象は血管系であり、前記フィルタは、血管中央に反応するように設計されている。すなわち、前記フィルタは、血管における強度プロフィールに反応するように設計することができるため、前記強度プロフィールの方向の中心線ボクセルの中央に配置された場合に、最も強く反応する。前記対象のスケールおよび方向は、前記画像内における選択された位置において決定されているため、フィルタ検出を、前記対象の検出において適切に高精度とすることができる。本発明のいくつかの実施形態により、いくつかの中心線フィルタリングの方法について、以下に詳細に説明する。
行為150において、行為140において行われたフィルタ検出動作の出力に対して、非最大抑制を行うことができる。上述したように、フィルタリング動作(例えば、中心線フィルタリング)の結果は、当該フィルタが適用された各ボクセルにおけるフィルタ反応を含んでいることが多い。前記反応の大きさは典型的には、検出されているフィーチャが対応するボクセル位置に存在している可能性に比例することが多い。しかし、多くのボクセル位置が、関連付けられた非ゼロフィルタ反応を有することが理解されるべきである。加えて、いくつかのボクセル位置は、フィーチャの本当の位置が別の場所にある場合であっても、関連付けられた局所的最大フィルタ反応を有する。しかし、高精度の検出を行うには、局所的最大位置と、検出されている構造の最も可能性の高い位置に対応する真なる最大位置とを区別する必要がある。非最大抑制150では、真の最大フィルタ反応以外の反応を除去または抑制することで、対象を高精度に検出しようとする。血管検出のための中心線フィルタリングの文脈における非最大抑制についての詳細な記述について、以下に説明する。
行為160において、リンキングが行われ得る。リンキングにおける多様な動作として、ボクセル位置を相互に関連付けることで関連構造を形成して、リンク付けされたボクセルから幾何学的特性を得る。例えば、血管検出の文脈において、中心線検出および非最大抑制後に中心線ボクセルとして決定されたボクセル位置を共にリンク付けすることで、血管の関連付けられた中心線を形成することができる。すなわち、同一血管構造から発生している可能性の高い中心線ボクセルを共にリンク付けするための分析が行われ得る。このようにして、血管のジオメトリ(例えば、ジオメトリ15)を得ることができる。血管検出の文脈におけるボクセルのリンク付け方法について、以下にさらに詳細に説明する。
上述したように、いくつかの実施形態は、血管系を検出し、前記血管系のジオメトリを抽出して、多様な分析(例えば、辛酸、治療、薬剤有効性など)を促進することに向けられる。出願人は、整合フィルタに基づいたシステムを用いて3D体積画像から幾何学的情報を抽出して、血管網をセグメント化し、数学的(ジオメトリ)血管表現を抽出する方法を開発した。血管樹の幾何学的表現は、対象の血管樹内の任意の点における3次元位置、方位および/またはサイズに関連するデータを含み得る。いくつかの実施形態において、一連の円盤またはポーカーチップ(例えば、円形または楕円形の円盤)によって血管樹を表現することができ、これらの円盤またはポーカーチップを共にリンク付けすることで、当該血管樹内における任意の点における局所的サイズ、形状、分岐および他の構造的フィーチャに関連する情報を含む3次元構造を形成することができる。
本明細書中、ポーカーチップを用いた血管表現のいくつかの実施形態を、ポーカーチップの積み重ねた様子になぞらえてポーカーチップ表現と呼ぶ。ポーカーチップ表現は、直径が連続的に変化する極微量の円筒形断面の凝集体として血管を取り扱う。各ポーカーチップの「厚さ」は理論的には極微量ではあるものの、各ポーカーチップの厚さは実際には、ジオメトリの抽出元である画像(単数または複数)の分解能に関連し得る。そのため、以下にさらに詳細に説明するように、各ポーカーチップは、関連付けられたジオメトリ(例えば、中央位置、半径および方位)を持ち得る。
図2は、ポーカーチップ表現の模式図である。いくつかの実施形態によれば、各ポーカーチップ210は、中央位置、半径および方位によって規定される。以下にさらに詳細に説明するように、中央位置ciは、血管中央(例えば、中心線フィルタリングによって決定されるもの)を表す。半径rは、位置ciにおける血管の半径を表し、方位は、位置ciにおけるポーカーチップの法線の角度であり、位置ciにおける血管の中心線の接線を表す。本発明の局面はこの点において限定されないため、ポーカーチップ表現はさらなるパラメータを含み得ることが理解されるべきである。
出願人は、上記ポーカーチップ表現を用いて血管系の特性を決定してこの特性を用いることで、疾患診断を支援することができ、これにより、適切な治療に関する情報を入手しかつ/または治療の有効性の評価を行うことが可能になることを理解している。例えば、方位は各位置において分かっているため、以下にさらに詳細に説明するように、より高レベルの情報(例えば、曲率および屈曲度)ならびに血管密度および分布測定を計算することが可能となる。さらに、血管直径が決定可能であるため、血管サイズおよび血管サイズの変化も計算可能となる。以下において、ポーカーチップ表現を用いて行うことが可能な多様な分析について、さらに詳細に説明する。
より高次の情報のうち一部を計算するために、隣接ポーカーチップに関する情報をポーカーチップ表現中に含めると有用である場合がある。例えば、ポーカーチップ同士の連結様態に関する情報が有ると、血管構造全体を理解する上で有用である場合がある。上述したように、出願人は、ポーカーチップを共にリンク付けすることにより、どのポーカーチップにどの血管が属しているかについての情報およびどのポーカーチップ同士が隣接しているかについての情報を得ることを促進するアルゴリズムを開発した。リンク付けを達成した後、より高度な血管分析を行わうことが可能となる。
以下において、本発明のいくつかの実施形態による、3D画像からジオメトリを抽出して、画像内に存在する血管系のポーカーチップ表現を得ることが可能なアルゴリズムについてより詳細に説明する。血管情報の検出および抽出に関連して多様なアルゴリズムについて説明するが、本発明の局面はこの点において限定されないため、本明細書中に開示されるコンセプトは、他の構造の検出および関連付けにも適用可能である。加えて、多様な本発明の局面による分布分析を任意の血管画像、表現またはその組み合わせから得られた情報に適用可能であることが理解されるべきである。
図3Aは、血管セグメントを大まかにモデル化する際に利用することが可能な円筒状セグメント300の一例を示す。円筒状セグメント300の構成は、特定の座標フレーム内の複数のパラメータによって記述することができる。円筒状セグメント300の位置は、空間中の点(xi、yi、zi)(例えば、円筒状セグメントの原点または終端)における円筒状軸305の位置により、記述することが可能である。円筒状セグメント300の方位は、x軸の角度oiおよびy軸からの角度γiにより、指定することができる。円筒状セグメント300は軸方向において対称であるため、z軸周囲におけるその回転は指定する必要はない。円筒状セグメントの長さはliによって指定することができ、円筒状セグメント300の半径はriによって指定することができる。
出願人は、血管の断面を概してガウス形状の強度分布によって特徴付けることが可能であることを理解している。モデル化密度が血管の中央において最高となるように血管の長手方向軸上に中心を有するガウス分布によって血管の断面密度をモデル化することができる。例えば、円筒状血管セグメントの断面密度分布は、その長手方向軸がz軸と一致するように方向付けられた場合、以下のようにモデル化することができる。
ここで、ρは円筒状セグメント中央における密度係数であり、rは円筒状セグメントの半径であり、これにより、密度が中央において最高となる(すなわち、ρと等しくなり)、中央からのラジアル距離の関数として指数関数的に減数するように、密度をモデル化する。図3Bは、方程式(1)中に記載の関数のグレースケール表現を示し、ここで、より濃色のグレースケール値はより高い密度値を示す。図3Cは、図3B中のグレースケールガウス分布の中央におけるx軸に沿った強度値のプロットを示す。図3Dは、画像内の血管の強度プロフィールをより良好にモデル化することが可能な血管強度プロフィールを示す。曲線1および2は、血管直径がスキャン分解能よりも大きい場合および血管直径がスキャン分解能よりも小さい場合の血管プロフィール強度をそれぞれ示す。
円筒形の長手方向軸に沿った密度分布(すなわち、図3B内のページ内外へのもの)は実質的に均一であり、実質的に変動が無く、長手方向軸に沿った断面分布の定数機能として(すなわち、前記分布の中央からのラジアル距離dの定数機能として)モデル化することができる。図4は、円筒状血管セグメント強度分布モデルの模式図である。詳細には、円筒状血管セグメントのモデルは、中央において最大密度を有し、中央からのラジアル距離dの関数として血管の境界に向かって指数関数的に減衰する。各距離dにおいて、密度はz軸に沿って均一である。例えば、d=0における密度は、血管長さに沿って最大となる密度である。線405によって示されるこの密度最大を頂上部と呼び、血管の中心線に対応する。
本明細書中に記載の特性強度分布または同様の分布を画像内において特定できる場合、関連付けられた画素/ボクセルも同様に血管に属する。これらの特性点を用いて、血管領域および非血管領域への画像のセグメント化を促進することができる。図4中に示す特性形状を検出するためのいくつかの方法は、画像に対して頂上部検出を行うステップを含む。本明細書中、頂上点を画像中の一点として定義し、この画像内において、強度は、主曲率方向(すなわち、強度勾配が最高となる方向)において局所的極値をとる。例えば、図4中の(頂上部405に沿った)点415において、曲率の主方向をu0(すなわち、(d、z)座標フレーム内の単位ベクトル(1、0))によって示す。各点はz軸に沿って局所的最大となるため、頂上部405に沿った各点は頂上点を形成する。従って、頂上部を画像内の局所的導関数情報によって特徴付けることができ、対象画像の点周囲の強度の曲率を調査することにより、頂上部をを検出することができる。
いくつかの従来の方法において、Hessian作用素の利用による頂上部の検出が提案されている。しかし、Hessian作用素を利用した場合、画像情報の二次導関数の実行が必要となり、そのため、信号対ノイズ比(SNR)が低減し、性能低下に繋がり得る。出願人は、中心線フィルタリング技術を用いて、上述した血管の特性形状を検出する方法を開発した。これらの中心線フィルタリング技術により、以下にさらに詳細に説明するように、従来のフィルタ(例えば、Hessian作用素)において見られることの多い性能劣化のうち一部を回避することが可能となる。
図1に関連して上述したように、画像からジオメトリを抽出する方法の非限定的例は、複数の処理ブロック(例えば、スケール検出器、方位検出器、中心線フィルタリング、非最大抑制およびリンク付け)を含み得る。簡単に言うと、本システムは、以下のように機能する。すなわち、第1に、スケール検出モジュールおよび方位検出モジュールを3D画像に適用することで、中心線検出のための正確なサイズおよび方位パラメータ(例えば、中心線フィルタのためのスケールおよび方位パラメータ)を得ることができる。第2に、スケール検出モジュールおよび方位検出モジュールから得られたパラメータに基づいて、中心線フィルタを3D画像の各ボクセルに適用するか、または、中心線検出が所望されるボクセルの小区分に適用することができる。中心線フィルタの適用により形成された反応フィールドは、関連付けられたボクセルが血管中心線に対応する可能性を示す。最後に、非最大抑制およびリンク付けを前記中心線反応フィールドに適用して、血管中心線を抽出し、血管数学的表現(例えば、リンク付けされたポーカーチップ表現)を得る。以下に、上記において簡単に説明した主要な5つのブロック(例えば、スケール検出、方位検出、中心線フィルタリング、非最大抑制および中心線リンキング)の実施形態についてより詳細に説明する。
スケール検出
上述したように、スケール検出を適用して、中心線検出の適用先となる各ボクセルに適した中心線フィルタサイズを推定することができる。3D画像体積の各ボクセルへスケール検出を適用した場合、計算コストが相対的に高い場合がある。すなわち、3D画像中の各ボクセルを潜在的な中心線点としてみなした場合、スケール検出を当該画像内の各ボクセルに適用する必要がある。しかし、出願人は、血管が占有しているのは体積のうちごく一部のみであるため、各ボクセルについてスケールを検出する必要は無いことを理解した。詳細には、ボクセルの画像特性(例えば、ボクセルの強度レベル)に基づいて、特定のボクセルを除外することができる。
一般的に、血管からの強度は、バックグラウンドにおける強度よりも高いことが多い。保存的強度閾値を用いて、ボクセルを低偽陽性レートのバックグラウンドボクセルとして分類することができ、閾値操作者による保存程度に基づいて制御することができる。すなわち、閾値を保存的に設定することにより、血管ボクセルが排除されるいかなる危険性を起こすこと無く、バックグラウンドボクセルの実質的なパーセンテージをスケール検出から排除することができる。本明細書中、「バックグラウンド」という用語は、検出されている対象の一部ではないボクセルを指す。バックグラウンドボクセルを排除することにより、スケール検出を行うのに必要な計算を低減することができる。すなわち、少なくとも一部のボクセルを考慮対象から排除することにより、画像内の各ボクセルに対してスケール検出を行う必要が無くなる。
バックグラウンド強度および血管強度双方をガウス分布としてモデル化すると合理的である。実際、図5中の推定は、短縮ガウスの混合物を用いたモデルは、低強度領域中のデータに極めて適合していることを示す。短縮ガウス分布は、以下のような確率密度関数(PDF)を有する。
ここで、N(I|μ、σ)は平均μおよび分散σのガウス分布を示し、b1およびb2は切断点である。バックグラウンド分布および血管分布双方を取得するために、前記データについての2つの短縮ガウスの混合物は、以下のように表現することができる。
ここで、wcは、各コンポーネントの重量パーセンテージである。可能性を直接最大化した場合、問題が発生し得る。なぜならば、周辺確率を決定するには、データと共に指数関数的に増加する計算が必要となるからである。いくつかの実施形態において、この問題は、期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いて解消される。このEMプロセスでは、データ(期待値)のソフトアサイメントと、可能性全体の最大化(最大化)とによる2つのステップが反復的に行われる。すなわち、初期近似分布を用いて、期待値ステップにおいて、ボクセルをバックグラウンドまたはフォアグラウンド(例えば、血管)のいずれかとして分類することができる。次に、前記分類(最大化)に基づいて前記分布を精緻化し、前記精緻化された分布に対して分類(期待値)を繰り返す。バックグラウンドボクセルおよびフォアグラウンドボクセルの最終分類に収束するまで、このプロセスを繰り返すことができる。
ガウス混合物に対するEMアルゴリズムの適用は、バックグラウンドボクセルを考慮対象から排除するかまたはボクセルをバックグラウンドボクセルおよびフォアグラウンドボクセルに分類する唯一の方法である。本発明の局面はこの点において限定されないため、他の事前処理技術または閾値化技術を用いて、ボクセル数を低減し、その後当該ボクセルに対してさらなる処理を行って、計算コストを低減することも可能である。加えて、ボクセル強度は、バックグラウンドに属するボクセルの保存的排除を行うための1つの適切なパラメータではあるものの、本発明の局面はこの点において限定されないため、任意の適切なパラメータを用いてもよい。例えば、より高次の特性が用いられ得る。
上述したように、スケール検出および方位検出を別個に行った場合、2つの動作を同時に行うアルゴリズムに比して有利である場合がある。出願人は、検出対象構造の方位に依存しないスケール検出フィルタを設計した。いくつかの実施形態によれば、球面座標においてf=f(r)として数学的に記述できるように方位独立型フィルタを開発することができる。これは、方位に依存しない関数である。このようなフィルタの対称性により、当該フィルタをフィルタの方向付けから独立させることができる。3D画像から中心線ボクセルを高精度に検出するために、スケール検出フィルタによって生成された反応は、前記フィルタがデータ中心線ボクセルに配置された際に最大になるべきである。円筒形内の点(x、y、z)におけるスケールσを、円筒形境界の壁部への距離として規定することができる。
図6に示すように、このスケール定義により、スケール選択後の(ノイズが無い場合の)円筒形内の独自の最大フィルタ反応が保証される。通常、血管外部の3D画像の強度は、血管内部の強度よりもずっと低いことが多い。このような高速の強度低下により、スケール指示が得られる。出願人は、方位独立型である、ランクに基づいたスケールフィルタを開発した。血管内部の点Xが付与された場合、ランクに基づいたスケールフィルタを以下のように定義することができる。
ここで、R(X、r)は、フィルタ半径rの画像位置Xにおけるフィルタ反応であり、f?およびf+はランク関数である。前記フィルタは半径のみによってパラメータ化されるため、方位独立型のフィルタ対称性が得られる点に留意されたい。多様なノイズモデルについて、ランク関数を選択する方法が多数ある。画像再構成効果に対応するために、f?を最後の10個の最低強度の中央値として選択し、f+を最後の10個の最高強度の中央値として選択する。すなわち、画像の特性からランク関数を決定することができる。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、スケール検出を促進する任意の値としてランク関数を選択してもよい。その後、R(X、r)が閾値となるように最小半径rを発見することにより、スケールσr(X)を得ることができる。
換言すると、フィルタ反応が方程式(6)中の関係を満たさなくなるまで、スケールフィルタの半径が増加する。上述したように、前記スケール検出フィルタは、方位から独立するように設計可能である。いくつかの実施形態によれば、スケールフィルタのカーネルまたはシェルは2Dの場合に円形であり、3Dの場合に球形である。その結果、フィルタのサイズは半径rによって規定され、ここで、フィルタの中央は画像内の位置Xにおける標的ボクセルに配置される。フィルタの半径は全方向において同一であるため、スケールフィルタの用途は方位から独立する。
フィルタ反応についての基準は、フィルタカーネルが血管境界を横断したことをロバストに決定することが可能な任意の適切な基準として選択するとよい。方程式(6)中の基準は一例に過ぎない。いくつかの実施形態において、αの値は5と選択されている。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、他の値も用いてもよい。閾値パラメータαの選択に対するこのランクに基づいたスケールフィルタの感度を調査するために、異なる血管内部のいくつかの点をランダム選択して、比率閾値パラメータαに応じた、選択されたスケールの変化を確認することができる。図7は、αが5よりも大きくなるように選択された場合に、スケールが正確な値に近づくことを示す。
図8は、本発明のいくつかの実施形態による方位独立型スケールフィルタを示す。図8中のスケール検出フィルタは便宜上2D画像の文脈において図示(および適している)が、スケール検出フィルタは、3D体積画像内のスケールを検出する3Dフィルタとして設計されていることが理解されるべきである。詳細には、図8中に示す円形フィルタは、3D内のスケールを検出できるように球形に拡張することができる。図8中において、画像805の一部が画像部分内の血管構造815を有する様子が図示されている。画像部分805は模式図であり、血管構造815およびバックグラウンド825は、前記画像部分内の各ボクセル位置における強度値を含むことが理解されるべきである。さらに、画像部分805は、もっと大きな画像のうちの小部分であり得ることが理解されるべきである。明確性のため、単一の血管構造のみを画像部分805内に図示しているが、実際には前記画像部分は任意の数の血管構造を含み得る。
図8はまた、方位独立型スケールフィルタ850の3つの別個の適用を示す。スケールフィルタ850は、全ての画像ボクセルにおいてまたは選択された数の画像ボクセル(例えば、事前処理技術(例えば、上述した知的閾値化方法)を用いて血管ボクセルとして決定されたボクセル)に適用可能であることが理解されるべきである。図8中のフィルタの3つの適用はひとえに例示的なものであり、前記スケール検出フィルタの記述を支援できるような任意の位置において選択される。前記フィルタの各適用では、先ず、スケールが検出されている標的画素上の所定の最小半径rと共に前記フィルタを配置する。その後、例えば前記フィルタカーネルに該当するかまたは前記フィルタカーネルの値によって支援する画像画素をコンボリューションすることにより、スケールフィルタを画像に適用する。特定の基準が満たされた場合、前記フィルタ全体が未だ前記血管内に存在しているものと推定し、半径rを増加させる。
図8において、前記フィルタ半径を増加していく様子を、徐々に大きく破線の円により図示している。実線の円は、前記基準が満たされるように最終フィルタを適用する様子を示す。例えば、フィルタ適用850b内の点線円は、円rnを示す。円rnは、下側画像に適用された場合(ここで、nは、前記画像に適用された、徐々に大きくなる半径フィルタカーネルである)、前記基準を満たさない。そのため、対応する画像位置におけるスケールをrnー1と決定する。スケール検出を行うと、後続フィルタリングプロセス(例えば、中心線検出)において用いられるべき適切なスケールが得られるだけでなく、ポーカーチップ表現内における血管構造の半径も知ることができる。
出願人は、ノイズが無い場合、血管内のボクセル強度はバックグラウンドボクセルよりも実質的に高いということを利用して、フィルタカーネルが血管構造外に延びた場合に基準は一般的に満たされないという基準を確立した。このような基準の一実施形態を方程式5および方程式6中に示す。方程式5中に示すランク関数を用い、方程式6中の基準を用いることにより、フィルタカーネルのサイズが増加して血管外部のボクセルを包含した場合に基準を満たさななくなるような、ロバストなフィルタを設計することができる。上記したスケール検出フィルタは例示的なものであり、本発明の局面はこの点において限定されないため、他のスケール検出フィルタを用いてもよい。加えて、本発明の局面はこの点において限定されないため、フィルタが血管境界にわたって拡張した場合に満たされない傾向となる任意の基準を用いてもよい。
中心線ボクセルは事前に知ることができないため、スケール検出フィルタを非中心線ボクセルを適用する。フィルタ適用850bによって示すように、フィルタカーネルが血管境界を横断する際、スケール検出を再度停止する。標的ボクセルは中心線ボクセルではないため、フィルタの半径は、血管の半径に対応しない。しかし、中心線ボクセルとされなかったボクセルは後続処理において(例えば、後述するような中心線フィルタリングにおいて)除去されるため、これは重要ではない。中心線フィルタリング後に残っているのは中心線ボクセルとして検出されたボクセルのみであるため、スケール検出器の半径は、関連付けられた血管の半径を高精度に反映することができる。
図9は、R(X、r)を実像に適用した場合の外観を示す。血管内において強度は大きく変動するものの、ランクに基づいたスケールフィルタは円滑に挙動し、血管境界において相対的には高速に減衰する。そのため、ランクに基づいたスケールフィルタは、血管境界を横断する際に相対的にはっきりとした反応を示し、また、比率パラメータの選択に対して相対的に安定しておりかつ低感度であるという主な利点を持つ。これにより、画像中の各選択されたボクセルにおいて、スケールを検出することができる。例えば、画像内の各ボクセルまたは画像に対する閾値化の結果得られたより少数のボクセルにおいてスケールを検出することができ、これにより、バックグラウンドボクセルのうち少なくとも一部を排除することができる。本発明の局面はこの点において限定されないため、スケール検出対象のボクセルを選択する方法は、他にもある。
方位検出
上述したように、中心線フィルタを適用する方位を先ず決定することにより、中心線フィルタリングを向上させることができる。スケール検出は方位から独立して行われるため、スケール検出から独立して方位検出を行うことができる。いくつかの実施形態において、方位検出において、スケール検出時において検出されたスケール値を用いて、対象の方位検出を向上させる。いくつかの実施形態において、勾配に基づいた方位検出アルゴリズムが用いられ得る。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、血管方位の検出のために他のアルゴリズムを用いてもよい。血管構造のモデル化に用いられる円筒形の軸に沿った回転対称性に起因して、ノイズが無い場合、血管軸に対して平行な線に沿った強度は一定となる。換言すれば、ノイズが無い場合、血管軸に対して平行な方向vに沿った強度の方向導関数はゼロとなる。
X線は、X線貫通長さに応じて、画像取得時に減衰することが理解されるべきである。そのため、血管内部における強度は、軸方向以外の任意の方向に沿って変化する傾向となる。これは、上記の独立変数は血管内の任意の点Xについて成立するため、方程式(7)は血管方向の発見のための必要十分条件となり得ることを示している。従って、強度変化が最も小さくなる方向ベクトルを発見することにより、各点Xにおける小さな円筒形セグメントの方向を推定することができる。しかし、1つの点Xの導関数から直接推定を行った場合、エラーの原因となりやすい。いくつかの実施形態において、点X上に中心を有する小体積内部の導関数全てを用いることで、精度を高めることができる。より詳細には、この方向に沿った方向強度勾配の合計が最小化される方向を発見することにより、軸方向aを推定することができる。
ここで、σ(X)は、点Xにおいて検出されたスケールであり、
は本明細書中に記載のノルムである。ノイズが存在する場合、適応ガウスカーネルによってコンボリューションされた強度の方向勾配を以下のようにして用いればよい。
いくつかの実施形態において、ノイズ分布がガウスi.i.dである(すなわち、方程式(9)中のノルムがL2ーノルムである)と仮定することにより、方程式(9)を最小二乗推定によって解くことができる。しかし、入力データ中に存在する異常値に対してL2ーノルムが高感度であり得、再構築された3D画像中に異常値が頻繁に発生し得ることが周知である。いくつかの実施形態において、方程式(9)中のL1−ノルムが用いられ得る。
上記方程式におけるa=0における自明な解を回避するために、制約
を用いることができる。aは点(x、y、z)から独立しているため、aは三重積分から移動され、以下のようになる。
方程式(8)〜(12)中において、体積vに対して操作が行われていることが理解されるべきである。方位検出を単一のボクセルにではなく近隣に行うことにより、方位評価においてセミグローバル情報を取得することができる。この近隣情報により、ノイズおよび異常値が有る場合におけるロバストな方位検出が可能となる。しかし、近隣(例えば、体積v)は、相対的に大きな血管と相対的的に小さな血管における検出方向によって異なり得ることが理解されるべきである。そのため、出願人は、標的ボクセルにおけるスケールに基づいて近隣ワイズを変化させる適応方法を開発した。すなわち、スケール検出時に決定されたスケールを用いて、体積vのサイズを決定することができる。いくつかの実施形態において、
のサイズを体積サイズとして用いることができる。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、スケールに基づいた任意の適応近隣が用いられ得る。このようにして、方位検出に用いられる近隣のサイズを、各位置における画像スケールに応じて適応させることができる。
上述したように、L1ーノルムを用いて、異常値に対応することができる。方程式(12)を解く方法は複数存在する。いくつかの実施形態において、前記方程式は、ラグランジュ乗数法を用いた制約最適化によって解かれる。をラグランジュ乗数法を上記方程式に適用すると、以下のようになる。
従って、行列Mの最小固有値と関連付けられた固有ベクトルを計算することにより、中心線方向aを得ることができる。再度図4を参照して、上記方程式を解いて方向aを決定することを図式的に説明することができる。一般的に、行列Mの固有ベクトルは、曲率の特性方向を示す。これらの曲率特性方向間の関係を用いて、中心線の方向を特定することができる。行列の固有値および関連付けられた固有ベクトルは、多様な様式によって決定することができ、例えば、行列を分析的に対角化するかまたは以下の関係を直接解く任意の数の周知の反復方法により決定することができる。
ここで、Mは方程式13の行列であり、uは行列Mの固有ベクトルであり、λはuと関連付けられた固有値である。行列Mの各固有値の大きさは、関連付けられた固有ベクトルの「有意性」に関連する。換言すれば、固有値は、関連付けられた固有ベクトルに沿った曲率が、行列Mによって決定された局所的曲率に貢献する程度を示す。従って、方程式13中のaは、最小固有値と関連付けられた固有ベクトルであり、強度変化が最小である方向を示す。行列Mの最大固有値は、曲率の主方向と関連付けられる。
図4中において、線形に独立する固有ベクトルu0およびu1(すなわち、固有ベクトルu0およびu1は直交している)が、図示の強度曲線上に図示されている。本明細書中、固有値λ0は、最大絶対値を有する固有値を指し、主固有値と呼ぶ。従って、関連付けられた固有ベクトルu0は、標的画素における曲率の主方向を示し、λ0は、前記曲率の大きさに関連する。固有値λ1(第2の固有値と呼ぶ)は、u1の方向(すなわち、u0によって示される曲率の主方向に直交する方向)の曲率の大きさに関連する。ガウスプロフィールの頂上部に沿って(すなわち、方向u1において)、強度実質的にゼロになるはずであり、強度変化は相対的に低く、ノイズが無い場合はゼロである(すなわち、強度は、中心線方向のzの関数として変化しない)。従って、最小固有値と関連付けられた固有ベクトルを決定することにより、中心線方向に対応する方向aを決定することができる。よって、選択されたボクセルそれぞれにおいて、中心線方位を決定することができる。
中心線検出
フィーチャ検出フィルタのためのスケールおよび方位を決定した後、対象フィーチャを検出することができる。いくつかの実施形態によれば、ガウス中心線フィルタを用いて中心線検出が行われる。例えば、血管内部の密度がガウスモデルを満たすと仮定する。
ここで、rは血管軸に対して水力な方向であり、σは血管の半径であり、I0は中央における強度である。ガウス血管を検出するために、ラジアル変化がガウスの二次導関数に対応するフィルタを用いることができる。
このフィルタの適用は、空間における体積積分に対応する。この体積積分は、前記フィルタが一定密度の材料中に埋設された場合に消滅する。しかし、ガウスの二次導関数は消滅しない。すなわち、以下のようになる。
この問題は、オフセットを付加することにより、解消することができる。
従って、中心線フィルタは、以下のような形態を有する。
このフィルタは、
であるときに正のコアを有し、
であるときに負のシェルを有する。
出願人は、ノイズが存在する場合、上述したようなガウス形状を密接に模倣する中心線フィルタは、(特に血管構造が相対的に密集している場合に)不正確になる場合があることを理解した。詳細には、ガウスの連続的減衰は、特定の状況(例えば、血管構造が密集している場合および/または相対的に小さな血管構造が相対的に大きな血管構造の近隣にある場合状況)において、中心線ボクセルを不正確に検出するかまたは検出できない場合がある。
出願人は、中心線フィルタを修正すれば、(特にノイズが存在する場合に)中心線点を高精度に特定する点において、より効果的である場合があることを理解した。いくつかの実施形態によれば、画像中の血管構造のプロフィールと良好に適合するフィルタを用いて、中心線検出が行われる。図10Aは、本発明のいくつかの実施形態による整合フィルタを示す。フィルタ900は、内側コアおよび外側コアを含む。ガウスカーネルではなく、フィルタ900は、内側コアと外側コアとの間にステップ機能を含む。その結果、フィルタ支持部がよりコンパクトとなり、前記フィルタは、密集している血管構造をより高精度に検出することが可能になる。加えて、前記フィルタは血管プロフィールとより良好に適合するため、中心線検出をより高精度とすることができる。いくつかの実施形態による整合フィルタ900に割り当てられる値の例を以下に示す。
軸x-x’に沿ったフィルタのプロフィールを図10B中に図示する。図示するように、整合フィルタのサイズは、スケール検出時に検出されたスケールに基づく。このフィルタを適用すると、中心線反応は以下のようになる。
ここで、G(0、σ)は、ガウス平滑化カーネルである。フィルタのスケールが小さい場合(例えば、スケール検出において局所的スケールが相対的に小さいと決定された場合)、方程式(20)によって規定されたフィルタは、ゼロの実体積(正のコアの体積から負のコアの体積を減算)を持ち得ない。その結果、フィルタが非ゼロ均一バックグラウンドに適用された場合、非ゼロ反応となり得るため、検出が困難になり得る。図12に示すように、フィルタのスケールが小さい場合、実体積のパーセンテージが極めて大きくなり得る。例えば、スケールが1.5である中心線フィルタの場合、実体積は、フィルタの全体積の35%である。よって、フィルタは、小スケールによってフィルタバイアスを生成し得る。
従って、このバイアスに対応するために、上記したフィルタを以下のように修正することができる。
ここで、
ここで、wsは、スケールsの関数であり、これにより、以下のようになる。
軸x-x’に沿って方程式(22)中に表したフィルタのプロフィールを図10C中に図示する。上記した整合フィルタは、ノイズが存在する場合に中心線ボクセルを高精度に検出する際および対象が相互に近接して位置している状況においてに、特に有効であり得る。
上記した整合フィルタは、画像中の複数の選択されたボクセルに適用され得る。従って、整合フィルタが適用された各選択されたボクセルについて、対応するボクセルが中心線ボクセルである可能性を示す可能性を示す関連付けられたフィルタ反応が得られる。しかし、対象となるのは、最大フィルタ反応のみである。すなわち、最大フィルタ反応は、最も中心線ボクセルである可能性が高いものである。従って、最大フィルタ反応を有するボクセルのみが残るように、最大ではないフィルタ反応を抑制することができる。
非最大抑制
いくつかの実施形態において、非最大抑制が行われ得る。例えば、中心線フィルタリング後において、各ボクセルは反応を有する。各ボクセル上の反応は、当該ボクセルが中心線ボクセルである可能性の高さを示す。中心線ボクセルは、前記軸に対して垂直な面において最大反応を持つはずであるため、非最大抑制の目的は、非最大反応を抑制することで、非中心線ボクセルを排除することである。各ボクセル上において、血管軸に対して垂直な切断面を用いて、非最大反応を抑制することができる。切断面上において、中心線フィルタ反応の局所的最大のみが保持され、他の反応は全て抑制される。以下、サブボクセル精度を達成するための中心線位置の補間について説明する。
いくつかの実施形態において、切断面上への位置補間が行われ得る。円筒形の方向を得た後、この方向に対して垂直な切断面を用いて、従来のコンピュータ視覚エッジ検出問題の類似物として非最大抑制を適用することができる。任意のボクセルxについて、ボクセルxを試験して、当該ボクセルが極大であるか否かを決定することができる。いくつかの実施形態によれば、前記切断面はx上に中央を持ち得、中心線反応R(x)と、その切断面近隣N(x、vx)における他の任意の反応とを比較することができる。すなわち、近隣N(例えば、3×3×3の近隣)内の反応フィールドをこの切断面上に付与することができる。ボクセルxにおける反応が近隣ボクセルの全反応以上である場合、ボクセルxを極大としてラベル付けすることができる。そうではない場合、ボクセルxを非最大ボクセルとしてラベル付けし、抑制する。この試験は、以下のように表すことができる。
ここで、N(x、vx)は、点xの切断面近隣を示す。近隣が決定された後、以下に示すような放物線関数を用いて、サブボクセル最大位置を補間することができる。
上記反応モデルと、中央周囲の小領域内の中心線フィルタ反応とが得られると、以下の方程式を用いることができる。
この線形形態は、行列形態として表すことができる。
ここで、
最大位置は、静止状態によって決定される。すなわち、
従って、以下のようになる。
いくつかの実施形態において、近隣N(x、vx)のサイズは、近隣内の画像の特性に基づいて決定される。非最大抑制アルゴリズムにおいて、どのくらいの大きさの近隣サイズを選択すべきかという自然な質問がある。いくつかの実施形態において、最小サイズの3x3x3を用いているが、この選択の場合、ノイズ領域における非最大抑制において異常値が残る場合がある。パラメータを選択する別の方法として、半径および/またはスケール検出からの結果の利用がある。いくつかの実施形態において、実際の密集している血管が抑制されるのを回避するために、近隣を選択する際に、保存的アプローチを用いることができる。
方程式(32)中の近隣は例示的なものであり、本発明の局面はこの点において限定されないため、適応近隣(例えば、スケールに基づいたもの)を他の方式で決定することができることが理解されるべきである。
リンキング
上述したように、中心線フィルタリングおよび非最大抑制プロセスからの出力から、3Dフィールドを得ることができる。この3Dフィールドにおいて、各点は、中心線に属しているものまたは中心線に属していないものとしてマーク付けされる。いくつかの実施形態において、中心線点を他の情報(例えば、円筒形要素(例えば、ポーカーチップ表現を用いたもの)の半径、強度および方位)と関連付けることができる。円筒形要素リンキングのタスクにおいて、中心線点を接続し、結合点を特定して、血管網を生成するいくつかの実施形態において、以下のうち1つ以上と関連して、実際的な困難が発生し得る:1)小片からなる中心線が損失し得る。2)デジタル化に起因して、非最大抑制後の中心線セグメントによって「ジグザグ」が形成される。3)実際の中心線が無い箇所におけるノイズに起因して、小さな異常値中心線セグメントが発生し得る。4)結合点領域に起因してリンキングアルゴリズムが混乱し得、その結果リンク付け結果の誤りにつながり得る。出願人は、これらの困難のうち1つ以上に対応するリンキング方法を開発した。
いくつかの実施形態において、局所的円筒形要素リンキングアルゴズムを以下のようにして用いることができる。1)最も顕著な円筒形セグメントから開始する。2)前記円筒形セグメントに直接接続された後継部が見つからなくなるまで、前記円筒形セグメントの前方をサーチする。3)先行部が見つからなくなるまで、前記円筒形セグメントの後方をサーチする。4)接続されている円筒形要素を全てマーク付けする。よび5)未マークの円筒形セグメントが無くなるまで、上記ステップを繰り返す。いくつかの実施形態によれるリンキング方法の一例について、以下にさらに詳細に説明する。
血管の単一の分岐を、この分岐に属しているポーカーチップ全てを接続する、平滑化された3D曲線のデジタル化としてモデル化することができる。分岐の一部(例えば、反応が大きい中心線点)として既に選択されている点yが与えられると、所与の基準に基づいて、点yが隣接点にリンク付けされる。例えば、リンキングは、点y(距離)に近い点への接続が選好されるように、選択され得る。このような点y(距離)に近い点は、予期される方向vy(方向)の大きな変化を必要とせず、また、点yにおける反応と反応が最大限に近い(反応)。各候補点xにこの基準を当てはめて、連結している可能性が最も高い候補を決定することができる。
いくつかの実施形態によれば、前記基準は、確率的モデルを用いて決定される。例えば、上記試験は、後部可能性を最大化する点xを発見することにより、が行われ得る。
事前情報が既知ではない場合、後部確率の最大化は、可能性の最大化と同じである。
Ly=xである場合、前記距離、方向および反応の試験は条件独立であるため、各試験について周辺分布を得るのに十分である。
上記において定義した3つの試験のうち、出願人は、距離が最も信頼性が高い傾向があると決定した。従って、この距離試験のための確率モデルを構築することがかのうである。いくつかの実施形態によれば、点yと候補xとの間の距離が指数関数的に不利になるように、距離試験のためのガウスモデルを選択する。
上述したように、別の有用な試験として、点yと候補点xとのリンク付けに起因して発生する、リンク付けされた中心線点(例えば、方位検出から決定されたもの)の方向変化範囲の決定がある。しかし、出願人は、方位検出からの中心線の方向がデジタル化に起因して局所的にジグザグし得ることを理解している。従って、方位検出から得られた方向のみに依存した場合、リンキングエラーに繋がり得る。この困難に対応するために、いくつかの実施形態においては、スーパーガウスモデルを用いて、点xの中心線方向について、候補xとの接続点yの可能性を試験する。
前記スーパーガウスモデルは平坦な頂部を有するため、前記試験は、相対的に大きな角度変化を許容することができる。上述したように、前記中心線反応およびスケールを用いて、候補xとのリンキング点yの実行可能性を試験してもよい。中心線反応およびスケールは、単一の分岐に沿って円滑に変化すると仮定すると合理的である。換言すれば、中心線の急激な変化を発生させる点へのリンキングに、低確率が割り当てられ得る。この直感により、反応試験モデルを以下のように構築することができる。
ここで、Zは規格化因子であり、σ(単数または複数)=max{0.5、0.2s}である。よって、上記試験を上記したアルゴリズムと関連して用いて、中心線点(例えば、非最大抑制後に残った中心線点)をリンク付けすることができる。方向探知器およびグリッド離散化におけるエラーに起因して、いくつかの非中心線点が非最大抑制後に残る。しかし、占有制約を適用することにより、これらの点の数を低減することができる。これらの占有制約は、先行してリンク付けされた分岐が局所的空間を占有している場合、この分岐が別の分岐の中央である可能性は低いという考え方に基づいて動作する。換言すれば、弱分岐が強分岐と同じ空間を占有している場合、長分岐に高信頼度を割り当てることで、前記弱分岐を抑制することができる。
中心線点を共にリンキングした結果、これらの中心線点それぞれは、ポーカーチップを表すようになる。このポーカーチップは、中央位置(中心線点)と、半径と、中央位置における中心線の方向とを有し、これにより、当該血管のさらなるジオメトリの計算が可能となる。図2中のポーカーチップ表現の模式図を再度参照する。中央位置ci、半径rおよび方位aそれぞれを計算し、かつ、リンク付けされた前記隣接ポーカーチップを得た後、当該血管のさらなるジオメトリを決定することができる。例えば、前記リンク付けされた方位パラメータは、中心線のジオメトリについての情報を取得する。例えば、方位ベクトルを統合することにより、中心線曲線を得ることができる。すなわち、前記方位ベクトルは、各位置ciにおける中心線曲線の接線を表すため、ポーカーチップの一定の所望のセグメントに対して統合することにより、リンク付けされた接線から中心線曲線を回復させることができる。
加えて、前記リンク付けされたポーカーチップを用いて、より高次の幾何学的特性および/またはより高度な幾何学的特性を決定することができる。例えば、前記リンク付けされた方位ベクトルの導関数を用いて、当該血管の曲率を決定することができる。当該曲線の中心線曲線および長さと、曲率パラメータとを用いて、多様な屈曲度パラメータを決定することができる。これらの多様な屈曲度パラメータを用いて、当該血管を特徴付けることができる。さらに、前記ポーカーチップ表現は、血管材料の密度についての分布情報を示す。この分布情報は、異なる半径などにおける血管の相対的分布である。以下にさらに詳細に説明するように、これらの幾何学的パラメータ、構造的パラメータおよび分布パラメータを多数の様式で用いて、血管系を分析することができる。図13は、前記リンク付けされたポーカーチップ表現を用いた血管系の幾何学的表現を示す。この幾何学的表現中、ジオメトリは、本明細書中に記載の方法を用いて、3D体積画像から抽出されている。
いくつかの実施形態によれば、前記リンキングアルゴリズムは、並列に行われ得る。リンキングは一般的には局所的なものであり、遠隔ボクセルからの情報に依存する必要が無いため、画像を小ブロックに分割することにより、前記アルゴリズムを並列化することができる。その後、個々のCPUは、他のブロックと通信する必要無く、単一のブロック上において動作することができる。この計算には一定の近隣情報が必要となるため、各ブロック内の一致のマージンが、その近隣のマージンと重複している。並列化によって得られる速度は、マージンに起因する1つの追加オーバーヘッドでプロセッサの数を分割した数である。一例において、2000x2000x1400の体積を500x500x500個のブロックに分析し、8つのプロセッサを用いたところ、処理速度が4.49倍高速化できた。
並列化のためのマージンは、以下に基づいて選択することができる。1)スケール選択のためのマージンms=rmax+1、2)平滑化のためのマージンmsm=3σ、3)勾配計算のためのマージンmg=1、4)方向検出のためのマージンmd=mg+rmax+1+msm、5)中心線フィルタリングのためのマージンmc=max{2rmax、md}、6)非最大抑制のためのマージンmsprs=rmax+mc。
並列化のブロックアルゴリズムにおいては、最初に体積をブロックに分割した後、最後にこれらのブロックを体積に組み立てる必要があるため、グローバル座標とブロック座標との間の変換方法が必要となり得る。グローバル座標における点(i、j、k)について、ブロックid(bx、by、bz)は以下のように得られる。
このブロック内の局所的座標は、(i’、j’、k’)となり、以下のようになる。
前記ブロック(bx、by、bz)の次元(sx、sy、sz)は、以下のようになる。
ブロック(bx、by、bz)における点(i’、j’、k’)について、ファイル中のグローバルオフセットは以下のようになる。
x次元中のブロック数は
であり、y次元中のブロック数は
であり、z次元中のブロック数は
である。
3Dインデックスに対する一次元ブロックIDl=(1、…、nbxnbynbz)
一次元ブロックIDに対する三次元ブロックID(bx、by、bz)
上述したように、前記リンク付けされたポーカーチップ表現を用いて、血管系の複数の幾何学的パラメータおよび構造的パラメータを決定することができ、また、このポーカーチップ表現を用いて、前記血管系の分布情報も決定することができる。本明細書中、前記抽出されたジオメトリを用いて、診断、治療有効性評価、治療、および他の用途またはその任意の組み合わせのために血管系を分析する方法について説明する。
II.対象血管の領域(単数または複数)の境界の決定
上述したように、血管網のうち少なくとも一部の境界を決定する能力によって、医療診断用途、予後用途および/または環境用途(例を非限定的に挙げると、構造(例えば、血管)および境界付けられた血管網の形態学的属性)の分析による、疾患との関連性、治療に対する反応性および/または他の状態の評価)における貴重なツールを得ることができる。血管網の幾何学的表現を得た後、血管ジオメトリを用いて、血管網のうち少なくとも一部の境界を決定することができる。境界によって、対象血管網の特定の器官、腫瘍または他の任意の部分の血管系を規定することができる。本発明の局面はいかなる特定の種類の血管系との利用に限定されないため、本明細書中に記載の技術を用いて、器官の境界付けおよび当該器官内の領域(例えば、腫瘍)の境界付けを行うことができる。
図14は、いくつかの実施形態による、血管網のうち少なくとも一部の境界を特定する方法を示す。例えば、本発明の局面は任意の特定の様式において得られた幾何学的表現との利用に限定されないため、上記に記載の技術のうちのいずれかを用いてまたは他の任意の適切な技術を用いて得られた血管網の幾何学的表現に対し、方法1400が行われ得る。さらに、方法1400は、先行して得られた幾何学的表現を局所的に保存するかあるいは別の位置から遠隔にまたは送信した場合にも、適用可能である。本発明の局面はこの点において限定されないため、幾何学的表現は、画像から得ることもできるし、あるいは、他の手段によっても生成可能である。
行為1410において、幾何学的表現の領域を評価し、選択された基準を満たす領域を特性する。基準は、当該血管網の幾何学的表現の1つ以上のフィーチャに対応する任意の程度(単数または複数)でよい。適切な基準を挙げると、対象血管網の部分内の血管と、対象血管網の部分外の血管との区別を可能にする任意の1つ以上の程度がある。一例として、出願人は、腫瘍領域の一部の血管は、当該腫瘍血管と、当該腫瘍領域の一部ではない血管とを識別する特性(例えば、腫瘍血管と、健常組織と関連付けられた血管との間の識別)を持ち得ることを理解している。すなわち、腫瘍血管系は、正常または健常の血管系と異なる血管構造を持ち得、これにより、前記腫瘍血管系の血管を境界付けることができる(本明細書中、「ラップする」ともいう)。同様に、対象器官内の血管は、所望の器官内の血管系と、前記器官外の血管系との間の境界の規定を支援する特性を1つ以上持ち得る。規定された境界により、前記境界付けられた血管系に対し、以下にさらに詳細に説明するように、さらなる分析を行わうことができる。任意の識別のための幾何学的表現の形態学的フィーチャを用いて、対象血管網の一部の境界の規定を促進できることが上記から理解されるべきである。
上述したように、前記基準は、対象血管系内の血管と、対象血管系外の血管との識別を促進する血管ジオメトリの血管フィーチャのうちの任意の1つまたは組み合わせを含み得る。例えば、血管密度は、血管系の一部の境界の識別を可能にする血管ジオメトリの1つのフィーチャであり得る。いくつかの実施形態によれば、ポーカーチップ表現を用いて、血管密度を計算することができる。例えば、規定された体積あたりのポーカーチップ数を、血管密度の尺度として計算することができる。その後、この血管密度を3次元(3D)スカラー場に変換して、以下にさらに詳細に説明するように、対象血管系の境界の特定の支援することができる。本発明の局面は任意の特定のフィーチャまたは形態学的属性との利用に限定されないため、血管密度の代わりの(または血管密度に加えた)他の尺度を用いて、境界特定を促進することができる。
上述したように、前記ポーカーチップ表現をさらに処理して、より高次の情報(例えば、ポーカーチップ同士をリンク付けすることにより、血管網内の血管を形成している様態)を含むようにすることができる。ポーカーチップ同士をリンク付けすることによって入手可能な情報は、単独でまたは組み合わせで尺度として用いて、対象血管を識別する(例えば、健常と、疾患血管、特定の器官に属する血管または双方との間の識別する)ことができる。リンク情報を用いて、血管網内における血管の分岐の頻度に関連する情報を得ることができる。その後、分岐頻度を用いて、血管間を識別し、対象血管系の境界の規定の支援をすることができる。例えば、所定の体積あたりの血管分岐の数をフィーチャとして用いて、血管網の一部の境界の規定を支援することができる。
他のより高次のフィーチャを用いてもよい。リンク情報により、形態学的属性(例えば、曲率および屈曲度)に関する情報を得ることができる。これらの尺度を用いて、境界決定を促進することもできる。例えば、曲率および/または屈曲度に基づいて一定の基準を確立することができ、基準を満たしている領域および基準を満たしていない領域に基づいて、幾何学的表現を3Dスカラー場に変換することができる。同様に、血管網の所望の部分に属している血管を識別する適切な基準が確立可能な、血管方位、血管長さ、血管直径または他の任意の血管ジオメトリ尺度を単独でまたは任意の組み合わせで用いて、以下にさらに詳細に説明するように境界を規定することができる。
行為1420において、前記特定された領域を用いて、対象血管網のうち少なくとも一部の境界を規定する。いくつかの実施形態によれば、血管網の一部の識別に適した、選択された1つのフィーチャまたはフィーチャの組み合わせ適切なを用いて、前記血管網の幾何学的表現の領域が所定の基準を満たすか否かに基づいて、前記幾何学的表現を3Dスカラー場表現に変換する。すなわち、前記幾何学的表現を、所望のサイズの体積に論理的に分割することができる。前記幾何学的表現のうち少なくとも1つのフィーチャの所与の関数に従って、各体積を評価することができる。例えば、前記評価関数に従って、各体積に1つ以上の値を割り当て、指定された基準と比較することができる。いくつかの実施形態によれば、方程式44中に示す変換を用いて、前記血管網の幾何学的表現を前記血管網の3Dスカラー場表現に変換することができる。
ここで、Fは幾何学的表現Gの関数であり、Cは所望の基準である。前記3Dスカラー場表現によれば、血管網は、2変数関数o(x、y、z)として表される。ここで、所与の基準を満たす領域(例えば、所定の体積)に対し、ゼロの値が割り当てられる。上述したように、幾何学的表現を、所望のサイズの体積に論理的に分割することができる。幾何学的表現の少なくとも1つのフィーチャの所与の関数に従って、各体積を評価することができる。例えば、前記評価関数に従って各体積に1つ以上の値を割り当て、特定の基準と比較することができる。その結果得られた表現を、基準を満たす別個の体積および基準を満たしていない体積に2値化することができる。
方程式44によって示すように、対象血管網の一部(例えば、対象血管網の一部の境界内の血管および前記境界外の血管)の内部血管構造と外部の血管構造との識別に適した任意の基準として基準Cを規定することができる。同様に、関数Fも、幾何学的表現Gの幾何学的表現の任意の関数でよい。従って、血管網の幾何学的表現のドメインについてF(G)を評価し、前記評価を基準Cと比較することにより、前記幾何学的表現を3Dスカラー場表現に変換することができる。
以下にさらに詳細に説明するように、任意の関数を評価し、任意基準と比較することで、血管ジオメトリの任意の1つのフィーチャまたはその組み合わせを用いて幾何学的表現を3Dスカラー場に変換することができ、その後3Dスカラー場をさらに処理して、境界を特定することができることが理解されるべきである。図15は、3Dスカラー場表現の2D断面を示す。図15において、黒色で図示されている領域は、所定の基準を満たしていると評価された血管ジオメトリの対応する1つ以上のフィーチャの領域である。例えば、前記黒色領域は、血管網の幾何学的表現の部分を示し得、この部分において、血管密度が所望の閾値を超えている。しかし、本発明の局面は血管ジオメトリの任意の特定のフィーチャまたはフィーチャの組み合わせとの利用に限定されないため、前記黒色領域は、任意の1つ以上の幾何学的フィーチャが所定の基準を満たしている血管ジオメトリの部分も示し得る。
出願人は、血管ジオメトリの1つ以上のフィーチャの密度が、血管網の境界の特定において有用な尺度となり得ることを理解している。すなわち、関数Fは密度関数ρであり得、これにより、方程式44を以下のように表すことができる。
ここで、ρは、血管網のジオメトリの1つ以上のフィーチャの密度であり、Tは所望の閾値である。いくつかの実施形態によれば、密度は、血管密度、分岐密度/頻度、ビニング血管密度(例えば、所望の範囲の直径を有する血管の血管密度)などであり得る。関数ρ(x、y、z)を、幾何学的表現における各位置(例えば、論理的に幾何学的表現のドメインについて規定された体積)について評価し、閾値Tと比較することができる。閾値Tを超える密度を有する位置にスカラー値0に割り当て、他の全ての位置にはスカラー値1を割り当てることができる。基準を満たす位置または基準を満たさない位置に0または1をそれぞれ割り当てるかは任意であり、これらの値を切り換えてもよいし、あるいは、任意のスカラー値を用いてもよい(例えば、3Dスカラー場表現は2値でなくともよい)ことが理解されるべきである。所与の関数および基準(例えば、ρ(x、y、z)および閾値T)に基づいた3Dスカラー場表現が生成された後、3Dスカラー場表現をさらに処理して、境界を決定することができる。
全ての関数および基準を同一スカラー場表現に変換することが可能であるため、得られたスカラー場表現をほぼ同一の方式で処理することにより、当該スカラー場表現の生成に用いられた関数/基準と無関係に、境界を決定することができることが理解されるべきである。その結果、以下の技術を任意のスカラー場表現に適用して、血管網の幾何学的表現を3Dスカラー場表現に変換する際に用いられた関数/基準の選択から独立して、境界を特定することができる。
3Dスカラー表現から境界を特定するための技術を挙げると、φ(x、y、z)=0によって境界を潜在的表面として表現し、表面の展開様態を示す偏微分方程式(PDE)に従って進展するレベル集合技術を用いる。いくつかの実施形態によれば、PDEは、境界発見のための熱拡散/発散に類似する原理を特徴付け得る。例えば、3Dスカラー場φ(x、y、z)を、0〜1のφ値により温度フィールドとして取り扱うことができる。ドメイン[0、1]は任意のものであり、他の任意のドメインが利用可能であることが理解されるべきである。方程式44に示すように、特定領域においてφ値をゼロと固定し、スカラー場全体の境界を1に固定する。換言すれば、特定された領域はヒートシンクであり、領域全体の境界は熱源である。例えば、φは、方程式44に示すように初期化された温度フィールドであると仮定する。初期化後、偏微分方程式(PDE)に従って、φを伝搬させることができる。そのいくつかの実施形態を以下のように表すことができる。
上記式は、熱流束の発散および熱拡散の合計に起因する温度変化を特徴付け、ここで、速度ベクトルvを以下のように表すことができる。
第1の項は、位置x、y、zにおける状態に変化が無い場合(例えば、境界がゼロとしてラベルされた領域に遭遇していない場合)における境界の挙動を制御する。例えば、第1の項は、φフィールドの法線方向に沿った熱流束の均一速度を示し得る。第2の項は、曲率の領域における境界の挙動を制御する。いくつかの実施形態によれば、境界が温度変化に遭遇しなかった場合に一定速度で進展するように、αが1となるように選択される。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、αには、任意の値(あるいは、ユーザが選択可能な変数)を割り当てることができる。パラメータβに先行する負号は、凸部が移動しかつ凹部が移動しないように、曲率方向を確立する。以下にさらに詳細に説明するように、βは、曲率の存在下における所望の挙動を達成するように、選択され得る。
方程式46中の最終項は、境界の平滑度を制御する。この項は、拡散項として見なすことができる。この拡散項により、熱フィールドの急速変化が回避され、これにより、境界が隙間間において平滑に遷移し、これにより、穴形成を回避する(例えば、最終項は、3Dスカラー場表現中に存在し得る穴を充填するように作動し、これにより、平滑な連続境界を達成することができる)。以下にさらに詳細に説明するように、γパラメータは、境界の「粘度」レベルを制御し、所望の性能を達成するように選択することができる。境界の初期化後、φが安定化しかつ/または所望の繰り返し数が行われるまで、前記境界を方程式46に従って展開させることができる。展開時において、ゼロ値を有する位置は、ゼロのままである。
図15は、模式的血管系ネットワークの一部の2Dスカラー場表現に適用された境界の模式図であり、初期化(1510)における境界および境界安定化後(1510’)の境界を示す。2Dスカラー場を図示しているのは図示の便宜上の理由のためであり、本明細書中に記載の技術は二次元に適用可能であるが、完全三次元血管分析をサポートするためには、三次元の血管分析が好適であることが理解されるべきである。上述したように、図15中の黒色領域(例えば、ゼロスカラー値がラベルされた領域)は、指定基準を満たす血管ジオメトリの特定の関数によって評価された血管網の幾何学的表現の部分を示す。例えば、前記黒色領域は、血管密度(例えば、体積あたりのポーカーチップの数)が指定閾値を超えている幾何学的表現の部分を示し得る。しかし、上述したように、本発明の局面はこの点において限定されないため、前記黒色部分は、任意の関数に従って任意の基準を満たすように評価される幾何学的表現の領域を示し得る(例えば、分岐密度、血管曲率または屈曲度、血管方位、血管長さなど)。
初期境界1510は、境界が初期に対象血管系を完全包含するように、2Dスカラー場表現に適用され得る(例えば、境界は、前記血管網の幾何学的表現全体を包含するように、初期化され得る)。その後、前記境界が最終境界1510’によって模式的に示されるように安定化するまで、前記境界を、矢印(例えば、第1の項およびαによって制御されるようなもの)によって示される方向において展開させることができる。図示のように、前記最終境界は、対象血管系1520(例えば、腫瘍)を相対的に密接して、破断また穴無しに包囲する。3Dにおいて、前記境界は、対象血管系を含む体積を形成し、前記境界内の領域および前記境界外の領域を規定する。好適には、前記3D境界は、対象血管系を封入する、閉鎖されているかまたは実質的に閉鎖された体積である。
上述したように、第1の項に起因して、前記境界は、前記矢印の方向に展開する。第2の項は、前記境界が高曲率を不利にする様態を示す。例えば、第2の項に起因して、前記境界は高凸曲率領域において低速化することで、前記境界がこのような領域を超えて展開しないようにし、これにより、相対的に高曲率の領域(例えば、領域1540)を第2の項の動作に起因して境界によって封入する。第3の項により、前記境界上における平滑度制約が得られる。例えば、第3の項により、前記平滑度制約を満たすことを要求することにより、前記境界が領域1540内に入ることが回避される。以下にさらに詳細に説明するように、γは、所望の平滑度の達成および/または特定サイズの穴/隙間の確実な充填が得られるように、選択可能である(かまたはユーザが選択可能な変数として提示することができる)ことが理解されるべきである。
パラメータα、βおよびγは、境界展開のための所望の挙動を達成するように選択することができる(かまたは、ユーザが前記パラメータ(単数または複数)の値を選択することができるように、提示することができる)。いくつかの実施形態によれば、αは1に固定され、βおよびγは、満足の行く境界挙動を達成するように、選択される。例えば、βおよびγの選択は、血管系の凹凸によって形成される開口部および/または腫瘍の壊死領域が充填されかつ/またはそうでない場合は境界が(対象血管系の範囲を高精度に反映する所望の平滑度に従って)対象血管系を包囲するように、行われ得る。図16A〜図16Cは、合成データを用いた、選択されたパラメータβおよびγを示す。図16Aは、中央に穴があいた円板を示す(トーラスまたは他の形状を用いて、同様のシミュレーションを行うことも可能である)。この円板は、厚さdと、半径Rと、半径rの穴とを有する。
図16A中に示す構造は、血管網の幾何学的表現から変換された3Dスカラー場上において展開する境界が遭遇し得る構造と幾何学的にかつ/または形態学的に類似し得る。図16Bは、βおよびγの複数の異なる組み合わせについての、前記円板の回転対称の軸上の最終展開φフィールドのプロフィール(すなわち、境界のφ値対グリッド位置)を示す。図16Cは、円板に対してどちらも値5に設定されたパラメータβおよびγによって境界展開を行った結果を示す。このように設定された値により、中央部の穴が閉口され、前記境界は前記穴を正確に被覆することが理解されるべきである。これらの値5に設定されたパラメータβおよびγにより、厚さdの2倍以下の半径rの任意の穴が充填されることが分かる。しかし、境界付けられているかまたはラップされている血管系の種類に応じて境界を適切に発見できるように、パラメータβおよびγは任意の値を選択してよい。パラメータβおよびγは、おおむね望ましい境界挙動が得られる任意の値に固定してよく、前記パラメータをユーザが選択した値とすることで、多様な広範囲の血管構造におけるロバストな境界特定を可能とすることも可能であることが理解されるべきである。
上述したように、上述した境界発見のための技術は、境界を潜在的表面φ(x、y、x)=0として規定するステップと、レベルセット原理を用いて前記境界を展開させるステップとに少なくとも部分的に基づく。しかし、3Dスカラー場の別個の性質に起因して、境界を正確に突きとめる(例えば、潜在的表面φ(x、y、x)=0を正確に突きとめる)ためには、さらなる処理が必要となり得る。これは、φのゼロ交差のサーチおよび補間により、達成され得る。いくつかの技術によれば、マーチングキューブアルゴリズムを行って、境界を正確に突きとめかつ/または境界の位置を規定する3Dメッシュ(例えば、φ(x、y、x)=0である位置を記述するメッシュ)を規定することができる。
マーチングキューブは、表面を規定する3Dメッシュを構築するための周知のアルゴリズムであり、以下に記載されている(WilliamE.Lorensen、Harvey E.Cline:Marching Cubes:A high resolution 3D surface construction algorithm、Comuter Graphics、Vol.21、Nr.4、1987年7月)。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。いくつかの実施形態によれば、安定化後の3Dスカラー場に対してマーチングキューブアルゴリズムを行って、対象血管系の境界を規定するメッシュ(例えば、三角表面)を構築する。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、任意の方法を用いて境界を突きとめかつ/または境界の幾何学的表現(例えば、メッシュ)を生成することが可能であることが理解されるべきである。
図17は、上記に基づいてかついくつかの実施形態により、血管網の幾何学的表現から対象血管系の境界を規定する方法を示す。第1に、血管網の幾何学的表現(例えば、本明細書中に記載の抽出技術のうち任意の技術を用いて得られたものまたは他の方法によって取得されたもの)を複数の領域に論理的に分割する(1710)。例えば、前記幾何学的表現を、所望のサイズ(これは、変数であり得る)の複数の体積に論理的に分割することができる。
前記複数の領域それぞれを、前記幾何学的表現のフィーチャ、性質、パラメータおよび/または属性のうち少なくとも1つの関数に従って評価することができる(1720)。例えば、前記血管密度(例えば、領域あたりのポーカーチップ数)を各領域について計算し、特定の血管直径の血管密度(ビニング血管密度)を各領域について計算し、分岐点数を各領域について計算し、曲率、屈曲度、血管方位、血管長さなどの一定の尺度を各領域について計算することができる。本発明の局面はこの点において限定されないため、前記関数は、単数または複数の評価対象フィーチャを含み得ることが理解されるべきである。
その後、評価された領域を所望の基準と比較して、基準を満たす領域を特定することができる(1730)。基準は、複数の領域の識別を促進する任意の適切な基準であり得る。基準は、単一の値(例えば、閾値)であってもよいし、あるいは、より複雑な基準であってもよい。例えば、複数のフィーチャを評価する場合、基準は、各基準の閾値を含み得る。基準は、一定範囲の値または一定範囲の値の組み合わせを含み得る。本発明の局面はこの点において限定されないため、任意の適切な基準が利用可能である。
基準を満たす特定された領域に基づいて、対象血管系の一部の境を界を突きとめることができる(1740).いくつかの実施形態によれば、前記境界を突きとめるには、先ず当該領域が基準を満たすかに基づいて各領域をラベル付けして、当該血管網の幾何学的表現の3Dスカラー場表現を生成する。境界を突きとめるには、PDEによって通知された境界を展開させ、この展開する境界が安定化することで対象血管の境界を適切に記述することにより、突きとめることができる。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、境界は他の方法によっても突きとめることができる。
いくつかの場合において、評価技術および基準技術により、対象血管系の一部ではない1つ以上のノイズ領域が特定される場合がある。例えば、図18は、輪郭1850によって示される血管を有する血管網の幾何学的表現を示す。輪郭1850は、指定基準を満たし得るが、前記対象血管系の一部ではない。例えば、輪郭内の血管は、指定された基準を満たし得るが、前記境界が特定するべき腫瘍の一部ではない。出願人は、このような領域は典型的には、主要な(意図された)領域よりもより小さくかつ/または主要な(意図された)領域から隔離されていることを理解している。従って、本明細書中に記載の技術を適用してこれらの領域全てをラベル付けし、各領域の体積を計算し、対象血管系について予測される領域数に等しい最大領域の数のみを保持することにより、これらの領域を除去することができる。図19は、ノイズ血管と境界付けられた血管系が境界から正確に排除されている様子を示す。
図20〜図22は、本明細書中に記載の境界探知器技術を例示的な種類の血管網に適用した複数の異なる結果を示す。図20は、境界付けられた(ラップされた)腫瘍を示す。図21Aは、腎臓の血管系の抽出された幾何学的表現(例えば、本明細書中に記載の任意の技術を用いて腎臓の1つ以上の画像から抽出されたもの)を示す。図21Bは、本明細書中に記載の境界探知器技術を用いて境界付けられたまたはラップされた腎臓血管系を示す。図22Aは、大腿部筋肉の一部の血管系を示す。この部分は、右上部分において、対象リンパ節を含む。図22Bは、ラップされたリンパ節を示し、このリンパ節において、血管系に適用された自動化技術により前記リンパ節の一部ではない大腿部血管が境界から排除されている。その実施形態については、上記において記載している。図22Cは、境界付けられたリンパ節の拡大図である。以下にさらに詳細に説明するように、上記境界付けられた血管系は、境界付けによってさらなる分析を促進することが可能な多数の血管系および血管系構造のうちの数例に過ぎないことが理解されるべきである。
III.境界付けられた血管系の分析
上述したように、境界付けられた血管系により、診断目的、予後目的他の医療目的または環境目的のために血管分析を行うための貴重なツールを得ることが可能となる。例えば、境界発見技術によって可能となる分析により、薬剤有効性評価、病変組織検出、疾患診断、疾患/健常組織の比較、疾患挙動の定量化などを促進することができる。一般的に、領域境界を決定することにより対象領域(例えば、対象血管系の体積)を特定した後、前記境界付けられた領域に対して多数の分析を行うことができる。その例示的な分析について、以下にさらに詳細に説明する。
図23は、いくつかの実施形態による、血管分析を行う方法を示す。行為2310において、血管系の幾何学的表現を入手する。上述したように、血管系の幾何学的表現は、既存の幾何学的表現の受信または前記血管系の幾何学的表現の計算(例えば、本明細書中に記載の幾何学的抽出技術を用いたもの)により、得ることができる。行為2320において、前記幾何学的表現の1つ以上のフィーチャに基づいて、血管系の1つ以上の対象領域を境界付けるかまたはラップすることができる。行為2330において、前記血管系の1つ以上の境界付けられた領域に対しさらなる処理を行って、前記血管系の境界付けられた領域(単数または複数)の任意の所望のフィーチャ、特性、属性または形態を分析することができる。以下、境界付けられた血管系に対して実施可能な分析の非限定的例について説明する。
出願人は、境界付けられた血管系に対して形態学的分析を行うためのいくつかの技術は、1つ以上の対象領域を特定するステップと、所望の特性または1つ以上の形態学的フィーチャに従って、前記1つ以上の領域を評価するステップとを含み得ることを理解している。任意の数の診断目的、予後目的または医療目的の対象となり得る複数の例示的な形態学的フィーチャを以下の表1中に羅列する。そのうちいくつかについて、以下においてさらに詳細に説明する。
「ビニング」という用語は、複数のビンとして分類された血管集合に行われる分析を指し、ここで、各ビン中の血管は、対応するビンによって規定された性質値を共有する。例えば、ビンによって一定範囲の血管直径を規定することができ、これにより、前記ビンに属している血管は、血管直径を規定する。その後、各ビン中の血管を別個に評価することで、各ビン中の血管の特性についての情報を得ることができる(例えば、1つのビンに割り当てられた複数の位置を、その他のビンから独立した様態で評価することで、各ビンについて1つ以上の形態学的フィーチャを決定することができる)。
血管直径ビニングの場合、ビニング血管密度を以下のように数学的に表すことができる。
ここで、
および
は、それぞれ直径φの血管体積および腫瘍体積である。例示的な境界付けられた血管系として腫瘍が用いられているが、領域は、境界付けられた器官または他の対象血管系であってもよいことが理解されるべきである。この定義によれば、血管密度は以下のように表すことができる。
すなわち、境界付けられた血管系(または対象領域)の内部において計算された血管密度を全ビンについて(例えば、全血管直径について)加算する。別の形態学的尺度を上げると、ビニング血管集合がある。ビニング血管集合は、各直径範囲の血管数であり、以下のように数学的に表すことができる。
ここで、
は、ポーカーチップ表現を用いて計算可能な、直径φの血管の集合である。例えば、前記ビニング血管集合をn(φ)lによって計算することができる。n(φ)lは、領域内のポーカーチップ数を前記ポーカーチップの単位厚さで乗算した値である(この単位厚さは、血管網の幾何学的表現の離散化レベルに関連するかまたは他の方法によって選択され得る)。ビニング血管密度の場合と同様に、前記血管集合も、対象領域内の全直径の血管について加算することにより、計算することができる。所与の対象領域における特定の直径の血管の体積を計算する、ビニング血管体積に関連して有用となり得る別の尺度が、以下のように数学的に表すことができる。
ここで、
は、直径φの記血管体積である。ポーカーチップ表現を用いて、例えば最終式(ここで、n(φ)は、所望の領域内の直径φのポーカーチップ数であり、lは、ポーカーチップの単位厚さである)を用いて、ビニング血管体積を計算することができる。全直径の血管体積について加算することにより、血管全体のカウンターパートも計算することができる。境界付けられた血管系の分析において利用可能な別の尺度を挙げると、ビニング血管集合密度があり、以下のように数学的に表すことができる。
ここで、
は、直径φの血管の集合であり、
は、所望の領域の体積である。ビニング血管集合密度は、前記ポーカーチップ表現を用いて(例えば、最終式(ここで、n(φ)は、所望の領域における直径φのポーカーチップ数であり、lは、ポーカーチップの単位厚さである)を用いて)計算することも可能である。血管全体のカウンターパートは、全直径の血管集合密度について加算することによっても計算可能である。境界付けられた血管系の分析において利用可能な別の尺度を挙げると、ビニング血管表面密度があり、以下のように数学的に表すことができる。
ここで、
および
は、それぞれ直径φの血管表面および腫瘍体積である。前記境界付けられた血管系は腫瘍である必要はなく、境界が計算されている、任意の対象血管系ネットワークであり得ることが理解されるべきである。ビニング血管表面密度は、ポーカーチップ表現を用いて(例えば、最終式(ここで、n(φ)は、直径φのポーカーチップ数であり、lは、ポーカーチップの単位厚さである)を用いて)計算することも可能である。血管全体のカウンターパートは、全直径の血管集合密度について加算することによっても計算可能である。
体積領域(アイスキューブとも呼ぶ)における形態学的特性の分析に基づいて、他の尺度を計算することができる。このような分析を行うことで、任意の数の形態学的フィーチャ(例を非限定的に挙げると、血管集合密度、血管体積密度、血管表面密度などがある)を計算することができる。形態学的性質が血管集合密度である場合、アイスキューブ分析を以下のように表すことができる。
ここで、
は、境界付けられた幾何学的表現において点(x、y、z)に中央を有する位置の選択された近隣であり、lは、例えばポーカーチップの単位厚さであり、Lは、アイスキューブの次元(例えば、選択された近隣のサイズ)である。任意のサイズforLmaybe選択された.例えば、腫瘍学目的のために、腫瘍血管からの細胞に供給される酸素は典型的にはおよそ200μmまでであるという生物学的知見に従って、Lをおよそ420μmに設定することができることが理解されるべきである。しかし、例えば特定の種類の分析および/または用途に適合するように、任意のサイズ近隣を選択することができる。アイスキューブ密度尺度により、境界付けられた血管系のさらなる形態学的属性の計算を促進することができる。そのうちいくつかを以下の表2中に示す。
上記形態学的特性の任意の1つまたはその組み合わせを用いて、境界付けられた血管系を分析することができる。いくつかの実施形態を挙げると、本明細書中に記載の形態学的特性のうち1つ以上を用いて、境界付けられた血管系内の対象領域を特定するステップがある。例えば、前記境界付けられた血管系について、1つ以上の形態学的特性を評価し、特定の基準を満たす領域を特定することができる。例えば、前記境界付けられた血管系について、形態学的特性の任意の1つまたはその組み合わせを評価し、所望の閾値を超える値について評価される領域を特定することができる。
このような特定された対象領域を閾値を閾値に対して評価する場合、このような領域をホットスポットまたはホット領域と呼ぶ場合があり、この呼称は、特定された領域の形態学的特性について、境界付けられた血管系内の他の領域と比較して、評価された形態学的特性が相対的に高い値を有している点において注目されるということを示している。評価関数が血管密度であり、基準が閾値である場合、ホットスポット領域を以下のようにして計算することができる。、
ρ(x、y、z)を
と置換することにより、方程式55を一般化することができる。ここで、Fは、血管系の境界付けられた幾何学的表現(Gbounded)に対する任意の機能演算であり、閾値Tは、任意の基準Cとして一般化されることが理解されるべきである。例えば、Fは、境界付けられた幾何学的表現(本明細書中に記載の形態学的特性または他の特性)の1つ以上の形態学的特性を評価する任意の関数であり得、Cは、任意の指定された基準であり得る。このように、以下にさらに詳細に説明するように、ホット領域は、特定の診断または予後対象であってもよいし、あるいは、治療の有効性の評価に適したものでありかつ/または特に注目すべき治療標的(例えば、放射線治療)であってもよい。本発明の局面はこの点において限定されないため、このような対象領域は、任意の評価関数および任意の基準を用いて特定可能である、ことが理解されるべきである。
別の形態学的尺度として、ホット領域比がある。ホット領域比は、ホット領域体積と、境界付けられた血管(例えば、腫瘍体積、器官体積など)の体積との間の比率として定義される。ホット領域比から、任意の数の診断評価または予後評価、治療有効性評価または任意の他の種類の評価を支援するための、前記境界付けられた血管系のさらなる有用な形態学的情報を得ることができる。
形態学的内容物(例えば、境界付けられた血管系内における領域の位置に基づいて特定されたもの)から独立して、境界付けられた血管系内の他の領域を特定することができる。本明細書中、1つの種類のこのような領域を「アイソシェル」と呼ぶ。アイソシェルは、境界付けられた血管系内の領域であり、各アイソシェル内の位置(例えば、境界付けられた血管系内の別個の体積)の前記境界からの距離は、各アイソシェルによって規定された同一範囲の値内にある。アイソシェルの数学的記述は、以下のように表すことができる。
ここで、
すなわち、前記境界付けられた血管系を、複数のシェルに論理的に分割する。これらのシェルはそれぞれ、厚さδを有する。前記境界内の幾何学的表現の各位置(例えば、各体積)を、前記シェルのうちの1つに属しているものとしてラベル付けする。このラベル付けは、前記境界からの前記位置の距離に基づく(すなわち、各アイソシェルは、各アイソシェルによって規定された範囲内の境界からの距離を有する前記境界付けられた幾何学的表現の位置を含む)。その後、各アイソシェルに対して分析を行って、前記境界からの多様な距離における前記血管系の領域の多様な特性を評価することができる。前記アイソシェルについて、任意のフィーチャ、特性、性質または形態学的属性(例えば、本明細書中に記載の形態学的属性のうち任意のもの)が計算可能であることが理解されるべきである。例えば、血管密度、ビニング血管密度、分岐密度、血管方位または長さの尺度の任意の1つまたはその組み合わせ、または曲率または屈曲度などと関連する計量、あるいは表1中の尺度のうち任意のもの、あるいは以下に記載するもの。
図24は、境界付けられた領域を複数のアイソシェルに分割した様子の模式図である。例えば、境界付けられた血管系2410を複数のアイソシェルによって模式的に示しており、各アイソシェルの前記境界からの距離は、前記境界から離れるほど徐々に長くなっている。各シェル2420は、関連付けられたアイソシェルの厚さによって規定された範囲内の境界からの距離を有する位置を含む。図24においてこれらのシェルを2Dとして図示しているが、計算は2Dに限定されず、好適には3Dにおいて行われる。その後、各シェルを処理して、前記シェルの1つ以上の形態学的フィーチャを決定することができる。前記シェルは、変数と同じ厚さまたは厚さを有するように選択することができることが理解されるべきである。例えば、各シェルの境界からの距離が増加するほど、前記シェルの厚さを低減するようにしてもよいし、あるいはこの逆であってもよい。本発明の局面はこの点において限定されないため、血管内の位置(例えば、境界に対する相対位置)に基づいて規定された他の領域を計算し、分析のために利用することも可能である。
図25〜図28は、複数の計算されたアイソシェルについて計算された例示的な形態学的フィーチャを示す。図25は、複数の異なるアイソシェル内の平均血管密度のプロットを示す。このような尺度を用いて、腫瘍または器官内において特定の薬剤の標的とすべき箇所およびその効果が最も高くなる箇所を例えば決定することができる。例えば、境界付けられた血管系に対して、治療時における異なる時点においてアイソシェル分析を行った場合、血管密度の観点から最も変化量が高いアイソシェルを知ることができる。この情報から、治療有効性について知ることができるだけでなく、特定の治療の作用様態および/または血管系に対する影響様態も知ることが可能となり、その結果、治療を向上させることが可能となる。
図26は、複数の異なるアイソシェルにおける血管密度の標準偏差のプロットを示す。図27は、複数の異なるアイソシェルにおけるホットスポット比のプロットを示す。例えば、ホットスポットは、血管密度が指定閾値を超える領域であってもよいし、あるいは、指定基準を満たす他の何らかの評価を示すものであってもよい。図28は、複数の異なるアイソシェルにおける密度分布のプロットを示す。アイソシェル内において計算された形態学的尺度は、アイスキューブコンセプトを用いて計算可能であることが理解されるべきである。例えば、前記アイソシェル内の各規定された体積領域について、1つ以上の形態学的尺度を計算することができる。前記アイソシェル内の1つ以上の形態学的フィーチャを経時的に追跡して、治療有効性の評価または治療の作用についての知見入手(例えば、1つ以上の形態学的特性による治療への影響)を支援することができることが理解されるべきである。
境界付けられた血管系内の幾何学的表現の2Dスライスから、診断情報、予後情報または他の医療情報の提供において有用な別の領域ベースの分析ツールを得ることができる。図29は、血管系(例えば、心臓)の境界付けられた部分の幾何学的表現の2D断面を示す。前記2D断面内において、上記分析のうち任意のもの(例を非限定的に挙げると、ホットスポット分析、1つ以上の形態学的特性の評価、アイソシェル分析など)が行われ得る。図29において、評価および表示されている形態学的属性は、血管密度である。しかし、本発明の局面はこの点において限定されないため、前記境界付けられた血管系の幾何学的表現の1つ以上の2Dスライス内において、他の任意の分析が行われ得る。
器官の境界付けられた血管系を、健常組織の境界付けられた血管系の例と比較して、疾患の評価または任意の他の診断目的、予後目的または分析目的のために行うことができる。境界付けられた腫瘍を健常組織と比較して、重症度を定量かするかまたは他の方法によって腫瘍特性を評価することができる。さらに、異なる時点において得られた、境界付けられた腫瘍を比較して、治療有効性、腫瘍展開などを評価することができる。境界付けられた血管系を他の異なる点について分析することも可能である。本発明の局面はこの点において限定されないため、そのうちのいくつかについて、以下においてさらに詳細に説明する。
上述したように、計算された形態学的フィーチャを用いて、健常組織から得られた同一フィーチャの比較または境界付けられた血管系から異なる時点において抽出された同一フィーチャの比較を行って、例えば治療有効性を評価することができる。図30〜図33は、本明細書中に記載の多様な形態学的特性を用いて、例えば疾患血管系の定量化および/または特定の治療の有効性の評価を行う例を示す。図30〜図32は、比較参照用の血管系と、Avastinによる治療を受けた血管系とについて、各形態学的フィーチャを血管直径の関数としてプロットしたものを示す。明確に図示されるように、比較参照用の血管系と、治療後の血管系との間において、対応する形態学的フィーチャの差があり、これは、当該血管系が当該治療による影響を受けていることを示す。さらに、この影響は、血管サイズによって異なり得る。すなわち、比較参照プロットと治療後プロットとの間の差は、血管直径に応じて大きくもなるし、あるいは小さくもなり得る。出願人は、この差を定量化することにより、標的化されている血管直径がどれであるかおよび当該血管が当該治療による影響を受けているかの決定を支援できるほどのはっきりとした差が得られる範囲を決定することを理解している。
いくつかの実施形態によれば、治療(例えば、薬剤治療、放射線治療など)によって影響を受ける直径範囲が決定される。前記直径範囲は、細胞株型、組織型(例えば、特定の器官、腫瘍など)および治療種類によって異なり得る。細胞株型、腫瘍型および薬剤の相対的に大量の組み合わせの中から手作業で治療有効範囲を発見することは、相対的に退屈かつ時間のかかるプロセスである場合がある。さらに、手作業によるプロセスは、エラーが発生しやすい。出願人は、統計的に有意な変化を決定する尺度を用いて治療有効範囲を決定する、コンピュータによって実行される方法を開発した。
いくつかの実施形態によれば、ウェルチの検定を用いて、比較参照用集合および治療後集合を分析することができる。ウェルチの検定は統計的仮説検定であり、異なる分散を有する2つのデータ群について、2つの平均が等しいか否かという質問に答えることが可能である。ウェルチの検定は、統計値tを定義する。
ここで、Xi、
、およびNiはそれぞれ、i番目の標本平均、分散およびサイズである。自由度vは、以下のように近似することができる。
tおよびvを計算した後、これらの統計値をt分布と共に用いて、2つの集合平均が所与の信頼区間下において等しいか否かについて試験することができる。前記t分布試験の結果から、統計的に有意な変化を示す範囲を知ることができる。本発明の局面はこの点において限定されないため、統計的に有意な変化を特定するための他のアプローチも利用可能である。図34は、比較参照と、Avastinによる2週間にわたる治療後の腫瘍との間の統計的に有意な差の決定の一例を示す。
上述したように、血管密度は、境界付けられた血管系の評価において、重要な形態学的指標(例えば、バイオマーカー)であり得る。いくつかの実施形態によれば、位置(x、y、z)における小体積V中の血管密度は、以下のように表すことができる。
ここで、rは血管半径であり、rminおよびrmaxは、行われている分析に応じて選択することができる(例えば、10μmおよび50μm、はそれぞれ、体積V=0.022mm3となるように選択される)。これは、境界付けられた血管系内の密度フィールドを定義する。血管密度は、広範囲の組織型についての貴重な予後指標となり得る。そのため、密度および直径の接合分布は、多様な治療プロセス(例えば、抗血管新生薬剤のメカニズム)を理解する上で有用であり得る。いくつかの実施形態によれば、位置(x、y、z)における半径rの各ポーカーチップは、点(x、y、z)における血管直径および血管密度ρの情報を持っているため、このポーカーチップ表現を用いることができる。そのため、(密度、直径)ー共同ヒストグラムh(r、ρ)を構築することができる。
境界付けられた血管系について計算可能な形態学的フィーチャの多数の例について、本明細書中に説明する。これらの形態学的フィーチャを単独でまたは任意の組み合わせで用いて、血管分析を支援することが可能であることが理解されるべきである。多様な形態学的属性を、任意の数の異なる方式(例えば、本明細書中に記載の技術および公開出願番号第WO2006/069379、WO2008/016652、WO2008/002648、WO2009/088963中に記載の技術)において用いることが可能である。本明細書中、同文献の開示内容全体を参考のため援用する。以下、境界付けられた血管系の1つ以上の形態学的属性を用いて行うことが可能な技術の複数の例を示す。
本発明の実施形態のうちいくつかまたは本発明の実施形態の全ては、本明細書中に記載のように自動化が可能であることが理解されるべきである。
また、本明細書中に記載の任意の1つ以上の構造的パラメータを比較参照パラメータと比較によって評価することが可能であることも理解されるべきである。いくつかの実施形態において、比較参照パラメータは、正常または健常である対象中の当該パラメータの量またはスコアであり得る。他の実施形態において、比較参照は、疾患状態を表し得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載のような、疾患または状態と相関付けられているかまたは関連付けられている任意の構造的パラメータの変化または量は、疾患対象または試験対象中のパラメータを比較参照対象と比べたおきの統計的に有意な変化または差であり得る。いくつかの実施形態において、構造的パラメータの差または変化は、特定のパラメータ(またはパラメータの組み合わせ)の増加または低下であり得る。パラメータの増加は、試験対象内のパラメータを比較参照対象と比較したときの、前記パラメータの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上の増加であり得る。同様に、前記パラメータの低下は、試験対象内のパラメータを比較参照対象と比較したときの、前記パラメータの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上の低下であり得る。パラメータの変化または差の量を疾患または状態と相関付けるかまたは関連付けた後、本発明に従って、前記レベルを後続方法において用いることができる。従って、いくつかの実施形態において、任意の所与の構造的パラメータ(例えば、屈曲度、密度、体積、または任意の他の個々の構造的フィーチャまたは構造の分布または本明細書中に記載のような構造的フィーチャ)を基準値と比較したときの当該パラメータの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の差を、本発明の方法のための閾値として用いることができる。上記よりもより高い値またはより低い値あるいは中間値も利用可能であることが理解されるべきである。また、パラメータが異なれば、閾値または基準レベルも異なり得ることが理解されるべきである。また、異なるパラメータ(および/または各パラメータの異なるレベル)を異なる状態または疾患と関連付けることもできる。従って、異なるパラメータまたはその組み合わせについて、特定の疾患または状態値または閾値を特定することができる。これらの閾は、疾患検出、診断、監視、あるいは本明細書中に記載の他の任意の治療、臨床用途または環境用途において(例えば本明細書中に記載の自動化方法において)利用可能である。
本発明の上記および他の局面について、以下の非限定的例によって例示する。
例
例1:血管系の疾患、組織、および領域分析
いくつかの実施形態において、本発明の局面を用いて、血管構造の変化と関連付けられた任意の疾患または状態を評価、検出および/または監視することができる。血管構造の変化と関連付けられた疾患(例えば、所与の時期における異常血管パターンの存在によって検出可能なものまたは時間の関数として観察される異常な構造的変化)を非限定的に挙げると、癌、心臓疾患および関連循環障害、眼疾患、皮膚疾患および手術状態がある。例えば、血管構造変化と関連付けられた疾患および状態を非限定的に挙げると、腫瘍血管新生、再発癌および進行癌、冠動脈疾患、心筋症、心筋虚血、動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化プラーク新血管形成、動脈閉塞性疾患、虚血、虚血または心筋梗塞後血行再建、末梢血管疾患(例えば、糖尿病性網膜症)、血栓塞栓症(例えば、脳卒中、肺塞栓症、脳動脈瘤、および深部静脈血栓症)、跛行、リウマチ疾患(例えば、関節炎)、免疫異常(例えば、関節リウマチ、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、および全身性エリテマトーデス(SLE))、肺疾患(例えば、肺気腫、COPD、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症、および他の呼吸器疾患)、骨髄腫、増殖性血管疾患、消化器疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、および炎症性腸疾患(IBD))、婦人科疾患(子宮内膜ポリープ、膣出血、子宮内膜症、機能不全性子宮出血、卵巣過剰刺激症候群、子癇前症、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)、子宮頸癌、および子宮頸部形成異常)、皮膚疾患(幼児性血管腫、尋常性疣贅、乾癬、神経線維腫症、表皮水疱症、スティーブンスージョンソン症候群、および中毒性表皮剥離症(TEN))、眼疾患(黄斑変性症、黄斑症、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症(後水晶体線維形成))創傷治癒、免疫反応と関連付けられた炎症、虚血(例えば、肢虚血および心虚血)、アルツハイマー病および他の疾患(例えば、創傷離開、バージャー病(閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症(ASO)、虚血性潰瘍)、多発性硬化症、特発性肺線維症、HIV感染、足底筋膜炎、足底筋膜炎、フォンヒッペルリンドウ病、CNS血管芽細胞腫、網膜血管芽腫、甲状腺炎、前立腺肥大症、糸球体腎炎、異所性骨形成およびケロイドがある。.
これらの異なる疾患は、血管系構造の異なる変化により、特徴付けられる。従って、本発明の一局面において、パラメータおよびスコア付け方法を用いて、当該疾患を示す血管系構造の特定の特性に基づいて、検出、診断および監視特定の疾患およびその関連治療をする。各疾患カテゴリ内においても、異なる疾患を血管系構造の異なる変化によって特徴付けることができる。従って、構造検索およびスコア付けを微調整することで、カテゴリ内の特定の種類の疾患に対する感度を増加させることができる(例えば、肺癌スコア、乳癌スコアなどを発展させることができる)。患者体内の特定の疾患または病気の進行に追随するように、患者特有のスコア付けパラメータを発展させることもできる。
構造的血管系変化を挙げると、血管および/またはリンパ管に影響を与える血管構造および血管形態の変化がある。構造的変化に起因して、新血管形成(例えば、大きな血管の成長(例えば、動脈形成)および微小血管の成長(血管新生))、大血管拡張、および血管壊死がある。血管新生に起因して、既存の血管から新規血管が発生および形成される。血管新生は、脈管形成とは異なる。脈管形成は、血管のデノボ形成であり、発達時に最初に発生する。脈管形成が疾患または病気と関連することは稀である。しかし、本発明の局面を用いて、脈管形成の自然プロセスを調査することで、デノボ血管形成における血管の特定および理解を支援することができる。
血管新生は、腫瘍成長およびと関連付けられることが多く、癌のバイオマーカーとして有用である。血管新生はまた、(血栓症、塞栓症、アテローム性動脈硬化症、または他の慢性閉塞または血管系の狭窄に起因するものに関わらず)酸素供給または血流の低下に応答して新血管成長が発生した状態とも関連付けることができる。特定の呼吸器疾患、心臓血管疾患および炎症性疾患も、血管新生と関連付けられる。
血管新生血管は、既存の結果と構造的特性が異なる。例えば、血管新生血管の分岐パターンおよび屈曲度は、正常な血管のものと大きく異なる。これらの構造的フィーチャおよび他の構造的フィーチャは、微小血管に主にみられ、血管系構造画像の検索およびスコア付けに利用することができる。しかし、より大きな血管(例えば、動脈および静脈)の変化も、特定の病期または障害段階(例えば、大腫瘍または後期腫瘍の成長および発展)と関連付けることができる。
腫瘍を支持する血管系は典型的には、(実質中の)悪性細胞を支持する腫瘍(ストローマ)の結合組織と関連付けられることが多い。上述したように、腫瘍血管間は不規則に間隔が空けられ、腫瘍血管は、異種構造的パターンまたはフィーチャによって特徴付けられる。しかし、腫瘍血管の形成および他の形態の血管新生には、一連の特性段階が含まれ得る(例えば、Dvorak、2003、American Journal of pathology、Vol.162:6、pp.1747〜1757を参照、本明細書中、同文献全体を参考のため援用する)。早期段階の血管新生は、血管過透過性、線維素沈着およびゲル形成および浮腫により、特徴付けることができる。その結果、微小血管(例えば、小静脈)が膨張し得る。膨張した微小血管の断面積は、正常な微小血管の断面積の約4倍になり得る。膨張した微小血管の周辺は、正常な微小血管の周辺の約2倍になり得る。膨張した微小血管は、血管新生のな領域において、正常な微小血管の約4〜7倍の体積を占有市得る。膨張した微小血管の外観は、「母」血管の外観にたとえることができる。「母」血管は、膨張し、肉薄であり、蛇行状でありかつ過透過性である。母血管はブリッジングプロセスを経験する場合があり、その結果、経管的ブリッジが形成されて、その結果、当該血管中の血流がより小さな経路に分割される。発展中の母血管は1つ以上の糸球体も含み得、これらの糸球体が膨張して、母血管の内腔がいくつかのより小さな経路に分割される。これらの経路は典型的には、蛇行状である。母血管中におけるブリッジングおよび糸球体形成の結果、小毛細血管の外観に繋がり得る。しかし、特定の母血管は、異常膨張した肉薄血管として残る。これらの血管形成は、非対称な筋層および血管周囲線維症の存在により、特徴付けられることが多い。小動脈および細動脈も、病変組織のサイズ増加の原因となり得る。本発明の局面は、本明細書中に記載の血管構造変化のうち任意の1つ以上を検出および/または監視するステップを含む。一実施形態において、新血管形成の1つ以上のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)特性の存在を用いて、疾患を検出または監視することができる。別の実施形態において、1つ以上の特定のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)の存在を用いて、身体領域内の血管新生段階(例えば、早期段階、中期段階、後期段階など)を決定することができる。
従って、血管サイズ(直径および/または長さ)の異常変化は、疾患(例えば、癌または血液供給増加と関連付けられた他の疾患)の初期兆候となり得る。血管サイズの変化が発生した後、血管新生発生の任意の構造的兆候が現れ得る。一実施形態において、本発明の局面は、正常なものよりも膨張かつ/または長くなっている血管(例えば、毛細血管)の検出において、有用である。例えば、本発明の局面は、異常に長い上皮乳頭内ループ状毛細血管(例えば、食道粘膜内の癌の早期段階と関連付けられたもの)のin situ検出において有用である。
いくつかの実施形態において、腫瘍組織の壊死を示す血管変化は、腫瘍組織の攻撃性および/または転移可能性および/または治療に対する反応性および/または治療(例えば、候補薬剤)の有効性および/または治療選択および/または修正(例えば、個々の患者への薬剤または投与量の変更)を示し得る。従って、壊死を示すin situパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)は、患者予後の有用なバイオマーカーであり得る。特定の実施形態において、腫瘍の一領域内の壊死は、当該領域内の以下のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)のうちの1つ以上により、示すことができる。すなわち、血管構造の崩壊、血管新生の低下(例えば、腫瘍の他の領域または腫瘍の周辺に相対して低い血管密度)、血管サイズまたは形状の経時変化、血管閾数値を下回る数値、腫瘍の体積内の血管(例えば、微小血管または毛細血管内のもの)のうち、閾距離よりも長い距離だけ離隔しているもの(例えば、100ミクロンよりも長い距離、150ミクロンよりも長い距離、または200ミクロンよりも長い距離)、血管新生中を示す微小血管直径および/または密度など、あるいはその任意の組み合わせ。いくつかの実施形態において、血管新生または血管新生中の体積を評価または定量化し、壊死の指標として用いることができる。他の壊死指標を単独でまたは血管フィーチャと組み合わせて利用可能であることが理解されるべきである。他の指標を挙げると、(例えば、CTなどを用いて)視覚化が可能な組織崩壊または空洞化の指標および/または代謝活動の1つ以上のマーカー(例えば、PETスキャンを用いて分析可能なものなど)を用いた組織実行可能性の指標がある。
本発明の局面は、対象(例えば、対象内の腫瘍内のもの)内の壊死領域の検出(例えば、自動検出)に用いることができる。壊死領域は、病変組織境界内の血管領域である。本発明の方法を用いて、血管新生化病変組織と、壊死領域境界を規定する血管領域との間の遷移を(例えば自動的に)検出することができる。
本発明の局面を用いて、治療に対する反応を(例えば自動的に)検出または評価することもできる。例えば、治療に対する反応(例えば、特定の薬剤および/または特定の薬剤投与量および/または薬剤の組み合わせおよびこれらの薬剤の特定の投与量などに対する反応)を検出し、以下のように評価することができる。病変組織の境界および壊死領域の境界によって規定された体積内において、血管パターンの変化(例えば、血管正常化/直線化、より小さな直径血管の消失に起因する微小血管密度の低下および血管直径分布のより大きな血管への偏り)を検出および/または評価することができる。当該疾患(例えば、腫瘍)体積の体積合計が一定である状態において、壊死領域の絶対体積サイズおよび/またはこのような変化の速度が増加した場合、当該治療が有効であることを示す指標として検出および/または評価することができる。壊死領域の絶対体積サイズと、疾患(例えば、腫瘍)体積合計および/またはこの比の変化速度との間の比率の増加を検出および/または評価することができ、当該治療が有効であることを示す指標としてこの増加を利用することができる。病変組織体積と、壊死領域体積との間の比率を検出および/または評価することができる。この比率が1に近くなりかつ病変組織体積が縮み始めた場合、当該治療が有効であることを示す指標としてみなすことができる。
血管の構造的表現を検索することで、特定のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を特定および評価することができる。このパターンを用いて、当該血管が正常であるかまたは異常である(例えば、関連する疾患)確率に関連するスコアを得ることができる。血管のスコア付けに用いられるパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を非限定的に挙げると、以下のものがある(すなわち、直径、曲率、屈曲度(例えば、屈曲度、異常屈曲度が観察される血管の長さなど)、変動性または不均一性(例えば、距離または体積における空間変動性または不均一性)、分岐形状またはパターン、分岐密度、分岐階層、血管密度、血管サイズ分布(微小血管と大血管との比)、電界効果(特定の領域に向かって屈曲する血管の存在)、血管直径分布、血管またはそのフラグメントの幾何学的方位の変動性、電界内における方位(単数または複数)の分布)。これらのパラメータのうち2つ以上を評価した場合、スコアの有意性を高めることができる。いくつかの実施形態において、これらの構造的パラメータのうち1つ以上と、さらなる情報(例えば、患者固有の医療情報(例えば、年齢、体重、身長、性別など)および1つ以上のさらなる疾患指標(例えば、X線または他の画像上の可視病巣)の存在とを組み合わせて用いて、スコアを生成する。いくつかの実施形態において、腫瘍についてスコアを得ることができる。有用なスコアの一例として、前記腫瘍の血管分布を反映したものがある。異常に高い血管分布(正常な血管数、密度、長さ、またはその組み合わせよりも高い数値として測定されたもの)は、侵襲性または浸潤性の高い腫瘍を示すことが多い。一実施形態において、血管新生血管系の内腔の体積(腫瘍と関連付けられた血管樹内の体積)を測定することにより、血管分布を評価する。別の実施形態において、血管新生内腔の体積をby前記体積of固形腫瘍の体積で除算することにより、血管分布の尺度を得る。スコア(または他の構造的評価)を2回以上得ることにより、さらなる情報を収集することができる。。スコア(または他の構造的評価)の変化は、疾患または病気と関連付けられ得る血管系の進展を示す。調査中の血管への接続を要することなく、本明細書中に記載のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を分析フィールドについて特定および分析することができることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、個々の血管の1つ以上の構造的フィーチャまたは正常フィーチャと異なる血管のフィールドの幾何学的フィーチャを検出するためには、血管のフラグメントのみを分析するだけで十分であり得る。例えば、平均長さが0.5mm、1mm、5mm、10mm、50mm、1cm、5cm、10cm、50cmなどの血管フラグメントを利用することができる。しかし、上記よりも短い長さ、上記よりも長い長さまたは中間の長さも利用可能であることが理解されるべきである。
本明細書中に記載の本発明のスコア付け局面および検索局面は、自動化することが可能である。従って、正常な血管系内において、疾患血管系(例えば、血管新生血管系)を自動的に検出することができる。多様な血管系パラメータを、別個にまたは任意の組み合わせ(例えば、血管屈曲度、血管分岐、血管密度、および血管内体積合計)において、自動的に検出およびスコア付けすることができる。しかし、本発明は、任意の特定のパラメータまたは組み合わせに限定されない。
一実施形態において、本発明の局面を用いて、閉塞血管および血栓塞栓発症(例えば、脳卒中、肺塞栓症、閉塞微小冠血管、深部静脈血栓症など)を検出することができる。閉塞血管の検出は、以下のステップにより、行うことができる。(1)先ず、閉塞血管の構造的変化を直接検出する(例えば、凝血塊、壁肥厚、または他の流れ低減の兆候を検出する)ステップおよび/または(2)閉塞に応答して生成された新血管系を間接的に検出するステップ。一般的に、側副血管の形成は、癌と関連付けられた血管新生よりもより規則的であることが多い。本明細書中に記載の本発明の一局面により、小血管内の凝血塊の検出も可能となる。
上述したように、本発明の局面を用いて、任意の組織中の任意の形態の異常について、ヒトまたは他の動物の血管系構造全体をスクリーニングすることができる。あるいは、身体の一部をスクリーニングすることもできる。従って、1つ以上の器官または組織型について、血管系構造(例えば、血管樹)を分析することができる。加えて、任意の標的体積内の当該血管系の一部のみを、当該体積内の血管樹全体と比較して分析することもできる。これは、対象領域に着目した構造データを分析することにより、行うことができる。あるいは、大量の構造データを入手することもできるが、分析は、利用可能なデータの一部に制限され得る。いくつかの実施形態において、血管樹の一部のみ(例えば特定のサイズの血管のみ)を表現および/または分析することができる。他の実施形態において、血管樹のフラグメントを表現および/または分析する(ただし、前記フラグメントが、対象パターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を得ることが可能な情報を十分に含む場合)。フラグメントは、分岐を含んでもよいし、あるいは非分岐であってもよい。分析されている血管系の部分は統計的に有意であり得、これにより、任意の観察結果(正常なまたは異常)が生理学的に有意となる。例えば、十分な数の血管下部構造を分析することで、血管系変化(例えば、血管新生)(例えば、高血管密度)と関連付けられ得る他の任意のパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を信頼性高く検出できる場合、分析において分岐構造を不要とすることができる。本発明の局面において、1mm3、2mm3、5mm3、1cm3、2cm3、5cm3、10cm3などの体積において、血管パターンをin situで検出および/または評価することができる。しかし、より小さな体積またはより大きな体積または中間体積の分析も可能である。
組織および器官が異なる場合、特徴的な血管パターンも異なる(例えば、血管新生化が活発な肺)。従って、一実施形態において、異なる組織の評価に合わせて、構造的分析および関連付けられた構造的パラメータを最適化することができる。
いくつかの実施形態において、1つ以上の器官(例えば、肺、心臓、結腸、脳、肝臓、膵臓、腎臓、胸部、前立腺など)または組織(例えば、皮膚、骨など)または上記のうちの任意の部分について、スキャンデータを入手および/または分析する。
血管パターンの変化と関連付けられ得る脳腫瘍および/または他の神経疾患の兆候について、脳を評価することができる。例えば、アルツハイマー病は、特定の血管異常と関連付けることができる。一実施形態において、血管パターン(例えば、形状および/またはサイズ)の1つ以上の変化を脳内の高血圧の指標として検出することができる。
いくつかの実施形態において、器官または組織の特定の特定の領域に注目する。例えば、アテローム性動脈硬化症は典型的には、動脈樹(例えば、分岐、側枝、分流器に対向する領域、およびアテローム性動脈硬化症に関連して血管新生が頻繁に発生する他の領域)の特定の部分において見受けられることが多く、特定の器官または組織領域内において特定の癌がより高頻度で発生する(例えば、結腸癌は、結腸の長さに沿って均等に分布していない)。
他の実施形態において、本発明の局面を用いて、1つ以上の他の疾患指標(例えば、便潜血、結腸ポリープ、肺結節、1つ以上の嚢胞または他の疾患指標)を持っているものとして特定された個人をフォローアップすることができる本発明の局面を用いて、疾患の存在を確認し、当該疾患と関連付けられた病変部の位置を決定するかまたは疾患の評価または予後を提供することができる。例えば、本発明の局面を用いて、病変部(例えば、結腸ポリープ、肺結節、胆嚢嚢胞、前立腺嚢胞、胸部嚢胞、マンモグラフィー上のスポット、または任意の他の嚢胞、しこり、検出された物理的、視覚的または任意の他の診断技術の利用によって検出され得るスポット)に異常血管系が存在するか否かを決定し、当該病変部と関連付けられた悪性度の可能性(または他の発癌病期)の評価を支援することができる。従って、本発明の局面は、バーチャル悪性度検出(例えば、バーチャル大腸内視鏡検査、バーチャル結腸悪性度検出、バーチャル気管支鏡検査法、バーチャル肺悪性度検出、バーチャルマンモグラフィー、バーチャル膀胱鏡検など)に用いることができる。
他の実施形態において、本発明の局面は、癌病変部の範囲の評価のための癌患者のスクリーニングおよび/または1つ以上の転移病変部(例えば、血管新生と関連付けられた1つ以上の部位)の存在のスクリーニングに用いることができる。原発性癌の初期診断が下された癌患者に対し、スクリーニングを行うことができる。加えてまたはあるいは、初期癌治療(例えば、外科手術、放射線、および/または化学療法)の後、癌患者に対して少なくとも1回スクリーニングを行うことができる。このスクリーニングは原発癌部位を含み得、これにより、任意の癌再発を検出することができる。このスクリーニングは、類似する身体組織を含み得、これにより、同一組織または器官内の他の病変部の存在についてスクリーニングを行うことができる(例えば、結腸の一領域において癌病変部が検出された場合、結腸全体についてスクリーニングを行うことができ、1つの乳房内に癌病変部が検出された場合、局所再発乳部についてスクリーニングを行うことができるなど)。このスクリーニングは、身体全体または転移病変部を含むことが疑われる1つ以上の他の部位に対しても行うことができる。一実施形態において、初期癌治療後に(例えば、約6ヶ月後、約1年後、約2年後、約5年後または他の時間間隔後に)癌患者に対して複数回スクリーニングを行うことができる。
一実施形態において、フォローアップ手順は、転移病変部の存在について1つ以上の器官または組織をスクリーニングするステップを含み得る。異なる癌は、異なる転移特性パターンを持ち得る。従って、異なる癌について、異なる標的部位をスクリーニングすることができる。例えば、転移乳癌は典型的には、肺、肝臓、骨および/またはCNSに拡散することが多い。そのため、患者に対して乳癌の診断が下された後、これらの組織型または器官のうち1つ以上をスクリーニングすることができる。同様に、別の種類の癌の診断が患者に下された後、他の標的部位をスクリーニングすることができる。いくつかの実施形態において、転移の指標が無いかについて、癌患者の身体全体をスクリーニングすることができる。
一局面において、低分解能表現の利用および/または例えば1つまたは2つまたは少数の(例えば、5つ以下の)パターンパラメータのみの分析により疾患指標を検出することにより、身体全体または器官全体に対して初期スクリーニングが行われ得る。その後、より高分解能の表現の利用および/または例えば1つ以上のさらなるパターンパラメータまたは初期検出において分析されたパターンパラメータとは別のパターンパラメータの分析により、当該疾患の存在または性質を診断することができる。
本発明の診断局面のうちいくつかまたは全ては、本明細書中に記載のように自動化が可能であることが理解されるべきである。
例2:境界付けられた血管系
いくつかの局面は、血管構造内において特定されたバイオマーカーに関連する。いくつかの局面は、例えば血管バイオマーカーを評価することにより血管構造を分析するステップと、前記ポーカーチップ表現(すなわち、血管系の1つの例示的な種類の3D幾何学的表現(例えば、図35〜図42および図43〜図47を参照))を用いるステップとに関連する。本発明の局面によって提供されるいくつかのバイオマーカーは、血管の構造的パラメータに関連する(例えば、上記図を参照)。本発明の局面によって提供されるいくつかのバイオマーカーは、所与の体積のボクセル(単位体積単位)分析に基づく(例えば、図48〜図54を参照)。例えば、ボクセルは、血管構造(例えば、血管密度)に関連する情報と関連付けられ得、所与の組織体積のボクセル分析を、前記組織体積内の血管系の連続マッピングに用いることができる。いくつかの実施形態において、例えば腫瘍ラップを決定する(例えば、正常組織の境界にある腫瘍の外面を規定する)ことにより、病変組織(例えば、腫瘍)の境界を決定する。いくつかの実施形態において、本発明の局面によって提供されるバイオマーカーは、健常組織および/または病変組織の規定された境界内において(例えば、腫瘍ラップ内に含まれる体積内において)評価される。
例3:血管バイオマーカー
いくつかの局面は、血管系内の異常(例えば、悪性組織と関連付けられた異常)を特定および正確に突きとめる際に有用な血管系構造用バイオマーカーを提供する。本発明による血管系構造バイオマーカーのいくつかの非限定的例は、血管組織化、血管密度、および/または血管人体解剖構造に関連し得る。本発明によって提供されるいくつかの血管バイオマーカーは、微小血管系(例えば、微小血管組織化、微小血管密度、および/または微小血管人体解剖構造)に関連する。
本発明のいくつかの局面による血管組織化バイオマーカーのいくつかの非限定的例として、血管階層(例えば、所与の組織体積における血管階層ビンの分布、所与の組織体積内における所与の血管階層ビンの頻度)、血管分岐(例えば、所与の血管長さにおける血管分岐点の数、所与の体積における分岐点密度)、血管アライメント、血管方位、血管長さ、または血管間距離がある。
本発明のいくつかの局面による血管密度バイオマーカーのいくつかの非限定的例は、所与の組織体積における総血管密度、所与の組織体積における全血管体積密度、所与の組織体積における血管密度、および所与の組織体積における当時の血管体積密度である。いくつかの実施形態において、血管密度に関連するバイオマーカーを用いて、血管ホットスポットおよび組織内の壊死領域を規定することができる。血管ホットスポットは、組織の領域および/または体積のうち、本発明のいくつかの局面による血管密度関連バイオマーカーが特定の閾値を超えていると決定されたものとして規定することができる。同様に、壊死領域は、組織の領域および/または体積のうち、本発明のいくつかの局面による血管密度関連バイオマーカーが特定の閾値を超えていると決定されたものとして規定することができる。比較参照組織および/または基準組織(例えば、同一組織型の健常組織、例えばfrom同一の対象または異なる対象または異なる対象の群、病変組織の近隣の非病変組織、または理論および/または履歴データ)から取得されたデータから閾値を決定することができる。血管ホットスポットは、組織領域および/または体積のうち、血管密度関連バイオマーカーの値が基準値または比較参照値と比較して約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約250%、約500%、約750%、約1000%、約5000%、または約10,000%だけ増加したものとして規定することができる。壊死領域は、組織領域および/または体積のうち、血管密度関連バイオマーカーの値が基準値または比較参照値と比較して約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約250%、約500%、約750%、約1000%、約5000%または約10,000%だけ低下したものとして規定することができる。いくつかの実施形態において、ホットスポットは、血管系レベルが腫瘍組織の血管系(例えば、腫瘍ラップによって規定されたもの)のうち上位のおよそ1%、およそ5%、およそ10%、およそ20%、またはおよそ50%の上位レベルにある領域として特定することができる。いくつかの実施形態において、壊死領域は、血管系レベルが腫瘍組織の血管系(例えば、腫瘍ラップによって規定されたもの)のうち最下位およそ1%、およそ5%、およそ10%、およそ20%、またはおよそ50%の最下位レベルにある領域として特定することができる。
血管ホットスポットを高微小血管密度領域として示しおよび壊死領域を腫瘍内の低微小血管密度の領域として示す微小血管密度バイオマーカーの評価を図35〜図52中に例示する。例示的な腫瘍を図35中にin situで図示し、同一腫瘍の例示的なX線画像を図36中に図示する。同一腫瘍の3Dモデル画像は、血管分析方法の例示的結果を表し、本発明の局面によって提供される方法に従ってモデル化され、図37および図38中に図示する。腫瘍の3Dモデルにより、図39(腫瘍全体)および図40(拡大図)内において例示される血管直径の直接的測定および注釈付けが可能となる。図41および図42は、同一腫瘍の3D腫瘍ラップの例示的な画像である。
図43〜図54は、腫瘍血管系の例示的な評価と、本発明のいくつかの局面による所与の組織(例えば、腫瘍)内の下部構造(例えば、血管ホットスポット)の特定方法によって得られる血管情報の利用とを示す。X線画像の比較参照用腫瘍と、X線画像のAvastinによる治療後の腫瘍とを図43中に並べて示す。図44は、同一腫瘍の血管系の3Dモデルを示し、図45は、前記モデルを用いて測定された例示的な血管直径を示す。図46および図47は、同一の比較参照用腫瘍およびAvastinによる治療後の腫瘍の例示的な腫瘍ラップを示す。図48〜図52は、2つの例示的な腫瘍内における微小血管密度の分布の可視化を提示する。比較参照用腫瘍と治療後腫瘍との間の微小血管密度ビンの頻度についての比較を図53中に示し、これにより、前記比較参照用腫瘍および治療後腫瘍における異なる微小血管密度ビン分布を示す。
血管系のレベルは、任意の適切な計量(例えば、本明細書中に記載のようなもの)を用いて評価可能であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、分析(例えば、ビニング分析)のために、前記血管について特徴付けおよびグループ化することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の構造的フィーチャ(例えば、密度関連のもの、体積関連のもの、形状関連のもの、またはその任意の組み合わせ)を、腫瘍(例えば、腫瘍ラップ)内の血管系の画像または再構築されたモデル内の各ボクセルと関連付けることができる。その後、これらのボクセルを、本明細書中に記載のような治療用途、評価用途(例えば、環境)用途および/または治療用途のために分析することができる。例えば、異なる状態(例えば、異なる治療レベル、異なる治療レジメンなど、またはその任意の組み合わせ)下において、異なるレベルの異なる構造的フィーチャを有するボクセルの数(例えば、絶対数または相対数(例えば、パーセンテージ)または頻度を評価および比較することができる。いくつかの実施形態において、異なる組織(例えば、疾患組織、健常組織など)内のボクセルの数(例えば、絶対数または相対数(例えば、パーセンテージ))または頻度を、必要に応じて異なる状態下において、本明細書中に記載および例示のように比較することができる。
いくつかの実施形態において、病変組織(例えば、悪性腫瘍)内の血管ホットスポットおよび/または壊死領域の評価を、前記病変組織を標的とする治療(例えば、化学療法剤の投与)の評価において用いることができる。図54は、Avastinによる治療を受けた膠芽細胞腫内の血管ホットスポットおよび壊死領域と、未治療の比較参照用膠芽細胞腫内の血管ホットスポットおよび壊死領域との比較を例示する。図55に示すような血管密度関連バイオマーカーの定性的比較を用いて、治療によって発生した血管密度変化を調査することができる。図55中に示される例において、膠芽細胞腫のAvastin治療に起因して、壊死領域体積が有意に増加し、血管体積密度およびホットスポット密度双方が有意に低減している。Avastinによる治療後の膠芽細胞腫および未治療の比較参照における、例示的な血管密度関連バイオマーカーの評価である総血管密度(所与の体積あたりの血管数を図56に示す。Avastinによる治療後の膠芽細胞腫および未治療の比較参照における、別の例示的な血管密度関連バイオマーカーの評価である平均血管密度(複数の体積単位における平均血管数(例えば、腫瘍境界によって規定されたもの))を図57に示す。Avastinによる治療後の膠芽細胞腫および未治療の比較参照における、例示的な血管密度関連バイオマーカーの評価である全血管体積密度(所与の体積内の血管に属するボクセル数)を図58に示す。Avastinによる治療後の膠芽細胞腫および未治療の比較参照における、別の例示的な血管密度関連バイオマーカーの評価である平均血管体積密度(所与の体積内の血管に属するボクセルの平均数(例えば、腫瘍境界によって規定されたもの))を図59に示す。いくつかの実施形態において、組織(例えば、腫瘍)の境界を血管画像化およびモデル化データに基づいて決定し、その後、これらの境界内のボクセルを限定する評価を行う。いくつかの実施形態において、複数のこのような限定されたボクセル内においてバイオマーカーを不利化する。例えば、悪性組織と関連付けられた異常血管系に基づいて(例えば「腫瘍ラップ」によって)固形腫瘍の境界を決定することができ、当該境界内の組織について、血管密度関連バイオマーカーを評価することができる。
血管人体解剖構造バイオマーカーのいくつかの非限定的例として、血管屈曲度、血管曲率および血管直径がある。本発明のいくつかの局面による血管屈曲度バイオマーカーのいくつかの非限定的例として、2D血管屈曲度または3D血管屈曲度(例えば、所与の血管長さにおけるねじれ量として表されたもの)、所与の組織体積内における血管屈曲度の総量、所与の組織体積内における血管屈曲度ビンの分布、または所与の組織体積における平均血管屈曲度)がある。
本発明のいくつかの局面による血管曲率バイオマーカーのいくつかの非限定的例として、外部曲率、外部曲率、所与の組織体積内の曲率ビンの分布、所与の組織体積内における血管曲率の総量、または所与の組織体積における平均血管曲率がある。
本発明のいくつかの局面血管直径バイオマーカーのいくつかの非限定的例として、血管テーパー(例えば、所与の血管長さにおける直径変化)、血管直径変化、所与の組織体積内における血管直径ビンの分布、または所与の組織体積内における所与の血管直径ビンの頻度がある。
本発明のいくつかの局面は、所与の組織の機能血管系を特定することに関連する。本明細書中用いられる「機能血管系」という用語は、実際に血液を搬送する任意の種類の血管を指す。血液を搬送しない血管(例えば、塞栓血管)は、機能血管系の一部ではない。機能血管系という用語は、漏出性血管をさらに含む。漏出性血管は、悪性組織(例えば、腫瘍)と関連付けられることが多い。所与の組織の機能血管系を特定するには、例えば、当該組織に供給される血液中の造影剤を用いて、当該組織内の血管系を画像化すればよい。
本発明のいくつかの局面は、血管バイオマーカーに基づいて、所与の組織または組織型(例えば、病変組織(例えば、腫瘍または悪性組織))の境界を規定することに関連する。いくつかの実施形態において、比較参照用バイオマーカー値または基準バイオマーカー値と、調査対象組織内において測定された実際のバイオマーカー値とを比較する。いくつかの実施形態において、前記実際のバイオマーカー値の前記比較参照用バイオマーカー値または基準バイオマーカー値からの逸脱が特定の閾値を超えた場合、この逸脱を用いて、各組織の境界を規定する。例えば、所与の血管バイオマーカーの値(例えば、所与の組織体積内の所与の血管直径ビンの頻度)の比較参照用バイオマーカー値または基準バイオマーカー値からの逸脱が例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約150%、約200%、約250%、約300%、約400%、約500%、約750%、約1000%、約2000%、約5000%、約10,000%、および50,000%または約100,000%である場合、前記所与の組織体積を少なくとも部分的に病変組織(例えば、腫瘍または悪性組織)として特定することができる。本発明の局面によって提供されるいくつかのバイオマーカーを用いて、組織(例えば、固形腫瘍)の境界を決定することができる。腫瘍の境界(いわゆる「腫瘍ラップ」)の確立を、腫瘍組織の体積の高精度定義および腫瘍の3D位置として用いることができる。
本発明のいくつかの局面による、比較参照用膠芽細胞腫およびAvastinによる治療後の膠芽細胞腫における血管バイオマーカー評価のいくつかの比較を図55〜図67中に示す。本発明のいくつかの局面に関連するバイオマーカーは、広範囲の多様な診断および治療様式および用途において有用であり得ることが理解されるべきである。そのうちいくつかの非限定的例について本明細書中に説明する。
診断目的、予後目的および/または治療目的のために、本明細書中に記載のバイオマーカーのうち1つ以上を用いて、1つ以上の疾患領域(例えば、腫瘍)を特定する(例えば、自動的に特定する)ことができることが理解されるべきである。
いくつかの実施形態において、任意の高分解能画像化技術(例えば、CTまたはMRI)を用いて画像化が行われ得る。いくつかの実施形態において、(例えばin vivo、in vitro、in situかつ/またはex vivoで)画像化が行われ得る。いくつかの実施形態において、画像化において造影剤が用いられ得る。いくつかの実施形態において、画像化においてキャスティング剤が用いられ得る。いくつかの実施形態において、対象組織(例えば、腫瘍)からの血管キャストを画像化において用いることができる。いくつかの実施形態において、画像化データを用いて、所与の組織の3D血管系モデルを生成することができる。いくつかの実施形態において、3D血管系モデル化を行うことで、本明細書中に詳述するような血管系のポーカーチップ表現を生成することができる。本発明のいくつかの局面は、治療用途および/または診断用途におけるこのモデル化情報の利用に関連する。いくつかの実施形態において、2D「バーチャル組織構造」画像を生成して、3Dモデルの一部を表現することができる。本明細書中に記載のような血管計量およびバイオマーカーの測定を、このような2Dバーチャル組織構造画像、本明細書中に記載のような3Dモデルまたはこれら双方の比較において行うことができる。
いくつかの実施形態において、分析のため、血管構造データを(例えば、直径などにより)ビニングすることができる。いくつかの実施形態において、血管構造データの分析を、血管フィーチャの連続マッピングによって行うことができる。
例4:診断および治療における血管バイオマーカー
いくつかの局面は、血管の幾何学的フィーチャを分析し、生物プロセス、状態または疾患によってこのようなフィーチャを相関付ける方法に関連する。血管のいくつかの幾何学的フィーチャを、特定の生物プロセス、状態および/または疾患を示すバイオマーカーとして用いることができる。
本発明のいくつかの局面は、対象への臨床的介入(例えば、一定投与量の電離放射線の投与、または薬剤または治療組成物(例えば、血管新生阻害剤または化学療法剤)の投与))の効果を監視する方法に関連する。いくつかの実施形態において、対象への臨床的介入の効果の監視を、前記臨床的介入の実行前、実行時および/または実行後に前記対象の組織内の血管バイオマーカーを評価することにより、行うことができる。いくつかの実施形態において、異なる時点において対象から得られた血管バイオマーカー評価結果を比較することができる。このような比較は、例えば臨床的介入の有効性を決定する際に用いることができる。いくつかの実施形態において、血管バイオマーカーの評価による、対象への臨床的介入の効果の監視結果を、臨床的介入の変更(例えば、投与すべき薬剤の投与量の調節、投与されている薬剤の種類の変更、または電離放射線の投与量の調節)の根拠として用いることができる。いくつかの実施形態において、標的組織内の血管バイオマーカーの監視に基づいて、臨床的介入の継続時間を決定することができる。いくつかの実施形態において、所望の効果(例えば、血管バイオマーカーの値の変化)が達成されるまで、臨床的介入を行うことができる。例えば、腫瘍組織内の血管バイオマーカーの監視において所望の効果が観察されるまで、腫瘍を有する対象に対して抗血管形成薬剤を投与することができる。
所望の効果の非限定的例として、総腫瘍微小血管密度(TMVD)または平均TMVDの約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約99%、約100%および/または組織壊死または組織低酸素、または血管(例えば母血管)の塞栓と関連付けられたレベルまでの低下がある。
いくつかの実施形態において、非標的組織内の血管バイオマーカーを評価することにより、前記非標的組織の血管系への臨床的介入の効果を監視することができる。例えば、臨床的介入の結果の血管系の異常または血管系パターンの変化を非病変組織内において検出することができる。いくつかの実施形態において、露出対象あるいは血管変性剤(例えば、毒素)に露出するかまたは露出したと疑われている対象の組織中の血管バイオマーカーを評価することにより、このような薬剤への露出による効果を監視することができる。
本発明のいくつかの局面は、治療薬(例えば、血管変性剤)または方法を特定するためのスクリーニング方法に関連する。いくつかの実施形態において、本発明のいくつかの局面に関連する方法を用いて、標的化腫瘍(例えば、血管新生阻害剤)への治療介入において有用な治療薬(例えば、血管変性剤)または方法を特定することができる。いくつかの実施形態において、候補治療薬または方法の適用前、適用時および/または適用後に血管バイオマーカーを評価することにより、動物疾患モデル内の病変組織の血管系に対する候補治療薬または方法の効果を監視することができる。例えば、特定種類の腫瘍を持つ対象動物(例えば、膠芽細胞腫のマウス腫瘍モデル)に候補血管新生阻害剤(例えば、薬剤)を投与し、前記対象中の腫瘍の血管系に対する前記候補薬剤の効果を評価することができる。いくつかの実施形態において、病変組織の血管系に対する候補治療薬または方法の効果と、前記病変組織の血管系に対する既知の治療薬または方法の効果とを比較することができる。血管系に対する薬物または薬剤の効果の評価は、本発明のいくつかの局面によるバイオマーカーの評価により、行うことができる。例えば、バイオマーカーに対する候補治療(例えば、候補複合物)の効果が比較参照用複合物(例えば、Avastin)による効果と類似するかまたは比較参照用複合物(例えば、Avastin)による効果を上回る場合、前記候補複合物を、さらなる分析および/または治療において利用すべきものとして選択可能な有効な候補複合物として特定することができる。これとは対照的に、いくつかの実施形態において、前記候補複合物が前記比較参照用複合物よりも有意に効果が劣る場合、前記候補複合物をその後の調査対象から排除することができる。しかし、異なる用途において、異なる目標レベルの有効性を選択することができ(そして対応して異なる閾値を用いることができる)ことが理解されるべきである。本発明のいくつかの局面は、候補血管変性剤の評価時において複数の血管バイオマーカーを評価することで、前記候補薬剤についての血管バイオマーカー修正プロフィールを生成するスクリーニング方法に関連する。いくつかの実施形態において、特定の血管バイオマーカー修正プロフィールを示す薬剤を特定の標的組織(例えば、特定の種類の腫瘍)と整合させることができる。
いくつかの実施形態において、本発明の局面は、画像化およびモデル化技術を用いて(例えば、ポーカーチップモデル化技術を用いて)、正常組織および対象病変組織について血管系バイオマーカーを評価し、所与の組織または組織型(例えば、病変組織(例えば、腫瘍または悪性組織))の境界を規定する方法に関連する。本明細書中に詳述したような高分解能の画像化およびモデル化技術により、組織境界の規定をマイクロメータ精度で行うことが可能となる。
本発明のいくつかの局面は、所与の組織内の対象標的構造の位置を血管バイオマーカーに基づいて高精度に規定することに関連する。本発明のいくつかの局面は、異常組織内の標的構造(例えば、腫瘍の血管系を周辺組織へと接続する腫瘍の母血管)の正確な位置を特定する方法を提供する。対象構造の他の非限定的例として、所与の血管階層ビニング血管ホットスポットの血管(例えば、腫瘍内のもの)および組織(例えば、腫瘍)内の壊死領域がある。
本発明のいくつかの局面は、本発明のいくつかの局面によって提供される方法を用いて、放射線治療時において(例えば、放射線手術時において)ビーム標的化のための正確なガイダンス(例えば、画像ガイド下)を提供することに関連する。本発明のいくつかの局面によって提供される方法の例を挙げると、標的組織(例えば、腫瘍と関連付けられた悪性組織)の正確な境界を規定する方法または標的組織内の対象構造(例えば、母血管またはホットスポットのもの)の正確な位置を規定する方法がある。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載のような疾患または状態と関連付けられた1つ以上のバイオマーカーを、治療(例えば、放射線治療)の標的とする。本発明のいくつかの局面は、標的組織の敏感な隣接構造を回避しつつ、リアルタイムの高分解能画像ガイド型ビーム位置決めおよび/または放射線手術(例えば、定位的放射線治療)時の標的化による、高投与量の電離放射線の高精度(例えば、ミリメートル未満の精度)での標的組織(例えば、腫瘍または腫瘍構造(例えば、母血管または腫瘍の血管ホットスポット))への送達を組み合わせる方法を提供する。いくつかの実施形態において、複数の電離放射線ビームを標的に向けて出射して、本発明のいくつかの局面によって提供される方法によって特定された構造と少なくとも部分的に交差させる。例えば、本発明の局面によって提供される方法を用いて、腫瘍を有するものとして診断された対象内の腫瘍の3D位置を高精度に規定することができる。関連3D座標(例えば、腫瘍位置、腫瘍体積、および腫瘍境界)を、単一の電離放射線ビームまたは複数の電離放射線ビームの3D標的化の根拠として用いることができる。いくつかの実施形態において、構造(例えば、母血管、フィーダー血管、大血管、腫瘍ホットスポット、複数の任意のこのような血管またはホットスポット、またはこれらの組み合わせ)に1つ以上のビームを方向付けるか(または方向付けて交差させる)。ビーム操作技術の技術的制約に起因して、特定の構造を標的とするビームが、前記特定の構造外の領域にいくつかの電離放射線を送る場合があり得ることが理解されるべきである。同様に、特定の構造において交差するように方向付けられた複数のビームの交差領域および/または交差体積は、前記特定の構造外の領域および/または体積を含む場合があることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、ビーム直径よりも小さな構造において複数の電離放射線のビームを交差するように方向付けることで、実際のビーム直径よりも直径が小さな高投与量領域および/または体積を生成することができる。血管系構造の標的化と関連付けられた本発明の方法を用いて、腫瘍へ血液を供給する単一の血管または複数の血管を閉塞または焼灼することができることが理解されるべきである。
いくつかの実施形態において、本発明の局面を用いて、患者への治療を最適化することもできる。異なる治療種類または投与量に応じて疾患進行または退行の範囲を監視することができ、最適治療を特定することができる。最適な治療は、疾患の進行と共に変化し得る。本明細書中に記載の本発明の局面を用いて疾患関連パターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)の変化を分析することにより、治療の経時的有効性を監視することができる。
一実施形態において、第1の治療を投与することができ、異常血管成長の遅延、停止または逆転におけるその有効性を、不規則にまたは特定の時間間隔で(例えば、毎日、毎週、毎月または他の時間間隔で)監視することができる。いくつかの実施形態において、第1の治療レジメンが疾患進行に対して所望の効果を示さなかった場合、第2の治療レジメンを評価することができる。同様に、さらなる治療レジメンを患者毎に評価することができる。さらに、本発明を用いて、治療詳細の変更による効果を監視し、当該状態および当該患者にとって最も効果が高いと思われる状態を用いることにより、選択された治療レジメンを最適化する(例えば、投与量、タイミング、送達、または薬剤または他の治療の他の特性を最適化)することができる。
治療の治療有効性を見る場合、疾患特有のパラメータを監視することができる。もちろん、全パラメータを入手し、サブセットのみを確認することも可能である。しかし、当該疾患を特徴付けるパラメータ(の表現)のみを入手する方がより高効率である場合がある。
本発明の局面によれば、血管新生血管系および他の異常血管の検出に用いられるパターン(例えば、個々の構造的フィーチャまたは分布)を用いて、治療に対する疾患反応を監視することもできる。例えば、血管新生または他の疾患血管系の総血管分布または任意の他の体積分析と、血管サイズの分布(例えば、小血管と大血管との間の比率)とを、疾患進行または退行の指標として独立してまたは共に用いることができる。一般的に、抗血管形成治療(または他の疾患治療)が有効となった場合、微小血管は大血管よりも先に消失することが多い。そのため、治療が有効であれば、血管サイズ分布はより大きな血管へと遷移する。抗血管形成活性のインデックスは、小血管の消失または観察された血管の単一のサイズへの遷移のいずれか(またはこれら両方)としてスコア付けすることができる。
別の局面において、前記パラメータは、経時的変化であり得る(かまたは経時的変化を含み得る)。例えば、2回目に存在する構造を1回目に存在する構造と比較することができる。一実施形態において、治療前および/または治療後に疾患を追跡することができる。もちろん、さらなる時点も利用可能である。時点は、観察されている状態(例えば、疾患進行は既に特定されているか、患者(単数または複数)のスクリーニングは経時的であるか)によって異なり得る。期間は、毎日、毎週、毎月あるいはより短い中間期間またはより長い期間であり得る。時間間隔は、一連の規則的期間であり得る。しかし、他の時間間隔も有用となり得る。一実施形態において、患者特有の基線を確立し、この基線を経時的に監視する。例えば、結腸、胸部あるいは他の組織または器官の血管系の変化を定期的に監視することができる。
本発明の一局面において、1つ以上の疑義のある疾患部位(例えば、癌性部位)において検出された異常血管構造(例えば、血管新生)の程度または範囲により、治療の種類を決定することができる。例えば、疑義のある癌性部位または転移が血管新生前であるかまたは早期血管新生と関連付けられている場合、任意の形態の治療を用いることなく前記部位を監視すると適切である場合がある。しかし、適切な治療において、1つ以上の血管新生阻害剤を投与することで、任意の新血管系の形成を回避する場合もある。疑義のある癌性部位または転移が中期の血管新生と関連付けられる場合、適切な治療は、1つ以上の血管新生阻害剤の投与であり得る。疑義のある部位において中期血管新生を有する患者も、任意のさらなる血管進展をより強力に治療できるよう監視すべきである。疑義のある癌性部位または転移が後期の血管新生と関連付けられる場合、適切な治療は、化学療法(例えば、細胞毒性化学療法および/またはホルモンベースの化学療法)、放射線、外科手術、および/または1つ以上の血管新生阻害剤による治療のうち少なくとも1つ以上を含み得る。しかし、上記治療選択肢のうち任意を用いて、任意の程度の血管新生と関連付けられた任意の1つ以上の病変部を有する患者を治療することが可能であることが理解されるべきである。
血管新生阻害剤の例を非限定的に挙げると、2ーメトキシエストラジオール(2ーME)、AG3340、アンギオスタチン、アンギオザイム、アンチトロンビンIII、VEGF阻害剤(例えば、抗VEGF抗体)、バチマスタット、ベバシズマブ(Avastin)、BMSー275291、CAI、2C3、HuMV833カンスタチン、カプトプリル、軟骨由来阻害剤(CDI)、CCー5013、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))、COLー3、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA4リン酸塩、ダルテパリン(FRAGIN(登録商標))、EMD121974(シレンジタイド)、エンドスタチン、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ)、ゲニステイン、臭化水素酸ハロフジノン(TEMPOSTATIN(登録商標))、Id1、Id3、IM862、イマチニブメシル酸塩、IMCーIC11誘導タンパク質10、インターフェロンーアルファ、インターロイキン12、ラベンダスチンA、LY317615またはAEー941(ネオバスタット(登録商標))、マリマスタット、マスピン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、Methー1、Methー2、ネオバスタット、オステオポンチン切断生成物、PEX、色素上皮成長因子(PEGF)、血小板因子4、プロラクチンフラグメント、プロリフェリン関連タンパク(PRP)、PTK787/ZK222584、ZD6474、組み換えヒト血小板因子4(rPF4)、Restin、スクアラミン、SU5416、SU6668、SU11248スラミン、タクソール、Tecogalan、サリドマイド、トロンボスポンジン、TNPー470、TroponinI、バソスタチン、VEG1、VEGFーTrap、およびZD6474がある。
いくつかの実施形態は、特定のin situ血管構造の分析に基づいて、治療対象を選択しかつ/または治療コースを選択する方法を含み得る。1つの方法は、ヒト対象内のin situ血管構造(単数または複数)を分析して例えばスコアを得るステップを含み得る。前記スコアは、比較参照用スコア(例えば、明らかに健常の集合中のもの)または同一対象についての以前の分析から得られた以前のスコアと比較することができる。前記治療または治療コースは、このような比較に基づき得る。いくつかの実施形態において、前記ヒト対象の治療に対する反応を経時的に監視できるよう、血管構造の分析を得るステップを繰り返す。本発明のこの局面のいくつかの実施形態において、前記方法は、前記ヒト対象内の疾患の第2のインデックスを測定するステップであって、前記治療または治療コースに関する決定は、前記第2のインデックスの測定にも基づく、ステップをさらに含む。
特定の実施形態において、血管新生化後の腫瘍(例えば、壊死の兆候を示すもの)を有する患者に対し、1つ以上の抗血管形成複合物による治療を選択することができる。血管新生化後の腫瘍は、低密度の血管を有するものとしてまたは血管直径が小さいもの(例えば、血管新生化腫瘍の典型的な閾値を下回るもの)として特定することができる。
本発明の局面は、血管パターンまたはフィーチャの存在を経時的に監視することにより、治療有効性を監視するステップも含み得る。例えば、治療による腫瘍中の血管消失の進行は、治療が有効であることを示す兆候であり得る。これとは対照的に、血管新生に対する影響が何も無い場合、これは、治療が患者にとって有効ではなく、別の治療を検討または利用すべきであるとの指標であり得る。
本発明の治療局面のうちいくつかまたは全ては、本明細書中に記載のように自動化が可能であることが理解されるべきである。
例5:代理マーカーS
別の実施形態において、本発明の局面は、複合物ライブラリのスクリーニングまたは異常内部構造(例えば、異常管状ネットワーク)と関連付けられた疾患の治療のための候補複合物の立証において、用いることができる。本発明の局面により、内部構造変化の効率的な高スループット分析が可能となる。これらの変化は、特定の疾患についての代理マーカー(バイオマーカー)として機能することができる。その結果、スクリーニングプロセスを広範囲に自動化することができ、これにより、疾患症状の変化を確認するための待機および組織生検が必要となることが多い現行の立証作業と比較して、結果を得るために必要な時間を大幅に短縮することができる。
代理マーカー:本発明の局面は、診断目的、治療目的および環境目的および開発目的のための代理マーカーとして利用可能な血管パターン(例えば、構造的フィーチャ)の特定および定量化において利用することができる。.代理マーカーは、診断、治療評価および薬剤開発にかかる時間の低減において有用である。代理マーカーは、臨床結果(例えば、薬剤による生存期間の長期化)を待たずに、疾患診断、疾患予後または薬剤有効性の早期指標として用いることができる。そのため、血管系分析を、(前臨床試験および臨床試験双方における)薬剤開発のための代理マーカー、臨床スクリーニング(例えば、胸部、肺、または結腸スクリーニング)のための代理マーカー、また、臨床治療監視のための代理マーカーとして用いることができる。例えば、血管系構造は、血管新生関連疾患(例えば、癌)の有用な代理マーカーである。
一実施形態において、本発明の局面は、候補複合物または治療について、疾患と関連付けられた新血管系形成および/または血管系パターンの変化の治療における有効性をスクリーニングおよび/または立証する方法を提供する。本発明の局面を用いて、maybeusedto評価e個々のまたは少数の複合物の評価またはライブラリのスクリーニングを行って、(例えば、これらの複合物を個々にまたはグループとして実験用動物(例えば、マウス)に投与し、新生血管系に対する効果を評価することにより)複数の候補複合物を評価および/または特定することができる。ライブラリは、任意の数の複合物(例えば、およそ100〜およそ1,000,000個)を含み得る。異なる種類の複合物(例えば、抗体、小分子など)についてスクリーニングを行うことができる。しかし、本発明は、評価可能な複合物の数および/または種類に限定されない。
一実施形態において、候補複合物の有効性を基準複合物と比較することができる。基準複合物は、構造に対する効果が既知である任意の複合物であり得る。例えば、Avastin(Genentech)は、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する公知のモノクローナル抗体であり、新血管系成長に対する候補複合物の効果の試験の際の基準として利用することができる。
In vivoモデル:本発明の局面によれば、in−vivoモデル(例えば、動物疾患モデル)の文脈において、複合物および治療を評価することができる。例えば、癌またはアテローム性動脈硬化症を有するマウスを用いて、有用な治療を評価、最適化および特定することができる。他の動物モデルも利用可能である。本発明の局面は、高スループット分析において有用であり得る。なぜならば、本発明の局面を用いれば、血管系における小さな変化の検出が可能であり、かつ、治療評価を最小の操作で短期間のうちに行うことができるからである。最小の操作で済むのは、浸潤性手順がほとんど不要であるからである。
本発明の血管分析局面を同所性モデルに対して用いて、例えば薬剤の有効性の試験を短期間のうちに行うことができる。例えば、同所性マウス腫瘍モデル中の血管新生に対する候補薬剤の効果を約5日後(例えば、当該モデルおよび薬剤に応じて1〜10日後)に定量化することができる。これとは対照的に、皮下癌動物モデルの場合、腫瘍成長の分析および比較参照との比較のために約1ヶ月必要である。
同所性モデルを用いて、異なる疾患または臨床状態をモデル化することができる。例を挙げると、癌、組織再生、創傷治癒(例えば、外傷後の治癒、外科的処置後の治癒、熱傷組織(例えば、皮膚)の治癒)、組織または器官の移植による治療、医療デバイスインプラントによる治療、新血管形成または正常な血管構造の変化と関連付けられた他の状態、または上記のうち2つ以上の任意の組み合わせがある。しかし、本発明は、同所性モデルの種類または分析されている疾患または臨床状態の種類に限定されない。
単一の同所性疾患モデル動物は、2つ以上の候補薬剤分子の試験において有用であり得る。なぜならば、分析において、モデル動物の屠殺は不要であるからである。従って、第1の候補の試験の完了後、同一モデル動物内において後続候補の評価を行うことができる。適切な比較参照と共に、単一のモデル動物内において一連の候補を試験することができる(ただし、当該モデルが、アッセイに必要な新血管形成フィーチャを保持している場合)。
本発明の開発局面のいくつかまたは全ては、本明細書中に記載のように自動化可能であることが理解されるべきである。
例6:介入用途
本発明の局面を用いて、当該疾患と関連付けられた1つ以上の構造的異常を突きとめることにより、当該疾患の位置を特定することも可能である。この情報を用いて、生検手順または治療(例えば、1つ以上の有害化学物質による治療、放射線、熱、低温、小分子、遺伝子治療、外科手術、任意の他の治療、または上記のうち2つ以上の組み合わせ)を用いて、疾患病変部の正確な位置を標的とすることができる。あるいは、この情報は任意の他の目的にも利用可能である。
一実施形態において、疾患病変部のリアルタイムの視覚表示を提供するコンピュータに画像化デバイスが接続される。一実施形態において、リアルタイム視覚表示は、(実際の画像とは対照的に)身体領域および病変部ならびに関連付けられた血管系の高精度モデルであり得る。この視覚情報を用いて、生検において手術器具をガイドすることもできるし、あるいは、この情報を用いて、侵襲性の治療手順(例えば、外科的除去またはバイパス)または非侵襲性の(例えば、放射線による)治療手順を疾患病変部(例えば、腫瘍または凝血塊)へとガイドすることもできる。
一実施形態において、本発明の局面を用いて、治療適用の前に、治療対象となる組織領域を特性することができる。例えば、無秩序な血管構造の境界を検出することにより、治療標的領域を特定することができる。治療後、この領域を評価することで、当該治療が標的に対して適切に行われたことを確認することができる。一実施形態において、手術前に構造を分析することで、身体領域から除去すべき組織の範囲を特定することができる。一実施形態において、手術後に身体領域を分析することで、任意の異常構造を見逃していないかについて決定することができる。これを用いて、放射線治療または病変組織の外科的除去の成功を確認することができる。あるいは、これを用いて、さらなる外科手術および/または別の形態の治療について決定を下すことも可能である。別の実施形態において、異常血管系の境界により、疾患境界を規定または指示することができる。治療(例えば、放射線治療、外科手術など)を、前記疾患境界によって包囲される体積によってガイドしかつ/または前記疾患境界によって包囲される体積に限定することができる。
一実施形態において、本発明の局面を用いて、外科的インプラントまたは移植の成功を評価することができる。例えば、本発明の局面を用いて、器官または組織移植後に新血管の形成を評価することができる。
別の実施形態において、腫瘍組織の除去後または腫瘍生検後に新血管の発達を監視することができる。前者および後者どちらの場合においても、血管新生の誘発および/または休止状態の腫瘍の悪性腫瘍への転換が発生し得る。
本発明の介入実施形態のうちいくつかまたは本発明の実施形態の全ては、本明細書中に記載のように自動化が可能であることが理解されるべきである。
例7:異所性腫瘍モデル
腫瘍モデルは、免疫不全マウス(SCID)中のヒト非小細胞肺腫瘍細胞株(ATCC,Inc.からのA549)を皮下インキュベートすることにより、発生させることができる。SCID雄性マウス(6〜8週齢、Charles River Inc.)において、1x106個のヒト肺腫瘍細胞(A549)を0.2mlのPBS中に入れた懸濁液を腰背部に皮下インキュベートした。実験全体を通じて、全マウスに通常の食餌を食べさせた。実験全体を通じて、全マウスの大衆を計測した。1週間に1回腫瘍サイズをキャリパーで測定し、長さ2x幅x0.52の式を用いて、腫瘍体積を計算した。メジアン腫瘍体積がおよそ500mm3に到達した際、全マウスを2つの治療グループ(グループあたりおよそ10匹のマウス)にランダム化した。比較参照用組成物または抗血管形成複合物のいずれかへの腹腔内(i.p.)投与を用いた以下のスケジュールに従って、治療グループを治療することができる例えば、異なるレベルの抗血管形成複合物を利用し、抗血管形成複合物(例えば、Genentech(南サンフランシスコ、CA)から販売されているAvastin(登録商標))による治療を施していない比較参照用グループと結果を比較することができる。例えば、以下のようにする。
グループ1:比較参照用グループー1週間に2回、生理食塩水/PBSによる治療を行う。
グループ2:高Avastin(登録商標)ー1週間に2回、5mg/kg/i.p.のAvastin(登録商標)による治療を行う。
グループ3:低Avastin(登録商標)ー1週間に2回、0.5mg/kg/i.p.のAvastin(登録商標)による治療を行う。
初期治療後1.5週経過後、実験を終了した。
終了時点において、全マウスを麻酔し、キャスティング剤で全身灌流した。
例8:キャスティング剤による組織灌流
いくつかの実施形態において、画像取得前に、組織(例えば、腫瘍組織)を造影剤および/またはキャスティング剤で灌流する。組織灌流の方法は、当業者にとって周知である。いくつかの実施形態において、例えば利用可能なキャスティング剤であるMercox(Ladd Research、Williston、VT)で組織を灌流する。Mercox灌流は、以下のようにして行うことができる。各動物に対する初期抗凝固ステップを、ヘパリン(10、000U/ml、0.3cc/マウス)のi.v.注射によって行った。30分後、これらの動物を麻酔した。各動物の心臓をカニューレ処置し、前記動物をぬるい生理食塩水で生理学的血圧値で灌流した(静脈を開口することにより前記器官を排出するかまたは大静脈を開口した状態)。前記器官または動物から血液が無くなるまで、灌流を継続した。Mercoxモノマーを0.5μmフィルタでフィルタリングし、8mlMercox、2mlメタクリル酸メチルおよび0.3ml触媒を混合することにより、キャスティング樹脂を作成した。重合が開始するまで(前記樹脂が茶色に変色し、熱を放出するまで、〜10分間)、前記樹脂を同一カニューレでインフュージョンした。その後、前記器官または動物を、60℃の水槽中に2時間(または密封容器内に一晩)注意深く浸漬した。(例えば、密封された60℃の水槽内において)5%KOHおよび蒸留水で交互にすすぐことでインキュベートすることにより組織を除去し、その後、蒸留水中でよくすすいだ。キャストを5%ギ酸で15分間洗浄し、蒸留水中でよくすすいだ後、蒸留水中で凍結させた。その結果得られた塊氷を凍結乾燥させる(氷が凍結乾燥によって溶けないように注意が必要である)。その結果得られたキャストを分析することで、対象の1つ以上の構造的特性を特定することができる。
本明細書中用いられる血管キャストとは、血管系全体またはその一部の血管を表現するために生成される物理的構造を指す。キャストは、血管系または血管領域(例えば、器官(例えば、腎臓または肝臓の)の血管)をキャスティング材料で潅流することにより、得ることができる。キャスティング材料は、凝固(例えば、重合)して、安定構造を形成する。周囲組織および細胞(例えば、血管壁を含むもの)を除去して、キャストを明示化することができる。キャストは、実際の血管の構造的フィーチャを保持する。キャストは、本明細書中に記載のような、異なるサイズの血管の構造を含み得る。特定のキャストは、他のキャストよりもより可撓性であり、特定のキャストは、他のキャストよりもより脆性が高い。血管キャストを用いて、血管構造的フィーチャを高分解能に特定しかつ/または構造的フィーチャと対象状態との間の相関を信頼性を以て特定することができる。なぜならば、血管構造が前記キャスト内に保持されており、分析を干渉し得る他の生物構造は除去されているからである。血管キャストは、任意の適切なキャスティング材料を用いて入手可能である。いくつかの実施形態において、キャスティング剤はポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、キャスティング剤は、血管壁に反応し得る。キャスティング剤の非限定的例をを非限定的に挙げると、Microfil(登録商標)、メタクリル酸メチル、予ポリマ化メタクリル酸メチル(Mercox(登録商標))、Mercox(登録商標)CL〜2B、他のアクリル樹脂、シリコン、金ナノ粒子、BatsonNo.17、ポリウレタンベースのキャスティング剤(例えば、PU4ii)など、または上記のうち2つ以上の組み合わせがある。
キャスティング剤には、造影剤および/または他の検出可能な薬剤が補完され得ることが理解されるべきである。造影剤の例を非限定的に挙げると、BaSo4およびUAc(例えば、キャスティング材料に混合されるもの)がある。いくつかの実施形態において、既に重合化されたキャストをcOSO4中に浸漬して、CT画像化を用いてコントラスト向上を達成することができる。特定の実施形態において、任意の適切な重金属を樹脂に混合して、当該樹脂の放射線不透過性を高めることができる。
例9:抗血管形成治療に対する反応
例7中に記載のようにして得た異所性マウスモデルを、生理食塩水/PBSの比較参照用溶液または抗血管形成に作成したAvastin(登録商標)のいずれかを0.5mg/kg/i.p用いて、上記のように治療することができる。終了時点において、例8に記載のように血管キャストを作成し、2匹の治療済みマウス(どちらとも、0.5mg/kg/i.p.のAvastin(登録商標)による治療済み)および1匹の比較参照用マウスについて分析することができる。しかし、他の実験構成も可能である。その結果得られた血管キャストをマイクロCTスキャナを用いてスキャンし、構造的分析の例示的結果を図44〜図47に示す。これらの例において、実験終了時における平均腫瘍体積についてグループ間において有意な差は無い。.しかし、図54〜図67中に例示するように、血管密度の差が検出された。さらに、比較参照用腫瘍と、治療後腫瘍との間において、血管直径分布の差もみられた。治療後の腫瘍は、未治療の腫瘍よりも小血管直径が20%小さく、また、治療後の腫瘍は、未治療の腫瘍よりも中血管直径のパーセンテージがより高かった。どちらの治療後の動物についても、血管集合分布は一貫していた。前記比較参照用動物および治療後の動物中の腫瘍中の小(およそ21〜35μm)血管と中(およそ35〜49μm)血管との間の血管集合比は、(登録商標)による阻害剤治療後に低減し、この比は、前記治療後のグループと一貫していた。大(およそ147〜161μm)血管と中(およそ33〜77μm)血管との間の血管集合比は、Avastin(登録商標)による治療後に低下し、この比は、前記治療後のグループ内において一貫していた。
いくつかの実施形態において、標的組織(例えば、腫瘍)に対する血管新生阻害剤の効果を、本明細書中に記載の方法で評価する。血管新生阻害剤は当業者にとって周知であり、例えばAvastinおよびMacugenが一例としてあげられる。Avastin(ベバシズマブ)は、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合するモノクローナル抗体であり、多様な癌の新血管形成を抑制することが知られている。Macugenは、標的化VEGFによって抗血管形成効果に影響を与えるアプタマーである。他の血管新生阻害剤を挙げると、例えば、SDF/CXCR4シグナル経路のアンタゴニスト(例えば、Gulengら、Cancer Res.2005年7月1日;65(13):5864〜71を参照)、イソクマリン2ー(8ーヒドロキシー6ーメトキシー1ーオキソー1Hー2ーベンゾピランー3ーイル)プロピオン酸(NMー3、例えば、Agataら、Cancer Chemother Pharmacol.2005年12月;56(6):610〜4.を参照)、サリドマイドおよびサロディマイド誘導体(例えば、Dredgeら、Microvasc Res.、2005年1月;69(1〜2):56〜63を参照)、およびTNFーアルファアンタゴニスト(例えば、Feldmannら、Annu Rev Immunol.2001年;19:163〜96を参照)がある。
例10:可視化
出願人は、本明細書中に記載の多様な分析技術に基づいた可視化ツールの恩恵を理解し、この可視化ツールを開発した。例えば、出願人は、血管系の多様な形態学的フィーチャを視覚化することが可能なことによる恩恵を理解し、異なる関数および基準に従ったその評価様態を理解した。上記にて詳述したように、血管系の領域の評価は、複数の異なる尺度(例えば、上記において述べた多様な尺度(非限定的に挙げると、表1および表2中に示すもの、形態学的フィーチャのうち任意の1つまたはその組み合わせについて評価され、任意の指定基準と比較されたアイソシェルおよびホット領域分析、曲率、屈曲度、分岐密度、血管方位、血管長さなどの尺度)に応じて行うことができる。このような分析技術の結果は、多様な形態学的フィーチャを視覚化できるように表示することができ、特定の形態学的特性を含む領域を特定およびハイライトすることができ、一般的に、当該対象血管系の視覚的理解を促進するように、前記多様な分析技術のうち任意のもの(または他の任意のもの)の結果を表示することができる。
いくつかの実施形態によれば、形態学的フィーチャの1つ以上の評価を行った後、ユーザインターフェースにより、血管系の幾何学的表現の表示が可能となる。ユーザインターフェースにより、ユーザは、形態学的フィーチャを選択し、前記フィーチャの評価方法を選択し、結果の表示方法を選択することができる。例えば、ユーザは、血管密度を分析することと前記血管系の密度フィールドを視覚化することとを選択し得る。図68は、境界付けられた血管系の表面の密度フィールドの表示の一例を示し、この血管系は、図68において、マウスのラップされた心臓血管系である。この幾何学的表現は、異なる断面において視認することができ、血管系の内部を調査することができる。例えば、図69は、図68中の境界付けられた血管系の断面を示し、境界付けられた血管系の内部の密度フィールドが視覚化されている。図示のように、色(またはグレースケール)スキームを用いて、密度がより低いかまたはより高い領域を示すことができる。その結果、相対的に密度が高い領域および相対的に密度が低い領域を迅速に視覚化して、血管系の分析を促進することができる。
任意の形態学的フィーチャの値の視覚化が可能であることが理解されるべきである。例えば、図70は、血管直径を視覚化するように表示されたマウス心臓血管系の4つのビューを示し、図71は、血管直径別に表示されたマウス心臓の4つの異なる断面を示す。すなわち、異なる直径の(または直径が異なる範囲内にある)血管に異なる色を割り当てることで、異なる直径の血管の血管系内における分布様態を直感的に可視化することが可能となる。評価可能な任意の形態学的フィーチャの視覚化が可能であることが理解されるべきである。さらに、多様なフィーチャを共に視覚化することも可能である。例えば、複数の閾値を含む基準を用いて、複数の形態学的フィーチャについての基準を満たす領域を視覚化することができる。あるいは、本発明の局面はこの点において限定されないため、色分けを用いて、複数の形態学的フィーチャについて、相対的に高い値および相対的に低い値を視覚化することも可能である。
指定基準をフィルタとして用いて、前記指定基準を満たさない領域を排除および/またはハイライトすることならびに/あるいは相対的に高い値または相対的に低い値を評価されている1つ以上の形態学的フィーチャについて示すことが可能である例えば、図72は、マウス心臓血管系についての指定閾値を上回るかまたは下回る領域を決定するために用いられる閾値を示す。評価される領域は、任意の種類の情報を用いて表示可能であることが理解されるべきである。例えば、色、グレースケール、数、テクスチャなどを用いたオーバーレイを用いて、複数の形態学的フィーチャと、当該フィーチャについて評価が行われた値とを同時に視覚化することで、より豊富なデータと、前記多様な形態学的特性間の相関、クラスター間または他の挙動とをユーザが視覚化することが可能になる。評価のための基準、閾値(単数または複数)および1つ以上の形態学的フィーチャはユーザが選択可能であり、これにより、前記ユーザは、腫瘍の形態をリアルタイムで調査および探索することが可能となる。
例10:2D分析
出願人は、領域(例えば、ラップされた3D領域)内の血管情報(例えば、血管ジオメトリ)を、前記領域を貫通する1つ以上の2Dスライスを用いて分析することが可能であることを理解している。前記スライスは、ランダムでよいし、あるいは、1つ以上の所定の基準(例えば、対象構造(例えば、母血管、ラップエッジ部など、またはその任意の組み合わせ)からの近隣度または距離)に基づいて選択してもよいことが理解されるべきである。2Dスライスの画像の一例を図29に示す。2Dスライス内のフィーチャを本明細書中に記載のように評価することができる。非限定的な実施形態において、(例えば、本明細書中に記載の任意の適切な技術を用いて)前記スライス内の総微小血管密度を決定することができる。一例において、異なるスライスにおいて測定されたマウス心臓の平均微小血管密度は約15%(例えば、約13%〜約16%)である。いくつかの実施形態において、心臓血管状態に関連する疾患モデル、治療モデルなどの比較の際の基準としてこの数値を利用することができる。他の器官および/または対象について類似の数値を得ることが可能であり、本明細書中に記載のような基準として利用することができるいくつかの実施形態において、血管密度は、血管系の体積または面積の数値、パーセンテージ、または血管のパーセンテージ(または他の尺度)の分布として分析することができる。この分布は、血管直径の関数として用いられる。いくつかの実施形態において、血管密度の分析を、血管系の体積または面積の数値、パーセンテージまたは血管のパーセンテージ(または他の尺度)をビンの関数として(例えば、血管直径の規定範囲として)ビニングすることにより、行うことができる。これらのビンは、血管直径、血管断面などまたは任意の他の尺度に基づき得る。任意の適切な範囲が利用可能である。範囲は、均一であってもよいし、あるいはビンによって異なるサイズであってもよい(例えば、一連の断面積が0〜2.96、2.96〜5.91、5.91〜8.87、8.87〜11.8、11.8〜14.8、14.8〜17.7、17.7〜20.7、20.7〜23.6、23.6〜26.6、26.6〜29.6、29.6〜32.5平方/umなど)。しかし、本発明の局面はこの点に限定されないため、任意の適切な範囲およびサイズが分析において利用可能である。
例10:ホットスポット分析
出願人は、領域(例えば、ラップされた3D領域)内の血管情報(例えば、血管ジオメトリに基づいたもの)を分析することで、1つ以上のホットスポットを特定することが可能であることを理解している。例えば、ポーカーチップの閾値を、腫瘍の単位体積内のホットスポットの閾値として特定することができる。その後、ホットスポットによって表現されている腫瘍血管系の相対量(例えば、パーセンテージ)を決定することができる。この値を用いて、(例えば、診断目的または予後目的のために)腫瘍を評価することまたは治療に対する腫瘍の反応を評価することが可能となる。非限定的例において、ホットスポットは、10,000個を超えるポーカーチップを含む立方ミリメートルとして規定することができる。図73および図74は、ホットスポット領域によって表されたパーセンテージ(例えば、腫瘍体積内の単位体積のパーセンテージのうち、ホットスポットを規定する閾値を超えるもおの)をマウス腫瘍モデル内においてAvastin治療に対する反応について評価する実験を示す。H1975細胞を用いて、マウス腫瘍モデルを生成した。Avastin治療を与えたマウス(本明細書中に記載のようにAvastinを10日間与えたもの)と、Avastin治療を与えなかったマウスとについて比較した。分析した腫瘍は、およそ100立方mmのサイズとした。図73は、実験期間中においてホットスポット領域の平均パーセンテージが低下している様子を示す。図74は、個々の例を示す。この変化(または約40%から約10%へのパーセンテージの変化)をAvastinへの反応に関するマーカーとして利用することができ、他の候補分子をこれと比較することで、当該候補分子の効果を決定することができることが理解されるべきである。
本明細書中に記載のように、ホットスポット領域内の血管系のさらなる分析が行われ得る。ホットスポット血管系について分析可能なフィーチャの例を挙げると、3D総密度、3DMVD、3DMVD分布(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、3DビニングMVD(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、血管表面(例えば、総計または他の尺度)、血管表面分布(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、血管集合分布(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、血管密度平均分布(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、2D総密度、2DMVD、2DMVD分布(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、2DビニングMVD(例えば、血管直径、断面、または他の尺度の関数としてのもの)、あるいはその任意の組み合わせのうち1つ以上がある。本明細書中に記載の他の任意の形態学的特性を単独または組み合わせて用いた場合も、本明細書中に記載のようなホットスポット領域内の血管系の評価を行うことが可能であることが理解されるべきである。
以下の考慮は、特定の例および本明細書中の明細書全体(例えば、要旨、詳細な説明および請求項)に適用される。キャストは、in situ血管と同様に3次元構造であることが理解されるべきである。従って、本明細書中に記載の画像化技術および分析技術により、3次元構造的特性に関する情報を得ることができる。いくつかの実施形態において、血管キャストおよび/またはin situ血管の3次元表現を生成するための技術が用いられる。いくつかの実施形態において、血管キャストおよび/またはin situ血管の3次元画像を生成するための技術が用いられる。3次元表現および/または画像は、本明細書中に記載のように分析することが可能である。
しかし、本発明の局面は3次元構造的特性に限定されないことが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、血管キャストおよび/またはin situ血管の局面を1次元または2次元で表現および/または画像化し、本明細書中に記載のように1次元または2次元のフィーチャの分析を実行および利用することができる。また、本明細書中に記載の構造的フィーチャの測定または定量化は、任意の適切な単位(例えば、数、長さまたは距離、角度、パーセンテージなど、またはその任意の組み合わせ(例えば、体積または面積の関数としての、これらの単位のうち任意の))を用いて行うことができることをも理解されるべきである。同様に、血管の経時的変化または治療による変化は、これらの構造的フィーチャのうち1つ以上の増加または低減を含み得ることが理解されるべきである。例えば、血管新生と関連付けられた構造の増加は、特定の疾患進行と関連付けられ得る。これとは対照的に、血管新生と関連付けられた構造の低減は、(例えば、治療による)疾患退行と関連付けられ得る。
また、対象領域内の血管パラメータの定量的値の分布の入手に関連する本明細書中の記述は好適には、当該分析に用いられた検出技術に基づいた、対象領域内の検出可能な血管のうち全てまたは実質的全てを検出および定量化する方法に基づいていることも理解されるべきである。技術が異なれば、効率も異なり得る。しかし、プロフィールおよび比較は好適には、同一のまたは相当する検出技術および/または再構成技術からのデータに基づくとよい。本明細書中に記載の比較および/または分析は、1つ以上の標準的統計技術を用いて、本明細書中に記載の構造またはパターンまたは他の特性の変化(例えば、経時増加または低減、あるいは治療薬剤への反応)あるいは本明細書中に記載の2つの構造またはパターンまたは他の特性間の差または類似度が統計的に有意であるか否かを決定するための統計分析を含み得ることも理解されるべきである。
上記のように、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの局面について説明してきたが、当業者であれば、多様な変更、修正および向上を想起するiことが理解されるべきである。このような変更、修正および向上は、本発明の意図および範囲内におさまるものであることが意図される。本明細書中に記載の方法(例えば、PCTUS2005/047081およびPCTUS2007/026048中に記載の分析技術(本明細書中、同文献の開示内容全体を参考のため援用する))に従って、任意の適切な分析技術を灌流組織および器官に対して用いることができる。従って、上記の記述および実施形態はひとえに例示的なものである。異なる開示内容間に矛盾がある場合、本出願の開示内容を優先するものとする。
上記から、本明細書中に記載の本発明の多数の局面は、相互に独立して利用することもできるし、あるいは、任意に組み合わせて利用することもかのうであることが理解されるべきである。詳細には、本明細書中に記載の動作のうち任意のものを、多数の組み合わせおよび手順のうち任意のものにおいて利用することができる。加えて、本発明の局面は、多様な種類の画像または任意の次元と関連して利用することが可能である。さらに、本発明の局面はこの点において限定されないため、1つ以上の自動動作を1つ以上の手作業動作と組み合わせて利用することが可能である。しかし、入手された分布分析を用いて、組織の多様な形態学的変化のうちの任意のものの特徴付けの促進および/または本明細書中に技術のうち任意のものを単独または組み合わせて利用して治療有効性の評価を支援することが可能である。
本明細書中に記載の本発明の実施形態は、多数の様態のうち任意の様態で実行することが可能である。例えば、自動分布分析の実施形態を、ハードウェア、ソフトウェアまたはその組み合わせを用いて実行することができる。ソフトウェアで実行する場合、単一のコンピュータ中に設けられたソフトウェアまたは複数のコンピュータ間に分散したソフトウェアに関わらず、ソフトウェアコードを任意の適切なプロセッサまたはプロセッサ集合上において実行することができる。本明細書中に記載の機能を行う任意のコンポーネントまたはコンポーネント集合は、本明細書中に記載の機能を制御する1つ以上のコントローラとして主にみなすことができることが理解されるべきである。これらの1つ以上のコントローラは、多数の様態において(例えば、マイクロコードまたはソフトウェアを用いて本明細書中に記載の機能を行うようにプログラムされた、専用ハードウェアまたは汎用目的ハードウェア(例えば、1つ以上のプロセッサ)によって)実行可能である。
本明細書中に概要を示した多様な方法は、多様なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちの任意の1つを用いた1つ以上のプロセッサ上において実行可能なソフトウェアとしてコード化することが可能であることが理解されるべきである。さらに、このようなソフトウェアは、複数の適切なプログラミング言語および/または従来のプログラミングツールまたはスクリプト記述ツールのうち任意のものを用いて記述することができ、実行可能な機械語コードとしてコンパイルすることも可能である。本発明の一実施形態は、1つ以上のプログラムでコード化された、非一時的なコンピュータで読み出し可能な媒体または複数のコンピュータで読み出し可能なメディア(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のウhリッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープなど)に向けられることが理解されるべきである。これらのプログラムが1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサ上において実行されると、これらの領域上プログラムは、本明細書中に記載の本発明の多様な実施形態を実行する方法を行う。
前記コンピュータで読み出し可能な媒体(単数または複数)は可搬型であり、これにより、当該媒体上に保存されたプログラムまたはプログラムを1つ以上の異なるコンピュータまたは他のプロセッサにロードして、本明細書中に記載のような本発明の多様な実施形態を実行することができる。「プログラム」という用語は、本明細書中において一般的な意味において用いられ、本明細書中に記載のような本発明の多様な実施形態を実行するようにコンピュータまたは他のプロセッサをプログラムする際に利用することが可能な任意の種類のコンピュータコードまたは命令の集合を指すことが理解されるべきである。さらに、この実施形態の一局面によれば、実行された際に本発明の方法を行う1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサ上に常駐する必要はなく、複数の異なるコンピュータまたはプロセッサ間にモジュール的に分散させて、本発明の多様な局面を実行することも可能であることが理解されるべきである。
請求項中の「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の利用は、請求項要素を変更するためのものであり、この用語自体は任意の優先、先行、または方法の行為を行う際の請求項要素間の時間的順位を暗示するものではなく、特定名称を有する請求項要素をefrom同一名称を有する別の要素と区別するための単なるラベルとして、請求項要素を区別するための(序数用語として)用いられるものである。また、本明細書中用いられる用語および専門用語は記述目的のためのものであり、限定的なものとしてみなされるべきではない。「含む」、「含む」または「有する」、「含む」、「含む」ならびに本明細書中のその変形利用は、以下に羅列するアイテムおよびその均等物ならびにさらなるアイテムを包含することを意図する。
関連用途
この出願は、米国仮出願シリアル番号第61/209,386号(名称:「Vascular Biomarkers for Diagnostic and Therapeutic Use」、出願日:2009年3月6日)からの、35U.S.C.§119(e)下の恩恵を主張する。本明細書中、同文献の開示内容全体を参考のため援用する.