以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る分光測定装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態による分光測定装置1Aは、照射光供給部10と、積分球20と、分光分析装置30と、デュワ筐体40と、デュワ50と、データ解析装置90とを備え、発光材料などの試料Sに対して所定波長の励起光を照射し、フォトルミネッセンス法によって試料Sの蛍光特性などの発光特性を測定、評価することが可能なように構成されている。
照射光供給部10は、測定対象の試料Sが収容された積分球20の内部へと供給される照射光として、試料Sの発光特性を測定するための励起光を供給する照射光供給手段である。図1においては、照射光供給部10は、照射光源11と、照射光源11からの光を積分球20へと導くライトガイド13とによって構成されている。照射光供給部10において、照射光源11と、ライトガイド13との間には波長切替部12が設置されている。これにより、本構成例の照射光供給部10は、積分球20への照射光を、所定波長の励起光と、所定の波長範囲での光成分を含む光(以下、白色光という)とで切り替えることが可能に構成され、励起光供給手段及び白色光供給手段として機能するようになっている。
照射光供給部10の具体的な構成例としては、照射光源11として白色光源を用いるとともに、波長切替部12において照射光源11から供給される光のうちで所定の波長範囲内の光成分のみを選択してライトガイド13へと通過させる波長選択手段を設ける構成を用いることができる。この場合、波長切替部12において波長選択をOFFとした場合、積分球20への照射光は白色光となり、波長選択をONとした場合、積分球20への照射光は所定波長の励起光となる。波長選択手段としては、具体的には例えば分光フィルタ、あるいは分光器等を用いることができる。
積分球20は、内部に配置される試料Sの発光特性の測定に用いられるものであり、試料Sに照射される励起光を積分球20内に入射するための入射開口部21と、試料Sからの被測定光を外部へと出射するための出射開口部22と、積分球20の内部に試料Sを導入するための第1試料導入開口部23とを有して構成されている。第1試料導入開口部23にはデュワ筐体40が取付ねじにより着脱可能に取付けられている。
積分球20の入射開口部21には、照射光入射用のライトガイド13の出射端部が固定されている。ライトガイド13としては、例えば光ファイバを用いることができる。積分球20の出射開口部22には、試料Sからの被測定光を後段の分光分析装置30へと導光するライトガイド25の入射端部が固定されている。ライトガイド25としては、例えばシングルファイバ、またはバンドルファイバを用いることができる。
分光分析装置30は、積分球20の出射開口部22からライトガイド25を介して出射された試料Sからの被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得するための分光手段である。本構成例においては、分光分析装置30は、分光部31と、分光データ生成部32とを有するマルチチャンネル分光器として構成されている。
分光部31は、被測定光を波長成分に分解する分光器と、分光器からの光を検出する光検出器とによって構成されている。光検出器としては、例えば波長分解された被測定光の各波長成分を検出するための複数チャンネル(例えば1024チャンネル)の画素が1次元に配列されたCCDリニアセンサを用いることができる。分光部31による測定波長領域は、具体的な構成等に応じて適宜に設定して良いが、例えば300nm〜950nmである。分光データ生成部32は、分光部31の光検出器の各チャンネルから出力される検出信号に必要な信号処理を行って、被測定光の分光データである波長スペクトルのデータを生成する分光データ生成手段である。分光データ生成部32で生成、取得された波長スペクトルのデータは、後段のデータ解析装置90へと出力される。
データ解析装置90は、分光分析装置30によって取得された波長スペクトルに対して必要なデータ解析を行って、試料Sについての情報を取得するデータ解析手段である。解析装置90での具体的なデータ解析の内容については後述する。データ解析装置90には、データ解析等についての指示の入力、解析条件の入力等に用いられる入力装置97と、データ解析結果の表示等に用いられる表示装置98とが接続されている。
続いて、図2〜図6を参照して、図1に示した分光測定装置1Aに用いられる積分球20、デュワ筐体40、及びデュワ50の構成について説明する。図2は、図1に示した分光測定装置1Aに用いられる積分球20及びデュワ筐体40の構成の一例を示す斜視図である。図3〜図6は、積分球20、デュワ筐体40、及びデュワ50の構成の一例を示す断面図であり、励起光の照射光軸Lに沿った断面での積分球20、デュワ筐体40、及びデュワ50の構成を示している。図3及び図5における断面と図4及び図6における断面とは直交している。
本構成例における積分球20は、取付ねじ285によって架台280に取り付けられた積分球本体200を備えている。架台280は、互いに直交する2つの接地面281、282を有するL字形状に形成されている。照射光軸Lは、積分球本体200の中心位置を通り、接地面281に平行で接地面282に直交する方向に伸びている。
積分球本体200には、図1に示した入射開口部21、出射開口部22、及び第1試料導入開口部23が設けられている。入射開口部21は、光軸Lの一方側の積分球本体200の所定位置(図中の左側の位置)に設けられている。出射開口部22は、積分球本体200の中心位置を通り光軸Lに直交する面上の所定位置に設けられている。第1試料導入開口部23は、積分球本体200の中心位置を通り光軸Lに直交する面上で中心位置からみて出射開口部22とは90°ずれた位置(図中の上側の位置)に設けられている。
図3に示す構成例では、第1試料導入開口部23に加えて、第2試料導入開口部24が設けられている。第2試料導入開口部24は、光軸Lの他方側であって入射開口部21と対向する位置(図中の右側の位置)に設けられている。第2試料導入開口部24には、試料を載置するための試料ホルダ240が取り付けられている。
入射開口部21には、照射光入射用のライトガイド13を接続するためのライトガイドホルダ210が挿入されて取り付けられている。出射開口部22には、被測定光出射用のライトガイド25を接続するためのライトガイドホルダ220が挿入されて取り付けられている。図2〜図6においては、ライトガイド13、25の図示を省略している。
デュワ筐体40内には、積分球20内で試料Sを所定位置に保持する試料ホルダ80と、試料ホルダ80に保持された試料Sを冷却するためのデュワ50と、が設けられている。試料ホルダ80は、一端が閉じられた管状の部材である。デュワ50は、試料Sを冷却する冷媒(例えば、液体窒素等)を保持するためのものであり、一端が閉じられた略管状の容器である。デュワ50は、真空層を有する断熱二重構造となっている。試料ホルダ80は、デュワ50の内側に位置決めされて配置されている。デュワ50は、第1の内径を有し且つ他端側に位置する第1容器部50aと、第1の内径より小さい第2の内径を有し且つ一端側に位置する第2容器部50bと、を有している。
第2の内径は、試料ホルダ80の外径よりも大きく設定されており、試料ホルダ80がデュワ50内に配置された状態では、第2容器部50bと試料ホルダ80との間に空間が形成される。第2容器部50bと試料ホルダ80との間に空間に冷媒が存在することにより、試料ホルダ80の一端側に保持されている試料Sが冷却されることとなる。
デュワ筐体40は、内部にデュワ50を収容する空間を有する部材であって、第1ケース41、第2ケース43、第1蓋板45、及び第2蓋板47を有している。第1ケース41は、筒状(本実施形態では、円筒状)の胴部41aと胴部41aの一端側に位置する底部41bとからなり、有底状の部材である。底部41bには、その中央部分に開口部42が形成されている。第1蓋板45は、第1ケース41の底部41bに取付ねじ51によって着脱可能に取付けられており、底部41bに形成されている開口部42を閉塞する。
第2ケース43は、両端が開口した筒状(本実施形態では、円筒状)の胴部43aからなる。第1ケース41と第2ケース43とは、取付ねじ52によって着脱可能に取付けられ、互いの他端側が当接した状態で固定されている。第2蓋板47は、第2ケース43の一端に取付ねじ53によって着脱可能に取付けられており、当該一端における開口を閉塞する。第2蓋板47の中央部分には、第1試料導入開口部23に連通するように、デュワ50の第2容器部50bを挿通するための開口部48が形成されている。第2蓋板47には、図7に示されるように、デュワ筐体40内に溜まった水を排出するための排水開口部49が形成されている。排水開口部49は、通常、ねじ54により閉塞されている。
デュワ50は、第1ケース41及び第2ケース43の内周面に所定間隔を有して設けられた複数のスペーサ70により、径方向での位置決めがなされている。各スペーサ70により、第1ケース41及び第2ケース43の内周面とデュワ50の第1容器部50aの外周面との間に、所定の間隙G1が形成されている。
第2蓋板47には、デュワ50を支持する支持台61が取付ねじ55によって着脱可能に取付けられている。支持台61は、略円柱状の部材であって、その中央部分には、第2蓋板47に形成された開口部48に連通するように、デュワ50の第2容器部50bを挿通するための貫通孔62が形成されている。第2ケース43の内周面と支持台61の外周面との間には、所定の間隙G2が形成されている。第2蓋板47と支持台61との間には、貫通孔62を囲むように、環状のパッキン(不図示)が設けられている。このパッキンが第2蓋板47と支持台61とに挟み込まれることで、第2蓋板47と支持台61との間の水密化が図られている。
支持台61には、第2蓋板47に取付けられて当接する第1面61aに対向する第2面61bに、当該第2面61bから突出する突出部63が設けられている。突出部63は、貫通孔62の外側を囲むように、貫通孔62の中心軸方向から見てリング状に形成されている。突出部63は、デュワ50と接触することにより、デュワ50の挿入方向での位置を規定する。支持台61の第2面61bとデュワ50とは、突出部63の高さ分だけ隔てられており、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に所定の間隙G3が形成されている。支持台61とデュワ50との間には、突出部63を囲むように、環状のパッキン(不図示)が設けられている。このパッキンが支持台61とデュワ50とに挟み込まれることで、支持台61とデュワ50との間の水密化が図られている。
支持台61には、第2ケース43の内周面と支持台61の外周面との間に形成されている所定の間隙G2と、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に形成されている所定の間隙G3と、を連通する連通路64が複数形成されている。各連通路64は、貫通孔62の中心軸周りに等角度間隔(例えば、略90°間隔)で配置されている。連通路64は、支持台61の外周面に開口し且つ支持台61の外周面から支持台61の径方向に伸びる第1通路部分65と、当該第1通路部分65から貫通孔62の中心軸と平行な方向に伸び且つ第2面61bに開口する第2通路部分66と、からなる。
デュワ50の第2容器部50bの外周と支持台61に形成された貫通孔62の内周面との間、第2容器部50bの外周と第2蓋板47に形成された開口部48の内周面との間、及び、第2容器部50bの外周と第1試料導入開口部23の内周面との間には、それぞれ所定の間隙G4,G5,G6が形成されている。これらの間隙G4,G5,G6は、互いに連通すると共に、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に所定の間隙G3及び積分球20内の空間とも連通している。これらにより、デュワ50内の空間は、支持台61に形成された複数の連通路64、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に形成されている所定の間隙G3、第2容器部50bの外周と貫通孔62の内周面との間に形成されている所定の間隙G4、第2容器部50bの外周と第2蓋板47の開口部48の内周面との間に形成されている所定の間隙G5、及び、第2容器部50bの外周と第1試料導入開口部23の内周面との間に形成されている所定の間隙G6を通して積分球20内の空間と連通している。
第2容器部50bの長さは、デュワ50が支持台61の接触面に当接している状態で第2容器部50bの先端部分が積分球20内に所定長さ分突出するように設定されている。詳細には、デュワ50内に位置決めされた試料ホルダ80に保持されている試料Sが積分球20内に位置するように、第2容器部50bの長さが設定されている。これにより、デュワ50の第2容器部50bの先端部分が積分球20内に露出することとなる。
デュワ50及び試料ホルダ80は、励起光及び被測定光を含む光を透過する材質で形成されていることが好ましく、例えば合成石英ガラス製の光学セルが好適に用いられる。
第1試料導入開口部23及び試料ホルダ80は、例えば発光材料が溶解された溶液が試料Sである場合に好適に用いることができる。試料Sが固形試料、粉末試料等である場合にも、このような試料ホルダ80を用いることができる。第2試料導入開口部24及び試料ホルダ240は、例えば試料Sが固形試料、粉末試料である場合に好適に用いることができる。この場合、試料ホルダとして、例えば試料保持基板、あるいはシャーレ等が用いられる。
これらの試料ホルダ80,240は、試料Sの種類、分光測定の内容等に応じて使い分けられる。試料ホルダ80を用いる場合、光軸Lが水平線に沿うように架台280の接地面281を下にした状態で積分球20がセットされる。試料ホルダ240を用いる場合、光軸Lが鉛直線に沿うように架台280の接地面282を下にした状態で積分球20がセットされる。以下においては、試料ホルダ80を用いて試料Sの分光測定を実行する場合について説明する。
照射光入射用のライトガイド13は、ライトガイドホルダ210のライトガイド保持部211によって位置決めされた状態で保持されている。照射光源11(図1参照)からの光は、ライトガイド13によって積分球20へと導光され、ライトガイドホルダ210内に設置された集光レンズ212によって集光されつつ、試料ホルダ80内に照射される。本実施形態では、試料ホルダ80の試料Sを保持している部分が、励起光の入射開口部21からの光路から外れた箇所に位置している。被測定光出射用のライトガイド25は、ライトガイドホルダ220によって位置決めされた状態で保持されている。
照射光供給部10からの照射光として所定波長の励起光が供給された場合、励起光が照射された試料Sからの光は、積分球本体200の内壁に塗布された高拡散反射粉末(例えば、スペクトラロン(登録商標)や硫酸バリウム等)によって多重拡散反射される。拡散反射された光は、ライトガイドホルダ220に接続されたライトガイド25に入射されて、被測定光として分光分析装置30へと導かれる。これによって、試料Sからの被測定光について分光測定が行われる。被測定光となる試料Sからの光としては、励起光の照射によって試料Sで生じた蛍光などの発光、及び励起光のうちで試料Sで散乱、反射等された光成分がある。
図8は、図1に示した分光測定装置1Aに用いられるデータ解析装置90の構成の一例を示すブロック図である。本構成例におけるデータ解析装置90は、分光データ入力部91と、試料情報解析部92と、補正データ取得部93と、解析データ出力部96とを有して構成されている。また、本構成例のデータ解析装置90では、補正データ取得部93に対して、補正データ算出部94と、補正データ記憶部95とが設けられている。
分光データ入力部91は、分光分析装置30によって分光データとして取得された波長スペクトルなどのデータを入力する入力手段である。入力部91から入力された分光データは、試料情報解析部92へと送られる。解析部92は、入力された波長スペクトルを解析して、試料Sについての情報を取得する試料情報解析手段である。補正データ取得部93は、積分球20内で試料ホルダ80に試料Sが保持される上記構成に対し、試料ホルダ80による光の吸収、具体的には励起光または試料Sからの発光の少なくとも一方の吸収を考慮して波長スペクトルを補正するための補正データを取得する補正データ取得手段である。解析部92は、補正データ取得部93で取得された補正データによって波長スペクトルを補正するとともに、補正された波長スペクトルを解析して、PL法による発光量子収率などの試料Sの情報を取得する。
波長スペクトルの補正データは、例えば補正データ算出部94から取得することができる。算出部94は、所定条件で実行された補正データ導出用の測定結果の波長スペクトルを参照し、それに基づいて補正データを算出する補正データ算出手段である。具体的な補正データの算出方法については後述する。波長スペクトルの補正データがあらかじめ求められている場合には、補正データを補正データ記憶部95に記憶しておき、必要に応じて補正データ取得部93が補正データを読み出して取得する構成とすることも可能である。この場合、補正データ算出部94を設けない構成としても良い。補正データ算出部94で算出された補正データを補正データ記憶部95に記憶し、必要に応じて補正データ取得部93がその補正データを読み出す構成としても良い。
解析データ出力部96は、試料情報解析部92において解析が行われた試料情報の解析結果を出力する出力手段である。解析結果のデータが出力部96を介して表示装置98へと出力されると、表示装置98は、その解析結果を操作者に対して所定の表示画面で表示する。解析結果の出力先については、表示装置98に限らず、他の装置にデータを出力しても良い。図8の構成では、出力部96に対して、表示装置98に加えて外部装置99が接続された構成を示している。外部装置99としては、例えば印刷装置、外部記憶装置、他の端末装置などが挙げられる。
図1〜図7に示した分光測定装置1Aにおいては、励起光入射用の開口部21、及び被測定光出射用の開口部22が設けられてPL法による試料Sの発光特性の測定が可能に構成された積分球20と、励起光及び試料Sからの発光を波長スペクトルによって区別可能なように被測定光を分光測定する分光分析装置30とを用いて分光測定装置1Aを構成する。そして、積分球20内で試料Sを保持する試料ホルダ80について、解析装置90において試料容器による光の吸収が考慮された補正データを用意し、この補正データによって波長スペクトルを補正した上で、波長スペクトルの解析及び試料情報の導出を行っている。これにより、試料ホルダ80による光の吸収の影響が無視できない場合でも、発光量子収率等の解析結果に生じる誤差を抑制して、試料Sの分光測定を好適かつ精度良く行うことが可能となる。
ところで、本実施形態では、図9及び図10に示されるように、デュワ50に保持された冷媒Rにより試料Sが冷却されている状態で測定を行なうことができる。例えば、冷媒Rとして液体窒素を用いた場合には、液体窒素温度(略−196℃)付近での試料Sの分光測定が可能となる。このように、本実施形態によれば、冷媒Rを保持するデュワ50を用いているので、試料Sを簡便且つ効率良く冷却することができる。
測定の際に、デュワ50に保持されている冷媒Rは気化し、冷媒Rの気化により、比較的低温で且つ乾燥したガスが発生する。冷媒Rから発生したガスは、図9及び図10において矢印にて示されるように、第1ケース41及び第2ケース43の内周面と第1容器部50aの外周面との間に形成されている所定の間隙G1、第2ケース43の内周面と支持台61の外周面との間に形成されている所定の間隙G2、支持台61に形成された複数の連通路64、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に形成されている所定の間隙G3、第2容器部50bの外周と貫通孔62の内周面との間に形成されている所定の間隙G4、第2容器部50bの外周と第2蓋板47の開口部48の内周面との間に形成されている所定の間隙G5、及び、第2容器部50bの外周と第1試料導入開口部23の内周面との間に形成されている所定の間隙G6を通って、積分球20内に導入される。すなわち、これらの間隙G1〜G6及び連通路64は、デュワ50に保持された冷媒Rから発生したガスを積分球20内に導入するガス導入路として機能する。そして、積分球20内に導入されたガスは、積分球20内の水分を吸収し、積分球20内の温度を低下させる。
したがって、本実施形態によれば、積分球20内は、冷媒Rから発生したガスにより、比較的低温で且つ乾燥した環境下にあり、デュワ50の第2容器部50bにおける積分球20内に露出している部分に結露が生じるのを防ぐことができる。
本実施形態では、冷媒Rから発生したガスは、第2容器部50bの外周と第1試料導入開口部23の内周面との間に形成されている所定の間隙G6から積分球20内に流れ込むため、デュワ50の第2容器部50bにおける積分球20内に露出している部分に沿って流れることとなる。このガスの流れは、第2容器部50bにおける積分球20内に露出している部分近傍の雰囲気温度及び湿度を積極的に低下させる。これにより、第2容器部50bにおける積分球20内に露出している部分に結露が生じるのをより一層確実に防ぐことができる。
積分球20は、基本的には、光が漏れ得ない構造とされているものの、入射開口部21や出射開口部22等には気体が通り得る僅かな間隙が存在している。このため、積分球20内の水分を吸収したガスは、入射開口部21や出射開口部22等に存在している僅かな間隙から積分球20外に排出される。ところで、積分球20内の水分を吸収したガスを積分球20外に排出する排出開口部を別途設けても良い。しかしながら、積分球20を光が漏れ得ない構成とする要請から、入射開口部21や出射開口部22等に存在する上述した僅かな間隙からガスを排出する構成を採用することが好ましい。
本実施形態では、上述したように、冷媒Rから発生したガスは、デュワ筐体40内において、第1ケース41及び第2ケース43の内周面と第1容器部50aの外周面との間に形成されている所定の間隙G1を流れる。これにより、第1容器部50aの外周面近傍の雰囲気温度及び湿度も低下することとなり、第1容器部50aの外周面等に結露が生じるのを防ぐこともできる。万が一、第1容器部50aの外周面等に結露が生じ、デュワ筐体40内に水が溜まった場合でも、パッキン71,72により第2蓋板47と支持台61との間及び支持台61とデュワ50との間の水密化が図られているので、積分球20内に水が浸入するのを防ぐことができる。また、連通路64が第1通路部分65と第2通路部分66とからなることから、水が連通路64を通して積分球20内へ浸入し難い。デュワ筐体40内に溜まっている水は、排水開口部49から排出される。
本実施形態では、デュワ50の積分球20から露出している第1容器部50aがデュワ筐体40で覆われている。これにより、冷媒Rから発生したガスが装置外に放散されてしまうのを防ぎ、当該ガスを効率良く積分球20内に導くことができる。また、本実施形態では、デュワ筐体40が上述したガス導入路の一部を構成している。これにより、上述したガス導入路の設置を確実且つ簡易に行なうことができる。
本実施形態では、試料Sを収容すると共にデュワ50内に配置された試料ホルダ80が備えられている。これにより、試料Sが冷媒Rに接することなく、確実に冷却することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
本実施形態では、デュワ50を収容するデュワ筐体40が設けられているが、デュワ筐体40は必ずしも必要ではない。デュワ筐体40が存在しない場合、デュワ50と積分球20とをパイプ等により接続し、当該パイプ等により冷媒Rから発生したガスを積分球20内に導入してもよい。
本実施形態では、デュワ筐体40と積分球20とを、支持台61に形成された複数の連通路64、支持台61の第2面61bとデュワ50との間に形成されている所定の間隙G3、第2容器部50bの外周と貫通孔62の内周面との間に形成されている所定の間隙G4、第2容器部50bの外周と第2蓋板47の開口部48の内周面との間に形成されている所定の間隙G5、及び、第2容器部50bの外周と第1試料導入開口部23の内周面との間に形成されている所定の間隙G6を通して接続しているが、これに限られない。デュワ筐体40と積分球20とをパイプ等により接続し、当該パイプ等により冷媒Rから発生したガスをデュワ筐体40内から積分球20内に導入してもよい。
本実施形態では、冷媒Rの気化により発生したガスを積分球20内に導入しているが、当該ガスの導入と共に、乾燥ガスを積分球20内に導入してもよい。例えば、図11及び図12に示されるように、デュワ筐体40(例えば、第1ケース41)に乾燥ガスを導入する導入開口部75を設け、当該導入開口部75に乾燥ガス送出部76からのガス通路77を接続しても良い。この場合、乾燥ガスは、冷媒Rから発生したガスと共に積分球20内に導入される。すなわち、冷媒Rから発生したガスを積分球20内に導入するガス導入路が乾燥ガスを積分球20内に導入するガス導入路として機能することとなる。なお、乾燥ガスを積分球20内に導入するガス導入路と冷媒Rから発生したガスを積分球20内に導入するガス導入路とを別経路とし、乾燥ガスを積分球20内に直接導入しても良い。乾燥ガスとしては、例えば窒素ガスやヘリウムガス等を用いることができる。
本実施形態では、図13に示されるように、デュワ50に保持される冷媒Rの温度をチラー101により調節しても良い。この場合、任意の温度での試料Sの分光測定が可能となる。チラー101との接続は、デュワ筐体40(例えば、第1ケース41及び第1蓋板45)にチューブコネクタ103を設け、このチューブコネクタ103にチューブ105を接続することにより実現できる。
連通路64の第1通路部分65は、図14に示されるように、第2通路部分66との接続箇所から支持台61の外周面への開口箇所に向かって下方に傾斜するように形成されていてもよい。この場合、連通路64内にて発生した水滴が支持台61外に排出され易い。第2通路部分66は、貫通孔62の中心軸と平行な方向に伸びるように形成されている必要はなく、貫通孔62の中心軸と平行な方向に対して傾斜するように形成されていてもよい。