JP5611582B2 - 電気的中性物質の分離方法、及び電気的中性物質の分離装置 - Google Patents

電気的中性物質の分離方法、及び電気的中性物質の分離装置 Download PDF

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Description

本発明は、液体中に含まれる固形物質、コロイド、細胞、生命体などの電気的に中性な物質を分離する方法及び装置に関する。
μmオーダーの微小物質の分離に関してはこれまで多くの手法が提案され実用化されている。たとえばイオン状のものであればイオン交換樹脂による方法、電気泳動を利用した方法などが汎用されており、微粒子であれば、膜分離法、金属フィルター法、遠心分離法、沈降分離法などが汎用されている。また、分子状であれば蒸留法、抽出法、昇析法などが汎用されている。
しかしながら、μmオーダーよりも小さい微小物質の分離は困難であり、特に電気的に中性な物質の分離は極めて困難である。従来、このような中性の微小物質は、膜分離法やイオン交換樹脂を用いて分離していた。しかしながら、膜分離法においては、膜を通過させるに際して大きな圧力が必要となり、分離装置が大型化してしまうという課題があった。一方、イオン交換樹脂を用いた場合は、微小物質がイオン性でなく中性であることから、樹脂中に捕捉することが困難であるという課題があった。
このような課題に鑑みて、特許文献1においては、強電界の下に2種以上の例えば生体成分分子を配置し、これら2種以上の生体成分分子を誘電泳動によって相互に分離する技術が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3においては、電極対に高周波を印加することによって、溶液中に含まれる微粒子を誘電泳動によって分離する技術が開示されている。
しかしながら、これらの方法によっても、溶液中の特にμmオーダーよりも小さい電気的に中性な物質の分離は極めて困難であった。
特開2001−165905号 特開2003−66004号 特開2003−200081号
本発明は、液体中に含まれる固形物質、コロイド、細胞、生命体などの電気的に中性な物質を、高効率で分離する新規な方法及び装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明は、
電気的に中性な物質を分離する方法であって、不平等電場を生ぜしめるように構成された、少なくとも相対向する一対の電極を有する分離容器を準備するステップと、前記少なくとも一対の電極に対して高周波電場を印加し、前記少なくとも一対の電極間に前記不平等電場を生ぜしめるステップと、前記分離容器内に、前記中性な物質を含む溶液を導入して流し、前記物質に対して前記不平等電場を印加することにより、前記物質に対して誘電泳動を生ぜしめ、前記溶液から前記物質を分離するステップとを具え、前記少なくとも一対の電極は4重極以上の複数の多重電極であって、これら複数の多重電極を前記分離容器中で、前記溶液の流れの方向において、電極数が多い順に少なくとも2以上配列させたことを特徴とする、電気的中性物質の分離方法に関する。
また、本発明は、
電気的に中性な物質を分離する装置であって、不平等電場を生ぜしめるように構成された、少なくとも相対向する一対の電極と、前記一対の電極に対して高周波電場を印加するための電源と、前記少なくとも一対の電極を収納し、分離に供する前記中性な物質を含む溶液を導入して流し、前記物質に対して前記不平等電場を印加することにより、前記物質に対して誘電泳動を生ぜしめ、前記溶液から前記物質を分離するための分離容器とを具え、前記少なくとも一対の電極は4重極以上の複数の多重電極であって、これら複数の多重電極を前記分離容器中で、前記溶液の流れの方向において、電極数が多い順に少なくとも2以上配列させたことを特徴とする、電気的中性物質の分離装置に関する。
本発明によれば、電気的に中性な物質を含む溶液を、不平等電場を生ぜしめるような少なくとも相対向する一対の電極を有する分離容器内に導入して流すとともに、少なくとも一対の電極に対して高周波電場を印加して上記不平等電場を生成し、溶液中の中性物質に対して印加するようにしている。これによって、誘電損失を回避しながら、中性物質に極めて大きな不平等電場を印加することも可能になる。その結果、中性物質がたとえ微小な場合であっても高い効率で分離することができるようになる。
但し、本発明においては、直流電場の印加を必ずしも排除するものではない。また、分離回収する中性物質の大きさも特に限定されないが、例えばμmオーダーの微小な中性物質の分離回収に対して極めて有効である。
また、本発明の一例では、高周波電場の周波数fは0.3MHz以上300MHz以下であることが好ましい。これによって、上述した誘電損失をより効果的に抑制することができる。
さらに、本発明の一例では、少なくとも一対の電極間の静電容量及び抵抗値をそれぞれC(F)及びR(Ω)とした場合において、高周波電場の周波数f(Hz)は、f≦1/RCなる関係を満足するようにする。これによって、上記少なくとも一対の電極の内のいずれかに電気二重層が形成されたような場合においても、上記電気二重層に対する充電を抑制することができる。これは、電極間の充電に関する時定数がRCで表されるので、電極間に印加する交流電場の周期fが上述した関係式を満足することにより、電気二重層形成前の大きな電場強度と電場傾度を対象粒子に印加することができるようになる。
また、本発明の一例では、高周波電場は矩形波などのパルス波形の電場とすることができる。パルスの印加されていない時間tがRCを使用してt≧RCなる場合、(1×10-9秒以上の電圧非印加時間をもつパルス波形の場合)には、上記と同様に、電気二重層形成前の大きな電場強度と電場傾度を対象粒子に印加することができるようになるため、上記中性物質の分離をより効果的に行うことができる。
さらに、本発明の一例では、分離容器に導入して流す溶液を層流とする。この場合、溶液の流れから受ける力を十分に低減することができるので、比較的小さい誘電泳動力を与えた場合においても、溶液中の中性物質(正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質)を溶液から分離して誘電泳動を生ぜしめ、中性物質の分離をより高い効率で行うことができるようになる。
以上、本発明によれば、液体中に含まれる固形物質、コロイド、細胞、生命体などの電気的に中性な物質を、高効率で分離する新規な方法及び装置を提供することができる。
実施形態における電気的中性物質の分離装置を示す概略構成図。 水の誘電損失と高周波電場の周波数との関係を示すグラフ。 誘電泳動による移動速度を示したグラフ。 実施形態の変形例に関する電気的中性物質の分離装置を示す概略構成図。 8重極の電極構成を示す、電気的中性物質の分離装置の、分離容器の断面図。 6重極の電極構成を示す、電気的中性物質の分離装置の、分離容器の断面図。 4重極の電極構成を示す、電気的中性物質の分離装置の、分離容器の断面図。 8重極、6重極及び4重極の、中心からの距離と、電場傾度との関係を示すグラフ。
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態における電気的中性物質の分離装置(以下、単に「分離装置」と呼ぶ場合がある)の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の分離装置10は、長さ方向における断面が略円形である筒形状の分離容器11と、その内部に配置された一対の相対向する電極121及び122と、一対の電極121及び122間に高周波電場を印加するための高周波電源13とを含んでいる。
電極121は、分離容器11の内壁に内接するようにして設けられた長さ方向における断面が略円形である筒状電極であり、電極122は、筒状電極121の略中心に位置するように設けられた線状又は棒状の電極である。分離容器11が石英等の絶縁性の材料から構成される場合は、筒状電極121と分離容器11との絶縁性が担保されているが、分離容器11が金属性の材料から構成される場合は、筒状電極121と分離容器11との絶縁性を担保すべく、これらの間に図示しない絶縁膜を挿入する必要がある。
上述のように、分離容器11内に配置された電極121が筒状電極を構成し、その中心に線状又は棒状の電極122が位置しているので、これら電極間に高周波電場を印加することによって、誘電損失の少ない大きな不平等電場を生成することができる。なお、電極121は分離容器11の内壁に内接するようにして設けられた長さ方向における断面が略円形である筒状電極である旨示したが電極122との位置関係、製作効率、耐圧等を考慮して円筒状に形成されるほど良いが、高周波の印加性能に問題がなければ設置の場所および製作効率等を考慮して多角形の筒状体としても良いのは勿論である。
高周波電源13には、一対の電極121及び122間に印加される交流電場の電圧及び周期等をモニタリングするための高周波モニタリング機構34と、以下に説明する第2の液モニタリング機構におけるモニタリング結果に基づいて、高周波電源13を制御し、一対の電極121及び122間に印加される高周波の電圧及び周期等を制御する高周波制御手段35が付加されている。また、高周波制御手段35は、例えば、有効電力については入射波反射波の電力計を用い、波形についてはファンクションジェネレーターを用いて構成することができる。
また、本実施形態の分離装置10は、分離に供すべき中性物質を含む溶液を貯蔵するタンク14と、正の誘電泳動物質を回収する第1の回収タンク15と、負の誘電泳動物質を回収する第2の回収タンク16とを含む。タンク14は、分離容器11と配管21を介して接続されている。第1の回収タンク15と分離容器11とは配管22を介して接続されている。第2の回収タンク16と分離容器11とは配管23を介して接続されている。
なお、“正の誘電泳動物質”とは、一対の電極間に電場を印加した際に、電場が強くなる方向に移動(泳動)する物質を意味し、“負の誘電泳動物質”とは、一対の電極間に電場を印加した際に、電場が弱くなる方向に移動(泳動)する物質を意味する。
配管21には、タンク14から分離容器11へ向けて、送液機構としてのポンプ31、液条件制御機構32及び第1の液モニタリング機構33が設けられている。配管22及び配管33には、第2の液モニタリング機構36が設けられている。
液条件制御機構32は、分離容器11内での不平等電場による中性物質の分離をより効率的に行うことができるように、タンク14から送液される溶液の温度や流量等を調整するものである。なお、溶液の温度は、以下に説明する本発明の分離方法において利用する比誘電率の値を変化させる。液条件制御機構32は、以下に説明する第2の液モニタリング機構36のモニタリング結果に基づいて制御され、上述した溶液の温度や流量等を調整する。液条件制御機構32は、例えば、ヒーター、温度計、循環ポンプ、流量計、制御装置等から構成することができる。
第1の液モニタリング機構33は、タンク14からポンプ31によって送液されてくる溶液の流量及び液温度等をモニタリングするものである。第2の液モニタリング機構36は、それぞれ、主として分離容器11から分離された正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質の濃度等をモニタリングするものである。上述のように、第2の液モニタリング機構36によるモニタリング結果は、液条件制御機構32に送られて、上述のようにタンク14から送液される溶液の温度や流量等を調整するものである。また、上述したように、高周波制御手段35に送られて、一対の電極121及び122間に印加する交流電場の電圧及び周期等を制御するものである。
第1の液モニタリング機構33は、例えば、粒子径と粒子密度(濃度)のオンライン測定が可能な粒度分布計、液体の濃度のオンライン測定が可能な液体分布計等から構成することができる。第2の液モニタリング機構36も、上述のような粒度分布計、液体分布計等から構成することができる。
次に、図1に示す分離装置10を用いた溶液中の中性物質の分離方法について説明する。最初に、中性物質(正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質)を含む溶液をタンク14からポンプ31によって配管21内を送液し、分離容器11内に導入するとともに、分離容器11内を流れるようにする。次いで、高周波電源13より一対の電極121及び122間に高周波電場を印加する。すると、これら電極間には不平等電場が生成され、この不平等電場が溶液中の中性物質に作用するようになる。結果として、中性物質は、誘電泳動を生じるようになって、電極121及び122のいずれかに向かって移動(泳動)するようになる。
本実施形態においては、電極121側に対して電極122側の電場傾度が強いので、中性物質の内、正の誘電泳動物質は電極122に向けて移動(泳動)するようになり、負の誘電泳動物質は電極121に向けて移動(泳動)するようになる。したがって、図1に示すように、電極122の近傍には正の誘電泳動物質が集まるようになり、電極121の近傍には負の誘電泳動物質が集まるようになる。すなわち、正の誘電泳動物質は、分離容器11の、直径方向において中央に集中するようになり、負の誘電泳動物質は、分離容器11の、直径方向において外方に集中するようになる。
結果として、配管22を分離容器11の中央に配置し、配管23を分離容器11の外方に配置することによって、配管22内には溶液の流れにしたがって、正の誘電泳動物質を含む溶液が流れ込み、第1の回収タンク15に回収されることになり、配管23内には溶液の流れにしたがって、負の誘電泳動物質を含む溶液が流れ込み、第2の回収タンク16に回収されるようになる。
なお、正の誘電泳動物質を含む溶液が配管22内を流れる際には、第2の液モニタリング機構36によって、その溶液中における正の誘電泳動物質の濃度が計測され、正の誘電泳動物質が十分に回収されているか否かをモニタリングする。もし、正の誘電泳動物質の濃度が低く、回収が不十分である場合は、第2の液モニタリング機構36から液条件制御機構32及び高周波制御手段35に対して制御信号(図中に示す破線)が送信され、溶液温度や流量、及び高周波電場の電圧、波形、周波数を調節することによって、不平等電場の大きさや溶液中の溶媒及び中性物質(正の誘電泳動物質)の比誘電率を変化させ、誘電泳動によって正の誘電泳動物質が分離容器11の中央に集中するようにする。
同様に、負の誘電泳動物質の濃度が低く、回収が不十分である場合は、第2の液モニタリング機構36から液条件制御機構32及び高周波制御手段35に対して制御信号(図中に示す破線)が送信され、溶液温度や流量、及び高周波の電圧、波形、周波数を調節することによって、不平等電場の大きさや溶液中の溶媒及び中性物質(負の誘電泳動物質)の比誘電率を変化させ、誘電泳動によって負の誘電泳動物質が分離容器11の外方に集中するようにする。
以上のような操作を実施することによって、正の誘電泳動物質の、配管22を介した第1の回収タンク15への回収効率は向上し、同様に、負の誘電泳動物質の、配管23を介した第2の回収タンク16への回収効率も向上する。
なお、回収が不十分である場合は、第1の回収タンク15及び/又は第2の回収タンク16内の回収済みの溶液を、図示しない配管を介し、上述した分離容器11内に供給して、上述した分離工程に再度供するようにすることもできる。
次に、上記現象について理論的な注釈を試みる。
誘電泳動現象は、クラウジウス-モソッティの式で評価されることが多い。
Figure 0005611582
ここでFDEP:誘電泳動力 ε:対象物質の比誘電率 εm:溶媒の比誘電率 r:分子半径 E:電場強度 ∇E:電場傾度である。
一方、比誘電率は、周波数、温度、圧力の影響を受け、以下のように表記される。
Figure 0005611582
すなわち(1)式における Reは、実数部の抽出 という意味である。以降ではεr:比誘電率 ε’:誘電損失 と表記することにする。
溶媒が水の場合を想定すると、(1)式には水と対象物質の誘電率の差の項が含まれている。「物質の比誘電率<水の比誘電率」の場合には、対象物質は電場が弱くなる方向に移動する(負の誘電泳動)。「物質の比誘電率>水の比誘電率」の場合には電場が強くなる方向に移動する(正の誘電泳動)。
したがって、上述した分離方法において、正の誘電泳動物質は、溶液中の溶媒に対して、正の誘電泳動物質の比誘電率>溶媒の比誘電率なる関係がある。また、負の誘電泳動物質は、負の誘電泳動物質の比誘電率<溶媒の比誘電率なる関係がある。
高周波電場の周波数fは0.3MHz以上300MHz以下であることが好ましい。これによって、上述した誘電損失をより効果的に抑制することができる。
図2は、水の誘電損失と高周波電場の周波数との関係を示すグラフである。なお、このグラフは、”Dielectric materials and applications Willy, 1954”から引用したものである。図2から明らかなように、周波数が0.3MHz以上300MHz以下においては、水の温度に拘わらず、誘電損失が10以下となり、十分に小さいことが分かる。したがって、図1に示す分離装置10において、交流電源13から一対の電極121及び122に印加する高周波電場の周波数を上述の範囲に設定することにより、高周波電源13から一対の電極121及び122に印加する高周波電場のエネルギー損失を十分に抑制することができる。すなわち、高周波電源13から一対の電極121及び122に対して、エネルギーロスがなく、効率的に高周波電場を印加することができるようになる。
また、高周波電場の周波数fは、一対の電極121及び122間の静電容量及び抵抗値をそれぞれC(F)及びR(Ω)とした場合において、f≦1/RCなる関係を満足することが好ましい。これによって、一対の電極121及び122のいずれかに電気二重層が形成されたような場合においても、上記電気二重層に対する充電を抑制することができる。
これは、電極間がRC直列回路を構成すると考えた場合に、時間に対する電圧の時間依存性が、
Figure 0005611582
なる式で表され、時定数がRCで表されるので、電極間に印加する高周波電場の周期fを1/RC以上の周波数とすることによって、(3)式で表されるV値が十分に小さくなって、電極121及び122に電気二重層が形成されているような場合においても、電気二重層に対する充電を抑制することができるようになる。
なお、電極121及び122に電気二重層が形成されると、これら電極間に生じる不平等電場の電場勾配が小さくなる。したがって、溶液中から中性物質(正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質)の分離が不十分となって、第1の回収タンク15及び第2の回収タンク16内での、正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質の回収効率が低下するようになる。
さらに、高周波電場の波形は、正弦波、矩形波、三角波のいずれでもよいが、パルス状波形と成っている、すなわち矩形波であることが好ましい。これによって、溶液中に含まれる中性物質(正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質)の分離をより効果的に行うことができる。
また、パルスの印加されていない時間tがRCを使用してt≧RCなる場合(1×10-9秒以上の電圧非印加時間をもつパルス波形の場合)には、上記と同様に、電気二重層形成前の大きな電場強度と電場傾度を対象粒子に印加することができるようになるため、上記中性物質の分離をより効果的に行うことができる。
図3は、中性物質として粒径1μmのポリスチレンビーズを用いた場合の、誘電泳動による移動速度を示したグラフである。なお、電極121及び122間に印加する電圧は2Vとし、周波数は1MHzとし、矩形波の場合のデューティー比は50%とした。また、電極121及び122間の距離は100μmとした。
図3から明らかなように、正弦波及び三角波の場合と比較し、矩形波の場合において、移動速度が速くなっていることが分かる。すなわち、電極121及び122間に印加する電場を矩形波(パルス状波形)とすることによって、より大きな誘電泳動を得ることができる。
また、本実施形態において、分離対象となる中性物質は溶液中に含まれて分離容器11内を流れるため、電極121及び122からの不平等電場が効率的に印加され、誘電泳動によって分離するには、溶液の流れの状態が重要となる。基本的には、溶液の流れで受ける力以上の(不平等電場による)誘電泳動力を与えれば、分離は可能ではあるものの、効率的ではない。例えば、溶液の流れの状態が乱流である場合は、対流などの乱れが多く発生するため、溶液の流れで受ける力以上の誘電泳動力を与えるのは困難である。
このような観点から、分離容器11中を流れる溶液は層流の状態であることが好ましい。これによって、溶液の流れから受ける力を十分に低減することができるので、比較的小さい誘電泳動力を与えた場合においても、溶液中の中性物質(正の誘電泳動物質及び負の誘電泳動物質)を溶液から分離して誘電泳動を生ぜしめ、回収を容易に行うことができるようになる。
層流乱流の判定にはレイノルズ数(Re)が用いられる。
Re=ρuD/μ (4)
ここで、ρ:溶液の密度 u:溶液の線速度 D:分離容器の内径 μ:溶液の粘度である。層流の流れの場が分離対象の粒子に及ぼす力は、Re数によって異なるが、小さいRe数の方が、粒子への影響が小さくなり分離しやすくなる。そのためRe数は、乱流との判定境界である2500以下のニュートン領域が装置許容限界であり、この値以下では層流となるが、Re数500以下のアレン域が好ましく、さらにはRe数2以下のストークス域流以下がより好ましい。
図4は、上記実施形態の変形例である。図1に示すように、上記実施形態では、一対の相対向する電極121及び122として、電極121を円筒状電極とし、その中心に線状又は棒状の電極122を配置し、これによって不平等電場を生成するようにしたが、本実施形態では、上述のような電極を用いる代わりに、複数の多重電極を用いている。具体的には、分離容器11の、溶液の導入側から順次に8重極421、6重極422及び4重極423を、各電極片が、分離容器11の断面方向、すなわち溶液の流れの方向と直交する方向に突出するようにして配置されていて、かつ中央部の線状もしくは棒状電極は存在しない点で相違している。
なお、図5〜図7は、8重極421、6重極422及び4重極423の、分離容器11の断面方向における配列状態を概略的に示したものである。図5〜図7から明らかなように、各多重電極において、電極片は等間隔で配列されている。
図8は、8重極421、6重極422及び4重極423の、中心Oからの距離と、上記(1)式における電場傾度との関係を示すグラフである。なお、測定に際しては、電圧10V、周期1MHzの高周波電場を印加して実施した。図8から明らかなように、中心Oに近い箇所では、8重極421の電場傾度が最も小さく、6重極422及び4重極423と電極数が減少するにつれて増大する。一方、中心Oから遠ざかるにつれて、電場傾度の大きさの順番が逆転し、約30μmを超えると、8重極421の電場傾度が最も大きく、6重極422及び4重極423と電極数が減少するにつれて減少するようになる。
したがって、(1)式から明らかなように、中心Oに近い箇所では、4重極423の誘電泳動力が最も高く、中心Oから離れた箇所では、8重極421の誘電泳動力が最も高いことが分かる。
このため、例えば、負の誘電泳動物質を考慮した場合、本実施形態のように、分離容器11の溶液導入側に8重極421を設け、出口側に向けて順次6重極422及び4重極423を設けるようにすることによって、分離容器11の、直径方向における外方に位置する負の誘電泳動物質を、8重極421、6重極422及び4重極423間を順次に通過させると、分離容器11の直径方向における外方に位置する負の誘電泳動物質は、分離容器11の中央に集まるようになる。
結果として、溶液中の負の誘電泳動物質の総てを、分離容器11の直径方向の中央に集めるようにすることができる。このため、図4に示すように、本例の分離装置40では、分離容器11の中央に配管22を設けるのみで、溶液中の負の誘電泳動物質のみを分離して回収することができるようになる。
なお、上述した説明から明らかなように、本例では、負の誘電泳動物質のみの分離回収を想定しているので、配管23及び第2の回収タンク16、並びに配管23に設けた第2の液モニタリング機構は必要とされない。
本変形例では、8重極421、6重極422及び4重極423の複数の多重電極を用いたが、これらの内、1又は2つを選択して用いてもよい。但し、多重電極の数を減少させると、上述のような作用効果も低減される。
また、使用する多重電極は4重極以上の多重電極であれば、上述した8重極421、6重極422及び4重極423に限定されるものではない。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
10、40 電気的中性物質の分離装置
11 分離容器
121 筒状電極
122 線状又は棒状電極
13 高周波電源
14 タンク
15 第1の回収タンク
16 第2の回収タンク
21、22,23 配管
31 ポンプ
32 液条件制御機構
33 第1の液モニタリング機構
34 高周波モニタリング機構
35 高周波制御手段
36 第2の液モニタリング機構

Claims (10)

  1. 電気的に中性な物質を分離する方法であって、
    不平等電場を生ぜしめるように構成された、少なくとも相対向する一対の電極を有する分離容器を準備するステップと、
    前記少なくとも一対の電極に対して高周波電場を印加し、前記少なくとも一対の電極間に前記不平等電場を生ぜしめるステップと、
    前記分離容器内に、前記中性な物質を含む溶液を導入して流し、前記物質に対して前記不平等電場を印加することにより、前記物質に対して誘電泳動を生ぜしめ、前記溶液から前記物質を分離するステップとを具え、
    前記少なくとも一対の電極は4重極以上の複数の多重電極であって、これら複数の多重電極を前記分離容器中で、前記溶液の流れの方向において、電極数が多い順に少なくとも2以上配列させたことを特徴とする、電気的中性物質の分離方法。
  2. 前記高周波電場の周波数fは0.3MHz以上300MHz以下であることを特徴とする、請求項に記載の電気的中性物質の分離方法。
  3. 前記少なくとも一対の電極間の静電容量及び抵抗値をそれぞれC(F)及びR(Ω)とした場合において、前記高周波電場の周波数f(Hz)は、f≦1/RCなる関係を満足することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気的中性物質の分離方法。
  4. 前記高周波電場は、パルス状で、かつ1×10-9秒以上又はRC(秒)(C(F)は一対の電極間の静電容量、R(Ω)は一対の電極間の抵抗値)以上の電圧非印加時間をもつ波形であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一に記載の電気的中性物質の分離方法。
  5. 前記高周波電場の波形が矩形波形状であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一に記載の電気的中性物質の分離方法。
  6. 前記溶液は、前記分離容器中で層流として流すことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一に記載の電気的中性物質の分離方法。
  7. 電気的に中性な物質を分離する装置であって、
    不平等電場を生ぜしめるように構成された、少なくとも相対向する一対の電極と、
    前記一対の電極に対して高周波電場を印加するための電源と、
    前記少なくとも一対の電極を収納し、分離に供する前記中性な物質を含む溶液を導入して流し、前記物質に対して前記不平等電場を印加することにより、前記物質に対して誘電泳動を生ぜしめ、前記溶液から前記物質を分離するための分離容器とを具え、
    前記少なくとも一対の電極は4重極以上の複数の多重電極であって、これら複数の多重電極を前記分離容器中で、前記溶液の流れの方向において、電極数が多い順に少なくとも2以上配列させたことを特徴とする、電気的中性物質の分離装置。
  8. 前記溶液を貯蔵するタンクと、
    前記タンクから前記分離容器へ導入するための送液機構と、
    を具えることを特徴とする、請求項に記載の電気的中性物質の分離装置。
  9. 前記溶液の液条件をモニタリングするための液モニタリング機構と、
    前記少なくとも一対の電極に印加された高周波電場の電圧及び波形をモニタリングするための高周波モニタリング機構と、前記液モニタリング機構及び前記高周波モニタリング機構におけるモニタリング結果から、前記少なくとも一対の電極に印加する高周波電場条件を制御するための高周波制御手段と、を具えることを特徴とする、請求項7又は8に記載の電気的中性物質の分離装置。
  10. 前記液モニタリング機構及び前記高周波モニタリング機構におけるモニタリング結果から、前記溶液の液条件を制御するための液条件制御機構を具えることを特徴とする、請求項のいずれか一に記載の電気的中性物質の分離装置。
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